(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054858
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】積層体及び構造体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20230410BHJP
B32B 3/26 20060101ALI20230410BHJP
B32B 3/28 20060101ALN20230410BHJP
B32B 7/06 20190101ALN20230410BHJP
【FI】
B32B27/00 C
B32B3/26
B32B3/28
B32B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163798
(22)【出願日】2021-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 竜典
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK03A
4F100AK41A
4F100AT00
4F100BA15A
4F100BA15B
4F100DD01A
4F100DD01B
4F100DD09A
4F100DD09B
4F100DD12A
4F100DD12B
4F100EH202
4F100EJ192
4F100HB21
4F100JK08
4F100JL14
(57)【要約】
【課題】製造時の手間やコストを抑えつつ、樹脂材料に関わらず強度と伸度が良好なフィルムに対し、補強層を積層することによって取り扱いを容易にできる積層体及び構造体を提供する。
【解決手段】フィルムと、前記フィルムの少なくとも一方の面に積層された補強層とを有する積層体において、前記フィルムと前記補強層は、樹脂材料から形成され、前記フィルムは、少なくとも所定方向の断面形状において表面と裏面が対応する凹凸構造を持ち、前記凹凸構造が前記所定方向に沿って少なくとも1つ以上繰り返される周期的な構造であり、前記フィルムから前記補強層を剥離する際の剥離強度が0.01N以上、0.4N以下である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムと、前記フィルムの少なくとも一方の面に積層された補強層とを有する積層体であり、
前記フィルムと前記補強層は、樹脂材料から形成され、
前記フィルムは、少なくとも所定方向の断面形状において表面と裏面が対応する凹凸構造を持ち、前記凹凸構造が前記所定方向に沿って少なくとも1つ以上繰り返される周期的な構造であり、
前記フィルムから前記補強層を剥離する際の剥離強度が0.01N以上、0.4N以下である、
ことを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記剥離強度は、最も剥離強度が弱い方向にて測定した前記積層体の剥離強度である、
ことを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記フィルムの前記凹凸構造を含めない厚みが、3μm~50μmである、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記凹凸構造における高低差が、前記フィルムの厚みよりも厚く、且つ5μm~150μmである、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記補強層の厚みが10μm以上である、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記積層体を幅15mmのループ状にしたときに、該ループ状にした前記積層体の長さが85mm、押し込み距離が20mmの測定条件にて測定される、ループステフネス値が、1mN/15mm以上である、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の前記積層体の少なくとも一方の面に、機能層が積層された、
ことを特徴とする構造体。
【請求項8】
前記機能層は前記フィルムに積層される、
ことを特徴とする請求項7に記載の構造体。
【請求項9】
前記機能層は前記補強層に積層される、
ことを特徴とする請求項7または8に記載の構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及び構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にプラスチックフィルムは、軽量である、化学的に安定である、加工がしやすい、柔軟で強度がある、大量生産が可能、などの性質があり、様々なものに利用されている。その用途としては、例えば、食料品や医薬品等を包装する包装材や、点滴パック、買い物袋、ポスター、テープ、液晶テレビ等に利用される光学フィルム、保護フィルム、窓に貼合するウィンドウフィルム、ビニールハウス、建装材等々、多岐にわたる。具体的な材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリルポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリイミドなどの熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0003】
用途により適正なプラスチック材料が選択され、さらに、それらを複数種類重ね、積層体とすることもなされている。また、複数のプラスチック材料を1つの層中に混ぜることで、単一材料の欠点を補うようにした用い方もある。多くの場合、耐熱性や機械強度、もしくは透明性などにより適正なプラスチックフィルム材料を選択している。
【0004】
しかし、プラスチックフィルムの機械特性は、一般的には材料や層構成により決まってしまう。このため、強度重視の材料では伸度が小さくなる傾向があり、高い強度を有しつつ十分な伸度を確保できるフィルム材料が切望されている。また、基材に蒸着層を積層したバリア性包装材は、延伸すると、すぐに蒸着層に亀裂が生じてバリア性が消失してしまうという課題があり、蒸着層の破壊を抑制しつつ伸度を確保したフィルム材料も切望されている。さらに、例えばポリ乳酸のフィルムは強度があり、生分解性を有することから環境保護の観点からも注目を集めているが、比較的伸度が低く耐衝撃性に劣るため用途が制限されている。このように、強度と伸度を両立できるフィルム材料の要請に対し、複数材料の混合や、複数種のフィルムの貼り合わせ等による対応策が検討されているが、手間やコストがかかる一方で、十分な効果を得ることは難しいというのが現状である。
【0005】
そこで特許文献1や特許文献2に示すように、フィルムに凹凸構造を持たせることで強度と伸度を両立させる試みが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-90006号公報
【特許文献2】特開2019-89319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1、および2に示されるフィルムは単体で非常に薄いことや、凹凸構造の並び方向に対して垂直方向の曲げ剛性が弱いため、フィルム単体での取り扱いが難しい。取り扱いやすくする手法としては、フィルムを厚くすることが挙げられるが、厚くすることによりフィルムの特徴である伸度を損なうことになる。
【0008】
かかる従来技術の問題点を鑑みて、本発明は、製造時の手間やコストを抑えつつ、樹脂材料に関わらず強度と伸度が良好なフィルムに対し、補強層を積層することによって取り扱いを容易にできる積層体及び構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、代表的な本発明の積層体の一つは、フィルムと、前記フィルムの少なくとも一方の面に積層された補強層とを有する積層体であり、
前記フィルムと前記補強層は、樹脂材料から形成され、
前記フィルムは、少なくとも所定方向の断面形状において表面と裏面が対応する凹凸構造を持ち、前記凹凸構造が前記所定方向に沿って少なくとも1つ以上繰り返される周期的な構造であり、
前記フィルムから前記補強層を剥離する際の剥離強度が0.01N以上、0.4N以下であることにより達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造時の手間やコストを抑えつつ、樹脂材料に関わらず強度と伸度が良好であるフィルムに対し、補強層を積層することによって取り扱いを容易にできる積層体及び構造体を提供することが出来る。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態のフィルムにおける一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のフィルムにおける一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のフィルムにおける一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本実施形態のフィルムにおける一例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本実施形態のフィルムにおける一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態のフィルムを引っ張り変形させた例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の積層体における一例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の積層体の剥離強度測定の概要を示す図である。
【
図9】
図9は、本実施形態のフィルムにおける一例を示す断面図である。
【
図10】
図10は、本実施形態のフィルムのループステフネス試験の概要を示す図である。
【
図11】
図11は、本実施形態の構造体における一例を示す断面図である。
【
図12】
図12は、本実施形態のフィルムの区画を示す平面図である。
【
図13】
図13は、本実施例および比較例における使用したロールの凹凸構造の各部寸法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明のフィルム並びにそのフィルムを用いた積層体および構造体の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
なお、各図は模式的に示した図であり、各部の大きさや形状等は理解を容易にするために適宜誇張して示している。また、説明を簡単にするため、各図の対応する部位には同じ符号を付している。
【0013】
(フィルム)
図1から
図4は,本実施形態のフィルム1における例を示す斜視図である。また、
図5(a)は
図1、2のフィルム1におけるX方向の断面図、
図5(b)は
図3のフィルム1におけるX方向の断面図、
図5(c)は
図3のフィルム1の変形例における断面図、および
図5(d)は
図4のフィルム1におけるY方向の断面図である。
【0014】
図1から
図5に示すように、フィルム1は、1方向または2方向の断面形状において、表面と裏面が対応して(好ましくはフィルム厚が略一様となるように)山部2aと谷部2bを繰り返す凹凸構造を持ち、凹凸構造が少なくとも1つ以上の周期的な構造を有する。
図2のフィルム1は、X方向断面とY方向断面で同じ凹凸構造を持つが、X方向断面はY方向断面よりも1周期が短い構造となっている。凹凸構造は直線や曲線を組み合わせた形状を備えても良いし、異なる形状を組み合わせても良い。
【0015】
具体的には、
図1、
図2、
図5(a)のような複数の台形をつなげた断面形状でも良いし、
図3、
図5(b)のような複数の三角形をつなげた断面形状でもよいし、
図5(c)、
図5(d)のように同一断面上に台形と三角を交互に組み合わせたものでも良い。山部2aと谷部2bがなだらかになった形状でも良く、これらの形状に限定するものではない。また、
図4のようにY方向の断面が台形と三角形、X方向の断面が台形と台形というように、方向が異なる断面ごとに異なる形状を組み合わせても良い。
【0016】
フィルム1が伸びる前後の模式図を、
図6に示す。フィルム1は
図6で左右方向に引っ張った際に、主として弾性変形による伸びではなく、交差する面と面との断面内角が増大するという、凹凸構造の形状変化により伸びを発現させることができるため、フィルム1の材料を問わず伸びる特性を持つ。
図1に示すフィルム形状ではX方向に伸び、
図2から
図4に示すフィルム形状ではX方向およびY方向共に伸び、特にX方向はY方向に対してより伸びる。
【0017】
ただし、フィルム1単体では、その凹凸形状に起因して曲げ剛性が低くなるため、取り扱い性が低下するという課題がある。そこで、本実施形態では、以下のようにフィルム1に補強層を積層した積層体とすることで、取り扱い性の向上を図っている。フィルム1を使用する場合、補強層を剥がせばよい。
【0018】
(補強層および積層体)
図7は、本実施形態の積層体3における一例を示す断面図である。
図7に示すように、積層体3はフィルム1に補強層4を積層させたものである。補強層4はフィルム1の少なくとも一方の面に備えていれば良く、
図7(a)に示すようにフィルム1の片面に備えても良いし、
図7(b)に示すようにフィルム1の両面に備えても良い。また、
図7(c)に示すように補強層4は2層以上備えても良く、これらの形状に限定するものではない。フィルム1に補強層4を設けることで曲げ剛性が高くなり、取り扱いが容易となる。
【0019】
ただし、フィルム1から補強層4が容易に剥がれると、搬送中などに剥がれが生じて商品としての価値が失われるおそれがあり、一方でフィルム1から補強層4が剥がれにくいと、フィルム1を使用したいユーザーが不便と感じるおそれがある。そこで、補強層4がフィルム1から剥がれる指標として所定の剥離強度を、積層体3に持たせることが望ましい。
【0020】
<剥離強度>
剥離強度とは、積層体3においてフィルム1と補強層4の層間で剥離する際の抵抗値であり、積層体3に積層するフィルム1の形状と方向によって変化する。一般的には、引っ張りにより断面形状変化が小さい方向の方が剥離しやすいと考えられ、例えば
図1から
図4に示す形状ではY方向は剥離に強く、X方向は剥離に弱い。ここで、例えば
図1に示す形状でX方向において補強層4が剥離すると、剥離した部分ではフィルム1が伸びる方向に引っ張られるため、剥離と同時にフィルム1は伸びることとなる。しかし、剥離の際にフィルム1が復元できる領域を超えて伸びた場合、フィルム1の特徴である伸度を損なうことになる。そのため剥離は
図1の例でY方向のようにフィルム1が伸びにくい方向に行われることが好ましい。
【0021】
本発明者らの検討結果によれば、剥離する方向を問わず剥離した際の剥離強度が0.01N以上、0.4N以下であることが好ましいことが分かった。より好ましくは剥離強度が0.01N以上であって、フィルム1で引張試験を実施した際にひずみ=5%時の試験力以下である。上記範囲未満になるとフィルム1と補強層4が自然に剥離してしまい取り扱いが難しくなり、上記範囲を超えてしまうと剥離する際にフィルム1が復元できる領域を超えて伸びてしまい、フィルム1の特徴である伸度を損なうことになる。
【0022】
剥離強度は一般的な引張試験機を利用することで計測することが出来る。
図8に剥離強度を測定時の積層体3の断面を示す。積層体3を幅15mm、長さ150mmで切り出した後に、フィルム1と補強層4の層間で50mm剥離する。剥離した端部をそれぞれ引張試験機のチャック21で把持し、チャック間距離50mm、引張速度200mm/minでフィルム1と補強層4が離間する方向に引っ張って引張試験を実施する。剥離強度はこの試験で得られる荷重の最大値を示すものである。
【0023】
フィルム1は使用する直前で積層体3から剥離することで、取り扱いが容易となる。
【0024】
<フィルムの厚み>
図9は本実施形態のフィルム1における一例を示す断面図である。
フィルム1の凹凸構造を含めないフィルム厚みt1は、3μm以上、50μm以下であると好ましい。より好ましくは、5μm以上、30μm以下である。上記範囲未満になるとフィルム1と補強層4を剥離する際にフィルム1が復元できる領域を超えて変形してしまい、フィルム1の特徴である伸度を損なうことになる。また、上記範囲を超えてしまうと
図6に示した形状変化による伸びが円滑に行われないため、フィルム1の特徴である伸度を損なうことになる。
【0025】
なお、凹凸構造や各厚みは、本発明の効果を損なわない限り、フィルム1の場所によって均一である必要はなく不均一であっても良い。ただし不均一の時には、いずれの場所でも上記範囲に入っていることが好ましい。
【0026】
さらに、凹凸構造の高低差H(=T-t1)がフィルム厚みt1を上回り、5μm以上、150μm以下であると好ましい。より好ましくは、高低差Hは10μm以上、100μm以下である。それにより、フィルム1の特徴である伸度を得ることができるためである。上記範囲未満になると
図6に示した形状変化による伸び量が不十分となり、フィルム1の特徴である伸度を損なうことになる。また、上記範囲を超えてしまうとフィルム1と補強層4を剥離強度が強くなり、剥離の際にフィルム1が復元できる領域を超えて伸びてしまい、フィルム1の特徴である伸度を損なうことになる。
【0027】
<補強層の厚み>
補強層4の厚みt2は、
図7に示すようにフィルム1の凹凸構造部分内に進入する部分を含まないもの(すなわちフィルム1の下面から補強層4の下面までの距離)とし、10μm以上であることが好ましく、より好ましくは、20μm以上である。補強層の厚みを上記範囲とすることで、フィルム1と補強層4を積層させた積層体3は適切な曲げ剛性を有することができるようになり、取り扱いが容易となる。
【0028】
<ループステフネス>
積層体3は曲げ剛性の指標値として、ループ状にしたときに得られるそれぞれのループステフネス値が、特定の範囲内であることが好ましい。ループステフネス値は、例えば、幅15mmのフィルム1をループ状にし、ループの長さ(周長)が85mm、押し込み距離が20mmの測定条件にて測定されるが、積層体3に積層するフィルム1の形状と方向によって変化する。例えば、
図1~4に示す形状では、X方向のループステフネス値はY方向のループステフネス値と比較して低い。
【0029】
具体的には、最も弱い方向で測定したループステフネス値が1mN/15mm以上であることが好ましい。ループステフネス値が上記範囲未満になると、十分な曲げ剛性を得られず、積層体3の取り扱いが困難となる。
【0030】
ループステフネス値は、株式会社東洋精機製作所製のループステフネステスタを利用することで計測することができる。
図10に、ループステフネス試験中の積層体3の状態を示す。ループステフネス試験は、
図10のように、積層体3をループステフネステスタのチャック22で固定することでループ状にし、ループ状の積層体3を圧子23により押込み、その時の圧子23の荷重を測定する試験である。圧子23の押し込む距離は、押込み距離により規定され、押込み距離とは圧子23とループステフネステスタのチャック22が最も近づいた時の距離を表す。ループステフネス値とは、この試験で得られる荷重の最大値を示すものである。
【0031】
(機能層および構造体)
図11は、本実施形態の構造体5における一例を示す断面図である。
図11に示すように構造体5は、積層体3(フィルム1および補強層4)に機能層6を積層させたものである。機能層6は
図11(a)に示すように補強層4側に備えても良いし、
図6(b)に示すようにフィルム1側に備えても良い。また、
図6(c)に示すようにフィルム1と補強層4の両面に備えても良く、
図6(d)のように機能層6が2層以上でも良く、これらの形状に限定するものではない。
【0032】
<配列構造>
また、
図12(a)のように、フィルム1は、凹凸構造を含んだ複数の領域7を有し、その領域が並んだフィルム集合体となっていても良い。フィルム1は、
図1のように物性に異方性をもつ形状もあることから、例えば、隣の領域では、繰り返し方向を90度回転させた凹凸構造(山部2a、谷部2b)とすることで、フィルム集合体全体としては、等方的なフィルムとして扱えるような工夫をしても良い。
【0033】
また、
図12(b)のように、左右両側の縁部やフィルムの幅方向の中央部や、隣り合う領域7の間などに、凹凸構造(山部2a、谷部2b)を形成しない余白8があっても良い。
【0034】
(材料)
フィルム1、および補強層4の材料としては、熱可塑性樹脂であると好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、エチレン酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ乳酸、環状ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及び、これらの誘導体などが挙げられるが、特に限定されるものではない。これらの材料は単独で用いられてもよいし、これらのうちの複数の材料が組み合わされて用いられてもよい。ただし、補強層4は使用する直前で剥離し、破棄することから、様々な樹脂と強く密着しない安価な材料であることが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンであることが特に好ましい。
【0035】
また、機能層6の材料としてはフィルム1、および補強層4と同様に熱可塑性樹脂以外に、硬化樹脂(熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等)や金属が挙げられる。硬化樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、及び、これらの誘導体などが挙げられるが、特に限定されるものではない。また、金属としてはAl、Si、Zn、Sn、Fe、Mn等、またこれらの金属の1種以上を含む無機化合物、該無機化合物としては、酸化物、窒化物、炭化物、フッ化物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0036】
<製造方法>
フィルム1および積層体3、構造体5の製造方法については、例えば熱プレスによる方法や、押出成形による方法を用いることができる。
【0037】
[熱プレス]
熱プレスによる方法では、離形性を有する複数のフラットフィルムを重ね、もしくは、離形性を有する複数の層を保持するフラットフィルムを、凹凸形状を設けた加熱ロール間、もしくは加熱した平板状のプレス機に通すことで、凹凸構造を付与することが可能である。この際、プレス深さやプレス圧を調整することによって、所望の凹凸形状が付与される。この時、加工するフラットフィルムが単層であればフィルム1、複数層であれば積層体3、または構造体5を得る事ができる。
【0038】
[押出成形]
また、押出成形による方法では、複数の押出機を使用し、複数種類の別の樹脂をフィードブロック法、またはマルチマニホールド法により共押出することで、フィルム1および積層体3、構造体5を得ることができる。フィルム化するための冷却工程において、凹凸構造を付与する面に、凹凸が表面に設けられた冷却ロールを用いて、ニップ圧力を付加しながら冷却することで、凹凸構造を形成することが出来る。
【0039】
このとき、冷却ロールと接するフィルム1のフィルム厚さt1に対し、凹凸構造の山谷の高低差Hが大きいときには、補強層4にも同様に凹凸構造が付加される。
【0040】
その他、射出成形など、凹凸構造を付加するいずれかの方法が選択可能であり、特に方法が限定されるものではない。
【0041】
フィルム1および積層体3は、後工程で表面に印刷層や蒸着層、ハードコート層、反射防止層、粘着剤との密着性向上のためのアンカーコート層などの機能層6を積層した構造体5とすることもできる。
【0042】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではないことはいうまでもない。また、以上の実施の形態を組み合わせて用いることは、任意である。
【実施例0043】
以下、本発明者が作製した実施例について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
フィルム1の材料として、株式会社ベルポリエステルプロダクツ製のポリエステル樹脂(A-PET)ベルペット EFG70を用いた。補強層4の材料として、日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン(LDPE)ノバテックLD LC600Aを用いた。フィルム1および補強層4を共押出成形によりフィルム1側を凹凸の付いたロールによりニップし凹凸構造を付与し、積層体3の断面形状が
図7(a)に示されるように作製した。
【0045】
フィルム1の形状が
図1に示され、その断面形状が
図5(a)に示されるように台形形状が周期的に並ぶものとした。使用したロールの凹凸形状の拡大図を
図13(a)に示し、凹凸構造の凸部高さHを60μmとした。フィルム1の厚みt1を10μm、補強層4の厚みt2を20μmとした。
【0046】
(実施例2)
補強層4の材料として、日本ポリエチレン株式会社製の高密度ポリエチレン(HDPE)ノバテックHD HS471を用いた。それ以外は実施例1と同様とし、実施例2のサンプルを作製した。
【0047】
(実施例3)
フィルム1の材料として、三菱ケミカル株式会社製のエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)ソアノール D2908を用いた。それ以外は実施例1と同様とし、実施例3のサンプルを作製した。
【0048】
(実施例4)
フィルム1および補強層4を共押出成形によりフィルム1側を凹凸の付いたロールによりニップし凹凸構造を付与し、同時に機能層6として東洋紡株式会社製 厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(延伸PET) E5102を補強層4側へ張り合わせ、構造体5の断面形状が
図11(a)となるように作製した。それ以外は実施例1と同様とし、実施例4のサンプルを作製した。
【0049】
(実施例5)
使用したロールの凹凸形状を
図13(b)に示すものとし、凹凸構造の高さHを5μm、フィルム1の厚みt1を3μmとした。それ以外は実施例1と同様とし、実施例5のサンプルを作製した。
【0050】
(実施例6)
使用したロールの凹凸形状を
図13(c)に示すものとし、凹凸構造の高さHを150μmとした。それ以外は実施例1と同様とし、実施例6のサンプルを作製した。
【0051】
(実施例7)
フィルム1の厚みt1を3μmとした。それ以外は実施例1と同様とし、実施例7のサンプルを作製した。
【0052】
(実施例8)
フィルム1の厚みt1を50μmとした。それ以外は実施例1と同様とし、実施例8のサンプルを作製した。
【0053】
(実施例9)
補強層4の厚みt2を10μmとした。それ以外は実施例1と同様とし、実施例9のサンプルを作製した。
【0054】
(比較例1)
補強層4の添加剤として信越シリコーン社製のシリコンレジンパウダーKMP-590を10wt%となるように添加した。それ以外は実施例1と同様とし、比較例1のサンプルを作製した。
【0055】
(比較例2)
押出成形時にフィルム1側に凹凸のない鏡面のロールを用いて、表裏に凹凸形状のないフラットなサンプルを作製した。それ以外は実施例1と同様とし、比較例2のサンプルを作製した。
【0056】
(比較例3)
フィルム1の材料として三菱ケミカル株式会社製のエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)ソアノール D2908を用いた。補強層4の材料として、日本ポリエチレン株式会社製の高密度ポリエチレン(HDPE)ノバテックHD HS471を用いた。それ以外は実施例1と同様とし、比較例3のサンプルを作製した。
【0057】
(比較例4)
使用したロールの凹凸形状を
図12(d)に示すものとし、凹凸構造の高さHを160μmとした。それ以外は実施例1と同様とし、比較例4のサンプルを作製した。
【0058】
(剥離強度、ループステフネス値、取り扱いやすさおよび伸び感の官能評価)
各実施例及び比較例における、フィルム1と補強層4の層間剥離強度、積層体3および構造体5のループステフネス値の測定を実施した。
【0059】
剥離強度の評価には株式会社エー・アンド・デイ製テンシロン万能材料試験機(RTC‐1250A)を用いて実施した。JISZ0237:2009 粘着テープ・粘着シート試験方法の試験条件に準拠し、サンプル幅15mm、サンプル長さ150mmとし、剥離中にフィルム1が伸びないように
図1のY方向(最も剥離強度が強い方向)がサンプルの長手方向となるように切り出し、サンプルの片側をフィルム1と補強層4の層間で事前に50mm剥離し、チャック間距離50mmでチャックした。この状態から引張速度200mm/minにてサンプルを全て剥離するまで引っ張り、力を付与した際の荷重を測定する剥離試験を実施した。この時、測定中の荷重の最大値を剥離強度とした。
【0060】
また、剥離強度の測定が終わったサンプルの長さを測定し、150mmであったものは〇、サンプルに伸びが生じ150mmよりも長いものは×とした。なお、比較例1はフィルム1と補強層4の層間で剥離し、積層体3として成り立たないため測定を実施しなかった。また、比較例2は凹凸構造を持たないためサンプルの切り出し方向は問わないものとした。
【0061】
ループステフネス値の評価は、株式会社東洋精機製作所製ループステフネステスタ(DA-S)を用いて実施した。サンプル幅15mm、サンプル長さ200mmで
図1のX方向がサンプルの長手方向となるように切り出し、ループの長さは85mm、押し込み距離(チャック-圧子間距離)は20mmとした。なお、比較例1はフィルム1と補強層4の層間で剥離し、積層体3として成り立たないため測定を実施しなかった。また、比較例2は凹凸構造を持たないためサンプルの切り出し方向は問わないものとした。
【0062】
(官能評価方法)
各実施例及び比較例における、積層体3の「取り扱いやすさ」と、フィルム1の「伸び感」を評価するため、各実施例及び比較例に官能評価を実施した。
【0063】
「取り扱いやすさ」の評価は、積層体3を試験者が手で持ち、取り扱いにくいと感じたものを×、取り扱いやすいと感じたものを〇、特に取り扱いやすいと感じた物を◎とした。
【0064】
「伸び感」の評価は、積層体3から剥離したフィルム1を試験者が
図1のX方向に手で引っ張り、伸びないと感じたものを×、伸びると感じたものを〇、特に伸びると感じた物を◎とした。
【0065】
(総合評価)
実施例および比較例において、どちらか一方でも「×」だったものは「×」とし、どちらも「〇もしくは◎」だったものは「〇」とした。また、どちらも「◎」だったものは「◎」とした。
【0066】
各実施例における条件、及び評価結果の一覧表を表1に示す。また、各比較例における条件、及び評価結果の一覧表を表2に示す。
【0067】
【0068】
【0069】
(評価結果総論)
表1、表2の実施例と比較例の総合評価を比較すると、同じ材料でも「〇」のものもあれば「×」のものもあり、また、同じ形状、同じ厚みであっても「〇」、「×」が混在していることがわかる。
【0070】
(評価結果各論)
比較例1はフィルム1と補強層4の層間で自然に剥離し、積層体3として成り立たななかったため、総合評価が「×」となった。
比較例2は凹凸構造がないため、伸び感が悪い評価となったため、総合評価が「×」となった。
比較例3、4は剥離強度が高く、剥離したフィルム1に伸びが生じていた。そのため伸び感も悪い評価となったため、総合評価が「×」となった。
【0071】
実施例1は、ループステフネス値が小さくなったことで、柔らかくなり取り扱いづらくなったため、取り扱いやすさの評価が「○」にとどまり、総合評価が「〇」となった。
実施例5は、凹凸構造の高さHが小さくしたことで、伸び感が弱くなったため、伸び感の評価が「〇」にとどまり、総合評価が「〇」となった。
実施例6は、凹凸構造の高さHを大きくしたことで、伸び感の評価は「◎」となったが、取り扱いやすさの評価が「〇」にとどまり、総合評価が「〇」となった。
実施例7は、フィルム1の厚みt1を小さくしたことで、伸び感の評価は「◎」となったが、取り扱いやすさの評価が「〇」にとどまり、総合評価が「〇」となった。
実施例8は、補強層4の厚みt2を小さくしたことで、取り扱いやすさの評価が「〇」にとどまり、総合評価が「〇」となった。
実施例9は、補強層4の厚みt2を小さくしたことで、伸び感の評価は「◎」となったが、取り扱いやすさの評価が「〇」にとどまり、総合評価が「〇」となった。
【0072】
これに対して実施例2、3、4は、曲げ剛性が高く、適度な剥離強度であったため、剥離した際のフィルム1の伸びも生じず、取り扱いやすさ・伸び感共に優れ、総合評価が「◎」であった。