(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053745
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20230406BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20230406BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20230406BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230406BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20230406BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
B60L3/00 J
B60L50/60
B60L9/18 J
H02M7/48 L
H02M3/28 B
H02M3/28 K
H02J7/00 P
H02J7/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162967
(22)【出願日】2021-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】橘 俊英
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5G503BA02
5G503BB01
5G503BB05
5G503DA02
5G503EA08
5G503FA06
5G503FA16
5G503GB04
5G503GB06
5H125AA01
5H125AC12
5H125BB09
5H125EE13
5H125EE47
5H125EE48
5H125EE70
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS08
5H730AS17
5H730BB23
5H730BB43
5H730FD11
5H730FF09
5H730FG12
5H730XC09
5H770BA02
5H770CA01
5H770DA02
5H770FA04
5H770HA03W
5H770JA17W
(57)【要約】
【課題】DC/DCコンバータへの電力供給の停止が正常に行われなくなっていることを安価に検出することができるようにする。
【解決手段】車両制御装置は、電動モータを駆動させるインバータと、高電圧バッテリの電圧を降圧するDC/DCコンバータと、高電圧バッテリの電圧のインバータおよびDC/DCコンバータへの入力のオン/オフを切り替えるメインリレーと、プリチャージリレーを有するプリチャージ回路と、インバータおよびDC/DCコンバータの入力電圧Vを検出する電圧検出部と、コントローラとを備え、コントローラは、プリチャージが完了した後、メインリレーがオンかつプリチャージリレーがオフの状態にする前に、その間のインバータおよびDC/DCコンバータの入力電圧Vのレベルがインバータのプリチャージ完了時のレベルよりも低下した場合、DC/DCコンバータへの電源電力供給の停止が正常に行われていないと判断する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行の動力源である電動モータ、前記電動モータを駆動するための高電圧を出力する高電圧バッテリ、低電圧で稼働する車載機器、および前記車載機器を稼働させるための低電圧を出力する低電圧バッテリを備えた電動車両を制御する車両制御装置であって、
前記高電圧バッテリから出力された電圧を用いて前記電動モータを駆動させるインバータと、
前記高電圧バッテリから出力された電圧を降圧し、前記低電圧バッテリの充電または前記車載機器の稼働に用いる電圧を出力するDC/DCコンバータと、
前記高電圧バッテリから出力された電圧の前記インバータおよび前記DC/DCコンバータへの入力のオン/オフを切り替えるメインスイッチと、
前記高電圧バッテリから出力された電流を用いてプリチャージ電流を生成するプリチャージ電流生成部、および前記プリチャージ電流の前記インバータへの入力のオン/オフを切り替えるプリチャージスイッチを有するプリチャージ回路と、
前記高電圧バッテリから前記インバータおよび前記DC/DCコンバータに入力された入力電圧を検出する電圧検出部と、
前記メインスイッチがオフかつ前記プリチャージスイッチがオンの状態にすることにより前記プリチャージ電流を前記インバータに入力して前記インバータのプリチャージを開始し、前記インバータのプリチャージの完了後に、前記メインスイッチがオンかつ前記プリチャージスイッチがオフの状態にするコントローラとを備え、
前記インバータおよび前記DC/DCコンバータは前記高電圧バッテリに互いに並列に接続され、
前記メインスイッチおよび前記プリチャージ回路は、前記高電圧バッテリと、前記インバータおよび前記DC/DCコンバータとを接続する経路の途中に互いに並列に接続され、
前記コントローラは、前記インバータのプリチャージが完了した後、前記メインスイッチがオンかつ前記プリチャージスイッチがオフの状態にする前に、前記電圧検出部により検出された入力電圧が前記インバータのプリチャージの完了時点に前記高電圧バッテリから前記インバータおよび前記DC/DCコンバータに入力された入力電圧よりも低下したか否かを判断し、前記電圧検出部により検出された入力電圧が前記インバータのプリチャージの完了時点に前記高電圧バッテリから前記インバータおよび前記DC/DCコンバータに入力された入力電圧よりも低下した場合には、前記DC/DCコンバータの電源から前記DC/DCコンバータへの電力供給の停止が正常に行われていないと判断することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
入力された電圧を降圧し、降圧した電圧を出力する動作を前記DC/DCコンバータが行うことができる前記DC/DCコンバータの入力電圧の下限値を降圧動作下限電圧といい、前記降圧動作下限電圧以上の電圧が入力されていない状態の前記DC/DCコンバータに前記降圧動作下限電圧以上の電圧を入力してから、前記DC/DCコンバータが当該入力された電圧を降圧し、降圧した電圧を出力するようになるまでにかかる時間を降圧動作開始所要時間というとすると、
前記コントローラは、前記インバータのプリチャージを開始した後において、前記電圧検出部により検出された入力電圧が前記降圧動作下限電圧に達した時点から前記降圧動作開始所要時間が経過し、かつ前記インバータのプリチャージが完了した後、前記メインスイッチがオンかつ前記プリチャージスイッチがオフの状態にする前に、前記電圧検出部により検出された入力電圧が前記インバータのプリチャージの完了時点に前記高電圧バッテリから前記インバータおよび前記DC/DCコンバータに入力された入力電圧よりも低下したか否かを判断することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
入力された電圧を降圧し、降圧した電圧を出力する動作を前記DC/DCコンバータが行うことができる前記DC/DCコンバータの入力電圧の下限値を降圧動作下限電圧といい、前記降圧動作下限電圧以上の電圧が入力されていない状態の前記DC/DCコンバータに前記降圧動作下限電圧以上の電圧を入力してから、前記DC/DCコンバータが当該入力された電圧を降圧し、降圧した電圧を出力するようになるまでにかかる時間を降圧動作開始所要時間というとすると、
前記コントローラは、前記インバータのプリチャージを開始した後において、前記電圧検出部により検出された入力電圧が前記降圧動作下限電圧に達した時点から判断待機時間が経過し、かつ前記インバータのプリチャージが完了した後、前記メインスイッチがオンかつ前記プリチャージスイッチがオフの状態にする前に、前記電圧検出部により検出された入力電圧が前記高電圧バッテリの通常の放電電圧の下限値よりも低下したか否かを判断し、
前記判断待機時間は、前記降圧動作開始所要時間に所定の付加時間を加えた時間であることを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の制御を行う車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、ハイブリッド車等の電動車両は、走行の動力源としての電動モータ、電動モータを駆動するための高電圧を出力する高電圧バッテリ、例えば12Vの低電圧で稼働する電気・電子機器である車載機器、車載機器に電力を供給する低電圧バッテリ、および電動車両の制御を行う車両制御装置を備えている。
【0003】
車両制御装置は、電動モータを駆動させるインバータ、および低電圧バッテリの充電および車載機器への電力供給を行うために、高電圧バッテリの電圧を例えば12Vの電圧に降圧するDC(Direct Current)/DCコンバータを備えている。
【0004】
さらに、車両制御装置は、高電圧バッテリからインバータおよびDC/DCコンバータへの電圧の入力のオン/オフを切り替えるメインリレー、およびインバータのプリチャージを行うプリチャージ回路を備えている。プリチャージ回路には、高電圧バッテリからの電流の電流値を下げることによりプリチャージ電流を生成するプリチャージ抵抗、およびプリチャージ電流のインバータへの入力のオン/オフを切り替えるプリチャージリレーが設けられている。
【0005】
さらに、車両制御装置は、高電圧バッテリからインバータおよびDC/DCコンバータに入力された入力電圧を検出する電圧検出回路、および電動車両に関する種々の制御を行うコントローラを備えている。コントローラは、メインリレーのオープン/クローズの切替制御、プリチャージリレーのオープン/クローズの切替制御、インバータの稼働/停止の切替制御、DC/DCコンバータの稼働/停止の切替制御等を行う。
【0006】
車両制御装置において、インバータおよびDC/DCコンバータは高電圧バッテリに互いに並列に接続されている。また、メインリレーおよびプリチャージ回路は、高電圧バッテリと、インバータおよびDC/DCコンバータとを接続する経路の途中に互いに並列に接続されている。
【0007】
メインリレーがオープンであり、プリチャージリレーがクローズであるときには、高電圧バッテリからインバータにプリチャージ回路を介してプリチャージ電流が入力される。一方、メインリレーがクローズであり、プリチャージリレーがオープンであるときには、高電圧バッテリからインバータに、インバータの稼働に必要な駆動電流が入力される。また、メインリレーおよびプリチャージリレーのいずれかがクローズであるときには、高電圧バッテリから出力された電圧がインバータおよびDC/DCコンバータにそれぞれ入力される。
【0008】
また、DC/DCコンバータには、高電圧バッテリの電圧を降圧するために、高電圧バッテリからの電圧が入力されるが、これとは別に、DC/DCコンバータ自体を稼働させるために、低電圧バッテリから電力が供給される。また、DC/DCコンバータは、自身を制御する稼働制御回路を有している。この稼働制御回路は、DC/DCコンバータが低電圧バッテリからの電力供給を受けるか否かを切り替える機能を有している。
【0009】
コントローラは、DC/DCコンバータの稼働制御回路を制御することにより、DC/DCコンバータの稼働/停止の切替を制御する。具体的には、コントローラは、DC/DCコンバータに稼働制御信号を出力する。例えば、DC/DCコンバータの稼働制御回路は、コントローラから出力された稼働制御信号の電圧レベルが第1のレベルのときには、DC/DCコンバータの状態を、低電圧バッテリからの電力供給を受ける状態にする。これにより、DC/DCコンバータは稼働する。一方、コントローラから出力された稼働制御信号の電圧レベルが第2のレベルのときには、DC/DCコンバータの稼働制御回路は、DC/DCコンバータの状態を、低電圧バッテリからの電力供給を絶つ状態にする。これにより、DC/DCコンバータは停止する。
【0010】
以上の構成を有する車両制御装置は次のように動作する。車両の電源スイッチがオフである間、コントローラはアイドル状態になっている。また、車両の電源スイッチがオフである間、DC/DCコンバータの稼働制御回路は、アイドル状態のコントローラからDC/DCコンバータに出力された第2のレベルの稼働制御信号に従い、DC/DCコンバータの状態を、低電圧バッテリからの電力供給を絶つ状態にしている。その結果、DC/DCコンバータは停止している。また、車両の電源スイッチがオフである間、インバータは停止しており、また、メインリレーおよびプリチャージリレーはいずれもオープンになっている。
【0011】
車両の電源スイッチがオンになったとき、コントローラはアクティブ状態になる。コントローラは、メインリレーをオープンにしたまま、プリチャージリレーをクローズする。これにより、高電圧バッテリからインバータにプリチャージ回路を介してプリチャージ電流が入力され、インバータのプリチャージが行われる。
【0012】
インバータのプリチャージが完了すると、高電圧バッテリからインバータに入力される入力電圧が、高電圧バッテリの通常の放電電圧と略等しくなる。コントローラは、電圧検出回路から出力された検出信号に基づいて、高電圧バッテリからインバータに入力された入力電圧を認識し、インバータのプリチャージが完了したことを認識する。その後、コントローラは、メインリレーをクローズし、プリチャージリレーをオープンする。
【0013】
その後、コントローラは、DC/DCコンバータに出力する稼働制御信号の電圧レベルを第2のレベルから第1のレベルに切り替える。これにより、DC/DCコンバータの稼働制御回路は、DC/DCコンバータの状態を、低電圧バッテリからの電力供給を受ける状態にする。これにより、DC/DCコンバータが稼働を開始し、高電圧バッテリから出力された電圧を降圧する動作を行うようになる。そして、DC/DCコンバータにより降圧された電圧により、低電圧バッテリの充電および車載機器への電力供給が行われる。また、コントローラは、インバータを稼働させる。
【0014】
その後、車両の電源スイッチがオフになったとき、コントローラはメインリレーをオープンする。これにより、高電圧バッテリからインバータへの駆動電流の入力が停止し、また、インバータおよびDC/DCコンバータの入力電圧はいずれも零になる。続いて、コントローラは、DC/DCコンバータに出力する稼働制御信号の電圧レベルを第1のレベルから第2のレベルに切り替える。これにより、DC/DCコンバータの稼働制御回路は、DC/DCコンバータの状態を、低電圧バッテリからの電力供給を絶つ状態にする。これにより、DC/DCコンバータが停止し、低電圧バッテリの充電または車載機器への電力供給が行われなくなる。また、コントローラはインバータを停止させる。
【0015】
下記の特許文献1には、上記車両制御装置と類似した装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記車両制御装置において、車両の電源スイッチがオフになったとき、DC/DCコンバータの稼働制御回路は、コントローラから出力された稼働制御信号に従い、DC/DCコンバータの状態を、低電圧バッテリからの電力供給を絶つ状態にする。これにより、低電圧バッテリからDC/DCコンバータへの電力供給が停止する。ところが、車両の電源スイッチがオフになったにも拘わらず、低電圧バッテリからDC/DCコンバータへの電力供給が停止しないという異常が発生することがあり得る。
【0018】
例えば、上記DC/DCコンバータの稼働制御回路は、コントローラから出力された稼働制御信号が接地レベルのときに、DC/DCコンバータの状態を、低電圧バッテリからの電力供給を受ける状態にし、コントローラから出力された稼働制御信号が非接地レベルのときに、DC/DCコンバータの状態を、低電圧バッテリからの電力供給を絶つ状態にするように構成されているものとする。この場合において、何らかの原因により、コントローラからDC/DCコンバータへ稼働制御信号を送る経路が地絡した場合には、DC/DCコンバータに接地レベルの稼働制御信号が常時入力されているに等しい状態になる。それゆえ、DC/DCコンバータは、コントローラからの稼働制御信号に従って、低電圧バッテリからの電力供給を絶つことができなくなる。その結果、電源スイッチがオフになっても、低電圧バッテリからDC/DCコンバータへの電力供給が継続することになる。
【0019】
電源スイッチがオフになっている間は、メインリレーおよびプリチャージリレーがいずれもオープンになっているため、高電圧バッテリの電圧はDC/DCコンバータに入力されない。したがって、DC/DCコンバータに低電圧バッテリから電力が供給されている状態であっても、DC/DCコンバータは降圧動作を行わない。しかしながら、この状態のDC/DCコンバータは、降圧動作を行っているときと比較して少量であるものの、低電圧バッテリからの電力を消費する。このような電力の消費は無駄であり、抑制する必要がある。そこで、車両の電源スイッチがオフになったにも拘わらず、低電圧バッテリからDC/DCコンバータへの電力供給が停止しないという異常を検出することが求められる。
【0020】
この点、この異常を検出するための回路(ハードウェア)を追加することが考えられる。しかしながら、そのような回路を追加することは、製造コストの上昇を招くため、好ましくない。
【0021】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、DC/DCコンバータへの電力供給の停止が正常に行われなくなっていることを安価に検出することができる車両制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するために、本発明は、走行の動力源である電動モータ、前記電動モータを駆動するための高電圧を出力する高電圧バッテリ、低電圧で稼働する車載機器、および前記車載機器を稼働させるための低電圧を出力する低電圧バッテリを備えた電動車両を制御する車両制御装置であって、前記高電圧バッテリから出力された電圧を用いて前記電動モータを駆動させるインバータと、前記高電圧バッテリから出力された電圧を降圧し、前記低電圧バッテリの充電または前記車載機器の稼働に用いる電圧を出力するDC/DCコンバータと、前記高電圧バッテリから出力された電圧の前記インバータおよび前記DC/DCコンバータへの入力のオン/オフを切り替えるメインスイッチと、前記高電圧バッテリから出力された電流を用いてプリチャージ電流を生成するプリチャージ電流生成部、および前記プリチャージ電流の前記インバータへの入力のオン/オフを切り替えるプリチャージスイッチを有するプリチャージ回路と、前記高電圧バッテリから前記インバータおよび前記DC/DCコンバータに入力された入力電圧を検出する電圧検出部と、前記メインスイッチがオフかつ前記プリチャージスイッチがオンの状態にすることにより前記プリチャージ電流を前記インバータに入力して前記インバータのプリチャージを開始し、前記インバータのプリチャージの完了後に、前記メインスイッチがオンかつ前記プリチャージスイッチがオフの状態にするコントローラとを備え、前記インバータおよび前記DC/DCコンバータは前記高電圧バッテリに互いに並列に接続され、前記メインスイッチおよび前記プリチャージ回路は、前記高電圧バッテリと、前記インバータおよび前記DC/DCコンバータとを接続する経路の途中に互いに並列に接続され、前記コントローラは、前記インバータのプリチャージが完了した後、前記メインスイッチがオンかつ前記プリチャージスイッチがオフの状態にする前に、前記電圧検出部により検出された入力電圧が前記インバータのプリチャージの完了時点に前記高電圧バッテリから前記インバータおよび前記DC/DCコンバータに入力された入力電圧よりも低下したか否かを判断し、前記電圧検出部により検出された入力電圧が前記インバータのプリチャージの完了時点に前記高電圧バッテリから前記インバータおよび前記DC/DCコンバータに入力された入力電圧よりも低下した場合には、前記DC/DCコンバータの電源から前記DC/DCコンバータへの電力供給の停止が正常に行われていないと判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、DC/DCコンバータへの電力供給の停止が正常に行われなくなっていることを安価に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】電動モータ、高電圧バッテリ、車載機器、低電圧バッテリおよび本発明の実施例の車両制御装置を示す回路図である。
【
図2】本発明の実施例の車両制御装置において、プリチャージ時のインバータおよびDC/DCコンバータの入力電圧の変化を示す特性線図である。
【
図3】本発明の実施例の車両制御装置のコントローラにおける車両始動処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態の車両制御装置は、走行の動力源である電動モータ、電動モータを駆動するための高電圧を出力する高電圧バッテリ、低電圧で稼働する車載機器、および車載機器を稼働させるための低電圧を出力する低電圧バッテリを備えた電動車両を制御する車両制御装置である。
【0026】
本実施形態の車両制御装置は、インバータ、DC/DCコンバータ、メインスイッチ、プリチャージ回路、電圧検出部、およびコントローラを備えている。
【0027】
インバータは、高電圧バッテリから出力された電圧を用いて電動モータを駆動させる回路である。DC/DCコンバータは、高電圧バッテリから出力された電圧を降圧し、低電圧バッテリの充電または車載機器の稼働に用いる電圧を出力する回路である。
【0028】
メインスイッチは、高電圧バッテリから出力された電圧のインバータおよびDC/DCコンバータへの入力のオン/オフを切り替えるスイッチである。プリチャージ回路は、インバータのプリチャージを行う回路である。プリチャージ回路は、高電圧バッテリから出力された電流を用いてプリチャージ電流を生成するプリチャージ電流生成部、およびプリチャージ電流のインバータへの入力のオン/オフを切り替えるプリチャージスイッチを有している。
【0029】
電圧検出部は、高電圧バッテリからインバータおよびDC/DCコンバータに入力された入力電圧を検出する回路である。
【0030】
コントローラは、メインスイッチがオフかつプリチャージスイッチがオンの状態にすることによりプリチャージ電流をインバータに入力してインバータのプリチャージを開始し、インバータのプリチャージの完了後に、メインスイッチがオンかつプリチャージスイッチがオフの状態にする機能を有している。
【0031】
本実施形態の車両制御装置において、インバータおよびDC/DCコンバータは高電圧バッテリに互いに並列に接続されている。また、メインスイッチおよびプリチャージ回路は、高電圧バッテリと、インバータおよびDC/DCコンバータとを接続する経路の途中に互いに並列に接続されている。
【0032】
また、コントローラは、インバータのプリチャージが完了した後、メインスイッチがオンかつプリチャージスイッチがオフの状態にする前に、電圧検出部により検出された入力電圧がインバータのプリチャージの完了時点に高電圧バッテリからインバータおよびDC/DCコンバータに入力された入力電圧よりも低下したか否かを判断し、電圧検出部により検出された入力電圧がインバータのプリチャージの完了時点に高電圧バッテリからインバータおよびDC/DCコンバータに入力された入力電圧よりも低下した場合には、DC/DCコンバータの電源からDC/DCコンバータへの電力供給の停止が正常に行われていないと判断する。
【0033】
本実施形態の車両制御装置において、コントローラは、例えば電動車両の電源スイッチがオンになったとき、メインスイッチがオフかつプリチャージスイッチがオンの状態にすることによりプリチャージ電流をインバータに入力してインバータのプリチャージを開始する。これにより、インバータ、およびインバータと並列に高電圧バッテリに接続されたDC/DCコンバータの入力電圧は徐々に増加し、インバータのプリチャージが完了したとき、当該入力電圧は高電圧バッテリの通常の放電電圧と略等しくなる。
【0034】
インバータのプリチャージが完了した後は、インバータにプリチャージ電流がほとんど流れ込まなくなる。また、DC/DCコンバータの電源からDC/DCコンバータへの電力供給の停止が正常に行われている場合には、電動車両の電源スイッチがオフになったときにDC/DCコンバータは停止しており、そして、電動車両の電源スイッチがオンになり、インバータのプリチャージが行われ、インバータのプリチャージが完了したときも、DC/DCコンバータはまだ停止したままである。インバータのプリチャージが完了した後にDC/DCコンバータが停止している場合には、DC/DCコンバータにもプリチャージ電流はほとんど流れ込まない。そして、インバータおよびDCコンバータのいずれにもプリチャージ電流がほとんど流れ込まない状態は、メインスイッチがオフかつプリチャージスイッチがオンの状態を継続することにより維持される。その結果、インバータのプリチャージの完了後、メインスイッチがオフかつプリチャージスイッチがオンの状態を継続することにより、インバータおよびDC/DCコンバータの入力電圧が高電圧バッテリの通常の放電電圧に略等しい状態が維持される。
【0035】
一方、DC/DCコンバータの電源からDC/DCコンバータへの電力供給の停止が正常に行われていない場合には、電動車両の電源スイッチがオフになったときにDC/DCコンバータは停止しない。そして、電動車両の電源スイッチがオンになり、インバータのプリチャージが行われ、インバータのプリチャージが完了したときも、DC/DCコンバータは停止していない。この場合、インバータのプリチャージの間に、インバータおよびDC/DCコンバータの入力電圧が、DC/DCコンバータが降圧動作を行うことができる入力電圧に達し、その後ある程度の時間が経過したとき、DC/DCコンバータにおいて降圧動作が行われるようになる。その結果、DC/DCコンバータにプリチャージ電流が流れ込むようになる。そして、DC/DCコンバータにプリチャージ電流が流れ込むようになる時点は、通常、プリチャージの完了後となる。その結果、インバータおよびDC/DCコンバータの入力電圧は、インバータのプリチャージの完了時に、一旦、高電圧バッテリの通常の放電電圧と略等しくなり、その後、低下するようになる。
【0036】
以上のことをまとめると、DC/DCコンバータの電源からDC/DCコンバータへの電力供給の停止が正常に行われている場合には、インバータのプリチャージの完了後、メインスイッチがオフかつプリチャージスイッチがオンの状態が継続している間、インバータおよびDC/DCコンバータの入力電圧のレベルは、インバータのプリチャージ完了時のレベルを維持する。一方、DC/DCコンバータの電源からDC/DCコンバータへの電力供給の停止が正常に行われていない場合には、インバータのプリチャージの完了後、メインスイッチがオフかつプリチャージスイッチがオンの状態が継続している間に、インバータおよびDC/DCコンバータの入力電圧のレベルは、インバータのプリチャージ完了時のレベルよりも低下する。
【0037】
コントローラは、インバータのプリチャージが完了した後、メインスイッチがオンかつプリチャージスイッチがオフの状態にする前に、電圧検出部により検出された入力電圧がインバータのプリチャージの完了時点に高電圧バッテリからインバータおよびDC/DCコンバータに入力された入力電圧よりも低下したか否かを判断する。これにより、コントローラは、DC/DCコンバータの電源からDC/DCコンバータへの電力供給の停止が正常に行われているか否かを判断することができる。
【0038】
この判断は、プリチャージ完了の判断を行う手段として既存の車両制御装置に設けられている電圧検出部を利用し、かつコントローラが実行するコンピュータプログラムを追加または変更することによって実現することができる。すなわち、この判断は、既存の車両制御装置に対し、ソフトウェアの追加または変更を行うことによって実現することができ、この判断を実現するに当たり、既存の車両制御装置に新たなハードウェアを追加する必要がない。したがって、本実施形態の車両制御装置によれば、DC/DCコンバータへの電力供給の停止が正常に行われているか否かの検出を安価に実現することができる。
【実施例0039】
以下、本発明の車両制御装置の実施例について説明する。
【0040】
(車両制御装置)
図1は、本発明の実施例の車両制御装置11等を示す回路図である。車両制御装置11は、車両の制御を行う装置である。車両は、走行の動力源として電動モータを用いた自動車であり、例えば、電気自動車、燃料電池自動車またはハイブリット車等である。また、車両は、自動四輪車、自動三輪車、または自動二輪車等である。
【0041】
車両には、
図1に示すように、電動モータ1、高電圧バッテリ2、車載機器3、低電圧バッテリ4、車両の電源スイッチ5、および車両制御装置11が設けられている。電動モータ1は車両の走行の動力源である。高電圧バッテリ2は、電動モータ1を駆動するための電圧を出力する蓄電池である。高電圧バッテリ2の公称電圧は、例えば100V~500V、またはそれ以上である。車載機器3は、低電圧(例えば12V)で稼働する電気・電子機器である。低電圧バッテリ4は、車載機器3を稼働させるための電圧を出力する蓄電池である。低電圧バッテリ4の公称電圧は、例えば12Vである。電源スイッチ5は、利用者が車両の全体的な電源のオン/オフを行うためのスイッチである。
【0042】
車両制御装置11は、インバータ12、DC/DCコンバータ13、メインスイッチとしてのメインリレー15、プリチャージ回路16、電圧検出部19、およびコントローラ20を備えている。インバータ12およびDC/DCコンバータ13は高電圧バッテリ2に互いに並列に接続されている。メインリレー15およびプリチャージ回路16は、高電圧バッテリ2のプラス端子と、インバータ12のプラス入力端子およびDC/DCコンバータ13のプラス入力端子とを接続する経路の途中(高電圧バッテリ2のプラス端子と点Pとの間)に互いに並列に接続されている。電動モータ1はインバータ12の出力側に接続されている。車載機器3および低電圧バッテリ4はDC/DCコンバータ13の出力側にそれぞれ接続されている。コントローラ20は、メインリレー15の制御端子、プリチャージ回路16が有するプリチャージリレー18の制御端子、DC/DCコンバータ13の制御端子、インバータ12の制御端子、および電圧検出部19にそれぞれ接続されている。また、コントローラ20には、車両の電源スイッチ5が接続されている。
【0043】
インバータ12は、高電圧バッテリ2から出力された電力を用いて電動モータ1の駆動を制御する回路である。
【0044】
DC/DCコンバータ13は、高電圧バッテリ2から出力された電圧を降圧し、低電圧バッテリ4の充電および車載機器3の稼働に用いる電圧を出力する回路である。
【0045】
また、DC/DCコンバータ13自体の電源は低電圧バッテリ4である。DC/DCコンバータ13は低電圧バッテリ4からの電力供給を受けて稼働する。また、DC/DCコンバータ13は、自身を制御する稼働制御回路14を有している。稼働制御回路14は、DC/DCコンバータ13が低電圧バッテリ4から電力の供給を受けるか否かを切り替える機能を有している。また、DC/DCコンバータ13は、コントローラ20により稼働制御回路14を制御するための制御端子を有している。この制御端子には、コントローラ20から出力された稼働制御信号が入力される。稼働制御回路14は、稼働制御信号に従って、DC/DCコンバータ13が低電圧バッテリ4から電力の供給を受けるか否かを切り替える。
【0046】
稼働制御回路14は、稼働制御信号の電圧レベルが接地レベルであるとき、DC/DCコンバータ13の状態を、低電圧バッテリ4からの電力供給を受ける状態にする。これにより、DC/DCコンバータ13は稼働する。一方、稼働制御回路14は、稼働制御信号の電圧レベルが非接地レベルであるとき、DC/DCコンバータ13の状態を、低電圧バッテリ4からの電力供給を絶つ状態にする。これにより、DC/DCコンバータ13は停止する。
【0047】
メインリレー15は、高電圧バッテリ2から出力された電圧のインバータ12およびDC/DCコンバータ13への入力のオン/オフを切り替えるスイッチである。プリチャージ回路16は、インバータ12のプリチャージを行うための回路である。インバータ12のプリチャージは、高電圧バッテリ2からインバータ12へ電圧の入力を開始するときに、インバータ12に設けられた入力電流平滑用のコンデンサの充電等を行う処理である。プリチャージ回路16は、プリチャージ電流生成部としてのプリチャージ抵抗17、およびプリチャージスイッチとしてのプリチャージリレー18を備えている。プリチャージ抵抗17は、高電圧バッテリ2から出力された電流の電流値を下げることによりプリチャージ電流を生成する抵抗器である。プリチャージリレー18は、プリチャージ電流のインバータ12への入力のオン/オフを切り替えるスイッチである。
【0048】
電圧検出部19は、高電圧バッテリ2からインバータ12およびDC/DCコンバータ13に入力された入力電圧を検出する。インバータ12およびDC/DCコンバータ13は高電圧バッテリ2に互いに並列に接続さているので、インバータ12の入力電圧とDC/DCコンバータ13の入力電圧は互いに等しい。
【0049】
コントローラ20は、CPU(Central Processing Unit)、およびメモリ等を有している。コントローラ20は、車両の電源スイッチ5がオンになったときに、アクティブ状態(通常稼働状態)になり、車両の電源スイッチ5がオフになったときに、アイドル状態(省力稼働状態)になる。また、コントローラ20は、メインリレー制御信号をメインリレー15に出力し、メインリレー15のオープン/クローズを制御する。また、コントローラ20は、プリチャージリレー制御信号をプリチャージリレー18に出力し、プリチャージリレー18のオープン/クローズを制御する。また、コントローラ20は、稼働制御信号をDC/DCコンバータ13に出力し、DC/DCコンバータ13の稼働制御回路14を制御する。また、コントローラ20は、インバータに他の稼働制御信号を出力し、インバータ12の稼働/停止を制御する。また、コントローラ20は、電圧検出部19による検出結果に基づいて、インバータ12およびDC/DCコンバータ13の入力電圧を認識することができる。また、コントローラ20は計時を行うことができる。
【0050】
コントローラ20は、通常、車両の電源スイッチ5がオンになってからインバータ12のプリチャージが完了し、メインリレー15がクローズかつプリチャージリレー18がオープンの状態にした後、電源スイッチ5がオンである間は、稼働制御信号の電圧レベルを接地レベルにする。これにより、DC/DCコンバータ13の稼働制御回路14が、DC/DCコンバータ13の状態を、低電圧バッテリ4からの電力供給を受ける状態にする。一方、コントローラ20は、車両の電源スイッチ5がオフである間は、稼働制御信号の電圧レベルを非接地レベルにする。これにより、DC/DCコンバータ13の稼働制御回路14が、DC/DCコンバータ13の状態を、低電圧バッテリ4からの電力供給を絶つ状態にする。
【0051】
さらに、コントローラ20は、車両の電源スイッチ5がオフになったにも拘わらず、低電圧バッテリ4からDC/DCコンバータ13への電力供給が停止しないという異常(以下、これを「DC/DCコンバータ13の異常」という。)が発生したことを検出する機能を有している。DC/DCコンバータ13の異常は、何らかの原因により、コントローラ20からDC/DCコンバータ13へ稼働制御信号を送る経路が地絡した場合などに発生する。コントローラ20からDC/DCコンバータ13へ稼働制御信号を送る経路が地絡した場合には、DC/DCコンバータ13に接地レベルの稼働制御信号が常時入力されているに等しい状態になる。それゆえ、DC/DCコンバータ13は、コントローラ20からの稼働制御信号に従って、低電圧バッテリ4からの電力供給を絶つことができなくなる。その結果、車両の電源スイッチ5がオフになっても、低電圧バッテリ4からDC/DCコンバータ13への電力供給が継続することになる。
【0052】
電源スイッチ5がオフになっている間は、メインリレー15およびプリチャージリレー18がいずれもオープンになっているため、高電圧バッテリ2の電圧はDC/DCコンバータ13に入力されない。したがって、DC/DCコンバータ13に低電圧バッテリ4から電力が供給されている状態であっても、DC/DCコンバータ13は降圧動作を行わない。しかしながら、この状態のDC/DCコンバータ13は、降圧動作を行っているときと比較して少量であるものの、低電圧バッテリ4からの電力を消費する。コントローラ20は、このようなDC/DCコンバータ13の異常の発生を検出し、DC/DCコンバータ13の異常の発生を利用者に通知することができる。
【0053】
(DC/DCコンバータの異常検出の原理)
コントローラ20によるDC/DCコンバータ13の異常検出の原理について説明する。コントローラ20は、車両の電源スイッチ5がオンになったとき、インバータ12のプリチャージを行う。コントローラ20は、インバータ12のプリチャージを行うときに、DC/DCコンバータ13の異常の発生を検出する。
【0054】
図2(A)は、DC/DCコンバータ13の異常が発生していない場合における、プリチャージ時のインバータ12およびDC/DCコンバータ13の入力電圧の変化を示している。
図2(B)は、DC/DCコンバータ13の異常が発生している場合における、プリチャージ時のインバータ12およびDC/DCコンバータ13の入力電圧の変化を示している。以下、インバータ12およびDC/DCコンバータ13の入力電圧を「入力電圧V」という。
【0055】
まず、DC/DCコンバータの異常検出の原理の説明に用いるいくつかの用語について説明する。
【0056】
インバータ12のプリチャージが完了したか否かを入力電圧Vに基づいて判断するときに用いる基準電圧を「プリチャージ完了基準電圧」という。プリチャージ完了基準電圧は、例えば、高電圧バッテリ2の通常の放電電圧の下限値に設定されている。
図2中のVaはプリチャージ完了基準電圧である。高電圧バッテリ2の通常の放電電圧の下限値は、例えば、高電圧バッテリ2の公称電圧よりも低いが放電終止電圧よりも高い値である。
【0057】
また、インバータ12のプリチャージを開始してから完了するまでの所要時間を「プリチャージ所要時間」という。
図2中のPaはプリチャージ所要時間である。
【0058】
また、入力された電圧を降圧し、降圧した電圧を出力する動作(降圧動作)をDC/DCコンバータ13が行うことができるDC/DCコンバータ13の入力電圧の下限値を「降圧動作下限電圧」という。
図2中のVbは降圧動作下限電圧である。降圧動作下限電圧Vbはプリチャージ完了基準電圧Vaよりも低い。
【0059】
また、降圧動作下限電圧Vb以上の電圧が入力されていない状態のDC/DCコンバータ13に降圧動作下限電圧Vb以上の電圧を入力してから、DC/DCコンバータ13が当該入力された電圧を降圧し、降圧した電圧を出力するようになるまでにかかる時間を「降圧動作開始所要時間」という。降圧動作開始所要時間は例えば事前に試験等を行い、それにより得られたデータに基づいて設定する。
図2中のPbは降圧動作開始所要時間である。
【0060】
次に、
図2(A)を参照しながら、DC/DCコンバータ13の異常が発生していない場合における入力電圧Vの変化について説明する。インバータ12のプリチャージは、メインリレー15がオープン、かつプリチャージリレー18がクローズの状態になったときに開始される。なお、プリチャージ中、インバータ12は停止し、または稼働準備状態になっている。
図2(A)において、時点t1にインバータ12のプリチャージが開始されると、プリチャージ電流がインバータ12に流れ込む。その後、インバータ12およびDC/DCコンバータ13の入力電圧Vは、徐々に増加し、時点t2に降圧動作下限電圧Vbに達する。その後、入力電圧Vはさらに増加し、時点t3にプリチャージ完了基準電圧Vaに達する。入力電圧Vがプリチャージ完了基準電圧Vaに達したとき、インバータ12のプリチャージは完了する。インバータ12のプリチャージが完了すると、プリチャージ電流は、停止状態または稼働準備状態のインバータ12にほとんど流れ込まなくなる。また、上述したように、コントローラ20は、車両の電源スイッチ5がオフである間は、稼働制御信号の電圧レベルを非接地レベルにする。これにより、DC/DCコンバータ13の稼働制御回路14が、DC/DCコンバータ13の状態を、低電圧バッテリ4からの電力供給を絶つ状態にする。その結果、車両の電源スイッチ5がオフである間、DC/DCコンバータ13は停止している。したがって、車両の電源スイッチ5がオフからオンに切り替わっても、コントローラ20が、稼働制御信号の電圧レベルを非接地レベルから接地レベルに変更しない限り、低電圧バッテリ4からDC/DCコンバータ13への電力供給が絶たれた状態が維持され、DC/DCコンバータ13は停止したままとなる。プリチャージ電流は、停止しているDC/DCコンバータ13にはほとんど流れ込まない(厳密には、DC/DCコンバータ13内の入力側には平滑コンデンサが設けられているので、インバータ12のプリチャージの開始時には、プリチャージ電流が、停止しているDC/DCコンバータ13に流れ込むが、インバータ12のプリチャージの完了時には、プリチャージ電流は、停止しているDC/DCコンバータ13にほとんど流れ込まなくなる)。それゆえ、時点t3以後は、メインリレー15がオープン、かつプリチャージリレー18がクローズの状態であり、インバータ12が停止状態または稼働準備状態であり、かつDC/DCコンバータ13が停止状態である限り、入力電圧Vは略一定である。
【0061】
次に、
図2(B)を参照しながら、DC/DCコンバータ13の異常が発生している場合における、プリチャージ時のインバータ12およびDC/DCコンバータ13の入力電圧Vの変化について説明する。
図2(B)において、時点t1にインバータ12のプリチャージが開始された後、インバータ12およびDC/DCコンバータ13の入力電圧Vは、徐々に増加し、時点t2に降圧動作下限電圧Vbに達する。その後、入力電圧Vはさらに増加し、時点t3にプリチャージ完了基準電圧Vaに達する。入力電圧Vがプリチャージ完了基準電圧Vaに達したとき、インバータ12のプリチャージは完了する。インバータ12のプリチャージが完了すると、プリチャージ電流は、停止状態または稼働準備状態のインバータ12にほとんど流れ込まなくなる。ところが、DC/DCコンバータ13の異常が発生している場合には、コントローラ20によるDC/DCコンバータ13(稼働制御回路14)の制御は効かない状態になっており、車両の電源スイッチ5がオフになった後も、低電圧バッテリ4からDC/DCコンバータ13への電力供給が継続している。そして、車両の電源スイッチ5がオフからオンに切り替わって、インバータ12のプリチャージが開始された後も、低電圧バッテリ4からDC/DCコンバータ13への電力供給が継続している。この場合、インバータ12のプリチャージ中であっても、高電圧バッテリ2からDC/DCコンバータ13に、降圧動作下限電圧Vb以上の電圧が入力されると、DC/DCコンバータ13は、降圧動作開始所要時間Pbが経過した後に、入力された電圧を降圧し、その降圧した電圧を出力する状態になる。DC/DCコンバータ13がこのような状態になったとき、プリチャージ電流がDC/DCコンバータ13に流れ込むようになる。その結果、時点t4後に入力電圧Vが低下する。
【0062】
図2(A)と
図2(B)とを比較することにより、次の2点を把握することができる。 第1に、DC/DCコンバータ13の異常が発生していない場合には、
図2(A)に示すように、時点t4後も、プリチャージの完了時点t3における入力電圧Vが維持されている。これに対し、DC/DCコンバータ13の異常が発生している場合には、
図2(B)に示すように、時点t4後に、入力電圧Vが、プリチャージの完了時点t3における入力電圧Vよりも低下している。第2に、時点t1にプリチャージを開始してから、時点t2に入力電圧Vが降圧動作下限電圧Vbに達し、時点t2から降圧動作開始所要時間Pbが経過した時点t4においては、プリチャージ所要時間Paは既に経過しており、それゆえ、インバータ12のプリチャージは既に完了している。これらの2点から、インバータ12のプリチャージを開始した後において、入力電圧Vが降圧動作下限電圧Vbに達した時点から降圧動作開始所要時間Pbが経過した後に、入力電圧Vが、インバータ12のプリチャージ完了時の入力電圧Vよりも低下したか否かを判断することによって、DC/DCコンバータ13の異常が発生しているか否かを検出することができる。
【0063】
コントローラ20は、以上のDC/DCコンバータ13の異常検出の原理に基づいてDC/DCコンバータ13の異常の発生を検出する。具体的には、コントローラ20は、インバータ12のプリチャージを開始した後において、入力電圧Vが降圧動作下限電圧Vbに達した時点から判断待機時間Pwが経過した時点t5に、入力電圧Vがプリチャージ完了基準電圧Vaよりも低いか否かを判断する。判断待機時間Pwは、降圧動作開始所要時間Pbに付加時間Pcを加えた時間である。付加時間Pcは、DC/DCコンバータ13の異常が発生している場合に、降圧動作開始所要時間Pb経過後の入力電圧Vの低下を確実に捕らえるためのマージンである。また、コントローラ20は、時点t5に、入力電圧Vが、インバータ12のプリチャージ完了時の入力電圧Vよりも低下したか否かの判断を、時点t5における入力電圧Vとプリチャージ完了基準電圧Vaとの比較により行う。
【0064】
時点t5に、入力電圧Vがプリチャージ完了基準電圧Vaよりも低くない場合には、DC/DCコンバータ13の異常が発生していないと判断することができる。また、時点t5に、入力電圧Vがプリチャージ完了基準電圧Vaよりも低い場合、DC/DCコンバータ13の異常が発生していると判断することができる。
【0065】
(車両始動処理)
コントローラ20は、インバータ12のプリチャージ処理を含む車両始動処理において、DC/DCコンバータ13の異常検出処理を行う。
図3はその車両始動処理を示している。
【0066】
図3において、車両の電源スイッチ5がオフであるとき、コントローラ20はアイドル状態になっている。また、メインリレー15およびプリチャージリレー18はいずれもオープンである。また、DC/DCコンバータ13の異常が発生していない場合には、稼働制御信号の電圧レベルは非接地レベルになっている。また、インバータは停止している。
【0067】
車両の電源スイッチ5がオンになったとき、コントローラ20は、アイドル状態からアクティブ状態に移行する(ステップS1)。また、コントローラ20は、プリチャージのためにインバータ12を稼働準備状態にする必要がある場合には、インバータ12を稼働準備状態にする。
【0068】
続いて、コントローラ20は、メインリレー15をオープンにしたまま、プリチャージリレー18をクローズする(ステップS2)。これにより、インバータ12のプリチャージが開始される。
【0069】
続いて、コントローラ20は、電圧検出部19により検出された入力電圧V(インバータ12およびDC/DCコンバータ13の入力電圧)が降圧動作下限電圧Vbに達したか否かを判断する(ステップS3)。
【0070】
電圧検出部19により検出された入力電圧Vが降圧動作下限電圧Vbに達していない場合には(ステップS3:NO)、コントローラ20は、電圧検出部19により検出された入力電圧Vが降圧動作下限電圧Vbに達したか否かの判断を繰り返しながら、電圧検出部19により検出された入力電圧Vが降圧動作下限電圧Vbに達するのを待つ。
【0071】
電圧検出部19により検出された入力電圧Vが降圧動作下限電圧Vbに達した場合には(ステップS3:YES)、コントローラ20は、電圧検出部19により検出された入力電圧Vが降圧動作下限電圧Vbに達した時点から判断待機時間Pwが経過するのを待つ(ステップS4)。
【0072】
電圧検出部19により検出された入力電圧Vが降圧動作下限電圧Vbに達した時点から判断待機時間Pwが経過したとき(ステップS4:YES)、コントローラ20は、電圧検出部19により検出された入力電圧Vがプリチャージ完了基準電圧Vaよりも低いか否かを判断する(ステップS5)。
【0073】
上述したように、DC/DCコンバータ13の異常が発生していない場合には、電圧検出部19により検出された入力電圧Vがプリチャージ完了基準電圧Vaよりも低くならない。また、電圧検出部19により検出された入力電圧Vが降圧動作下限電圧Vbに達した時点から判断待機時間Pwが経過した時点において、インバータ12のプリチャージは完了している。コントローラ20は、電圧検出部19により検出された入力電圧Vがプリチャージ完了基準電圧Vaよりも低くない場合には(ステップS5:NO)、メインリレー15をクローズし(ステップS6)、その後、プリチャージリレー18をオープンする(ステップS7)。
【0074】
続いて、コントローラ20は、稼働制御信号の電圧レベルを非接地レベルから接地レベルに変更する(ステップS8)。これにより、DC/DCコンバータ13の稼働制御回路14は、DC/DCコンバータ13の状態を、低電圧バッテリ4からの電力供給を受ける状態にする。これにより、DC/DCコンバータ13は稼働を開始し、降圧動作を行う。そして、DC/DCコンバータ13から出力された電圧が低電圧バッテリ4および車載機器3に入力され、低電圧バッテリ4の充電および車載機器3への電力供給が行われる。また、コントローラ20はインバータ12を稼働させる。
【0075】
一方、DC/DCコンバータ13の異常が発生している場合には、ステップS5において、電圧検出部19により検出された入力電圧Vがプリチャージ完了基準電圧Vaよりも低くなる。コントローラ20は、電圧検出部19により検出された入力電圧Vがプリチャージ完了基準電圧Vaよりも低い場合には(ステップS5:YES)、プリチャージリレー18をオープンにした後(ステップS9)、異常時対応処理を行う(ステップS10)。例えば、コントローラ20は、異常時対応処理として、車両のインストルメントパネルに設けられた通知ランプを点灯させ、DC/DCコンバータ13の異常の発生を利用者に通知する。これにより、利用者は、DC/DCコンバータ13の異常の発生を認識することができる。
【0076】
以上説明した通り、本発明の実施例の車両制御装置11において、コントローラ20は、インバータ12のプリチャージを開始した後において、電圧検出部19により検出された入力電圧Vが降圧動作下限電圧Vbに達した時点から判断待機時間Pwが経過した時点に、電圧検出部19により検出された入力電圧Vがプリチャージ完了基準電圧Vaよりも低いか否かを判断することによって、DC/DCコンバータ13の異常の発生を検出する。この判断は、プリチャージ完了の判断を行う手段として既存の車両制御装置に設けられている電圧検出部19を利用し、かつコントローラ20が実行するコンピュータプログラムを追加または変更することによって実現することができる。すなわち、この判断は、既存の車両制御装置に対し、ソフトウェアの追加または変更を行うことによって実現することができ、この判断を実現するに当たり、既存の車両制御装置に新たなハードウェアを追加する必要がない。したがって、本実施例の車両制御装置11によれば、DC/DCコンバータ13の異常の検出を安価に実現することができる。
【0077】
また、本実施例の車両制御装置11によれば、車両の電源スイッチ5がオンになったときに行われるインバータ12のプリチャージ時に、DC/DCコンバータ13の異常の発生を検出することができる。したがって、DC/DCコンバータ13の異常の発生が検出されたときに、例えば、車両のインストルメントパネルに設けられた通知ランプを点灯させ、DC/DCコンバータ13の異常の発生を通知するようにすることで、利用者が、車両の電源スイッチ5をオンにして運転の準備をしているときに、DC/DCコンバータ13の異常の発生を利用者に確実に知らせることができる。
【0078】
また、本実施例の車両制御装置11において、コントローラ20は、プリチャージ電流がDC/DCコンバータ13にその入力側から流れ込むことによる入力電圧Vの低下に基づいてDC/DCコンバータ13の異常の発生を検出する。プリチャージ電流がDC/DCコンバータ13にその入力側から流れ込むことによる入力電圧Vの低下は、DC/DCコンバータ13の最大出力や出力電圧値などの出力特性に拘わらず生じる。特に、DC/DCコンバータ13が絶縁型である場合には、内部のトランスによって入力側と出力側が電気的に絶縁されている構造であるため、プリチャージ電流がDC/DCコンバータ13にその入力側から流れ込むことによる入力電圧Vの低下は、DC/DCコンバータ13の出力特性の影響を受け難い。したがって、本実施例の車両制御装置11によれば、DC/DCコンバータ13の出力特性により、DC/DCコンバータ13の異常の発生の検出精度が低下することを抑制することができる。
【0079】
また、本実施例の車両制御装置11において、コントローラ20は、インバータ12のプリチャージを開始した後において、入力電圧Vが降圧動作下限電圧Vbに達した時点から判断待機時間Pwが経過した時点に、入力電圧Vがプリチャージ完了基準電圧Vaよりも低いか否かを判断する。したがって、
図2において、プリチャージの開始時点t1と、入力電圧Vが降圧動作下限電圧Vbに達した時点t2との間の時間が、例えば車両制御装置11が置かれた環境等の影響により変動した場合には、その変動と同様に、入力電圧Vが降圧動作下限電圧Vbに達した時点t2から判断待機時間Pwが経過した時点t5も変動する。したがって、DC/DCコンバータ13の異常が発生している場合において、プリチャージ電流がDC/DCコンバータ13に流れ込むことによって入力電圧Vの低下が生じたタイミングと、コントローラ20が入力電圧Vの低下を判断するタイミングとが、車両制御装置11が置かれた環境等の影響により合致しなくなることを抑制することができる。よって、DC/DCコンバータ13の異常発生の検出精度を向上させることができる。
【0080】
また、本実施例の車両制御装置11においては、降圧動作開始所要時間Pbに付加時間Pcを加えることにより判断待機時間Pwが設定され、コントローラ20は、電圧検出部19により検出された入力電圧Vが降圧動作下限電圧Vbに達した時点から判断待機時間Pwが経過した時点に、電圧検出部19により検出された入力電圧Vがプリチャージ完了基準電圧Vaよりも低いか否かを判断する。これにより、DC/DCコンバータ13の異常が発生している場合において、プリチャージ電流がDC/DCコンバータ13に流れ込むことによって入力電圧Vの低下が生じたタイミングと、コントローラ20が入力電圧Vの低下を判断するタイミングとを確実に合致させることができ、DC/DCコンバータ13の異常発生の検出精度を高めることができる。
【0081】
また、本実施例の車両制御装置11において、コントローラ20は、
図2(A)または
図2(B)中の時点t5において、電圧検出部19により検出された入力電圧Vと、インバータ12のプリチャージ完了時における入力電圧Vとを比較するに当たり、インバータ12のプリチャージ完了時の入力電圧Vに相当する基準電圧として、プリチャージ完了基準電圧Vaを用いる。これにより、DC/DCコンバータ13の異常の発生を容易に検出することができる。
【0082】
なお、上記実施例において、コントローラ20は、インバータ12のプリチャージを開始した後において、電圧検出部19により検出された入力電圧Vが降圧動作下限電圧Vbに達した時点から判断待機時間Pwが経過した時点に、電圧検出部19により検出された入力電圧Vがプリチャージ完了基準電圧Vaよりも低いか否かを判断する。しかしながら、本発明はこれに限らない。例えば、
図2において、プリチャージの開始時点t1と、入力電圧Vが降圧動作下限電圧Vbに達する時点t2との間の時間の変動範囲を事前に予測することができる場合には、時点t1から時点t5までのトータルの時間を事前に設定しておき、インバータ12のプリチャージを開始した時点t1から当該トータルの時間が経過して時点t5に至ったときに、入力電圧Vの低下を判断するようにしてもよい。
【0083】
また、上記実施例では、
図2において、時点t1にプリチャージを開始してから、時点t2に入力電圧Vが降圧動作下限電圧Vbに達し、時点t2から降圧動作開始所要時間Pbが経過した時点t4においては、インバータ12のプリチャージが既に完了していることとしている。しかしながら、プリチャージを開始した後において、入力電圧Vが降圧動作下限電圧Vbに達してから降圧動作開始所要時間Pbが経過した時点に、インバータ12のプリチャージが完了していないことがあり得る場合には、付加時間Pcを長くすることにより、入力電圧Vの低下の判断が、インバータ12のプリチャージの完了後に確実に行われるようにする。
【0084】
また、上記実施例において、コントローラ20は、DC/DCコンバータ13の状態を、低電圧バッテリ4からの電力供給を受ける状態にするときには、接地レベルの稼働制御信号を出力し、DC/DCコンバータ13の状態を、低電圧バッテリ4からの電力供給を絶つ状態にするときには、非接地レベルの稼働制御信号を出力するが、DC/DCコンバータ13の状態を、低電圧バッテリ4からの電力供給を受ける状態にするときには、非接地レベルの稼働制御信号を出力し、DC/DCコンバータ13の状態を、低電圧バッテリ4からの電力供給を絶つ状態にするときには、接地レベルの稼働制御信号を出力するようにしてもよい。この場合、上記DC/DCコンバータ13の異常は、何らかの原因により、コントローラ20からDC/DCコンバータ13へ稼働制御信号を送る経路に外部から常時電流が流れ込むようになった場合などに発生する。
【0085】
また、上記実施例では、コントローラ20からDC/DCコンバータ13へ稼働制御信号を送る経路の地絡によって、DC/DCコンバータ13への電力供給の停止が正常に行われなくなる場合を説明したが、DC/DCコンバータ13への電力供給の停止が正常に行われなくなる原因は限定されない。また、DC/DCコンバータ13は絶縁型のものに限定されない。
【0086】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両制御装置もまた本発明の技術思想に含まれる。