(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055608
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】細胞入容器、細胞播種方法、および細胞播種装置
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20230411BHJP
C12M 1/32 20060101ALI20230411BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12M1/32
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065799
(22)【出願日】2022-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2021164656
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】川島 健太
(72)【発明者】
【氏名】郡嶋 政司
(72)【発明者】
【氏名】木島 匡彦
(72)【発明者】
【氏名】岸 優輔
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029AA09
4B029BB01
4B029CC01
4B029DF06
4B029DG10
4B029FA15
4B029GA03
4B029GB05
4B029GB10
4B029HA05
4B029HA09
4B063QA20
4B063QQ05
4B063QS39
4B063QS40
4B063QX10
(57)【要約】
【課題】容器に充填された培地液に対して、均一に細胞が存在する細胞入容器を提供する。また、均一に細胞が存在する細胞入容器を実現するための播種方法を提供する。
【解決手段】細胞入容器1は、培地液11が充填された容器10に細胞懸濁液12を入れた細胞入容器1であって、培地液11には細胞懸濁液12が少なくとも2点以上に存在していることを特徴とする。細胞播種方法は、培地液11が充填された容器10に対して少なくとも2点以上で細胞懸濁液12を滴下することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地液が充填された任意の容器に細胞懸濁液を入れた細胞入容器であって、
前記培地液には細胞懸濁液が少なくとも2点以上に存在していることを特徴とする細胞入容器。
【請求項2】
前記細胞懸濁液は、平面格子状または列状に存在していることを特徴とする請求項1記載の細胞入容器。
【請求項3】
培地液が充填された任意の容器に細胞懸濁液を吐出する細胞懸濁液吐出手段を有し、培地液が充填された容器に対して少なくとも2点以上で細胞懸濁液を滴下することを特徴とする細胞播種方法。
【請求項4】
前記細胞懸濁液吐出手段を前記容器上方で走査可能な吐出移動手段を有し、
少なくとも2点以上で前記細胞懸濁液を吐出することを特徴とする請求項3記載の細胞播種方法。
【請求項5】
前記容器を移動させる容器移動手段を有し、
少なくとも2点以上で前記細胞懸濁液を吐出することを特徴とする請求項3記載の細胞播種方法。
【請求項6】
前記細胞懸濁液吐出手段は、前記細胞懸濁液の吐出量を調整可能であることを特徴とする請求項3~5のいずれか一項に記載の細胞播種方法。
【請求項7】
前記細胞懸濁液吐出手段は、前記細胞懸濁液の吐出速度を調整可能であることを特徴とする請求項3~5のいずれか一項に記載の細胞播種方法。
【請求項8】
前記細胞懸濁液吐出手段は、前記細胞懸濁液を吐出する吐出部を複数有することを特徴とする請求項3~5のいずれか一項に記載の細胞播種方法。
【請求項9】
培地液が充填された容器に対して平面格子状または列状に細胞懸濁液を吐出する際に、平面格子または列の、吐出間隔およびパターン種を変更可能であること特徴とする請求項3~5のいずれか一項に記載の細胞播種方法。
【請求項10】
培地液が充填された任意の容器に細胞懸濁液を吐出する細胞懸濁液吐出機構を有し、培地液が充填された容器に対して少なくとも2点以上で細胞懸濁液を滴下することを特徴とする細胞播種装置。
【請求項11】
前記細胞懸濁液吐出機構を前記容器上方で走査可能な吐出移動機構を有し、
少なくとも2点以上で前記細胞懸濁液を吐出することを特徴とする請求項10記載の細胞播種装置。
【請求項12】
前記容器を移動させる容器移動機構を有し、
少なくとも2点以上で前記細胞懸濁液を吐出することを特徴とする請求項10記載の細胞播種装置。
【請求項13】
培地液が充填された容器に対して平面格子状または列状に細胞懸濁液を吐出する際に、平面格子または列の、吐出間隔およびパターン種を変更可能であること特徴とする請求項10~12のいずれか一項に記載の細胞播種装置。
【請求項14】
前記細胞懸濁液吐出機構は、細胞懸濁液の吐出量を調整可能であることを特徴とする請求項10~12のいずれか一項に記載の細胞播種装置。
【請求項15】
前記細胞懸濁液吐出機構は、細胞懸濁液の吐出速度を調整可能であることを特徴とする請求項10~12のいずれか一項に記載の細胞播種装置。
【請求項16】
前記細胞懸濁液吐出機構は、前記細胞懸濁液を吐出する吐出部を複数有することを特徴とする請求項10~12のいずれか一項に記載の細胞播種装置。
【請求項17】
培地液を充填した任意の容器に細胞懸濁液を播種した細胞入容器であって、
前記容器には細胞懸濁液が線状に播種されていることを特徴とする細胞入容器。
【請求項18】
前記細胞懸濁液は、1つの線または複数の線から構成されていることを特徴とする請求項17記載の細胞入容器。
【請求項19】
培地液が充填された任意の容器に対して細胞懸濁液を線状に滴下し、1つの線または複数の線から構成された前記細胞懸濁液を形成することを特徴とする細胞播種方法。
【請求項20】
培地液が充填された任意の容器に細胞懸濁液を吐出する細胞懸濁液吐出手段と、前記細胞懸濁液吐出手段を前記容器上方で走査可能な吐出移動手段と、を有し、
前記細胞懸濁液を線状に吐出して、1つの線または複数の線から構成された前記細胞懸濁液を形成することを特徴とする請求項19記載の細胞播種方法。
【請求項21】
培地液が充填された任意の容器に細胞懸濁液を吐出する細胞懸濁液吐出手段と、前記容器を移動させる容器移動手段と、を有し、
前記細胞懸濁液を線状に吐出して、1つの線または複数の線から構成された前記細胞懸濁液を形成することを特徴とする請求項19記載の細胞播種方法。
【請求項22】
前記細胞懸濁液吐出手段は、前記細胞懸濁液の単位時間あたり吐出量を調整可能であることを特徴とする請求項20~21のいずれか一項に記載の細胞播種方法。
【請求項23】
培地液が充填された容器に対して吐出される前記細胞懸濁液の線パターンを自在に変更可能であることを特徴とする請求項19~21のいずれか一項に記載の細胞播種方法。
【請求項24】
培地液が充填された任意の容器に対して細胞懸濁液を線状に滴下し、1つの線または複数の線から構成された前記細胞懸濁液を形成することを特徴とする細胞播種装置。
【請求項25】
培地液が充填された任意の容器に細胞懸濁液を吐出する細胞懸濁液吐出機構と、前記細胞懸濁液吐出機構を前記容器上方で走査可能な吐出移動機構と、を有し、
前記細胞懸濁液を線状に吐出して、1つの線または複数の線から構成された前記細胞懸濁液を形成することを特徴とする請求項24記載の細胞播種装置。
【請求項26】
培地液が充填された任意の容器に細胞懸濁液を吐出する細胞懸濁液吐出機構と、前記容器を移動させる容器移動機構と、を有し、前記細胞懸濁液を線状に吐出して、1つの線または複数の線から構成された前記細胞懸濁液を形成することを特徴とする請求項24記載の細胞播種装置。
【請求項27】
前記細胞懸濁液吐出機構は、前記細胞懸濁液の単位時間あたり吐出量を調整可能であることを特徴とする請求項25~26のいずれか一項に記載の細胞播種装置。
【請求項28】
培地液が充填された容器に対して吐出される前記細胞懸濁液の線パターンを自在に変更可能であることを特徴とする請求項24~26のいずれか一項に記載の細胞播種装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞入容器、細胞を培養するために用いる細胞播種方法、および細胞播種装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生化学分野の発展により、多種多様な細胞の培養が可能となっている。創薬、再生医療、細胞治療、細胞工学等の分野において、細胞や組織を人工的に培養することが求められている。
【0003】
細胞を培養する際、一般的には培地液が充填された培養容器(以下、単に「容器」とも呼ぶ。)に細胞を播種し、インキュベーターなどの温度、二酸化炭素濃度が管理された環境下で細胞を培養する。
【0004】
細胞培養は、細胞が密集した状態(コンフルエンシー100%以上)では、接触阻害が生じて細胞の成長速度を低下させる。このため、一般的には、培養容器の底面積に対して細胞の密集度合(コンフルエンシー)が70~80%の状態で培養することが望まれている。
しかし、細胞を播種した際に培養容器内における細胞の濃度分布の差が大きいと、細胞はその分布に従って細胞分裂を繰り返して増殖する。このため、細胞が疎に培養される部分と、局所的に細胞が密に培養されてしまう部分とが存在し、コンフルエンシーが100%以上になることがある。
【0005】
そのため、細胞の濃度分布をより均一にし、効率的に細胞を培養するために、容器内に細胞懸濁液をピペットなどで播種した後に、作業者が容器をゆすって細胞を分散させている。
しかし、細胞の播種位置、播種量、および播種速度、さらにはゆすりの手技や条件も作業者によって異なる。そのため、理想的な細胞の分散状態を再現性良く確保することは困難である。
【0006】
また、実験プロトコルで規定した条件下で細胞を培養しても、容器内の細胞分散状態を再現しにくく、下記に示すような対策が講じられている。
【0007】
特許文献1には、多数の培養容器をラックにセットした状態で個々の培養容器を揺動させることができる装置が開示されている。
【0008】
特許文献2には、軟骨細胞を均等に播種できる軟骨細胞の播種方法及び該軟骨細胞の播種方法に用いる軟骨細胞播種用治具セットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2021-7350号公報
【特許文献2】特開2021-90367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の技術では、容器を揺動運動させることで細胞の分散状態を制御しているが、細胞懸濁液や培地液の濃度や粘度などによっては、細胞を容器内に均一に分散できない可能性がある。
【0011】
特許文献2の技術では、均一な播種を目的としているが、軟骨細胞を生体吸収性不織布に播種するという方法であり、培地液に播種可能な方法ではない。
【0012】
本発明は、上記問題点を鑑み、容器に充填された培地液に対して、均一に細胞が存在する細胞入容器を提供すること、並びに、均一に細胞が存在する細胞入容器を実現するための播種方法および播種装置を提供することを目的とする。
【0013】
さらには、容器内で均一に細胞を存在させることにより、安定してより多く細胞を培養できる細胞入容器を提供すること、並びに、均一に細胞が存在する細胞入容器を実現するための播種方法および播種装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の細胞入容器は、培地液が充填された任意の容器に細胞懸濁液を入れた細胞入容器であって、前記培地液には細胞懸濁液が少なくとも2点以上に存在していることを特徴とする。
【0015】
前記細胞入容器において、前記細胞懸濁液は、平面格子状または列状に存在していてもよい。
【0016】
本発明の細胞播種方法は、培地液が充填された任意の容器に細胞懸濁液を吐出する細胞懸濁液吐出手段を有し、培培地液が充填された容器に対して少なくとも2点以上で細胞懸濁液を滴下することを特徴とする。
【0017】
前記細胞播種方法は、前記細胞懸濁液吐出手段を前記容器上方で走査可能な吐出移動手段を有し、少なくとも2点以上で前記細胞懸濁液を吐出してもよい。
【0018】
前記細胞播種方法は、前記容器を移動させる容器移動手段を有し、少なくとも2点以上で前記細胞懸濁液を吐出してもよい。
【0019】
前記細胞播種方法において、前記細胞懸濁液吐出手段は、前記細胞懸濁液の吐出量を調整可能であってよい。
【0020】
前記細胞播種方法において、前記細胞懸濁液吐出手段は、前記細胞懸濁液の吐出速度を調整可能であってよい。
【0021】
前記細胞播種方法において、前記細胞懸濁液吐出手段は、前記細胞懸濁液を吐出する吐出部を複数有してよい。
【0022】
前記細胞播種方法においては、培地液が充填された容器に対して平面格子状または列状に細胞懸濁液を吐出する際に、平面格子または列の、吐出間隔およびパターン種を変更可能であってよい。
【0023】
本発明の細胞播種装置は、培地液が充填された任意の容器に細胞懸濁液を吐出する細胞懸濁液吐出機構を有し、培地液が充填された容器に対して少なくとも2点以上で細胞懸濁液を滴下することを特徴とする。
【0024】
前記細胞播種装置は、前記細胞懸濁液吐出機構を前記容器上方で走査可能な吐出移動機構を有し、少なくとも2点以上で前記細胞懸濁液を吐出してもよい。
【0025】
前記細胞播種装置は、前記容器を移動させる容器移動機構を有し、少なくとも2点以上で前記細胞懸濁液を吐出してもよい。
【0026】
前記細胞播種装置においては、培地液が充填された容器に対して平面格子状または列状に細胞懸濁液を吐出する際に、平面格子または列の、吐出間隔およびパターン種を変更可能であってよい。
【0027】
前記細胞播種装置において、前記細胞懸濁液吐出機構は、細胞懸濁液の吐出量を調整可能であってよい。
【0028】
前記細胞播種装置において、前記細胞懸濁液吐出機構は、細胞懸濁液の吐出速度を調整可能であってよい。
【0029】
前記細胞播種装置において、前記細胞懸濁液吐出機構は、前記細胞懸濁液を吐出する吐出部を複数有してよい。
【0030】
本発明の細胞入容器は、培地液を充填した任意の容器に細胞懸濁液を播種した細胞入容器であって、前記容器には細胞懸濁液が線状に播種されていることを特徴とする。
【0031】
前記細胞入容器において、前記細胞懸濁液は、1つの線または複数の線から構成されてよい。
【0032】
本発明の細胞播種方法は、培地液が充填された任意の容器に対して細胞懸濁液を線状に滴下し、1つの線または複数の線から構成された前記細胞懸濁液を形成することを特徴とする。
【0033】
前記細胞播種方法は、培地液が充填された任意の容器に細胞懸濁液を吐出する細胞懸濁液吐出手段と、前記細胞懸濁液吐出手段を前記容器上方で走査可能な吐出移動手段と、を有し、前記細胞懸濁液を線状に吐出して、1つの線または複数の線から構成された前記細胞懸濁液を形成してよい。
【0034】
前記細胞播種方法は、培地液が充填された任意の容器に細胞懸濁液を吐出する細胞懸濁液吐出手段と、前記容器を移動させる容器移動手段と、を有し、前記細胞懸濁液を線状に吐出して、1つの線または複数の線から構成された前記細胞懸濁液を形成してよい。
【0035】
前記細胞播種方法において、前記細胞懸濁液吐出手段は、前記細胞懸濁液の単位時間あたり吐出量を調整可能であってよい。
【0036】
前記細胞播種方法においては、培地液が充填された容器に対して吐出される前記細胞懸濁液の線パターンを自在に変更可能であってよい。
【0037】
本発明の細胞播種装置は、培地液が充填された任意の容器に対して細胞懸濁液を線状に滴下し、1つの線または複数の線から構成された前記細胞懸濁液を形成することを特徴とする。
【0038】
前記細胞播種装置は、培地液が充填された任意の容器に細胞懸濁液を吐出する細胞懸濁液吐出機構と、前記細胞懸濁液吐出機構を前記容器上方で走査可能な吐出移動機構と、を有し、前記細胞懸濁液を線状に吐出して、1つの線または複数の線から構成された前記細胞懸濁液を形成してよい。
【0039】
前記細胞播種装置は、培地液が充填された任意の容器に細胞懸濁液を吐出する細胞懸濁液吐出機構と、前記容器を移動させる容器移動機構と、を有し、前記細胞懸濁液を線状に吐出して、1つの線または複数の線から構成された前記細胞懸濁液を形成してよい。
【0040】
前記細胞播種装置において、前記細胞懸濁液吐出機構は、前記細胞懸濁液の単位時間あたり吐出量を調整可能であってよい。
【0041】
前記細胞播種装置においては、培地液が充填された容器に対して吐出される前記細胞懸濁液の線パターンを自在に変更可能であってよい。
【発明の効果】
【0042】
本発明の細胞播種方法および細胞播種装置によれば、培地液が充填された容器に対して細胞を均一に播種可能である。
【0043】
さらに、細胞播種方法または細胞播種装置により実現される細胞入容器を用いれば、均一に細胞を存在させることにより、安定してより多くの細胞を培養できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る細胞入容器の一例を示す模式図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る細胞入容器の他の例を示す模式図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る細胞播種装置の第一例を示す模式図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係る細胞播種装置の第二例を示す模式図である。
【
図5】本発明の第一実施形態に係る細胞播種装置の第三例を示す模式図である。
【
図6】本発明の第一実施形態に係る細胞播種装置の第四例を示す模式図である。
【
図7】比較例1における容器内の細胞分布を示した図である。
【
図8】実施例1における容器内の細胞分布を示した図である。
【
図9】実施例2における容器内の細胞分布を示した図である。
【
図10】実施例3における容器内の細胞分布を示した図である。
【
図11】実施例4における容器内の細胞分布を示した図である。
【
図12】実施例1~4で細胞を5日間培養した際の生細胞数を示したグラフである。
【
図13】本発明の第二実施形態に係る細胞入容器の第一例を示す模式図である。
【
図14】本発明の第二実施形態に係る細胞入容器の第二例を示す模式図である。
【
図15】本発明の第二実施形態に係る細胞播種装置の第一例を示す模式図である。
【
図16】本発明の第二実施形態に係る細胞播種装置の第二例を示す模式図である。
【
図17】本発明の第二実施形態に係る細胞播種装置の第三例を示す模式図である。
【
図18】実施例5における容器内の細胞分布を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明による細胞入容器、細胞播種方法および細胞播種装置の実施形態について、図を用いて説明する。以下に示す実施形態は、発明の技術的思考を具体化するための、細胞入容器、細胞播種方法、細胞播種装置の一例であって、本発明を特定するものではない。また、図示する実施形態は発明の実施形態の一事例にすぎず、寸法、形状、構造、配置などを限定するものではない。
【0046】
(第一実施形態)
図1~12を参照して、本発明による細胞入容器、細胞播種方法および細胞播種装置の第一実施形態について説明する。
【0047】
(細胞入容器)
図1(a)は、細胞入容器1の平面図を示している。
図1(b)は、
図1(a)のA-A線断面図である。
図1等においては、Z軸方向が上下方向を示しており、Z軸正方向が上方向を示している。また、X軸方向及びY軸方向は、Z軸方向に直交する水平方向である。X軸方向は横方向であり、Y軸方向はX軸方向に直交する縦方向である。
図1に示すように、細胞入容器1は、培地液11が充填された容器10に、細胞懸濁液12を入れたものである。容器10に充填された培地液11には、細胞懸濁液12が多点(少なくとも2つ以上)に存在している。培地液11において隣り合う細胞懸濁液12同士は、例えば
図1に例示するように互いに間隔をあけて存在していてもよいし、例えば互いに接触して存在していてもよい。
【0048】
図1(a)において、細胞懸濁液12は、培地液11が充填された容器10に対して、N
x×N
yの播種点数で縦横に配列されている。N
xはX軸方向における播種点数を示し、N
yはY軸方向における播種点数を示している。また、細胞懸濁液12は、P
x×P
yの播種ピッチで配列されている。P
xはX軸方向における細胞懸濁液12同士の播種ピッチを示し、P
yはY軸方向における細胞懸濁液12同士の播種ピッチを示している。
図1に示す細胞入容器1では、容器10に充填された培地液11に細胞懸濁液12が多点(少なくとも2つ以上)に存在していることで、均一に細胞が存在している。
【0049】
容器10における細胞懸濁液12の播種点数Nx×Nyおよび播種ピッチPx×Pyには、細胞懸濁液12の細胞濃度、細胞種、量に応じた最適値が存在することが考えられる。このため、細胞懸濁液12の播種点数Nx×Nyおよび播種ピッチPx×Pyは、あらかじめ実験にて最適な条件を求めておくと尚よい。
【0050】
細胞懸濁液12は、
図1(a)に例示するように、上方から見た容器10の中心点に対して対称に存在することが望ましい。この場合、容器10の培地液11内において細胞懸濁液12がより均一な条件になる。
【0051】
図2(a)~(e)は、培地液11が充填された容器10に対して、平面格子状に細胞懸濁液12が存在している例を示している。
図2(a)、
図2(b)、
図2(c)、
図2(d)および
図2(e)は、平面格子がそれぞれ斜方格子、六方格子、正方格子、長方格子および面心長方格子であるものを示している。細胞懸濁液12の格子パターンは、
図2(a)~(e)に例示したいずれの平面格子でもよいし、
図2(a)~(e)以外の格子パターンであってもよい。なお、
図1(a)に例示した格子パターンは、
図2(c)と同様の正方格子である。
図2(f)は、培地液11が充填された容器10に対して、列状(例えば一列)に細胞懸濁液12が存在している例を示している。細胞懸濁液12を列状に存在させるパターン(列パターン)は、
図2(f)に例示したように容器10が細長い形状をしている場合などに実施可能である。
【0052】
(細胞播種装置)
次に、上記した細胞入容器1を実現するための細胞播種装置について説明する。
図3は、第一例の細胞播種装置100Aを示している。この細胞播種装置100Aは、培地液11が充填された容器10に対して、
図1,2に例示したように多点(少なくとも2点以上)で細胞懸濁液12を滴下するためのものである。細胞播種装置100Aは、細胞懸濁液吐出機構102と、吐出移動機構101aと、を有する。
【0053】
細胞懸濁液吐出機構102は、培地液11が充填された容器10に細胞懸濁液12を吐出する。具体的に、細胞懸濁液吐出機構102は、細胞懸濁液12を吐出する吐出部102aを有する。
図3に例示する細胞懸濁液吐出機構102は、吐出部102aを1つ有する。吐出部102aを含む細胞懸濁液吐出機構102は、例えばピペット、シリンジポンプ、ディスペンサーなどのように定量吐出可能であってよい。また、細胞懸濁液吐出機構102は、細胞懸濁液12の吐出量を調整可能であってよい。また、細胞懸濁液吐出機構102は、例えばピペット、シリンジポンプ、ディスペンサーのように吐出速度を制御可能であってよい。
【0054】
細胞懸濁液吐出機構102は、吐出移動機構101aに取り付けられている。吐出移動機構101aは、細胞懸濁液吐出機構102をX軸方向(横方向)、Y軸方向(縦方向)およびZ軸方向(高さ方向)に移動させるように構成されている。吐出移動機構101aは、X軸移動部101a1、Y軸移動部101a2およびZ軸移動部101a3を有する。X軸移動部101a1、Y軸移動部101a2、Z軸移動部101a3は、それぞれ細胞懸濁液吐出機構102をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動させる。X軸移動部101a1およびY軸移動部101a2は、細胞懸濁液吐出機構102を容器10の上方でX軸方向およびY軸方向に走査可能とし、
図3(a)に示すように細胞懸濁液吐出機構102の平面格子状の移動を実現する。なお、図示しないが、X軸移動部101a1やY軸移動部101a2は、細胞懸濁液吐出機構102の列状の移動も実現する。Z軸移動部101a3は、
図3(b)に示すように細胞懸濁液吐出機構102の培地液11へのアクセスを実現する。
図3においては、細胞懸濁液吐出機構102がX軸移動部101a1に取り付けられ、X軸移動部101a1がY軸移動部101a2に取り付けられ、Y軸移動部101a2がZ軸移動部101a3に取り付けられているが、これに限ることはない。
【0055】
以上のように構成される細胞播種装置100Aでは、細胞懸濁液吐出機構102がX軸方向やY軸方向に予め設定された距離(播種ピッチ)だけ移動するごとに、細胞懸濁液12を容器10(培地液11)に向けて吐出(滴下)することで、細胞懸濁液12を平面格子状または列状に存在させることができる。すなわち、
図1,2に例示したような細胞入容器1が得られる。
【0056】
なお、細胞播種装置100Aでは、容器10に対して平面格子状または列状に細胞懸濁液12を吐出する際に、平面格子または列の、吐出間隔(播種ピッチ)およびパターン種を変更可能である。平面格子のパターン種(格子パターン)には、例えば斜方格子、六方格子、正方格子、長方格子、面心長方格子などがある。これにより、同一の細胞播種装置100Aによって、様々な播種ピッチ、パターン種を有する細胞入容器1を得ることができる。
【0057】
図3に示すような細胞播種装置100Aを使用せずとも、作業者がピペットなどを用いて細胞懸濁液12を培地液11で満たされた容器10に対して播種することも可能である。しかし、作業者による細胞懸濁液12の播種では、播種の位置精度や再現性が低いため、均等な間隔で細胞懸濁液12を吐出するには難度を有する。また、作業者の手や腕などが容器10の上を何度となく行き来するため、作業者の手や腕が汚染されていた場合に、コンタミネーションのリスクが発生する。
これに対し、
図3に示すような細胞播種装置100Aを用いる場合には、吐出移動機構101aは決められた範囲内を高い再現性で移動できるため、均等な間隔で細胞懸濁液12を吐出することができる。すなわち、細胞播種装置100Aでは、均一に細胞が存在する細胞入容器を実現することができる。均一に細胞が存在する細胞入容器を実現できることで、安定してより多くの細胞を培養することができる。また、前述したコンタミネーションのリスクを低減することも可能である。
【0058】
播種する細胞懸濁液12の細胞濃度、細胞種、量(吐出量)、または吐出する細胞懸濁液12の吐出速度により、播種点における細胞の拡散度合は異なる。そのため、播種点数Nx×Nyおよび播種ピッチPx×Pyは、細胞懸濁液12の細胞濃度、細胞種、量によって最適値が存在すると考えられ、予備実験にて最適な条件を求めておくと尚よい。
【0059】
図4は、第二例の細胞播種装置100Bを示している。細胞播種装置100Bは、培地液11が充填された容器10に対して多点(少なくとも2点以上)で細胞懸濁液12を滴下するためのものである。細胞播種装置100Bは、細胞懸濁液吐出機構102と、容器移動機構101bと、を有する。細胞懸濁液吐出機構102は、第一例の細胞播種装置100A(
図3参照)と同様である。
容器移動機構101bは、容器10をX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動させる。具体的に、容器移動機構101bは、容器10を載置するように構成されている。容器移動機構101bは、細胞懸濁液吐出機構102の下方に配置され、細胞懸濁液吐出機構102に対してX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動する。これにより、容器10が細胞懸濁液吐出機構102の下方でX軸方向およびY軸方向に移動可能となる。その結果として、
図4(a)に示すように容器10に対する細胞懸濁液吐出機構102の平面格子状の移動が実現する。なお、図示しないが、細胞懸濁液吐出機構102の列状の移動も実現する。また、容器移動機構101bのZ軸方向への移動により、
図3(b)に示すように細胞懸濁液吐出機構102の培地液11へのアクセスが実現する。
第二例の細胞播種装置100Bは、前述した第一例の細胞播種装置100Aと同様に動作することができ、第一例の細胞播種装置100Aと同様の効果を奏する。
【0060】
細胞播種装置は、例えば吐出移動機構101aおよび容器移動機構101bの両方を有していてもよい。
ただし、細胞懸濁液12の細胞濃度、細胞種、量によっては、培地液11および細胞懸濁液12が容器10内で移動することで、均一な細胞懸濁液12の分散には不向きとなることも想定される。この場合には、容器移動機構101bを有さない細胞播種装置、あるいは、容器移動機構101bを用いない細胞播種方法を選択することが好ましい。
【0061】
図5は、第三例の細胞播種装置100Cを示している。細胞播種装置100Cは、培地液11が充填された容器10に対して多点(少なくとも2点以上)で細胞懸濁液12を滴下するためのものである。この細胞播種装置100Cは、細胞懸濁液吐出機構102が吐出部102aを複数(
図5(b)では4つ)有する点を除いて、第一例の細胞播種装置100Cと同じである。この細胞播種装置100Cでは、吐出移動機構101aの1回の移動で複数の細胞懸濁液12を吐出することができる。これにより、細胞懸濁液吐出機構102の吐出部102aが1つである場合と比較して、より早く容器10に対する複数の細胞懸濁液12の滴下処理を実現することができる。
細胞懸濁液吐出機構102の吐出部102aを複数とする構成は、第二例の細胞播種装置100Bにも適用可能である。
【0062】
図6は、第四例の細胞播種装置100Dを示している。細胞播種装置100Dは、培地液11が充填された容器10に対して多点(少なくとも2点以上)で細胞懸濁液12を滴下するためのものである。この細胞播種装置100Dでは、細胞懸濁液吐出機構102をX軸方向(横方向)、Y軸方向(縦方向)およびZ軸方向(高さ方向)に移動させる吐出移動機構101aが、ロボットで構成されている。
【0063】
第四例の細胞播種装置100Dは、前述した第一例の細胞播種装置100Aと同様に動作することが可能であり、第一例の細胞播種装置100Aと同様の効果を奏し得る。
また、第四例の細胞播種装置100Dでは、細胞懸濁液吐出機構102を複雑に動かすことができる。したがって、第四例の細胞播種装置100Dは、容器10に対する細胞懸濁液12の播種に際して細胞懸濁液吐出機構102に複雑な動作が要求される場合に好適である。
【0064】
(細胞播種方法)
次に、前述した細胞入容器1(
図1,2参照)を実現するための細胞播種方法について説明する。
細胞播種方法では、培地液11が充填された容器10に対して、
図1,2に例示したように多点(少なくとも2点以上)で細胞懸濁液12を滴下する。この細胞播種方法は、例えば培地液11が充填された容器10に細胞懸濁液12を吐出する細胞懸濁液吐出手段と、細胞懸濁液吐出手段を容器10上方で走査可能な吐出移動手段を有し、多点(少なくとも2点以上)で細胞懸濁液12を吐出してよい。細胞懸濁液吐出手段は、細胞懸濁液12の吐出量や吐出速度を調整可能であってよい。細胞懸濁液吐出手段は、1つ又は複数の吐出部を有してよい。また、細胞播種方法では、容器10に対して平面格子状または列状に細胞懸濁液12を吐出する際に、平面格子または列の、吐出間隔(播種ピッチ)およびパターン種を変更可能であってよい。
【0065】
なお、細胞播種方法は、吐出移動手段に代えて、例えば容器10を細胞懸濁液吐出手段に対して移動させる容器移動手段を有してもよい。また、細胞播種方法は、上記の吐出移動手段および容器移動手段の両方を有してよい。
上記した細胞播種方法は、例えば
図3~6に示したような細胞播種装置100A~100Dなどを用いることで実現することができる。
【0066】
以下、第一実施形態の細胞入容器、細胞播種方法について、1つの比較例および4つの実施例(実施例1~4)を用いてさらに説明する。本発明は、4つの実施例の具体的内容により、何ら限定されない。
【0067】
(比較例1)
先ず、比較例1について説明する。
比較例1では、培養容器(容器10)に対し、培地液を77.8ml充填した後、作業者がピペットを用いて細胞懸濁液を滴下させた。
図7に例示するように、細胞懸濁液12の滴下点は容器10の中央近傍の1点である。
培地液の組成は、基礎培地DMEM、ウシ胎児血清FBS、ペニシリンストレプトマイシン溶液をそれぞれ体積比で89%、10%および1%である。
細胞懸濁液は、ヒト皮膚繊維芽細胞NHDFを培地液で懸濁したものを使用した。
培養容器に滴下する細胞総数は、3.0×10
6個になるように、細胞懸濁液の濃度を1.4×10
6 個/mlに調整し、2200ul滴下した。
また、培地総量は80mlになるようにした。
【0068】
細胞懸濁液の滴下後に、作業者が容器をゆすって細胞を培地に拡散させた。その後、15分間静置させた後にインキュベーターへ投入し、5日間培養させた。
【0069】
図7に、5日間培養した容器10内の細胞の分布を示す。
図7に示す画像1aは細胞懸濁液12の滴下点直下の顕微鏡画像である。画像1bは画像1aよりも細胞が疎と想定される部分の顕微鏡画像である。画像1cは画像1bよりも細胞が疎な状態と想定される部分の顕微鏡画像である。滴下点直下の画像1aでは、コンフルエンシー100%を超えて細胞が密集していた。画像1bでは、画像1aほどではないが密に細胞が培養されていた。また、画像1cでは、細胞がほぼ存在していなかった。つまり、この方法では、容器全体に細胞を拡散できず、容器面内で細胞の均一な培養ができないことが分かった。
【0070】
次に、実施例1~4について説明する。実施例1~4では、同一形状および大きさの培養容器(容器10)を用い、表1に示すように互いに異なる条件で細胞懸濁液を滴下させている。以下、実施例1~4について順番に説明する。
【0071】
【0072】
(実施例1)
実施例1では、
図8に示すように、上方から見て正方形状の培養容器(容器10)に対し、培地液を79.1ml充填した後、表1の実施例1に示す条件(播種点数、播種ピッチの条件)にて列状に細胞懸濁液12を滴下させた。列状に滴下された細胞懸濁液12は、上方から見た容器10の中心点に対して対称に存在する。そして、細胞懸濁液12の播種ピッチ(横方向の播種ピッチ)は小さい。このため、横方向に列状に滴下された細胞懸濁液12は、上方から見た容器10の中央部分に密集している。
培地液の組成は、基礎培地DMEM、ウシ胎児血清FBS、ペニシリンストレプトマイシン溶液をそれぞれ体積比で89%、10%および1%である。
また細胞懸濁液は、ヒト皮膚繊維芽細胞NHDFを培地液で懸濁したものを使用した。
培養容器に滴下する細胞総数は、3.0×10
6個になるように細胞懸濁液濃度を調整してある。また、培地総量も80mlになるようにした。
【0073】
細胞懸濁液の播種後、15分間静置させた後にインキュベーターへ投入し、5日間培養させた。
【0074】
図8に5日間培養した容器10内の細胞の分布を示す。
図8に示す画像4aは細胞懸濁液12の滴下点直下の顕微鏡画像である。画像4bは横方向に隣り合う滴下点(細胞懸濁液12)の中点部分の顕微鏡画像である。画像4cは細胞が疎な状態と想定される部分の顕微鏡画像である。
図8に示すように、画像4aおよび画像4bでは、コンフルエンシー100%を超えて細胞が密に培養されている。一方、画像4cには細胞がほぼ存在していなかった。
【0075】
図12及び表1に示すように、容器から回収された生細胞数は、試行回数3回の平均値で10.9×10
6個であった。
【0076】
(実施例2)
実施例2では、
図9に示すように、培養容器(容器10)に対し、培地液を79.1ml充填した後、表1の実施例2に示す条件(播種点数、播種ピッチの条件)にて実施例1と同様に列状に細胞懸濁液12を滴下させた。
実施例2の条件は、実施例1の条件と比較して、播種ピッチの条件のみが異なっている。実施例2の播種ピッチは、実施例1の播種ピッチの3倍程度となっている。このため、列状に滴下された細胞懸濁液12は、実施例1と比較して容器10の横方向に分散している。実施例2の他の条件は、実施例1と全て同じである。例えば実施例2の培地液および細胞懸濁液は、実施例1と同組成である。また、実施例2の培地総量も実施例1と同量の80mlになる。さらに、実施例2において培養容器に滴下する細胞総数は、3.0×10
6である。
実施例(実施例4)に比べ、播種点数を32分の1に間引き、列状に播種した条件である。
【0077】
細胞懸濁液の播種後、15分間静置させた後にインキュベーターへ投入し、5日間培養させた。
【0078】
図9に5日間培養した容器10内の細胞の分布を示す。
図9に示す画像3aは細胞懸濁液の滴下点直下の顕微鏡画像である。画像3bは横方向に隣り合う滴下点(細胞懸濁液12)の中点部分の顕微鏡画像である。画像3cは細胞が最も疎な状態と想定される点近傍の顕微鏡画像である。
図9に示すように、画像3aおよび画像3bでは、密に培養されていた。また、画像3cでは細胞は存在していなかった。
【0079】
図12及び表1に示すように、容器から回収された生細胞数は、試行回数3回の平均値で13.9×10
6個であった。
【0080】
実施例2では、実施例1と同様に、細胞が容器面内で不均一に培養されている。ただし、実施例2では、実施例1と比較して、培養された細胞数が増加している。この結果は、播種ピッチをある程度大きくすることで、細胞の過度な密集を抑制できたためであると考えられる。
【0081】
(実施例3)
実施例3では、
図10に示すように、培養容器(容器10)に対し、培地液を76.2ml充填した後、表1の実施例3に示す条件(播種点数、播種ピッチの条件)にて長方格子状に細胞懸濁液12を滴下させた。細胞懸濁液12が長方格子状に配列されていることで、横方向の播種ピッチP
xが縦方向の播種ピッチP
yよりも小さくなっている。
実施例3の条件は、実施例1,2に対し、平面格子状に播種した条件となっている。また、実施例3の播種点数は、実施例1,2の4倍となっている。実施例3の他の条件は、実施例2と全て同じである。例えば実施例3の横方向の播種ピッチP
xは、実施例2と同じである。また、培地液および細胞懸濁液は、実施例2(実施例1)と同組成である。また、実施例3の培地総量も実施例2(実施例1)と同量の80mlになる。さらに、実施例3において培養容器に滴下する細胞総数は、3.0×10
6個である。
【0082】
細胞懸濁液の播種後、15分間静置させた後にインキュベーターへ投入し、5日間培養させた。
【0083】
図10に5日間培養した容器10内の細胞の分布を示す。
図10に示す画像2aは細胞懸濁液を滴下点直下の顕微鏡画像である。画像2bは横方向に隣り合う滴下点(細胞懸濁液12)の中点部分の顕微鏡画像である。画像2cは細胞が最も疎な状態と想定される点近傍の顕微鏡画像である。
図10に示すように、画像2aでは、密に細胞が培養されている。しかし、画像2bや画像2cでは細胞が疎であり画像2aに比べて明らかに細胞数が少ない。
【0084】
図12及び表1に示すように、容器から回収された生細胞数は、試行回数3回の平均値で20.5×10
6個であった。
【0085】
実施例3では、容器面内で不均一に細胞が培養されている。ただし、実施例3では、実施例2と比較して、培養された細胞数がさらに増加している。この結果は、正方形状など縦横に長い容器では、細胞懸濁液12を列状に配列するよりも平面格子状に配列する方が細胞を効率よく培養できることを意味していると考えられる。
【0086】
(実施例4)
実施例4では、
図11に示すように、培養容器(容器10)に対し、培地液を49.8ml充填した後、表1の実施例4に示す条件(播種点数、播種ピッチの条件)にて正方格子状に細胞懸濁液を滴下させた。細胞懸濁液12が正方格子状に配列されていることで、横方向の播種ピッチP
xと縦方向の播種ピッチP
yとが等しい。
実施例4の播種点数は、実施例3の8倍となっている。また、実施例4における横方向の播種ピッチP
xおよび縦方向の播種ピッチP
yは、いずれも実施例3よりも小さい、実施例4の他の条件は、実施例1と全て同じである。例えば培地液および細胞懸濁液は、実施例1と同組成である。また、実施例4の培地総量も実施例1と同量の80mlになる。さらに、実施例4において培養容器に滴下する細胞総数は、3.0×10
6個である。
【0087】
細胞懸濁液の播種後、15分間静置させた後にインキュベーターへ投入し、5日間培養させた。
【0088】
図11に5日間培養した容器内の細胞の分布を示す。
図11に示す画像0aは細胞懸濁液を滴下点直下の顕微鏡画像である。画像0bは横方向に隣り合う滴下点(細胞懸濁液12)の中点部分の顕微鏡画像である。画像0cは細胞が最も疎な状態と想定される部分の顕微鏡画像である。
図11に示すように、画像0a,0b,0cのいずれにおいても、同等のコンフルエンシーであり、容器全面に均一に細胞が培養されていることを確認できた。
【0089】
図12及び表1に示すように、容器から回収された生細胞数は、試行回数3回の平均値で28.8×10
6個であった。
【0090】
実施例4では、実施例1~3と比較して容器面内で均一に培養されている。また、実施例4では、実施例3と比較して、培養された細胞数がさらに増加している。この結果は、播種間隔(ピッチ)をある程度狭くしつつ、かつ、播種点数を増やすことで、細胞の均一な培養が可能になったと考えられる。また、播種量を多くすることで細胞をより広い範囲に存在させることでも均一な培養は可能と考えられる。
【0091】
以上のように、容器10の形状や大きさ、細胞懸濁液12の細胞濃度、細胞腫、量に応じて、細胞の培養に最適な播種点数Nx×Nyおよび播種ピッチPx×Pyが存在することが分かった。このような事柄に対し、第一実施形態の細胞播種装置や細胞播種方法では、播種ピッチ(吐出間隔)やパターン種(平面格子や列などのパターン種)を適宜変更可能である。これにより、最適な播種点数および播種ピッチで細胞の播種を行うことができる。
また、細胞懸濁吐出機構あるいは細胞懸濁吐出手段では、細胞懸濁液の吐出量や吐出速度を調整可能である。これにより、単一の滴下点に滴下される細胞懸濁液の量や範囲を適切に調整して、培養される細胞数のさらなる増加に寄与することができる。
【0092】
(第二実施形態)
次に、
図13~18を参照して、本発明による細胞入容器、細胞播種方法および細胞播種装置の第二実施形態について説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0093】
(細胞入容器)
図13(a)は、第二実施形態の第一例の細胞入容器2Aを示している。
図13(b)は、
図13(a)のB-B線断面図である。
図14(a)は、第二実施形態の第二例の細胞入容器2Bを示している。
図14(b)は、
図14(a)のC-C線断面図である。
【0094】
図13に示す第一例の細胞入容器2A、および、
図14に示す第二例の細胞入容器2Bは、いずれも培地液11が充填された容器10に、細胞懸濁液12を入れたものである。培地液11は平面視した容器10の全体にわたって均一に充填されている。容器10には、細胞懸濁液12が線状に播種されている。
図13(b)、
図14(b)に示すように、線状に播種された細胞懸濁液12は、培地液11の上部に播種されている。
図13(a)、
図14(a)に示すように、細胞懸濁液12は、一筆書き状の1つの線から構成されている。細胞懸濁液12の線は、例えば、直線のみ、あるいは、曲線のみによって形成されてよい。
図13および
図14に示す細胞入容器2A,2Bにおいて、細胞懸濁液12の線は、直線および曲線を組み合わせて形成されている。
【0095】
図13に示す細胞入容器2Aにおいて、細胞懸濁液12の線は、X軸方向に蛇行する1つの線によって形成されている。具体的に、細胞懸濁液12の蛇行する線は、それぞれX軸方向に延びると共に、Y軸方向に間隔をあけて配列された複数の直線部と、Y軸方向に隣り合う直線部同士をつなぐ半円状の曲線部と、を組み合わせて形成されている。
【0096】
図13(a)に示す第一例の細胞入容器2Aにおいて、Y軸方向における細胞懸濁液12の直線部のピッチPは、細胞培養が安定化する任意のピッチであってよく、実験等により決定することができる。
また、
図13(a)に示す細胞入容器2Aにおいて、細胞懸濁液12の曲線部の曲率半径rは、細胞培養が安定化する任意の曲率半径であってよく、実験等により決定することができる。
また、
図13(a)に示す細胞入容器2Aにおいて、X軸方向において容器10の壁面から線状の細胞懸濁液12に至るまでの距離D
x、および、Y軸方向において容器10の壁面から線状の細胞懸濁液12に至るまでの距離D
yは、それぞれ細胞培養が安定化する任意の距離であってよく、実験等により決定することができる。
【0097】
図14に示す第二例の細胞入容器2Bにおいて、細胞懸濁液12の線は、1つの渦巻き状の線によって形成されている。具体的に、細胞懸濁液12の渦巻き状の線は、複数の直線部および曲線部を組み合わせてなる矩形の渦巻き状の線に形成されている。矩形の渦巻き状の辺は、X軸方向とY軸方向とに延びる。細胞懸濁液12の線のうち、直線部は矩形の各辺に対応し、曲線部は矩形の各角部に対応する。互いに平行する複数の直線部は、渦巻き状の径方向(X軸方向、Y軸方向)に間隔をあけて並んでいる。曲線部は、互いに直交する直線部同士をつなぐ。
【0098】
図14(a)に示す細胞入容器2Bにおいて、X軸方向における細胞懸濁液12の直線部のピッチP
x、および、Y軸方向における細胞懸濁液12の直線部のピッチP
yは、細胞培養が安定化する任意のピッチであってよく、実験等により決定することができる。
また、
図14(a)に示す細胞入容器2Bにおいて、X軸方向において容器10の壁面から線状の細胞懸濁液12に至るまでの距離D
x、および、Y軸方向において容器10の壁面から線状の細胞懸濁液12に至るまでの距離D
yは、それぞれ細胞培養が安定化する任意の距離であってよく、実験等により決定することができる。
【0099】
図13および
図14で示した細胞懸濁液12の線パターンは一例にすぎず、細胞培養が安定化する条件であれば、任意の線パターンであってよい。また、容器10に播種された細胞懸濁液12は、1つの線から構成されることに限らず、例えば複数の線から構成されてもよい。細胞懸濁液12の線パターンは、例えば、それぞれX軸方向に延びる複数の直線によって構成され、これら複数の直線が、Y軸方向に間隔をあけて配列されてもよい。
【0100】
(細胞播種装置)
次に、第二実施形態の細胞入容器2A,2Bを実現するための細胞播種装置について説明する。
図15は、第一例の細胞播種装置200Aを示している。細胞播種装置200Aは、培地液11が充填された容器10に対して、
図13,14に例示したように細胞懸濁液12を線状に滴下し、1つの線または複数の線から構成される細胞懸濁液12を形成するためのものである。第一例の細胞播種装置200Aは、細胞懸濁液吐出機構202と、吐出移動機構201aと、を有する。
【0101】
細胞懸濁液吐出機構202は、培地液11が充填された容器10に細胞懸濁液12を吐出する。細胞懸濁液吐出機構202は、細胞懸濁液12を継続して吐出することができる。細胞懸濁液吐出機構202には、細胞懸濁液12の単位時間あたり吐出量を調整可能である電動ピペット、シリンジポンプ、ディスペンサーなどを使用することができる。
【0102】
細胞懸濁液吐出機構202は、吐出移動機構201aに取り付けられている。吐出移動機構201aは、細胞懸濁液吐出機構202をX軸方向(横方向)およびY軸方向(縦方向)に移動させるように構成されている。また、吐出移動機構201aは、細胞懸濁液吐出機構202をZ軸方向(高さ方向)にも移動させるように構成されている。吐出移動機構201aは、X軸移動部201a1、Y軸移動部201a2およびZ軸移動部201a3を有する。X軸移動部201a1、Y軸移動部201a2、Z軸移動部201a3は、それぞれ細胞懸濁液吐出機構202をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動させる。X軸移動部201a1およびY軸移動部201a2は、細胞懸濁液吐出機構202を容器10の上方でX軸方向およびY軸方向に走査可能とする。X軸移動部201a1およびY軸移動部201a2は、例えば
図15(a)に示すように、細胞懸濁液吐出機構202がX軸方向に蛇行するような移動を実現する。図示しないが、X軸移動部201a1およびY軸移動部201a2は、例えば細胞懸濁液吐出機構202の渦巻き状の移動なども実現できる。Z軸移動部201a3は、
図15(b)に示すように細胞懸濁液吐出機構202の培地液11へのアクセスを実現する。
図15においては、細胞懸濁液吐出機構202がX軸移動部201a1に取り付けられ、X軸移動部201a1がY軸移動部201a2に取り付けられ、Y軸移動部201a2がZ軸移動部201a3に取り付けられているが、これに限ることはない。
【0103】
以上のように構成される細胞播種装置200Aでは、X軸移動部201a1およびY軸移動部201a2による細胞懸濁液吐出機構202のX軸方向およびY軸方向へのそれぞれの移動を制御しながら、細胞懸濁液吐出機構202が細胞懸濁液12を継続的に吐出することで、細胞懸濁液12を線状に吐出することができ、自在な播種曲線を実現可能である。すなわち、細胞播種装置200Aでは、容器10に向けて吐出される細胞懸濁液12の線パターンを自在に変更可能である。線パターンには、直線、曲線、あるいはこれら直線および曲線を組み合わせたものが含まれる。したがって、
図13,14に例示したような細胞入容器2A,2Bを得ることができる。
【0104】
図16は、第二例の細胞播種装置200Bを示している。細胞播種装置200Bは、培地液11が充填された容器10に対して、
図13,14に例示したように細胞懸濁液12を線状に滴下し、1つの線または複数の線から構成される細胞懸濁液12を形成するためのものである。細胞播種装置200Bは、細胞懸濁液吐出機構202と、容器移動機構201bと、を有する。細胞懸濁液吐出機構202は、第一例の細胞播種装置200A(
図15参照)と同様である。
容器移動機構201bは、容器10をX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動させる。具体的に、容器移動機構201bは、細胞懸濁液吐出機構202の下方に配置され、容器10を載置するように構成されている。容器移動機構201bは、細胞懸濁液吐出機構202に対してX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動する。これにより、容器10が細胞懸濁液吐出機構202の下方でX軸方向およびY軸方向に移動可能となる。その結果として、例えば
図16(a)に示すように容器10に対する細胞懸濁液吐出機構202の蛇行した移動が実現する。なお、図示しないが、細胞懸濁液吐出機構202の渦巻き状の移動なども実現する。また、容器移動機構201bのZ軸方向への移動により、
図16(b)に示すように細胞懸濁液吐出機構202の培地液11へのアクセスが実現する。
第二例の細胞播種装置200Bは、前述した第一例の細胞播種装置200Aと同様に動作することができ、第一例の細胞播種装置200Aと同様の効果を奏する。
【0105】
細胞播種装置は、例えば吐出移動機構201aおよび容器移動機構201bの両方を有していてもよい。
なお、容器移動機構201bを有する細胞播種装置では、動作条件によっては容器10が移動することで培地液11の液面が揺動することもあるため注意を要する。
【0106】
図17は、第三例の細胞播種装置200Cを示している。細胞播種装置200Cは、培地液11が充填された容器10に対して、
図13,14に例示したように細胞懸濁液12を線状に滴下し、1つの線または複数の線から構成される細胞懸濁液12を形成するためのものである。この細胞播種装置200Cでは、細胞懸濁液吐出機構202をX軸方向(横方向)、Y軸方向(縦方向)およびZ軸方向(高さ方向)に移動させる吐出移動機構201aが、ロボットで構成されている。
【0107】
第三例の細胞播種装置200Cは、前述した第一例の細胞播種装置200Aと同様に動作することが可能であり、第一例の細胞播種装置200Aと同様の効果を奏し得る。
また、第三例の細胞播種装置200Cでは、細胞懸濁液吐出機構202を複雑に動かすことができる。したがって、第三例の細胞播種装置200Cは、容器10に対する細胞懸濁液12の播種に際して細胞懸濁液吐出機構202に複雑な動作が要求される場合に好適である。
【0108】
図15~17に示した第一例~第三例の細胞播種装置200A~200Cを用いて細胞懸濁液12を線状に播種することで、作業者が細胞懸濁液12を播種する場合と比較して、播種量を精度良く制御することが可能となる。これにより、同一条件で安定した細胞培養を実現することができる。
また、
図15~17に示した第一例~第三例の細胞播種装置200A~200Cを用いることで、作業者の手や腕が頻繁に容器10上を移動することがなくなり、安定した細胞培養を実現することができる。
【0109】
(細胞播種方法)
次に、第二実施形態の細胞入容器2A,2Bを実現するための細胞播種方法について説明する。
第二実施形態の細胞播種方法では、培地液11が充填された容器10に対して、細胞懸濁液12を線状に滴下し、1つの線または複数の線から構成される細胞懸濁液12を形成する。この細胞播種方法は、例えば培地液11が充填された容器10に細胞懸濁液12を吐出する細胞懸濁液吐出手段と、細胞懸濁液吐出手段を容器10上方で走査可能な吐出移動手段を有し、細胞懸濁液12を線状に吐出して、1つの線または複数の線から構成された細胞懸濁液12を形成してよい。細胞懸濁液吐出手段は、細胞懸濁液12の単位時間あたり吐出量を調整可能であってよい。また、細胞播種方法では、容器10に対して細胞懸濁液12を線状に吐出する際に、細胞懸濁液12の線パターンを自在に変更可能であってよい。
【0110】
なお、細胞播種方法は、吐出移動手段に代えて、例えば容器10を細胞懸濁液吐出手段に対して移動させる容器移動手段を有してもよい。また、細胞播種方法は、上記の吐出移動手段および容器移動手段の両方を有してよい。
上記した細胞播種方法は、例えば
図15~17に示したような細胞播種装置200A~200Cなどを用いることで実現することができる。
【0111】
以下、第二実施形態の細胞入容器、細胞播種方法について、1つの実施例(実施例5)を用いてさらに説明する。本発明は、実施例の具体的内容により、何ら限定されない。
【0112】
(実施例5)
実施例5では、
図18に示すように、上方から見て240mm角の正方形状に形成された培養容器(容器10)に対し、培地液を77.8ml充填した後、作業者がピペットを用いて細胞懸濁液12を線状に滴下させた。細胞懸濁液12の線状の滴下に際しては、
図13に例示した細胞入容器2Aのように、細胞懸濁液12を左右方向(X軸方向)に蛇行する1つの線に形成する。具体的には、ピペットから細胞懸濁液12を容器10に向けて吐出させながら、最初に、ピペットを上方から見て容器10の手前側(
図18において下側)の左端付近から右方向に直線的に移動させる。次いで、ピペットが容器10の右端付近に到達したら、細胞懸濁液12の吐出を継続しながら、ピペットを容器10の奥側に向けて10mm移動させた後に、容器10の左端付近まで、左方向に直線的に移動させる。ピペットが容器10の左端付近に到達したら、ピペットを容器10の奥側に向けて10mm移動させた後に、再びピペットを容器10の右端まで右方向に直線的に移動させる。以上の動作を繰り返すことで、一筆書き状の蛇行した線を形成する。このように形成された蛇行線のうち、左右方向に延びる直線部は、容器10の手前側から奥側に向けて10mmの間隔をあけて21個並んでいる。
【0113】
培地液の組成は、基礎培地DMEM、ウシ胎児血清FBS、ペニシリンストレプトマイシン溶液をそれぞれ体積比で89%、10%および1%である。
また、細胞懸濁液は、ヒト皮膚繊維芽細胞NHDFを培地液で懸濁したものを使用した。
培養容器に滴下する細胞総数は、3.0×106個になるように、細胞懸濁液の濃度を1.4×106 個/mlに調整し、2200ul滴下した。
また、培地総量は80mlになるようにした。
【0114】
細胞懸濁液の播種後、15分間静置させた後にインキュベーターへ投入し、5日間培養させた。
【0115】
図18に5日間培養した容器内の細胞の分布を示す。
図18の画像5aは容器10中央付近における顕微鏡画像である。画像5bは画像5aの奥側(
図18において上側)に位置する容器10の壁面付近における顕微鏡画像である。画像5cは容器10の右手前(
図18において右下)の角部の壁面付近における顕微鏡画像である。
図18に示すように、画像5a,5b,5cのいずれの点においても、同等のコンフルエンシーであり、容器前面に均一に細胞が培養されていることが確認できた。すなわち、実施例5が
図7に示した比較例1と比較して優位であることを確認できた。
【符号の説明】
【0116】
1,2A,2B 細胞入容器
10 容器
11 培地液
12 細胞懸濁液
100A,100B,100C,100D,200A,200B,200C 細胞播種装置
101a,201a 吐出移動機構
101b,201b 容器移動機構
102,202 細胞懸濁液吐出機構
102a吐出部