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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051974
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】複合粒子、複合粒子粉体及び調光材
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20230404BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20230404BHJP
   G02F 1/169 20190101ALI20230404BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C08L101/00
G02F1/1339 500
G02F1/169
C08K3/04
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201357
(22)【出願日】2022-12-16
(62)【分割の表示】P 2018548012の分割
【原出願日】2018-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2017168362
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 恭幸
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 稔
(72)【発明者】
【氏名】上田 沙織
(57)【要約】
【課題】調光材における色むらの発生を効果的に抑制でき、調光性能を効果的に高めることができる複合粒子を提供する。
【解決手段】本発明に係る複合粒子は、顔料を含み、粒子径が、10μm以上100μm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料を含み、
粒子径が、10μm以上100μm以下である、複合粒子。
【請求項2】
20%K値が、5000N/mm以上である、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項3】
破壊歪みが、30%以上70%以下である、請求項1又は2に記載の複合粒子。
【請求項4】
破壊荷重値が、20mN以上100mN以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合粒子。
【請求項5】
全光線透過率が、5%未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合粒子。
【請求項6】
前記複合粒子100重量%中、前記顔料の含有量が、2重量%以上7重量%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合粒子。
【請求項7】
前記顔料の平均粒子径が、50nm以上350nm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の複合粒子。
【請求項8】
前記顔料が、カーボンブラックである、請求項1~7のいずれか1項に記載の複合粒子。
【請求項9】
前記カーボンブラックの表面が、ポリマーにより被覆されている、請求項8に記載の複合粒子。
【請求項10】
電圧の印加状態によって、透明状態と不透明状態との状態変化が可能である調光材において、スペーサとして用いられる、請求項1~9のいずれか1項に記載の複合粒子。
【請求項11】
前記調光材が、乗り物の窓ガラス、又は、パーテーションである、請求項10に記載の複合粒子。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の複合粒子を複数含有する複合粒子粉体であり、
前記複合粒子粉体の平均粒子径が、10μm以上100μm以下である、複合粒子粉体。
【請求項13】
第1の調光材用部材と、
第2の調光材用部材と、
前記第1の調光材用部材と前記第2の調光材用部材との間に配置された調光層とを備え、
前記調光層が、複数のスペーサを含み、
前記スペーサが、請求項1~11のいずれか1項に記載の複合粒子である、調光材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料を含む複合粒子に関する。また、本発明は、上記複合粒子を用いた複合粒子粉体及び調光材に関する。
【背景技術】
【0002】
調光ガラスや調光フィルム等の調光材は、電圧の印加の有無により、透明状態と不透明状態との状態変化が可能である性質を有し、入射光量やヘイズ等の調整が可能な物体である。また、透明状態と不透明状態との状態変化の作用機構によって、調光材は、SPD(Suspended Particle Device)方式とPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)方式とに大別される。
【0003】
調光材は、例えば、ガラスやフィルムの2枚の基材間に、液晶等を含む調光層が配置されて形成されている。上記調光材では、2枚の基材間の間隔を制御し、適切な調光層の厚みを維持するために、ギャップ制御材としてスペーサが用いられることがある。上記スペーサとしては、樹脂粒子が一般的に用いられている。
【0004】
また、上記スペーサは、スペーサ部分から光が透過する光漏れを防止し、調光材における色むらの発生を抑制するために、濃色に着色されることが要求されている。
【0005】
上記スペーサに用いられる粒子の一例として、下記の特許文献1には、高分子粒子が染料により染色された着色粒子が開示されている。上記高分子粒子は、エチレン性不飽和基を有する単量体と、エチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する単量体とを共重合させることにより得られる。
【0006】
また、下記の特許文献2には、樹脂球体の表面に、ホットメルト型接着剤層が形成されている液晶表示素子用スペーサが開示されている。上記ホットメルト型接着剤層を構成する接着剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体又は共重合体である。上記接着剤の重量平均分子量(Mw)は100000以上500000以下である。上記接着剤の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は2.0以上2.5以下である。上記接着剤のガラス転移温度は60℃以上90℃以下である。特許文献2では、上記樹脂球体は、重合体粒子の内部に、顔料が均一に分散されている着色重合体粒子であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4-103633号公報
【特許文献2】特開平8-101394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
車両等に用いられる調光材では、入射光量やヘイズ等を調整する調光性能を高めるために、2枚の基材間の間隔を広くして、調光層の厚みを厚くすることがある。特許文献2に記載のような従来のスペーサでは、スペーサの粒子径が小さいので、調光材における2枚の基材間の間隔を十分に広くすることができず、調光層の厚みを厚くすることは困難である。結果として、調光材において、入射光量やヘイズ等を調整する調光性能が低下することがある。
【0009】
また、特許文献1に記載のような従来のスペーサでは、染料によりスペーサが着色されているため、スペーサの遮光性を十分に高めることができず、光漏れが生じることがある。また、特許文献1に記載のような従来のスペーサでは、染料が調光層内に染み出すことがある。結果として、調光材に色むらが発生することがある。
【0010】
本発明の目的は、調光材における色むらの発生を効果的に抑制でき、調光性能を効果的に高めることができる複合粒子を提供することである。また、本発明の目的は、上記複合粒子を用いた複合粒子粉体及び調光材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討した結果、粒子径が比較的大きい粒子において、調光材における色むらの発生を効果的に抑制でき、調光性能を効果的に高めることができる構成を見出した。
【0012】
本発明の広い局面によれば、顔料を含み、粒子径が、10μm以上100μm以下である、複合粒子が提供される。
【0013】
本発明に係る複合粒子のある特定の局面では、20%K値が、5000N/mm以上である。
【0014】
本発明に係る複合粒子のある特定の局面では、破壊歪みが、30%以上70%以下である。
【0015】
本発明に係る複合粒子のある特定の局面では、破壊荷重値が、20mN以上100mN以下である。
【0016】
本発明に係る複合粒子のある特定の局面では、全光線透過率が、5%未満である。
【0017】
本発明に係る複合粒子のある特定の局面では、前記複合粒子100重量%中、前記顔料の含有量が、2重量%以上7重量%以下である。
【0018】
本発明に係る複合粒子のある特定の局面では、前記顔料の平均粒子径が、50nm以上350nm以下である。
【0019】
本発明に係る複合粒子のある特定の局面では、前記顔料が、カーボンブラックである。
【0020】
本発明に係る複合粒子のある特定の局面では、前記カーボンブラックの表面が、ポリマーにより被覆されている。
【0021】
本発明に係る複合粒子のある特定の局面では、前記複合粒子が、電圧の印加状態によって、透明状態と不透明状態との状態変化が可能である調光材において、スペーサとして用いられる。
【0022】
本発明に係る複合粒子のある特定の局面では、前記調光材が、乗り物の窓ガラス、又は、パーテーションである。
【0023】
本発明の広い局面によれば、上述した複合粒子を複数含有する複合粒子粉体であり、前記複合粒子粉体の平均粒子径が、10μm以上100μm以下である、複合粒子粉体が提供される。
【0024】
本発明の広い局面によれば、第1の調光材用部材と、第2の調光材用部材と、前記第1の調光材用部材と前記第2の調光材用部材との間に配置された調光層とを備え、前記調光層が、複数のスペーサを含み、前記スペーサが、上述した複合粒子である、調光材が提供される。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る複合粒子は、顔料を含み、粒子径が、10μm以上100μm以下であるので、調光材における色むらの発生を効果的に抑制でき、調光性能を効果的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る複合粒子を調光材用スペーサとして用いたPDLC方式の調光材を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る複合粒子を調光材用スペーサとして用いたSPD方式の調光材を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0028】
(複合粒子)
本発明に係る複合粒子は、顔料を含む。本発明に係る複合粒子では、例えば、樹脂部を有する。本発明に係る複合粒子では、例えば、樹脂部に顔料が含まれている。本発明に係る複合粒子は、例えば、樹脂粒子である。本発明に係る複合粒子では、粒子径が、10μm以上100μm以下である。
【0029】
本発明に係る複合粒子では、上記の構成が備えられているので、調光材における色むらの発生を効果的に抑制でき、調光性能を効果的に高めることができる。
【0030】
また、本発明に係る複合粒子では、染料ではなく顔料を用いて着色しているので、複合粒子の遮光性を十分に高めることができ、光漏れの発生を効果的に防止することができる。また、本発明に係る複合粒子では、染料ではなく顔料を用いて着色しているので、染料が調光層内に染み出すことがない。結果として、調光材における色むらの発生を効果的に抑制することができる。
【0031】
さらに、本発明に係る複合粒子では、上記の構成が備えられているので、複合粒子を調光材用スペーサとして用いた場合に、調光材において、入射光量やヘイズ等を調整する調光性能を効果的に高めることができる。例えば、本発明では、複合粒子の粒子径は比較的大きい。そのため、調光材における2枚の基材間の間隔を十分に広くすることができ、調光層の厚みを厚くすることができる。結果として、車両等に用いられる調光材において、入射光量やヘイズ等を調整する調光性能を効果的に高めることができる。
【0032】
本発明に係る複合粒子では、複合粒子の粒子径は、10μm以上100μm以下である。上記複合粒子の粒子径は、好ましくは12μm以上、より好ましくは15μm以上であり、好ましくは35μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは25μm以下、特に好ましくは20μm以下である。上記複合粒子の粒子径が、上記下限以上及び上記上限以下であると、調光材における2枚の基材間の間隔をより一層広くすることができ、調光層の厚みをより一層厚くすることができる。結果として、車両等に用いられる調光材において、入射光量やヘイズ等を調整する調光性能をより一層効果的に高めることができる。また、上記複合粒子の粒子径が、上記下限以上及び上記上限以下であると、調光材における色むらの発生をより一層効果的に抑制することができる。調光材の用途では、上記複合粒子の粒子径が10μm未満ではなく、10μm以上であることに、大きな意味がある。上記複合粒子の粒子径は、用途に応じて適宜設定することができる。上記複合粒子の粒子径が、10μm以上100μm以下であると、調光材の用途に好適に用いることができる。
【0033】
上記複合粒子の粒子径は、上記複合粒子が真球状である場合には直径を意味し、上記複合粒子が真球状以外の形状である場合には、その体積相当の真球と仮定した際の直径を意味する。
【0034】
上記複合粒子の粒子径は、例えば、任意の複合粒子を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察することにより算出することができる。
【0035】
上記複合粒子のアスペクト比は、好ましくは1.05以下、より好ましくは1.02以下である。上記複合粒子のアスペクト比の下限は特に限定されない。上記複合粒子のアスペクト比は、1以上であってもよい。上記複合粒子のアスペクト比は、長径/短径を示す。上記複合粒子のアスペクト比が、上記上限以下であると、上記複合粒子を調光材の用途に好適に用いることができる。
【0036】
複数の複合粒子の場合には、上記アスペクト比は、任意の複合粒子10個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、最大径と最小径をそれぞれ長径、短径とし、各複合粒子の長径/短径の平均値を算出することにより求められる。
【0037】
上記複合粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下である。上記複合粒子の粒子径の変動係数(CV値)の下限は特に限定されない。上記複合粒子の粒子径の変動係数(CV値)が、上記上限以下であると、上記複合粒子を調光材の用途に好適に用いることができる。
【0038】
上記変動係数(CV値)は、以下のようにして測定できる。
【0039】
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:複合粒子の粒子径の標準偏差
Dn:複合粒子の粒子径の平均値
【0040】
上記複合粒子の形状は特に限定されない。上記複合粒子の形状は、球状であってもよく、扁平状等の球状以外の形状であってもよい。
【0041】
上記複合粒子の20%K値は、好ましくは5000N/mm以上、より好ましくは5500N/mm以上であり、好ましくは7000N/mm以下、より好ましくは6500N/mm以下である。上記複合粒子の20%K値が、上記下限以上であると、調光材における調光層の厚みをより一層厚くすることができ、車両等に用いられる調光材において、入射光量やヘイズ等を調整する調光性能をより一層効果的に高めることができる。上記複合粒子の20%K値が、上記上限以下であると、調光材における基材の傷付きをより一層防止することができる。
【0042】
上記複合粒子の20%K値(複合粒子を20%圧縮したときの圧縮弾性率)は、以下のようにして測定することができる。
【0043】
微小圧縮試験機を用いて、円柱(直径100μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で、25℃、圧縮速度0.3mN/秒、及び最大試験荷重20mNの条件下で複合粒子1個を圧縮する。このときの荷重値(N)及び圧縮変位(mm)を測定する。得られた測定値から、複合粒子の20%K値(20%圧縮弾性率)を下記式により求めることができる。上記微小圧縮試験機として、例えば、島津製作所社製「微小圧縮試験機MCT-W200」、フィッシャー社製「フィッシャースコープH-100」等が用いられる。上記複合粒子の20%K値は、任意に選択された50個の複合粒子の20%K値を算術平均することにより、算出することが好ましい。
【0044】
20%K値(N/mm)=(3/21/2)・F・S-3/2・R-1/2
F:複合粒子が20%圧縮変形したときの荷重値(N)
S:複合粒子が20%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)
R:複合粒子の半径(mm)
【0045】
上記K値は、複合粒子の硬さを普遍的かつ定量的に表す。上記K値を用いることにより、複合粒子の硬さを定量的かつ一義的に表すことができる。
【0046】
上記複合粒子の圧縮回復率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であり、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下である。上記複合粒子の圧縮回復率が、上記下限以上及び上記上限以下であると、調光材における調光層の厚みをより一層厚くすることができ、車両等に用いられる調光材において、入射光量やヘイズ等を調整する調光性能をより一層効果的に高めることができる。
【0047】
上記複合粒子の圧縮回復率は、以下のようにして測定することができる。
【0048】
試料台上に粒子を散布する。散布された複合粒子1個について、微小圧縮試験機を用いて、円柱(直径100μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で、25℃で、複合粒子の中心方向に、複合粒子が1gfの荷重がかかるまで負荷(反転荷重値)を与える。その後、原点用荷重値(0.40mN)まで除荷を行う。この間の荷重-圧縮変位を測定し、下記式から圧縮回復率を求めることができる。なお、負荷速度は0.33mN/秒とする。上記微小圧縮試験機として、例えば、島津製作所社製「微小圧縮試験機MCT-W200」、フィッシャー社製「フィッシャースコープH-100」等が用いられる。
【0049】
圧縮回復率(%)=[L2/L1]×100
L1:負荷を与えるときの原点用荷重値から反転荷重値に至るまでの圧縮変位
L2:負荷を解放するときの反転荷重値から原点用荷重値に至るまでの除荷変位
【0050】
上記複合粒子の破壊歪みは、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上であり、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。上記複合粒子の破壊歪みが、上記下限以上及び上記上限以下であると、複合粒子の破壊をより一層抑制することができ、調光材における調光層の厚みをより一層厚くすることができ、車両等に用いられる調光材において、入射光量やヘイズ等を調整する調光性能をより一層効果的に高めることができる。
【0051】
上記複合粒子の破壊荷重値は、好ましくは20mN以上、より好ましくは30mN以上、さらに好ましくは40mN以上であり、好ましくは100mN以下、より好ましくは80mN以下である。上記複合粒子の破壊荷重値が、上記下限以上及び上記上限以下であると、複合粒子の破壊をより一層抑制することができ、調光材における調光層の厚みをより一層厚くすることができ、車両等に用いられる調光材において、入射光量やヘイズ等を調整する調光性能をより一層効果的に高めることができる。
【0052】
上記複合粒子の破壊歪み及び上記複合粒子の破壊荷重値は、以下のようにして測定することができる。
【0053】
試料台上に複合粒子を散布する。散布された複合粒子1個について、微小圧縮試験機を用いて、複合粒子の中心方向に、複合粒子が破壊するまで負荷(破壊荷重値)を与える。その後、複合粒子が破壊したときの変位を測定する。複合粒子の粒子径に対する破壊したときの変位の割合を破壊歪みとする。なお、負荷速度は0.33mN/秒とする。上記微小圧縮試験機として、例えば、島津製作所社製「微小圧縮試験機MCT-W200」、フィッシャー社製「フィッシャースコープH-100」等が用いられる。
【0054】
上記複合粒子の全光線透過率は、好ましくは5%未満、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下である。上記複合粒子の全光線透過率の下限は特に限定されない。上記複合粒子の全光線透過率が、上記上限以下であると、光漏れの発生をより一層効果的に防止でき、調光材における色むらの発生をより一層効果的に抑制できる。
【0055】
上記複合粒子の全光線透過率は、以下のようにして測定することができる。
【0056】
透明板(透明アクリル板等)の表面に透明の両面テープを貼り、両面テープの粘着面上に複合粒子を均一に敷きつめて付着させ、複合粒子が両面テープ上に単層に配置された評価サンプルを作製する。得られた評価サンプルを用いて、全光線透過率を測定する。上記全光線透過率は、例えば分光光度計(日本分光社製「V-670」)を用いて測定することができる。なお、ディテクターには積分球を用いることができる。
【0057】
物体の色を表すために、L*a*b*表色系が用いられることがある。L*a*b*表色系では、明度がL*を用いて表され、色相と彩度を示す色度がa*及びb*を用いて表される。上記複合粒子のL*値は、好ましくは1以上、より好ましくは5以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは15以下である。上記複合粒子のa*値は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上であり、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下である。上記複合粒子のb*値は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上であり、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。上記複合粒子のL*値、上記複合粒子のa*値及び上記複合粒子のb*値が、上記の好ましい範囲であると、光漏れの発生をより一層効果的に防止でき、調光材における色むらの発生をより一層効果的に抑制できる。
【0058】
上記複合粒子のL*値、上記複合粒子のa*値及び上記複合粒子のb*値は、以下のようにして測定することができる。
【0059】
上記複合粒子のL*値、上記複合粒子のa*値及び上記複合粒子のb*値は、JIS Z8781-4:2013に準拠して、L*a*b*表色系にて測定する。具体的には、複合粒子2.5gを測定容器(コニカミノルタ社製「CR-A50」)内に充填する。充填された複合粒子のL*値、a*値及びb*値を、色彩色差計(コニカミノルタ社製「CR-300」)を用いて測定する。
【0060】
不純物の溶出及び拡散をより一層防止する観点からは、上記複合粒子は、シランカップリング剤等のコーティング剤で表面が被覆されていることが好ましい。上記コーティング剤による被膜は、単分子膜やポリマー膜であることが好ましい。上記複合粒子は、上記被膜を有していなくてもよい。
【0061】
上記シランカップリング剤は特に限定されない。上記シランカップリング剤としては、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-[N-アリル-N-(2-アミノエチル)]アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N-アリル-N-グリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N-アリル-N-メタクリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N,N-ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;N,N-ビス[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]アミン、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、N,N-ビス[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N-グリシジル-N,N-ビス[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]アミン、N-グリシジル-N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン等のアミド系シランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン等のビニル系シランカップリング剤;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリル系シランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシジル系シランカップリング剤;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤等が挙げられる。
【0062】
コーティング剤で上記複合粒子の表面を被覆する方法は特に限定されない。コーティング剤で上記複合粒子の表面を被覆する方法としては、上記複合粒子と上記コーティング剤とを水等の無機溶媒又はアルコール等の有機溶媒中で混合し、攪拌下で加熱し、加熱後複合粒子をデカンテーション等で分離し、減圧乾燥等で溶媒を除去する方法、及び上記複合粒子と上記コーティング剤とを直接混合し、加熱する方法等が挙げられる。
【0063】
上記複合粒子は、電圧の印加状態によって、透明状態と不透明状態との状態変化が可能である調光材において、スペーサとして用いられることが好ましい。例えば、電極間へ電圧印加すると、上記調光材は透明となり、電極間へ電圧を印加しないと、上記調光材は不透明となったり、上記調光材の透明性が低下したりする。上記複合粒子は、調光材用スペーサとして用いられることが好ましい。上記複合粒子は、調光材用スペーサの用途に用いられることが好ましい。上記複合粒子は良好な圧縮変形特性を有するので、上記複合粒子をスペーサとして用いて調光材における2枚の基材間に配置する場合に、スペーサが適切な調光層の厚みを維持することができ、入射光量やヘイズ等を調整する調光性能をより一層効果的に高めることができる。さらに、上記複合粒子では、上述した構成が備えられているので、光漏れの発生をより一層効果的に防止でき、調光材における色むらの発生をより一層効果的に抑制できる。
【0064】
上記複合粒子が調光材用スペーサとして用いられる場合に、上記調光材は、調光ガラス及び調光フィルム等であることが好ましい。上記調光ガラス及び調光フィルム等の調光材は、乗り物の窓ガラス、又は、パーテーション等に用いられることが好ましい。上記乗り物としては、車両、船舶、及び航空機等が挙げられる。上記調光ガラス及び調光フィルム等の調光材は、車両、船舶、及び航空機等の乗り物の窓ガラス、又は、パーテーション等に用いられることが好ましい。上記調光材は、窓ガラス、又は、パーテーションであることが好ましく、車両、船舶、及び航空機等の乗り物の窓ガラス、又は、パーテーションであることがより好ましい。上記調光材は、車両、船舶及び航空機等の乗り物の窓ガラスであってもよく、パーテーションであってもよい。上記乗り物は、運輸機関であることが好ましい。
【0065】
上記複合粒子は、基材粒子本体と、該基材粒子本体内に顔料とを含むことが好ましい。上記基材粒子本体は、樹脂粒子本体であることが好ましい。なお、本明細書において、例えば、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」との一方又は双方を意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」との一方又は双方を意味する。
【0066】
上記複合粒子の材料及び上記基材粒子本体の材料として、種々の有機物が好適に用いられる。上記複合粒子の材料及び上記基材粒子本体の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレート及びポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ジビニルベンゼン重合体、並びにジビニルベンゼン共重合体等が挙げられる。上記ジビニルベンゼン共重合体等としては、ジビニルベンゼン-スチレン共重合体及びジビニルベンゼン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。上記複合粒子の圧縮変形特性を好適な範囲に容易に制御できるので、上記複合粒子の材料及び上記基材粒子本体の材料は、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を1種又は2種以上重合させた重合体であることが好ましい。
【0067】
上記複合粒子及び上記基材粒子本体を、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を重合させて得る場合、上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体としては、非架橋性の単量体と架橋性の単量体とが挙げられる。
【0068】
上記非架橋性の単量体としては、ビニル化合物として、スチレン、α-メチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル化合物;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリル化合物として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート化合物;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル含有単量体;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート等のハロゲン含有(メタ)アクリレート化合物;α-オレフィン化合物として、ジイソブチレン、イソブチレン、リニアレン、エチレン、プロピレン等のオレフィン化合物;共役ジエン化合物として、イソプレン、ブタジエン等が挙げられる。
【0069】
上記架橋性の単量体としては、ビニル化合物として、ジビニルベンゼン、1,4-ジビニロキシブタン、ジビニルスルホン等のビニル単量体;(メタ)アクリル化合物として、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物;アリル化合物として、トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル;シラン化合物として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のシランアルコキシド化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシシラン、ジメトキシエチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジエトキシエチルビニルシラン、エチルメチルジビニルシラン、メチルビニルジメトキシシラン、エチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、エチルビニルジエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性二重結合含有シランアルコキシド;デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シロキサン;片末端変性シリコーンオイル、両末端シリコーンオイル、側鎖型シリコーンオイル等の変性(反応性)シリコーンオイル;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体等が挙げられる。
【0070】
上記複合粒子及び上記基材粒子本体は、上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体に、上記顔料を均一に混合及び分散させて、重合させることによって得ることができる。上記の重合方法は特に限定されず、ラジカル重合、イオン重合、重縮合(縮合重合、縮重合)、付加縮合、リビング重合、リビングラジカル重合等の公知の方法により重合させることができる。この方法としては、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法、並びに非架橋の種粒子を用いてラジカル重合開始剤とともに単量体を膨潤させて重合する方法であるシード重合法及び分散重合法等が挙げられる。
【0071】
上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体に、上記顔料を均一に混合及び分散させるために、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、アトライター、サンドグラインダー、及びナノマイザー等を用いてもよい。この場合には、上記顔料の分散性を高めるために、分散剤等を添加してもよい。
【0072】
上記分散剤は特に限定されない。上記分散剤としては、ポリビニルアルコール、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子が挙げられる。さらに、上記分散剤としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、タルク、粘土、及び金属酸化物粉末等が挙げられる。
【0073】
(顔料)
本発明に係る複合粒子は、顔料を含む。上記顔料は特に限定されない。上記顔料は、上記複合粒子の全光線透過率を5%未満にすることができる顔料であることが好ましい。上記顔料は、黒色顔料であってもよく、濃紺色顔料であってもよく、濃褐色顔料であってもよい。光漏れの発生をより一層効果的に防止する観点、及び調光材における色むらの発生をより一層効果的に抑制する観点からは、上記顔料は、黒色顔料であることが好ましい。
【0074】
上記黒色顔料としては、カーボンブラック、ランプブラック、グラファイト、酸化鉄、銅-クロムの複合酸化物、及び銅-クロム-亜鉛の複合酸化物等が挙げられる。上記黒色顔料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0075】
上記濃紺色顔料としては、銅フタロシアニン、コバルトフタロシアニン、及びアルミン酸コバルト等が挙げられる。上記濃紺色顔料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0076】
上記濃褐色顔料としては、亜鉛フェライト、及び酸化鉄等が挙げられる。上記濃褐色顔料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0077】
上記顔料は、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック又は酸化鉄を含むことが好ましい。上記顔料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。光漏れの発生をより一層効果的に防止する観点、及び調光材における色むらの発生をより一層効果的に抑制する観点からは、上記顔料は、カーボンブラックであることが好ましい。
【0078】
上記カーボンブラックは特に限定されない。上記カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ロールブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック、及びアセチレンブラック等が挙げられる。上記カーボンブラックは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0079】
不純物の溶出及び拡散をより一層防止する観点からは、上記顔料は、表面がポリマーにより被覆されていることが好ましい。上記顔料の表面は、ポリマーにより被覆されていることが好ましい。不純物の溶出及び拡散をより一層防止する観点からは、上記カーボンブラックは、表面がポリマーにより被覆されていることが好ましい。上記カーボンブラックの表面は、ポリマーにより被覆されていることが好ましい。表面がポリマーにより被覆されている顔料を用いることによって、顔料の配合量が多くなっても、複合粒子の電気抵抗等の特性の低下を効果的に防止することができる。さらに、表面がポリマーにより被覆されることで顔料の分散性が向上して、より少ない配合量で複合粒子を着色することができる。上記顔料の表面を被覆するポリマーとしては、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0080】
上記熱可塑性樹脂は特に限定されない。上記熱可塑性樹脂としては、アルキド樹脂、変性アルキド樹脂、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、エステルガム、ロジン、石油樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂、塩化ゴム、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及びウレタン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0081】
上記熱可塑性樹脂を用いて上記顔料の表面を被覆する方法は特に限定されない。上記熱可塑性樹脂を用いて上記顔料の表面を被覆する方法としては、上記熱可塑性樹脂を含む疎水性溶媒中で顔料をボールミル等の粉砕機器を用いて微粉化する方法、及び上記熱可塑性樹脂を含む疎水性溶媒中に顔料の水分散物を添加及び混合することで乳化した後、加熱によって水を留去する方法等が挙げられる。
【0082】
上記顔料の平均粒子径は、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、好ましくは350nm以下、より好ましくは300nm以下である。上記顔料の平均粒子径が、上記下限以上及び上記上限以下であると、上記顔料の分散性がより一層向上し、上記顔料を複合粒子により一層均一に混合させることができる。
【0083】
上記顔料の平均粒子径は、顔料を任意の粒子径測定装置により測定した平均粒子径を意味する。例えば、レーザー光散乱、電気抵抗値変化、撮像後の画像解析等の原理を用いた粒度分布測定機が利用できる。具体的には、顔料の平均粒子径の測定方法としては、例えば、粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製「Multisizer4」)を用いて、約100000個の顔料の粒子径を測定し、平均粒子径を測定する方法が挙げられる。上記平均粒子径は、数平均粒子径を示す。
【0084】
上記複合粒子100重量%中、上記顔料の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは7重量%以下である。上記顔料の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、光漏れの発生をより一層効果的に防止でき、調光材における色むらの発生をより一層効果的に抑制できる。
【0085】
(複合粒子粉体)
本発明に係る複合粒子粉体は、上述した複合粒子を複数含有する。上記複合粒子粉体の平均粒子径は、好ましくは10μm以上、より好ましくは12μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは35μm以下である。上記複合粒子粉体の平均粒子径が、上記下限以上及び上記上限以下であると、調光材における2枚の基材間の間隔をより一層広くすることができ、調光層の厚みをより一層厚くすることができる。結果として、車両等に用いられる調光材において、入射光量やヘイズ等を調整する調光性能をより一層効果的に高めることができる。上記複合粒子粉体の平均粒子径は、用途に応じて適宜設定することができる。上記複合粒子粉体の平均粒子径が、10μm以上100μm以下であると、上記複合粒子を調光材の用途に好適に用いることができる。
【0086】
複合粒子を複数含有する複合粒子粉体の平均粒子径は、任意の個数の複合粒子を任意の粒子径測定装置により測定した平均粒子径を意味する。例えば、レーザー光散乱、電気抵抗値変化、撮像後の画像解析等の原理を用いた粒度分布測定機が利用できる。具体的には、複合粒子粉体の平均粒子径の測定方法としては、粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製「Multisizer4」)を用いて、約100000個の複合粒子の粒子径を測定し、平均粒子径を測定する方法が挙げられる。上記平均粒子径は、数平均粒子径を示す。
【0087】
(調光材)
本発明に係る調光材は、第1の調光材用部材と、第2の調光材用部材と、上記第1の調光材用部材と上記第2の調光材用部材との間に配置された調光層とを備える。本発明に係る調光材では、上記調光層が、複数のスペーサを含む。本発明に係る調光材では、上記スペーサが、上述した複合粒子である。
【0088】
調光層:
上記調光層は、調光性を有することが好ましい。上記調光性とは、電圧の印加の有無により、光の透過率等が変化し、入射光量やヘイズ等を調整することができる性質である。
【0089】
上記調光材は、上記調光層の作用機構によって、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)方式とSPD(Suspended Particle Device)方式とに大別される。
【0090】
上記調光材がPDLC方式である場合には、上記調光層は、バインダーと、上記バインダー中に分散している液晶材料とを含むことが好ましい。
【0091】
上記液晶材料は特に限定されない。上記液晶材料は、電圧の印加状態によって配向が変化する性質を有していれば、どのような液晶材料であってもよい。上記液晶材料は、上記バインダー中に連続相として分散していてもよく、上記バインダー中に液晶ドロップ状又は液晶カプセル状で分散してもよい。上記液晶材料としては、ネマチック液晶、及びコレステリック液晶等が挙げられる。
【0092】
上記コレステリック液晶の材料としては、ステロイド系コレステロール誘導体、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、安息香酸エステル系、ビフェニル系、ターフェニル系、シクロヘキシルカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ビフェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサンエステル系、シクロヘキシルエタン系、シクロヘキサン系、トラン系、アルケニル系、スチルベン系、縮合多環系等のネマチック液晶やスメクチック液晶等が挙げられる。さらに、上記コレステリック液晶の材料としては、これらの混合液晶に、シッフ塩基系、アゾ系、エステル系、ビフェニル系等の光学活性材料のカイラル成分を添加した材料等が挙げられる。上記コレステリック液晶の材料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0093】
上記バインダーは、上記液晶材料を保持し、上記液晶材料の流動を抑制する。上記バインダーは、液晶材料に溶解せず、外力に耐えうる強度を持ち、さらに、反射光及び入射光に対して高い透過性を有していれば、特に限定されない。上記バインダーの材料としては、ゼラチン、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアクリル酸系ポリマー、エチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアミジン、及びイソプレン系スルホン酸ポリマー等の水溶性高分子材料等が挙げられる。さらに、上記バインダーの材料としては、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及びエポキシ樹脂等の水性エマルジョン化できる材料等が挙げられる。上記バインダーの材料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0094】
上記バインダーは、架橋剤によって架橋されていることが好ましい。上記架橋剤は、上記バインダー間で架橋が形成され、上記バインダーを硬膜化、難溶化、又は不溶化する化合物であれば、特に限定されない。上記架橋剤としては、アセトアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリオキサール、多価金属塩化合物のカリミョウバン水和物、アジピン酸ジヒドラジド、メラミンホルマリンオリゴマ、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアミドエピクロロヒドリン、及びポリカルボジイミド等が挙げられる。上記架橋剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0095】
上記調光材がSPD方式である場合には、上記調光層は、樹脂マトリックスと、上記樹脂マトリックス中に分散している光調整懸濁液とを含むことが好ましい。
【0096】
上記光調整懸濁液は、分散媒と、分散媒中に分散した光調整粒子を含む。
【0097】
上記光調整粒子としては、ポリヨウ化物、カーボンブラック等の炭素系材料、銅、ニッケル、鉄、コバルト、クロム、チタン、アルミニウム等の金属材料、及び窒化ケイ素、窒化チタン、酸化アルミニウム等の無機化合物材料等が挙げられる。また、これらの材料がポリマーで被覆された粒子であってもよい。上記光調整粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0098】
上記分散媒は、上記光調整粒子を流動可能な状態で分散させる。上記分散媒は、上記光調整粒子に選択的に付着し、上記光調整粒子を被覆し、樹脂マトリックスとの相分離の際に上記光調整粒子が相分離された液滴相に移動するように作用し、電気導電性がなく、樹脂マトリックスとは親和性がない材料であることが好ましい。さらに、上記分散媒は、調光積層体とした際に、樹脂マトリックスとの屈折率が近似した液状共重合体であることが好ましい。上記液状共重合体としては、フルオロ基又は水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーが好ましく、フルオロ基及び水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーがより好ましい。このような共重合体を使用すると、フルオロ基又は水酸基のモノマー単位が光調整粒子に向き、残りのモノマー単位が光調整懸濁液の液滴を樹脂マトリックス中で安定化させる。このため、光調整懸濁液内に光調整粒子が分散しやすく、樹脂マトリックスとの相分離の際に光調整粒子が相分離される液滴内に誘導されやすい。
【0099】
上記フルオロ基又は水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーとしては、メタクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2-ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸3,5,5-トリメチルヘキシル/アクリル酸2-ヒドロキシプロピル/フマル酸共重合体、アクリル酸ブチル/アクリル酸2-ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2-ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2-ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2-ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2-ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2-ヒドロキシエチル共重合体、メタクリル酸1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2-ヒドロキシエチル共重合体、及びメタクリル酸1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2-ヒドロキシエチル共重合体等が挙げられる。また、これらの(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーは、フルオロ基及び水酸基の両方を有することがより好ましい。
【0100】
上記(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーの重量平均分子量は、好ましくは1000以上、より好ましくは2000以上であり、好ましくは20000以下、より好ましくは10000以下である。
【0101】
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0102】
上記調光材がSPD方式である場合には、上記調光層は、上記樹脂マトリックスを形成するための樹脂材料と、上記光調整懸濁液とを用いて、作製することができる。
【0103】
上記樹脂材料は、エネルギー線を照射することにより硬化する樹脂材料であることが好ましい。エネルギー線を照射することにより硬化する樹脂材料としては、光重合開始剤及び、紫外線、可視光線、電子線等のエネルギー線により硬化する高分子化合物を含む高分子組成物が挙げられる。上記高分子組成物としては、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体及び光重合開始剤を含む高分子組成物が挙げられる。上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体としては、非架橋性の単量体と架橋性の単量体とが挙げられる。
【0104】
上記非架橋性の単量体としては、上述した非架橋性の単量体が挙げられる。上記架橋性の単量体としては、上述した架橋性の単量体が挙げられる。
【0105】
上記光重合開始剤としては、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、及び(1-ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルケトン等が挙げられる。
【0106】
上記樹脂材料は、有機溶剤可溶型樹脂、熱可塑性樹脂、及びポリ(メタ)アクリル酸等を含んでいてもよい。また、上記樹脂材料は、着色防止剤、酸化防止剤、及び密着性付与剤等の各種添加剤を含んでいてもよく、溶剤を含んでいてもよい。
【0107】
第1の調光材用部材及び第2の調光材用部材(これらをそれぞれ調光材用部材ともいう):
上記調光材用部材の材料は、特に限定されない。上記調光材用部材は、透明基材であることが好ましい。上記第1の調光材用部材の材料と上記第2の調光材用部材の材料とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。上記調光材用部材の材料としては、ガラス板及び樹脂フィルム等が挙げられる。上記ガラス板としては、一般建築用のソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラス、及びその他用途における各種組成のガラス、並びに熱反射ガラス、熱吸収ガラス、及び強化ガラスの機能ガラス等が挙げられる。上記樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、及びアクリル樹脂フィルム等が挙げられる。透明性、成形性、接着性、加工性等に優れていることから、上記透明基材は、ガラス板又は樹脂フィルムであることが好ましく、樹脂フィルムであることがより好ましい。
【0108】
調光のための電圧を印加可能であるように、上記調光材用部材は、基材本体と、基材本体の表面に形成された透明導電膜とを備えることが好ましい。上記透明導電膜としては、インジウム錫オキサイド(ITO)、SnO、及びIn等が挙げられる。
【0109】
調光材の視認性をより一層高める観点からは、上記調光材用部材の可視光透過率は、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上である。
【0110】
上記調光材用部材の可視光透過率は、ISO13837:2008に準拠して分光測定等により測定することができる。
【0111】
図1は、本発明の一実施形態に係る複合粒子を調光材用スペーサとして用いたPDLC方式の調光材を模式的に示す断面図である。なお、図1において、調光層及び複合材料の大きさ、厚み、形状及び添加量等は、図示の便宜上、実際の大きさ及び形状から適宜変更している。
【0112】
図1に示すPDLC方式の調光材1は、第1の調光材用部材2と、第2の調光材用部材3と、調光層4とを備える。調光層4は、第1の調光材用部材2と第2の調光材用部材3との間に挟まれている。調光層4は、第1の調光材用部材2と第2の調光材用部材3との間に配置されている。第1の調光材用部材2と、第2の調光材用部材3との間において、調光層4の周囲に、シール剤が配置されていてもよい。
【0113】
調光層4は、液晶カプセル4Aと、バインダー4Bと、複合粒子6とを含む。液晶カプセル4Aは液晶材料である。液晶カプセル4Aは、バインダー4B中に分散している。液晶カプセル4Aは、バインダー4B中にカプセル状に保持されている。上記液晶材料は、カプセル状でバインダー中に分散していてもよく、上記液晶材料が連続相としてバインダー中に分散していてもよい。
【0114】
複合粒子6は、調光材用スペーサとして用いられている。複合粒子6は、第1の調光材用部材2と第2の調光材用部材3とに接触している。複合粒子6は、第1の調光材用部材2と第2の調光材用部材3とのギャップを制御している。
【0115】
第1の調光材用部材2の表面上及び第2の調光材用部材3の表面上にはそれぞれ、透明電極が形成されている(図示せず)。透明電極の材料としては、インジウム錫オキサイド(ITO)等が挙げられる。
【0116】
PDLC方式の調光材1に電圧が印加されていない状態では、液晶カプセル4A内の液晶分子の配向が均一ではないために、バインダー4Bと液晶材料との屈折率の違いにより、入射光が液晶カプセル4Aの表面や内部で屈折し、バインダー中で散乱して、不透明な状態となる。
【0117】
PDLC方式の調光材1に電圧が印加されると、液晶カプセル4A内の液晶分子が電圧に対して平行な方向に配列する。この状態でバインダー4Bと液晶材料との屈折率が同等になる場合には、光が透過することができ、透明な状態となる。
【0118】
図2は、本発明の一実施形態に係る複合粒子を調光材用スペーサとして用いたSPD方式の調光材を模式的に示す断面図である。なお、図2において、調光層及び複合材料の大きさ、厚み、形状及び添加量等は、図示の便宜上、実際の大きさ及び形状から適宜変更している。
【0119】
図2に示すSPD方式の調光材11は、第1の調光材用部材2と、第2の調光材用部材3と、調光層5とを備える。調光層5は、第1の調光材用部材2と第2の調光材用部材3との間に挟まれている。調光層5は、第1の調光材用部材2と第2の調光材用部材3との間に配置されている。
【0120】
調光層5は、光調整懸濁液の液滴5Aと、樹脂マトリックス5Bと、複合粒子6とを含む。光調整懸濁液の液滴5Aは、樹脂マトリックス5B中に分散している。光調整懸濁液の液滴5Aは、樹脂マトリックス5B中に液滴状態で保持されている。
【0121】
光調整懸濁液の液滴5Aは、分散媒5Aaと光調整粒子5Abとを含む。光調整粒子5Abは、分散媒5Aa中に分散している。
【0122】
複合粒子6は、調光材用スペーサとして用いられている。複合粒子6は、第1の調光材用部材2と第2の調光材用部材3とに接触している。複合粒子6は、第1の調光材用部材2と第2の調光材用部材3とのギャップを制御している。
【0123】
第1の調光材用部材2の表面上及び第2の調光材用部材3の表面上にはそれぞれ、透明電極が形成されている(図示せず)。透明電極の材料としては、インジウム錫オキサイド(ITO)等が挙げられる。
【0124】
SPD方式の調光材11に電圧が印加されていない状態では、光調整懸濁液の液滴5Aを構成する分散媒5Aa中に分散している光調整粒子5Abのブラウン運動により、入射光が光調整粒子5Abに吸収、散乱、又は反射され、入射光は調光層5を透過することができず、不透明な状態となる。
【0125】
SPD方式の調光材11に電圧が印加されると、光調整粒子5Abが電圧に対して平行な方向に配列する。このため、入射光は、配列した光調整粒子5Ab間を通過し、調光層5を透過することでき、透明な状態となる。
【0126】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0127】
(実施例1)
(1)複合粒子1の作製
ポリマーにより表面が被覆されたカーボンブラックを用意した。このカーボンブラック5重量部、ジビニルベンゼン47.5重量部、及びテトラメチロールメタントリアクリレート47.5重量部を混合して、分散液を得た。この分散液に、過酸化ベンゾイル20重量部を添加して均一に混合し、混合液を得た。得られた混合液を3重量%のポリビニルアルコール水溶液8500重量部中に入れ、十分に撹拌した後、ホモジナイザーで所定の乳化径となるように調整し、乳化液を得た。
【0128】
この乳化液を、温度計と撹拌機と還流冷却器とを備えた20リットルの反応釜に移し、窒素雰囲気中で撹拌しながら85℃に加熱し7時間重合反応を行い、さらに90℃で3時間加熱し重合反応を行い、重合反応液を得た。
【0129】
その後、重合反応液を冷却し、生成した粒子を水、メタノール、アセトンの順番で洗浄したのち、分級操作を行い55℃で一晩乾燥させることで、粒子径10μmの複合粒子1を得た。
【0130】
(2)調光材の作製
PDLC方式の調光材の作製:
透明かつ導電性を有するITOが蒸着されたPETフィルム2枚の間に、得られた複合粒子を5重量%分散させたこと以外は公知のPDLC層が配置された調光フィルムを作製し、2枚の透明ガラスに調光フィルムを挟みこむことでPDLC方式の調光材を作製した。
【0131】
SPD方式の調光材の作製:
透明かつ導電性を有するITOが蒸着されたPETフィルム2枚の間に、得られた複合粒子を5重量%分散させたこと以外は公知のSPD層が配置された調光フィルムを作製し、2枚の透明ガラスに調光フィルムを挟みこむことでSPD方式の調光材を作製した。
【0132】
(実施例2)
複合粒子1の作製の際に、分級条件を変更することで、複合粒子1と粒子径が異なる粒子径15μmの複合粒子2を得た。複合粒子1の代わりに、複合粒子2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、調光材を作製した。
【0133】
(実施例3)
複合粒子1の作製の際に、分級条件を変更することで、複合粒子1と粒子径が異なる粒子径20μmの複合粒子3を得た。複合粒子1の代わりに、複合粒子3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、調光材を作製した。
【0134】
(実施例4)
複合粒子1の作製の際に、分級条件を変更することで、複合粒子1と粒子径が異なる粒子径25μmの複合粒子4を得た。複合粒子1の代わりに、複合粒子4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、調光材を作製した。
【0135】
(実施例5)
複合粒子1の作製の際に、分級条件を変更することで、複合粒子1と粒子径が異なる粒子径35μmの複合粒子5を得た。複合粒子1の代わりに、複合粒子5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、調光材を作製した。
【0136】
(実施例6)
複合粒子1の作製の際に、分級条件を変更することで、複合粒子1と粒子径が異なる粒子径97μmの複合粒子6を得た。複合粒子1の代わりに、複合粒子6を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、調光材を作製した。
【0137】
(比較例1)
複合粒子1の作製の際に、ポリマーにより表面が被覆されたカーボンブラック5重量部を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、粒子径10μmの複合粒子を得た。得られた粒子と、染料(日本化薬社製「KAYALON POLYESTER BLACK TN200」)とを用いて染色を行い、水、メタノールの順番で洗浄したのち、55℃で一晩乾燥させることで、染色された粒子径10μmの複合粒子7を得た。複合粒子1の代わりに、複合粒子7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、調光材を作製した。
【0138】
(比較例2)
複合粒子1の作製の際に、分級条件を変更することで、複合粒子1と粒子径が異なる粒子径5μmの複合粒子8を得た。複合粒子1の代わりに、複合粒子8を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、調光材を作製した。
【0139】
(比較例3)
複合粒子の作製の際に、分級条件を変更することで、粒子径105μmの複合粒子9を得た。複合粒子1の代わりに、複合粒子9を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、調光材を作製した。
【0140】
(評価)
(1)複合粒子の粒子径
得られた複合粒子について、電子顕微鏡にて観察することにより、粒子径を算出した。
【0141】
(2)複合粒子粉体の平均粒子径
得られた複合粒子を複数含有する複合粒子粉体について、粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製「Multisizer4」)を用いて、約100000個の複合粒子の粒子径を測定し、平均粒子径を算出した。
【0142】
(3)複合粒子の20%K値
得られた複合粒子について、フィッシャー社製「フィッシャースコープH-100」を用いて、上述した方法で、複合粒子の20%K値を測定した。
【0143】
(4)複合粒子の破壊歪み及び複合粒子の破壊荷重値
得られた複合粒子について、フィッシャー社製「フィッシャースコープH-100」を用いて、上述した方法で、複合粒子の破壊歪み及び複合粒子の破壊荷重値を測定した。
【0144】
(5)複合粒子の全光線透過率
得られた複合粒子について、日本分光社製「V-670」を用いて、上述した方法で、複合粒子の全光線透過率を測定した。
【0145】
(6)複合粒子のL*値、複合粒子のa*値及び複合粒子のb*値
得られた複合粒子について、コニカミノルタ社製「CR-A50」及び「CR-300」を用いて、上述した方法で、複合粒子のL*値、複合粒子のa*値及び複合粒子のb*を測定した。
【0146】
(7)色むら
得られた調光材について、色むらが発生しているか否かを目視で評価した。色むらを以下の基準で判定した。
【0147】
[色むらの判定基準]
○:色むらが発生していない
△:色むらがごくわずかに発生している(実使用上問題なし)
×:色むらが発生している
【0148】
(8)調光性能(ヘイズ)
得られた調光材について、電圧を印加した場合と電圧を印加していない場合とにおけるヘイズを算出した。ヘイズは、東京電色社製「ヘイズメーター TC-H3PDK」を用いて測定を実施した。得られたヘイズを調光材の調光性能として評価した。調光性能を下記の基準で判定した。
【0149】
[調光性能(ヘイズ)の判定基準(電圧未印加時)]
○:ヘイズが98%以上
△:ヘイズが95%以上98%未満
×:ヘイズが95%未満
【0150】
[調光性能(ヘイズ)の判定基準(電圧印加時)]
○:ヘイズが4%未満
△:ヘイズが4%以上6%未満
×:ヘイズが6%以上
【0151】
結果を下記の表1に示す。
【0152】
【表1】
【符号の説明】
【0153】
1…PDLC方式の調光材
2…第1の調光材用部材
3…第2の調光材用部材
4,5…調光層
4A…液晶カプセル
4B…バインダー
5A…光調整懸濁液の液滴
5Aa…分散媒
5Ab…光調整粒子
5B…樹脂マトリックス
6…複合粒子
11…SPD方式の調光材
図1
図2