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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051767
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】外装床材の表面材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/32 20060101AFI20230404BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20230404BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20230404BHJP
   E04C 2/04 20060101ALI20230404BHJP
   E04C 2/12 20060101ALI20230404BHJP
   E04C 2/20 20060101ALI20230404BHJP
   E04C 2/08 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C08J9/32 CER
C08J9/32 CEZ
B32B5/18
B29C44/00 E
E04C2/04 C
E04C2/12 B
E04C2/20 B
E04C2/20 K
E04C2/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138291
(22)【出願日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2021160832
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022112756
(32)【優先日】2022-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】森 一央
(72)【発明者】
【氏名】永森 文剛
(72)【発明者】
【氏名】宇野 光治
【テーマコード(参考)】
2E162
4F074
4F100
4F214
【Fターム(参考)】
2E162EA00
4F074AA02
4F074AA33
4F074BA91
4F074CA22
4F074DA03
4F074DA24
4F074DA58
4F100AK01A
4F100AK12A
4F100AK25A
4F100AK74A
4F100AP00A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100CA01A
4F100DD01A
4F100DE01A
4F100DE04A
4F100EH17
4F100EJ02
4F100EJ52
4F100GB07
4F100JA06A
4F100JB16A
4F100JN21
4F100YY00A
4F214AA13A
4F214AA21
4F214AB02
4F214AD06
4F214AG02
4F214AG03
4F214AH46
4F214UA11
4F214UB02
4F214UC13
4F214UF01
4F214UN04
(57)【要約】
【課題】木質感を向上することができる外装床材用の表面材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、外装床材の基材上に配置される表面材であって、熱可塑性樹脂を含有し、物理発泡剤により発泡した発泡セルが形成されており、前記発泡セルは、平均径が30~200μmであり、当該表面材の面方向及び厚み方向に分散するとともに、当該表面材の表面において破泡している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装床材の基材上に配置される表面材であって、
熱可塑性樹脂を含有し、物理発泡剤により発泡した発泡セルが形成されており、
前記発泡セルは、平均径が30~200μmであり、当該表面材の面方向及び厚み方向に分散するとともに、当該表面材の表面において破泡している、表面材。
【請求項2】
隣接する前記発泡セルの距離が20~400μmである、請求項1に記載の表面材。
【請求項3】
前記表面層は、1mm2当たり、5~60個の前記発泡セルを有する、請求項1に記載の表面材。
【請求項4】
前記発泡セルの水平方向の外径に対する垂直方向の外径の平均のアスペクト比が、0.5~10である、請求項1に記載の表面材。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂は、ABS樹脂、ASA樹脂、AES樹脂、SAS樹脂、及びアクリル樹脂の少なくとも1つを含む樹脂によって形成されている、請求項1に記載の表面材。
【請求項6】
破断時の伸長粘度が、200℃において、1×104~2×106Pa・sである、請求項1に記載の表面材。
【請求項7】
木粉がさらに含有されている、請求項1から6のいずれかに記載の表面材。
【請求項8】
前記木粉の平均径は、30~400μmである、請求項7に記載の表面材。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂100重量%に対し、前記木粉が5~20重量%含有されている、請求項7に記載の表面材。
【請求項10】
厚みが、100~500μmである、請求項1に記載の表面材。
【請求項11】
前記表面材に、幅が1~10mm、高さが0.1~1mm、曲率半径が0.3~10mmの凹凸が、連続的に形成されている、請求項1に記載の表面材。
【請求項12】
前記表面材の凹凸の表面に、さらに、幅が0.05~0.5mm、高さが0.05~0.2mm、曲率半径が0.01~0.1mmの凹凸が、ランダム且つ連続的に形成されている、請求項11に記載の表面材。
【請求項13】
外装床材の基材上に配置される表面材の製造方法であって、
熱可塑性樹脂と、物理発泡剤を内包したカプセルとを混練し、押出成形によって成形することで前記表面材を形成するステップを備え、
前記熱可塑性樹脂100重量%に対し、前記物理発泡剤を内包したカプセルが0.5~3重量%含有されている、外装床材の表面材の製造方法。
【請求項14】
前記熱可塑性樹脂及び前記カプセルとともに、木粉を混練し、
前記熱可塑性樹脂100重量%に対し、前記木粉が5~20重量%が含有されている、請求項13に記載の外装床材の表面材の製造方法。
【請求項15】
前記表面材に、CO2レーザーを照射することにより、幅が0.05~0.2mm、高さが0.03~0.1mm、曲率半径が0.01~0.1mmの凹凸を連続的に付与するステップをさらに備えている、請求項13に記載の外装床材の表面材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装床材の表面材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には床材などに用いられる表面材が開示されている。この表面材には、表面側に密度の大きいスキン層が形成され、スキン層の内部に密度の小さい基部が形成されている。これにより、熱伝導率を下げ、手足が接触しても手足に熱が伝わりにくくしている。また、スキン層の表面には、機械処理などにより凹凸が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-129511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記スキン層の表面には凹凸が形成されているもの機械的な粗面処理であるため、凹凸が小さく、木質感が低いという問題がある。本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、木質感を向上することができる外装床材用の表面材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
項1.外装床材の基材上に配置される表面材であって、
熱可塑性樹脂を含有し、物理発泡剤により発泡した発泡セルが形成されており、
前記発泡セルは、平均径が30~200μmであり、当該表面材の面方向及び厚み方向に分散するとともに、当該表面材の表面において破泡している、表面材。
【0006】
項2.隣接する前記発泡セルの距離が20~400μmである、項1に記載の表面材。
【0007】
項3.前記表面層は、1mm2当たり、5~60個の前記発泡セルを有する、項1または2に記載の表面材。
【0008】
項4.前記発泡セルの水平方向の外径に対する垂直方向の外径の平均のアスペクト比が、0.5~10である、項1から3のいずれかに記載の表面材。
【0009】
項5.前記熱可塑性樹脂は、ABS樹脂、ASA樹脂、AES樹脂、及びSAS樹脂、及びアクリル樹脂の少なくとも1つを含む樹脂によって形成されている、項1から4のいずれかに記載の表面材。
【0010】
項6.破断時の伸長粘度が、200℃において、1×104~2×106Pa・sである、項1から5のいずれかに記載の表面材。
【0011】
項7.木粉がさらに含有されている、項1から6のいずれかに記載の表面材。
【0012】
項8.前記木粉の平均径は、30~400μmである、項7に記載の表面材。
【0013】
項9.前記熱可塑性樹脂100重量%に対し、前記木粉が5~20重量%含有されている、項7または8に記載の表面材。
【0014】
項10.厚みが、100~500μmである、項1から9のいずれかに記載の表面材。
【0015】
項11.前記表面材に、幅が1~10mm、高さが0.1~1mm、曲率半径が0.3~10mmの凹凸が、連続的に形成されている、項1から10のいずれかに記載の表面材。
【0016】
項12.前記表面材の凹凸の表面に、さらに、幅が0.05~0.5mm、高さが0.05~0.2mm、曲率半径が0.01~0.1mmの凹凸が、ランダム且つ連続的に形成されている、項11に記載の表面材。
【0017】
項13.外装床材の基材上に配置される表面材の製造方法であって、
熱可塑性樹脂と、物理発泡剤を内包したカプセルとを混練し、押出成形によって成形することで前記表面材を形成するステップを備え、
前記熱可塑性樹脂100重量%に対し、前記物理発泡剤を内包したカプセルが1~3重量%含有されている、外装床材の表面材の製造方法。
【0018】
項14.前記熱可塑性樹脂及び前記カプセルとともに、木粉を混練し、
前記熱可塑性樹脂100重量%に対し、前記木粉が5~20重量%、含有されている項13記載の外装床材の表面材の製造方法。
【0019】
項15.前記表面材に、CO2レーザーを照射することにより、幅が0.05~0.2mm、高さが0.03~0.1mm、曲率半径が0.01~0.1mmの凹凸を連続的に付与するステップをさらに備えている、項12に記載の外装床材の表面材の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、木質感を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る外装床材の断面図である。
図2】表面材の拡大断面図である。
図3】破泡が生じている表面材の例を示す写真である。
図4】表面材の表面の例を示す断面図である。
図5】表面材の表面の例を示す断面図である。
図6】摩擦試験前の実施例及び比較例の光沢度及び表面粗さである。
図7】摩擦試験後の実施例及び比較例の光沢度及び表面粗さである。
図8】実施例のSEMによる断面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る表面材が積層された外装床材の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は外装床材の断面図である。
【0023】
図1に示すように、この外装床材は、板状の基材1と、その上面に積層された表面材2とを備えている。この外装床材は、例えば、屋外のデッキ材などの床材として用いることができる。以下、これらについて詳細に説明する。
【0024】
<1.基材>
基材1は、例えば、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリロニトリル共重合体(ASA)、アクリロニトリル/エチレン-プロピレン-ジエン/スチレン共重合体(AES)、シリコン・アクリロニトリル・スチレン等が挙げられる。なお、後述する表面材と同じ発泡セルを含む材料で形成することもできる。
【0025】
基材1の厚みは特には限定されないが、例えば、1~50mmとすることができる。
【0026】
<2.表面材>
表面材2は、熱可塑性樹脂を含有し、物理発泡剤により発泡したセルが形成されており、発砲セルは表面材2の表面において破泡している。また、必須ではないが、手触りでの木質感を向上するには、木粉を含有させてもよい。
【0027】
<2-1.熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂は、特には限定されないが、公知の熱可塑性樹脂を適宜使用することができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、フッ素系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル-エチレン-スチレン樹脂(AES樹脂)、アクリレート-スチレン-アクリロニトリル樹脂(ASA樹脂)、シリコン-アクリロニトリル-スチレン樹脂(SAS樹脂)、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンオキサイド、エチレン-酢酸ビニル共重合体等の単一あるいは複数が含まれている熱可塑性樹脂を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂の中で、耐衝撃性や剛性、耐候性の観点から、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、SAS樹脂、アクリル樹脂あるいはこれらの少なくとも1つを含む混合樹脂が好適である。
【0028】
<2-2.木粉>
木粉は、特には限定されないが、例えば、針葉樹、広葉樹、ラワン材等の木材の粉砕物、あるいは樹皮、穀物殻、廃材など粉砕物を使用することができる。木粉の径は特には限定されないが、例えば、平均径が30~400μmのものを使用することができる。
【0029】
木粉の含有量は、熱可塑性樹脂100重量%に対し、5~20重量%とすることができ、10~15重量%であることが好ましい。これは、木粉の含有量が5重量%より小さいと、手触りでの木質感が低くなり、20重量%より大きいと、経時劣化により木粉が表面より脱落し、それによってできた穴が見た目の木質感を劣化させてしまうことによる。
【0030】
<2-3.添加物>
本発明に係る表面材には、例えば、着色剤、加工性や成形性向上のための滑剤、加工助剤、その他、光安定剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤などの公知の他の添加剤を添加することができる。
【0031】
着色剤としては、アゾ系、アゾメチン系、メチン系、インダスロン系、アントラキノン系、ピランスロン系、フラバンスロン系、ベンゼンスロン系、フタロシアニン系、キノフタロン系、ペリレン系、ペリノン系、ジオキサジン系、チオインジゴ系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ピルールピロール系、キナクリドン系等の有機顔料、カーボンブラック、グラファイト、チタンブラック、黒色酸化鉄等の黒色顔料等が挙げられる。また、白色顔料( 例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛等) 、黄色顔料( 例えば、カドミイエロー、黄鉛、チタンイエロー、ジンククロメート、黄土、黄色酸化鉄等) 、赤色顔料( 例えば、赤口顔料、アンバー、赤色酸化鉄、カドミウムレッド等)、青色顔料( 例えば、紺青、群青、コバルトブルー等)、緑色顔料(例えば、クロムグリーン等)等が挙げられる。
【0032】
滑剤としては、シリコーン化合物、例えばアルキルシロキサン、アルキルフェニルシロキサン及びアルキルハイドロジェンシロキサンなどが挙げられる。
ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛及びオクチル酸亜鉛などの脂肪酸金属塩が挙げられる。
【0033】
加工助剤としては、アクリル加工助剤、アクリレートコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、メチルメタクリレート-スチレン-ビニルアセテートコポリマー等が挙げられる。
【0034】
光安定剤、紫外線防止剤としては、2-( 2′- ヒドロキシ-5′-メチルフェニル)-
ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-(2′-ヒドロ
キシ-5′-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2′ -ヒドロSキシ-
3,5′-ジ-tert-ブチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2′-ヒドロキシ-
3,5′-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2′-ヒ
ドロキシ-3′-tert-ブチル-5′-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール
、2- ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、ポリ[1-(2′-ヒドロキシエチル)-
2 ,2 ,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジルサクシネート] 、ビス(2 ,2 ,6 ,6-テトラメチル-4-ピペリジン)セバケート、2 -ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-フェニル-1 H-ベンゾ[ d ]イミダゾール-5-スルホン酸、2-(2′-ヒドロキシ-3′-5′-ジ-tert-ブチル) ベンゾト
リアゾール、2,2′-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン光
安定剤(HALS)、二酸化チタンが挙げられる。
【0035】
酸化防止剤としては、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、オクタデシル3-(3,5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリス-(2,4-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジドデシル3,3-チオジプロピネート、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ヒンダードフェノール、第2級芳香族アミン、ベンゾフラノン等が挙げられる。
【0036】
帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシルエチレン誘導体、ソルビタン酸脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン酸脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等のノニオン系帯電防止剤、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン系帯電防止剤、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム等のアニオン系帯電防止剤、ピリジニウム塩、第1~3級アミノ基等のカチオン性基を有するカチオン性帯電防止剤、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、スルホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン性帯電防止剤、アミノ酸帯電防止剤、アミノ硫酸エステル帯電防止剤等の両性帯電防止剤、アミノアルコール帯電防止剤、ポリエチレングリコール帯電防止剤等のノニオン性帯電防止剤、これらの帯電防止剤を高分子量化した高分子型帯電防止剤などが挙げられる。
【0037】
<2-4.発泡セル>
本発明に係る表面材2は、物理発泡剤により発泡した発泡セルが含有されており、表面材2の面方向及び厚み方向に分散している。発泡セル21の平均径は、例えば、30~200μmであることが好ましく、50~150μmであることがさらに好ましい。発泡セル21の平均径は、次のように算出することができる。すなわち、表面材2の断面SEM写真を100倍に拡大し、目視で10個の発泡セルの直径(最大外径)を測定する。そして、それら10個の直径の平均値を発泡セルの平均径とした。このような範囲であると、表面に天然木のような風合いを形成することができる。
【0038】
図2に示すように、発泡セル21の水平方向の外径WDに対する垂直方向の外径VDの平均のアスペクト比は、0.5~10であることが好ましく、1~5であることがさらに好ましい。アスペクト比は、次のように算出することができる。すなわち、表面材2の断面SEM写真を30倍に拡大し、目視で隣接する10個の発泡セルを選択し、10個の発泡セルの水平方向の最大外径WD及び垂直方向の最大外径VDをそれぞれ測定し、各発泡セルのアスペクト比を算出する。そして、それら10個のアスペクト比の平均値を発泡セルのアスペクト比とした。
【0039】
図2に示すように、隣接する発泡セルの距離Lは、20~400μmであることが好ましく、50~300μmであることがさらに好ましい。発泡セルの距離は、次のように算出することができる。すなわち、表面材2の断面SEM写真を100倍に拡大し、目視で隣接する10個の発泡セル21を選択し、隣り合う発泡セル間の距離を測定し、その平均を発泡セル間の距離とした。
【0040】
また、この表面材2に、発泡セル21は、断面SEM写真で1mm2当たり、5~60個含有されていることが好ましく、20~50個含有されていることがさらに好ましい。
【0041】
以上のような発泡セル21は、例えば、物理発泡剤を外殻で内包した熱膨張性マイクロカプセルなどにより生成することができる。例えば、上述した熱可塑性樹脂と、木粉と、物理発泡剤を内包した熱膨張性マイクロカプセルとを押出機のホッパーに投入し、溶融混練した後、ダイを経て空気中に押し出すことで、発泡セル21を有する表面材2を成形することができる。このとき、熱可塑性樹脂100重量%に対し、木粉を5~20重量%、物理発泡剤を内包した熱膨張性マイクロカプセルを0.5~3重量%含有することができる。これは、物理発泡剤の含有量が0.5重量%より小さいと、凹凸が小さくなるため木質感の付与が難しく、3重量%より大きいと破泡が大きく基材が露出してしまったり、木の自然な風合いが発現しなかったりすることによる。
【0042】
物理発泡剤とは、加熱や圧力の低下で発生や膨張するガス成分により発泡層を構成させる発泡手法で使用される発泡剤であり、物理発泡剤として主には液化ガス等が示され、特に熱膨張性マイクロカプセル外郭の軟化点温度以下でガス状になることが好ましく、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、n-ブタン、イソブタン、n-ブテン、イソブテン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n-へキサン、ヘプタン、イソオクタン、石油エーテル等の低分子量炭化水素、CCl3F、CCl2F2、CClF3、CClF2-CClF2等のクロロフルオロカーボン(CFC)やフルオロカーボン(FC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル-n-プロピルシラン等のテトラアルキルシラン等が挙げられる。他にも二酸化炭素、窒素、ヘリウムなどの材料を超臨界状態にて物理発泡を行う手法も挙げられる。なかでも、n-ブタン、イソブタン、n-ブテン、イソブテン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n-へキサン、ヘプタン、イソオクタン、石油エーテル、及び、HFC,HFOが取り扱い性や膨張特性、環境側面などから好ましい。これらの物理発泡剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合や併用してもよい。
【0043】
製造時には、以上のような物理発泡剤を収容された熱膨張性マイクロカプセルを、上述した熱可塑性樹脂に含有させることができる。熱膨張性マイクロカプセルとしては、外殻としての合成樹脂カプセルの中に、上述した物理発泡剤を内包させたものを用いることが好ましい。特に、上述した押出成形時に、内包された物理発泡剤が膨張することによりマイクロカプセルの外殻を膨張させるが、成形時の温度条件によっては溶融し、球形状を維持し成形が完了するものを用いることが好ましい。
【0044】
熱膨張性マイクロカプセル外殻の素材としては、熱可塑性樹脂が加熱溶融性や膨張時の伸長粘度特性の観点から用いられ、特にニトリル系モノマーをモノマー成分の1つとした共重合体が好ましく、中でもアクリロニトリルやメタクリロニトリルが特に好ましい。これらと共重合する他のモノマー成分として、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル、及び塩化ビニリデン等を挙げることができる。また、これらの熱可塑性樹脂は単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもかまわない。
【0045】
発砲セルは、表面材2の表面において破泡しているが、破泡とは、表面材2を上から観察し、1cm2あたりに表面材2の押出方向に0.1mm以上且つ1個以上の露出した空隙を有する状態をいう。例えば、図3の○で囲んだ部分が破泡を示している。
【0046】
<2-5.表面材の物性>
表面材2の厚みは特には限定されないが、例えば、100~500μmとすることができる。
【0047】
表面材2は、破断時の伸長粘度が、200℃において、1×104~2×106Pa・sであることが好ましい。この伸長粘度が1×105Pa・sより大きいと連続発泡となり、セル径が大きくなってしまい、また1×104Pa・sより小さいと、セル径が小さくなることや表面が破泡しづらくなり、天然木の風合いが得られなくなる。なお、伸長粘度は、以下の条件で測定することができる。
・測定装置:ARES-G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)
・変形モード:1軸伸長
・測定温度:200℃
・ひずみ速度:0.1S-1、1S-1、10S-1
・環境:N2
【0048】
<2-6.表面材の表面性状>
表面材2の表面には、例えば、図4に示すように、凹凸をランダム且つ連続的に形成することができる。このような凹凸の大きさは特には限定されていないが、例えば、幅(隣接する凹部間の距離)が1~10mm、高さ(凹部から突部までの距離)が0.1~1mm、曲率半径(凸部の先端の曲率半径)が0.3~10mmの凹凸とすることができる。このような凹凸を形成することで、表面材2の光沢感が抑えられ木質感を向上させることができる。
【0049】
また、図5に示すように、上記の凹凸の表面に、さらに、微細な凹凸をランダム且つ連続的に形成することもできる。このような微細な凹凸の大きさは特には限定されないが、例えば、幅が0.05~0.5mm、高さが0.05~0.2mm、曲率半径が0.01~0.1mmの凹凸とすることができる。このような微細な凹凸を形成することで、光沢感がさらに抑制され、より木質感を向上させることができる。
【0050】
なお、以上のような凹凸形状は次に説明する押出成形の金型により付与することができる。あるいは、押出成形後の表面材2の表面にCO2レーザーを照射することで、上記の凹凸を形成することができる。
【0051】
<2-7.外装床材の製造方法>
上記のように構成された外装床材は、次のように製造することができる。一例として、基材1用の材料及び表面材2用の材料を共押出し、金型内で接合することで、基材1と表面材2が一体化された外装床材を製造することができる。なお、基材1と表面材2とを別々に押出成形し、その後、接着剤等で接合することもできる。
【0052】
<3.特徴>
本実施形態に係る表面材2によれば、熱可塑性樹脂を含有し、物理発泡剤により発泡した発泡セル21が形成されている。また、発泡セル21は、平均径が30~200μmであり、表面材2の面方向及び厚み方向に分散するとともに、表面材2の表面において破泡しているため、木質感を付与することができる。また、発泡セル21は、表面材2の厚み方向にも分散しているため、耐候劣化や摩耗により、表面材2の内部の発泡セルが露出することで引き続き表面に凹凸が形成されるため、木質感を維持することができる。
【実施例0053】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0054】
実施例1に係る表面材は、次のように準備した。まず、熱可塑性樹脂として木粉入りASA樹脂を準備した。このとき、熱可塑性樹脂100重量%に対し、木粉を5重量%、物理発泡剤を内包する熱膨張性マイクロカプセルとして積水化学工業株式会社製アドバンセルP501を1重量%添加し、これを押出機に投入した。そして、これらを溶融混練し、表面が平らなシート状に押し出して表面材を成形した。この表面材の厚みは200μmであった。また、発泡セルの平均径は、100μmであった。
【0055】
熱可塑性樹脂として、木粉を含まないASA樹脂を用いること以外は、上記実施例1と同様の実施例2を作製した。
【0056】
また、比較例として、天然木であるSPF(比較例1)、桐(比較例2)、人工木(比較例3:積水化学工業株式会社製リファーレEX)を準備した。
【0057】
以上の実施例1,2に対し、メタルウェザー試験機を用いた環境下で、160時間毎に摩耗試験を行った。摩擦試験では、実施例1,2及び比較例3を、サンドペーパー#1500で縦15回×横15回擦った。摩耗試験の前後、その前後で同一箇所において、光沢度と表面粗さを測定した。
【0058】
光沢度は、コニカミノルタ社製GM-268を用い、測定角度85°で測定した。表面粗さは、東京精密社製SURF COM1800Gにより測定した。光沢度及び表面粗さは、天然木の風合いを評価するものとして用いる。
【0059】
結果は、以下の表1,図6及び図7に示す通りである。また、実施例1の摩擦試験前の断面の写真を図8に示す。
【表1】
【0060】
表1及び図6に示すように、摩擦試験前においては、天然木(比較例1,2)と実施例1,2では、光沢度及び表面粗さが近似している。図8に示すように、実施例1においては、表面材の表面において発泡セルが破泡することで、天然木の風合いを表していると考えられる。一方、人工木においては、光沢度が低く、表面粗さが大きくなっており、天然木及び実施例1,2とは反対の傾向を示している。これは、人工木は、一般的に、意匠性向上のため押出成形で成形された平滑面を2次加工において、サンドペーパーなどを用いて粗し、毛羽感を出しているためである。
【0061】
表1及び図7に示すように、摩擦試験後において、人工木は、耐候劣化や摩擦により、摩擦試験前の毛羽感がなくなり、元の平滑面に近い状態に戻っており、これによって、光沢度が高くなり、表面粗さが小さくなっている。したがって、天然木のような風合いはなくなっている。さらに、摩耗したところとしていないところとで光沢度と表面粗さの差が大きく、見た目、劣化していると感じさせやすい。
【0062】
一方、実施例1,2では、光沢度が低くなっているが、表面粗さはやや高くなる程度になっている。これは、発泡セルが表面材の面方向及び厚み方向に分散しているからである。すなわち、摩擦試験前の実施例1,2においては、上記のように、表面材の表面において発泡セルが破泡して凹凸が形成されているが、耐候劣化や摩耗により、表面材の内部の発泡セルが露出することで引き続き凹凸が形成されるためである。これにより、摩擦試験後でも、天然木に近い光沢度と表面粗さを示しているので、天然木の風合いを表すことができる。
【符号の説明】
【0063】
1 基材
2 表面層
21 セル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8