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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056568
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】モアレクリアファイル
(51)【国際特許分類】
   B42F 7/00 20060101AFI20230413BHJP
   B41M 3/00 20060101ALI20230413BHJP
   G03B 35/18 20210101ALI20230413BHJP
   B41M 1/30 20060101ALI20230413BHJP
   B41M 3/06 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
B42F7/00 G
B41M3/00 A
G03B35/18
B41M1/30
B41M3/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165840
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 佑美
(72)【発明者】
【氏名】井ノ口 雅美
(72)【発明者】
【氏名】エル.エム.ムリジョ
【テーマコード(参考)】
2C017
2H059
2H113
【Fターム(参考)】
2C017QA03
2C017QE06
2C017QH01
2H059AA22
2H059AA35
2H059AC04
2H113AA06
2H113BB07
2H113BB08
2H113BB22
2H113BB32
2H113BC01
2H113BC02
2H113CA36
2H113CA37
2H113CA44
2H113DA47
2H113DA49
2H113DA57
2H113DA58
2H113EA06
2H113EA07
(57)【要約】
【課題】 従来、動きを感じるモアレ縞を顕像化するパターン及びそのパターンを作成するものは存在しなかった。
【解決手段】 モアレクリアファイルは、第1のパターンと、第1のパターンと所定の距離離れた位置に設置され、少なくとも1つの領域で、第1のパターンに対して位相が連続的に変化する第2のパターンと、を備える。例えば、第2のパターンの位相は、少なくとも1つの区間で関数に応じて変化することとすれば、動きを感じるモアレ縞を顕像化することができる。したがって、入力画像とその特徴値などのデータを入力して、自然な動きを感じるモアレ縞を顕像化することができる。
【選択図】図23
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する第1の基材に配置された第1のパターンと、
前記第1のパターンと所定の距離離れた位置で、第2の基材に配置され、少なくとも一部の領域で、前記第1のパターンと重ね合わせることができ、前記第1のパターンに対して位相が連続的に変化する第2のパターンと、
を備え、前記第1のパターンと前記第2のパターンによってモアレパターンを発生することができる
モアレクリアファイル。
【請求項2】
前記第2のパターンの位相は、少なくとも1つの区間で関数に応じて変化することを特徴とする請求項1に記載のモアレクリアファイル。
【請求項3】
前記第2のパターンの位相は、少なくとも1つの区間で三角関数に応じて変化することを特徴とする請求項2に記載のモアレクリアファイル。
【請求項4】
基準点を設定し、基準点を中心とした座標において、モアレ縞に垂直な方向の座標をx、xに垂直な座標をyとした場合、
前記第1のパターンのモアレ強度Rは、以下の式(1)を満たし、
前記第2のパターンのモアレ強度Bは、以下の式(2)を満たし、
前記第1のパターンに対する前記第2のパターンの前記位相の変化を表す位相移動量PHは、以下の式(3)を満たす
ことを特徴とする請求項3に記載のモアレクリアファイル。
【数5】
ここで、αはストライプの角度、Pはストライプのピッチ、kは位相移動量係数である。
【請求項5】
位相移動量係数kは、関数で表される
ことを特徴とする請求項4に記載のモアレクリアファイル。
【請求項6】
前記位相移動量係数kは、連続して変化する
ことを特徴とする請求項5に記載のモアレクリアファイル。
【請求項7】
前記位相移動量係数kは、k=ax+bを満たし、
0<a≦20であり、b=0である
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のモアレクリアファイル。
【請求項8】
前記位相移動量係数kは、前記基準点から放射状に変化する
ことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1つに記載のモアレクリアファイル。
【請求項9】
前記基準点は、複数存在する
ことを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1つに記載のモアレクリアファイル。
【請求項10】
モアレクリアファイルを構成する基材は、一つの連続した基材が折り畳まれて第1の基材及び第2の基材が形成されており、
前記第1の基材及び前記第2の基材の厚みの合計をh、ピッチをWとした場合、前記厚みの合計hとピッチWは以下の式(8)を満たしている、
請求項1から9に記載のいずれか一項に記載のモアレクリアファイル。
0.02h ≦ W ≦ 5.67h (8)
【請求項11】
少なくとも一部の領域が重ね合わさる前記第1のパターンと前記第2のパターンとの間に第3のパターンを配置した第2の基材を配置し、
前記第1のパターンと前記第3のパターン及び/または前記第2のパターンと前記第3のパターンによってモアレパターンを発生する請求項10に記載のモアレクリアファイル。
【請求項12】
前記第2の基材の前記第3のパターンが配置された面と反対の面に第4のパターンが形成され、
前記第1のパターンと前記第3のパターン及び前記第2のパターンと前記第4のパターンによってモアレパターンを発生する請求項11に記載のモアレクリアファイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、モアレクリアファイル、すなわちモアレ縞が視認可能なクリアファイルに関する。
【背景技術】
【0002】
「モアレ(またはモワレ)」とは、周期的な模様や構造を複数重ね合わせたときに、視覚的に発生する干渉縞である。また、物理学的にいうと、モアレとは二つの空間周波数のうなり現象といえる。
モアレは、様々な形態で発生するため、モアレを望ましくないものとして取り除く場合もあるが、逆に発生したモアレを有用なものとして利用する場合もある。
【0003】
例えば、特許文献1および特許文献2においては、クリアシートにパターンを印刷したりレンズ状の構造を設けることでアイキャッチとして販促アイテムとするものがある
【0004】
また、特許文献3においては、透明シートにパターンを2つ設けて立体モアレを作るものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-280090号公報
【特許文献2】特開2001-328400号公報
【特許文献3】特開2007-140507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術におけるものは、モアレ縞を発生したとしても、モアレ縞に動きがなく、観察者に対して大きな印象を与えることが難しい。また、レンズ状の構造を設ける場合には製造コストが増大する。
さらに、立体モアレは視認可能な角度や距離が限定されるといった課題があり、2つのパターンの位置整合をとることがむずかしい課題が存在している。
【0007】
本開示の実施形態は斯かる問題を鑑みてなされたもので、連続したなめらかな動きを感じることができるモアレ縞をクリアファイルに発生させることができ、観察者や使用者に大きな印象を与えることができるモアレクリアファイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、代表的な本開示の実施形態のモアレクリアファイルの一つは、光透過性を有する第1の基材に配置された第1のパターンと、前記第1のパターンと所定の距離離れた位置で、第2の基材に配置され、少なくとも一部の領域で、前記第1のパターンと重ね合わせることができ、前記第1のパターンに対して位相が連続的に変化する第2のパターンとを備え、前記第1のパターンと前記第2のパターンによってモアレ縞を発生することができる。
なお、上記において「連続的に変化する」とは、一定の区間において一定の傾向をもって変化することを意味し、必ずしも常に連続である必要はなく、離散的に変化してもよいことを意味する。
【0009】
他の実施形態のモアレクリアファイルの一つでは、
前記第2のパターンの位相は、少なくとも1つの区間で関数に応じて変化している。
【0010】
他の実施形態のモアレクリアファイルの一つは、
前記第2のパターンの位相は、少なくとも1つの区間で三角関数に応じて変化している。
【0011】
他の実施形態のモアレクリアファイルの一つでは、
基準点を設定し、基準点を中心とした座標において、モアレ縞に垂直な方向の座標をx、xに垂直な座標をyとした場合、
前記第1のパターンのモアレ強度Rは、以下の式(1)を満たし、
前記第2のパターンのモアレ強度Bは、以下の式(2)を満たし、
前記第1のパターンに対する前記第2のパターンの前記位相の変化を表す位相移動量PHは、以下の式(3)を満たす。
【数1】
ここで、αはストライプの角度、Pはストライプのピッチ、kは位相移動量係数である。
【0012】
他の実施形態のモアレクリアファイルの一つでは、
前記位相移動量係数kは、関数で表される。
【0013】
他の実施形態のモアレクリアファイルの一つでは、
前記位相移動量係数kは、連続して変化する。
【0014】
他の実施形態のモアレクリアファイルの一つでは、
前記位相移動量係数kは、k=ax+bを満たす。
ここで、a,bは定数である。
【0015】
他の実施形態のモアレクリアファイルの一つでは、
前記位相移動量係数kは、前記基準点から放射状に変化する。
【0016】
他の実施形態のモアレクリアファイルの一つでは、
前記基準点は、複数存在する。
【発明の効果】
【0017】
本開示の実施形態によれば、連続したなめらかな動きを感じることができるモアレ縞をクリアファイルに発生させることができ、観察者や使用者に大きな印象を与えることができるモアレクリアファイルを提供することができる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の発明を実施するための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示に係るモアレ縞を生成したい入力画像を模式的に示す図である。
図2】本開示に係るレイヤー情報を模式的に示す図である。
図3】本開示に係るモアレクリアファイルに関する情報を模式的に示す図である。
図4】本開示に係る基本パターンの例を示す図である。
図5】特徴値として透過率を採用し、矩形波状の透過率値を得た場合の開口部/非開口部の設定の例を示した模式図である。
図6】特徴値として透過率を採用し、sin波状の透過率値を得た場合の開口部/非開口部の設定の例を示した模式図である。
図7】本開示に係るストライプパターンの基本パターン(第1のパターン)および開口部/非開口部比を変化させたパターン(第2のパターン)の例を示した図である。
図8】本開示に係る入力画像の例を示す図である。
図9】本開示に係る位相移動量係数に対応した位相移動量のイメージを示す図である。
図10】本開示に係る位相移動量係数の変化に対するモアレ縞輝度の変化を示す。
図11】本開示に係るモアレ縞の視認領域の定義を示す図である。
図12】本開示に係る図8に示した入力画像に対して作成されたモアレ縞を示す。
図13】本開示に係る他の入力画像の例を示す。
図14】本開示に係る位相移動量係数kが単調に変化する場合のモアレ縞の一例を示す図である。
図15】本開示に係る位相移動量係数kが指数関数的に変化する一例を示す。
図16】本開示に係る位相移動量係数kが対数関数的に変化する一例を示す。
図17】本開示に係る位相移動量係数kが三角関数的に変化する一例を示す。
図18】本開示に係る位相移動量係数kが階段関数的に変化する一例を示す。
図19】本開示に係る位相移動量係数kが合成関数的に変化する一例を示す。
図20】本開示に係る位相移動量係数kがノイズを有する一例を示す。
図21】本開示に係るモアレクリアファイルの構成例を示す図である。
図22】本開示に係るモアレクリアファイルの側面から見た状態の構成例を示す図である。
図23】本開示に係るモアレクリアファイルのモアレ縞イメージ及び基準点の構成例を示す図である。
図24】本開示に係る位相移動量係数の算出例を示す図である。
図25】本開示に係るモアレクリアファイルの構成例の断面を示す図である。
図26】本開示に係るモアレクリアファイルの構成例の断面を示す図である。
図27】本開示に係るモアレクリアファイルの構成例の断面を示す図である。
図28】本開示に係るモアレクリアファイルの構成例の断面を示す図である。
図29】本開示に係るモアレクリアファイルの構成例の断面を示す図である。
図30】本開示に係るモアレクリアファイルの基材の厚みhからピッチWをもとめる方法を示す図である。
図31】本開示に係る出力パターンを画像で得る場合のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態は以下に記載する実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて設計の変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も、本発明の実施の形態の範囲に含まれうるものである。
【0020】
以下では、まず、モアレ縞を表示するクリアファイル及びモアレ縞を顕像化するパターンの生成方法や手法について説明する。
【0021】
<1 入力情報>
図1~4は、モアレ縞を顕像化するパターンの生成システムにおける入力情報の概要を説明する図である。生成システムへの入力情報としては、入力画像(図1)の特徴値、レイヤー情報(図2)、モアレクリアファイルに関する情報(図3)、基本パターン情報(図4)がある。
【0022】
<1-1 入力画像と特徴値>
図1は、モアレ縞を生成したい入力画像の例を模式的に示した図である。本開示において、「入力画像」とは、デザイン図案などのモアレ化したい画像データを意味する。図1においては、入力画像を分かりやすく説明するために、三角形、円、四角形の3つのパーツからなる図案を用いて示し、それぞれのパーツに前後感を持たせて表記している。しかし、入力画像はこれらに限られるものではなく、どのような画像であってもよい。また、入力画像はカラーでもモノクロでもよい。
【0023】
本開示において、「入力画像の特徴値」とは、入力画像に関する、画像の輝度、彩度、色相、濃度、透明度、明度、色度、グレースケールレベル(グレースケール値)等による値である。これらの特徴値は、入力画像の図柄、パーツごと、エリアごと、画素(ピクセル)ごと、あるいはいくつかの画素ごとに区切ったブロックごとに示しても良い。さらに、それらのエリアごとの平均値、中央値、最大値、最小値等の代表値を用いて示しても良い。
【0024】
<1-2 レイヤー情報>
図2は、図1のデザイン図案をレイヤー(層)ごとに分け、レイヤー情報を模式的に示す図である。
【0025】
本開示において「レイヤー情報」とは、入力画像の図柄やパーツの前後感を指定する情報であり、レイヤー情報は、具体的な前後の距離感を数値で定めて表記しても良いし、前後の順序のみを示すものであっても良い。なお、このレイヤー情報を用いることにより、モアレ縞において明確な奥行感を実現させることができる。また、これにより、モアレ縞を見る観察者の没入感が高まる。
【0026】
図2においては、三角形、円、四角形の3つのパーツがそれぞれ3つのレイヤー(1,2,3)に分けられた様子を模式的に示しているが、レイヤーの数は3つに限定されるものではないし、レイヤーの前後の距離感は、離散的なものではなく、連続的なものであっても良い。また、レイヤーの前後の距離感は、観察者側から見て、モアレクリアファイルから観察者側に向けて飛び出した(浮き上がった)ように見える設定でも可能であるし、モアレクリアファイルから奥側にある(沈んだ)ように見える設定も可能である。
【0027】
<1-3 モアレクリアファイルに関する情報>
図3はモアレクリアファイルに関する情報を模式的に示す図である。本開示において、「モアレクリアファイル」とは、モアレ縞が視認可能なクリアファイルを意味する。
【0028】
モアレクリアファイル4については、第1の基材7上に表現領域6が設けられ、表現領域のサイズ、基材の厚み(「ギャップ」ともいう。)5、第1の基材7を構成する材質の屈折率、平均的な観察者から表現領域までの距離である「視認距離」等の情報がモアレクリアファイル4に関する情報である。立体的なモアレは、観察者の両眼視差によって生じるものであるため、視差の算出のためには、観察者と基材の位置関係に関する情報が必要である。基本的には、表現領域6の中央と観察者の目の高さが一致している場合には、観察者と基材との間の距離が視認距離となる。
【0029】
また、表現領域6の中央と観察者の目の高さが一致していない場合や、モアレ縞の発生位置の高さが観察者の目の高さと一致していない場合には、「視認距離」をモアレ発生箇所と観察者の目の位置との関係によって補正することが可能である。
【0030】
<1-4 基本パターン情報>
本開示において、「基本パターン」とは、モアレを発生させるために、重ね合わせる、周期的な模様や構造を意味する。
【0031】
図4は、基本パターンの代表的な例を示す。基本パターンは、1方向性のパターンとして、直線パターン(図4(a))、2方向性のパターンとして、格子状パターン(図4(b))、チェックパターン(図4(c))等である。基本パターンは、これらに限定されるものではなく、1方向性のパターンとしては波型やジグザグ、文字の繰り返しなどでも良い。また、2方向性のパターンとしては、ドット(水玉)等の幾何学模様だけでなく、無秩序な図柄、文字なども用いることが可能である。
【0032】
なお、以下では、当該基本パターンを「第1のパターン」と呼ぶこともあるが、この第1のパターンとは、必ずしも上述した基本パターンに限定されるものではなく、場合によって奥側パターンであってもよい。
【0033】
本開示において、「基本パターン情報」とは、上述の基本パターンについて、パターンの形状、線幅、ピッチ、L/S(Line & Space)比、角度、開口部/非開口部比などの基本パターンの形状や性状を示す情報を意味する。
【0034】
また、本開示において、「パターンの特徴値」とは、透過率、反射率、光学濃度、インク濃度、明度、グレースケールレベル(グレースケール値)等をいう。さらに、本開示において、「開口部/非開口部比」とは、パターンの性状を示す新規な概念であり、従来の線幅、ピッチ、L/S(Line & Space)比等の情報とは異なるものである。以下、「開口部/非開口部比」について説明する。
【0035】
<1-5 開口部/非開口部比>
パターンは一定周期で繰り返されるものである。このため、パターンの特徴値も周期的に値が変化することとなる。このように周期的に変化するパターンの特徴値について、1周期のうち、特徴値の値が明るさや、透明感において高い部分を開口部とし、他の部分を非開口部とする。具体的には、1周期のうち、特徴値が一定値以上である箇所を開口部としても良い。一定値を決定する際には、パターンの全体の特徴値における平均値や中央値などを採用しても良いし、最大値と最小値で正規化し、積算比を利用してもよい。
【0036】
さらに、FFT(高速フーリエ変換)を利用して、開口部/非開口部を定めても良い。なお、パターンの特徴値を得るためには、パターンからの測定値や画素値そのものを用いても良いし、周辺画素の平均値又は中央値を用いても良い。
【0037】
また、パターン中の一つまたは複数の特定領域について、前記条件に関わらず、開口部、非開口部、あるいは、 開口部でも非開口部でもない領域としてもよい。ここで、特定領域とは、例えば、デザインを目的として意図的に設けられた図柄や文字、模様、ないし、製造上起き得てしまう汚れ・画素抜けに相当する領域である。
【0038】
1方向性のパターンである直線パターン(図4(a))の場合には、直線の延伸方向に垂直な方向でのパターン周期を用いて特徴値を求め、格子状パターン(図4(b))の場合には、パターンが周期的に現れる2方向によって特徴値を求めることとなる。
【0039】
図5は、特徴値として透過率を採用し、矩形波状の透過率値を得た場合の開口部/非開口部の設定の例を示した模式図である。この例では、透過率の最大値を示す領域が開口部となり、それ以外の領域が非開口部となる。
【0040】
図6は、特徴値として透過率を採用し、sin波状の透過率値を得た場合の開口部/非開口部の設定の例を示した模式図である。この例では、透過率値が平均値以上を示す領域が開口部となり、それ以外の領域が非開口部となる。
【0041】
<1-6 ピッチ>
本開示において、上述した「ピッチ」とは、開口部と非開口部の距離を意味するものである。このピッチは、例えば、開口部と非開口部のそれぞれの中心同士で測定してもよく、開口部と非開口部の境界同士で測定してもよい。言い換えれば、ピッチは、一定周期で繰り返されるパターンにおける1周期の距離である。
【0042】
後述するように、パターンのピッチは、観察者の移動による、モアレ縞の見え方の変化に影響を与える。一例として、ピッチが細かい(つまり、1周期の距離が短い)場合には、モアレ縞が強調され、また見かけの重なりも変化しやすいため、パターンが沈んで見える効果(奥行効果)が感じやすい。なお、この変化は、手前側パターンと奥側パターンの関係にも関係する。
【0043】
このピッチは、原則として、パターンの走査方向(つまり、開口部と非開口部が繰り返す方向)において測定される。例えば、パターンがストライプ模様の場合、直線の延伸方向と直交する向きにパターンが繰り返すため、ピッチは、直線の延伸方向と直交する方向に測定される。
【0044】
また、同様に、開口部と非開口部が曲線状の領域からなり、繰り返してパターンを形成する場合には、ピッチは、パターンの繰り返す方向(曲線の延伸方向と直交する方向)に測定される。更に、開口部と非開口部が繰り返す方向が複数あるパターンの場合(例えば、チェックパターン等)、ピッチは各方向で算出されてもよく、1方向のみで算出されてもよい。
【0045】
なお、以上では、ストライプ模様やチェック模様等の規則的なパターンにおけるピッチを例として説明したが、本開示では、ピッチは、縦と横のストライプやチェック等に限らず、角度が異なるパターン(斜めに並んだストライプなど)、規則性が異なるパターン(例えば、印刷の誤差によって生じるムラ)、ピッチが不定のパターン(例えば、パターン内でピッチが変動する場合)、色が異なるパターン等で算出されてもよい。ピッチ、角度、色などが同一の画像において異なる場合には、当該画像のそれぞれの構成要素(レイヤー、領域等)毎にピッチを計算してもよい。
【0046】
また、ピッチが同一であっても、パターンの延伸方向(例えば、ストライプ模様の場合、直線方向)は、モアレの見えの変化に影響を与えることがある。例えば、パターンの角度によっては、観察者が移動する方向に対して、モアレが変化する速度が変わる場合がある。
【0047】
この現象の具体例の1つとして、例えばストライプが縦に並んだパターンの場合と、ストライプが45度で傾けて斜めに並んだパターンの場合とで、ピッチが等しくても、観察者がこれらのパターンに対して左右に移動すると、ストライプが45度方向に並んだパターンによるモアレ縞の方が、ストライプが縦に並んだパターンによるモアレ縞に比べて、モアレ縞の見えの変化が観察者の移動に対して遅く感じられることがある。
【0048】
これは、パターンを観察者の視認方向に走査すると、縦に並んだパターンに対して、45度で並んだパターンの方は、ピッチが疑似的に広くなるからである。従って、パターンの延伸方向を調整することで、モアレ縞が観察者の移動に対して変化する速度を制御することができ、モアレのデザイン性を高めることができる。
【0049】
<2 出力パターン>
本発明におけるパターン生成システムのモアレ顕像化パターンは、第1のパターン(手前側)及び第2にパターン(奥側)の2種類のパターンからなる。
モアレ縞を顕像化するためのモアレ顕像化パターンは、第1のパターン及び第2のパターンを重ね合わせることを前提としており、観察者に近い方を手前側、観察者から遠い方を奥側パターンと称呼する。
【0050】
<3 モアレ外観の特性>
第1のパターン(手前側)及び第2のパターン(奥側)のピッチ、開口部/非開口部比が異なることや、第1のパターン(手前側)及び第2のパターン(奥側)の間にギャップ(基材の厚み)が存在することにより、モアレには、以下のような効果が複合的に現れる。
【0051】
<3-1 モアレ強度>
モアレ強度は、第1のパターン(手前側)及び第2のパターン(奥側)の開口部/非開口部比が1に近いほど、モアレは強く発出する傾向がある。
【0052】
<3-2 外観濃度>
本開示において、「外観濃度」とは、第1のパターン(手前側)及び第1のパターン(奥側)中の開口部/非開口部比が異なることによる、見かけの濃淡の程度を意味する。そして、パターンの開口部/非開口部比が高いほど、見かけにはパターン及びモアレが明るく見える傾向がある。
【0053】
<3-3 モアレ変化量>
第1のパターン(手前側)及び第2のパターン(奥側)がギャップを介して重なっているため、観察者の位置(角度)によってモアレの位相が異なる。このとき、開口部/非開口部比が高いほどモアレは明るいまま保たれやすく、開口部/非開口部比が低いほどモアレは暗いまま保たれやすい(すなわち変化が少ない)傾向がある。また、開口部/非開口部比が1に近いほどモアレ変化量が大きい傾向がある。
【0054】
<4 モアレ外観の評価>
モアレの外観を評価する際には、上記の効果等を複合的に観察することになる。また、これらの効果以外にも、モアレ外観の特性としては、視認距離が想定より離れた場合においても、モアレ縞がどの程度視認できるかといった「モアレの耐性」の観点でもモアレ外観を評価することがある。
【0055】
本発明においては、パターンの開口部/非開口部比に注目してモアレ外観を評価し、モアレを意匠的に利用する際の適合性を総合的に判断する。具体的な判断レベルは、比較法や、3段階等の段階別評価に分けて実施している(○△×など)。
また、総合的な評価のほかに、別途外観のモアレ縞明暗度やモアレ縞移動度など評価を付帯的に実施することがある(表現したいデザインに応じて、何を重要視するか異なるため、実施することもあればしないこともある)。
【0056】
また、本発明において、入力画像から第1のパターン(手前側)及び第2のパターン(奥側)を生成する際には、この外観評価の結果を参考に、開口部/非開口部比を選択することとなる。
一般的にモアレ等の外観は、用いているパターン、画像の構成、視認環境等条件によって異なるため、総合的な外観評価以外に特定の属性ごとに評価を実施することが望ましい。このため、本開示においては、以下の属性についても評価を行っている。
【0057】
<4-1 モアレ縞明暗度>
「モアレ縞明暗度」とは、モアレ外観のうち、見かけの明るさ(明暗、濃淡)に関する評価を意味する。このモアレ縞明暗度は、主にモアレ強度や外観濃度の効果が複合的にあることによって差が生じる。評価は比較法や、11段階(暗:-5,-4,…,4,5:明)等の段階別評価で実施される。
【0058】
<4-2 モアレ縞移動度>
「モアレ縞移動度」とは、モアレ外観のうち、モアレ縞の動きやちらつきに関する評価を意味する。主にモアレ強度やモアレ移動量の効果が複合的にあることによって差が生じる。評価は比較法や、6段階(小:0,1,…,4,5:大)等の段階別評価で実施される。
【0059】
<5 モアレ顕像化パターンの生成の実施態様>
以下においては、ストライプパターンを用いた場合を例として取り上げ、実施態様の入力画像に応じたモアレ顕像化パターンの生成方法とそのシステムについて説明する。本実施形態では、観察者の移動によって、モアレ縞が動いて見えるパターンを生成する。
本実施態様では、モアレ縞に動きを持たせるために、第1のパターンに対して第2のパターンの位相を変化させる。
【0060】
<5-1 基本パターン及び変化パターン>
図7は、本実施態様で用いるストライプパターンの基本パターン(第1のパターン)および開口部/非開口部比を変化させたパターン(第2のパターン)の例を示した図である。
基本パターン(a)(第1のパターン)は、開口部/非開口部比が1.0となっており、(b)~(g)については、開口部/非開口部比をそれぞれ1.5から9.0まで変化させたパターン(第2のパターン)を示している。
【0061】
<5-2 入力画像の例>
図8は、本実施態様における入力画像の例を示す図である。図8の入力画像は、同心円の中心を基準点とし、放射状にグラデーションを付与している。なお、基準点は、中心以外に設定してもよい。このグラデーションが、入力画像の特徴値となる。入力画像の輝度が低い黒い部分は、位相の移動量が少なく、入力画像の輝度が高い白い部分は、位相の移動量が多い。黒い部分と白い部分の間は、位相の移動量が連続している。そして、第1のパターンと第2のパターンの重なりが移動すると、モアレ縞が放射方向に動いて見える。
【0062】
<5-3 入力画像の特徴値に応じたパターンの位相移動量の選定>
モアレ顕像化パターンの生成手順としては、まず、1)パターンの位相移動量を変更する領域を定め、次に、2)パターンの位相移動量を、パターンの特徴値に応じて設定する。位相移動量とは、第1のパターンに対する第2のパターンの位相の変化量であり、本実施態様では、位相移動量は、少なくとも1つの領域で連続的に変化するように、グレースケール輝度を利用して求める。ここで、連続的に変化とは、少なくとも1つの区間で連続的な関数で表せることを意味する。連続的な関数とは、必ずしも連続でなくとも離散しながら一定の傾向をもって変化する関数を意味する。連続的な関数の例示については、後述する。
【0063】
1)パターンの位相移動量を変更する領域を定めるには、最も単純には、入力画像の輪郭に応じて領域を定める手法があるが、必ずしも画像の輪郭で確定する必要はなく、モアレクリアファイル4を利用する状況等に応じて、適宜設定してもよい。
なお、本実施態様においては、説明を簡略化するため、図8に記載されているとおり、四角形を、位相移動量を変更する領域として定めている。
次に、2)パターンの位相移動量を、パターンの特徴値に応じて設定するにあたっては、基準点からモアレ縞に垂直な方向での距離を踏まえて領域内で選定する。
【0064】
<5-4 位相移動量>
本実施態様では、基準点を設定し、基準点を中心とした座標において、モアレ縞に垂直な方向の座標をx、xに垂直な座標をyとした場合、第1のパターンのモアレ強度Rは以下の式(1)を満たす。
【数2】
ここで、αはストライプの角度、Pはストライプのピッチである。
【0065】
また、第2のパターンのモアレ強度Bは以下の式(2)を満たす。
【数3】
ここで、αはストライプの角度、Pはストライプのピッチである。
【0066】
第2のパターンは、第1のパターンと比較して、式(2)のcos内の位相がPH(x,y)だけずれている。この位相のずれを示す位相移動量PHは、以下の式(3)を満たす。
【数4】
ここで、αはストライプの角度、Pはストライプのピッチ、kは位相移動量係数である。
【0067】
式(3)から、以下の表1に示すように、位相移動量係数kによって、モアレの状況を知ることができる。
【表1】
【0068】
図9は、位相移動量係数に対応した位相移動量のイメージを示す図である。表1の内容を図面で表すと、図9に示すようになる。図9では、奥側パターンに対して手前側パターンの位相をずらしている。正面からの観察状態は、グレースケールのレベルと対応する。
【0069】
<5-5 位相移動量係数の変化>
図10は、本実施態様の位相移動量係数kの変化に対するモアレ縞輝度の変化を示す。図10(a)は、モアレ縞に垂直な方向での位置と位相移動量係数kの値の関係を示し、図10(b)は、モアレ縞に垂直な方向での位置とモアレ縞の輝度の関係を示す。
【0070】
原点0は、基準点であって、位相移動量を決定するための基準となる点であり、本実施態様では、入力画像の中心点に対応する。また、モアレ縞に垂直な方向は、基準点を原点として位相移動量が変化する方向であり、ストライプに対して垂直な方向である。
【0071】
図10(a)に示すように、モアレ縞に垂直な方向をx、位相移動量係数をkとおくと、本実施態様の位相移動量係数は、k=ax+bで表すことができる。位相移動量係数kが一次関数状に増加する場合、図10(b)に示すように、モアレ縞の輝度は、周期的に変化する。
【0072】
なお、本実施態様は、入力画像が同心円状であるため、基準点を同心円の中心に設定すれば、放射状のどの方向でも同じ位相移動量となるが、方向によって位相移動量が異なってもよい。
【0073】
<5-6 視認領域の定義>
図11は、本実施態様のモアレ縞の視認領域の定義を示す図である。
図11(a)は、本実施態様の観察者と第1のパターン及び第2のパターンの関係を示す。図11(b)は、本実施態様の基本視認領域の算出を示す。
【0074】
図11(a)に示すように、本実施態様は、観察者が移動することによって、第1のパターンと第2のパターンの見かけの重なりがずれて、モアレ縞が動く。ここで、第1のパターンと第2のパターンの位相移動量を設定するためには、観察者が観察する視認領域を定義する必要がある。
【0075】
まず、基準点を設定し、その基準点に対して角度1~角度2の間で観察した時に、第1のパターンを通して見ることができる第2のパターンの領域を基本視認領域として設定する。本実施態様の角度1及び角度2は、第1のパターンと第2のパターンの正面を0degとし、角度1を45deg、角度2を-45degとする。なお、角度1及び角度2は、ストライプパターンに垂直な方向での角度とする。
【0076】
この場合、基本視認領域は、図11(b)に示すように、第1のパターンと第2のパターンの設置距離と角度の関係は、直角二等辺三角形になるので、基本視認領域は、第1のパターンと第2のパターンの間の設置距離×2となる。視認領域は、この基本視認領域に第1のパターンのピッチを乗じたものと定義する。
【0077】
<5-7 位相移動量係数の勾配>
モアレ縞に垂直な方向における視認領域において、位相移動量係数k=ax+bを求める際に、aとbを設定する必要がある。aは、0<a≦20を満たすとき、モアレ縞の動きが感じられる。好ましくは、0.01≦a≦8を満たすとよい。なお、bはどの値でもよい。
ただし、クリアファイルにおいてモアレ縞を発生させる場合には、aの値は、0.01<a≦8であることが好ましい。
【0078】
<5-8 モアレ縞>
図12は、図8に示した入力画像に対して作成されたモアレ縞を示す。
図8に示したような基準点から放射状にグラデーションが形成された入力画像を入力すると、第1パターンと第2パターンが形成される。第1パターンと第2パターンとを所定の距離をあけて設置し、視認領域内で観察すると、図12に示したような基準点を中心とした同心円状のモアレ縞が形成される。モアレ縞は、連続して形成され、観察者の移動によって、モアレ縞も移動するように見える。
【0079】
<6-1 他の入力画像例>
図13は、他の入力画像の例を示す。図13(a)は、左右にグラデーションを付与した例、図13(b)は、中央から左右両側にグラデーションを付与した例、図13(c)は、放射状に複数のグラデーション領域を形成した例を示す。
【0080】
図13(a)の例では、グラデーションの方向と同じように、左から右、又は、右から左方向にモアレ縞が動いて見える。図13(b)の例では、グラデーションの方向と同じように、中央から左右、又は左右から中央方向にモアレ縞が動いて見える。図13(c)の例では、グラデーションが形成されたそれぞれの領域内でモアレ縞が動いて見える。
【0081】
<6-2 位相移動量係数とモアレの動き>
図14は、本実施態様の位相移動量係数kが単調に変化する場合のモアレ縞の一例を示す図である。図14(a)は、本実施態様の位相移動量係数kが単調に変化する場合のモアレ縞を示す。図14(b)は、本実施態様の位相移動量係数kが単調に変化する場合のモアレ縞の動きを示す。
【0082】
図14に示す例では、画像「PUSH」を中心として、モアレ縞を連続して形成している。図10(a)に示したように、位相移動量係数がk=ax+b等で単調に増加又は減少して変化する場合、モアレ縞は、図14(a)に示すように一定間隔で形成される。このようにモアレ縞を形成することによって、画像を効果的に強調することができる。
【0083】
観察者が動いた際、モアレ縞は、図14(b)に示すように、矢印m01又は矢印m02の方向に動いて見える。モアレ縞が動く方向は、観察者が動く方向によって切り替わる。モアレ縞の動きによって、中心の画像「PUSH」がより強調され、観察者の注目を集めることができる。なお、モアレ縞の中心位置は、変更することができる。
【0084】
<6-3 他の位相移動量係数の変化>
図15は、本実施態様の位相移動量係数kが指数関数的に変化する一例を示す。図15(a)は、本実施態様の位相移動量係数kが指数関数的に変化する場合のモアレ縞輝度の変化を示す。図15(b)は、モアレ縞の動きを示す。
【0085】
位相移動量係数kは、図15(a)に示すように、指数関数k=aecx+bで変化してもよい。図14に示したモアレ縞は、単調に動き、メリハリが少ない。これに対して、位相移動量係数kを図15(a)に示す指数関数k=aecx+bで変化させた場合、図15(b)に示すように、モアレ縞は、指数関数で決定される異なる間隔で形成される。観察者が動いた場合、モアレ縞は、緩急をつけて動くことになる。したがって、観察者は、モアレ縞の動きをより強く感じることができる。
【0086】
また、位相移動量係数kの指数関数的な変化は、モアレ縞を形成する位置や他のイメージとの位置関係によって、視覚効果をもたらすことができる。例えば、図15(b)に示すように、図形の輪郭部分における位相移動量係数kの指数関数的な変化は、エンボス等の視覚効果をもたらすこともできる。
【0087】
指数関数k=aecx+bは、0<aかつ0<cのとき、モアレ縞の動きを強く感じることができる。好ましくは、1≦a≦50かつ0.001≦c≦3を満たすと、モアレ縞の動きをより強く感じることができる。なお、bはどの値でもよい。
【0088】
図16は、本実施態様の位相移動量係数kが対数関数的に変化する一例を示す。図16(a)は、本実施態様の位相移動量係数kが対数関数的に変化する場合のモアレ縞輝度の変化を示す。図16(b)は、モアレ縞の動きを示す。
【0089】
位相移動量係数kは、図16(a)に示すように、対数関数k=loga(c(x+1))+bで変化してもよい。位相移動量係数kを図16(a)に示す対数関数k=loga(c(x+1))+bで変化させた場合、図16(b)に示すように、モアレ縞は、対数関数で決定される異なる間隔で形成される。観察者が動いた場合、モアレ縞は、緩急をつけて動くことになる。したがって、観察者は、モアレ縞の動きをより強く感じることができる。
【0090】
また、位相移動量係数kの対数関数的な変化は、モアレ縞を形成する位置や他のイメージとの位置関係によって、視覚効果をもたらすことができる。例えば、図16(b)に示すように、図形の輪郭部分における位相移動量係数kの対数関数的な変化は、エンボス等の視覚効果をもたらすこともできる。
【0091】
対数関数k=loga(c(x+1))+bは、1<aかつ0<cのとき、モアレ縞の動きを強く感じることができる。好ましくは、1<a≦105かつ1≦c≦1010を満たすと、モアレ縞の動きをより強く感じることができる。なお、bはどの値でもよい。
【0092】
図17は、本実施態様の位相移動量係数kが三角関数的に変化する一例を示す。図17(a)は、本実施態様の位相移動量係数kが三角関数的に変化する場合のモアレ縞輝度の変化を示す。図17(b)は、モアレ縞の動きを示す。
【0093】
位相移動量係数kは、図17(a)に示すように、三角関数k=asin(cx)+bで変化してもよい。位相移動量係数kを図17(a)に示す三角関数k=asin(x)+bで変化させた場合、図17(b)に示すように、モアレ縞は、三角関数で決定される間隔で形成される。観察者が動いた場合、モアレ縞は、位相移動量k=0になる付近で折り返すように動くことになる。したがって、観察者は、複雑なモアレ縞の動きを効果的に感じることができる。また、モアレ縞の折り返し部分の動きを滑らかにつなげることができる。
【0094】
また、位相移動量係数kの三角関数的な変化は、モアレ縞を形成する位置や他のイメージとの位置関係によって、視覚効果をもたらすことができる。例えば、図17(b)に示すように、図形の輪郭部分における位相移動量係数kの三角関数的な変化は、エンボス等の視覚効果をもたらすこともできる。
【0095】
三角関数k=asin(cx)+bは、0<aかつ0<cのとき、モアレ縞の動きを強く感じることができる。好ましくは、1≦a≦20かつ1≦c≦3を満たすと、モアレ縞の動きをより強く感じることができる。なお、bはどの値でもよい。さらに、本実施態様では正弦波を用いたが、余弦波k=acos(cx)+bを用いてもよい。
【0096】
図18は、本実施態様の位相移動量係数kが階段関数的に変化する一例を示す。
【0097】
位相移動量係数kは、図18に示すように、階段関数で変化してもよい。図18に示す階段関数は、視認領域内で段階的に増加する。階段関数は、視認領域内で段階的に減少しても、段階的に増減してもよい。観察者が動いた場合、モアレ縞は、カクカクと動くことになる。したがって、観察者は、モアレ縞の動きを不自然ながらも効果的に感じることができる。
【0098】
図19は、本実施態様の位相移動量係数kが合成関数的に変化する一例を示す。
【0099】
位相移動量係数kは、図19に示すように、合成関数k=x*sin(x)で変化してもよい。図19に示す合成関数k=x*sin(x)は、視認領域内で滑らかに増減する。観察者が動いた場合、モアレ縞は、滑らか且つ不規則に動くことになる。したがって、観察者は、モアレ縞の動きを効果的に感じることができる。
【0100】
図20は、本実施態様の位相移動量係数kがノイズを有する一例を示す。図20(a)は、本実施態様の位相移動量係数k(x)がノイズを有する場合のモアレ縞輝度の変化を示す。図20(b)は、位相移動量係数k(x)と近似関数k’(x)との誤差を示す。
【0101】
位相移動量係数kは、図20(a)に示すように、ノイズを有する実測値等を用いてもよい。この場合、位相移動量係数実測値k(x)は、近似関数k’(x)で表してもよい。近似方法は、直線近似、多項式近似、対数近似、指数近似等でよい。最小自乗法等で求めてもよい。位相移動量係数実測値k(x)と近似関数k’(x)の差Δkは、±2以内が好ましい。このようにすることにより、 モアレの動きを違和感なく、自然な動きに感じさせることができる。さらに、Δkを±1以下とすると、モアレ縞の動きの流麗感を一層際立たせることができる。
なお、位相移動量係数kは、連続する実測値をそのまま用いてもよい。
【0102】
<7 クリアファイルでの本発明の実施態様>
図21は、モアレクリアファイルの構成例を示す図である。以下のようにして、図21に示すように基材の中に表現領域6を有するモアレクリアファイルを製造した。
【0103】
まず基材としては、本開示の実施態様においては、市販の透明クリアファイル(厚さ0.2[mm]、材質:PP )を用意した。透明クリアファイルは、透明のPPのシートが折りたたまれているか、2枚(複数枚)の一辺または複数辺を止めて作成されている。この第1の基材7に対し、図21に例示する表現領域6にモアレ縞を発生させるべく、UVインクジェットプリンタ(RolandDG VersaUV LEF-12)を用いて第1のパターンと第2のパターンをそれぞれ、透明クリアファイルの表側のシートと裏側のシートに形成した。以下、このパターン設計方法を述べる。
【0104】
まず基本パターン情報として、パターンの形状はストライプパターン(万線パターン)とし、ピッチ0.35mm、角度90度とした。またパターンの特徴値をインク濃度としたとき、開口部/非開口部比は1とした。第1のパターンおよび第2のパターンはK(ブラック)インク0%~100%で構成した。インク濃度が高いほうが非開口部であり、濃度が低いほうが開口部にあたる。
【0105】
図22は、クリアファイルの側面から見た状態の構成例を示す図である。第1のパターン11を第1の基材7の最表面に、第2のパターン12を第2の基材8最背面に配置する。便宜上最表面・最背面と説明したが、本モアレクリアファイルは第1のパターン側から観察しても、第2のパターン側から観察しても、表現領域6でモアレ縞が発現する。
なお、クリアファイルは、図22の例のように、一つの連続した基材が折り畳むことによって、第1の基材7及び第2の基材8としてもよい。また、別個の2つの基材を接合することによって、第1の基材7,第2の基材8としてもよい。
【0106】
図23は、モアレクリアファイルのモアレ縞のイメージ及び基準点の構成例を示す図である。まず、モアレクリアファイルを製造する場合には、デザイン及び基準点を決定する。ここでは、放射状に星型のモアレ縞の移動がある(基準点に出入りするように動く)デザインとし、表現領域6中に基準点を設定した場合について説明する。
【0107】
本実施態様においては、第1のパターンと第2のパターン間の距離は、クリアファイルの厚みであるから、0.2mm×2=0.4mmである。したがって基本視認領域は0.4×2=0.8mmである。また視認領域は第1のパターンのピッチ0.35mm×基本視認領域0.8mm=0.28mmとなる。この視認領域に対し、第2のパターンの位相移動量を決定する。
本デザインは星型であるため基準点から星形の輪郭までの距離が方向によって異なる。その結果、基準点から表現領域6の端まで距離に含まれるモアレ縞の数も基準点からの方向に応じて変化することとなる。このため、星形の形状に沿ってモアレ縞が滑らかに移動するためには、各方向でモアレ縞の位相移動量を異ならせることが必要となる。
【0108】
こうした場合の位相移動量係数aの算出方法を図24を参照して説明する。図24は、図23における基準点付近の拡大図であり、本実施態様に係る位相移動量係数の算出例を示す図である。
基準点から星形の輪郭までの距離が最も長い方向にあたるR方向では、基準点から表現領域6の端までの距離72.8mmまでの間にモアレ縞が1.5本存在している。また、基準点から星形の輪郭までの距離が最も短い方向にあたるL方向では、基準点から表現領域6の端までの距離77.4mmまでの間にモアレ縞が2.5本存在している。
このため、R方向においては、以下の式(4)及び式(5)の2つの条件を満たすことが必要となる。
基準点である0mm地点で、
PH(x,y)=0 (4)
端部である72.8mm地点で、
PH(x,y)=3π((xcosα+ysinα)/P) (5)
一方、式3において
【数4】
であるから、このときのk=axにおけるaの算出は、
a=(3/2)/72.8=0.0206となる。
そして、同様に、L方向においては、以下の式(4)及び式(6)の2つの条件を満たすことが必要となる。
基準点である0mm地点で、
PH(x,y)=0 (4)
端部である72.8mm地点で、
PH(x,y)=5π((xcosα+ysinα)/P) (6)
そして、R方向の場合と同様に、aの算出は、
a=(5/2)/77.4=0.0323
となる。
【0109】
これらのことから、図23においては、星の中心を基準点としたとき、基準点から星形の輪郭までの距離が最も長い方向にあたるR方向ではk=0.021[mm]x、基準点から星形の輪郭までの距離が最も短い方向であるL方向ではk=0.032[mm]xと定めることができ、基準点から星形の輪郭までの距離がこれらの中間にあたる範囲ではこの範囲内となるよう位相移動量係数aを決定すればよい(いずれもb=0)。
なお、動きのあるモアレの場合、aの値は、上述したように、0<a≦20であり、更に好ましくは、0.5<a≦8である。しかし、クリアファイルにおいては、aの値は、0.01<a≦8であることが好ましい。
【0110】
本デザインでは表現領域6内に星型の放射状モアレを作成することを目的としているため、基準点付近の視認領域だけではなく、表現領域6の端部にかけて、基準点から各方向へ上記設定した位相移動量係数を適用した。そして、これによって作成された第1のパターンおよび第2のパターンを該クリアファイルに該印刷機で印字したとき、第1のパターン越しに第2のパターンを視認すると、意図した通りの星型のモアレ縞を視認することができた。
また、クリアファイルを動かした際、第1のパターンと第2のパターンの重なりずれによってモアレ縞は表現領域内で一定間隔に動くように見えるため、モアレ縞が星型として認識しやすく、非常にアイキャッチ性が高いことが確認できた。
【0111】
第1のパターンと第2のパターン間の距離、すなわち、クリアファイルの厚みは0.2mm×2=0.4mmである。これに対し基本パターンのピッチは0.35mmでありクリアファイルの厚みに近似している。第1のパターンを正面から見たときの角度を0degとし、焦点が第1のパターン越しに第2のパターン状にあるとき、サンプルに対して視点が基本パターンの延伸方向の垂直方向に約41.2deg傾くと、第1のパターンと第2のパターンの重なりずれが基本パターン1周期分発生する。すなわちモアレ縞の動きが設計した通りの動きであることが確認できた。
【0112】
<7-1 モアレファイルの構成例>
次に、図25ないし図28は、モアレクリアファイルの構成例の断面を示す。基材とパターンの構成は様々なバリエーションが存在し、例えば、図25のように、第1のパターンを第1の基材7の外側に、第2のパターンを第2の基材8の内側(第1の基材7と接する側)に設けてもよい。
【0113】
さらに、図26の(a)、(b)、(c)に例示するように、基材が複数回折りたたまれて、第1の基材7と第2の基材8が設けられ、それぞれの一部が重なるように第1のパターンと第2のパターンが配置されてもよい。
【0114】
さらに、図27のように、一つの大きな基材の両側から小さな第1の基材7が折り返されて、大きな基材である第2の基材8と接する形状としてもよい。
【0115】
さらに図28のように、第1のパターンと第2のパターンが構成された基材とは異なる基材を第3の基材9として、その表面に第3のパターン13を配置してもよい。こうすることによって、第1のパターン11と第2のパターン12の間に第3のパターン13を配置した基材を挟み、第1のパターン11と第3のパターン13でモアレを発生させることもできる。また、第2のパターン12と第3のパターン13でも同様であるし、第1のパターン11と第2のパターン12と第3のパターン13によってモアレを発生させてもよい。
【0116】
図29のように、図28で説明した第3の基材9の、第3のパターン13が配置された反対側の面に第4のパターン14を配置してもよい。
この場合、第1のパターン11と第3のパターン13によるモアレと、第2のパターン12と第4のパターン14によるモアレ縞を同時に発生させることができる(第1のパターン11と第4のパターン14、第2のパターン12と第3のパターン13の組み合わせでももちろんよい)。
【0117】
モアレ縞を発生させるための手前側の基材は、透光性の基材であればよく、半透明でもよい。第1のパターン11と第2のパターン12を重ねて視認することができれば、パターンの主要部分以外の領域が不透明であってもよい。また第1のパターン11のある領域のみが透明または半透明で、第2のパターン12は不透明な基材上に配置されてもよい。第1のパターンと第2のパターンの関係は逆でもよい。
【0118】
<7-2 パターンの印刷について>
パターンが印刷によって形成される場合には、インクは水性・油性など一般的なものを利用してもよい。さらに、基材上に樹脂を用いてパターンを形成するものでもよい。
【0119】
インクを用いてパターンを形成する場合、インクの透過率は70%以下がよい。インクの透過率が70%を超えると、モアレが目立たないため、好ましくはインクの透過率は、0%以上30%以下がよい。特にインクの透過率が30%以下であるとき、クリアファイルとして利用した際、挟み込んだ書類を秘匿する効果も与えることができる。
【0120】
インクを用いてパターンを形成した場合、インクによるパターンに盛り上がりがあってもよい。その場合、盛り上がり部の高さは0.5mm以下が好ましい。インク面が挟み込む基材の内側に配置されていた場合、このような盛り上がり部が存在すると、挟み込む基材の摩擦を促進し、クリアファイルとして利用したとき、書類の出し入れがスムーズに行える。
【0121】
<7-3 基材について>
基材はPET、PP、PC、PVC、セロファン、トレーシングペーパーなど透明なものが好ましく、最も好ましい材料はPETである。これらの基材の材質は軟質のものでも硬質のものでもよい。
【0122】
基材の透過率は、少なくとも1枚の基材の透過率は70%以上であるとよい。好ましくは80%以上であるとよい。基材の少なくとも1枚が透明であれば、組み合わせる基材の透過率は70%以下であってよい。
【0123】
基材の屈折率は1.7未満がよい。好ましくは1.5~1.65の範囲がよい。
【0124】
基材の厚みは、少なくとも1枚は0.1~0.5mmがよい。好ましくは0.2から0.4mmがよい。少なくとも1枚がこれを満たしていれば、組み合わせる基材の厚みに制限はない。
【0125】
基材のヘイズは、少なくとも1枚は55未満がよい。好ましくは35未満がよい。少なくとも1枚がこれを満たしていれば、組み合わせる基材のヘイズに制限はない。
【0126】
第1の基材7と第2の基材8の間に挟み込む第3の基材9は、必ずしも透明である必要はない。透明な場合、挟み込む第3の基材9の両側に第3・第4のパターンを配置し、より意匠性の高いクリアファイルを作成することができる。
【0127】
<7-4 パターンについて>
本開示において、パターンとは、隠蔽性の低い箇所(開口部)と隠蔽性の高い箇所(非開口部)からなる、繰り返し性の高い汎用パターンを意味するものである。また、汎用パターンとはストライプや格子、ドットなどを意味する。
【0128】
本開示において、上述した「ピッチ」とは、開口部と非開口部の距離を意味するものである。このピッチは、例えば、開口部と非開口部のそれぞれの中心同士で測定してもよく、開口部と非開口部の境界同士で測定してもよい。言い換えれば、ピッチは、一定周期で繰り返されるパターンにおける1周期の距離である。
【0129】
次に、図30を参照して、基材の厚みの合計hからピッチWをもとめる方法を示す。図30は、折りたたんだ基材から構成される第1の基材7及び第2の基材8と、それぞれの表面に配置された第1のパターン11及び第2のパターン12を模式的に示した断面図である。第1の基材7及び第2の基材8の厚みの合計をh、ピッチをW、視認する角度をTiとした場合、下記の式(7)が成立する(厳密にはフィルムの屈折率が影響するがクリアファイルの厚みでは影響が小さいため省略することが可能である)。
ピッチW=基材の厚みh×tan(Ti) (7)
ここで、サンプルを視認する角度が1~80degの範囲であるとよい。また、好ましくは、視認する角度が15~75degであるとよい。また、より好ましくは、視認する角度が45degであるとよい。
【0130】
よって、基材の厚みをh、ピッチをWとしたとき、ピッチWは下記の式(8)の範囲であるとよい。
0.02h ≦ W ≦ 5.67h (8)
また、好ましくは下記の式(9)の範囲だとよい。
0.27h ≦ W ≦ 3.73h (9)
また、より好ましくは下記の式(10)を満たすとよい。
W = h (10)
【0131】
以上、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例および修正例に想倒し得るものであり、それら変更例および修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0132】
<8 モアレ縞を顕像化するパターンの生成方法>
図31は、出力パターンを画像によって得る場合の簡易的なフローチャートの例である。ただし、入力にかかる情報(レイヤー等の情報入力)の順序はこのフローチャートに記載されたものに限らない。
【0133】
まず、ステップ101で入力画像データを読み取る。図1に示したように、モアレ縞を生成したい画像を入力画像として読み取る。本実施態様では、図8に示した入力画像をデータとして読み取る。ここで、入力画像とは、デザイン図案等のモアレ化したい画像データを示す。この入力画像は、例えばユーザに選択される画像であってもよく、遠隔の外部デバイスから送信される画像であってもよい。次に、ステップ102で入力画像の特徴値を抽出する。本実施例では、図8に示した入力画像のグラデーションを特徴値とする。
【0134】
次に、ステップ103でレイヤー情報を入力する。レイヤー情報は、図2に示したように、入力画像の図柄等の前後間を指定する情報である。レイヤーは、1層でも、複数でもよい。
【0135】
次に、ステップ104でモアレクリアファイル情報を入力する。ここでは、図3に示したようなモアレクリアファイル4の具体的な構造を入力する。本実施態様では、図21に示したようなモアレクリアファイル4に対して、第1のパターン11と第2のパターン12の間の距離や観察角度等をモアレクリアファイル情報として入力する。
【0136】
次に、ステップ105で基本パターン情報を入力する。基本パターンは、図7に示したストライプパターンでよい。次に、ステップ106で開口部/非開口部比を設定する。開口部/非開口部比は、図7に示したストライプパターンの開口部/非開口部比を参考に設定すればよい。
【0137】
次に、ステップ107で位相移動量を設定する。本実施態様は、基本となる第1のパターンに対して式(3)で示す分、第2のパターンをずらす。また、本実施態様は、式(3)の位相移動量係数kを関数で表すとよい。関数は、図10図15乃至図20に示したような連続的な関数、階段関数、近似関数等でよい。
【0138】
次に、ステップ108でピッチ比率を設定する。ピッチ比率は、レイヤー毎の奥行区分において発生させる。レイヤーが1層の場合、比率の設定はない。
【0139】
ステップ103~ステップ108では、モアレ顕像化パターンの条件を指定するモアレ情報を設定している。モアレ情報は、入力画像に含まれるレイヤーの順序に関する情報(例えば、レイヤーの数、レイヤーの順序等)と、モアレ顕像化パターンの基本構成に関する情報、及び全体の(ピクセル又は距離で表現した)大きさに関する情報、グラデーション情報等のうちいずれか1つを少なくとも含むとよい。ここで、モアレ顕像化パターンの基本構成に関する情報とは、例えば、モアレ顕像化パターンの形状(ストライプ、格子等)、線の向き(縦、斜め)、ピッチ、所望の奥行感(それぞれのレイヤーのモアレをどの程度の奥行量で発生させるか)に関する情報、モアレパターンの使用方法(貼り付ける板の素材、厚み、観察する距離)、及びパターンの位相移動量等のうちいずれか1つを少なくとも含むとよい。
【0140】
次に、ステップ109で第1のパターンを出力する。第1のパターンは、ステップ101及びステップ102で抽出された入力画像と、ステップ103~ステップ108で設定されたモアレ顕像化パターンの条件を指定するモアレ情報とに基づいて生成される。
【0141】
次に、ステップ110で第2のパターンを出力する。第2のパターンは、第1のパターンに対して、少なくとも1つの基準点を有する領域で、基準点から第1のパターンに対して位相が連続して変化する。
【0142】
このように、入力画像とモアレ顕像化パターンの条件を指定するモアレ情報を入力して、第1のパターンと第2のパターンを生成することで、動きを感じるモアレ縞を顕像化することができる。
【0143】
また、以上説明した位相移動量、ピッチ比率、開口部・非開口部比等の設定についても、様々な変更が可能であることはいうまでもない。なお、位相移動量は、位相変動量と言い換えてもよい。
【0144】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本開示の範囲は、図示され記載された実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含むことができる。さらに、本開示の範囲は、請求項により画される発明の特徴(feature)に限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴(feature)、その特徴(feature)のあらゆる組み合わせも含む。
【0145】
本開示および特に添付の請求の範囲内で使用される用語(例えば、添付の請求の範囲の本文)は、一般的に、「オープンな」用語として意図される(例えば、「有する」という用語は、「少なくとも有する」と解釈すべきであり、「含む」という用語は、「含むがそれに限定されない」などと解釈されるべきである。)。
【0146】
また、用語、構成、特徴(feature)、側面、実施形態を解釈する場合、必要に応じて図面を参照すべきである。図面により、直接的かつ一義的に導き出せる事項は、テキストと同等に、補正の根拠となるべきである。
【0147】
さらに、特定の数の導入された請求項の記載が意図される場合、そのような意図は、請求項に明示的に記載され、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しない。例えば、理解を助けるために、以下の添付の請求の範囲は、「少なくとも1つ」および「1つまたは複数」の導入句の使用を含み、請求の列挙を導入することができる。
【0148】
しかしながら、そのような語句の使用は、不定冠詞「a」または「an」によるクレーム記載の導入が、そのようなクレームを含む特定のクレームを、そのような記載を1つだけ含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではない。「1つ以上」または「少なくとも1つ」の冒頭の語句および「a」または「an」などの不定冠詞(例えば、「a」および/または「an」)は、少なくとも「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである。請求項の記述を導入するために使用される明確な記事の使用についても同様である。
【符号の説明】
【0149】
1:レイヤー
2:レイヤー
3:レイヤー
4:モアレクリアファイル
5:基材の厚み
6:表現領域
7:第1の基材
8:第2の基材
9:第3の基材
11:第1のパターン
12:第2のパターン
13:第3のパターン
14:第4のパターン
図1
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図31