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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056250
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】図化装置、図化方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20230412BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20230412BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20230412BHJP
   G01C 7/04 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G08G1/00 D
G01C15/00 102C
G01C15/00 103A
G01C7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165490
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207778
【弁理士】
【氏名又は名称】阿形 直起
(72)【発明者】
【氏名】米沢 正則
【テーマコード(参考)】
2C032
5H181
【Fターム(参考)】
2C032HB05
2C032HD26
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF10
(57)【要約】
【課題】区画線を高精度に図化することを可能とする図化装置、図化方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】図化装置は、道路を計測して得られた道路画像を用いて、道路において一以上の車線を区画する区画線を図化する図化装置であって、道路を車両が走行した軌跡及び道路画像における区画線上の複数の指定点を記憶する記憶手段と、軌跡からの距離範囲であって、各指定点から軌跡までの距離に基づく距離範囲に補助点を設定し、指定点及び補助点に基づいて区画線の候補を算出する算出手段と、算出した区画線の候補に関する情報を出力する出力手段と、を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を計測して得られた道路画像を用いて、前記道路において一以上の車線を区画する区画線を図化する図化装置であって、
前記道路を車両が走行した軌跡及び前記道路画像における前記区画線上の複数の指定点を記憶する記憶手段と、
前記軌跡からの距離範囲であって、前記各指定点から前記軌跡までの距離に基づく距離範囲に補助点を設定し、前記指定点及び前記補助点に基づいて前記区画線の候補を算出する算出手段と、
前記算出した区画線の候補に関する情報を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする図化装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記軌跡から前記複数の指定点のうちの二つの指定点までの距離と、前記軌跡上で前記二つの指定点に対応する二つの対応点の一方から前記二つの対応点の間に位置する任意点までの距離とに基づいて、当該任意点を通る前記軌跡の垂線上に前記補助点を設定する、
請求項1に記載の図化装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記軌跡から前記複数の指定点のうちの二つの指定点までの各距離の間の範囲を前記距離範囲として設定し、前記軌跡から前記距離範囲内に位置し、かつ、前記指定点に類似する画像特徴を有する点を前記補助点として設定する、
請求項1に記載の図化装置。
【請求項4】
前記道路画像を表示する表示手段をさらに備え、
前記算出手段は、前記表示された道路画像に基づいて利用者によって指定された点を前記指定点として記憶する、
請求項1-3のいずれか一項に記載の図化装置。
【請求項5】
前記算出手段は、前記道路画像内において、前記区画線の画像特徴を有する点を前記指定点として記憶する、
請求項1-4のいずれか一項に記載の図化装置。
【請求項6】
前記記憶手段は、前記候補算出手段によって算出された複数の前記区画線の候補をさらに記憶し、
前記算出手段は、前記複数の区画線の候補のうちの二つの候補を用いて、内挿又は外挿により新たな区画線の候補を算出する、
請求項1-5のいずれか一項に記載の図化装置。
【請求項7】
道路を計測して得られた道路画像を用いて、前記道路において一以上の車線を区画する区画線を図化する図化装置によって実行される図化方法であって、
前記道路を車両が走行した軌跡、及び前記道路画像における前記区画線の位置に指定された複数の指定点を記憶し、
前記軌跡からの距離範囲であって、各指定点から前記軌跡までの距離に基づく距離範囲に補助点を設定し、前記指定点及び前記補助点に基づいて前記区画線の候補を算出する、
ことを含むことを特徴とする図化方法。
【請求項8】
記憶部を有し、道路を計測して得られた道路画像を用いて、前記道路において一以上の車線を区画する区画線を図化するコンピュータのプログラムであって、
前記記憶部は、前記道路を車両が走行した軌跡、及び前記道路画像における前記区画線の位置に指定された複数の指定点を記憶し、
前記軌跡からの距離範囲であって、各指定点から前記軌跡までの距離に基づく距離範囲に補助点を設定し、前記指定点及び前記補助点に基づいて前記区画線の候補を算出する、
ことを前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、図化装置、図化方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両を自動運転させるシステムの構築に向けて、道路の区画線の情報を含む高精度な道路データベースの構築が求められている。従来、このようなデータベースを構築するために、撮像装置等を搭載した自動車が道路を走行して道路の画像を取得し、作業者が道路の画像から区画線の位置を把握してデータベースに入力していた。しかし、道路は長大であるため、作業者がすべての道路の区画線を手作業で入力することは困難である。
【0003】
特許文献1には、GPS受信機を有する車両を走行させて走行軌跡を取得し、走行軌跡が示す車両位置の左右にあらかじめ定めた車線幅だけ離間した車線素点を算出し、車線素点群に基づいて区画線を画定する道路地図作成システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-318533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムでは車両が車線の中央を走行することが想定されているため、車線内における車両の走行位置によっては区画線に誤差が生じることがあった。また、特許文献1に記載のシステムでは車線幅があらかじめ定められるため、カーブ区間と直線区間のように車線幅が異なる区間が混在している場合、区画線に誤差が生じることがあった。
【0006】
本発明は上述の課題を解決するためになされたものであり、区画線を高精度に図化することを可能とする図化装置、図化方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る図化装置は、道路を計測して得られた道路画像を用いて、道路において一以上の車線を区画する区画線を図化する図化装置であって、道路を車両が走行した軌跡及び道路画像における区画線上の複数の指定点を記憶する記憶手段と、軌跡からの距離範囲であって、各指定点から軌跡までの距離に基づく距離範囲に補助点を設定し、指定点及び補助点に基づいて区画線の候補を算出する算出手段と、算出した区画線の候補に関する情報を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る図化装置において、算出手段は、軌跡から複数の指定点のうちの二つの指定点までの距離と、軌跡上で前記二つの指定点に対応する二つの対応点の一方から二つの対応点の間に位置する任意点までの距離とに基づいて、任意点を通る軌跡の垂線上に補助点を設定する、ことが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る図化装置において、算出手段は、軌跡から複数の指定点のうちの二つの指定点までの各距離の間の範囲を距離範囲として設定し、軌跡から距離範囲内に位置し、かつ、指定点に類似する画像特徴を有する点を補助点として設定する、ことが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る図化装置は、道路画像を表示する表示手段をさらに備え、算出手段は、表示された道路画像に基づいて利用者によって指定された点を指定点として記憶する、ことが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る図化装置において、算出手段は、道路画像内において、区画線の画像特徴を有する点を指定点として記憶する、ことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る図化装置において、記憶手段は、候補算出手段によって算出された複数の区画線の候補をさらに記憶し、算出手段は、複数の区画線の候補のうちの二つの候補を用いて、内挿又は外挿により新たな区画線の候補を算出する、ことが好ましい。
【0013】
本発明に係る図化方法は、道路を計測して得られた道路画像を用いて、道路において一以上の車線を区画する区画線を図化する図化装置によって実行される図化方法であって、道路を車両が走行した軌跡、及び道路画像における区画線の位置に指定された複数の指定点を記憶し、軌跡からの距離範囲であって、各指定点から軌跡までの距離に基づく距離範囲に補助点を設定し、指定点及び補助点に基づいて区画線の候補を算出する、ことを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明に係るプログラムは、記憶部を有し、道路を計測して得られた道路画像を用いて、道路において一以上の車線を区画する区画線を図化するコンピュータのプログラムであって、記憶部は、道路を車両が走行した軌跡、及び道路画像における区画線の位置に指定された複数の指定点を記憶し、軌跡からの距離範囲であって、各指定点から軌跡までの距離に基づく距離範囲に補助点を設定し、指定点及び補助点に基づいて区画線の候補を算出する、ことをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る図化装置、図化方法及びプログラムは、区画線を高精度に図化することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】図化装置の概要を説明するための模式図である。
図2】図化システム1の概略構成を示す図である。
図3】点群テーブルT1のデータ構造を示す図である。
図4】入力点テーブルT2のデータ構造を示す図である。
図5】図化データT3のデータ構造を示す図である。
図6】図化処理の流れを示すフロー図である。
図7】図化処理の流れを示すフロー図である。
図8】(A)は、非短縮表示モードにおける表示対象領域の算出の例について説明するための模式図であり、(B)は、短縮表示モードにおける表示対象領域の算出の例について説明するための模式図である。
図9】基準線の傾きの算出の例について説明するための模式図である。
図10】補助点の算出の例について説明するための模式図である。
図11】補助点の算出の他の例について説明するための模式図である。
図12】(A)は、直線化表示モードにおける表示対象領域の設定の例について説明するための模式図であり、(B)は、直線化処理の例について説明するための模式図である。
図13】指定点の算出の例について説明するための模式図である。
図14】補助点の算出の他の例について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0018】
図1は、本発明に係る図化装置の概要を説明するための模式図である。図化装置は、道路を走行する車両に搭載されるMMS(Mobile Mapping System)を用いて道路を計測して得られた計測データと、道路を車両が走行した軌跡Tとを取得する。図化装置は、計測データに基づいて、計測した地理的領域に含まれる道路を示す道路画像Rを生成して記憶する。図化装置は、道路画像Rのうち、利用者によって指定された表示対象領域Aに含まれる部分を含む表示用画像Dを生成して、利用者に表示する。表示対象領域Aは、道路の延伸方向に沿って延伸する矩形領域とすることができ、表示用画像Dは、道路画像Rのうち表示対象領域Aに含まれる部分を延伸方向に縮小した画像とすることができる。
【0019】
利用者は、図化装置を操作して、表示用画像Dにおいて中央線E1、車線境界線E2、車道外側線E3等の、道路において一以上の車線を区画する区画線上の複数の点を指定する。図化装置は、指定された複数の点を指定点Pとして記憶する。利用者は、道路の延伸方向に沿って表示対象領域Aを動かしながら区画線上の点を繰り返し指定する。これにより、道路画像Rに含まれる道路の全域について、指定点Pが記憶される。
【0020】
図化装置は、軌跡Tからの距離が、各指定点Pから軌跡Tまでの距離に基づく距離範囲に含まれる補助点Qを設定し、指定点P及び補助点Qに基づいて区画線候補Lを算出する。図化装置は、区画線候補Lを道路の延伸方向に縮小されるように変換して表示用画像Dに描画する。また、図化装置は、指定点P、補助点Q及び区画線候補Lを含む図化データZを生成して出力する。
【0021】
このように、図化装置は、指定点Pと軌跡Tとに基づいて補助点Qを設定する。したがって、利用者は、補助点Qに相当する区画線上の点を指定する必要がなくなり、利用者の作業量が低減される。また、補助点Qは、利用者によって指定された区画線上の指定点Pから軌跡Tまでの距離に基づく距離範囲に含まれるように設定される。したがって、車両が車線の中央以外を走行した場合や、車線幅が一定でない場合であっても、図化装置によって設定される補助点Qが区画線上に位置する可能性が高くなり、区画線が高精度に図化される。
【0022】
また、図化装置は、表示用画像Dとして、道路画像Rを道路の延伸方向に縮小し、区画線候補Lを道路の延伸方向に縮小されるように変換した短縮画像を表示する。これにより、表示用画像Dに広範囲の道路が含まれるため、利用者が道路の延伸方向に沿って表示対象領域Aを動かす回数が減り、作業効率が改善する。すなわち、区画線が効率的に図化される。
【0023】
上述した図1の説明は、本発明の内容への理解を深めるための説明にすぎない。本発明は、具体的には、以下に説明する種々の実施形態において実施され、且つ、本発明の原則を実質的に超えずに、さまざまな変形例によって実施されてもよい。このような変形例は、全て本発明及び本明細書の開示範囲に含まれる。
【0024】
図2は、実施形態に係る図化システム1の概略構成を示す図である。図化システム1は、車両2、図化装置3及び外部装置4を有する。
【0025】
車両2は、MMS21を搭載して道路を走行する自動車である。MMS21は、GNSS(Global Navigation Satellite System)センサ、慣性計測装置、レーザ計測器、カメラ及び各装置を制御する制御端末等を備える。MMS21は道路計測手段の一例であり、GNSSセンサ及び/又は慣性計測装置、レーザ計測器及び/又はカメラ、並びに、各装置を制御する制御端末等を備えた道路計測手段であればよい。
【0026】
GNSSセンサ及び慣性計測装置は、車両2が走行している間、所定の時間間隔で車両2の位置情報及び姿勢情報をそれぞれ生成する。制御端末は、位置情報及び姿勢情報に基づいて、車両2の一定の移動距離ごと又は一定の時間間隔ごとの三次元の車両位置を示す時系列の車両位置データを生成する。以下では、生成された車両位置データにおいて隣り合う車両位置を連結した線を示すデータを軌跡ということがある。
【0027】
レーザ計測器は、車両2が走行している間、照射方向を変化させながら道路に向かってレーザ光を順次照射し、道路において反射された光を検出する。レーザ計測器は、レーザの照射方向とレーザ光を照射してから反射光を検出するまでの時間とに基づいて、反射点の相対位置を示すデータを生成する。制御端末は、反射点の相対位置を示すデータと、そのデータが生成された時刻における位置情報及び姿勢情報とに基づいて相対位置を絶対位置に変換し、道路の形状を示す三次元点群のデータを生成する。
【0028】
また、車両2が走行している間、カメラは、道路を順次撮像して、撮像画像を生成する。カメラはレーザ計測器に対して固定されており、各照射方向と撮像画像の各画素との対応関係が定まる。これにより、制御端末は、三次元点群を構成する各点に、対応する画素の画素値が関連付けられた計測データを生成することができる。以下では、画素値が関連付けられた三次元点群を色付き点群と称することがある。
【0029】
制御端末は、生成された車両位置データ、撮像画像及び色付き点群である計測データを図化装置3に送信する。
【0030】
図化装置3は、道路において一以上の車線を区画する区画線を図化する装置であり、例えばPC(Personal Computer)又はサーバ等の情報処理装置である。図化装置3は、記憶部31、通信部32、表示部33、操作部34及び処理部35を備える。
【0031】
記憶部31は、データ及びプログラムを記憶するための構成であり、例えば半導体メモリを備える。記憶部31は、処理部35による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。プログラムは、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)等のコンピュータ読み取り可能且つ非一時的な可搬型記憶媒体からセットアッププログラムによりインストールされる。なお、記憶部31は、記憶手段の一例である。
【0032】
通信部32は、図化装置3を他の装置と通信可能にするための構成であり、通信インタフェース回路を備える。通信部32が備える通信インタフェース回路は、例えば、有線LAN(Local Area Network)、無線LAN又はLTE(Long Term Evolution)等の通信インタフェース回路である。通信部32は、他の装置から受信したデータを処理部35に供給するとともに、処理部35から供給されたデータを他の装置に送信する。
【0033】
表示部33は、画像を表示するための構成であり、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイを備える。表示部33は、処理部35から供給された表示データに基づいて画像を表示する。
【0034】
操作部34は、図化装置3に対する入力操作を受付けるための構成であり、例えば、キーボード、キーパッド又はマウス等を備える。操作部34は、表示部33と一体化されたタッチパネルを備えてもよい。操作部34は、入力操作に応じた信号を生成して処理部35に供給する。
【0035】
処理部35は、図化装置3の動作を統括的に制御する構成であり、一又は複数個のプロセッサ(処理回路)及びその周辺回路を備える。処理部35は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、LSI(Large Scale Integration)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を備える。処理部35は、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を備えてもよい。処理部35は、記憶部31に記憶されているプログラムに基づいて処理を実行するとともに、処理が適切に実行されるように図化装置3の各構成の動作を制御する。
【0036】
処理部35は、取得部351、道路画像生成部352、条件設定部353、表示用画像生成部354、表示処理部355、候補算出部356及び出力部357を有する。これらの各部は、処理部35が実行するプログラムによって実現される機能モジュールである。これらの各部は、ファームウェアとして図化装置3に実装されてもよい。なお、表示用画像生成部354は、画像生成手段として機能する。表示処理部355は、表示手段として機能する。候補算出部356は、算出手段として機能する。
【0037】
外部装置4は、区画線を図化した図化データの出力先となる装置であり、例えばサーバ等の情報処理装置である。外部装置4は、少なくとも、図化装置3によって生成された図化データを受信して記憶する。
【0038】
図3は、記憶部31に記憶される点群テーブルT1のデータ構造の一例を示す図である。点群テーブルT1は、色付き点群データを示すものである。
【0039】
点群テーブルT1は、緯度、経度、高度、距離、画素値等を相互に関連付けて記憶する。緯度、経度及び高度は、MMS21のレーザ計測器によって生成された三次元点群を構成する各点の三次元位置を示す情報である。距離は、各点がレーザ計測器によって生成されたときの、レーザ計測器から各点までの距離である。画素値は、MMS21のカメラによって生成された撮像画像を構成する画素のうち、三次元点群の各点に対応する画素の画素値であり、例えばRGB値である。
【0040】
点群テーブルT1のデータは、図化装置3によってMMS21から取得されて記憶部31に記憶される。
【0041】
図4は、記憶部31に記憶される入力点テーブルT2のデータ構造の一例を示す図である。入力点テーブルT2は、区画線候補を構成する複数の入力点(指定点又は補助点をいう。)の点列データを示すものである。図化装置3は、入力点テーブルT2に記憶された複数の入力点に基づく線を区画線候補として算出する。
【0042】
入力点テーブルT2は、点番号、種別、区画線番号、緯度、経度、高度等を相互に関連付けて記憶する。点番号は、それぞれの入力点を識別するとともに、入力点の順序を規定する情報である。種別は、入力点が指定点又は補助点のいずれの種別であるかを示す情報である。区画線番号は、各入力点に対応する区画線を識別する識別情報である。同一の区画線を構成する入力点には、同一の区画線番号が割り振られる。緯度、経度及び高度は、各入力点の三次元位置を示す情報である。同一の区画線番号が関連付けられた入力点を点番号の順に結ぶことにより、区画線候補が算出される。
【0043】
入力点テーブルT2のデータのうち、指定点のデータは、利用者の入力により、又は、図化装置3により自動的に生成される。入力点テーブルT2のデータのうち、補助点のデータは、図化装置3により自動的に生成される。
【0044】
図5は、記憶部31に記憶される図化データT3のデータ構造の一例を示す図である。図化データT3は、図化装置3によって算出された区画線候補を示す図形データである。図化データT3は、区画線番号、座標等を相互に関連付けて記憶する。区画線番号は、区画線を識別する識別情報である。座標は、区画線を構成する各入力点の緯度、経度及び高度を示す情報である。以下では、区画線候補は各入力点を結んだ折れ線であるものとして説明する。
【0045】
図化データT3は、入力点テーブルT2のデータに基づいて図化装置3により生成される。
【0046】
図6及び図7は、図化装置3によって実行される図化処理の流れを示すフロー図である。図化処理は、記憶部31に記憶されるプログラムを実行する処理部35が、図化装置3の各構成要素と協働することにより実現される。
【0047】
図化処理は、初期設定処理(ステップS11-S13)、表示処理(ステップS14-S15)、受付処理(ステップS21-S27)、出力処理(ステップS28-S29)を含む。初期設定処理では、道路画像を表示部33に表示するために必要なデータの取得及び表示条件の設定が実行される。表示処理では、道路画像の一部を含む表示用画像を表示部33に表示する処理が実行される。受付処理では、表示された表示用画像に基づいて区画線候補を編集するための利用者の指示を受け付け、指示がされた場合には、指示に応じた処理が実行される。受付処理が実行されると、表示用画像に含まれる入力点若しくは区画線候補又は表示用画像の表示条件が変更されるため、再び表示処理が実行され、変更が反映された表示用画像が表示される。受付処理及び表示処理を繰り返すことにより区画線候補の算出が完了すると、利用者の出力指示に応じて出力処理が実行される。出力処理では、図化データを出力する処理が実行される。
【0048】
図6を参照して、最初に、取得部351は、通信部32を介して、軌跡、色付き点群及び撮像画像を含む計測データをMMS21から取得する(ステップS11)。取得部351は、取得した計測データを記憶部31に記憶する。
【0049】
次に、道路画像生成部352は、あらかじめ設定された複数の縮尺のそれぞれについて道路画像を生成する(ステップS12)。道路画像は、任意の平面に色付き点群に含まれる各点を投影することにより生成される画像である。以下では、道路画像は、水平面に色付き点群を正射影した正射影画像であるものとして説明する。
【0050】
道路画像生成部352は、色付き点群の各点が含まれるように、緯度及び経度で区画される二次元の地理的領域を設定する。続いて、道路画像生成部352は、複数の縮尺のそれぞれについて、地理的領域に対応する道路画像の幅と高さの画素数を定め、緯度及び経度を道路画像の座標(画素位置)に正射影するための投影関数を設定する。続いて、道路画像生成部352は、設定した投影関数によって点群テーブルT1の各点の投影先である画素位置を算出し、各点に関連付けられた画素値を、投影先の画素の画素値として設定することで、道路画像を生成する。なお、複数点の投影先が同一画素となる場合は、当該複数点のうちレーザ計測器からの距離が最も小さい点を投影元とする、あるいは当該複数点に関連付けられた画素値の代表値を投影先の画素値とすることができる。
【0051】
次に、条件設定部353は、利用者による表示条件の設定を受け付ける(ステップS13)。表示条件には、表示用画像の縮尺、表示用画像として表示される表示対象領域の中心位置、表示部33において道路画像を表示するウィンドウの幅及び高さ、表示モード、及び、短縮表示モードである場合の短縮率が含まれる。表示モードは、道路画像を短縮して表示する短縮表示モード、又は、道路画像を短縮せずに表示する非短縮表示モードのいずれかである。なお、条件設定部353は、利用者による表示条件の設定を省略して、表示条件をあらかじめ記憶された初期値に設定してもよい。縮尺E及び短縮率Fはそれぞれ0<E<1、0<F<1の範囲で設定される。
【0052】
次に、表示用画像生成部354は、非短縮表示モードであるか、短縮表示モードであるかを判定する(ステップS14)。
【0053】
非短縮表示モードであると判定された場合(ステップS14-No)、表示用画像生成部354は、縮小及び回転されていない表示用画像を生成する(ステップS14a)。まず、表示用画像生成部354は、拡大及び回転されていない表示対象領域を算出する。
【0054】
図8(A)は、非短縮表示モードにおける表示対象領域の算出の例について説明するための模式図である。表示用画像生成部354は、ステップS13で設定された表示条件である中心位置C、ウィンドウWの幅及び高さ、縮尺Eに基づいて、道路画像Rに対応する地理的領域において表示対象領域A1を設定する。例えば、表示用画像生成部354は、中心位置Cを中心とし、あらかじめ設定された傾きを有し、かつ、幅W1及び高さH1を有する矩形領域を表示対象領域A1として設定する。縮尺Eの道路画像Rにおける表示対象領域A1の幅W1及び高さH1は、ウィンドウWの幅及び高さに等しい。ウィンドウWの幅及び高さは、それぞれウィンドウWの横方向及び縦方向の画素数である。以降では、ウィンドウWは幅が高さ以上である横長の矩形であるものとして説明する。なお、実寸での幅W1及び高さH1はウィンドウWの実寸の幅及び高さを縮尺Eでそれぞれ除した値となる。
【0055】
続いて、表示用画像生成部354は、縮尺Eの道路画像Rから、表示対象領域A1に含まれる部分を抽出する。また、表示用画像生成部354は、表示対象領域A1に含まれる入力点のデータを入力点テーブルT2から抽出する。また、表示用画像生成部354は、表示対象領域A1に含まれる区画線候補のデータを図化データT3から抽出する。表示用画像生成部354は、抽出した道路画像に、抽出した入力点並びに区画線候補L1及びL2を示す図形を重畳して描画することにより、表示用画像を生成する。
【0056】
ステップS14において短縮表示モードであると判定された場合(ステップS14-Yes)、表示用画像生成部354は、縮小及び回転されている表示用画像を生成する(ステップS14b)。なお、以降では、短縮表示モードにおいて生成される表示用画像を短縮画像と称することがある。まず、表示用画像生成部354は、拡大及び回転されている表示対象領域を算出する。
【0057】
図8(B)は、短縮表示モードにおける表示対象領域の算出の例について説明するための模式図である。表示用画像生成部354は、ステップS13で設定された表示条件である中心位置C、ウィンドウWの幅及び高さ、縮尺E、短縮率Fに基づいて、道路画像Rに対応する地理的領域において表示対象領域A2を設定する。例えば、表示用画像生成部354は、中心位置Cを中心とし、かつ、幅W2及び高さH2を有する矩形領域を表示対象領域A2として設定する。縮尺Eの道路画像Rにおける表示対象領域A2の幅W2は、ウィンドウWの幅を短縮率Fで除した値である。縮尺Eの道路画像Rにおける表示対象領域A2の高さH2は、ウィンドウWの高さに等しい。すなわち、短縮表示モードにおける表示対象領域A2は、非短縮表示モードにおける表示対象領域A1を、幅が短縮率Eの逆数倍となるように拡大した形状を有する。なお、実寸での幅W2はウィンドウWの実寸の幅を短縮率F及び縮尺Eで除した値、実寸での高さH2はウィンドウWの実寸の高さを縮尺Eで除した値となる。
【0058】
続いて、表示用画像生成部354は、中心位置Cの近傍の区画線候補を基準線に設定する。例えば、表示用画像生成部354は、中心位置Cから所定範囲に含まれる各区画線候補と中心位置Cとの距離を算出し、算出された距離が最も小さい区画線候補を基準線に設定する。図8(B)に示す例では、区画線候補L1及びL2のうち、区画線候補L1が基準線として特定されている。続いて、表示用画像生成部354は、中心位置Cの近傍における基準線の延伸方向を算出する。例えば、表示用画像生成部354は、基準線を構成する入力点のうち、中心位置Cに最も近い入力点と、その入力点に隣接する入力点とに基づいて、基準線の傾きΔを算出し、傾きΔによって示される方向を基準線の延伸方向として算出する。
【0059】
図9(A)は、基準線の傾きの算出の例について説明するための模式図である。表示用画像生成部354は、基準線である区画線候補を構成する入力点のうち、中心位置Cに最も近い入力点B0を特定する。表示用画像生成部354は、入力点B0の前後に隣接する二つの入力点B-1及びB+1を特定する。表示用画像生成部354は、入力点B-1とB+1とを通る直線の傾きΔAを基準線の傾きΔとして算出する。
【0060】
図9(B)は、基準線の傾きの算出の他の例について説明するための模式図である。表示用画像生成部354は、基準線である区画線候補を構成する入力点のうち、中心位置Cに最も近い入力点B0を特定する。表示用画像生成部354は、入力点B0の前方に隣接する二つの入力点B-2及びB-1と、後方に隣接する二つの入力点B+1及びB+2とを特定する。表示用画像生成部354は、入力点B-2とB0とを通る直線の傾きΔB1、入力点B-1とB+1とを通る直線の傾きΔB2、及び、入力点B0とB+2とを通る直線の傾きΔB3を算出する。表示用画像生成部354は、ΔB1、ΔB2及びΔB3の平均値を基準線の傾きΔとして算出する。
【0061】
図9(C)は、基準線の傾きの算出方法の他の例について説明するための模式図である。表示用画像生成部354は、基準線である区画線候補を構成する入力点のうち、中心位置Cに最も近い入力点B0を特定する。表示用画像生成部354は、入力点B0の前方に隣接する二つの入力点B-2及びB-1と、後方に隣接する二つの入力点B+1及びB+2とを特定する。表示用画像生成部354は、特定した入力点B-2、B-1、B0、B+1及びB+2を最小二乗法により直線近似し、近似直線の傾きΔCを基準線の傾きΔとして算出する。なお、表示用画像生成部354は、入力点B0の前方及び後方に隣接する入力点として、一つ又は三つ以上の入力点をそれぞれ特定してもよい。
【0062】
図8(B)に戻り、表示用画像生成部354は、表示対象領域A2を、幅方向の傾きが基準線の傾きΔに対応する延伸方向と一致するように回転させる。
【0063】
続いて、ステップS14aと同様に、表示用画像生成部354は、縮尺Eの道路画像Rから、表示対象領域A2に含まれる部分を抽出し、短縮率Fで基準線の延伸方向に縮小する。また、表示用画像生成部354は、表示対象領域A2に含まれる入力点のデータを入力点テーブルT2から抽出し、短縮率Fで基準線の延伸方向に縮小して表示されるように各入力点の座標値(緯度、経度及び高度をいう。)を変換する。また、表示用画像生成部354は、表示対象領域A2に含まれる区画線候補L1及びL2を図化データT3から抽出し、短縮率Fで基準線の延伸方向に縮小して表示されるように各入力点の座標値を変換する。つまり、表示用画像生成部354は、これらの座標値のそれぞれに、ステップ12で設定した投影関数による変換と、表示対象領域に施したものと同じ回転と、表示対象領域に施した幅方向の縮小に応じた平行移動とを行って、これらの座標値を変換する。表示用画像生成部354は、抽出した道路画像に、座標値を変換した入力点並びに区画線候補L1及びL2を示す図形を重畳して描画することにより、表示対象領域A2についての短縮画像を生成する。
【0064】
このように、短縮表示モードにおいて、表示用画像生成部354は、表示対象領域の長手方向が基準線の延伸方向と一致するように表示対象領域を回転させる。また、表示用画像生成部354は、表示対象領域に含まれる図化データを、入力点及び区画線候補が基準線の延伸方向に縮小して表示されるように変換する。一般的に、利用者は、表示対象領域の区画線について指定点を入力すると、表示対象領域を道路の延伸方向に移動させて、さらに指定点を入力する。したがって、利用者は表示対象領域を道路の延伸方向に移動させる指示(例えば、マウスをドラッグする操作)を繰り返し行わなければならない。これに対し、短縮画像が表示された場合、利用者は、1回の表示対象領域の設定で広い範囲の区画線について指定点を入力することができるため、表示対象領域を移動させる回数が減り、利用者の作業効率が高められる。
【0065】
また、短縮画像においては、基準線の延伸方向と直交する道路の横断方向には短縮率に基づく縮小が行われないため、利用者が短縮画像を見ながら指定点を入力しても、横断方向における区画線の精度が短縮率に基づく縮小によって低下することはない。一般的に、区画線の図化データにおいては、道路の延伸方向よりも横断方向において高い精度が要求されるため、横断方向における精度の低下が防止されることにより、精度要件に適合した図化データを生成しやすくなる。
【0066】
なお、表示用画像生成部354は、図化データにおいて道路の横断方向に要求される精度に対する道路の延伸方向に要求される精度の比率を短縮率として、道路画像の縮小及び図化データの変換を行ってもよい。これにより、短縮画像上において許容される誤差が横断方向と延伸方向とで同一になるため、作業者が精度要件に配慮しながら指定点を入力することが容易になる。
【0067】
ステップS14bにおいて、表示用画像生成部354は、複数の区画線候補で区画される領域の中心線を基準線に設定してもよい。この場合、表示用画像生成部354は、区画線候補のうち、中心位置Cに最も近い二つの区画線候補を特定する。表示用画像生成部354は、二つの区画線候補からの距離が等しい点の集合である中心線を生成して基準線に設定する。表示用画像生成部354は、基準線の上に所定の間隔で入力点を設定して、図9(A)-(C)を用いて説明した方法により基準線の傾きを算出する。
【0068】
また、ステップS14bにおいて、表示用画像生成部354は、道路を車両2が走行した軌跡を基準線に設定してもよい。この場合、表示用画像生成部354は、軌跡を構成する車両位置を入力点とみなして、図9(A)-(C)を用いて説明した方法により基準線の傾きを算出する。
【0069】
図6に戻り、次に、表示処理部355は、生成された表示用画像を表示部33に表示する(ステップS15)。
【0070】
図7を参照し、次に、候補算出部356は、利用者からの指示を受け付ける(ステップS21)。
【0071】
次に、候補算出部356は、利用者からの指示が指定点追加指示であるか否かを判定する(ステップS22)。指定点追加指示は、区画線番号と表示用画像内の画素とを指定し、対応する指定点を追加させる指示である。
【0072】
利用者からの指示が指定点追加指示であると判定された場合(ステップS22-Yes)、候補算出部356は、指定点を追加し(ステップS22a)、ステップS14に進む。ステップS22aにおいて、候補算出部356は、ステップS12で設定された投影関数の逆関数を設定し、指定された画素の画素位置の投影元の緯度、経度を逆関数によって算出し、点群テーブルT1を参照して、算出した緯度、経度を有する点の高度を取得し、算出した緯度、経度、取得した高度及び指定された区画線番号が関連付けられた指定点のデータを入力点テーブルT2に追加することにより記憶部31に記憶する。なお、逆関数によって算出した緯度、経度を有する点が存在しない場合には、候補算出部356は、算出した緯度、経度の周辺の複数の点の高度で補間した値を指定された画素に対応する点の高度として取得してもよい。
【0073】
利用者からの指示が指定点追加指示でないと判定された場合(ステップS22-No)、候補算出部356は、指示が補助点追加指示であるか否かを判定する(ステップS23)。補助点追加指示は、軌跡及び指定点に基づいて補助点を追加させる指示である。
【0074】
利用者からの指示が補助点追加指示であると判定された場合(ステップS23-Yes)、候補算出部356は、補助点を追加し(ステップS23a)、ステップS14に進む。
【0075】
図10(A)は、補助点の算出の例について説明するための模式図である。図10(A)に示す例では、候補算出部356は、相互に隣接する二つの指定点に基づいて軌跡上の区間を特定し、特定した区間に含まれる車両位置のそれぞれに対応する補助点を算出する。
【0076】
候補算出部356は、入力点テーブルT2に含まれる指定点のうちから相互に隣接する二つの指定点P1及びP2を特定し、車両位置C1、C2、C3及びC4を含む軌跡と、指定点P1及びP2とを記憶部31から取得する。まず、候補算出部356は、二つの指定点P1及びP2に対応する軌跡上の区間を特定する。候補算出部356は、軌跡を構成する線分のうち、各指定点に最も近い線分を特定し、各指定点から特定した線分までの距離を算出する。図10(A)に示す例では、候補算出部356は、指定点P1に最も近い線分として車両位置C1とC2とを結ぶ線分M12を特定し、指定点P1から線分M12までの距離J1を算出する。同様に、候補算出部356は、指定点P2に最も近い線分として車両位置C3とC4とを結ぶ線分M34を特定し、指定点P2から線分M34までの距離J2を算出する。候補算出部356は、各指定点に最も近い線分と、各指定点から各指定点に最も近い線分に下ろした垂線との交点を端点として、軌跡を複数の区間に区分する。図10(A)に示す例では、指定点P1に対応する軌跡上の対応点として端点V1が抽出され、指定点P2に対応する軌跡上の対応点として端点V2が抽出される。すなわち、指定点P1及びP2に対応する軌跡上の区間として、端点V1から端点V2までの区間が特定される。
【0077】
続いて、候補算出部356は、両指定点に最も近い二つの線分と、その二つの線分の間の線分とを連結している車両位置を特定する。候補算出部356は、特定した各車両位置を通り、かつ、特定した各車両位置の前後に隣接する車両位置を結ぶ直線と直交する直線を算出する。図10(A)に示す例では、候補算出部356は、線分M12及びM34と、その間の線分M23とを連結している車両位置C2及びC3を特定する。候補算出部356は、車両位置C2を通り、かつ、車両位置C2の前後に隣接する車両位置C1及びC3を結ぶ直線と直交する直線N2を算出する。また、候補算出部356は、車両位置C3を通り、かつ、車両位置C3の前後に隣接する車両位置C2及びC4を結ぶ直線と直交する直線N3を算出する。算出された直線は、特定された車両位置における軌跡の垂線を示すものである。
【0078】
続いて、候補算出部356は、各車両位置を通る軌跡の垂線上に、軌跡から、各指定点から軌跡までの距離に基づく距離範囲に補助点Qを設定する。距離範囲は、軌跡から一方の指定点までの距離と、軌跡から他方の指定点までの距離との間の範囲である。候補算出部356は、例えば、軌跡から二つの指定点までの距離と、軌跡上で二つの指定点に対応する端点から各車両位置までの距離とに基づいて、補助点Qを設定する。各車両位置は、軌跡上で二つの端点の間に位置する任意点の一例である。候補算出部356は、軌跡上で二つの指定点に対応する端点間の軌跡の長さに対する、一方の指定点に対応する端点から各車両位置までの軌跡の長さの比を重み係数として算出する。候補算出部356は、軌跡から一方の指定点までの距離を基準として、軌跡から二つの指定点までの各距離の差に、その重み係数を乗じた値を加算することにより、軌跡から各車両位置に対応する補助点までの距離を算出する。図10(A)に示す例では、軌跡から車両位置C2及びC3に対応する補助点までの距離D2及びD3は、それぞれ、次の式で表される。
【0079】
【数1】
【数2】
【0080】
すなわち、図10(A)に示す例では、各補助点の軌跡からの距離は、指定点P1から軌跡までの距離J1と指定点P2から軌跡までの距離J2との間の距離範囲に含まれる。
【0081】
図10(B)は、補助点の追加の他の例について説明するための模式図である。図10(B)に示す例では、候補算出部356は、相互に隣接する二つの指定点に基づいて軌跡上の区間を特定し、特定した区間に含まれる車両位置に接続する線分のそれぞれに対応する補助点を算出する。
【0082】
候補算出部356は、車両位置C1、C2、C3及びC4を含む軌跡と、指定点P1及びP2とを記憶部31から取得する。候補算出部356は、指定点P1に最も近い線分として車両位置C1とC2とを結ぶ線分M12を特定し、指定点P1から線分M12までの距離J1を算出する。候補算出部356は、指定点P2に最も近い線分として車両位置C3とC4とを結ぶ線分M34を特定し、指定点P2から線分M34までの距離J2を算出する。候補算出部356は、各指定点に最も近い線分と、各指定点から各指定点に最も近い線分に下ろした垂線との交点を端点V1、V2(軌跡上で指定点に対応する対応点)として、軌跡を複数の区間に区分する。ここまでの処理は図10(A)に示した例と同様である。
【0083】
続いて、候補算出部356は、隣接する車両位置を結ぶ線分のそれぞれについて、線分の中点を通る垂線を算出する。候補算出部356は、各線分の垂線上に、線分から、各指定点から軌跡までの距離に基づく距離範囲に補助点Qを設定する。例えば、候補算出部356は、軌跡から二つの指定点までの距離と、軌跡上で二つの指定点に対応する端点から各車両位置に対応する線分の中点までの軌跡の長さとに基づいて、補助点Qを設定する。各中点は、軌跡上で二つの端点の間に位置する任意点の一例である。候補算出部356は、軌跡上で二つの指定点に対応する端点間の軌跡の長さに対する、一方の指定点に対応する端点から各中点までの軌跡の長さの比を重み係数として算出する。候補算出部356は、軌跡から一方の指定点までの距離を基準として、軌跡から二つの指定点までの各距離の差に、その重み係数を乗じた値を加算することにより、軌跡から各車両位置に対応する補助点までの距離を算出する。図10(B)に示す例では、線分M12、M23、M34から補助点Qまでの距離D1、D2及びD3は、それぞれ、次の式で表される。
【0084】
【数3】
【数4】
【数5】
【0085】
図10(B)に示す例でも、各補助点の軌跡からの距離は、指定点P1から軌跡までの距離J1と指定点P2から軌跡までの距離J2との間の距離範囲に含まれる。
【0086】
図10(A)及び(B)を用いて説明したように、候補算出部356は、入力点テーブルT2に含まれる指定点のうち、隣接する二つの指定点から軌跡に下ろした垂線によって区分される軌跡の区間ごとに、上述のとおり補助点を算出する。候補算出部356は、算出された補助点を、緯度、経度、高度、指定点と同一の区画線番号を関連付けて入力点テーブルT2に追加することにより記憶部31に記憶する。また、候補算出部356は、指定点と追加された補助点とが区画線候補を構成するように、入力点テーブルT2の点番号を再設定する。候補算出部356は、区画線の候補それぞれについて相互に隣接する二つの指定点を順次選択して補助点を設定する処理を繰り返すことによって、指定点が設定されている全ての区間に対して補助点を設定する。
【0087】
なお、候補算出部356は、ステップS22aにおいて指定点が追加された後に利用者からの補助点追加指示を経ずに、追加された指定点についてステップS23aを実行して補助点を追加してもよい。
【0088】
利用者からの指示が補助点追加指示でないと判定された場合(ステップS23-No)、候補算出部356は、指示が入力点削除指示であるか否かを判定する(ステップS24)。入力点削除指示は、指定点又は補助点を指定して削除させる指示である。
【0089】
利用者からの指示が入力点削除指示であると判定された場合(ステップS24-Yes)、候補算出部356は、入力点テーブルT2から指定された指定点又は補助点を削除し(ステップS24a)、ステップS14に進む。
【0090】
利用者からの指示が入力点削除指示でないと判定された場合(ステップS24-No)、候補算出部356は、指示が候補算出指示であるか否かを判定する(ステップS25)。候補算出指示は、指定点及び補助点に基づく区間線候補を算出させる指示である。
【0091】
利用者からの指示が候補算出指示であると判定された場合(ステップS25-Yes)、候補算出部356は、区画線候補を算出し(ステップS25a)、ステップS14に進む。この場合に、表示される表示用画像は、区画線の候補に関する情報の一例である。
【0092】
ステップS25aにおいて、候補算出部356は、同一の区画線番号が関連付けられた指定点及び補助点を入力点テーブルT2から抽出する。候補算出部356は、抽出した指定点及び補助点を点番号の順に線分で結んだ折れ線を区画線候補として算出する。候補算出部356は、算出した区画線候補を示す図形データを生成し、区画線番号を関連付けて図化データT3に追加することにより記憶部31に記憶する。候補算出部356は、入力点テーブルT2に含まれる区画線番号のそれぞれについて、上述のとおり区画線候補を算出して記憶する。
【0093】
利用者からの指示が候補算出指示でないと判定された場合(ステップS25-No)、候補算出部356は、指示が追加候補算出指示であるか否かを判定する(ステップS26)。追加候補算出指示は、算出された区画線候補に基づいて、内挿又は外挿により新たに区画線候補を算出させる指示である。追加候補算出指示は、内挿又は外挿に用いる二つの区画線候補、算出する区画線候補の本数、内挿又は外挿のいずれにより区画線候補を算出するかを示す情報、及び、内挿の場合の内分比又は外挿の場合の外分比を指定する。
【0094】
利用者からの指示が追加候補算出指示であると判定された場合(ステップS26-Yes)、候補算出部356は、二つの区画線候補に基づいて、内挿又は外挿により区画線候補を算出し(ステップS26a)、ステップS14に進む。
【0095】
ステップS26aにおいて、候補算出部356は、内挿又は外挿に用いる二つの区画線候補(以下、それぞれ第1区画線候補及び第2区画線候補と称する。)の区画線番号に関連付けられた指定点及び補助点を入力点テーブルT2から抽出する。候補算出部356は、第1区画線候補の指定点及び補助点のそれぞれについて、各指定点及び各補助点に最も近い第2区画線候補の指定点又は補助点を、対応する第2区画線候補の指定点及び補助点として特定する。候補算出部356は、追加候補算出指示による指定に従って、第1区画線候補の指定点及び補助点と、対応する第2区画線の指定点又は補助点を、指定された内分比又は外分比で内分又は外分する一つ以上の点を算出する。候補算出部356は、算出された点を結ぶ折れ線を新たな区画線候補として算出して、図化データT3に追加することにより記憶する。
【0096】
道路には、車道外側線、中央線及び車線区画線等の三つ以上の区画線が平行して標示されている場合がある。このような場合に、候補算出部356は、二つの区画線候補に平行する新たな区画線候補を自動で算出することにより、利用者の作業量を低減させる。
【0097】
利用者からの指示が追加候補算出指示でないと判定された場合(ステップS26-No)、候補算出部356は、指示が表示条件変更指示であるか否かを判定する(ステップS27)。表示条件変更指示は、ステップS13で設定された表示条件を変更させる指示である。利用者からの指示が表示条件変更指示であると判定された場合(ステップS27-Yes)、条件設定部353は変更された表示条件を記憶部31に記憶させて(ステップS27a)、ステップS14に進む。
【0098】
利用者からの指示が表示条件変更指示でないと判定された場合(ステップS27-No)、候補算出部356は、指示が出力指示であるか否かを判定する(ステップS28)。指示が出力指示でないと判定された場合(ステップS28-No)、ステップS14に進む。
【0099】
利用者からの指示が出力指示であると判定された場合(ステップS28-Yes)、出力部357は、図化データを出力し(ステップS29)、図化処理を終了する。出力部357は、図化データT3を記憶部31から取得し、通信部32を介して外部装置4に送信することにより出力する。図化データは、区画線の候補に関する情報の一例である。
【0100】
ステップS29において、出力部357は、図化データT3に含まれる区画線候補を、指定点及び補助点を通るスプライン曲線の図形データに変換して出力する。スプライン曲線に代えて、ベジェ曲線又は最小二乗法若しくは回帰分析により多項式近似された曲線が用いられてもよい。また、出力部357は、区画線候補を、指定点及び補助点の一部のみを通る曲線に変換してもよい。例えば、出力部357は、区画線候補を、指定点を通り補助点を通らないBスプライン曲線に変換して出力してもよい。このように、区画線候補が折れ線から曲線に変換されることにより、区画線候補の形状が現実の区画線に近い形状となるため、区画線を高精度に図化することができる。
【0101】
以上説明したように、図化装置3において、候補算出部365は、軌跡から、指定点から軌跡までの距離に基づく距離範囲に補助点を設定し、指定点及び補助点に基づいて区画線候補を算出する。これにより、図化装置3は、区画線を高精度に図化することを可能とする。
【0102】
また、候補算出部365は、道路画像を含む表示用画像を表示して、利用者によって指定された点を指定点として記憶する。これにより、図化装置3は、利用者が表示用画像を見ながら指定点を効率的に指定することを可能とする。
【0103】
また、候補算出部365は、記憶部31に記憶されている区画線の候補のうちの二つの候補を用いて、内挿又は外挿により新たな区画線候補を算出する。これにより、図化装置3は、三つ以上の区画線がある道路において利用者の作業量を低減させることを可能とする。
【0104】
また、図化装置3において、表示用画像生成部354は、区画線に基づいて基準線を設定し、区画線候補が基準線の延伸方向に縮小されるように図化データを変換することにより短縮画像を生成する。これにより、図化装置3は、利用者が指定点を効率的に指定することを可能とする。
【0105】
また、表示用画像生成部354は、色付き点群の正射影である道路画像の座標系を基準線の延伸方向に縮小することにより短縮画像を生成する。これにより、図化装置3は、縮小された道路画像を利用者が見ながら指定点を効率的に指定することを可能とする。
【0106】
また、表示用画像生成部354は、図化データにおいて道路の横断方向に要求される精度に対する道路の縦断方向に要求される精度の比を短縮率として座標系の縮小を行う。これにより、図化装置3は、図化データに要求される精度に基づいて区画線を図化することを可能とする。
【0107】
図化装置3の実施形態は上述した例に限られない。図化装置3には、次に述べるような各種の変形例が適用されてもよい。
【0108】
上述した例では、色付き点群データに含まれる各点にはRGB値のような画素値が関連付けられるものとしたが、このような例に限られない。色付き点群データに含まれる各点には、レーザ計測器によって取得される反射光の輝度値が関連付けられてもよい。この場合、図化処理のステップS12において、道路画像生成部352は、各画素に輝度値が関連付けられたモノクロの道路画像を生成する。
【0109】
上述した例では、道路画像は正射影画像であるものとしたが、このような例に限られない。道路画像として正射影前の透視投影画像も用いることができ、この場合、図化処理のステップS12において、道路画像生成部352は、正射影画像及び透視投影画像のいずれか一方又は両方を道路画像として生成する。正射影画像及び透視投影画像の両方が生成された場合、ステップS15において、表示処理部355は、利用者の選択に応じて正射影画像又は透視投影画像を含む表示用画像を表示してもよい。なお、透視投影画像に対しては、縮尺別の道路画像および表示モードによる切り替えは不要である。
【0110】
上述した例では、区画線候補は候補算出部356によって入力点を通る折れ線として算出され、出力部357によって曲線に変換されるものとしたが、このような例に限られない。区画線候補は、候補算出部356によって曲線として算出されてもよい。これにより、表示用画像において区画線候補が現実の区画線に近い形で表示されるため、指定点が適切な精度で指定されているか否かを利用者が判断することが容易になる。
【0111】
この場合、図化データT3において、各区画線候補には曲線のパラメータがさらに関連付けられる。また、この場合、図化処理のステップS14bにおいて、表示用画像生成部354は、次のとおり基準線の傾きを算出する。表示用画像生成部354は、曲線である区画線候補を基準線に設定する。表示用画像生成部354は、基準線の上に所定の間隔で入力点を設定する。表示用画像生成部354は、設定した入力点のうち、表示対象領域の中心点から最も近い入力点を特定する。表示用画像生成部354は、特定した入力点における基準線の接線の傾きを基準線の傾きとして算出する。特定した入力点における基準線の接線の傾きは、曲線のパラメータに基づいて算出されてもよく、基準線の画像にハフ変換等の画像処理技術を適用することによって算出されてもよい。
【0112】
上述した例では、軌跡は車両位置を結ぶ折れ線であるものとしたが、このような例に限られない。軌跡は、車両位置を通る曲線であるものとしてもよい。この場合、図化処理のステップS23aにおいて、候補算出部356は、次のとおり補助点を算出する。
【0113】
図11は、軌跡が曲線である場合の補助点の算出の例について説明するための模式図である。図11に示す例では、候補算出部356は、相互に隣接する二つの指定点に基づいて軌跡上の区間を特定し、特定した区間に含まれる車両位置のそれぞれに対応する補助点を算出する。
【0114】
候補算出部356は、入力点テーブルT2に含まれる指定点のうちから相互に隣接する二つの指定点P1及びP2を特定し、車両位置C1、C2、C3及びC4を含む軌跡と、指定点P1及びP2とを取得する。候補算出部356は、軌跡の接線と直交し、かつ、取得した指定点を通る直線を算出し、指定点から軌跡の接線までの距離を算出する。図11に示す例では、候補算出部356は、軌跡の接線と直交し、かつ、指定点P1を通る直線を算出し、指定点P1から軌跡の接線までの距離J1を算出する。同様に、候補算出部356は、指定点P2を通る直線を算出し、指定点P2から軌跡の接線までの距離J2を算出する。
【0115】
続いて、候補算出部356は、各車両位置において軌跡の接線と直交する直線を算出し、算出した直線上に、軌跡から、各指定点から軌跡までの距離に基づく距離範囲に補助点Qを設定する。例えば、候補算出部356は、軌跡上で二つの指定点に対応する対応点V1,V2間の軌跡の長さに対する、一方の指定点に対応する対応点V1から各車両位置までの軌跡の長さの比を重み係数として算出する。候補算出部356は、軌跡から一方の指定点までの距離を基準として、軌跡から二つの指定点までの各距離の差に、その重み係数を乗じた値を加算することにより、軌跡から各車両位置に対応する補助点までの距離を算出する。図11に示す例では、軌跡から車両位置C2及びC3に対応する補助点までの距離D2及びD3は、それぞれ、次の式で表される。
【0116】
【数6】
【数7】
【0117】
すなわち、図11に示す例では、各補助点の軌跡からの距離は、指定点P1から軌跡までの距離J1と指定点P2から軌跡までの距離J2との間の距離範囲に含まれる。
【0118】
なお、図11に示した例では、候補算出部356は、図10(A)に示した例と同様に、各車両位置に対応する補助点を算出したが、このような例に限られない。候補算出部356は、図10(B)に示した例と同様に、軌跡において隣接する車両位置の中点に対応する補助点を算出してもよい。また、図10及び図11に示した例では指定点P1を基準とし端点(対応点)V1から任意点までの距離を用いて重み係数を算出したが、候補算出部356は、指定点P2を基準として端点(対応点)V2から任意点までの距離を用いて重み係数を算出してもよい。
【0119】
上述した例では、ステップS14において、表示用画像生成部354は、短縮表示モード及び非短縮表示モードのいずれかで表示用画像を生成可能であるものとしたが、このような例に限られない。表示用画像生成部354は、さらに、基準線を直線に変換し、かつ、直線を延伸方向に縮小する座標変換を道路画像及び図化データに適用して表示用画像を生成する直線化表示モードで表示用画像を生成可能としてもよい。なお、以降では、直線化表示モードにおいて生成される表示用画像を直線化画像と称することがある。
【0120】
図12(A)は、直線化表示モードにおける表示対象領域を、設定された表示条件である中心位置C、ウィンドウWの幅及び高さ、縮尺E、短縮率Fに基づいて設定する例について説明するための模式図である。なお、図12(A)では区画線候補が曲線であるものとして図示されているが、折れ線である場合も表示対象領域が同様に設定される。
【0121】
表示用画像生成部354は、中心位置Cの近傍の区画線候補Lを基準線に設定し、中心位置Cから基準線に下ろした垂線を算出する。表示用画像生成部354は、算出した垂線と基準線との交点から基準線の前後それぞれに長さ(W3÷2)だけ離れた点を特定する。縮尺Eの道路画像における長さW3は、ウィンドウWの幅を短縮率Fで除した値である。表示用画像生成部354は、特定した点を端点とする基準線上の区間において、基準線から中心位置Cの側に距離α以内、又は基準線から中心位置Cの反対側に距離β以内である帯状の領域を表示対象領域A3として設定する。距離αは(H3÷2+D)であり、距離βは(H3÷2-D)である。ここで、縮尺Eの道路画像における高さH3はウィンドウWの高さに等しい値であり、距離Dは中心位置Cから基準線までの距離である。
【0122】
表示用画像生成部354は、縮尺Eの道路画像から、表示対象領域A3に含まれる部分を抽出し、基準線を直線に変換し、かつ、直線を延伸方向に縮小する座標変換(以下、直線化処理と称する。)を適用する。また、表示用画像生成部354は、表示対象領域A3に含まれる入力点のデータを入力点テーブルT2から抽出し、直線化処理を適用する。また、表示用画像生成部354は、表示対象領域A3に含まれる区画線候補を図化データT3から抽出し、直線化処理を適用する。
【0123】
図12(B)は、直線化処理について説明するための模式図である。表示用画像生成部354は、抽出した道路画像の各画素を変換対象Sとして、各変換対象Sについて次のとおり座標変換を適用する。表示用画像生成部354は、基準線と変換対象Sから基準線に下ろした垂線との交点を算出し、基準線の区間の始端から交点までの基準線の長さγと、変換対象Sから交点までの距離δを算出する。表示用画像生成部354は、幅(W3×F)及び高さH3を有する矩形のウィンドウにおいて、ウィンドウの左端からの距離が(γ×F)であり、ウィンドウの上端からの距離が(β+δ)である点を、変換対象Sの変換後の座標として設定する。なお、この直線化処理によって、基準線は、矩形のウィンドウの上辺から距離βだけ離れた上辺と平行な直線に変換されたことになる。
【0124】
表示用画像生成部354は、抽出された道路画像の各画素について変換後の座標を算出し、算出された座標の画素に変換前の各画素の画素値を設定する。なお、複数の画素の変換後の座標が同一座標となる場合には、表示用画像生成部354は、その複数の画素の画素値の平均値を変換後の画素値として設定する。また、表示用画像生成部354は、抽出された入力点及び区画線候補を構成する各点について変換後の座標を算出し、算出された座標に入力点及び区画線候補を示す図形を描画する。このようにして、表示用画像生成部354は直線化画像を生成する。
【0125】
このように、直線化表示モードにおいて、表示用画像生成部354は、基準線を直線化する座標変換を適用して表示用画像を生成する。これにより、道路の曲率が大きい場合であっても広い範囲の道路を一度に表示することができるため、利用者は、広い範囲の区画線について指定点を入力することができ、作業効率が高められる。
【0126】
なお、直線化表示モードにおいても、表示用画像生成部354は、短縮表示モードと同様に、複数の区画線によって区画される領域の中央線又は車両の軌跡を基準線に設定してもよい。また、区画線候補又は軌跡が折れ線である場合には、表示用画像生成部354は、折れ線を構成する点を結ぶ曲線を生成し、その曲線を基準線に設定してもよい。
【0127】
また、直線化表示モードにおいて基準線の曲率が所定値以上である場合には、表示用画像生成部354は、基準線の曲率を所定値まで減少させた曲線を算出し、算出した曲線を基準線として直線化画像を生成してもよい。基準線の曲率が大きい場合、道路画像における単一の画素の画素値が直線化画像において複数の画素に関連付けられるため、利用者が道路の状況を把握しにくくなる場合がある。曲率を緩和した曲線を基準線とすることにより、利用者が道路の状況を把握しにくくなることを防止しつつ、利用者の作業効率をある程度高めることができる。
【0128】
上述した例では、ステップS22aにおいて、候補算出部356は、利用者が指定した区画線上の点を指定点として追加するものとしたが、このような例に限られない。候補算出部356は、道路画像における画素値に基づいて利用者が指定した道路上の点の近傍の区画線上の点を指定点として追加してもよい。
【0129】
図13は、指定点の算出の例について説明するための模式図である。候補算出部356は、軌跡を構成する線分のうち、利用者が指定した道路上の点Uから最も近い線分M23を特定し、点Uから線分M23に下ろした垂線NUを算出する。候補算出部356は、道路画像において、点Uからの距離が所定距離以内であり、かつ、算出した垂線NU上に位置する画素を抽出する。
【0130】
候補算出部356は、抽出した画素のうち、区画線の画像特徴を有する点を指定点として追加する。例えば、候補算出部356は、輝度が所定値以上である画素を区画線上の区間I1の画素として特定し、区間I1の中央に位置する画素に対応する点を区画線上の点Pとして特定し、指定点として追加する。一般に、区画線は白色の塗料で描画されるから、図13に示す例では、垂線NU上の画素のうち、区画線上の区間I1の画素は、区画線外の区間I2の画素よりも大きい画素値を有する。したがって、候補算出部356は、輝度が所定値以上である区間の中央に位置する画素に対応する点を特定することにより、区画線の中央付近に位置する点を指定点として追加することができる。
【0131】
候補算出部356は、垂線N上の画素のうちから、隣接する画素との間の輝度の差の大きさが所定値以上であるエッジ画素を特定し、特定したエッジ画素の間の画素を区間I1の画素として特定してもよい。一般に、区間I1の画素は区画線の色である白色に近い色を示し、区間I2の画素は道路の路面の色である黒色に近い色を示すから、エッジ画素は区間I1と区間I2の境界を示す。したがって、候補算出部356は、エッジ画素の中央に位置する画素に対応する点を特定することにより、区画線の中央付近に位置する点を指定点として追加することができる。
【0132】
また、候補算出部356は、垂線NU上の画素のうちから、入力点テーブルT2に含まれる指定点に類似する画像特徴を有する点を区画線上の点として特定してもよい。図13に示す例では、候補算出部356は、利用者が指定した道路上の点Uから最も近い指定点P0を入力点テーブルT2から抽出する。候補算出部356は、抽出した指定点P0の位置の画素の特徴量を抽出する。特徴量は、その画素を中心とする所定範囲内の画素の画素値に基づいて算出される任意の画像特徴量であり、例えばHOG(Histograms of Oriented Gradients)特徴量である。候補算出部356は、垂線NU上の画素のうち、特徴量の値が指定点P0の特徴量と近くなるような画素に対応する点を区画線上の点Pとして特定する。記憶された指定点のうち利用者が指定した点の近傍の指定点の位置の画素の特徴量を用いることにより、候補算出部356は、区画線や道路の路面の色が局所的に異なるような場合でも、適切に区画線上の点を指定点として追加することができる。
【0133】
このように、候補算出部356は、利用者が指定した道路上の点から軌跡に下ろした垂線上において区画線上の点を特定する。候補算出部356は、特定した点を指定点として入力点テーブルT2に追加する。利用者が道路上の点を指定することにより、利用者が指定した点と道路の延伸方向における位置が略同一の区画線上の点が指定点として追加されるため、利用者は正確に区画線上の点を指定する必要がなくなり、作業効率が向上する。
【0134】
上述した例では、ステップS23aにおいて、候補算出部356は、軌跡からの距離のみに基づいて補助点を設定するものとしたが、このような例に限られない。候補算出部356は、さらに指定点の位置の画素の特徴に基づいて補助点を設定してもよい。例えば、候補算出部356は、軌跡の区間の端点を定める二つの指定点までの各距離の間の範囲を距離範囲として設定する。候補算出部356は、軌跡から距離範囲内に位置し、かつ、指定点に類似する画像特徴を有する点を補助点として設定する。
【0135】
図14は、補助点の算出の他の例について説明するための模式図である。
【0136】
候補算出部356は、相互に隣接する指定点P1及びP2を特定し、車両位置C1、C2、C3及びC4を含む軌跡と、指定点P1及びP2とを取得する。候補算出部356は、軌跡を構成する線分のうち、各指定点に最も近い線分を特定し、各指定点から特定した線分までの距離を算出する。図14に示す例では、候補算出部356は、指定点P1に最も近い線分として車両位置C1とC2とを結ぶ線分M12を特定し、指定点P1から特定した線分までの距離J1を算出する。同様に、候補算出部356は、指定点P2に最も近い線分として車両位置C3とC4とを結ぶ線分M34を特定し、指定点P2から特定した線分までの距離J2を算出する。
【0137】
候補算出部356は、算出した距離J1及びJ2のうち、大きい方を最大値、小さい方を最小値とする距離範囲Iを設定する。図14に示す例では、距離範囲Iは、最小値を距離J1とし、最大値を距離J2とする範囲である。候補算出部356は、図9(A)に示した例と同様に、車両位置C2及びC3のそれぞれについて、各車両位置の前後に隣接する車両位置を結ぶ直線と直交する直線N2及びN3を算出する。候補算出部356は、算出した直線N2及びN3上に位置し、かつ、軌跡から距離範囲Iに位置する画素を抽出する。
【0138】
候補算出部356は、指定点P1及びP2の位置の画素及び抽出した画素のそれぞれについて、特徴量を算出する。候補算出部356は、抽出した画素の特徴量と各指定点の位置の画素の特徴量との類似度を算出する。類似度は、例えば、特徴量を示す特徴ベクトル間の距離に基づいて算出される。候補算出部356は、直線N2及びN3のそれぞれについて、指定点に類似する画像特徴を有する点を特定し、特定した点を補助点に設定する。例えば、候補算出部356は、直線N2上に位置し、かつ、軌跡から距離範囲Iに含まれる画素のうち、指定点P1との間の類似度と指定点P2との間の類似度との合計値が最も大きい画素を特定する。候補算出部356は、特定した画素の位置の点を指定点に類似する画像特徴を有する点として特定し、補助点に設定する。
【0139】
このように、候補算出部356は、指定点に類似する画像特徴を有する点を補助点として設定する。これにより、軌跡と区画線との距離が局所的に変化するような場合でも、道路画像に基づいて高精度に補助点を設定し、区画線を図化することができる。
【0140】
また、図化データとして区画線を例示したが、図化データはさらに速度標示等の他の路面標示の座標値および形状を表すデータ、区画線および/または路面標示のデータに関連付けられた属性情報(数値や文字)等を含んでもよい。記憶部31が操作部34を介して利用者により入力された路面標示のデータや属性情報を記憶し、表示用画像生成部354が短縮画像に路面標示のデータに基づく図形やテキスト化した属性情報をさらに描画することにより、これらの入力作業や点検作業を効率よく行うことが可能となる。
【0141】
上述した例では、指定点及び補助点は緯度、経度及び高度を有する三次元データであるものとしたが、このような例に限られない。指定点及び補助点は、緯度及び経度を有し、高度を有しない二次元データであってもよい。この場合、ステップS22aにおいて、候補算出部356は、指定点の高度を点群テーブルT1から取得しない。また、ステップS23aにおいて、候補算出部356は、軌跡を構成する車両位置の緯度及び経度と、二次元データである指定点とに基づいて、二次元データである補助点を設定する。そして、ステップS25a及びステップS26aにおいて、候補算出部356は、指定点及び補助点の高度を点群テーブルT1から取得し、三次元データである区画線候補を算出する。これにより、指定点及び補助点の算出における演算負荷が低減する
【0142】
当業者は、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0143】
3 図化装置
31 記憶部
32 通信部
33 表示部
34 操作部
351 取得部
352 道路画像生成部
353 条件設定部
354 表示用画像生成部
355 表示処理部
356 候補算出部
357 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14