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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005337
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】浴室器具
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/12 20060101AFI20230111BHJP
   E04F 11/18 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A47K3/12
E04F11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107170
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森下 正彦
(72)【発明者】
【氏名】永井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 賢司
【テーマコード(参考)】
2D132
2E301
【Fターム(参考)】
2D132DA00
2E301HH01
(57)【要約】
【課題】取付作業を容易に行うことができる浴室器具を提供する。
【解決手段】浴室器具1は、器具本体2と、補強板10と、固定部20とを備えている。補強板10は、浴室Bの壁部材90の室内側である前面90A側に配置され、壁部材90にねじS1によって固定される薄板状をなしている。固定部20は器具本体2に連結される。固定部20は、補強板10にボルトS2によって固定される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具本体と、
浴室の壁部材の室内側に配置され、前記壁部材にねじ固定される薄板状の補強板と、
前記器具本体に連結され、前記補強板にボルト固定される固定部と、
を備えている浴室器具。
【請求項2】
前記壁部材は、前記補強板をねじ固定する剛体を浴室内側に配置している請求項1に記載の浴室器具。
【請求項3】
前記補強板は、前記固定部をボルト固定するボルト固定部と、前記補強板を前記壁部材にねじ固定するねじが挿入される貫通孔とが形成されている請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載の浴室器具。
【請求項4】
前記ボルト固定部は、前記固定部をボルト固定するボルトがねじ込まれるねじ孔である請求項3に記載の浴室器具。
【請求項5】
前記貫通孔は前記ボルト固定部を挟んで両側に形成されている請求項3及び請求項4のいずれか一項に記載の浴室器具。
【請求項6】
前記ボルト固定部を挟んで両側に形成されている前記貫通孔の数は、前記ボルト固定部から見て前記両側の方向に対して直交する方向に形成されている前記貫通孔の数よりも多い請求項5に記載の浴室器具。
【請求項7】
前記補強板は補強用のリブが設けられている請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の浴室器具。
【請求項8】
前記リブは、前記補強板の板面に沿って直線状に延びている請求項7に記載の浴室器具。
【請求項9】
前記補強板は、前記壁部材に対しての取り付け方向を表示する表示部を有している請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の浴室器具。
【請求項10】
前記補強板を覆う化粧カバーを備えている請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の浴室器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浴室器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、従来の浴室器具を開示している。この浴室器具は、浴室の壁部材の表側にネジを用いて取り付けられる。ネジは、壁部材を貫通して挿入され、壁部材の裏側に配置される補強部材に締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-070947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の浴室器具においては、壁部材の裏側に、補強部材等の部材を配置するための空間や作業スペースがない場合には取り付けることができない、といった課題があった。仮に壁部材の裏側に補強部材の配置空間や作業スペースがあったとしても、取付作業として浴室の内側と外側の両側での作業を必要とするため煩雑であった。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、取付作業を容易に行うことができる浴室器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る浴室器具は、器具本体と、浴室の壁部材の室内側に配置され、前記壁部材にねじ固定される薄板状の補強板と、前記器具本体に連結され、前記補強板にボルト固定される固定部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る浴室器具を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る浴室器具を示す側断面図である。
図3】実施形態に係る浴室器具を示す分解斜視図である。
図4】実施形態に係る補強板を示す部分断面斜視図である。
図5】実施形態に係る化粧カバーを示す斜視図である。
図6】実施形態に係る浴室器具の取り付け方法を説明するための図であり、壁部材に補強板を貼り付ける様子を示す。
図7】実施形態に係る浴室器具の取り付け方法を説明するための図であり、壁部材に補強板をねじ止めする様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
本実施形態に係る浴室器具1は、図1及び図2に示すように、浴室Bの壁部材90に取り付けられる。本実施形態において、浴室器具1は手すりである。浴室器具1は器具本体2を備えている。器具本体2は、手すりにおける把持する部分である。浴室器具1は、直管状をなす器具本体2の軸を壁部材90における浴室B側の面である前面90Aに沿って配置して、壁部材90に取り付けられる。
【0009】
以下の説明において、浴室器具1における方向は壁部材90に取り付けられた状態を基準とする。前後方向は、壁部材90における前面90Aの正面方向を前方、その反対方向を後方と定義する。上下方向及び左右方向は、浴室B内側から壁部材90を見た方向をそのまま上下方向及び左右方向とする。各図に示すX軸、Y軸、及びZ軸は、それぞれ前後方向、左右方向、及び上下方向を表す。X軸、Y軸、及びZ軸において、各軸の正方向をそれぞれ前方、左方、及び上方とする。
【0010】
図1及び図2に示すように、壁部材90は、鋼板91及び石膏ボード92を有している。鋼板91は剛体である。ここでいう「剛体」とは、壁部材90において必要とされる強度を有するものであればよく、物理学でいう厳密な剛体に限定されない。石膏ボード92は、壁部材90における断熱材として機能する。石膏ボード92は、鋼板91の一面側に貼り付けられている。壁部材90は、鋼板91側の面を浴室Bの室内側に配置するとともに、石膏ボード92を浴室Bの室外側に配置する。壁部材90の全体の厚さは10mm程度である。
【0011】
図1から図3に示すように、浴室器具1は、補強板10と、固定部20とを備えている。補強板10は、壁部材90における浴室B内側に配置される。補強板10は薄板状をなしている。補強板10は、壁部材90に対してねじS1によって固定される。固定部20は、補強板10に対してボルトS2によって固定される。
【0012】
図4に示すように、補強板10は長方形状をなしている。補強板10は、例えば厚さ2mmのステンレス板等、金属の薄板を板金加工することによって形成される。本実施形態の場合、補強板10は、長方形状における長手方向を上下方向、短手方向を左右方向として壁部材90に取り付けられる。補強板10は、ボルト固定部11と、貫通孔12とを形成している。ボルト固定部11はボルトS2がねじ込まれるねじ孔を形成している。ボルト固定部11は、補強板10における上下左右の中央部に形成されている。ボルト固定部11における孔の内周面には、ボルトS2が螺合するめねじが形成されている。
【0013】
図4に示すように、ボルト固定部11は、バーリング加工によって孔の周囲を補強板10の後面側に突出させたバーリング部11Aを有している。ボルト固定部11におけるめねじは、補強板10の前面側からバーリング部11Aの先端まで連続して形成されている。バーリング部11Aにおける補強板10の後面からの突出量は、補強板10の板厚と同程度としている。
【0014】
貫通孔12は、補強板10を壁部材90に固定するねじS1が挿入される。ねじS1はタッピングビスである。本実施形態の場合、貫通孔12は複数形成されている。複数の貫通孔12は、ボルト固定部11を挟んで両側に形成されている。具体的には、複数の貫通孔12は、ボルト固定部11を挟んだ両側であって補強板10における短手方向の両端部において、補強板10における長手方向に沿って3つずつ並んで形成されている。すなわち、貫通孔12は、6つ形成されている。ボルト固定部11から見て、短手方向両側の貫通孔12の数は、長手方向両側の貫通孔12の数よりも多い。具体的には、ボルト固定部11から見た貫通孔12の数は、短手方向両側において6つであり、長手方向両側において4つである。
【0015】
本実施形態において、補強板10にはリブ13が形成されている。リブ13は、補強板10の前面から断面凸状に突出している。リブ13は、補強板10の後面側からプレス成形によって押し出されている。リブ13は、補強板10の短手方向に沿って直線状に延びている。リブ13は2つ形成されている。2つのリブ13は、補強板10の長手方向におけるボルト固定部11の両側に形成されている。各リブ13は、補強板10の強度確保とともに、浴室器具1を壁部材90に取り付けた状態において後述する化粧カバー30における立壁部34の内周面に接触することで、化粧カバー30の回り止めとしても機能する。
【0016】
補強板10は、耐荷重に方向性を有する。具体的には、補強板10は、長手方向に沿って作用する外力に対する耐荷重と、短手方向に沿って作用する外力に対する耐荷重とを比較した場合、短手方向における耐荷重のほうが大きい。これは、貫通孔12がボルト固定部11を挟んで短手方向の両側に形成されているため、及びリブ13が短手方向に沿って延伸して形成されているためである。
【0017】
補強板10の後面には粘着シート14が貼付されている。粘着シート14は、発泡ポリエチレン製のシート状基材の両面にアクリル系粘着剤を塗布して形成されている。粘着シート14には、補強板10におけるボルト固定部11及び貫通孔12に対応する位置に、それぞれ孔が形成されている。
【0018】
図4に示すように、補強板10は表示部15を有している。表示部15は、補強板10を壁部材90に取り付ける際の取り付け方向や、取り付け方向の目安を示す文字や記号等の情報を表示する。本実施形態の場合、表示部15は、補強板10における4辺のそれぞれに分かれて配置されている。各表示部15は、補強板10の表面に刻印を施して形成されている。各表示部15は、取り付け方向を示す文字を有している。各表示部15における文字は、それぞれ異なる方向を向いて表示されている。各表示部15は、補強板10が壁部材90に正規の方向に取り付けられた状態において、各表示部15のうちのいずれか1つの文字のみが天地正しく配置されて判読され得る。
【0019】
例えば、補強板10が図4に示す方向に取り付けられた場合には、補強板10における上部に配置される表示部15の文字のみが天地正しく配置され、「タテ」と判読され得る。この「タテ」の文字によって、表示部15は、この補強板10の取り付け方向が、器具本体2を縦方向、すなわち上下に延びる方向で取り付ける場合に適切であることを示唆する。これに対し、表示部15は、「ヨコ」の文字が天地正しく配置された場合には、この方向が、器具本体2を横方向、すなわち左右に延びる方向で取り付ける場合における補強板10の取り付け方向として適切であることを示唆する。
【0020】
本実施形態の浴室器具1の場合、手すりにおける把持する部分である器具本体2は、延伸方向に対して直交する方向において比較的大きな外力が作用する。この外力は、固定部20を介し、ボルトS2に対して同方向の曲げ荷重を発生させるように作用する。補強板10は、このボルトS2に対して発生した曲げ荷重を受ける。補強板10は、この曲げ荷重の作用する方向が耐荷重の方向性に合致した方向で取り付けられることが好ましい。表示部15は、このような耐荷重に方向性を有する補強板10において、外力が比較的大きく作用する方向に合致した方向性の取り付け方向であるか否かを示す。
【0021】
図4に示すように、本実施形態において、補強板10はケガキ線16を有している。ケガキ線16は、水平線、垂直線等の基準線に対しての位置合わせの目安を表示する。ケガキ線16は表示部15を構成する。ケガキ線16は、各表示部15のそれぞれに設けられている。各ケガキ線16は、補強板10の外周部において、上下方向における中心及び左右方向における中心のいずれかに、1mm間隔で平行に2つ形成されている。
【0022】
図2に示すように、補強板10は化粧カバー30によって覆われる。化粧カバー30は、補強板10の前面側に装着される。図5に示すように、化粧カバー30は、前壁部31と、周壁部32と、ボス部33と、立壁部34とを有している。前壁部31は、補強板10よりも一回り大きな長方形状をなしている。周壁部32は、前壁部31の周縁から後方に立ち上がっている。ボス部33は、前壁部31の上下左右の中央部から後方に突出している。ボス部33は、円筒状をなしている。ボス部33の中心には前後に貫通する孔が形成されている。立壁部34は、ボス部33を取り囲むように、前壁部31の後方に立ち上がっている。
【0023】
図5に示すように、化粧カバー30における前壁部31の後面には、窪み部31Aが形成されている。窪み部31Aは、前壁部31の後面から前面側に凹状に窪んだ形態である。窪み部31Aは複数形成されている。複数の窪み部31Aは、補強板10における貫通孔12が形成されている位置に対応して形成されている。窪み部31Aは、壁部材90に取り付けられた補強板10を覆った状態において、ねじS1の頭の先端部が収納される(図2参照)。
【0024】
浴室器具1の組み付け状態において、化粧カバー30は、前壁部31によって補強板10の前面を覆うとともに周壁部32によって補強板10の端面全周を覆う。浴室器具1の組み付け状態において、化粧カバー30は、周壁部32の先端において壁部材90の前面90Aに接触するとともに、ボス部33及び立壁部34の先端において補強板10の前面に接触する。浴室器具1の組み付け状態において、化粧カバー30は、補強板10を外部から視認不能に覆う。換言すると、補強板10は、浴室器具1の組み付け状態において、化粧カバー30によってその全体を覆われ、外側からは視認不能となる。
【0025】
図1に示すように、固定部20は、器具本体2の両端にそれぞれ取り付けられている。固定部20は、固定部本体21と、カバー部材22とを有している。固定部本体21は、前方において開口して後方に向かって陥没する凹部21Aを形成している。凹部21Aの奥面には、前後方向に貫通する貫通孔21Bが形成されている。貫通孔21BにはボルトS2が貫通する。カバー部材22は、固定部本体21に着脱自在に取り付けられて固定部本体21を覆う。図2に示すように、本実施形態の固定部20は、補強板10との間に化粧カバー30を挟んで、補強板10にボルト固定される。
【0026】
上記構成の浴室器具1の取付作業の手順について説明する。以下の取付作業は全て浴室B内側から作業者が行うものである。すなわち、浴室器具1の取り付けにおいて浴室Bの外側における作業は不要である。
【0027】
浴室器具1の取り付けにあたっては、図6に示すように、壁部材90に貫通孔90Bを形成する。貫通孔90Bの形成位置は、固定部20における貫通孔21Bの位置に対応する。貫通孔90Bの形成にあたっては、例えば、器具本体2を壁部材90の前面90Aにおける所望位置に仮配置し、この状態における固定部20の貫通孔21Bの位置を目安に形成するとよい。本実施形態の場合、浴室器具1は2つの固定部20を備え、各固定部20にはそれぞれ1つの貫通孔21Bが形成されている。このため、貫通孔90Bは、器具本体2の延伸方向両端側の離れた位置に配置される各固定部20に対応して1つずつ形成される。
【0028】
図6に示すように、形成した貫通孔90Bの位置に合わせて、補強板10を壁部材90の前面90Aに取り付ける。本実施形態の場合、補強板10は、後面に粘着シート14が貼り付けられている。補強板10は、粘着シート14によって壁部材90に貼り付けて仮固定できる。この時、ボルト固定部11におけるバーリング部11Aを貫通孔90Bに納めるようにして位置合わせをする。補強板10は、浴室器具1の使用時において外力の作用が想定される方向に補強板10の短手方向を沿わせて配置するとよい。
【0029】
上述のように、本実施形態の浴室器具1の場合には、手すりにおける把持する部分である器具本体2の延伸方向に対して直交する方向において、比較的大きな外力が作用する。したがって、補強板10は、耐荷重の方向性を鑑みて、器具本体2の延伸方向に対して直交する方向の両側に貫通孔12が位置する向きで、補強板10を配置するとよい。本実施形態の場合には、表示部15における「タテ」の文字が天地正しく配置される方向で補強板10を壁部材90に取り付けることで、補強板10における耐荷重の方向性に合致した取り付け方向となる。このため、補強板10を適切な取り付け方向で取り付けることが容易である。補強板10を壁部材90に取り付けるにあたっては、貫通孔90Bの周縁部にシリコンシーラント等のシール剤を予め塗布する等、貫通孔90Bの周辺の防水対策をしておくとよい。
【0030】
補強板10を壁部材90に貼付したら、図7に示すように、貫通孔12の位置に合わせて、壁部材90にねじS1用の下孔90Cを形成する。下孔90Cの形成後はその周りにシール剤を塗布しておくとよい。ボルト固定部11のめねじにもシール剤を塗布しておくとよい。
【0031】
図7に示すように、貫通孔12に合わせてねじS1を締結する。ねじS1はタッピングビスであり、下孔90Cの内周面、実質的には、下孔90Cにおける鋼板91に形成された部分の内周面にねじ山を自己形成しつつねじ込まれる。化粧カバー30を補強板10に被せ、この状態で固定部本体21の後面を化粧カバー30の前面に当てる。ボルトS2を固定部本体21における貫通孔21Bから挿入して化粧カバー30のボス部33を貫通させ、ボルト固定部11に締結する(図2参照)。最後に固定部本体21にカバー部材22を被せて取付作業が完了する。
【0032】
上記構成の浴室器具1の作用及び効果について説明する。浴室器具1は、補強板10と、固定部20とを備えている。補強板10は、浴室Bの壁部材90の室内側である前面90A側に配置され、壁部材90にねじS1によって固定される薄板状をなしている。固定部20は、補強板10にボルトS2によって固定される。
【0033】
浴室器具1は、タッピングビスであるねじS1によって壁部材90に固定される補強板10に対して、器具本体2の両端に取り付けられる固定部20をボルトS2を用いて補強板10に固定することによって、壁部材90に取り付けられる。このように、浴室器具1は、補強板10の壁部材90への取付作業、及び固定部20の補強板10への取付作業を、それぞれ浴室Bの内側から行うことができる。このため、浴室器具1は、取付作業を容易に行うことができる。
【0034】
浴室器具1は、既設の浴室に後付けする場合に好適である。例えば、上述した特許文献1のように壁部材の裏側に固定用の部材を取り付けるものにおいては、浴室外側における作業が必要である。この場合、既設の浴室の壁部材を一旦取り外し、浴室器具の取付作業を行ない、再度壁部材を組み付ける、といった作業を要するため煩雑である。これに対し、浴室器具1は、浴室Bの内側の作業のみで極めて容易に取り付けることができる。
【0035】
壁部材90は、補強板10をねじS1によって固定する剛体としての鋼板91を浴室Bの内側に配置している。このため、例えば補強板と剛体との間に他の部材が介在する場合と比較して強固な固定を実現できる。このように、補強板10を剛体である鋼板91に直接的に固定でき、補強板10を浴室Bの内側に配置する意義は大きい。
【0036】
補強板10は、ボルト固定部11と、貫通孔12とを形成している。ボルト固定部11は、固定部20をボルト固定するボルトS2を固定する。貫通孔12は、補強板10を壁部材90にねじ固定するねじS1が挿入される。このように、補強板10は、固定部20を固定するための部分と補強板10自体を壁部材90に固定する部分とを設けたことによって、それぞれの部分において好適な固定を実現することができる。
【0037】
ボルト固定部11は、固定部20をボルト固定するボルトS2がねじ込まれるねじ孔である。このため、簡易な構成による固定部20の固定を実現することができる。
【0038】
補強板10は、6つの貫通孔12を形成している。補強板10は、6つの貫通孔12のそれぞれにねじS1を挿入して壁部材90にねじ固定することによって、壁部材90に対して固定される。このため、補強板10を壁部材90に強固に固定することができる。6つの貫通孔12は、ボルト固定部11を挟んで両側に形成されている。このため、ボルト固定部11から見て貫通孔12が位置する両側方向における耐荷重を更に高めることができる。
【0039】
ボルト固定部11を挟んで両側に形成されている貫通孔12の数は、ボルト固定部11から見てこの両側方向に対して直交する方向に形成されている貫通孔12の数よりも多い。これによって、補強板10は、耐荷重性の方向性を容易に得ることができる。このため、比較的大きな外力の作用する方向に多くの貫通孔12が配置されるように補強板10を取り付けることによって、外力を有効に受けることができる。その結果、浴室器具1は、使用時の耐荷重性を向上させることができる。
【0040】
例えば、本実施形態のように、上下方向に延びて配置された手すりである浴室器具1の場合、使用時には左右方向の外力が比較的大きく作用する。この場合、貫通孔12がボルト固定部11を挟んで並ぶ方向である補強板10の短手方向を左右方向に沿わせるようにして補強板10を壁部材90に取り付ける。このように、使用時に作用する外力の大きさに方向性がある場合にその方向に補強板10の向きを合わせて取り付けることによって、浴室器具1における使用時の耐荷重性を向上させることができる。
【0041】
補強板10は、補強用のリブ13が設けられている。このため、薄板状でありながら十分な強度を確保することができる。
【0042】
リブ13は、補強板10の板面に沿って直線状に延びている。これによって、補強板10は、耐荷重性の方向性を容易に得ることができる。このため、比較的大きな外力の作用する方向に対してリブ13の延伸方向が平行になるように補強板10を取り付けることによって、外力を有効に受けることができる。その結果、浴室器具1は、使用時の耐荷重性を向上させることができる。
【0043】
補強板10は表示部15を有している。表示部15は、壁部材90に対しての取り付け方向を表示する。このため、補強板10の適切な取り付け方向を容易に把握することができる。
【0044】
浴室器具1は、補強板10を覆う化粧カバー30を備えている。このため、所望の意匠の化粧カバーによって補強板10及び補強板10を壁部材90に固定するねじS1を隠蔽でき、意匠性の向上を図ることができる。化粧カバー30を備えたことによって、例えば、化粧カバーを意匠性の観点で設計することで、補強板については、意匠性を考慮することなく、求められる機能に応じた適切な強度で設計を行うことができる。すなわち、所望の強度を有する補強板を容易に得ることができる。
【0045】
浴室器具1は、固定部20を補強板10のボルト固定部11にボルト固定する構造である。このため、同様の構造を有する他の浴室器具の固定部であれば、壁部材90にねじ固定した補強板10はそのままに、容易に交換して取り付け可能である。
【0046】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施の形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0047】
本開示に係る浴室器具は、上記実施形態において例示した手すりに限定されない。浴室器具としては、例えば、シャワーヘッドを掛けるためのシャワーフック、浴槽保温用の蓋を宙に浮かせた状態で支持する蓋受け部材、浴室用カウンター、浴室用棚、浴室用バスケット等、浴室の壁部材に取り付けられる種々の器具を挙げることができる。特に、手すりのように、比較的大きな外力が作用する器具に好適である。
【0048】
本開示に係る壁部材の構成は、上記実施形態に限定されない。壁部材が浴室内側に剛体を配置した構成の場合、剛体は、例えば、タイル等の鋼板以外のものであってもよい。
【0049】
補強板を構成する板材は上記実施形態において例示したステンレス板に限定されない。補強板を構成する板材としては、例えば、鋼板、アルミニウム板等の金属板を挙げることができる。補強板を構成する板材は、耐腐食性に優れたものであることが好ましい。
【0050】
補強板を構成する板材の厚さは、例えば、1.0mmから3.0mmまでの範囲であることができる。すなわち、本開示において、薄板状とは、厚さ1.0mmから3.0mmまでの範囲であることを意図している。この範囲の厚さの金属板であれば、補強板として十分な強度を確保することができるとともに、壁部材の表面からの張出量を抑えることができて好適である。
【0051】
本開示に係るボルト固定部の形態は、上記実施形態に限定されない。ボルト固定部は、例えば、おねじを有するボルト部材を溶接等によって補強板に取り付ける形態であってもよい。ボルト固定部は、複数形成されていてもよい。
【0052】
本開示に係る補強板において、貫通孔の数は上記実施形態に限定されない。貫通孔は、少なくとも2つ形成されていることが好ましい。貫通孔は、3つ以上形成されていることが一層好ましい。この場合、補強板は、3つ以上の貫通孔が形成されるとともに、それらの貫通孔を頂点とする多角形の内側にボルト固定部が形成されていると一層好ましい。
【0053】
本開示に係る補強板において、表示部を有することは必須ではない。表示部を有する場合、その数、形成形態、表示形態等は上記実施形態に限定されない。表示部としては、例えば、記号、図形、模様等を表示するものであってもよい。表示部の表示内容は、補強板の耐荷重の方向性に関する内容に限定されず、例えば、単に取り付け方向の方向性に関する内容等であってもよい。表示部の表示内容は、補強板の適切な取り付け方向を把握できるものであればよい。
【0054】
本開示に係る補強板において、後面に粘着シートが貼り付けられていることは必須ではない。補強板は、粘着シート等を介さず、壁部材に直接的に取り付けられていてもよい。
【0055】
本開示に係る固定部の形状、個数等は特に限定されない。固定部の個数は、例えば、1つの器具本体に対して1つでもよいし、1つの器具本体に対して3つ以上であってもよい。シャワーヘッドのように1つの器具本体に対して1つの固定部を設ける場合には、固定部自体の回り止めといった観点から、2つ以上のボルトによって固定部をボルト固定することが好ましい。この場合、補強板におけるボルト固定部は、固定部における貫通孔の数と同数以上が設けられているとよい。
【0056】
器具本体に対する固定部の連結形態は特に限定されない。固定部は、例えば、器具本体に対して、ボルト固定、ねじ固定、接着等によって連結されていることができる。固定部は、器具本体に一体に設けられていてもよい。
【0057】
本開示に係る器具本体とは、手すりにおける把持する部分、シャワーフックにおけるシャワーヘッドを掛ける部分等、浴室器具としての機能を発揮し得る部分を意図している。器具本体は、例えば、2以上の異なる機能を発揮し得るものであってもよい。
【0058】
化粧カバーを備えることは必須ではない。本開示に係る浴室器具は、固定部が補強板に直接的にボルト固定される構成であってもよい。
【0059】
補強板のねじ固定に用いるねじの種類は、上記実施形態に限定されない。ねじは、例えば、ドリル付きタッピングビスを用いてもよい。この場合、ねじ用の下孔を形成することなく補強板をねじ固定することができる。
【0060】
本開示において、「ボルト固定」とは、ボルト及びナットのように、おねじが予め形成されている部材と、めねじが予め形成されている部材との係合による固定全般を意図している。これに対し、本開示に係る「ねじ固定」とは、タッピングビスのように、ねじの形成されていない他部材にねじ込まれることによって、壁部材やプラグ等の他部材側にねじ山を自己形成しつつ締結される部材を用いた固定全般を意図している。
【符号の説明】
【0061】
1…浴室器具、10…補強板、11…ボルト固定部、12…貫通孔、13…リブ、14…化粧カバー、20…固定部、90…壁部材、B…浴室、S1…ねじ、S2…ボルト
図1
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図7