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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056783
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】自立性包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 30/02 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
B65D30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166203
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】岡野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山下 香往里
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AB25
3E064BA01
3E064BA05
3E064BA26
3E064BA27
3E064BA30
3E064BB03
3E064BC18
(57)【要約】
【課題】材料の一部に紙を使用した自立性包装袋であって、優れた底開き性を達成できるとともに、優れた落下耐性を達成し得る自立性包装袋を提供する。
【解決手段】本開示の自立性包装袋は、紙基材及びヒートシール層をそれぞれ含む一対の本体部と、紙基材及びヒートシール層を含み且つ山折り部を有する底テープとをヒートシールして形成されたものであり、一対の本体部を当該自立性包装袋の縦方向に接着している一対のサイドシール部と、一対の本体部と底テープとを当該自立性包装袋の横方向にそれぞれ接着している底シール部とを備え、底シール部の横方向の曲げモーメントが9.0mN・m以下である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の紙基材及び第一のヒートシール層を含む第一の本体部と、
第二の紙基材及び第二のヒートシール層を含む第二の本体部と、
第三の紙基材及び第三のヒートシール層を含み且つ山折り部を有する底テープと、
をヒートシールして形成された自立性包装袋であって、
前記第一の本体部と前記第二の本体部とを、当該自立性包装袋の縦方向に接着している一対のサイドシール部と、
前記第一の本体部と前記底テープとを、当該自立性包装袋の横方向に接着している第一の底シール部と、
前記第二の本体部と前記底テープとを、当該自立性包装袋の横方向に接着している第二の底シール部と、
前記底テープの両サイドにそれぞれ設けられた切り欠き部と、
前記第一のヒートシール層と前記第二のヒートシール層が前記切り欠き部を通じて接着している一対の局所的シール部と、
を備え、
前記第一及び第二の底シール部の横方向の曲げモーメントがいずれも9.0mN・m以下である、自立性包装袋。
【請求項2】
前記第一及び第二の底シール部の横方向の曲げモーメントがいずれも4.5mN・m以上である、請求項1に記載の自立性包装袋。
【請求項3】
前記第一の紙基材の坪量と、前記第三の紙基材の坪量の和が190g/m以下である、請求項1又は2に記載の自立性包装袋。
【請求項4】
前記第一の紙基材の坪量が前記第三の紙基材の坪量よりも大きい、請求項1~3のいずれか一項に記載の自立性包装袋。
【請求項5】
前記第一の紙基材の坪量Aの前記第三の紙基材の坪量Bに対する比A/Bが1.1~2.5である、請求項1~4のいずれか一項に記載の自立性包装袋。
【請求項6】
前記第一及び第二のヒートシール層がいずれも、ヒートシール性を有するニスの塗工によって形成されたコート層である、請求項1~5のいずれか一項に記載の自立性包装袋。
【請求項7】
前記サイドシール部のT形剥離強度が2~5N/15mmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の自立性包装袋。
【請求項8】
前記第一及び第二の底シール部はいずれも、当該自立性包装袋の横方向の全体にわたって一定の幅で形成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の自立性包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は自立性包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
自立性包装袋の一例として、スタンディングパウチが挙げられる。従来、種々のタイプのスタンディングパウチが開発されている。例えば、特許文献1は、スタンディングパウチの内部空間に比べて大きさが小さい固形の商品を封入する場合に好適なスタンディングパウチを開示している。特許文献2は、適度な耐油耐水性を有し、ヒートシール性、通気性にも優れ、特にファーストフードや揚げ物、焼き物などの惣菜等の調理済食品の包装に適したスタンド型の包装用袋を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-70045号公報
【特許文献2】特開2018-131210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、海洋プラスチックごみ問題にみられるようにマイクロプラスチックによって環境汚染に影響を与えることが問題視されている。これに伴って、脱プラスチック運動やプラスチック製品の使用を控える風潮が高まり、紙単体又は紙を含む複合材をした包装材の需要が高まっている。
【0005】
本発明者らは、紙基材と、紙基材の一方の面上に設けられた印刷層と、紙基材の他方の面上に設けられたヒートシール層とを備える包装材を使用し、商品の二次包装に適用されるスタンディングパウチを試作した。9個の試作スタンディングパウチ(縦180mm×横120mm)に、商品(重さ:約100g)をそれぞれ収容した。これらのスタンディングパウチを段ボール内に立てた状態で収容した後、高さ80cmの位置からコンクリートの地面に段ボールを落下させ、JIS Z0200に記載の方法に準拠して落下耐性を評価した。その結果、スタンディングパウチの底部が落下の衝撃によって破損したり、シール部が剥離したりする現象が認められた。
【0006】
スタンディングパウチの強度を高めるため、比較的厚い紙基材(例えば、坪量120g/m以上)を使用することが考えられる。しかし、本発明者らが試作とその評価を継続して行った結果、厚い紙基材を使用してスタンディングパウチを作製した場合、底部が拡がりにくく、これに起因して内容物を収容する作業の効率(以下、「底開き性」という。)が低下する。
【0007】
本開示は、基材として紙を使用した自立性包装袋であって、優れた底開き性を達成できるとともに、優れた落下耐性を達成し得る自立性包装袋を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面に係る自立性包装袋は、第一の紙基材及び第一のヒートシール層を含む第一の本体部と、第二の紙基材及び第二のヒートシール層を含む第二の本体部と、第三の紙基材及び第三のヒートシール層を含み且つ山折り部を有する底テープとをヒートシールして形成されたものであり、第一の本体部と第二の本体部とを、当該自立性包装袋の縦方向に接着している一対のサイドシール部と、第一の本体部と底テープとを、当該自立性包装袋の横方向に接着している第一の底シール部と、第二の本体部と底テープとを、当該自立性包装袋の横方向に接着している第二の底シール部と、底テープの両サイドにそれぞれ設けられた切り欠き部と、第一のヒートシール層と第二のヒートシール層が切り欠き部を通じて接着している一対の局所的シール部とを備え、第一及び第二の底シール部の横方向の曲げモーメントがいずれも9.0mN・m以下である。
【0009】
上述のとおり、自立性包装袋の全体を比較的厚い紙基材で構成すると、落下耐性は向上するものの、底開き性が低下する。本発明者らは、試行錯誤の結果、第一及び第二の底シール部の横方向の曲げモーメントを9.0mN・m以下とすることで、優れた底開き性を達成できることを見出した。なお、ここでいう「底シール部の横方向の曲げモーメント」はJIS P8125:2000に記載の「テーバーこわさ試験機法」に準拠して測定される値(曲げモーメント表示のこわさ)を意味する。
【0010】
図5(a)及び図5(b)は自立性包装袋の試作品の底面をそれぞれ示す写真である。図5(a)に示す試作品(実施例1)の底シール部5A,6Aはいずれも曲げモーメントが4.2mN・mであった。この試作品の底シール部5A,6Aは幅方向の一端からそれぞれ滑らかなカーブを描いて他端へと至っている。一方、図5(b)に示す試作品(比較例1)の底シール部5B,6Bはいずれも曲げモーメントが9.4mN・mであった。この試作品の底シール部5B,6Bは幅方向の一端からそれぞれ歪なカーブを描いて他端へと至っている。
【0011】
第一の底シール部の横方向の曲げモーメントを9.0mN・m以下とするには、例えば、第一の紙基材の坪量と、第三の紙基材の坪量の和を190g/m以下とすればよい。第二の底シール部の横方向の曲げモーメントについてもこれと同様である。ここでいう「坪量」は紙基材の単位面積あたりの質量を意味する。
【0012】
第一及び第二の底シール部の横方向の曲げモーメントはいずれも4.5mN・m以上であることが好ましい。この値が4.5mN・m以上であるということは、底シール部及び底テープが十分な強度の紙基材をそれぞれ含んでいることを意味する。つまり、自立性包装袋に十分な落下耐性を付与することができる。なお、第一の底シール部の横方向の曲げモーメントを4.5mN・m以上とするには、例えば、第一の紙基材の坪量と、第三の紙基材の坪量の和を130g/m以上とすればよい。第二の底シール部の横方向の曲げモーメントについてもこれと同様であることが好ましい。
【0013】
第一の紙基材の坪量は、第三の紙基材の坪量よりも大きいことが好ましい。より具体的には、第一の紙基材の坪量Aの第三の紙基材の坪量Bに対する比A/Bは1.1~2.5であることが好ましい。A/Bの値が1.1以上であることで、第一の本体部によって強度を確保しつつ、底テープを比較的薄くできるため、優れた底開き性を達成できる傾向にある。他方、A/Bの値が2.5以下であることで、底テープの強度を確保しやすく、内容物を収容した状態で自立性包装袋が落下しても底テープの破損を抑制できる傾向にある。第二の紙基材の坪量と第三の紙基材の坪量の比についてもこれと同様であることが好ましい。
【0014】
第一及び第二のヒートシール層がいずれも、ヒートシール性を有するニスの塗工によって形成されたコート層であることが好ましい。ヒートシール層としてシーラントフィルムを使用しないことで、自立性包装袋の材料を実質的に紙のみとすることができる。
【0015】
サイドシール部のT形剥離強度は2~5N/15mmであってもよい。例えば、上記のように、第一及び第二のヒートシール層がいずれも、ヒートシール性を有するニスの塗工によって形成されたコート層である場合、シーラントフィルムを使用する場合と比較してサイドシール部のヒートシール強度は低い値とならざるを得ず、例えば、サイドシール部のT形剥離強度は2~5N/15mm程度である。また、シーラントフィルムを使用した場合には局所的シール部において第一のヒートシール層と第二のヒートシール層を強固に接着できるのに対し、ヒートシール層がコート層である場合、局所的シール部において剥離が生じやすい。本開示に係る自立性包装袋は、優れた底開き性を有するため、底開きの際に局所的シール部に負荷がかかっても、局所的シール部において剥離が生じることを抑制することができる。なお、ここでいう「T形剥離強度」は以下の方法によって測定される最大荷重を意味する。すなわち、ヒートシール層同士が対面するように一対の本体部を重ね合わせた状態でヒートシールを行う。ヒートシールされた積層体から15mm幅の短冊に切り出すことによって試料を得る。この試料について、剥離速度300mm/分でT形剥離を実施し、そのときの最大荷重を測定する。
【0016】
本開示において、第一及び第二の底シール部はいずれも、当該自立性包装袋の横方向の全体にわたって一定の幅で形成されていることが好ましい。この場合、底テープにおける本体部に接着されていない領域を確保することができる。例えば、図5(a)に示す領域R1,R2は本体部に接着されていない領域である。底テープが本体部に接着されていない領域を十分に有していることで、落下の衝撃が底テープに加わっても底テープが変形することで衝撃を吸収することができ、破断に至ることを抑制することができる。また、一定の幅の底シール部であれば、横方向のサイズが異なる自立性包装袋を製造する場合であっても同じ装置を使用して底シール部を形成できるというプロセス上の利点もある。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、基材として紙を使用した自立性包装袋であって、優れた底開き性を達成できるとともに、優れた落下耐性を達成し得る自立性包装袋が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は本開示に係るスタンディングパウチの一実施形態を模式的に示す正面図である。
図2図2図1に示すスタンディングパウチの構成を模式的に示す断面図である。
図3図3図1に示すスタンディングパウチを構成する一対の本体部と、底テープとを模式的に示す斜視図である。
図4図4図1に示すスタンディングパウチを構成する包装材を模式的に示す断面図である。
図5図5(a)及び図5(b)は自立性包装袋の試作品の底面をそれぞれ示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。ここでは、高度な密封性を求められないスタンディングパウチについて説明する。本実施形態に係るスタンディングパウチは、例えば、一次容器に収容された物品(化粧品や日焼け止クリームなど)を収容する二次包材として使用されるものである。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
<スタンディングパウチ>
図1は本実施形態に係るスタンディングパウチ(自立性包装袋)を模式的に示す正面図である。図2は本実施形態に係るスタンディングパウチの構成を模式的に示す断面図である。これらの図に示すスタンディングパウチ50は、一対の本体部10,20(第一及び第二の本体部)と、底テープ30とをヒートシールして形成されている。一対の本体部10,20はいずれも、紙基材1A(第一及び第二の紙基材)と、印刷層2と、ヒートシール層3(第一及び第二のヒートシール層)を含む積層体で構成され、底テープ30は、紙基材1B(第二の紙基材)と、印刷層2と、ヒートシール層3(第三のヒートシール層)を含む積層体で構成されている(図2参照)。印刷層2は紙基材1A,1Bの表面1a側(スタンディングパウチ50の外面側)に形成されている。ヒートシール層3は紙基材1A,1Bの裏面1b側(スタンディングパウチ50の内面側)に形成されている。ヒートシールによるスタンディングパウチの形成は、従来の方法と同様に実施することができる。
【0021】
底テープ30は一つの山折り部30aを有する。すなわち、スタンディングパウチ50が自立した状態において、底テープ30は逆V字状に配置されている(図2,3参照)。スタンディングパウチ50の底部は、図2に示すように、底シール部5(第一の底シール部)と、底シール部6(第二の底シール部)とによって構成されている。底シール部5は、本体部10の底部10aと底テープ30の一方の底部30bとをヒートシールした部分である。底シール部6は、本体部20の底部20aと底テープ30の他方の底部30cとをヒートシールした部分である。
【0022】
底シール部5,6はいずれも、スタンディングパウチ50の横方向(図1の左右方向)の全体にわたって一定の幅で形成されている。かかる構成を採用することにより、上述のとおり、落下の衝撃が底テープ30に加わっても底テープ30が変形することで衝撃を吸収することができ、破断に至ることを抑制することができる。また、底シール部5,6の幅が一定であることで、横方向のサイズが異なるスタンディングパウチを製造する場合であっても同じ装置を使用して底シール部を形成できるというプロセス上の利点もある。底シール部5,6の幅は、例えば、3~18mmであり、5~15mmであってもよい。底シール部5,6の幅が3mm以上であることで十分なシール強度を達成できる傾向にあり、他方、18mm以下であることでスタンディングパウチ50の十分な内容量を確保しやすい傾向にある。
【0023】
底シール部5,6は、スタンディングパウチ50の横方向の曲げモーメントがいずれも9.0mN・m以下であり、好ましくは8.5mN・m以下であり、より好ましくは8.0mN・m以下である。この値が9.0mN・m以下であることで、スタンディングパウチ50の優れた底開き性を達成できる。この値を9.0mN・m以下とするには、例えば、紙基材1Aの坪量と、紙基材1Bの坪量の和を190g/m以下とすればよい。紙基材1A,1Bの坪量の和は、185g/m以下であってもよく、175g/m以下であってもよい。
【0024】
底シール部5,6は、スタンディングパウチ50の横方向の曲げモーメントがいずれも好ましくは4.5mN・m以上であり、より好ましくは5.0mN・m以上であり、更に好ましくは5.5mN・m以上である。この値が4.5mN・m以上であるということは、底シール部5,6及び底テープ30に含まれる紙基材1A,1Bがそれぞれ十分な強度を有していることを意味する。つまり、スタンディングパウチ50に十分な落下耐性を付与することができる。この値を4.5mN・m以上とするには、例えば、紙基材1Aの坪量と、紙基材1Bの坪量の和を130g/m以上とすればよい。紙基材1A,1Bの坪量の和は、140g/m以上であってもよく、150g/m以上であってもよい。
【0025】
スタンディングパウチ50の側部は、サイドシール部7で構成されている。サイドシール部7の幅は、例えば、3~18mmであり、5~15mmであってもよい。サイドシール部7の幅が3mm以上であることで十分なシール強度を達成できる傾向にあり、他方、18mm以下であることでスタンディングパウチ50の十分な内容量を確保しやすい傾向にある。
【0026】
図1に示されたとおり、スタンディングパウチ50は、底部の両サイドに局所的シール部9をそれぞれ有する。局所的シール部9は本体部10と本体部20とを接合している。局所的シール部9は、底テープ30に設けられた切り欠き部8を通じて本体部10,20のヒートシール層3同士が局所的に接着している箇所である。図3に示されたように、底テープ30の切り欠き部8は、山折り部30aと底辺30d,30dとの間の領域であり且つ底テープ30の側部に設けられている。スタンディングパウチ50は二次包材として使用されるものであるから、密封性は求められていない。よって、図1に示されたとおり、切り欠き部8の一部はサイドシール部7からはみ出していてもよい。切り欠き部8におけるサイドシール部7からはみ出している箇所はシールされていないため、当該箇所においてスタンディングパウチ50の内部と外部は導通している。
【0027】
<包装材>
スタンディングパウチ50の本体部10,20は紙基材1Aを含む包装材で構成されている。図4は本体部10,20に適用される包装材の層構成を模式的に示す断面図である。この図に示す包装材40は、紙基材1Aと、印刷層2と、ヒートシール層3とを含む。包装材40は、例えば、印刷機を使用し、紙基材1Aに印刷層2及びヒートシール層3を形成することによって得ることができる。
【0028】
紙基材1Aとして使用し得る紙の具体例として、上質紙、特殊上質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、模造紙及びクラフト紙が挙げられる。紙基材1Aの坪量は、例えば、50~150g/mであり、55~125g/mであってもよい。底テープ30用の紙基材1Bとして、紙基材1Aと同様の紙を使用し得る。紙基材1Bの坪量は、例えば、40~90g/mであり、50~80g/mであってもよい。
【0029】
紙基材1Aの坪量は、紙基材1Bの坪量よりも大きいことが好ましい。より具体的には、紙基材1Aの坪量Aの紙基材1Bの坪量Bに対する比A/Bは1.1~2.5であることが好ましい。A/Bの値が1.1以上であることで、本体部10,20によって強度を確保しつつ、底テープ30を比較的薄くできるため、優れた底開き性を達成できる傾向にある。他方、A/Bの値が2.5以下であることで、底テープ30の強度を確保しやすく、内容物を収容した状態でスタンディングパウチ50が落下しても底テープ30の破損を抑制できる傾向にある。A/Bの値は、1.3~2.4であってもよく、1.5~2.2であってもよい。
【0030】
本実施形態における印刷層2はインキ層2aとニス層2bとによって構成されている。インキ層2aは紙基材1Aの表面1a上に直接形成されている。ニス層2bはインキ層2aを覆うように形成されている。本実施形態においては、ニス層2bが包装材40の最表面を構成している。インキ層2a及びニス層2bはいずれも、例えば、ニトロセルロースと、合成樹脂とを含み、インキ層2aは、顔料を更に含む。なお、環境配慮の観点から、塩素を含まないインキや植物油インキを使用してインキ層2aを形成することが好ましい。
【0031】
印刷層2の単位面積あたりの質量(インキ層2aとニス層2bのドライ塗布量の合計)は、例えば、3.5g/m以下である。これにより、スタンディングパウチ50の底テープ30の表面同士の融着を十分に抑制できる。この量は、3.2g/m以下であってもよく、2.8g/m以下又は1.5g/m以下であってもよい。この量の下限値は0.5g/mである。この値が0.5g/mであることで鮮明な印刷層2を形成できる傾向にある。
【0032】
ヒートシール層3はヒートシール性を有するニス(ヒートシールニス)を塗布することによって形成される。ヒートシール層をシーラントフィルムで構成する場合と比較すると、ヒートシール層3のヒートシール強度は低く、T形剥離強度は2~5N/15mm程度である。しかし、スタンディングパウチ50は優れた底開き性を有するため、底開きの際に局所的シール部9に負荷がかかっても、局所的シール部9において剥離が生じることを抑制することができる。
【0033】
ヒートシール層3の単位面積あたりの質量(ヒートシールニスのドライ塗布量)は、例えば、1~7g/mである。ヒートシール層3は、熱溶融成分を含み、例えば、エチレン-メタクリル酸共重合体の金属塩あるいは固形パラフィンを含む。ヒートシール層3を構成する材料として、ポリエチレン樹脂(例えば、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)やポリプロピレン樹脂(例えば、無延伸ポリプロピレン(CPP))を使用してもよい。
【0034】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、底シール部5,6がスタンディングパウチ50の横方向の全体にわたって一定の幅で形成されている態様(ストレートタイプ)を例示したが、底シール部は上辺が円弧状にカーブした態様(船底タイプ)であってもよい。
【実施例0035】
以下、実施例により本開示を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
以下の材料を使用してスタンディングパウチを作製した。
(1)紙基材
・紙基材A:N晒竜王(商品名、大王製紙株式会社製、坪量:60g/m)
・紙基材B:N晒竜王(商品名、大王製紙株式会社製、坪量:100g/m)
・紙基材C:N晒竜王(商品名、大王製紙株式会社製、坪量:120g/m)
(2)印刷層
・エコカラーHR(東洋インキ株式会社製)
(3)ヒートシール層
・ヒートシールニス(HSニス):セイカダインF-2000W(大日精化工業製)
【0037】
[実施例1]
底テープ及び本体部として、紙基材A(坪量60g/m)を含む包装材を使用し、以下のようにしてスタンディングパウチを作製した。紙基材1の表面に印刷層を形成した。印刷層の単位面積あたりの質量(ドライ塗布量)は3.0g/mとした。紙基材Aの裏面にヒートシール層を形成した。ヒートシール層の単位面積あたりの質量(ドライ塗布量)は3.0g/mとした。このようにして作製した紙包装材を使用し、図1と同様の構成であり且つ以下の態様のスタンディングパウチを作製した。
・スタンディングパウチの縦の長さ:180mm
・スタンディングパウチの横の長さ:120mm
・底テープの折り込み深さ(図1に示す深さD):35mm
・サイドシール部の幅:5mm
・底シールの形状:ストレート(幅:5mm)
【0038】
[実施例2]
本体部として、紙基材B(坪量100g/m)を含む包装材を使用したことの他は実施例1と同様にしてスタンディングパウチを作製した。
【0039】
[実施例3]
本体部として、紙基材C(坪量120g/m)を含む包装材を使用したことの他は実施例1と同様にしてスタンディングパウチを作製した。
【0040】
[比較例1]
底テープ及び本体部として、紙基材B(坪量100g/m)を含む包装材を使用したことの他は実施例1と同様にしてスタンディングパウチを作製した。
【0041】
[比較例2]
底テープとして、紙基材C(坪量120g/m)を含む包装材を使用したことの他は比較例1と同様にしてスタンディングパウチを作製した。
【0042】
[比較例3]
底テープ及び本体部として、紙基材C(坪量120g/m)を含む包装材を使用したことの他は比較例1と同様にしてスタンディングパウチを作製した。
【0043】
<底シール部の曲げモーメントの測定>
実施例及び比較例に係るスタンディングパウチの底シール部(横方向)の曲げモーメントを測定した。
・測定方法:JIS P8125:2000に記載の「テーバーこわさ試験機法」に準拠
・測定機器:テーバー式試験機(株式会社東洋精機製)
・重り:10kg(k=1)
・試料の準備:本体部用の包装材と底テープ用の包装材をヒートシーラーで貼り合わせた後、金属型を使用して、縦38mm×横70mmのサイズに切断して試料を得た。
・試料を左右にそれぞれ15°傾けた際の曲げモーメントを測定した。
・各水準について3回の測定を繰り返し、測定結果の平均値を表1,2に記載した。
【0044】
<評価>
実施例及び比較例に係るスタンディングパウチについて以下の評価を行った。
(1)底開き性の評価
スタンディングパウチの開口部を一方の手で広げつつ、底部を他方の手で広げようとしたとき、底部が問題なく広がる場合を良好と評価した。スタンディングパウチの局所的シール部が剥離したり、底シール部が歪に湾曲した場合には不良と評価した。
(2)落下耐性の評価
9個のスタンディングパウチに、内容物に見立てた楕円筒状物品(重さ:約100g)をそれぞれ収容した。これらのスタンディングパウチを立てた状態で段ボール(222mm×190mm×高さ195mm)内に収容した。その後、段ボールの蓋を閉じ、ガムテープで封止し、JIS Z0200に記載の方法に準拠してスタンディングパウチの落下耐性を評価した。すなわち、高さ80cmの位置から段ボールをコンクリートの地面に対して、1角、3稜、6面の各1回、計10回落下させた。その後、段ボールを開封し、スタンディングパウチの底部の状態を目視により確認した。9個のスタンディングパウチのうち、局所的シール部に破断が認められたスタンディングパウチの個数を表1,2に記載した。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【符号の説明】
【0047】
1A…紙基材(第一及び第二の紙基材)、1B…紙基材(第三の紙基材)、2…印刷層、3…ヒートシール層(第一、第二及び第三のヒートシール層)、5,6…底シール部(第一及び第二の底シール部)、7…サイドシール部(第一及び第二のサイドシール部)、8…切り欠き部、9…局所的シール部、10,20…本体部(第一及び第二の本体部)、30…底テープ、30a…山折り部、40…包装材、50…スタンディングパウチ。
図1
図2
図3
図4
図5