(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051840
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】受口付き樹脂配管部材、電気融着用受口付き樹脂配管部材及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 47/03 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
F16L47/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154924
(22)【出願日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2021162001
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022054843
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見 安孝
(72)【発明者】
【氏名】水川 賢司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛史
(72)【発明者】
【氏名】太田 悠介
【テーマコード(参考)】
3H019
【Fターム(参考)】
3H019GA02
3H019GA12
(57)【要約】
【課題】受口部の強度に優れる受口付き樹脂配管部材の提供。
【解決手段】直管部12と、直管を拡径した受口部13とを有する一体成形物であり、受口部13の厚さt2が直管部12の厚さt1以上である受口付き樹脂配管部材15と、受口部13の内周面上に設けた電気融着ユニット21を有する、電気融着用受口付き樹脂配管部材11。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管部と、直管を拡径した受口部とを有する一体成形物であり、前記受口部の厚さが前記直管部の厚さ以上である、受口付き樹脂配管部材。
【請求項2】
請求項1に記載の受口付き樹脂配管部材と、前記受口部の内周面上に設けた電気融着ユニットを有する、電気融着用受口付き樹脂配管部材。
【請求項3】
前記受口部の外周面に、前記受口部の径方向に凹む凹部と前記凹部の底面から突出する凸部とを有する加熱検知部が存在する、請求項2に記載の電気融着用受口付き樹脂配管部材。
【請求項4】
厚さが均一な樹脂製の直管の、端部を加熱軟化し拡径して受口部を形成する拡径工程を有し、
前記拡径工程において、前記受口部の厚さを前記直管の厚さ以上にする、受口付き樹脂配管部材の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の受口付き樹脂配管部材の製造方法により前記受口部を形成した後、前記受口部の内面に電熱線を敷設する工程を有する、
電気融着用受口付き樹脂配管部材の製造方法。
【請求項6】
厚さが均一な樹脂製の直管の、端部を加熱軟化し拡径して受口部を形成する拡径工程と、
前記受口部の内周面上に電気融着ユニットを設ける工程を有し、
前記拡径工程において、前記受口部の厚さを前記直管の厚さ以上にする、電気融着用受口付き樹脂配管部材の製造方法。
【請求項7】
前記受口部を形成した後、前記受口部の外周面に、前記受口部の径方向に凹む凹部と前記凹部の底面から突出する凸部とを有する加熱検知部を形成する加熱検知部形成工程を有する、請求項5または6に記載の電気融着用受口付き樹脂配管部材の製造方法。
【請求項8】
前記加熱検知部形成工程において、前記受口部の外周面を型押し加工して前記加熱検知部を形成する、請求項7に記載の電気融着用受口付き樹脂配管部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受口付き樹脂配管部材、電気融着用受口付き樹脂配管部材、受口付き樹脂配管部材の製造方法、及び電気融着用受口付き樹脂配管部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直管部と受口部を有し、受口部に電気融着ユニットを備える電気融着用受口付き樹脂管や電気融着用樹脂管継手等の電気融着用受口付き樹脂配管部材は、受口部に接続相手の樹脂管を挿入して電気融着ユニットに通電する方法で、樹脂管と電気融着用受口付き樹脂配管部材とを効率良く連結できる。
このような電気融着用受口付き樹脂配管部材を製造する方法として、例えば、直管部と受口部を別々に成形してバット融着等で接合する方法や、成形型内に電気融着ユニットを配置し射出成形法で直管部と受口部とを一体成形する方法がある。
別々に成形して接合する方法ではバット融着痕等の接合痕が残る。射出成形法ではゲート痕等の射出成形痕が残る。
【0003】
接合痕や射出成形痕が残らない方法として、特許文献1には、直管の端部を加熱軟化した状態で、電気融着ユニットを装着した芯型を端部に圧入して、端部を押し拡げるとともに、拡径した端部内に電気融着ユニットを組み込む方法が提案されている。又は、直管の端部を加熱軟化した状態で、拡径可能な割り型を挿入し、割り型を拡径して端部を押し拡げた後、電気融着ユニットを装着する方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
受口部と接続相手の樹脂管との接合部には応力集中が生じやすいため、受口部の強度を高めることが望ましい。
本発明は、受口部の強度に優れる受口付き樹脂配管部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1] 直管部と、直管を拡径した受口部とを有する一体成形物であり、前記受口部の厚さが前記直管部の厚さ以上である、受口付き樹脂配管部材。
[2] 前記[1]の受口付き樹脂配管部材と、前記受口部の内周面上に設けた電気融着ユニットを有する、電気融着用受口付き樹脂配管部材。
[3] 前記受口部の外周面に、前記受口部の径方向に凹む凹部と前記凹部の底面から突出する凸部とを有する加熱検知部が存在する、[2]の電気融着用受口付き樹脂配管部材。
[4] 厚さが均一な樹脂製の直管の、端部を加熱軟化し拡径して受口部を形成する拡径工程を有し、前記拡径工程において、前記受口部の厚さを前記直管の厚さ以上にする、受口付き樹脂配管部材の製造方法。
[5] [4]の受口付き樹脂配管部材の製造方法により前記受口部を形成した後、前記受口部の内面に電熱線を敷設する工程を有する、電気融着用受口付き樹脂配管部材の製造方法。
[6] 厚さが均一な樹脂製の直管の、端部を加熱軟化し拡径して受口部を形成する拡径工程と、前記受口部の内周面上に電気融着ユニットを設ける工程を有し、前記拡径工程において、前記受口部の厚さを前記直管の厚さ以上にする、電気融着用受口付き樹脂配管部材の製造方法。
[7] 前記受口部を形成した後、前記受口部の外周面に、前記受口部の径方向に凹む凹部と前記凹部の底面から突出する凸部とを有する加熱検知部を形成する加熱検知部形成工程を有する、[5]または[6]の電気融着用受口付き樹脂配管部材の製造方法。
[8] 前記加熱検知部形成工程において、前記受口部の外周面を型押し加工して前記加熱検知部を形成する、[7]の電気融着用受口付き樹脂配管部材の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、受口部の強度に優れる受口付き樹脂配管部材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る電気融着用受口付き樹脂配管部材の一例を示した一部断面図である。
【
図2】
図1の電気融着用受口付き樹脂配管部材を構成する電気融着ユニットを示した斜視図である。
【
図3】本発明に係る電気融着用受口付き樹脂配管部材の製造方法の一例における拡径工程の説明図である。
【
図4】本発明に係る電気融着用受口付き樹脂配管部材の製造方法の一例における加熱検知部形成工程の説明図である。
【
図5】本発明に係る電気融着用受口付き樹脂配管部材の製造方法の一例における電気融着ユニットを設ける工程の説明図である。
【
図6】
図2の電気融着ユニットの変形例を示した斜視図である。
【
図7】本発明に係る電気融着用受口付き樹脂配管部材の他の例を示した一部断面図である。
【
図8】本発明に係る電気融着用受口付き樹脂配管部材の他の例を示した一部断面図である。
【
図9】本発明に係る電気融着用受口付き樹脂配管部材の他の例を示した一部断面図である。
【
図10】本発明に係る電気融着用受口付き樹脂配管部材の他の例を示した横断面図である。
【
図11】本発明に係る電気融着用受口付き樹脂配管部材の製造方法の一例において電熱線を敷設する工程の説明図である。
【
図12】本発明に係る電気融着用受口付き樹脂配管部材の他の例を示した縦断面図である。
【
図13】本発明に係る電気融着用受口付き樹脂配管部材の他の例を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の受口付き樹脂配管部材は、直管部と受口部とを有する。受口部に電気融着ユニットを設けると電気融着用受口付き樹脂配管部材が得られる。
受口付き樹脂配管部材の好ましい態様としては、受口部を1個のみ備える受口付き樹脂管や、複数の受口部を備える樹脂管継手が挙げられる。
受口付き樹脂管の受口部に電気融着ユニットを設けると、電気融着用受口付き樹脂管が得られる。
樹脂管継手の受口部に電気融着ユニットを設けると、電気融着用樹脂管継手が得られる。
【0010】
<電気融着用受口付き樹脂管>
以下、本発明の電気融着用受口付き樹脂配管部材の実施形態として、一端に電気融着用受口を備え、他端が他の継手に挿入される直管状の差口を備えた電気融着用受口付き樹脂管の実施形態を説明する。
図1、2は本実施形態の電気融着用受口付き樹脂管(以下、単に「本樹脂管」ともいう。)11の一例を示したもので、
図1は本樹脂管11に接続相手の樹脂管31を挿入した状態の一例を一部断面視した側面図である。
図2は、本樹脂管11を構成する電気融着ユニット21の一例を示した斜視図である。
なお、以下の図は、その構成をわかりやすく説明するための模式図であり、各構成要素の寸法比率等は、実際とは異なる場合がある。
【0011】
本樹脂管11は、直管部12と受口部13とを有する樹脂管本体15と、電気融着ユニット21を有する。
樹脂管本体15は直管部12と受口部13とが一体的に成形された一体成形物であり、両者の間にバット融着痕等の接合痕は存在しない。
受口部13は、予め成形された直管を拡径したものであり、射出成形法で成形したものではない。したがって樹脂管本体15には、ゲート痕やパーティングライン等の射出成形痕は存在しない。
【0012】
樹脂管本体15において、直管部12と受口部13とはテーパ部14を介して連続している。
直管部12の径方向における厚さt1は均一である。受口部13の径方向における厚さt2は均一である。受口部の厚さt2は直管部の厚さt1以上であり(t1≦t2)、本実施形態では、受口部の厚さt2は直管部の厚さt1より大きい(t1<t2)。
テーパ部14の内径は、直管部12から受口部13に向かって漸次拡径する。テーパ部14の径方向における厚さt3は、直管部12から受口部13に向かって漸次増大する。
直管部の厚さt1に対する受口部の厚さt2の比を表すt2/t1は、1.0超であり、1.1以上が好ましい。t2/t1の上限は、例えば2.0以下が好ましい。
直管部12の外径は例えば27~355mm、直管部12の厚さt1は例えば3~37mmが好ましい。
【0013】
樹脂管本体15を構成する樹脂としては、ポリエチレン等のポリオレフィンを主成分とする樹脂組成物を用いることができる。
樹脂管本体15を構成する樹脂の融点mは、例えば120~140℃が好ましい。
【0014】
また
図10に示すように、樹脂管本体15は、管状の複数の層16,17,18を有していてもよい。従来、射出成形で製造される継手に複数の層を設けることは困難であったが、本発明によれば多層成形が容易な押出成形で複数の層を設けた樹脂管本体15に受口部13を設けて継手へと加工することが可能であり、多層構造の継手を容易に製造することができる。
なお、樹脂管本体15が有する層の数は、複数であれば特に限定されず、2つでもよいし、4つ以上でもよい。
図10では、層16,17,18の厚さを互いにほぼ等しく示しているが、層16,17,18の厚さは、これに限定されない。
層16,17,18は、径方向内側から径方向外側に向かって、この順で配置されている。本実施形態では、層16,18はポリオレフィン系樹脂製であり、より詳しくは、層16,18はポリエチレン樹脂で形成されている。
なお、層16,18はポリブデン樹脂等で形成されてもよいし、ポリオレフィン系樹脂には、モノマー等の添加物が含まれてもよい。層16,17,18のうち少なくとも一つが、ポリオレフィン系樹脂製であればよい。
この例では、例えば層17は、水素や酸素、プロパン、ブタンなどのガスや、ガソリンやベンゼンなどの炭化水素を透過しにくいエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂を含有するバリア性樹脂層(機能層)とすることで、樹脂管本体15は空調用、給湯用、ガス用や燃料用の管とされる。なお、機能層の種類は限定されず、ガラス繊維、炭素繊維、シリコン・チタン・炭素複合繊維、ボロン繊維、および金属繊維などの無機繊維を含む層としてもよく、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、およびポリアミド繊維などの有機繊維を含む層としてもよく、これらの繊維を含む層とすることで引張強度が高く、熱膨張しにくい管とされる。また、フッ素樹脂を含む層とすることで、酸やアルカリなどの薬品に耐性が高い管とされる。これらの機能層は層16、18に設けてもよい。
層16と層17との間、層17と層18との間に、図示しない接着層を設けてもよい。
【0015】
図1、
図2に示すように、受口部13の内周面上に電気融着ユニット21が存在する。電気融着ユニット21は、円筒状のユニット本体22と、ユニット本体22の端部の周面から外方に突出する鍔部23を有する。
ユニット本体22及び鍔部23は樹脂製であり、一体的に成形されている。受口部13の内周面とユニット本体22の外周面とは密着、あるいは両面の一部が融着している。鍔部23のユニット本体22側の端面23aは、受口部13の端面13aに密着、あるいは両面の一部が融着している。
電気融着ユニット21の内部には電熱線24が埋め込まれている。電熱線24の両端は鍔部23の周面に設けられた一対の端子25に電気的に接続している。電熱線24は、ユニット本体22に螺旋状に巻回した螺旋部と、螺旋部から端子25に延びる接続部を有する。なお、
図2に示した螺旋部と接続部の位置関係は一例であり、例えば螺旋部は電熱線を2重にして折り返した形状で巻回してもよい。
電熱線24を埋設した電気融着ユニット21は、例えば射出成形法で製造できる。
【0016】
受口部13の外周面には、受口部13の径方向に凹む凹部41aと、凹部41aの底面から突出する凸部41bとを有する加熱検知部41が存在する。
本樹脂管11の使用時には、本樹脂管11の受口部13に接続相手の樹脂管31を挿入し、端子25を介して電熱線24に通電する。通電した電熱線24は発熱し、樹脂管31の外周面と電気融着ユニット21と樹脂管本体15の内周面とが融着する。加熱検知部41は、融着が適性に行われると、凸部41bが隆起して凹部41aから表出するように構成されている。
【0017】
図2に示すように、受口部13の管軸方向において、加熱検知部41は、電熱線24が存在する領域の中央部付近に存在することが好ましい。
受口部13の径方向外側から、受口部13の外周面を見たときに、一対の端子25と加熱検知部41とが同時に見える位置に、端子25及び加熱検知部41が存在することが好ましい。例えば、加熱検知部41を通り管軸を含む面が、一対の端子25の間に存在することが好ましい。
加熱検知部41の近傍に存在する電熱線24は螺旋部であることが好ましい。例えば、電熱線24の接続部が電熱線24の螺旋部と交わる方向に延びている場合、加熱検知部41は電熱線24の接続部を避けて設けることが好ましい。
【0018】
<電気融着用受口付き樹脂管の製造方法>
図3~5は、本樹脂管11の製造方法の例を示す図である。
本樹脂管11は、樹脂製の直管15aの端部を拡径して受口部13を形成する工程(拡径工程)と、受口部13の外周面に加熱検知部41を形成する工程(加熱検知部形成工程)と、受口部13の内周面上に電気融着ユニット21を設ける工程を有する方法で製造できる。
【0019】
図3に示すように、拡径工程では、外型1及び内型2を有する金型10を用いる。符号15aは加工前の直管を示す。直管15aは、径方向の厚さが均一な樹脂管であり、例えば押出成形法により連続的に製造した直線状の管が好ましい。
図4に示すように、直管15aの端部を加熱軟化した状態で、金型10の内部空間の形状に沿うように圧入すると、直管15aの端部を拡径して受口部13及びテーパ部14を形成できる(拡径工程)。
【0020】
外型1は、受口部13及びテーパ部14を形成するための拡径金型1aと、拡径工程における直管部12の座屈を防止するための円筒金型1bを有する。
拡径金型1aの内面形状は、樹脂管本体15における受口部13、テーパ部14、及びテーパ部14近傍の直管部12の外周面の形状に対応する。図中のL1は、管軸方向における、受口部13及びテーパ部14に対応する部分の合計の長さを示す。
円筒金型1bは拡径金型1aと同軸であり、両者は一体化されている。円筒金型1bの内面形状は、樹脂管本体15における直管部12の外周面の形状に対応する。外型1において、直管部12に対応する部分の長さ(L2+L3)は、直管部12の座屈が生じないように、直管部12の口径及び厚さ、予備加熱の範囲に応じて設定できる。
拡径金型1aには、加熱検知部41を形成する位置に貫通孔3aが設けられており、貫通孔3aを着脱可能に閉塞する閉塞部材3を備える。
内型2の外面形状は、樹脂管本体15における、受口部13、テーパ部14、及び直管部12の内周面の形状、及び受口部13の端面13aの形状に対応する。
【0021】
拡径工程において、直管15aを金型10に圧入する前に、直管15a及び金型10をそれぞれ予備加熱する。
金型10は、少なくとも拡径金型1aの内面と、これに対向する内型2の外面を予備加熱する。これらの予備加熱温度は、直管15aを構成する樹脂の融点以上の温度とすることが望ましい。
さらに、拡径金型1aに隣接する円筒金型1bの一部又は全部と、これに対向する内型2の外面を、予備加熱してもよい。これらの予備加熱温度も、直管15aを構成する樹脂の融点以上の温度とすることが望ましい。
直管15aは、少なくとも拡径金型1a内に圧入される端部を含む領域の、内周面及び外周面を予備加熱する。管軸方向において、直管15aを予備加熱する領域の長さは(L1+L2)以上(L1+L2+L3)以下が好ましい。直管15aの予備加熱温度は、直管15aを構成する樹脂の融点近傍とし、金型の予備加熱温度以下とすることが望ましい。
【0022】
直管15a及び金型10が予備加熱温度に達したら、直管15aを金型10内に圧入して受口部13及びテーパ部14を形成する。
受口部13及びテーパ部14の径方向の厚さは、直管15aの径方向の厚さより大きいため、受口部13及びテーパ部14を形成するのに必要な直管15aの長さはL1より大きい。
なお、直管部12の径方向の厚さは、直管15aの径方向の厚さと同じかそれ以上である。
【0023】
続いて、受口部13が軟化状態にある間に、棒状金型4を用いて、受口部13の外周面を型押し加工し、加熱検知部41を形成する(加熱検知部形成工程)。棒状金型4の先端面の形状は、加熱検知部41の形状に対応する。
具体的な例としては、拡径金型1aの閉塞部材3を取り除いて貫通孔3aを開口し、貫通孔3a内に露出した受口部13の外周面に、棒状金型4の先端面を押し当てて加熱検知部41を形成する。
【0024】
次いで、
図5に示すように、金型10の内型2を取り外し、受口部13の内周面及び端面13aが冷えて固化する前に、保持金型5を用いて電気融着ユニット21を受口部13内に挿入する。
保持金型5は、ユニット本体22の内周面と密着する円柱部5aと、鍔部23の端面(ユニット本体22側とは反対側の端面)と当接する支持台5bを有し、電気融着ユニット21を着脱可能に保持する。
【0025】
具体的には、保持金型5に電気融着ユニット21を装着した後、保持金型5を受口部13内に挿入して、ユニット本体22の外周面と受口部13の内周面、及び鍔部23の端面23aと受口部13の端面13aを互いに密着させる。受口部13の内周面は固化前であるため、密着した両面の一部が融着した仮融着状態となってもよい。なお、本樹脂管11と接続相手の樹脂管31とを電気融着する際に、ユニット本体22の外周面と受口部13の内周面は、互いの樹脂が混じり合った融着状態(本融着状態)となる。
また、電気融着ユニット21を受口部13内に挿入する前に予備加熱することで、受口部13との密着性を高めることもできる。電気融着ユニット21を予備加熱では、少なくともユニット本体22の外周面と、鍔部23のユニット本体22側の端面23aを加熱することが望ましい。
また、この工程内で拡径金型1aを縮径して、電気融着ユニット21と受口部13とを密着させてもよい。
この後、受口部13及び電気融着ユニット21を冷却固化し、外型1及び保持金型5を取り外して本樹脂管11を得る。
【0026】
本実施形態によれば、受口部13の厚さを直管部12の厚さより大きくできるため、受口部13の強度を向上できる。
加工前の直管15aとして、厚さが均一な直管15aを使用できるため、直管15aの製造が容易である。
直管15aを金型10に圧入する前に直管15aを予備加熱するため、直管15aの端部を拡径するとともに増肉した形状に加工しやすい。
直管15aの端部を拡径加工するための拡径金型1aに加えて、直管部12を支える円筒金型1bを設けたため、直管15aを予備加熱して金型10に圧入する際に直管部12の座屈を防止できる。
【0027】
樹脂管本体15の外周面のうち、直管15aを予備加熱した領域および予備加熱した金型に接触していた領域には、金型10の内面形状が転写されている。通常、金型の内面は平滑面であり、前記領域に対応する直管部12の外周面は平滑な曲面となる。
直管15aが押出成形品である場合、直管15aの外周面には筋状の押出成形痕が存在する。この場合、本実施形態の製造方法で得られた樹脂管本体15の直管部12の外周面には、押出成形痕が存在する領域と平滑面である領域とが存在する。
【0028】
なお、本実施形態では、加熱検知部41を形成した後に電気融着ユニット21を設けたが、電気融着ユニット21を設けた後に加熱検知部41を形成してもよい。
また、本実施形態では、受口部13が軟化状態にあるときに型押し加工する方法で加熱検知部41を形成したが、受口部13を冷却固化した後に、切削加工する方法で加熱検知部41を形成してもよい。
【0029】
また、本実施形態では、樹脂管本体15の受口部13に電気融着ユニット21を有する電気融着用受口付き樹脂管11を製造したが、拡径工程の後に冷却固化して脱型し、電気融着ユニットを備えていない受口付き樹脂管(樹脂管本体15)を製造してもよい。
【0030】
さらに、他の実施形態として、この電気融着ユニットを備えていない受口付き樹脂管に対して電気融着ユニット(電熱線24)を埋設することで電気融着用受口付き樹脂管11を製造してもよい。この場合、例えば、国際公開第1999/033619号に記載された、樹脂管の受口内壁面内に電熱線を敷設するための電熱線敷設装置を用いることができる。
より具体的には、
図11に示すように、電熱線敷設装置60は、電気融着ユニットを備えていない受口付き樹脂管本体15の受口部13の内壁面に切込みを形成するカッターなどの切削手段61と、電熱線24を切込みの中に誘導する電熱線誘導手段62と、切込みを閉じることにより電熱線24を切込み内に封じ込める封じ込め手段63とを有しており、電熱線24が切削手段61を通って切込みに進入するように電熱線誘導手段62が配置されている。
カッターなどの切削手段61を用いて回転しながら受口部13の内壁面に切込みを形成しつつ電熱線24を切込みの中に誘導し、続いてこの切込みを封じ込め手段63により閉じることにより電熱線24を受口部13の内壁面に敷設することができる。このとき、電熱線24を切込みの中に誘導する工程において、切削手段61自体が電熱線24を切込み内に誘導する貫通孔などを備えていることが好ましい。切削手段61の回転角度を調整することで、
図12に示す変形例のように、電熱線24を所定ピッチの螺旋状(例えば、電熱線24のピッチが部分的に異なる螺旋状)とすることができる。
さらに、
図13に示す変形例のように、第1の電熱線24aの敷設途中で切削手段61を回転させ、切削手段61と受口部13との相対移動方向が第1の電熱線24a(図中の実線)とは逆方向となるように回転方向を反転させて第2の電熱線24b(図中の2点鎖線)を敷設することで、受口部13の内部で2重螺旋を描くように電熱線24を敷設することができる。この場合、
図13のように一対の端子125は受口部13の端部付近に設けられることとなる。
上記の電熱線敷設装置60を用いて別途製造した電気融着ユニットを備えていない受口付き樹脂管の受口部13に電気融着ユニットを設けることで、電気融着用受口付き樹脂管11を製造することができる。なお、この実施形態で使用される電気融着ユニットを備えていない受口付き樹脂管は、予め受口部13の外面に前述の加熱検知部41が形成されていることが好ましい。
【0031】
図6は、電気融着ユニット21の変形例である。本例の電気融着ユニット21Aは、電磁誘導方式等の非接触給電法で電熱線24に通電するものであり、端子25が設けられていない。例えば、
図6に示すように、電気融着ユニット21Aに近接して送電側コイル51を配置し、電源52を用いて送電側コイル51に電流を流し、発生した磁束53を電気融着ユニット21A(受電側コイル)に結合させることによって、電熱線24に電流を流すことができる。
【0032】
本発明において、拡径工程に供する直管15aは、拡径工程において受口部13及びテーパ部14を形成するのに必要な部分が直線状の管(直管)であればよく、それ以外の部分の形状は特に限定されない。また、樹脂管本体15において直管部12の長さは特に限定されない。少なくともテーパ部14の近傍は直管状であるが、それ以外の部分の形状は特に限定されない。
本実施形態では、電気融着用受口付き樹脂配管部材として一端に電気融着用受口を備え、他端が他の継手に挿入される直管状の差口を備えた電気融着用受口付き樹脂管を説明したが、直管部12の両端部に受口または電気融着用受口を備えた電気融着用樹脂管継手としてもよい。
【0033】
本発明の受口付き樹脂配管部材において、直管部12の形状は、例えば直管部12を曲げたエルボやベンド、直管部12の管軸と直交する方向に分岐部を備えたチーズ、直管部12に縮径部を備えたレデューサ等とすることができ、いずれも一端または両端に受口または電気融着用受口を備えた形状とすることができる。
【0034】
図7~9に電気融着用樹脂管継手の例を示す。
図7はベンドの一例であり、
図8はチーズの一例であり、
図9はレデューサの一例である。
図7~9に例示した電気融着用樹脂管継手は、直管部12と、直管を拡径した受口部13とを有する一体成形物であり、受口部13の厚さが直管部12の厚さ以上である樹脂管継手15(図示の各例では、受口部13の厚さが直管部12の厚さより大きい樹脂管継手15)、及び受口部13の内周面上に設けた電気融着ユニット121を有する。符号14はテーパ部である。
図8、9において、符号41は受口部13の外周面に、受口部13の径方向に凹む凹部と該凹部の底面から突出する凸部とを有する加熱検知部41である。
図7の例においても同様の加熱検知部41を設けることができる。
図7~9において、符号125は、電気融着ユニット121に通電するための端子である。電気融着ユニット121及び端子125は、樹脂管継手15を成形した後に設けることができる。また、電気融着ユニット121及び端子125に代えて、
図2と同様の電気融着ユニット21、又は
図6と同様の電気融着ユニット21Aを設けてもよい。
【0035】
<用途>
上記実施形態の電気融着用受口付き樹脂配管部材は、例えば給水管、排水管、ガス管、空調用冷温水管などの樹脂配管部材としての電気融着用樹脂管継手や電気融着用受口付き樹脂管として好適に用いることができる。
電気融着ユニットを備えていない受口付き樹脂配管部材は、例えば他の樹脂配管部材を製造する中間材としての樹脂管や継手;シール部材や金属部材など接続部を備える異種管継手;伸縮継手などのゴム輪内蔵受口付き樹脂管や継手;ハウジングなどのメカ接合用の片受直管や継手として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 外型
1a 拡径金型
1b 円筒金型
2 内型
3 閉塞部材
3a 貫通孔
4 棒状金型
5 保持金型
5a 円柱部
5b 支持台
10 金型
11 電気融着用受口付き樹脂配管部材(電気融着用受口付き樹脂管(本樹脂管)、電気融着用樹脂管継手)
12 直管部
13 受口部
13a 端面
14 テーパ部
15 受口付き樹脂配管部材(受口付き樹脂管(樹脂管本体)、樹脂管継手)
15a 直管
21、21A、121 電気融着ユニット
22 ユニット本体
23 鍔部
23a 端面
24 電熱線
25、125 端子
31 接続相手の樹脂管
41 加熱検知部
41a 凹部
41b 凸部
51 送電側コイル
52 電源
53 磁束