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  • 特開-補強された炭化木材薄板 図1
  • 特開-補強された炭化木材薄板 図2
  • 特開-補強された炭化木材薄板 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054686
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】補強された炭化木材薄板
(51)【国際特許分類】
   B32B 21/08 20060101AFI20230407BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20230407BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230407BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
B32B21/08
B29C65/02
B32B27/32
B32B27/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163688
(22)【出願日】2021-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】397003079
【氏名又は名称】佐藤 正倫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正倫
【テーマコード(参考)】
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
4F100AA37A
4F100AK01B
4F100AK04B
4F100AK46B
4F100AP10A
4F100BA02
4F100DC11A
4F100EC03B
4F100EJ42A
4F100JB16B
4F211AA04
4F211AA29
4F211AD06
4F211AD08
4F211AD20
4F211AG03
4F211AG20
4F211TA01
4F211TC02
4F211TN01
4F211TQ01
(57)【要約】
【課題】
特許文献2に記載のウェルを有する炭化薄板では厚さが1.9mmより大きいので材料効率が悪い。材料効率を向上させるために薄くするとウェル以外の部分での液体の通過が起こり、測定が困難になる。1mm前後の厚さでもウェル以外の部分での液体の通過が起こらない炭化薄板を得ること。薄くすると機械的強度も低下し破損しやすくなる。また炭化薄板に触れると粉が付着する問題があった。
【解決手段】
1.9mm以下の厚さの炭化薄板の片面に熱溶融性フィルムを熱溶着し、その面にウェルを形成するか、ウェル形成してから熱溶融性フィルムを熱溶着することにより解決した。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
400℃以上の温度で炭化して得られる仮道管、道管或いは木部繊維を有する、樹木の仮道管あるいは道管方向に対して75~90度の角度を有する炭化薄板の片面に熱溶融性樹脂フィルムが熱溶着されたものであることを特徴とする補強された炭化薄板。
【請求項2】
熱溶融性樹脂フィルムが熱溶着された側に少なくとも1個のウェルが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の補強された炭化薄板。
【請求項3】
熱溶融性フィルムがポリエチレンあるいはポリエチレンにポリアミドが重層されたものであることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の補強された炭化薄板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な多孔質構造を有する針葉樹の仮道管あるいは広葉樹の道管と木部繊維(以後これら三者を代表して仮道管と称する)の炭化物からなる薄板の片面を熱溶融樹脂フィルム(以後熱溶融性フィルム)で被覆したものであって、仮道管あるいは道管を通して流体を移行するための補強された木材炭化薄板(以後炭化薄板と記す)に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は先に特願2020-21044(特許文献1)の出願を行った。特許文献1に記載された発明の概要は、仮道管方向と略直角で0.1~1.9mmの厚さの炭化薄板及びそれを用いた濾過ユニットに関するものである。炭化薄板の厚さが1.9mmより大きいと光透過即ち液体の通過が極めて困難になることから、1.9mmという厚さを決めたのである。
【0003】
本発明者は先に特願2020-116631(特許文献2)の出願を行った。特許文献2に記載された発明の概要は、仮道管方向と略直角で1.9mmより大きい厚さの炭化薄板にウェルを設けた炭化薄板に関するものである。
【0004】
特許文献2に記載の炭化薄板は、ウェルが無い部分の厚さが1.9mmより厚いものである。厚さを1.9mm以下にすると、炭化薄板のウェルが無い部分に液体が付着した場合に液体が炭化薄板の内部に浸透し、反対面に到達する恐れがある。液体をウェルの内部にのみ供給できればそのような恐れはない。しかし、実際にはウェルのサイズが小さい場合、液体がウェルの外側にはみ出してしまうことがある。ウェルの径が1~2mmのように小さい場合、人間がスポイトで液体をウェルに供給しようとしてもウェルの周囲にも液体が供給されてしまうことが多い。
【0005】
特許文献2に記載の炭化薄板は、ウェルの部分の厚さが0.1~0.2mmであっても周囲が厚い炭化薄板で囲まれているので破損しにくい利点がある。しかし、非ウェル部分の厚さは1.9mmより厚いという制限があり、全体として1mm前後の薄い炭化薄板が得られない欠点があった。その理由は非ウェル部分の厚さが1mm前後になると、その部分でも液体の移行が行われてしまうからである。全体の厚さが大きいと材料ロスが大きくなり、材料の使用効率が悪いという問題があった。
【0006】
特許文献1及び2に記載の炭化薄板は、紙や指でこするとカーボン粉がとれて紙や指が汚れる問題があった。
【0007】
本発明者は上記問題点に鑑み検討の結果、炭化薄板の片面を熱溶融性フィルムで被覆することにより、炭化薄板の厚さが0.5~1mmであっても補強されてハンドリングが容易になり破損もしにくいことを発見した。樹脂フィルム側の面にウェルを形成することにより、ウェルを有する薄い炭化薄板を得ることができた。さらに樹脂フィルムが溶着された面は紙や指でこすってもカーボン粉が取れてこない。
【0008】
炭化薄板にラッカーをスプレーしたり、塗料を塗布すれば補強され且つ紙や指でこすってもカーボン粉がとれなくなることは容易に推測されるが、実際にラッカーをスプレーしたり、塗料を塗布するとラッカーや塗料が仮道管の内部に容易に浸透し炭化薄板の裏面に到達してしまう。その結果、仮道管がラッカーや塗料で埋まってしまうことが分かった。しかるに、ラミネートであればこのような問題がなくしかも樹脂フィルムが炭化薄板の表面に溶着されるので、上記の問題点が解決されたのである。更に付加的な利点として、熱溶着されたフィルムはかなり強固に溶着されているにもかかわらず、フィルムが破損することなく剥離することも可能であることが判明した。その結果、炭化薄板表面の仮道管形状のレプリカが明瞭にフィル上に得られることも判った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特願2020-21044
【特許文献2】特願2020-116631
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、厚さが小さくても破損しにくく取り扱いが容易な炭化薄板を提供すること、また炭化薄板の厚さが小さくてもウェルを形成することが可能な炭化薄板を提供することである。これらを実現することにより炭化薄板材料の使用効率を向上することである。本発明の他の課題は紙や指で炭化薄板の表面に触れても紙や指にカーボン粉が付着しにくい炭化薄板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の課題は、400℃以上の温度で炭化された、樹木の仮道管方向に対して75~90度の角度を有する1.9mm以下の厚さの炭化薄板の片面の少なくとも一部の領域に熱溶融性樹脂フィルムが熱溶着されて補強された炭化薄板により解決された。1mm以下の薄い炭化薄板であっても熱溶着された面にウェルを設けることが可能になった。ウェル径が小さい場合、炭化薄板にウェルを形成してから熱溶融性フィルムを熱溶着するとウェルの周辺にフィルムのバリがでない利点があることを発見した。
【発明の効果】
【0012】
特許文献1に記載の炭化薄板は、厚さが0.1~0.2mmになると破損しやすいので極めて慎重に取り扱う必要があったが、片面に樹脂フィルムを熱溶着することにより機械的強度が大きくなりハンドリングが楽になった。特許文献2に記載の炭化薄板では、ウェルを形成するために厚さが1.9mmより大きいことが必要であったが、0.5mm以下の薄い炭化薄板であっても熱溶着された面にウェルを形成することが可能になった。ウェルの底壁の厚さを薄くすることによりウェル部分の透光性を高めることが可能になるので、ウェル底部を通した光学的その他の測定が容易になり、反応や培養の結果の判定、あるいは進行過程での測定や評価の信頼性・精度を大幅に向上させることが可能になる。またウェル底面の仮道管を通して細胞培養に必須の空気や炭酸ガスの供給や排出が容易になるので連続培養の効率向上や制御にも利用できる。炭化薄板の表面に熱溶融性フィルムを熱溶着することにより、炭化薄板に紙や指を触れてもカーボン粉が付着することはなくなった。 特許文献2に記載の炭化薄板では、ウェルを形成するために厚さが1.9mmより大きいことが必要であったが、1mm以下の薄い炭化薄板であっても熱溶着された面にウェルを形成することが可能になった。また材料の使用効率も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】片面に熱溶融性フィルムを熱溶着した炭化薄板の側断面図である。
図2】片面に熱溶融性フィルムを熱溶着し、そこにウェルを設けた炭化薄板の側断面図である。
図3】複数個のウェルを有する補強された炭化薄板の使用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者は炭化薄板を補強するため及び炭化薄板に指を触れてもカーボン粉が指に付着しないように、ラッカーをスプレーしたり塗料を塗布してみたが、ラッカーや塗料が仮道管の中に浸透し裏面まで到達して仮道管の中を埋めてしまうことが分かった。そこで、炭化薄板表面に熱溶融性樹脂フィルムを熱溶着すると、溶融した樹脂が仮道管の内部にごくわずかしか進入せず、仮道管の端部にメニスカスを形成して張り巡らされることを発見し本発明に至った。
【0015】
ウェルが形成される前の炭化薄板は特許文献1に記載の方法により製作される。
【0016】
本発明に適したウェルを形成する前の炭化仮道管薄板の厚さは1.9mm以下の範囲である。典型的には針葉樹を空気遮断下或いは不活性雰囲気で400℃以上の高温で炭化したものを針葉樹材の仮導管方向に対して75~90度の角度で切断された薄板である。
【0017】
図1は、本発明の熱溶融性フィルムが溶着された炭化薄板10の具体例の側断面図である。図1において11は補強されていない炭化薄板、12は熱溶融性フィルムである。本発明に用いられる熱溶融性フィルムは、ラップフィルムとして市販されている膜厚9~15μmのポリエチレン、ポリ袋に使用されている厚さ30~80μmのポリエチレン、食品の真空パックに使われているポリエチレンとポリアミドを重層にしたもの、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、その他が使用可能である。厚さは更に小さくても大きくてもよい。
【0018】
炭化薄板への熱溶着方法は、炭化薄板にて加熱減圧するいわゆる真空成形方式、加圧加熱するいわゆる圧空成形方式が用いられる。フィルムが通常の成形に比べて薄いので、圧空成形の一法として熱風を吹き付ける方式でもよい。
【0019】
図2は、本発明の熱溶融性フィルムが熱溶着された炭化薄板10にウェルが形成された具体例の断面形状を示す側断面図である。図2では1個のウェル近傍のみが示されている。図2において13はウェルである。14はウェルの底壁である。
【0020】
図2では1個のウェルのみ表示されているが、多数のウェルを設けることができる。例えば20×20mmサイズの炭化薄板に、2mm径のウェルを2mmの間隔で4行4列で合計16個のウェルを形成することができる。この補強された炭化薄板のウェルを上にした状態で受容部材の上に置き、炭化薄板の上面全体に試料溶液を供給すると16個のウェルから試料溶液が受容部材に到達する。即ちスポイトで各ウェルに試料溶液を供給することなしに、一気に全ウェルに試料溶液を供給することができる。
【0021】
ウェル13は、例えば円柱状の窪みであり例えばフラットドリルにより研削することにより形成される。フラットドリルは孔の底がほぼフラットに研削できるように設計されたドリルである。ウェル13の底壁14の厚さは1.0mm以下が望ましい。更に望ましくは0.1~0.8mmの範囲である。0.1mmより薄くなると破損しやすく、0.8mmより大きくなると液体の移行が少し遅くなる。ウェルのサイズや深さ、及び数は目的に応じて適宜選ぶことができる。フラットドリルをフライス盤で左右に移動させることにより角状のウェルを形成することもできる。
【0022】
ドリルの刃は鋭利ではないので薄いフィルムを引きちぎるように切断される。その結果、穴の縁にバリのようにフィルムのちぎれ残りが生じてしまうことがある。ウェルを形成後にウェルの近傍を加熱してバリを溶融、シュリンクさせるとバリがウェルの側壁に溶着されるのでバリを除去することができる。
【0023】
あらかじめ炭化薄板にウェルを形成しておき、次にウェルが形成された炭化薄板に熱溶融性フィルムを熱溶着することも可能である。この方式ではウェルにかかったラミネートフィルムは、ウェルの上端を塞ぐように或いはウェルに蓋をしたように残ることがある。熱風で加熱溶融する場合は、風圧により膜が破れてウェルの底に一部がラミネートされることがあるので、これを避ける必要がある。風圧を小さくしてウェルを覆っている溶融状態のフィルムが、表面張力によりシュリンクしてウェルの横壁或いはウェルの上端に付着するように調整するのが望ましい。
【0024】
上記の工程で風圧と温度を調整することはかなり不安定である。そこで風圧と温度の設定を、ウェルを覆っているフィルムが破れない状態でフィルムに鋭利な刃或いは針の如き鋭い先端を有するものでフィルムを破壊するとフィルムは瞬時にシュリンクしてウェルが開放になる。先端が鋭利なものでフィルムを破壊する代わりに、先端がウェルの径よりも小さく高温の物体(例えば半田ゴテの先端)を接触させてもフィルムは瞬時にシュリンクしてウェルが開放される。
【0025】
図3は、複数のウェルを有する補強された炭化薄板の使用例を示す説明図である。図3において15は、蓋16のふちに取る付けられた軟質シール部材である。軟質シール部材15は、炭化薄板のウェルが無い領域即ちウェルの外側の外周部に接触されている。蓋16は、平板状でも山型でもよい。ふた16の上面の一部に取ってを設けて持ちやすいようにしてもよい。軟質シール部材15は軟質材料でできており、蓋16に例えば接着されている。両面粘着テープにより15と16を接合してもよい。軟質シール部材15としては柔らかい天然ゴム或いは柔らかい樹脂、ゲル状物質等があげられる。蓋16としては、樹脂、ガラス、或いは金属製で厚さが0.1~1mm程度が望ましい。スポンジを支持体とする粘着テープが市販されているが、この粘着テープを平板に貼り付ければ支持体であるスポンジが軟質シール部材15の役目を果たすことができる。軟質シール部材15が炭化薄板に接着されていてもよい。図3では2個のウェルが描かれているが、更に多くの複数個のウェルであってもよい。
【0026】
図3のような構成のデバイスの使用例として、例えば蓋に穴を設けておき、炭化薄板と蓋の間の空間に穴から試料溶液を供給して全ウェルに試料溶液を行きわたらせる。ウェル内の液は毛細管現象により瞬時にウェルの底壁の仮道管内に浸透する。この段階でデバイスを寒天、ゼラチン等の培地に接触させると、試料溶液はウェルの数だけスタンプされるように転写される。デバイスを次の受容部材に接触させると試料溶液をスタンプさせることができる。このように繰り返しスタンプすることできる。
【0027】
別の使い方として炭化薄板の裏面(ウェルが形成されていない面)全体に試料溶液を接触させると、ウェルの底壁の仮道管内にのみ試料溶液が充填される。この段階でデバイスを受容部材の上に置き、蓋を軽く叩いて炭化薄板と蓋の間の空間を加圧することにより仮道管内の試料溶液を受容部材に転写することができる。ウェルの底壁の厚さを制御するか加圧度を制御することにより転写する液量を制御することができる。
【実施例0028】
特許文献1の実施例1に記載された方法と同様にしてヒノキ角材の炭化物を得た。得られた炭化物を仮道管とほぼ直角に市販のダイアモンドバンドソーマシンを用い、厚さ1.3mmにスライスし、両面を超微粒子研磨シートを用いて平滑に研磨した後、研磨面に付着している研磨粉をエアスプレーで除去した。更にイソプロパノール中で超音波洗浄して乾燥した。得られた炭化薄板の片面に厚さ40μmのポリエチレンフィルムを熱溶着して請求項1の補強された炭化薄板を得た。得られた補強された炭化薄板は、熱溶着フィルムが無い場合より破損しにくく、フィルム側を擦っても粉体がとれてこなかった。
【0029】
かくして得られた補強された炭化薄板の熱溶着されたフィルムが無い面に、試料溶液としてオイルレッドのトルエン溶液の5μLを滴下した。トルエンが蒸発後、ポリエチレンフィルムを&#21085;離したところ破損することなく、またフィルムに仮道管が付着することなく剥離できた。&#21085;離されたフィルムは少し反っていたがガラス板を乗せて平坦にして顕微鏡で観察すると仮道管形状のレプリカが明瞭に得られ、さらに溶液を滴下した部分と同じサイズにフィルム上にオイルレッドが転写されていた。
【実施例0030】
実施例1と同様にして得られた炭化物を1.2mm厚にスライスし、その片面を超微粒子研磨シートを用いて研磨した後、実施例1と同様にして研磨粉を除去した。次いで非研磨面に厚さ10μmのポリエチレンフィルムを熱溶着した。次に直径2mmのフラットドリルを用いて熱溶着されたフィルム面に、底壁の厚さが約0.3mmのウェルを、ウェルの中心間の距離が5mmになるように1列に3個、1行に3個、合計9個形成した。切粉を上記と同様にして除去して請求項2の補強された炭化薄板を得た。
【0031】
この炭化薄板のウェルが無い方の全面に、試料溶液として食用色素M105のx%水溶液を含侵させたガーゼを接触させて離すと、すべてのウェルの底壁の仮道管に試料溶液が充填された。次いでウェルが無い面を下にして市販のインクジェット記録紙(セイコーエプソン株式会社の商品名 スーパーファイン紙 KA4100SFR)の記録面に置いた。接触させるとウェル内の試料溶液がインクジェット記録紙に9個のスポット状に転写された。転写される液量はウェルの底壁の厚さを変えることにより増減できた。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明による炭化薄板を使用することにより、産業上および研究・技術開発上きわめて有用な再生医療をはじめとするバイオエンジニアリングの開発速度を加速できる。バイオエンジニアリング以外にディスプレイの用途、炭化薄板の厚さを非常に小さくできるので光学分野への応用が可能である。その他に先端技術開発等に利用可能である。
【符号の説明】
【0033】
10 熱溶融性フィルムが熱溶着され補強された炭化薄板
11 炭化薄板
12 熱溶融性フィルム
13 ウェル
14 ウェルの底壁
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2021-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
かくして得られた補強された炭化薄板の熱溶着されたフィルムが無い面に、試料溶液としてオイルレッドの1.1重量%トルエン溶液の5μLを滴下した。トルエンが蒸発後、ポリエチレンフィルムを離したところ破損することなく、またフィルムに仮道管が付着することなく剥離できた。離されたフィルムは少し反っていたがガラス板を乗せて平坦にして顕微鏡で観察すると仮道管形状のレプリカが明瞭に得られ、さらに溶液を滴下した部分と同じサイズにフィルム上にオイルレッドが転写されていた。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
この炭化薄板のウェルが無い方の全面に、試料溶液として食用色素M105の2.3重量%水溶液を含侵させたガーゼを接触させて離すと、すべてのウェルの底壁の仮道管に試料溶液が充填された。次いでウェルが無い面を下にして市販のインクジェット記録紙(セイコーエプソン株式会社の商品名 スーパーファイン紙 KA4100SFR)の記録面に置いた。次いで厚さ1mm、サイズ20mm×20mmのガラス板の周囲に幅4mm、厚さ1mmのスポンジ粘着テープが貼られた図3のような蓋を炭化薄板の上に載せたのち、ガラス板を軽く指で叩いて炭化薄板をインクジェット記録紙に接触させるとウェル内の試料溶液がインクジェット記録紙に9個のスポット状に転写された。転写される液量はウェルの底壁の厚さを変えることにより増減できた。