(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056567
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】多層配線基板、その製造方法及びその設計方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20230413BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/46 Z
H05K1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165837
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】狩野 典子
(72)【発明者】
【氏名】石井 智之
【テーマコード(参考)】
5E316
5E338
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA15
5E316AA32
5E316AA43
5E316BB02
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(57)【要約】
【課題】絶縁樹脂材料よりも誘電正接の低いコア基板に伝送線路を埋設し、誘電損失を抑え、界面の表面粗さを小さくすることにより表皮効果における導体損失を低減する。
【解決手段】本発明の多層配線基板は、コア基板(1)の一方の面に第1絶縁層(12)を有し、他方の面に第2絶縁層(20)を有し、前記コア基板と前記第2絶縁層の間の面に沿って延伸する第2の配線(22)を有する。そして、前記第2の配線は、少なくともその一部が前記コア基板の第2面に沿って延伸する凹部に埋設されている。
これを製造するためには、コア基板へレーザー改質を行い、貫通孔の製造工程と同時にエッチング処理により埋設配線を埋め込むための凹部を形成する。なお、埋設配線の表面は粗さを小さくすることにより、特性インピーダンスの整合がとりやすく、伝送特性の向上が可能である。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び第2面を有するコア基板と
前記コア基板の前記第1面の上方に第1の絶縁樹脂層を有し、
前記コア基板の前記第2面の下方に第2の絶縁樹脂層を有し、
前記コア基板と前記第2の絶縁樹脂層の間の面に沿って延伸する第2の配線を有し、
前記第2の配線は、少なくともその一部が前記コア基板の第2面に沿って延伸する凹部に埋設されている多層配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の多層配線基板において、
前記コア基板と前記第1の絶縁樹脂層の間の面に沿って延伸する第1の配線を有し、
前記第1の配線は、少なくともその一部が前記コア基板の第1面に沿って延伸する凹部に埋設されている多層配線基板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多層配線基板において、
前記凹部に埋設された配線は、前記コア基板との界面の表面粗さが二乗平均平方根粗さが10nm以上であって100nm以下であり、絶縁樹脂層との界面の表面粗さが100nm以上であって150nm以下である多層配線基板。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の多層配線基板において、
前記コア基板の面に沿って延伸する前記凹部の深さを、表皮深さと表面粗さの和より大きく定めた多層配線基板。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の多層配線基板において、
前記コア基板は、前記第1面及び前記第2面を貫通する貫通電極を有し、
前記第1面の上方及び/または前記第2面の下方には、ビルドアップ層を有する
多層配線基板。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法であって、
前記コア基板は、前記第1面から前記第2面に至る貫通孔を有し、
前記貫通孔の形成と、前記第2面に沿って延伸する凹部の形成は、
前記コア基板にレーザ照射によって改質部を形成する工程と
前記コア基板の前記第2面をエッチングする工程
によって、同時に形成されることを特徴とする多層配線基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の多層配線基板の設計方法であって、
前記コア基板の面に沿って延伸する前記凹部の深さの下限を、表皮深さと表面粗さの和より大きく定める
多層配線基板の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板、その製造方法及びその設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル通信機器の高性能化が進展し、これらの機器に用いられる電子部品や多層配線基板について、さらなる高密度化、小型化が求められている。このため、電子部品やこれを搭載する多層配線基板については、基板表面を占有する部品を低減し、小型・低背化が求められ、同時に高周波特性についての要求レベルも高まっている。
【0003】
これまで、モバイル通信機器に用いる多層配線基板としては、セラミック、ガラス基板、絶縁性有機樹脂基板、シリコン、FO-WLP(Fan Out Wafer Level Package)などが採用されている。これらの中で、ガラス材料は平坦・平滑性に優れ、電気的絶縁性も高いため、5G以降のミリ波が用いられる高周波用の多層配線基板として大きな需要が見込まれている。
【0004】
このため、多層配線基板のコア基板としてガラス材料を採用し、コア基板の表裏面に配線層を形成するとともに、コア基板に貫通電極を形成して、コア基板の表裏面を接続した多層配線基板が採用されている。そして、こうした多層配線基板は、その表裏面にさらに導電層と絶縁層を設け、サブトラクティブ法やセミアディティブ法でそれぞれのパターン化が行われている。
【0005】
一方、配線の中でも、高周波信号を取り扱う伝送線路については、伝送損失を小さくすることが求められている。
伝送線路としての電気特性を向上させるためには、電気特性の良好な誘電正接の低いコア材料や有機材料を選定するとともに、線路材料の導体表面を平滑にし、樹脂との接触面の導体表面粗さを小さくして表皮効果による導体損失を低減するなどの対策が講じられている。
【0006】
数GHzを超える高周波帯域においては、表皮効果により配線を流れる電流が伝送線路の表面に集中するため、伝送線路として、例えば、従前の粗化処理を施した銅箔を用いた場合には、粗化処理部における伝送損失が大きくなり、伝送特性が悪化する不具合が発生する。
このため、例えば、特許文献1においては、誘電体層の表裏面に金属箔パターンを形成して多層プリント配線板を製造するにあたり、伝送路の損失を低減するために、金属箔の表面粗さを低減して、高周波特性を改善する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、伝送路の損失を低減するために金属箔の表面粗さを低減し、誘電体層と金属箔との間に接着剤層を設けたとしても、金属箔の表面粗さが小さいことによる密着強度の低下は避けられない。さらに、インピーダンス整合のためには、誘電体層と接着剤層の誘電率を考慮する必要があり、設計の自由度が必ずしも大きくはない。
また、電気的特性に優れたガラス材料をコア基板として採用しても、従来の多層配線基板では、配線はコア基板の表裏面上に形成されているため、形成される配線の断面が矩形の場合、上下左右の4面の表面のうち、底面1面でガラスと接し、他の3面はガラス以外の有機材料と接することとなる。このような配線を高周波信号の伝送線路として用いた場合には、特性インピーダンスを整合させたとしても、断面の3面をガラス以外の有機材料が囲んでいるため、ガラスの誘電率・誘電正接といった優れた電気特性を十分に活かすことが難しい。
そこで、本発明では、コア基板を備えた多層配線基板において、特性インピーダンスを整合しやすく、かつガラスの誘電率・誘電正接といった電気特性を十分に活かすことに適した配線を備えた多層配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、代表的な本発明の多層配線基板の一つは、第1面及び第2面を有するコア基板と、前記コア基板の前記第1面の上方に第1の絶縁樹脂層を有し、前記コア基板の前記第2面の下方に第2の絶縁樹脂層を有している。そして、前記コア基板と前記第2の絶縁樹脂層の間の面に沿って延伸する第2の配線を有している。そして、第2の配線の少なくともその一部は前記コア基板の第2面に沿って延伸する凹部に埋設されている。
【0010】
また、代表的な本発明の多層配線基板の製造方法の一つは、前記コア基板の第2面に沿って延伸する凹部が、前記コア基板に貫通孔を製造する工程と同時に作成され、前記コア基板にレーザ改質を行う工程を用いて製造される。
【0011】
本発明によれば、コア基板を備えた多層配線基板において、特性インピーダンスを整合しやすく、かつガラスの誘電率・誘電正接といった電気特性を十分に活かすことに適した配線を備えた多層配線基板を提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施をするための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、コア基板への改質部形成を表す断面図である。
【
図2A】
図2Aは、フッ酸耐性膜を片面のみに形成した断面図である。
【
図2B】
図2Bは、フッ酸耐性膜を両面に形成した断面図である。
【
図3】
図3は、第1面のシード層を形成した断面図である。
【
図4】
図4は、フォトレジストを形成した断面図である。
【
図5】
図5は、電解めっき工程を行った断面図である。
【
図6】
図6は、フォトレジストの除去後、シード層、フッ酸耐性膜の除去を行なった断面図である。
【
図7】
図7は、シード層の除去工程を行なった断面図である。
【
図8】
図8は、誘電体およびシード層の形成後に、MIMキャパシタの上電極を電解めっきで形成した断面図である。
【
図9】
図9は、MIMキャパシタが完成した断面図である。
【
図10】
図10は、支持体としてのガラス製のキャリア基板13を貼り合わせた断面図である。
【
図11】
図11は、貫通孔および埋設配線溝を形成した断面図である。
【
図12】
図12は、シード層にフォトレジストパターンを形成した断面図である。
【
図13】
図13は、シード層に給電し、貫通電極を形成した断面図である。
【
図14】
図14は、貫通電極の空洞部に絶縁層を形成した断面図である。
【
図17】
図17は、第1の実施形態の多層配線基板の断面図である。
【
図18】
図18は、第1の実施形態と比較例の伝送特性を比較した透過特性のグラフである。
【
図19】
図19は、第1の実施形態と比較例の伝送特性を比較した反射特性のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0014】
なお、図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0015】
さらに、本開示において、「面」とは、板状部材の面のみならず、板状部材に含まれる層について、板状部材の面と略平行な層の界面も指すことがある。また、「上面」、「下面」とは、板状部材や板状部材に含まれる層を図示した場合の、図面上の上方又は下方に示される面を意味する。
【0016】
また、「側面」とは、板状部材や板状部材に含まれる層における面や層の厚みの部分を意味する。さらに、面の一部及び側面を合わせて「端部」ということがある。
また、「上方」とは、板状部材又は層を水平に載置した場合の垂直上方の方向を意味する。さらに、「上方」及びこれと反対の「下方」については、これらを「Z軸プラス方向」、「Z軸マイナス方向」ということがあり、水平方向については、「X軸方向」、「Y軸方向」ということがある。
【0017】
また、「平面形状」、「平面視」とは、上方から面又は層を視認した場合の形状を意味する。さらに、「断面形状」、「断面視」とは、板状部材又は層を特定の方向で切断した場合の水平方向から視認した場合の形状を意味する。
さらに、「中心部」とは、面又は層の周辺部ではない中心部を意味する。そして、「中心方向」とは、面又は層の周辺部から面又は層の平面形状における中心に向かう方向を意味する。
【0018】
<従来例>
まず、
図16を参照して、従来例の多層配線基板について説明する。
図16は、ガラスをコア基板1として採用した多層配線基板の断面図である。この従来例においては、コア基板1の上面である第1面1a及び下面である第2面1bにそれぞれ第1配線層21及び第2配線層22が形成されており、第1面1aと第2面1bとの間には貫通孔14が形成されている。そして、貫通孔14の側壁には貫通電極32を形成する導電膜が形成されている。さらに、第1配線層21の上面には第1絶縁層12が形成されており、第1絶縁層の上面には第3配線層23が形成されている。
一方、第2配線層22の下面には、第2絶縁層20が形成されており、第2絶縁層の20の下面には、第4絶縁層24が形成されている。
また、コア基板と前記第2の絶縁樹脂層の間の面には、配線31が形成されており、配線31は、その断面のコア基板に接する水平面のみでコア基板に接している。
このため、配線31は、断面形状が矩形の場合、上下左右の4面の表面のうち、底面1面でガラスと接し、他の3面はガラス以外の有機材料と接することとなる。このような配線を高周波信号の伝送線路として用いようとする場合、特性インピーダンスを整合させたとしても、断面の3面をガラス以外の有機材料が囲むため、ガラスの誘電率・誘電正接といった電気特性を十分に活かすことが難しい。
【0019】
<実施形態1>
次に、
図17を参照して、本開示の実施形態に係る多層配線基板について説明する。
図17は、本開示の実施形態1に係る多層配線基板30の構成の一例を示す断面図である。実施形態1は、
図16を用いて説明した従来例と比較すると、コア基板1が、その第2面1bに沿って延伸する凹部(埋設配線溝15:図示していない)を有しており、当該凹部に埋設配線19が設けられている点で異なる。
以下の説明において、上述の従来例と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0020】
実施形態1では、配線をコア基板1に埋設させた埋設配線19とすることで、第2絶縁層が被着されるコア基板の表面が平坦化され、配線の粗密に関わらず、第2絶縁層及び第4配線層も平坦に形成できる。このため、第2絶縁層の厚さのばらつきに起因する、特性インピーダンスのずれや反射成分の増加などを抑えて、多層配線基板の精度を向上することが可能となる。また、コア基板に埋込配線を形成することで、埋込配線自体の寸法精度を向上させることが可能となる。具体的には、コア基板内の埋込配線を形成する位置、配線幅、配線層厚、ガラス厚、樹脂厚を精度よく制御することができる。
このため、特性インピーダンスの整合をとる際も、ガラスの誘電率、および埋設用に用いる樹脂の誘電率をもって、伝送線路のSパラメータにおける透過特性S21、および反射特性S11を正確に制御することができる。
【0021】
なお、
図17においては、埋設配線19は、コア基板1の下面である第2面1bにのみ形成しているが、埋設配線19は、コア基板1の両面、もしくは表裏の少なくとも一方の面に形成することとしてもよい。
すなわち、本実施形態では、埋設配線19は、少なくとも1つの配線をコア基板1の表面近傍の内部に水平方向に埋設し、埋設配線19の外周面が4面で構成されている場合には、少なくとも3面がコア基板1の界面に接していることを特徴としている。
【0022】
なお、埋設配線19の延伸方向に対して垂直方向の埋設配線19の断面の形状は矩形形状、台形形状、半円形状のいずれであってもよい。さらに、埋設配線19は、コア基板1の内部において、コア基板1との界面の表面粗さが10nm以上で100nm以下であり、絶縁樹脂との界面の表面粗さが100nm以上で150nm以下であってもよい。
このような表面粗さとすることにより、高周波用の伝送線路として使用可能であって、周辺部材との密着性も確保できることとなる。
【0023】
さらに、埋設配線19の底面の高さTLは、前記埋設配線の高さ方向において、コア基板の第2面側をZ=0とし、ガラスの高さをTとしたとき、配線の底面は300nm<TL<Tとし、複数の埋設配線が前記コア基板に形成されるとき、それぞれの配線のTLがこの間の数値であることが好ましい。
埋め込み配線の高さの下限値は、配線を高周波用の伝送線路として用いた場合の表皮深さ(skin depth)と表面粗さの和から算定することができる。例えば、銅の場合では、100GHzでの導電率は5.8×107S/mであり、表皮深さは約200nmとなるので、これに表面粗さ100nmを加えて、300nmと算定することができる。
【0024】
<実施形態2>
次に、
図15を参照して、実施形態2について説明する。
図15は、ビルドアップ層29を有し、この中にMIMキャパシタ11を内蔵した多層配線基板の断面図である。
実施形態2に係る高周波回路基板は、貫通孔14の側壁及び底面に導電膜を形成した貫通電極32を備えたコア基板1を用いて形成されている。また、ビルドアップ層29内には、上部電極、誘電体、下部電極からなるMIMキャパシタ11を有する。ここでMIMキャパシタ11は、モバイル機器などの無線通信に用いられるLC共振回路を構成する電子部品一部であり、容量性の受動部品である。
以降では、実施形態2に含まれる構成要素について、詳細に説明する。
【0025】
(コア基板)
コア基板1の材質は、電気絶縁性を有し、シリコンの熱膨張係数に近い材料が好ましい。このような材質として、例えば、ガラス、ガラスセラミックなどの無機材料を用いることができる。本実施形態2においては、1GHzを超える周波数帯域において70×10-4以下の損失係数(tanδ)を有する。特に有利には、40GHzの周波数において50×10-4以下の損失係数(tanδ)を有する。
実施形態2ではコア基板1として、ガラス基板を用いている。ガラス基板は、表面の平滑性と寸法安定性の点でコア基板として適している。
【0026】
なお、ガラス基板は、表面を当分野で一般的に行われている方法を用いてい処理されたものであってもよい。例えば、表面をフッ酸処理したものであってもよく、またコア基板1表面にシリコン処理を施したものであってもよい。
【0027】
(ビルドアップ層)
コア基板1の上下の厚さ方向(±z方向)の表面上に順次形成される配線層と絶縁層をまとめてビルドアップ層29と称する。ビルドアップ層29は、単層であってもよいし、複数層であってもよい。
図15では、表裏それぞれ2層の配線層を有するビルドアップ基板としたが、積層の数は任意に定めることができる。
コア基板1の表裏には、貫通孔14を導電化した貫通電極32を介して、第1配線層21と第2配線層22が接続されている。
第1配線層21には、第1絶縁層12が形成され、第1配線層21及び第2配線層22に積層工程を繰り返すことにより、両面多層配線基板とすることができる。
なお、ビルドアップ層は、必ずしもコア基板1の両面に形成する必要はなく、コア基板1の表裏のどちらかに第1配線層21を形成し、第1配線層21、貫通孔14、第3配線層23、第3絶縁層25を形成してもよい。つまり、片面積層としてもよく、コア基板1を中心に上下方向でシンメトリックであってもよいし、アシンメトリックでもよい。
【0028】
(導電材料)
配線層21、22、23、24、27、28に用いる導電材料は、銅、銀、すず、金、タングステン、導電性樹脂などを用いて形成することができる。好ましくは銅が用いられる。
なお、配線層21、22、23、24、27、28は当分野で、通常行われている方法により形成することができる。配線層の形成方法は、これらに限定されないが、サブトラクティブ法、セミアディティブ法、インクジェット法、スクリーン印刷、グラビアオフセット印刷を用いることができる。好ましくはセミアディティブ法である。
【0029】
(絶縁性材料)
絶縁層12、20、25、26は、当分野で通常用いられる絶縁性材料を用いて形成することができる。
具体的には、絶縁層12、20、25、26は、エポキシ樹脂系材料、エポキシアクリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂などを用いて形成することできる。これらの絶縁性材料は、充填剤を含んでもよい。本発明の絶縁性材料には線膨張係数が7~130ppm/Kのエポキシ配合樹脂が一般的に入手しやすく好ましい。
【0030】
(絶縁層形成)
また、絶縁層12、20、25、26の材料は液状であっても、フィルム状であってもよい。絶縁性材料が液状の場合、絶縁層12、20、25、26は、スピンコート法、ダイコータ法、カーテンコータ法、ルールコータ法、ドクターブレード法、スクリーン印刷などの当分野で一般的に行われている方法により形成することができる。絶縁性材料がフィルムの場合、例えば真空ラミネート法により絶縁層12、20、25、26を形成することができる。上記のように形成された絶縁層12、20、25、26は、加熱または光照射により硬化させてもよい。
【0031】
<多層配線基板の製造方法>
以下、
図1~
図13を参照して、本実施形態2に係る多層配線基板30の製造方法を説明する。
図1~
図13は、MIMキャパシタ11を有する多層配線基板30の製造工程の断面模式図であり、
図15が、ビルドアップ層29の製造工程を経た後の断面図である。
【0032】
(改質部の形成)
まず、
図1を参照して、コア基板1にレーザによる改質部2を形成する工程を説明する。
図1において、改質部2は、コア基板1の第2面1bから第1面1aに対し鉛直となる方向に延びる線状若しくは棒状のエリアである。
上下層を導通するための貫通孔14を形成する場合は、第2面1bから第1面1aに到達する直前まで改質部を形成する。
また、埋設配線を形成する場合は、第2面1b側から埋設配線19の底面を形成する高さまでを基準として配線パターンをなぞるようにレーザを照射し、改質の形成を行う。
改質部2の深さは、薄板化する工程前のコア基板1の厚さTよりも短く設定される。
【0033】
(レーザ加工条件・波長)
改質部2を形成するためにはレーザ加工が用いられる。使用するレーザの波長は、535nm以下が好ましい。波長は、更に好ましくは355nm以上535nm以下の範囲である。波長が355nm未満ではレーザ出力を得ることが難しく安定的に改質部2の形成が難しくなる恐れがある。一方、波長入が535nmより大きくなると、照射スポットが大きくなり改質部2の形成が難しくなる。また、熱の影響により改質加工ではなく、アブレーション加工となり、マイクロクラックが発生し割れやすくなる。
【0034】
(レーザ加工条件・エネルギー)
レーザパルス幅はピコ秒からフェムト秒の範囲であることが望ましい、ナノ秒以上となると、1パルス当りのエネルギー量の制御が困難となり、マイクロクラックが発生し割れやすくなる。
レーザパルスのエネルギーは、コア基板1の材質や、どのような改質部2を形成するかに応じて好ましい値が選択される。一例では、5μJ以上150μJ以下の範囲である。
レーザパルスのエネルギーを増加させることで、それに比例するように改質部2の長さ(深さ)を長くすることが可能となる。
【0035】
(レーザの制御)
図1では、厚さ500μmの無アルカリガラスを用意し、超音波洗浄などで表面の汚染物を除去してコア基板1とする。その後、コア基板1に対し、第1面1a側からレーザ光を照射し、貫通孔14の起点となる改質部2を形成する。改質部2は、第2面1bから、例えば垂直方向に対向する第1面1aに向かって延在し、その端がコア基板1に留まるように、レーザ光量を調整する。
照射面に対して、レーザの焦点を垂直または、平行に走査することで所望の配線溝の改質部2も自在に形成することができる。
【0036】
(フッ酸耐性膜の形成)
次の工程では、コア基板1の第1面1aにフッ酸耐性膜3の形成を行う。前記フッ酸耐性膜3を形成する目的は、前記ガラスの改質部2をエッチングして、開口を形成する際のエッチング保護膜とするためである。
図2A及び
図2Bに示すように、コア基板1の第1面1aにスパッタ法などにより、フッ酸耐性膜3を10nm以上、500nm以下の範囲で形成する。
なお、ガラスコア基板の薄板化を行わない場合は、
図2Bのように第1面、第2面の両側に膜を形成し、フッ酸耐性膜をエッチングマスクとして利用し、フッ酸エッチングによって埋設配線溝15を形成することもできる。
【0037】
(フッ酸耐性膜の材料)
フッ酸耐性膜3の材料は、例えばクロム、ニッケル、ニッケルクロムから適宜選定する。これによりガラスが腐食することを抑制し、貫通孔の形状や寸法安定性を向上させることができる。本実施態様では、以降、フッ酸耐性膜3の材料としてクロムを採用した場合について説明する。
【0038】
(シード層の形成)
次に、
図3を参照して、フッ酸耐性膜3の上面にシード層を形成する工程を説明する。
図3で、フッ酸耐性膜3のクロム上にスパッタ法および無電解めっき法などによりシード層4となる銅皮膜を100nm以上、500nm以下の範囲で成膜する。
【0039】
(第1配線層の形成)
次に、
図4~
図6を参照して、第1配線層の形成工程を説明する。
図4では、コア基板1の第1面1aにフォトレジスト5をパターンニングする。一例として、昭和電工マテリアルズ社製のドライフォトレジストを用いて、第1面1a側にラミネートを行い、パターンを描画後、現像することによりシード層4を露出させる。
図5では、シード層4に給電し、2μm以上、10μm以下の厚さの電解銅のめっき層6の形成を行う。
その後、電解めっき後に不要になったフォトレジスト5の溶解剥離を行い、シード層4をエッチングし、更にクロムエッチング液を用いて、フッ酸耐性膜3を除去し、
図6に示すような第1配線層21となるフッ酸耐性膜3、シード層4、めっき層6からなる積層配線を形成する。
【0040】
次に
図7~9を参照して、MIM(metal-insulator-metal)キャパシタの形成工程を説明する。
図7は、第1面側に形成した第1配線層21に、誘電体7を形成し、さらにその上にシード層8を形成した状態を示している。
まず、誘電体7を第1面1aの面全体、第1配線層21上に、CVD成膜法にてSiNの誘電体の膜を100nmから1500nmで形成する。
さらにMIMキャパシタ11の上電極を形成する際のシード層8として、スパッタ製法にてチタン膜と、銅皮膜をおのおの50nm、300nmの成膜を行う。シード層8は、スパッタ法、および無電解めっき法により、銅皮膜を100nm以上、500nm以下で成膜してもよい。
誘電体7の層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザーアブレーション法、CVD法を採用することも可能であり、特に形成方法は限定されない。
【0041】
誘電体7の材料は、絶縁性、比誘電率の観点からアルミナ、シリカ、シリコンナイトライド、タンタルオキサイド、酸化チタン、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムから選択することが望ましい。これらの誘電体7の層の厚みは、10nm以上、5μm以下であることが望ましい。誘電体層の厚みが10nm未満の場合、絶縁性を保つことができずにキャパシタとしての機能が十分に発現しない。
また前記誘電体7の厚みが5μmを超えた場合、成膜時間がかかりすぎて量産性に欠けるばかりでなく、不要部分を除去する工程で、さらに時間がかかってしまう。より好ましくは、誘電体層の厚みが50nm以上、1μm以下である。
【0042】
次に、
図8を参照して、MIMキャパシタの上電極の形成工程を説明する。
図7で説明したように、誘電体7の上にシード層8を形成した後、ドライフィルムレジストをパターンニングし、現像し、上電極を形成する部分を露出する。
そして、シード層に給電し、5μm以上、10μm以下の範囲で電解銅めっきを行うと、
図8に示すめっき層10が形成される。
【0043】
次に、
図9に示すように、不要になったドライフィルムレジストを溶解剥離し、余分な部分をウェットエッチング法にて除去処理を行うと、MIMキャパシタ11が完成する。さらに必要な場合は、ドライエッチング法にて表面処理を行ってもよい。
【0044】
(キャパシタについて)
MIMキャパシタ11を形成したのち、
図10に示すように、第1配線層21を埋設するかたちで、第1絶縁層12を形成する。
本実施形態で説明したMIMキャパシタ11は、
図9に示すように、ガラス基板直上に、配線層3、4、6からなる下電極の導体パターンを形成し、かかる導体パターンの上に誘電体7を積層し、さらにその上に上電極となる配線層8、10を積層したものである。
下電極と上電極は、一般的にシード層と主導電層からなる多層構造を有する。MIMキャパシタ11の容量(キャパシタンス)は、下電極と重なる上電極の面積と、下電極と上電極との間隔、誘電体7の誘電率により決定される。また、MIMキャパシタ11は、コア基板1の第1面1aおよび第2面1bのいずれの側にも設けることができる。
【0045】
以下では、
図10~
図14を参照して貫通電極の形成及び本実施形態の多層配線基板の形成工程について説明する。
図10は、MIMキャパシタ11及び第1配線層21が作成されたコア基板1上に、第1絶縁層12を形成したのち、第1面1a側、第1絶縁層12上の界面に仮貼り用の接着材13aを介して、支持体としてのガラス製のキャリア基板13を貼り合わせた状態を示している。
キャリア基板13の厚さは、薄膜化後の搬送性を鑑みて、0.5mm以上、1.5mm以下の範囲が望ましいが、キャリア基板13の厚さは、コア基板1の厚さによって適宜設定してよい。
また、支持体としてガラス製キャリア基板13を例示しているが、支持体はガラス製ではなく、金属製や樹脂製などでもよい。
【0046】
(コア基板の薄板化と貫通孔形成、埋設配線溝形成)
次に、
図11を参照して、コア基板1の薄板化と貫通孔、埋設配線溝の形成工程について説明する。コア基板の第2面1bをフッ化水素溶液に浸漬することによって、コア基板の薄板化と貫通孔形成、埋設配線溝形成とを同時に行うことができる。この場合のフッ化水素溶液によるエッチング量は、ガラスデバイスの厚さに応じて適宜設定することができる。例えば、薄化前に用いたコア基板1の厚さTが400μmの場合、そのエッチング量は100μm以上、350μm以下の範囲であることが望ましい。薄板化後のコア基板1の厚さT1は、50μm以上、300μm以下が好ましい。
本実施形態の製造方法によれば、コア基板1の一方の面である第1面1a上に配線を形成した後に、貫通孔14及び第2面に沿って延伸する凹部の形成を行うので、第1面1a上の配線等のパターン形成は、安定した状態で精度よく行うことができる。
また、貫通孔14及び埋設配線溝(第2面に沿って延伸する凹部)の形成の工程は、改質部形成工程とそれに続くエッチング工程を共通の工程で行うことができる。これによって、簡便にガラス厚300μm以下のガラスのコア基板1に貫通孔と埋設配線を埋め込むための第2面に沿って延伸する凹部の形成することができる。
すなわち、前記貫通孔の形成と、前記第2面に沿って延伸する凹部の形成は、コア基板1に改質部を形成するレーザ照射の条件を変更することによって、貫通孔形成予定部と凹部形成予定部を自在に設定することができる。そして、その後の製造工程は、同一の条件で共通に行うことができる。
【0047】
(貫通孔/配線溝への導電化処理と絶縁樹脂形成)
次に、
図12及び
図13を参照して、導電化処理の工程を説明する。まず、
図12に示すように、貫通孔14が形成された第2面側から給電用のシード層形成を行い、その後ドライフィルムのフォトレジスト17でパターン形成する。続いて、
図13のようにシード層に給電し、2μm以上、10μm以下の厚さの電解めっきを行う。その後、不要となったドライフィルムのフォトレジスト17を溶解剥離して貫通電極を形成する。なお、ドライフィルムのフォトレジスト17を溶解後に露出したシード層は、エッチングにより除去される。
【0048】
(貫通孔の処理)
図14は、貫通孔に第2絶縁層20を埋め込み、貫通孔の直上にMIMキャパシタが形成された状態を示した図である。この例では、第1面1aが有底の貫通電極形状となるが、貫通電極の直上に、MIMキャパシタ11などの高周波デバイスを形成しない場合は、第1面1aが第2面1bのようなコンフォーマル(内周面に沿った)ビアの形状となってもよい。
貫通孔内部の導体層厚はガラス表面の導体層に必要な厚さも鑑みて選択することが可能である。貫通孔14の中で、導体が積層がされていない部分は、導体層を形成した時点では空洞となるが、かかる空洞は、後の工程でガラス表裏面に第2絶縁層20を積層することにより絶縁層で満たすこととしてもよい。
【0049】
(効果)
以下、
図18及び
図19を参照して、本実施形態と従来例の効果について説明する。
図18及び
図19は、本実施形態と従来例の多層配線基板の伝送特性のデータを比較して示したものである。
測定の前提となる主な条件は、以下のとおりである。コア基板1の薄化を行ったあとのコア基板厚寸法を0.15mmとした。コア基板1の平面をX、Yとして、基板の厚み方向をZとする。このとき、Zの方向に貫通孔と配線溝の改質部2を形成し、のちに貫通孔14と埋設配線19とした。埋設配線19の幅は、0.1mm、配線厚は0.01mmとした。貫通孔の径は、φ0.08mmとした。
貫通孔は、導電処理を施したのち、第1面1aと第2面1bを電気的に接続し、GNDに接続した。また、コア基板1に埋設した配線は、伝送線路として使用することを想定し、特性インピーダンスが50オームとなるように設計している。
絶縁樹脂の厚さは、0.04mmとした。伝送線路のガラス界面とのSqは10nm、樹脂との界面の粗さSqは110nmとした。また、ガラスとしては、無アルカリガラスを採用しており、無アルカリガラスと絶縁材料の誘電率及び誘電正接は表1に示す通りである。
【表1】
【0050】
図16の従来例を比較例として、コア基板の第2面1bに伝送線路を特性インピーダンス50Ωで形成したものと、実施形態1の
図17に示した多層配線基板の伝送線路特性を解析した結果、実施形態1(実施例1)による伝送特性の透過特性S21は
図18に示すように、比較例1の伝送線路の特性よりも良好な結果を得ることを確認した。
また、伝送特性の反射特性S11も、
図19に示すように、比較例1の伝送線路の特性よりも良好な結果を得ることを確認した。
【符号の説明】
【0051】
1:コア基板
1a:第1面
1b:第2面
2:改質部
3:フッ酸耐性膜
4:シード層
5:フォトレジスト
6:めっき層
7:誘電体
8:シード層
9:フォトレジスト
10:めっき層
11:MIMキャパシタ
12:第1絶縁層
13:キャリア基板
13a:仮貼り用接着剤
14:貫通孔
15:埋設配線溝(トレンチ)
17:フォトレジスト
18:めっき層
19:埋設配線
20:第2絶縁層
21:第1配線層
22:第2配線層
23:第3配線層
24:第4配線層
25:第3絶縁層
26:第4絶縁層
27:第5配線層
28:第6配線層
29:ビルドアップ層
30:多層配線基板
31:配線層