(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051682
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】粉体層
(51)【国際特許分類】
G10K 11/162 20060101AFI20230404BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
G10K11/162
G10K11/16 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038902
(22)【出願日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2021160646
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】竹内 直弥
(72)【発明者】
【氏名】安部 裕幸
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA12
5D061AA29
5D061BB27
(57)【要約】
【課題】空気伝搬音による騒音、特に低周波数(100Hz~500Hz)に対する吸音性能が優れる粉体層を提供する。
【解決手段】平均粒子径rが0.1μm以上500μm以下の粒子10を含む粉体層1であり、空隙率が15%以上90%以下であり、平均孔径Rが1μm以上200μm以下であり、JIS K 6720-2:1999に準拠して測定したかさ密度が0.05g/cm
3以上5.0g/cm
3以下である場合、音の粉体内伝搬速度が10m/sec以上50m/sec以下である、粉体層。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が0.1μm以上500μm以下の粒子を含む粉体層であり、
空隙率が15%以上90%以下であり、
平均孔径が1μm以上200μm以下であり、
JIS K 6720-2:1999に準拠して測定したかさ密度が0.05g/cm3以上5.0g/cm3以下である場合、音の粉体内伝搬速度が10m/sec以上50m/sec以下である、粉体層。
【請求項2】
厚みが5mm以上50mm以下である、請求項1に記載の粉体層。
【請求項3】
100Hz~500Hzにおける吸音率のピーク値が0.2以上1.0以下である、請求項1又は2に記載の粉体層。
【請求項4】
前記粒子の表面が表面処理剤により処理されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の粉体層。
【請求項5】
前記粒子がガラス繊維により構成され、前記粒子の表面の少なくとも一部が硬質ウレタン樹脂で被覆されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の粉体層。
【請求項6】
前記粒子が廃材又は再生材から作製される、請求項1~5のいずれか1項に記載の粉体層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音性能に優れる粉体層に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車及び鉄道等の車輛は、燃費向上のための軽量化が図られている。車輛の軽量化に伴って車内空間に外部から騒音が入りやすくなっており、車内空間の快適性の向上のために、防音性の向上が図られている。また、ビル及び住宅等の建築物においても、屋外や隣接する部屋からの騒音の進入を抑制し、居住空間の快適性を向上させるために、防音性の向上が図られている。
【0003】
騒音は、空気を伝播してもたらす空気伝搬音によるものがあり、空気伝搬音による騒音の対策として、吸音が挙げられる。空気伝搬音を吸音する吸音材料としては、例えば、グラスウール、ロックウール、フェルト等の繊維材料、及び、ボリウレタンフォームのような高分子材科を発泡させた材料(連続気泡体)からなる多孔質材料などが挙げられる。繊維材料は、繊維間での摩擦熱等に変換することにより吸音性能を発揮する。また、多孔質材料は、厚み方向の表層から中心部方向の空隙を音が通過する際に発生する粘性摩擦熱等に変換することにより吸音性能を発揮する。
また、空気伝搬音による騒音の対策として、廃ガラスの粉体を利用することで、吸音性能を高めることが報告されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】北海道立工業試験場報告 No.301-15「廃ガラスを利用した軽量材料の開発」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、空気伝搬音による騒音において、特に低周波数(100Hz~500Hz、特に250Hz付近)の音は、吸音して低減することが非常に困難である。車輛及び建築物の分野においても、低周波数の騒音が含まれることから、低周波数の騒音に対する吸音性能の向上が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、空気伝搬音による騒音、特に低周波数(100Hz~500Hz)に対する吸音性能が優れる粉体層を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]平均粒子径が0.1μm以上500μm以下の粒子を含む粉体層であり、空隙率が15%以上90%以下であり、平均孔径が1μm以上200μm以下であり、JIS K 6720-2:1999に準拠して測定したかさ密度が0.05g/cm3以上5.0g/cm3以下である場合、音の粉体内伝搬速度が10m/sec以上50m/sec以下である、粉体層。
[2]厚みが5mm以上50mm以下である、[1]に記載の粉体層。
[3]100Hz~500Hzにおける吸音率のピーク値が0.2以上1.0以下である、[1]又は[2]に記載の粉体層。
[4]前記粒子の表面が表面処理剤により処理されている、[1]~[3]のいずれかに記載の粉体層。
[5]前記粒子がガラス繊維により構成され、前記粒子の表面の少なくとも一部が硬質ウレタン樹脂で被覆されている、[1]~[4]のいずれかに記載の粉体層。
[6]前記粒子が廃材又は再生材から作製される、[1]~[5]のいずれかに記載の粉体層。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、空気伝搬音による騒音、特に低周波数(100Hz~500Hz)に対する吸音性能が優れる粉体層を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)は、本発明の実施形態に係る粉体層を示す斜視図であり、
図1(b)は、
図1(a)の点線で囲われた部分を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分は同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
本発明の実施形態に係る粉体層1は、
図1に示すように、平均粒子径rが0.1μm以上500μm以下の粒子10を含む。粉体層1は、空隙率が15%以上90%以下であり、平均孔径Rが1μm以上200μm以下であり、JIS K 6720-2:1999に準拠して測定したかさ密度が0.05g/cm
3以上5g/cm
3以下である場合、音の粉体内伝搬速度が10m/sec以上50m/sec以下である。
【0012】
粉体層1は、不織布等の袋状部材、並びに、金属及び樹脂等からなる筐体部材などの保持部材の内部に粒子10を保持させることで形成することができる。また、粉体層1は、粒子10を圧着及び熱融着等により凝集させることで形成することができる。
【0013】
粒子10の平均粒子径rは、0.1μm以上500μm以下である。粒子10の平均粒子径rは、0.1μm未満であると、粒子10が空中に舞ってしまうことがあり、生活空間の快適性、及び作業環境の安全衛生が損なわれることがある。また、粒子10の平均粒子径rは、500μm超であると、粒子間の隙間である空隙が広くなったり、粒子どうしの接触面積が少なくなったりするために、音が入射した際、空隙通過による粘性摩擦熱、及び粒子間での摩擦熱の発生が低減することで、優れた吸音性能を発揮することができない。粒子10の平均粒子径rは、上記観点から、0.5μm以上400μm以下であることが好ましく、1.0μm以上300μm以下であることがより好ましく、10μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。
なお、粒子10の平均粒子径rは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により湿式測定して得たメディアン径(D50)の値である。
【0014】
粒子10は、球状でも非球状でもよいが、粉体層1の吸音性能を向上させる観点から、非球状の粒子を少なくとも含有することが好ましい。なお、粒子10は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
非球状の粒子としては、例えば、鱗片状、薄片状などの板状粒子、針状粒子、繊維状粒子、樹枝状粒子、不定形状粒子、凝集粒子などが挙げられる。中でも、粉体層1の吸音性能を向上させる観点から、繊維状粒子が好ましい。
ここで、「球状」とはアスペクト比が1.0~5.0、好ましくは1.0~3.0の形状であることを意味し、必ずしも真球であることを意味しない。なお、球状粒子の場合のアスペクト比は、長径/短径比を意味する。また、「非球状」とは上記球状以外の形状、すなわちアスペクト比が2を超える形状を意味する。
なお、非球状の粒子10において、アスペクト比とは、粒子10の最大長さの最小長さに対する比(最大長さ/最小長さ)であり、例えば、形状が板状である場合は、粒子10の最大長さの厚みに対する比(最大長さ/厚み)である。アスペクト比は走査型電子顕微鏡で、十分な数(例えば250個)の粒子10を観察して平均値として求めるとよい。
非球状の粒子10のアスペクト比は、粒子間での摩擦熱の発生を向上させて優れた吸音性能を発揮する観点から、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、そして通常は200以下である。
なお、2種以上の粒子10を用いる場合は、上記アスペクト比は、それぞれの粒子10のアスペクト比を加重平均して算出した、平均アスペクト比とする。
【0015】
粒子10の材質は、特に限定はなく、例えば、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂、バイオマス等の樹脂材料、ガラス繊維、植物繊維、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、繊維強化プラスチック(FRP)及びガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の繊維材料、鉄、金、銀、銅、アルミニウム、アルミ合金及びチタン合金、等の金属材料、タルク及びマイカ等の鉱物材料、並びに、木及び竹等の天然材料が挙げられる。
粒子10は、環境保全の観点から、廃材又は再生材から作製されることが好ましい。
【0016】
粒子10は、粉体層1の吸音性能を向上させるために、粒子10が互いに接触して凝集体を構成している形態であることが好ましい。粒子10は、凝集体を構成するためには、粒子10それぞれの凝集力を向上させることが好ましい。
粒子10は、粒子10の凝集力を向上させるために、表面が表面処理剤により処理されていることが好ましい。粒子10の表面は、シラン化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、リン酸化合物などの表面処理剤などで表面処理され、好ましくはシラン化合物により表面処理される。表面処理に用いられるシラン化合物は、公知のシランカップリング剤などが挙げられる。
また、粒子10は、粒子10の凝集力を向上させるために、表面がコーティングされていることが好ましい。粒子10の表面は、粒子本体よりも低融点、低ガラス転移点及び低軟化点の少なくともいずれかを有する樹脂でコーティングされる。コーティングに用いる樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、オレフィン樹脂等が挙げられる。なお、樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。または、粒子10の表面は、タック剤が噴霧され、タック剤でコーティングされる。タック剤としては、例えば、イソヘキサン等の炭化水素化合物が挙げられる。粒子10の表面が樹脂でコーティングされるものとしては、例えば、粒子10がガラス繊維により構成され、粒子10の表面の少なくとも一部が硬質ウレタン樹脂で被覆されているもの、具体的には、積水化学工業製の商品名「エスロンネオランバーFFU」が細分化されたものを採用することができる。
また、粒子10は、最外層が熱硬化性樹脂である場合、粒子10の凝集力を向上させるために、硬化剤を添加して、熱硬化性樹脂の未反応部位が反応させられていることが好ましい。例えば、積水化学工業製の商品名「エスロンネオランバーFFU」の製造工程で生じた廃粉(廃材)を粒子とし、硬化剤としてポリオールを添加することで、粒子の表面を被覆する硬質ウレタン樹脂における未反応のイソシアネートが反応し、凝集力が向上する。
【0017】
粒子10は、粒子10が互いに隔離して存在している形態でもよい。粒子10は、粒子間で生じるファンデルワールス力によって粒子間に空隙が形成され、粒子10が互いに隔離して存在することが可能となる。粒子間で生じるファンデルワールス力は、粒子10の平均粒子径rに依存し、粒子10の平均粒子径rが小さい場合(例えば、100μm以下)に大きくなり、粒子10が互いに隔離して存在しやすくなる。
粒子10が互いに隔離して存在している場合において、粉体層1の吸音性能を向上させるためには、粒子10の互いに隔離距離は短いことが好ましく、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。
【0018】
粉体層1の空隙率は、15%以上90%以下である。ここで、粉体層1の空隙率とは、粉体層1の全体体積のうち、粒子10及び粒子10に属するもの以外の空隙が占める体積の割合をいう。ここで、粒子10に属するものとは、粒子10の表面を被覆する樹脂等を指す。粉体層1の空隙率が15%未満であると、音が入射した際、空隙通過による粘性摩擦熱、及び粒子間での摩擦熱の発生が低減することで、優れた吸音性能を発揮することができない。また、粉体層1の空隙率が90%超であると、粉体としての特性より空隙の特性が強くなり、音の粉体内伝搬速度を所望の範囲に制御することが困難となる。上記観点から、粉体層1の空隙率は、20%以上85%以下であることが好ましく、25%以上82.5%以下であることがより好ましく、30%以上80%以下であることがさらに好ましい。
なお、粉体層1の空隙率は、実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0019】
粉体層1の平均孔径Rは、1μm以上200μm以下である。ここで、粉体層1の平均孔径Rとは、粉体層1における粒子10及び粒子10に属するもの間の隙間である空隙を球形の空隙孔とみなし、空隙孔の直径の平均値をいう。粉体層1の平均孔径Rが1μm未満であり、粉体層1の平均孔径Rが200μm超であると、音が入射した際、空隙通過による粘性摩擦熱、及び粒子間での摩擦熱の発生が低減することで、優れた吸音性能を発揮することができない。上記観点から、粉体層1の平均孔径Rは、2μm以上150μm以下であることが好ましく、3μm以上100μm以下であることがより好ましく、5μm以上50μm以下であることがさらに好ましい。
なお、粉体層1の平均孔径Rは、実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0020】
本発明の粉体層1における音の粉体内伝搬速度は、JIS K 6720-2:1999に準拠して測定したかさ密度が0.05g/cm3以上5.0g/cm3以下である場合の伝搬速度とする。なお、粉体層1の密度は、実施例に記載の方法にて測定することができる。
上記測定条件において、粉体層1における音の粉体内伝搬速度は、10m/sec以上50m/sec以下である。粉体層1における音の粉体内伝搬速度が10m/sec未満であると、100Hz未満の低周波数に対する吸音性能が発現しやすく、100Hz~500Hzの低周波数に対する吸音性能が劣る。また、粉体層1における音の粉体内伝搬速度が50m/sec超であると、100Hz~500Hzの低周波数に対する吸音性能を発現しにくい。上記観点から、粉体層1における音の粉体内伝搬速度は、12.5m/sec以上45m/sec以下であることが好ましく、15m/sec以上42,5m/sec以下であることがより好ましく、17.5m/sec以上40m/sec以下であることがさらに好ましい。
なお、粉体層1における音の粉体内伝搬速度は、実施例に記載の方法にて測定することができる。
粉体層1における音の粉体内伝搬速度(v)は、粉体層1の弾性率(K)と粉体層1の密度(ρ)の比(v=(K/ρ)1/2)で決まるので、粉体層1における音の粉体内伝搬速度を上記範囲内とするためには、粉体層1の弾性率(K)、及び粉体層1の密度(ρ)を併せて制御することで実現することができる。具体的には、粉体層1における音の粉体内伝搬速度(v)を低減させるためには、粉体層1の弾性率(K)を低下させる制御、及び、粉体層1の密度(ρ)を上昇させる制御のうち、少なくともいずれかの制御を行うことで実現することができる。ここで、粉体層1の弾性率(K)を低下させる制御としては、例えば、粉体層1を構成する粒子10の材質として、低い弾性率を有する材質を選定する方法がある。低い弾性率を有する粒子10の材質としては、例えば、金属材料であっては、鉄よりもアルミニウムが好ましい。また、低い弾性率を有する粒子10の材質としては、金属材料よりも繊維材料、樹脂材料及び天然材料が好ましく、中でも、繊維材料が好ましい。さらに、粉体層1の弾性率(K)を低下させる制御としては、例えば、粒子10が低い弾性率を有するように、粒子10の表面をウレタン樹脂等の樹脂でコーティングする方法がある。粉体層1の密度(ρ)を上昇させる制御としては、例えば、粒子10の平均粒子径rを小さいものとし、粉体層1内の粒子10の数を上昇させて、粉体層1の平均孔径Rを低減させる制御が挙げられる。つまり、粉体層1における音の粉体内伝搬速度(v)を低減させるためには、粒子10の平均粒子径rと粉体層1の平均孔径Rとを併せて制御することで実現することができる。
なお、粉体層1における音の粉体内伝搬速度は、実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0021】
粉体層1の厚みtは、5mm以上50mm以下であることが好ましく、8mm以上45mm以下であることがより好ましく、10mm以上40mm以下であることがさらに好ましい。粉体層1の厚みtが上記下限値以上であることで、100Hz~500Hzの低周波数に対する吸音性能を発現しやすくなる。また、粉体層1の厚みtが上記上限値以下であることで、十分な吸音性能を発揮しつつ、省スペースを実現することができる。
本明細書における粉体層1の厚みtとは、粉体層1の下面と上面の高さの値をいい、例えば、粉体層1の下面と上面の高さを10箇所測定した平均値をいう。
【0022】
粉体層1の空隙率、平均孔径R、厚みの制御法は、任意である。粉体層1の低周波数に対する吸音性能を効率よく上げるためには、空隙率を大きく、平均孔径Rを小さく、厚みを大きくすればよい。
空隙率を大きくする方法の一例としては、平均粒子径rの大きい粒子10を採用し、粉体層1内の密度を低くするために、極力荷重をかけないように粉体層1を製造する方法が挙げられる。
平均孔径Rを小さくする方法の一例としては、凝集力が高く、平均粒子径rが小さい粒子10を採用して粉体層1を製造する方法が挙げられる。または、極力荷重をかけないように粉体層1を製造する方法が挙げられる。
厚みを大きくする方法の一例としては、粒子10の量を多くして粉体層1を製造する方法が挙げられる。または、極力荷重をかけないように粉体層1を製造する方法が挙げられる。
【0023】
粉体層1は、100Hz~500Hzにおける吸音率のピーク値が0.2以上1.0以下であることが好ましく、0.3以上0.9以下であることがより好ましく、0.4以上0.8以下であることがさらに好ましい。粉体層1の100Hz~500Hzにおける吸音率のピーク値が上記範囲内であることで、低周波数に対する吸音性能が優れることとなり、低周波数に対する防音性能を向上させることができる。
【実施例0024】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
積水化学工業製の商品名「エスロンネオランバーFFU」の製造工程で生じた廃粉(廃材)を粒子(平均粒子径100μm)として用意した。用意した粒子の平均粒子径を小さくするために、凍結融解器(JFC-300、日本分光工業社製)を使って、一度液体窒素で冷却し、鉄球(直径20mm)による衝撃で、粉砕することで(条件:打撃時間5分、打撃回数18,000往復)、平均粒子径45μmの粒子を作製した。粒子を音響管(内径40mm)に厚みが20mmになるように添加し、厚み20mmの粉体層を作製した。得られた粉体層についての空隙率、平均孔径、密度、及び粉体内伝搬速度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0026】
(実施例2)
積水化学工業製の商品名「エスロンネオランバーFFU」の製造工程で生じた廃粉(廃材)を粒子(平均粒子径100μm)として用意した。用意した粒子の平均粒子径を更に小さくするために、凍結融解器(JFC-300、日本分光工業社製)を使って、一度液体窒素で冷却し、鉄球(直径20mm)による衝撃で、粉砕することで(条件:打撃時間15分、打撃回数18,000往復)、平均粒子径28μmの粒子を作製した。粒子を音響管(内径40mm)に厚みが20mmになるように添加し、厚み20mmの粉体層を作製した。得られた粉体層についての空隙率、平均孔径、密度、及び粉体内伝搬速度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0027】
(実施例3)
積水化学工業製の商品名「エスロンネオランバーFFU」の製造工程で生じた廃粉(廃材)を粒子(平均粒子径100μm)として用意した。用意した粒子を錠剤機(HAND-TAB100T-15、市橋精機社製)を用いて室温下(23℃程度)、粒子全面に3トンの荷重(圧力23MPa)を付加し、厚み20mmの粉体凝集体である粉体層を作製した。得られた粉体層についての空隙率、平均孔径、密度、及び粉体内伝搬速度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0028】
(実施例4)
積水化学工業製の商品名「エスロンネオランバーFFU」の製造工程で生じた廃粉(廃材)を粒子(平均粒子径100μm)に、イソシアネートを粒子総重量の1/10の質量を添加し、24時間放置し、粉体凝集体を得た。得られた粉体凝集体を直径40mm、厚み20mmとなるように、カッター等で切削して粉体層を作製した。得られた粉体層についての空隙率、平均孔径、密度、及び粉体内伝搬速度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0029】
(比較例1)
積水化学工業製の商品名「エスロンネオランバーFFU」の製造工程で生じた廃粉(廃材)を粒子(平均粒子径100μm)として用いた。粒子を音響管(内径40mm)に厚みが20mmになるように添加し、厚み20mmの粉体層を作製した。得られた粉体層についての空隙率、平均孔径、密度、及び粉体内伝搬速度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0030】
(比較例2)
粒子としてガラスビーズ(平均粒子径20μm、品番iM16K、3M社製)用いた。それ以外は比較例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0031】
(比較例3)
粒子としてタルク(平均粒子径20μm、品番PA―OG、日本タルク社製)用いた。それ以外は比較例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0032】
(比較例4)
積水化学工業製の商品名「エスロンネオランバーFFU」の製造工程で生じた廃粉(廃材)を粒子(平均粒子径100μm)として用意した。用意した粒子を錠剤機(HAND-TAB100T-15、市橋精機社製)を用いて室温下(23℃程度)、粒子全面に10トンの荷重(圧力78MPa)を付加し、厚み20mmの粉体凝集体である粉体層を作製した。得られた粉体層についての空隙率、平均孔径、密度、及び粉体内伝搬速度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0033】
(参考例1)
市販されているフェルト(羊毛70%、密度0.23g/cm3、直径40mm、厚み20mm)を粉体層として用いた。それ以外は実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0034】
(吸音率)
JIS A 1405-2:2007(ISO10534-2:1998)の2マイクロホン法に準拠し、内径40mmの音響管を用いた垂直入射吸音率を測定した。測定には、垂直入射吸音率測定システム(WinZacMTX、日本音響エンジ社製)用い、100Hz~500Hzにおける吸音率のピーク値を吸音率とした。また、100Hz~500Hzにおける吸音率のピーク値を示す周波数をピーク周波数として測定した。100Hz~500Hzにおける吸音率のピーク値を特に示すことがないものは、周波数の増加に伴って吸音率も増加することになるので、実質的にピーク周波数は500Hzとみなした。
なお、粉体層の自重による崩れで、厚みばらつきを防止するために、音響管を縦置きとし、粉体層の底面が背後に空気層がない剛壁面と接する反射法で測定した。
【0035】
(平均粒子径)
粒子の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(SALD-2300、株式会社島津製作所社製)により湿式測定して得たメディアン径(D50)の値とした。
【0036】
(密度)
JIS K 6720-2:1999に準拠したかさ密度測定法により、室温下(23℃程度)で、かさ密度測定器(「JIS K 6720 塩化ビニル樹脂用」、伊藤製作所社製)を用いて5回測定した平均値を密度とした。
【0037】
(空隙率)
高分解能3DX線顕微鏡(nano3DX、リガク社製)で粉体層を撮影した。3D画像解析でsize map処理(内接球処理)を行い、球の占める割合を空隙率とした。なお、空隙率は、粉体層を1,000箇所撮影し、それぞれの箇所で算出した空隙率の平均値とした。
【0038】
(平均孔径)
高分解能3DX線顕微鏡(nano3DX、リガク社製)で粉体層を撮影した。3D画像解析でsize map処理(内接球処理)を行い、球形にみなされた空隙孔の球の直径の大きさを空隙孔の孔径とした。なお、平均孔径は、粉体層を1,000箇所撮影し、それぞれの箇所で算出した空隙孔の直径の平均値を平均孔径とした。
【0039】
(粉体内伝搬速度)
厚み10mmと20mmの粉体層の吸音率測定の際に得られる音響インピィーダンスから伝搬乗数を求め、その虚数をβとした場合、f(一次のピーク周波数)での粉体内伝搬速度(v=2πf/β)を算出した。
【0040】
粉体層は、優れた防音性、特に低周波数での防音性を有していると共に、軽量性にも優れている。従って、粉体層は、輸送機器、建築物、産業機器、OA機器及び家電製品などの施工部材に好適に適用することができる。