IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 長野オートメーション株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-シート材の搬送システム 図1
  • 特開-シート材の搬送システム 図2
  • 特開-シート材の搬送システム 図3
  • 特開-シート材の搬送システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055010
(43)【公開日】2023-04-17
(54)【発明の名称】シート材の搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B65H 31/34 20060101AFI20230410BHJP
   B65H 29/40 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
B65H31/34
B65H29/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164093
(22)【出願日】2021-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】598142014
【氏名又は名称】長野オートメーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】山浦 研弥
(72)【発明者】
【氏名】米澤 昌範
【テーマコード(参考)】
3F054
3F106
【Fターム(参考)】
3F054AA01
3F054AA06
3F054AB01
3F054BA01
3F054BB25
3F054BC04
3F054BD04
3F054BF03
3F054BF07
3F054BF11
3F054BF24
3F054BH02
3F054BH07
3F054BJ03
3F054DA05
3F054DA16
3F106EA01
3F106EA23
3F106LA13
3F106LB01
3F106LB07
(57)【要約】
【課題】加工されたシート材を搬送するシステムを提供する。
【解決手段】搬送システム1は、第1の軸26の周りに配置された複数のトレイ10を含むストッカ20を有する。ストッカ20は複数のトレイの位置を第1の軸を中心として断続的に移動する駆動装置25を含み、駆動装置は、複数のトレイのそれぞれを順番に、所定の形状に加工された後にフィーダ30により搬送されたシート材5を一枚ずつ受け入れる第1の位置21と、複数のトレイの中の第1のトレイ10a内に蓄積された複数のシート材からなるシート束6の姿勢を、第1のトレイの角度を傾けることにより整える第2の位置22と、姿勢が整えられたシート束を次の工程に搬送するために第1のトレイから排出する第3の位置23とに移動する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軸の周りに配置された複数のトレイと、
前記複数のトレイの位置を前記第1の軸を中心として断続的に移動する駆動装置とを有し、
前記駆動装置は、前記複数のトレイのそれぞれを順番に、所定の形状に加工された後にフィーダにより搬送されたシート材を一枚ずつ受け入れる第1の位置と、
前記複数のトレイの中の第1のトレイ内に蓄積された複数の前記シート材からなるシート束の姿勢を、前記第1のトレイの角度を傾けることにより整える第2の位置と、
前記姿勢が整えられた前記シート束を次の工程に搬送するために前記第1のトレイから排出する第3の位置とに移動する、搬送システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数のトレイのそれぞれは、前記第1の軸に面した内周側に設けられた、前記シート束の姿勢を整えるための壁面と、前記第1の軸と反対側の外周側に設けられたアクセス用の開口とを含む、搬送システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記複数のトレイのそれぞれは、底面に前記開口側が開き、前記内周側に延びた複数のスリットを含む、搬送システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、さらに、
前記第1の位置の外周側に配置された前記フィーダを有し、
前記フィーダは、前記シート材を上下に挟んで、前記第1の位置にあるトレイに放出するコンベアを含む、搬送システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、さらに、
前記第3の位置で前記シート束をピックアップする多関節ロボットを有する、搬送システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、さらに、
前記第2の位置で前記シート束の前記第1の軸に沿った方向の姿勢を整える縁揃え装置を有する、搬送システム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記駆動装置は、前記第3の位置を兼ねた前記第2の位置へ前記複数のトレイをそれぞれ移動する、搬送システム。
【請求項8】
第1の軸の周りに配置された複数のトレイと、
前記複数のトレイの位置を前記第1の軸を中心として断続的に移動する駆動装置とを有する搬送システムの制御方法であって、
前記駆動装置が、前記複数のトレイのそれぞれを順番に、所定の形状に加工された後にフィーダにより搬送されたシート材を一枚ずつ受け入れる第1の位置と、
前記複数のトレイの中の第1のトレイ内に蓄積された複数の前記シート材からなるシート束の姿勢を、前記第1のトレイの角度を傾けることにより整える第2の位置と、
前記姿勢が整えられた前記シート束を次の工程に搬送するために前記第1のトレイから排出する第3の位置とに順番に移動することを含む、搬送システムの制御方法。
【請求項9】
第1の軸の周りに配置された複数のトレイと、
前記複数のトレイの位置を前記第1の軸を中心として断続的に移動する駆動装置とを有する搬送システムを制御するためのプログラムであって、
前記駆動装置が、前記複数のトレイのそれぞれを順番に、所定の形状に加工された後にフィーダにより搬送されたシート材を一枚ずつ受け入れる第1の位置と、
前記複数のトレイの中の第1のトレイ内に蓄積された複数の前記シート材からなるシート束の姿勢を、前記第1のトレイの角度を傾けることにより整える第2の位置と、
前記姿勢が整えられた前記シート束を次の工程に搬送するために前記第1のトレイから排出する第3の位置とに順番に移動するための命令を含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート(シート材)を束ねて搬送するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ソーターにおけるシート束の取り出しを容易にし、また、ビンの数以上のシート束を連続して作成できるようにすることが開示されている。このシート搬送装置は、画像形成装置から搬入されたシートが送り込まれる複数個のビンを上下方向に沿って配設したソーターにおいて、最上位の前記ビンの上方にトップトレイを設け、前記ビン内に収納されたシート束を取り出すと共に取り出したシート束を上方へ搬送して前記トップトレイ上へ排出する搬送ユニットを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-246606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シート材の一部が空洞になったり、切り欠けがあるような形状に加工されたシート材は、未加工のシート材に対して強度が低下したり、搬送中の姿勢が安定しにくいなどの相違が発生しやすく、これらを安定して束ねて搬送することが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、第1の軸の周りに配置された複数のトレイと、複数のトレイの位置を第1の軸を中心として断続的に移動する駆動装置とを有する搬送システムである。駆動装置は、複数のトレイのそれぞれを順番に、所定の形状に加工された後にフィーダにより搬送されたシート材を一枚ずつ受け入れる第1の位置と、複数のトレイの中の第1のトレイ内に蓄積された複数のシート材からなるシート束の姿勢を、第1のトレイの角度を傾けることにより整える第2の位置と、姿勢が整えられたシート束を次の工程に搬送するために第1のトレイから排出する第3の位置とに移動する。この搬送システムにおいては、第1の位置において、シート材の一部が空洞になったり、切り欠けがあるような形状に加工されたシート材を、単体でもシート材が受け入れ時に歪みにくく、搬送中の姿勢が不安定になりにくい角度でトレイを設定して、一枚ずつ受け入れることができる。例えば、第1の位置においてトレイの角度を水平または若干上下に傾いた位置に設定することができる。
【0006】
第1の位置において、トレイに受入れられた、加工されたシート材は複数枚が束ねられたシート束になると、全体としてある程度の強度を有する。したがって、次に、シート束を含む第1のトレイを第1の軸を中心に移動(回転)して、シート束の姿勢を整えるために適した角度の第2の位置に設定することにより、シート束の姿勢を自重により整えることができる。その後、第3の位置において、シート束を次の工程のために搬送することができる。第2の位置は第3の位置を兼ねていてもよい。
【0007】
複数のトレイのそれぞれは、第1の軸に面した内周側に設けられた、シート束の姿勢を整えるための壁面と、第1の軸と反対側の外周側に設けられたアクセス用の開口とを含んでもよい。複数のトレイのそれぞれは、底面に開口側が開き、内周側に延びた複数のスリットを含んだ、シート束を取り出して搬送するために適した形状であってもよい。
【0008】
搬送システムは、第1の位置の外周側に配置されたフィーダを有してもよい。フィーダは、加工されたシート材を個々に安定して搬送できるように、シート材を上下に挟んで、第1の位置にあるトレイに放出するコンベアを含んでもよい。搬送システムは、さらに、第3の位置でシート束をピックアップする多関節ロボットを有してもよい。搬送システムは、さらに、第2の位置でシート束の第1の軸に沿った方向の姿勢を整える縁揃え装置を有してもよい。
【0009】
本発明の他の態様の1つは、第1の軸の周りに配置された複数のトレイと、複数のトレイの位置を第1の軸を中心として断続的に移動する駆動装置とを有する搬送システムの制御方法である。この制御方法は、駆動装置が、複数のトレイのそれぞれを順番に、所定の形状に加工された後にフィーダにより搬送されたシート材を一枚ずつ受け入れる第1の位置と、複数のトレイの中の第1のトレイ内に蓄積された複数のシート材からなるシート束の姿勢を、第1のトレイの角度を傾けることにより整える第2の位置と、姿勢が整えられたシート束を次の工程に搬送するために第1のトレイから排出する第3の位置とに順番に移動することを含む。第2の位置が第3の位置を兼ねていてもよい。
【0010】
本発明のさらに異なる他の態様の1つは、第1の軸の周りに配置された複数のトレイと、複数のトレイの位置を第1の軸を中心として断続的に移動する駆動装置とを有する搬送システムを制御するためのプログラムである。このプログラムは、駆動装置が、複数のトレイのそれぞれを順番に、所定の形状に加工された後にフィーダにより搬送されたシート材を一枚ずつ受け入れる第1の位置と、複数のトレイの中の第1のトレイ内に蓄積された複数のシート材からなるシート束の姿勢を、第1のトレイの角度を傾けることにより整える第2の位置と、姿勢が整えられたシート束を次の工程に搬送するために第1のトレイから排出する第3の位置とに順番に移動するための命令を含む。このプログラム(プログラム製品)は、コンピュータまたはCPUが読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】搬送システムの概要を示す図。
図2】ストッカの概要を示す図。
図3】ストッカのトレイがシート材を受け入れる様子を示す図。
図4】搬送システムの制御の概要を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、本発明に係る搬送システムの概要を示している。この搬送システム1は、シート材を加工する加工装置70と、加工されたシート材(シート、フィルム)5を一枚ずつ搬送するフィーダ30と、シート材5を束ねてシート束6として搬送可能とするストッカ20と、シート束6をストッカ20から取得して、次の工程に搬送するためのマガジン(カセット)65に収納する多関節ロボット50と、これらを制御するコントローラ80とを含む。加工されたシート材5の一例は、ガスケット、パッキン、セパレータなどであり、厚みが1mm以下、例えば、10~500μm、さらには10~200μm程度で、カッターなどの加工装置70により、内部に1または複数の空洞(開口)5aが形成されたものである。シート材5は加工装置70で加工された後に、ストッカ20で多関節ロボット50がハンドリングできる程度の厚み、例えば5mm程度あるいはそれ以上の厚みのシート束6となるように蓄積され、多関節ロボット50によりマガジン65に排出される。
【0013】
図2に、ストッカ20の概略構成を示している。ストッカ20は、フレーム27により所定の位置および高さに水平に支持された第1の軸26を中心として垂直な方向に複数のトレイ10が回転する構成となっている。ストッカ20は、第1の軸26の周りに配置された複数のトレイ10と、複数のトレイ10の位置を第1の軸26を中心として断続的に移動する駆動装置25とを有する。駆動装置25は、第1の軸26を中心として、第1の軸26に沿って配置された(延びた)複数のトレイ10のそれぞれを順番に、シート材5を受け入れる第1の位置21、シート束6の姿勢を整える第2の位置22、シート束6を取り出す第3の位置23、さらに次にシート材5を受け入れるために待機する位置24に順番に垂直方向に(垂直な面に沿って)回転移動する。第1の位置21は、所定の形状に加工された後にフィーダ30により搬送されたシート材5を一枚ずつ受け入れる位置である。第2の位置22は、複数のトレイ10の中の第1のトレイ、すなわち、シート材5を収納したトレイ10a内に蓄積された複数のシート材5からなるシート束6の姿勢を、第1のトレイ10aの角度を傾けることにより整える位置である。第3の位置23は、姿勢が整えられたシート束6を次の工程に搬送するために第1のトレイ10aから排出する位置である。本例のストッカ20においては、シート束6の姿勢を整える第2の位置22と、シート束6を搬出するための第3の位置23とを同じ位置としているが、異なる位置(角度)であってもよい。待機する位置24は、シート束6が取り出されたトレイ10が順番に旋回して次に第1の位置21に到達するまでの位置である。
【0014】
複数のトレイ10のそれぞれは、第1の軸26に面した内周側に設けられた、シート束6の姿勢を整えるための壁面12と、第1の軸26と反対側の外周側に設けられたアクセス用の開口11と、シート束6を支持する底面16とを含む。トレイ10は、第1の位置21において、フィーダ30からトレイ10に向けて放出されたシート材5をトレイ10内にガイドして受け入れるように、トレイ10の壁面12から斜め上方に延びたガイド19を備えていてもよい。
【0015】
図3(a)に、個々のトレイ10の構成を示している。トレイ10は、ほぼ長方形のシート材5を受け入れるように、全体として長方形であり、長方形の底面16と、長手方向に延びた一方(内側、内周側)の壁面12と、短手方向に対峙するように延びた壁面13および14とを含む。壁面12に対峙する外側(外周側)は開口11となり、底面16には、開口11の側が開いた1または複数のスリット17が、外周の開口11から内周の壁面12に向かって延びている。また、一方の壁面14には、トレイ10の内部のシート束6に横方向から振動または圧力を加えるための押し棒45が貫通する開口15が設けられている。第1の位置21に設置されたトレイ10(第1のトレイ10a)にシート材5が搬入される。
【0016】
搬送システム1は、トレイ10の第1の位置21の外周側に配置されたフィーダ30を含む。フィーダ30は、加工されたシート材5を、個々に、安定して搬送できるように、シート材5を上下に挟んで、第1の位置21にあるトレイ10(10a)に放出するコンベア34および33を含む。フィーダ30は、さらに、コンベア33を駆動するドライバ35と、コンベア33の張力を調整するローラー36を含んでいてもよい。シート材5は加工装置70において、1秒またはそれ以下の間隔で一枚一枚加工され、フィーダ30により第1の位置21にあるトレイ10aに搬送される。例えば、フィーダ30はシート材5を0.3秒またはそれ以下の間隔でトレイ10aに向けて放出する。
【0017】
個々のシート材5は上述したように薄膜であり、さらに1または複数の空洞5aが加工されている。したがって、個々のシート材5の強度は低く、第1の位置21においてトレイ10aが大きく傾いているとフィーダ30から受け入れたシート材5が歪む可能性がある。このため、第1の位置21においてシート材5を受け入れるトレイ10aは、シート材5を歪みなどが発生しないように受け入れるために適した姿勢に設定される。例えば、複数のトレイ10は第1の軸26の周りに垂直に回転されるが、第1の位置21においてトレイ10aは、フィーダ30からシート材5が放出される角度(ほぼ水平)に対して、水平、またはシート材5を受け入れるのに適した程度に上方または下方に微小角度だけ傾いた状態に設定される。また、第1の位置21においてトレイ10aは、フィーダ30と同じ高さ、または、フィーダ30から放出されたシート材5を、歪みなく受け入れやすい高さに設定される。
【0018】
図3(b)に示すように、第1の位置21において複数枚のシート材5を受け入れてシート束6が形成されたトレイ10aは、駆動装置25により第1の軸26を回転することにより、第1の位置21よりトレイ10aが傾いた状態となる第2の位置22に移動される。例えば、第1の位置21において、数10枚のシート材5を受け入れることができる。例えば、フィーダ30から厚み0.1~0.4mmのシート材5が0.2~0.5秒間隔で放出される場合は、トレイ10aにおいて50枚程度受け入れることにより、10~25秒間隔で、厚みが5~20mm程度のシート束6が形成される。したがって、駆動装置25は、10~25秒間隔で第1の軸26を回転し、トレイ10を次の位置に移動することができる。なお、これらの数値は一例であり、これらの数値に限定されるものではない。
【0019】
第2の位置22においてシート束6を収納したトレイ10aは、内側の壁面12が下、外側の開口11が上となるように角度θだけ傾いた状態となる。例えば、第2の位置22においてトレイ10aは45度傾くように設定される。角度θは、トレイ10の底面16をシート束6が滑りだすことが可能な最も小さい角度、例えば30度あるいはそれ以下に設定されてもよく、45度に限定されない。第1の位置21においてシート束6を形成することにより、一枚一枚では強度が不足する場合であっても数10枚を含むシート束6であれば壁面12に当たっても歪まない、あるいはほとんど歪まないようにすることができる。このため、トレイ10を傾けて、シート束6を一方の壁面12に当てることにより、図3(c)に示すように、シート束6を構成するシート材5の姿勢を、壁面12に沿って整えることが可能となる。
【0020】
すなわち、この搬送システム1においては、第1の位置21において、一部が空洞5aになったり、切り欠けがあるような形状に加工されたシート材5を、それぞれのシート材5が受け入れ時に歪みにくく、搬送中の姿勢が不安定になりにくい角度、例えば水平な状態でトレイ10aを設定して、シート材5を一枚ずつ受け入れることができる。次に、シート束を含む第1のトレイ10aを第1の軸26を中心に移動(回転)して、シート束6の姿勢を整えるために適した角度θの第2の位置22に設定することにより、シート束6を底面16に沿って滑らせて壁面12に当て、シート束6の姿勢を自重により整えることができる。
【0021】
図3(c)に示すように、搬送システム1は、さらに、第2の位置22でシート束6の第1の軸26に沿った方向(Y方向)の姿勢を整える縁揃え装置40を含む。縁揃え装置40は、トレイ10の壁面14の開口15を通して、内部のシート束6の側面を叩く、あるいは押す、押し棒45と、押し棒45を駆動するアクチュエータ43とを含む。押し棒45により、シート束6の一方の側を叩いて、あるいは押して、シート束6の反対側を対峙する壁面13に押し付けることによりシート束6の第1の軸26に沿った方向(Y方向)の姿勢を整えることができる。すなわち、搬送システム1においては、第2の位置22でトレイ10を内側に傾けることにより、内側の壁面12を用いてシート束6の第1の軸26と直交する方向(X方向)の姿勢を整えることができ、縁揃え装置40により叩くことにより、側方の壁面13を用いて第1の軸26に沿った方向(Y方向)の姿勢も整えることができる。
【0022】
搬送システム1では、第2の位置22において、ある程度の厚みと強度とを備えたシート束6の姿勢が整うので、このシート束6を挟んで次の工程のためにピックアップすることができる。搬送システム1は、第2の位置22と同じ位置、またはさらに回転した第3の位置23でシート束6をピックアップする多関節ロボット50を含む。第1の位置21において所定の枚数のシート材5を蓄積する時間で、シート束6の姿勢を整えて、シート束6をピックアップすることが可能であれば、同じ位置でそれらの処理を行ってもよく、第2の位置22および第3の位置23は同じであってもよい。第1の位置21においてシート材5を蓄積する時間では、シート束6の姿勢を整えてさらにピックアップするための時間を確保することが難しい場合は、姿勢を整える第2の位置22とシート束6をピックアップする第3の位置23とを変えてもよい。
【0023】
多関節ロボット50は、シート束6を掴む把持部(先端部)51と、把持部51を動かすアーム部52とを含む。把持部51は上下でシート束6を掴む複数の指部(爪部)53および54を含んでいてもよい。図3(c)に示すように、一方の指部53を、トレイ10の底面16に設けられたスリット17に挿入して上下の指部53で、厚みが数mm程度あるいはそれ以上となったシート束6を掴むことにより、図3(d)に示すように、トレイ10からシート束6をピックアップすることができる。すなわち、厚みが1mm以下のシート材5、特に、内部が加工されて空洞5aが形成された強度が低いシート材5は吸着などの特殊な方法でハンドリングするしかなく、多関節ロボット50などでそれらを挟み込んだりする汎用性の高い方法でハンドリングすることは難しい。しかしながら、数10枚を束ねたシート束6とすることによりハンドリングは容易となり、多関節ロボット50などで挟み込むなどの方法でハンドリングすることが可能となる。ピックアップされたシート束6は、図1に示したように、マガジンテーブル60の上の搬送用のマガジン65に収納され、シート材5を使用した製品の組み立てラインなどの次の工程で使用するために搬送される。
【0024】
図4に、搬送システム1の制御の概要を示している。搬送システム1の制御はコントローラ80により行われる。コントローラ80は、CPU81、メモリ85などのコンピュータ資源を含む。CPU81は、メモリ85に格納されたプログラム(プログラムプロダクト)85pをダウンロードすることにより搬送システム1を制御する機能が実装される。搬送システム1を制御する機能は、ストッカ20を制御する機能82と、多関節ロボットを制御する機能83とを含んでいてもよい。
【0025】
搬送システム1では、ステップ91において、駆動装置25によりストッカ20を回転して複数のトレイ10の中の1つのトレイ(第1のトレイ)10aを、シート材5を受け入れる第1の位置21に設定し、シート材5の蓄積を開始する。この操作(動作)により、第1の位置21に設定されてシート材5を受け入れていたトレイ10aは第2の位置22に移動し、第2の位置22においてシート束6の姿勢を整える作業が行われる。すなわち、ステップ92において第2の位置22においてストッカ10aが傾くことによりシート束6のX方向の姿勢が整えられ、ステップ93において縁揃え装置40が稼働することによりY方向の姿勢が整えられる。さらに、このストッカ20においては、第2の位置22と同じ位置が第3の位置23となり、ステップ94において、シート束6がピックアップされる。
【0026】
ステップ95において、第1の位置21に設定されたトレイ10aで受け入れたシート材5の枚数が所定の枚数に達すると、ステップ91に戻って、ストッカ20が回転し、次のトレイ10が第1の位置21に移動し、第1のトレイ10aとして次のシート材5の受け入れを開始する。
【0027】
このように、本例の搬送システム1は、複数のトレイ10を断続的に回転させてシート材5を受け入れるストッカ20を含む。ストッカ20においては、第1の軸26を回転することにより、薄膜で、さらに加工されたシート材5を受け入れるのに適した角度および位置となる第1の位置21にトレイ10を設定してシート束6を形成し、それと同時に第1の位置21に居た、第1のトレイ10aを第2の位置22に移動することにより、シート束6が入ったトレイ10aを傾けてシート束6を構成する複数のシート材5の姿勢(状態)を整え、シート束6の四方の辺(縁)を揃える。そして、ハンドリングが容易な程度の厚みと強度とを備え、さらに、姿勢が整えられたシート束6を第3の位置23でピックアップして、次の工程に搬送する。シート束6をピックアップする第3の位置23は、姿勢を整える第2の位置22と同じであってもよく、さらに第1の軸26を回転させた位置であってもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 搬送システム、 10 トレイ
20 ストッカ
図1
図2
図3
図4