IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051794
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】樹脂フィルム及び銅張積層板
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20230404BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230404BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20230404BHJP
   C08L 23/18 20060101ALI20230404BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20230404BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20230404BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B32B27/00 B
B32B7/02
C08L23/18
C08L27/12
C08L71/12
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148299
(22)【出願日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2021161357
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】川原 良介
(72)【発明者】
【氏名】内田 徳之
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA13
4F071AA21
4F071AA27
4F071AA48
4F071AA69
4F071AA75
4F071AA84
4F071AA86
4F071AF40Y
4F071AF61Y
4F071AG12
4F071AH13
4F071BA01
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
4F100AB17
4F100AB17B
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK02
4F100AK02A
4F100AS00
4F100AS00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100EJ37
4F100EJ42
4F100GB43
4F100JA02
4F100JA02A
4F100JA04
4F100JA04A
4F100JA05
4F100JA05A
4F100JG05
4J002AA00W
4J002AA00X
4J002AA00Y
4J002AA01Y
4J002BB16X
4J002BB17X
4J002BK00X
4J002CF04W
4J002CF05W
4J002CF08W
4J002CH07X
4J002GQ00
4J002GQ05
(57)【要約】
【課題】伝送信号が高周波数化した場合にも挿入損失を抑えることができ、ハンダリフロー耐性にも優れた樹脂フィルム、及び、該樹脂フィルムを用いた銅張積層板を提供する。
【解決手段】液晶ポリマー(LCP)と、前記液晶ポリマー(LCP)以外の樹脂(A)とを含有する樹脂フィルムであって、40GHzでの誘電正接Dfが0.002未満であり、MD方向とTD方向との線膨張率の差が30ppm/K以下である樹脂フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリマー(LCP)と、前記液晶ポリマー(LCP)以外の樹脂(A)とを含有する樹脂フィルムであって、
40GHzでの誘電正接Dfが0.002未満であり、
MD方向とTD方向との線膨張率の差が30ppm/K以下である
ことを特徴とする樹脂フィルム。
【請求項2】
前記樹脂(A)は、40GHzでの誘電正接Dfが0.0015以下である樹脂(A1)を含むことを特徴とする請求項1記載の樹脂フィルム。
【請求項3】
前記MD方向の線膨張率及び前記TD方向の線膨張率からなる群より選ばれる少なくとも1つが50ppm/K以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂フィルム。
【請求項4】
前記樹脂(A)は、ガラス転移温度(Tg)が270℃未満である樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂フィルム。
【請求項5】
前記樹脂(A)は、融点(Tm)が270℃以上である樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂フィルム。
【請求項6】
前記樹脂(A1)は、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)及びポリフェニレンエーテル(PPE)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂フィルム。
【請求項7】
前記樹脂(A1)は、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)を含むことを特徴とする請求項6記載の樹脂フィルム。
【請求項8】
前記樹脂フィルムを構成する樹脂全体に占める前記液晶ポリマー(LCP)の含有量が50重量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂フィルム。
【請求項9】
表層と基材層とを有し、前記表層が少なくとも前記樹脂(A)を含有し、前記基材層が少なくとも前記液晶ポリマー(LCP)を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂フィルム。
【請求項10】
前記表層における前記樹脂(A)の含有量が50重量%以上であることを特徴とする請求項9記載の樹脂フィルム。
【請求項11】
液晶ポリマー(LCP)と、前記液晶ポリマー(LCP)以外の樹脂(A)とを含有する樹脂フィルムであって、
40GHzでの誘電正接Dfが0.002未満であり、
MD方向とTD方向との線膨張率の差が30ppm/K以下であり、
前記樹脂(A)は、ガラス転移温度(Tg)が270℃未満であり、融点(Tm)が270℃以上である樹脂を含む
ことを特徴とする樹脂フィルム。
【請求項12】
請求項1又は11に記載の樹脂フィルムを含む、銅張積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルム及び銅張積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に用いられる配線基板として、例えば、フレキシブルプリント基板(FPC)がある。フレキシブルプリント基板は、絶縁性のベースフィルム上に銅箔を積層した銅張積層板(CCL)を用い、例えば、銅箔のエッチング処理等を行うことにより銅配線を形成し、銅配線の保護を目的として更にカバーレイフィルムを貼り合わせること等により作製される。銅張積層板に用いられるベースフィルムには、一般的にポリイミド(PI)、液晶ポリマー(LCP)等が用いられている(例えば、特許文献1、2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-188339号公報
【特許文献2】特開2016-205967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子機器の分野ではより大容量のデータをより高速に送受信することが求められ、いわゆる第5世代移動通信システム(5G)の実用化も進められており、これに伴い、伝送信号の高周波数化が進められている。しかしながら、高周波数化により、伝送信号の減衰量(「挿入損失」という)が大きくなるという問題が生じている。銅張積層板に用いられるベースフィルムとしても、このような挿入損失を抑えることができ、伝送信号が高周波数化した場合にも好適に使用できる新たなフィルムが求められている。
【0005】
本発明は、伝送信号が高周波数化した場合にも挿入損失を抑えることができ、ハンダリフロー耐性にも優れた樹脂フィルム、及び、該樹脂フィルムを用いた銅張積層板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示1は、液晶ポリマー(LCP)と、前記液晶ポリマー(LCP)以外の樹脂(A)とを含有する樹脂フィルムであって、40GHzでの誘電正接Dfが0.002未満であり、MD方向とTD方向との線膨張率の差が30ppm/K以下である樹脂フィルムである。
本開示2は、前記樹脂(A)が、40GHzでの誘電正接Dfが0.0015以下である樹脂(A1)を含む、本開示1の樹脂フィルムである。
本開示3は、前記MD方向の線膨張率及び前記TD方向の線膨張率からなる群より選ばれる少なくとも1つが50ppm/K以下である、本開示1又は2の樹脂フィルムである。
本開示4は、前記樹脂(A)は、ガラス転移温度(Tg)が270℃未満である樹脂を含む、本開示1、2又は3の樹脂フィルムである。
本開示5は、前記樹脂(A)が、融点(Tm)が270℃以上である樹脂を含む、本開示1、2、3又は4の樹脂フィルムである。
本開示6は、前記樹脂(A1)が、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)及びポリフェニレンエーテル(PPE)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む、本開示1、2、3、4又は5の樹脂フィルムである。
本開示7は、前記樹脂(A1)が、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)を含む、本開示6の樹脂フィルムである。
本開示8は、前記樹脂フィルムを構成する樹脂全体に占める前記液晶ポリマー(LCP)の含有量が50重量%以下である、本開示1、2、3、4、5、6又は7の樹脂フィルムである。
本開示9は、表層と基材層とを有し、前記表層が少なくとも前記樹脂(A)を含有し、前記基材層が少なくとも前記液晶ポリマー(LCP)を含有する、本開示1、2、3、4、5、6、7又は8の樹脂フィルムである。
本開示10は、前記表層における前記樹脂(A)の含有量が50重量%以上である、本開示9の樹脂フィルムである。
本開示11は、液晶ポリマー(LCP)と、前記液晶ポリマー(LCP)以外の樹脂(A)とを含有する樹脂フィルムであって、40GHzでの誘電正接Dfが0.002未満であり、MD方向とTD方向との線膨張率の差が30ppm/K以下であり、前記樹脂(A)は、ガラス転移温度(Tg)が270℃未満であり、融点(Tm)が270℃以上である樹脂を含む、樹脂フィルムである。
本開示12は、本開示1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11に記載の樹脂フィルムを含む、銅張積層板である。
以下、本発明を詳述する。
【0007】
挿入損失は周波数に比例して大きくなるため、伝送信号が高周波数化すると、挿入損失が大きくなることは避けられない問題である。高周波数帯(例えば、1~80GHz付近)での挿入損失を抑えるためには、例えば、銅張積層板に用いられるベースフィルムとして、高周波数帯での誘電特性に優れたフィルムを用いることが考えられる。即ち、挿入損失は、周波数に加えて、導通部分の周辺に存在する絶縁性部分の誘電率Dk及び誘電正接Dfにも影響されるため、高周波数帯において誘電率Dk及び/又は誘電正接Dfが小さいフィルムを用いることで、挿入損失を抑えることが期待される。
【0008】
しかしながら、高周波数帯において誘電率Dk及び/又は誘電正接Dfが小さいフィルムは、銅張積層板から配線基板を作製する過程で行われるハンダリフロー等の工程で高温に晒されると変形しやすく、配線基板に反りを生じさせることがあった。
【0009】
本発明者らは、樹脂フィルムを構成する樹脂として、液晶ポリマー(LCP)に加えて液晶ポリマー(LCP)以外の樹脂(A)を併用したうえで、樹脂フィルムの40GHzでの誘電正接Dfを一定値以下に調整し、かつ、樹脂フィルムのMD方向とTD方向との線膨張率の差を一定値以下に調整することを検討した。本発明者らは、このような樹脂フィルムであれば、伝送信号が高周波数化した場合にも挿入損失を抑えることができ、ハンダリフロー耐性にも優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の樹脂フィルムは、液晶ポリマー(LCP)と、上記液晶ポリマー(LCP)以外の樹脂(A)とを含有する。
上記液晶ポリマー(LCP)を含有することで、本発明の樹脂フィルムは、耐熱性が向上する。
【0011】
しかしながら、上記液晶ポリマー(LCP)は、強い配向性を有するポリマーである。このため、例えば、樹脂フィルムが上記液晶ポリマー(LCP)のみからなる場合、押出成形により製造すると、上記液晶ポリマー(LCP)がMD方向(Machine direction)へ配向しやすく、MD方向に比べてTD方向(Transverse direction)の線膨張率が非常に大きくなる。このような樹脂フィルムは、高温に晒されるとMD方向に比べてTD方向に大きく膨張してしまい、ハンダリフロー耐性に劣る。
これに対し、本発明の樹脂フィルムは、上記液晶ポリマー(LCP)に加えて上記液晶ポリマー(LCP)以外の樹脂(A)を含有することで、上記液晶ポリマー(LCP)のMD方向への配向が抑えられ、MD方向とTD方向との線膨張率の差が抑えられるため、ハンダリフロー耐性が向上する。なお、上記液晶ポリマー(LCP)のMD方向への配向を抑えるためには、上記液晶ポリマー(LCP)に加えて上記樹脂(A)を併用したうえで、樹脂フィルムを押出成形により製造する際にTD方向に延伸(例えば、延伸倍率1.5~5.0倍)を行うことがより好ましい。
【0012】
また、本発明の樹脂フィルムは、上記液晶ポリマー(LCP)に加えて上記液晶ポリマー(LCP)以外の樹脂(A)を含有することで、高周波数帯における誘電正接Dfが小さくなり、伝送信号が高周波数化した場合にも挿入損失を抑えることができる。
【0013】
上記液晶ポリマー(LCP)は、ある特定の温度範囲で液晶性を示すサーモトロピック液晶ポリマーであることが好ましい。
上記液晶ポリマー(LCP)は特に限定されず、例えば、液晶性芳香族ポリエステル樹脂、液晶性芳香族ポリエステルアミド樹脂、これら液晶性芳香族ポリエステル樹脂又は液晶性芳香族ポリエステルアミド樹脂を同一分子鎖中に部分的に含むポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの液晶ポリマー(LCP)は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0014】
上記液晶性芳香族ポリエステル樹脂は特に限定されず、例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル樹脂が挙げられる。
上記芳香族ヒドロキシカルボン酸は特に限定されず、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸、m-ヒドロキシ安息香酸、o-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、5-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸、これらの置換体又は誘導体等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、得られる液晶性芳香族ポリエステル樹脂の物性を調整しやすいことから、p-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸が好ましい。
【0015】
また、上記液晶性芳香族ポリエステル樹脂としては、上述したような芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族又は脂環式ジカルボン酸と、芳香族、脂環式又は脂肪族ジオールとからなるポリエステル樹脂も挙げられる。
上記芳香族又は脂環式ジカルボン酸は特に限定されず、上記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、これらの置換体又は誘導体等が挙げられる。上記脂環式ジカルボン酸としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等の炭素数8~12のジカルボン酸、これらの誘導体等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、得られる液晶性芳香族ポリエステル樹脂の物性を調整しやすいことから、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましい。
【0016】
上記芳香族、脂環式又は脂肪族ジオールは特に限定されず、上記芳香族ジオールとしては、例えば、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテル、これらの置換体又は誘導体等が挙げられる。上記脂環式ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノール、アダマンタンジオール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール等が挙げられる。上記脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、これらの誘導体等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、重合時の反応性に優れ、得られる液晶性芳香族ポリエステル樹脂の物性を調整しやすいことから、ハイドロキノン、4,4’-ジヒドロキシビフェニルが好ましい。
【0017】
上記液晶性芳香族ポリエステルアミド樹脂は特に限定されず、例えば、上述したような芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ヒドロキシアミン又は芳香族ジアミンとからなるポリエステルアミド樹脂が挙げられる。
上記芳香族ヒドロキシアミンは特に限定されず、例えば、p-アミノフェノール、m-アミノフェノール、4-アミノ-1-ナフトール、5-アミノ-1-ナフトール、8-アミノ-2-ナフトール、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニル、これらの置換体又は誘導体等が挙げられる。上記芳香族ジアミンは特に限定されず、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、これらの置換体又は誘導体等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0018】
また、上記液晶性芳香族ポリエステルアミド樹脂としては、上述したような芳香族ヒドロキシカルボン酸と、上述したような芳香族ヒドロキシアミン又は芳香族ジアミンと、上述したような芳香族又は脂環式ジカルボン酸と、上述したような芳香族、脂環式又は脂肪族ジオールとからなるポリエステルアミド樹脂も挙げられる。
【0019】
上記液晶ポリマー(LCP)の流動開始温度は特に限定されないが、好ましい下限は270℃、好ましい上限は400℃であり、より好ましい下限は280℃、より好ましい上限は380℃である。上記流動開始温度が上記範囲内であれば、高耐熱性と成形性とを兼ね備えた樹脂となる。なお、本明細書では、LCPの上記流動開始温度をLCPの融点ともいう。
なお、流動開始温度は、毛細管レオメーターを用いて、9.8MPa(100kgf/cm)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリマー(LCP)を溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度である。
【0020】
上記液晶ポリマー(LCP)の溶融粘度は特に限定されないが、上記流動開始温度より30℃高い温度において、径0.5mm及び長さ10mmのキャピラリーを使用し、せん断速度1000秒-1で測定した溶融粘度の好ましい下限は10Pa・s、好ましい上限は600Pa・sである。上記溶融粘度が上記範囲内であれば、高耐熱性と成形性とを兼ね備えた樹脂となる。
【0021】
上記液晶ポリマー(LCP)の溶融張力は特に限定されないが、上記流動開始温度より30℃高い温度において、径0.5mm及び長さ10mmのキャピラリーを使用し、引取速度42m/分で測定した溶融張力の好ましい下限は1mN、好ましい上限は20mNである。上記溶融張力が上記範囲内であれば、高耐熱性と成形性とを兼ね備えた樹脂となる。
なお、溶融張力は、例えば、キャピログラフ(東洋精機製作所社製)等を用いて測定できる。
【0022】
上記液晶ポリマー(LCP)の市販品として、例えば、JX液晶社製の商品名ザイダー(登録商標)、東レ社製のシベラス(登録商標)、ポリプラスチックス社製の商品名ラペロス等が挙げられる。
【0023】
上記液晶ポリマー(LCP)の含有量は特に限定されないが、本発明の樹脂フィルムを構成する樹脂全体に占める上記液晶ポリマー(LCP)の含有量の好ましい上限が50重量%である。上記液晶ポリマー(LCP)の含有量が50重量%以下であれば、樹脂フィルムは、伝送信号が高周波数化した場合にも挿入損失をより抑えることができ、ハンダリフロー耐性もより向上する。上記液晶ポリマー(LCP)の含有量のより好ましい上限は40重量%、更に好ましい上限は30重量%である。
上記液晶ポリマー(LCP)の含有量の下限は特に限定されないが、樹脂フィルムの耐熱性をより向上させる観点から、本発明の樹脂フィルムを構成する樹脂全体に占める上記液晶ポリマー(LCP)の含有量の好ましい下限は10重量%、より好ましい下限は20重量%、更に好ましい下限は25重量%である。
【0024】
上記樹脂(A)は特に限定されず、樹脂フィルムの40GHzでの誘電正接Df、及び、MD方向とTD方向との線膨張率の差を後述する範囲に調整できればよいが、40GHzでの誘電正接Dfが0.0015以下である樹脂(A1)を含むことが好ましい。上記樹脂(A1)は1種のみが単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも 、上記樹脂(A)において上記樹脂(A1)の比率が80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましく、上記樹脂(A)が上記樹脂(A1)のみからなることが特に好ましい。40GHzでの誘電正接Dfが0.0015以下である樹脂(A1)を含むことにより、樹脂フィルムは、伝送信号が高周波数化した場合にも挿入損失をより抑えることができる。上記樹脂(A1)の40GHzでの誘電正接Dfは0.0012以下であることがより好ましく、0.001以下であることが更に好ましく、0.0006以下であることが特に好ましい。
上記樹脂(A1)の40GHzでの誘電正接Dfの下限は特に限定されず、小さいほど好ましい。上記樹脂(A1)の40GHzでの誘電正接Dfの好ましい下限は0.0001である。
【0025】
上記樹脂(A)は、ガラス転移温度(Tg)が270℃未満である樹脂を含むことが好ましく、上記樹脂(A1)のTgが270℃未満であることがより好ましい。上記ガラス転移温度(Tg)が270℃未満であれば、押出成形により製造する際に樹脂フィルムの延伸を良好に行うことができ、その結果、樹脂フィルムのハンダリフロー耐性がより向上する。上記ガラス転移温度(Tg)は250℃以下であることがより好ましく、220℃以下であることが更に好ましい。
上記ガラス転移温度(Tg)の下限は特に限定されないが、樹脂フィルムの延伸を良好に行う観点から、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることが更に好ましい。
【0026】
上記樹脂(A)は、融点(Tm)が270℃以上である樹脂を含むことが好ましく、上記樹脂(A1)のTmが270℃以上であることがより好ましい。上記融点(Tm)が270℃以上であれば、樹脂フィルムを押出成形により製造する際に延伸を良好に行うことができ、樹脂フィルムのハンダリフロー耐性がより向上する。上記融点(Tm)は280℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることが更に好ましい。
上記融点(Tm)の上限は特に限定されないが、樹脂フィルムの延伸を良好に行う観点から、400℃以下であることが好ましく、360℃以下であることが更に好ましい。
また、上記樹脂(A)は、ガラス転移温度(Tg)が270℃未満であり、かつ、融点(Tm)が270℃以上である樹脂を含むことがより好ましい。なかでも上記樹脂(A1)のTgが270℃未満であり、かつTmが270℃以上であることが好ましい。
【0027】
上記樹脂(A)は特に限定されないが、上記40GHzでの誘電正接Df、上記ガラス転移温度(Tg)、上記融点(Tm)等が上記範囲を満たす樹脂(A1)が好ましく、次のような樹脂が好適に用いられる。即ち、上記樹脂(A1)は、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)及びポリフェニレンエーテル(PPE)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。なかでも、上記40GHzでの誘電正接Df、上記ガラス転移温度(Tg)、上記融点(Tm)等が好ましい範囲となりやすいことから、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)及びポリフェニレンエーテル(PPE)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂がより好ましい。エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)及びパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂が更に好ましい。
【0028】
上記シクロオレフィンポリマー(COP)とは、主鎖及び側鎖のうちの一方又は両方に環状オレフィンに由来する構成単位を有するポリマーである。
上記環状オレフィンは特に限定されず、多環式の環状オレフィンであってもよく、単環式の環状オレフィンであってもよい。
上記多環式の環状オレフィンは特に限定されず、例えば、ノルボルネン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブチルノルボルネン等のノルボルネン化合物が挙げられる。また、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン等のジシクロペンタジエン化合物も挙げられる。更に、テトラシクロドデセン、メチルテトラシクロドデセン、ジメチルシクロテトラドデセン、トリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン等も挙げられる。
上記単環式の環状オレフィンは特に限定されず、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロドデカトリエン等が挙げられる。
上記シクロオレフィンポリマー(COP)は1種のみが単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0029】
上記シクロオレフィンコポリマー(COC)とは、上述したような環状オレフィンに由来する構成単位と、エチレン、α-オレフィン等の非環状オレフィンに由来する構成単位とを有するポリマーである。
上記α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素数3~20の直鎖状α-オレフィンが挙げられる。また、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン等の炭素数4~20の分岐状α-オレフィンも挙げられる。
上記シクロオレフィンコポリマー(COC)は1種のみが単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0030】
上記シクロオレフィンポリマー(COP)及び上記シクロオレフィンコポリマー(COC)のガラス転移温度(Tg)は特に限定されないが、好ましい下限は130℃、好ましい上限は190℃であり、より好ましい下限は140℃であり、更に好ましい下限は150℃である。上記ガラス転移温度(Tg)が上記範囲内であれば、押出成形により製造する際に樹脂フィルムの延伸を良好に行うことができ、その結果、樹脂フィルムのハンダリフロー耐性がより向上する。
【0031】
上記シクロオレフィンポリマー(COP)の市販品として、例えば、日本ゼオン社製の商品名ZEONOR(登録商標)、JSR社製の商品名ARTON(登録商標)等が挙げられる。上記シクロオレフィンコポリマー(COC)の市販品として、例えば、ポリプラスチックス社製の商品名TOPAS(登録商標)(ノルボルネンとエチレンとが共重合したシクロオレフィンコポリマー)、三井化学社製の商品名APEL(登録商標)等が挙げられる。
【0032】
上記エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)とは、エチレン(C)とテトラフルオロエチレン(四フッ化エチレン、C)の共重合体である。
上記エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)のガラス転移温度(Tg)は特に限定されないが、好ましい下限は40℃、好ましい上限は120℃であり、より好ましい下限は60℃、より好ましい上限は100℃である。上記ガラス転移温度(Tg)が上記範囲内であれば、押出成形により製造する際に樹脂フィルムの延伸を良好に行うことができ、その結果、樹脂フィルムのハンダリフロー耐性がより向上する。
上記エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)は1種のみが単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0033】
上記エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)の市販品として、例えば、AGC社製のFluon ETFE等が挙げられる。
【0034】
上記パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)とは、テトラフルオロエチレン(四フッ化エチレン、C)とパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体である。
上記パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)のガラス転移温度(Tg)は特に限定されないが、好ましい下限は70℃、好ましい上限は110℃であり、より好ましい下限は80℃であり、更に好ましい下限は100℃である。上記ガラス転移温度(Tg)が上記範囲内であれば、押出成形により製造する際に樹脂フィルムの延伸を良好に行うことができ、その結果、樹脂フィルムのハンダリフロー耐性がより向上する。
上記パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)は1種のみが単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0035】
上記パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)の市販品として、AGC社製のFluon+TM EA-2000(登録商標)等が挙げられる。
【0036】
上記ポリフェニレンエーテル(PPE)とは、芳香族ポリエーテルの重合体である。上記ポリフェニレンエーテル(PPE)には、ポリマーアロイとしてポリスチレン、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド等が含有されていてもよい。
上記ポリフェニレンエーテル(PPE)のガラス転移温度(Tg)は特に限定されないが、好ましい下限は150℃、好ましい上限は220℃であり、更に好ましい下限は170℃である。上記ガラス転移温度(Tg)が上記範囲内であれば、押出成形により製造する際に樹脂フィルムの延伸を良好に行うことができ、その結果、樹脂フィルムのハンダリフロー耐性がより向上する。
上記ポリフェニレンエーテル(PPE)は1種のみが単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
上記ポリフェニレンエーテル(PPE)の市販品として、例えば、SABIC社製のノリル、旭化成社製のザイロン、三菱エンジニアリングプラスチックス社製のユピエース等が挙げられる。
【0038】
上記樹脂(A)の含有量は特に限定されないが、本発明の樹脂フィルムを構成する樹脂全体に占める上記樹脂(A)の含有量の好ましい下限が50重量%である。上記液樹脂(A)の含有量が50重量%以上であれば、樹脂フィルムは、伝送信号が高周波数化した場合にも挿入損失をより抑えることができ、ハンダリフロー耐性もより向上する。上記樹脂(A)の含有量のより好ましい下限は60重量%、更に好ましい下限は70重量%である。
上記樹脂(A)の含有量の上限は特に限定されないが、樹脂フィルムの耐熱性をより向上させる観点から、本発明の樹脂フィルムを構成する樹脂全体に占める上記樹脂(A)の含有量の好ましい上限は90重量%、より好ましい上限は80重量%である。
【0039】
本発明の樹脂フィルムは、必要に応じて、更に、難燃剤、酸化防止剤、光安定化剤、金属不活性化剤、可塑剤、造核剤、透明化剤、帯電防止剤、滑剤等の添加剤を含有してもよい。
【0040】
本発明の樹脂フィルムは、40GHzでの誘電正接Dfが0.002未満である。これにより、本発明の樹脂フィルムは、伝送信号が高周波数化した場合にも挿入損失を抑えることができる。本発明の樹脂フィルムは、40GHzでの誘電正接Dfが0.0015以下であることが好ましく、0.001以下であることがより好ましい。
本発明の樹脂フィルムの40GHzでの誘電正接Dfの下限は特に限定されず、小さいほど好ましい。本発明の樹脂フィルムの40GHzでの誘電正接Dfの好ましい下限は0.0001である。
なお、40GHzでの誘電正接Dfは、例えば、PNAネットワークアナライザー(キーサイトテクノロジー社製)等を用い、JIS R1641に準拠して、40mm角の表層のサンプルについて25℃、40GHzで空洞共振法により測定することができる。
【0041】
本発明の樹脂フィルムの40GHzでの誘電正接Dfを上記範囲に調整する方法は特に限定されないが、上記液晶ポリマー(LCP)及び上記樹脂(A)の組成、物性、含有量等を調整する方法が好ましい。
【0042】
本発明の樹脂フィルムは、MD方向とTD方向との線膨張率の差が30ppm/K以下である。これにより、本発明の樹脂フィルムは、ハンダリフロー耐性が向上する。上記MD方向とTD方向との線膨張率の差は20ppm/K以下であることが好ましく、10ppm/K以下であることがより好ましい。なお、MD方向の線膨張率とTD方向の線膨張率とのいずれが大きくてもよい。
本発明の樹脂フィルムのMD方向とTD方向との線膨張率の差の下限は特に限定されず、小さいほど好ましく、MD方向とTD方向との線膨張率の差が0ppm/Kであってもよい。
【0043】
本発明の樹脂フィルムのMD方向の線膨張率は特に限定されず、上記MD方向とTD方向との線膨張率の差が上記範囲を満たしていればよいが、銅張積層板(CCL)を形成した際に銅配線との線膨張率の差を抑える観点から、好ましい上限は50ppm/Kである。本発明の樹脂フィルムのMD方向の線膨張率のより好ましい上限は30ppm/K、更に好ましい上限は25ppm/Kである。
本発明の樹脂フィルムのMD方向の線膨張率の下限は特に限定されないが、好ましい下限は17ppm/Kである。
【0044】
本発明の樹脂フィルムのTD方向の線膨張率は特に限定されず、上記MD方向とTD方向との線膨張率の差が上記範囲を満たしていればよいが、銅張積層板(CCL)を形成した際に銅配線との線膨張率の差を抑える観点から、好ましい上限は50ppm/Kである。本発明の樹脂フィルムのTD方向の線膨張率のより好ましい上限は30ppm/K、更に好ましい上限は20ppm/Kである。
本発明の樹脂フィルムのTD方向の線膨張率の下限は特に限定されないが、好ましい下限は17ppm/Kである。
【0045】
なかでも、上記MD方向とTD方向との線膨張率の差が上記範囲を満たすためには、上記MD方向の線膨張率及び上記TD方向の線膨張率からなる群より選ばれる少なくとも1つが50ppm/K以下であることが好ましい。
本発明の樹脂フィルムの上記MD方向とTD方向との線膨張率の差を上記範囲に調整する方法は特に限定されないが、上記液晶ポリマー(LCP)及び上記樹脂(A)の組成、物性、含有量等を調整する方法が好ましい。また、樹脂フィルムを押出成形により製造する際にTD方向に延伸(例えば、延伸倍率1.5~5.0倍)を行う方法、上記押出成形を行う際及び/又は上記延伸を行う際の条件を調整する方法も好ましい。
【0046】
なお、線膨張率は、例えば、熱機械分析装置TMA8310(リガク社製)等を用い、幅5mm×長さ20mmのサンプルについて、引張モード(初期荷重10mN)、昇温速度10℃/分で30℃から200℃まで測定を行い、下記式(1)により求めることができる。
線膨張率(ppm/K)=ΔL/(L・ΔT) (1)
(ΔLは変位量、Lはサンプル長さ、ΔTは変位温度を表す。)
【0047】
本発明の樹脂フィルムの層構造は特に限定されず、単層フィルムであってもよいし、多層フィルムであってもよい。多層フィルムの場合、本発明の樹脂フィルムは、表層と基材層とを有することが好ましい。
本発明の樹脂フィルムは、上記表層と上記基材層とを有する場合、上記表層と上記基材層とをそれぞれ少なくとも1つ有していればその層構造は特に限定されず、上記基材層の片面のみに上記表層を有する二層構造であってもよく、上記基材層の両面に上記表層を有する三層構造であってもよい。また、本発明の樹脂フィルムは、四層以上の構造であってもよい。
なかでも、上記基材層の両面に上記表層を有することが好ましい。上記基材層の両面に上記表層を有することで、樹脂フィルムの両側の表面に銅配線を形成する場合にも挿入損失をより抑えることができ、より好適に使用できる樹脂フィルムとなる。
【0048】
本発明の樹脂フィルムは、上記表層が少なくとも上記樹脂(A)を含有し、上記基材層が少なくとも上記液晶ポリマー(LCP)を含有することが好ましい。これにより、樹脂フィルムは、上記表層の誘電正接Dfが小さくなり、伝送信号が高周波数化した場合にも挿入損失をより抑えることができる。上記表層は、上記樹脂(A)に加えて上記液晶ポリマー(LCP)を含有していてもよく、更には成形性の観点から上記樹脂(A)の一成分として熱可塑性エラストマー(A2)を含有していることが好ましい。上記基材層は、上記液晶ポリマー(LCP)に加えて上記樹脂(A)を含有していてもよく、更には成形性の観点から上記樹脂(A)の一成分として熱可塑性エラストマー(A2)を含有していることが好ましい。
【0049】
上記表層における上記樹脂(A)の含有量は特に限定されないが、50重量%以上であることが好ましい。上記樹脂(A)の含有量が50重量%以上であることで、樹脂フィルムは、伝送信号が高周波数化した場合にも挿入損失をより抑えることができる。上記樹脂(A)の含有量は60重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上であることが更に好ましい。
上記表層における上記樹脂(A)の含有量の上限は特に限定されないが、樹脂フィルムの耐熱性をより向上させる観点から、好ましい上限は90重量%、より好ましい上限は80重量%である。
【0050】
上記表層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は20μmである。上記表層の厚みが上記範囲内であれば、樹脂フィルムは、伝送信号が高周波数化した場合にも挿入損失をより抑えることができる。上記表層の厚みのより好ましい下限は10μm、より好ましい上限は15μmである。
【0051】
上記基材層における上記液晶ポリマー(LCP)の含有量は特に限定されないが、50重量%以下であることが好ましい。上記液晶ポリマー(LCP)の含有量が50重量%以下であれば、樹脂フィルムは、伝送信号が高周波数化した場合にも挿入損失をより抑えることができ、ハンダリフロー耐性もより向上する。上記液晶ポリマー(LCP)の含有量は40重量%以下であることがより好ましく、30重量%以下であることが更に好ましい。
上記基材層における上記液晶ポリマー(LCP)の含有量の下限は特に限定されないが、樹脂フィルムの耐熱性をより向上させる観点から、好ましい下限は10重量%、より好ましい下限は20重量%である。
【0052】
上記基材層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は10μm、好ましい上限は200μmである。上記基材層の厚みが上記範囲内であれば、樹脂フィルムのハンダリフロー耐性がより向上する。上記基材層の厚みのより好ましい下限は20μm、より好ましい上限は150μmである。
【0053】
本発明の樹脂フィルムは、上記表層と上記基材層とを有する場合、更に、反応型相溶化剤を含有してもよい。
上記反応型相溶化剤を含有することで、上記表層と上記基材層との間の層間強度が高くなる。なお、上記反応型相溶化剤は、上記表層に配合されてもよく、上記基材層に配合されてもよい。
上記反応型相溶化剤は特に限定されず、例えば、三井化学社製のアドマーQ、三洋化成社製のユーメックス、三井化学社製のタフマーM、住友化学社製のボンドファースト、旭化成社製のタフテックM、日油社製のモディパーC1430G、日本触媒社製のエポクロスRPS-1005等が挙げられる。なかでも、日本触媒社製のエポクロスRPS-1005が好ましい。
【0054】
上記反応型相溶化剤の含有量は特に限定されないが、上記表層又は上記基材層における好ましい下限が1重量%、好ましい上限が10重量%であり、より好ましい下限が3重量%、より好ましい上限が5重量%である。上記反応型相溶化剤の含有量が上記範囲内であれば、上記表層と上記基材層との間の層間強度がより高くなる。
【0055】
本発明の樹脂フィルムは、上記表層と上記基材層とを有する場合、上記表層と上記基材層との間に他の層を有していてもよいが、上記表層と上記基材層との間に他の層を有さないことが好ましい。即ち、上記表層と上記基材層とが、他の層を介することなく直接積層されていることが好ましい。
上記他の層は特に限定されず、例えば、接着剤層等が挙げられる。接着剤層は一般的に高周波数帯での誘電正接Dfが大きいため、上記表層と上記基材層との間に接着剤層等の他の層を有さないことで、樹脂フィルムは、伝送信号が高周波数化した場合にも挿入損失をより抑えることができる。
なお、例えば、上記表層と上記基材層とをそれぞれ別々に作製し、接着剤層を用いることなく直接積層(単純積層)した場合には、上記表層と上記基材層との間の層間強度が低くなり、剥離しやすくなることがある。本発明の樹脂フィルムにおいては、接着剤層を用いなくとも、例えば、上記表層と上記基材層とに同じ樹脂を配合するとともに共押出成形により樹脂フィルムを製造することで、挿入損失を抑え、かつ、ハンダリフロー耐性を向上させながら、上記表層と上記基材層との間の密着性を高め、層間強度を上げることができる。
【0056】
本発明の樹脂フィルム全体としての厚みは特に限定されないが、好ましい下限は20μm、好ましい上限は250μmであり、より好ましい下限は30μm、より好ましい上限は150μmである。
【0057】
本発明の樹脂フィルムを製造する方法は特に限定されないが、押出成形により樹脂フィルムを製造する方法が好ましい。このとき、TD方向に延伸(例えば、延伸倍率1.5~5.0倍)を行う方法、上記押出成形を行う際及び/又は上記延伸を行う際の条件を調整する方法がより好ましい。なお、本発明の樹脂フィルムが上記表層と上記基材層とを有する場合、本発明の樹脂フィルムの製造方法としては、上記表層と上記基材層とをそれぞれ別々に作製し、接着剤層を用いることなく直接積層(単純積層)したり、接着剤層を用いて積層したりする方法を採用してもよい。
【0058】
上記表層および基材層が上記熱可塑性エラストマー(A2)を含有する場合、本発明の樹脂フィルムは押出成形等によって良好に製造される。
なお、40GHzでの誘電正接Dfを0.002未満の範囲に調整するためには、上述したような液晶ポリマー(LCP)と前記液晶ポリマー(LCP)以外の樹脂(A)を用いることが考えられるが、液晶ポリマー(LCP)の含有量、樹脂(A)の種類や含有量等によっては、製膜性が不充分となり、押出成形等によって良好に製造できないことがある。
【0059】
上記熱可塑性エラストマー(A2)は特に限定されず、ハードセグメントとソフトセグメントとを有し、ゴム弾性を示す樹脂であることが好ましく、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー等が挙げられる。なかでも、上記40GHzでの誘電正接Dfが上記範囲を満たしやすいことから、スチレン系エラストマー及びオレフィン系エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のエラストマーが好ましく、スチレン系エラストマーがより好ましい。即ち、上記熱可塑性エラストマー(A2)は、40GHzでの誘電正接Dfが0.0015以下である樹脂(A1)を兼ねることが好ましい。
【0060】
上記スチレン系エラストマーは特に限定されないが、ハードセグメントとしての芳香族アルケニル重合体ブロック(A)と、ソフトセグメントとしての共役ジエン重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体であることが好ましい。
【0061】
上記芳香族アルケニル重合体ブロック(A)とは、芳香族アルケニル化合物に由来する繰り返し単位を有するブロックを意味する。
上記芳香族アルケニル重合体ブロック(A)は、芳香族アルケニル化合物に由来する繰り返し単位を主な構成成分としたブロックであればよく、エチレン等の他の化合物に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
上記芳香族アルケニル重合体ブロック(A)としては、ポリアルキルスチレン、ポリハロゲン化スチレン、ポリハロゲン置換アルキルスチレン、ポリアルコキシスチレン、ポリカルボキシアルキルスチレン、ポリアルキルエーテルスチレン、ポリアルキルシリルスチレン、ポリ(ビニルベンジルジメトキシホスファイド)等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0062】
上記ポリアルキルスチレンは特に限定されず、例えば、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリジメチルスチレン、ポリt-ブチルスチレン等が挙げられる。
上記ポリハロゲン化スチレンは特に限定されず、例えば、ポリクロロスチレン、ポリブロモスチレン、ポリフルオロスチレン等が挙げられる。
上記ポリハロゲン置換アルキルスチレンは特に限定されず、例えば、ポリクロロメチルスチレン等が挙げられる。
上記ポリアルコキシスチレンは特に限定されず、例えば、ポリメトキシスチレン、ポリエトキシスチレン等が挙げられる。
上記ポリカルボキシアルキルスチレンは特に限定されず、例えば、ポリカルボキシメチルスチレン等が挙げられる。
上記ポリアルキルエーテルスチレンは特に限定されず、例えば、ポリビニルベンジルプロピルエーテル等が挙げられる。
上記ポリアルキルシリルスチレンは特に限定されず、例えば、ポリトリメチルシリルスチレン等が挙げられる。
【0063】
上記共役ジエン重合体ブロック(B)とは、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位を有するブロックを意味する。
上記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-オクタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、ミルセン、クロロプレン等が挙げられる。これらの共役ジエン化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
上記スチレン系エラストマーのハードセグメント含有量(芳香族アルケニル重合体ブロック(A)の含有量)は特に限定されないが、好ましい下限は30重量%、好ましい上限は60重量%である。
上記ハードセグメント含有量が60重量%以下であれば、樹脂フィルムを押出成形等によって良好に製造することができる。上記ハードセグメント含有量のより好ましい下限は35重量%、より好ましい上限は50重量%である。
【0065】
上記スチレン系エラストマーは、水素添加体であってもよい。上記スチレン系エラストマーの水素添加率は特に限定されないが、95%以上であることが好ましく、96%以上であることがより好ましい。上記水素添加率の上限は特に限定されず、100%以下であればよい。
【0066】
上記スチレン系エラストマーの重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、好ましい下限は10万、好ましい上限は100万であり、より好ましい下限は15万、より好ましい上限は50万である。上記重量平均分子量が上記範囲内であれば、樹脂フィルムを押出成形等によって良好に製造することができる。
【0067】
上記スチレン系エラストマーとして、具体的には例えば、SBS(スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体)、SIS(スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体)、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体)、SEPS(スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体)等が挙げられる。なかでも、成形性の観点から、SEPS及びSEBSが好ましい。
【0068】
上記オレフィン系エラストマーは特に限定されないが、ハードセグメントとしてのオレフィン重合体ブロック(C)と、ソフトセグメントとしてのエチレン-プロピレンゴムブロック(D)とを有するブロック共重合体であることが好ましい。
【0069】
上記オレフィン重合体ブロック(C)は特に限定されず、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。
【0070】
上記エチレン-プロピレンゴムブロック(D)は特に限定されず、例えば、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)等が挙げられる。
【0071】
上記熱可塑性エラストマー(A2)の含有量は特に限定されず、上記液晶ポリマー(LCP)、上記熱可塑性エラストマー(A2)以外の上記樹脂(A)、及び、上記熱可塑性エラストマー(A2)の種類(特に上記熱可塑性エラストマー(A2)以外の上記樹脂(A)の種類)に応じて調整すればよい。
本発明の樹脂フィルムを構成する樹脂全体に占める上記熱可塑性エラストマー(A2)の含有量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は30重量%である。上記熱可塑性エラストマー(A2)の含有量が1重量%以上であれば、樹脂フィルムを押出成形等によって良好に製造することができる。上記熱可塑性エラストマー(A2)の含有量が30重量%以下であれば、樹脂フィルムの上記40GHzでの誘電正接Dfが好ましい範囲となりやすい。上記熱可塑性エラストマー(A2)の含有量のより好ましい下限は2重量%、より好ましい上限は20重量%であり、更に好ましい下限は3重量%、更に好ましい上限は10重量%である。
【0072】
本発明の樹脂フィルムの用途は特に限定されないが、伝送信号が高周波数化した場合にも挿入損失を抑えることができ、ハンダリフロー耐性にも優れることから、配線基板、特にフレキシブルプリント基板を作製するための銅張積層板に用いられるベースフィルムとして好適に用いられる。本発明の樹脂フィルムを含む銅張積層板もまた、本発明の一つである。
【発明の効果】
【0073】
本発明によれば、伝送信号が高周波数化した場合にも挿入損失を抑えることができ、ハンダリフロー耐性にも優れた樹脂フィルム、及び、該樹脂フィルムを用いた銅張積層板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0075】
(実施例1)
(1)樹脂フィルムの製造
液晶ポリマー(LCP)(JX液晶社製の商品名ザイダー(登録商標)、融点280℃)50重量部と、シクロオレフィンポリマー(COP)(日本ゼオン社製の商品名ZEONOR(登録商標)、ガラス転移温度163℃)45重量部と、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)(旭化成社製の商品名タフテック(登録商標))5重量部とを混合し、樹脂組成物を得た。
樹脂組成物を押出機(ジーエムエンジニアリング社製、GM30-28(スクリュー径30mm、L/D28))を用いてTダイ幅400mmにて押出した。このとき、LCPの融点より20℃高い温度(300℃)、TD方向の延伸倍率2.0倍、速度500mm/minの条件にて延伸を行い、単層の樹脂フィルム(厚み50μm)を得た。
なお、シリンダー温度、及び、金型温度は、それぞれ、融点が最も高い樹脂の融点より20℃高い温度(樹脂(A)がETFE又はPFAである場合)、又は、ガラス転移温度が最も高い樹脂のガラス転移温度より100℃高い温度(樹脂(A)がCOP、PPE又はCOCである場合)、融点がLCPの融点より20℃高い温度(LCPとPPE、COC、COP又はPSを組合わせる場合)に設定した。スクリュー回転数を15rpmに設定した。押出された溶融樹脂を冷却ロール(温度80℃)により引取り速度3m/分で引取りながら冷却して製膜した。
【0076】
(2)各樹脂及び樹脂フィルムの40GHzでの誘電正接Dfの測定
PNAネットワークアナライザー(キーサイトテクノロジー社製)を用い、JIS R1641に準拠して、実施例及び比較例と同様にして別途作製した40mm角のサンプルについて25℃、40GHzで空洞共振法により誘電正接Dfを測定した。
【0077】
(3)MD方向及びTD方向の線膨張率の測定
熱機械分析装置TMA8310(リガク社製)を用い、実施例及び比較例と同様にして別途作製した幅5mm×長さ20mmのサンプルについて、引張モード(初期荷重10mN)、昇温速度10℃/分で25℃から200℃まで測定を行い、下記式(1)により線膨張率を求めた。
線膨張率(ppm/K)=ΔL/(L・ΔT) (1)
(ΔLは変位量、Lはサンプル長さ、ΔTは変位温度を表す。)
【0078】
(実施例2~6)
樹脂フィルムの組成、及び、延伸倍条件を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂フィルムを得た。使用した樹脂を以下に示す。
【0079】
シクロオレフィンコポリマー(COC)(ポリプラスチックス社製の商品名TOPAS(登録商標)、ガラス転移温度178℃)
パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)(AGC社製の商品名Fluon+TM EA-2000(登録商標)、ガラス転移温度75℃、融点300℃)
ポリフェニレンエーテル(PPE)(SABIC社製の商品名ノリル(登録商標)、ガラス転移温度216℃)
シクロオレフィンポリマー(COP)(日本ゼオン社製の商品名ZEONOR(登録商標)、ガラス転移温度163℃)
【0080】
(実施例7)
(1)樹脂フィルムの製造
シクロオレフィンポリマー(COP)(日本ゼオン社製の商品名ZEONOR(登録商標)、ガラス転移温度163℃)36重量部と、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)(旭化成社製の商品名タフテック(登録商標)4重量部と、液晶ポリマー(LCP)(JX液晶社製の商品名ザイダー(登録商標)、融点280℃)60重量部とを混合し、表層用樹脂組成物を得た。
一方、液晶ポリマー(LCP)(JX液晶社製の商品名ザイダー(登録商標)、融点280℃)40重量部と、シクロオレフィンポリマー(COP)(日本ゼオン社製の商品名ZEONOR(登録商標)、ガラス転移温度163℃)54重量部と、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)(旭化成社製の商品名タフテック(登録商標)6重量部とを混合し、基材層用樹脂組成物を得た。
表層用樹脂組成物、及び、基材層用樹脂組成物を押出機(ジーエムエンジニアリング社製、GM30-28(スクリュー径30mm、L/D28))を用いてTダイ幅400mmにて三層共押出した。このとき、ガラス転移温度が最も高い樹脂のガラス転移温度より20℃高い温度、TD方向の延伸倍率4.0倍、速度500mm/minの条件にて延伸を行い、基材層(厚み40μm)の両面に表層(片面の厚み5μm)を有する三層構造の樹脂フィルムを得た。
なお、シリンダー温度、及び、金型温度は、それぞれ、融点が最も高い樹脂の融点より20℃高い温度(樹脂(A)がETFE又はPFAである場合)、又は、ガラス転移温度が最も高い樹脂のガラス転移温度より100℃高い温度(樹脂(A)がCOP、PPE又はCOCである場合)に設定した。スクリュー回転数を表層10rpm、基材層15rpmに設定した。押出された溶融樹脂を冷却ロール(温度80℃)により引取り速度3m/分で引取りながら冷却して製膜した。
【0081】
(2)各樹脂及び樹脂フィルムの40GHzでの誘電正接Dfの測定
PNAネットワークアナライザー(キーサイトテクノロジー社製)を用い、JIS R1641に準拠して、実施例及び比較例と同様にして別途作製した40mm角のサンプルについて25℃、40GHzで空洞共振法により誘電正接Dfを測定した。
【0082】
(3)MD方向及びTD方向の線膨張率の測定
熱機械分析装置TMA8310(リガク社製)を用い、実施例及び比較例と同様にして別途作製した幅5mm×長さ20mmのサンプルについて、引張モード(初期荷重10mN)、昇温速度10℃/分で25℃から200℃まで測定を行い、下記式(1)により線膨張率を求めた。
線膨張率(ppm/K)=ΔL/(L・ΔT) (1)
(ΔLは変位量、Lはサンプル長さ、ΔTは変位温度を表す。)
【0083】
(実施例8)
樹脂フィルムの組成、及び、延伸条件を表1に示すように変更したこと以外は実施例7と同様にして、樹脂フィルムを得た。使用した樹脂を以下に示す。
エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)(AGC社製のFluon ETFE(登録商標))
【0084】
(比較例1~6)
樹脂フィルムの組成、延伸加工の有無、及び、延伸条件を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂フィルムを得た。
なお、表1には示していないが、比較例6では、スクリュー回転数を30rpmに変更し、引取り速度を6m/分に変更し、シリンダーから金型までの加温(滞留)時間を他の実施例及び比較例の1.5倍に変更した。
【0085】
<評価>
実施例及び比較例で得られた樹脂フィルムについて以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0086】
(1)挿入損失(40GHz)の測定
樹脂フィルムに接着剤付き銅箔を180℃でラミネートし、200℃で1時間アニールすることで銅張積層板(CCL)を作製した。得られた銅張積層板(CCL)に対してスルホール加工、メッキ処理、及び、エッチング処理を行い、マイクロストリップラインを作製した。これを測定サンプルとした。ベクトルネットワークアナライザーN5230A(アジレント・テクノロジー社製)及び測定用プローブB90-122391(ズース・マイクロテック社製)を用い、インピーダンス値50Ωにて測定サンプルの挿入損失(40GHz)を測定した。挿入損失(40GHz)の値が-8.0より大きい場合を〇、-8.0以下の場合を×とした。
なお、挿入損失(40GHz)の値が-8.0より大きければ、高周波数帯での挿入損失が抑えられる。
【0087】
(2)ハンダリフロー耐性の評価
樹脂フィルムを20cm×20cmに切り出して測定サンプルを作製した。260℃に加熱したホットプレート上に測定サンプルを乗せ、1分間加熱した。1分間加熱後の測定サンプルの端部の反り量(変位量)を、ダンチノギス(全晴社製)を用いて測定した。変位量が1cm未満の場合を〇、1cm以上の場合を×とした。
【0088】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明によれば、伝送信号が高周波数化した場合にも挿入損失を抑えることができ、ハンダリフロー耐性にも優れた樹脂フィルム、及び、該樹脂フィルムを用いた銅張積層板を提供することができる。