(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056837
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】発色構造体
(51)【国際特許分類】
B32B 33/00 20060101AFI20230413BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20230413BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20230413BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20230413BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20230413BHJP
【FI】
B32B33/00
G02B5/28
G02B5/02 C
G02B5/08 A
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166280
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直也
(72)【発明者】
【氏名】安 祐樹
【テーマコード(参考)】
2H042
2H148
4F100
【Fターム(参考)】
2H042BA04
2H042BA12
2H042BA13
2H042BA16
2H042DA08
2H042DB07
2H042DC02
2H148GA03
2H148GA09
2H148GA24
2H148GA33
4F100AA20B
4F100AA21B
4F100AK01A
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA08B
4F100BA42B
4F100DD01A
4F100GB87
4F100JD06C
4F100JG05B
4F100JN01A
4F100JN06B
4F100JN18B
4F100JN28
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】発色構造体の意匠性を高めることを可能とした発色構造体を提供する。
【解決手段】構造層の表面11Fは、複数の狭拡散領域11FNと複数の広拡散領域11FWとを含む。各狭拡散領域11FNおよび各広拡散領域11FWは、第1方向D1に沿って延びる。第1方向D1と直交する第2方向D2において、狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとが交互に並ぶ。複数の狭拡散領域11FNは、第2方向D2において第1長さを有する狭拡散領域11FNと、第2方向D2において第2長さを有する狭拡散領域11FNとを含み、第2長さは第1長さと異なる。複数の広拡散領域11FWは、第2方向D2において第3長さを有する広拡散領域11FWと、第2方向D2において第4長さを有する広拡散領域11FWとを含み、第4長さは第3長さと異なる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する構造層と、
前記表面に位置し、前記表面に追従する形状を有した光学層であって、干渉によって強められた光を反射する前記光学層と、を備える発色構造体であって、
前記表面は、複数の狭拡散領域と複数の広拡散領域とを含み、
各狭拡散領域および各広拡散領域は、第1方向に沿って延び、
前記第1方向と交差する第2方向において、前記狭拡散領域と前記広拡散領域とが交互に並び、
前記複数の狭拡散領域は、前記第2方向において第1長さを有する前記狭拡散領域と、前記第2方向において第2長さを有する前記狭拡散領域とを含み、前記第2長さは前記第1長さと異なり、
前記複数の広拡散領域は、前記第2方向において第3長さを有する前記広拡散領域と、前記第2方向において第4長さを有する前記広拡散領域とを含み、前記第4長さは前記第3長さと異なる
発色構造体。
【請求項2】
前記第2方向において、
前記広拡散領域の長さにおける最大値に対する、前記狭拡散領域の長さにおける最小値の比が0.3以上であり、前記広拡散領域の前記長さにおける前記最大値に対する、前記狭拡散領域の前記長さにおける最大値の比が1.0以下である、または、
前記狭拡散領域の長さにおける最大値に対する、前記広拡散領域の前記長さにおける最小値の比が0.3以上であり、前記狭拡散領域の前記長さにおける前記最大値に対する、前記広拡散領域の前記長さにおける前記最大値の比が1.0以下である
請求項1に記載の発色構造体。
【請求項3】
前記複数の狭拡散領域および前記複数の広拡散領域の少なくとも一方が拡散領域群であり、
前記拡散領域群において、前記第2方向における長さが、拡散領域毎に非周期的に変わる
請求項1または2に記載の発色構造体。
【請求項4】
各広拡散領域は、複数の凸部または複数の凹部のいずれかである複数の凹凸要素を備え、
各狭拡散領域は、複数の凹凸要素、または、平坦な面を備える
請求項1から3のいずれか一項に記載の発色構造体。
【請求項5】
前記表面と対向する視点から見て、前記凹凸要素は楕円形状、または、楕円に内接する多角形状を有する
請求項4に記載の発色構造体。
【請求項6】
前記凹凸要素は、長軸と短軸とを有し、
前記長軸の長さは、10μm以上200μm以下の範囲内に含まれ、
前記長軸の長さに対する前記短軸の長さの比は、0.1以上0.8以下の範囲内に含まれる
請求項5に記載の発色構造体。
【請求項7】
前記構造層の厚さ方向において、前記凹凸要素が有する寸法は、5μm以上50μm以下の範囲内に含まれる
請求項6に記載の発色構造体。
【請求項8】
各狭拡散領域は、前記複数の凹凸要素を備え、
前記表面と対向する視点から見て、
各広拡散領域が備える前記凹凸要素は、各狭拡散領域が備える前記凹凸要素よりも大きい
請求項5から7のいずれか一項に記載の発色構造体。
【請求項9】
前記凹凸要素は、長軸と短軸とを有し、
各狭拡散領域は、前記複数の凹凸要素を備え、
各広拡散領域が備える前記凹凸要素は、各狭拡散領域が備える前記凹凸要素と同一の形状を有し、
前記表面と対向する視点から見て、
各広拡散領域の前記凹凸要素が有する前記長軸の向きが、各狭拡散領域の前記凹凸要素が有する前記長軸の向きと交差する
請求項5に記載の発色構造体。
【請求項10】
前記光学層は、複数の誘電体層を備え、
前記光学層の厚さ方向において、互いに隣合う誘電体層の屈折率が互いに異なる
請求項1から9のいずれか一項に記載の発色構造体。
【請求項11】
前記構造層に対して前記光学層とは反対側に位置し、前記光学層を透過した光の少なくとも一部を吸収する吸収層をさらに備える
請求項1から10のいずれか一項に記載の発色構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発色構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
発色構造体の一例は、凹凸構造層と多層膜層とを備えている。凹凸構造層は、複数の凹凸要素である凹凸構造を表面に有している。多層膜層は、凹凸構造上に位置し、これによって、凹凸構造に追従した形状を有している。多層膜層は、多層膜層における光の干渉によって強められた反射光を射出するように構成されている。これにより、発色構造体は、多層膜層での干渉による構造色を呈する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した発色構造体は、発色構造体が付された物品の意匠性を高める目的で、様々な物品に付される。発色構造体によって物品にもたらされる意匠性は、物品の価値および誘目性などを高めることに寄与するから、より高い意匠性を有した発色構造体が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための発色構造体は、表面を有する構造層と、前記表面に位置し、前記表面に追従する形状を有した光学層であって、干渉によって強められた光を反射する前記光学層と、を備える。前記表面は、複数の狭拡散領域と複数の広拡散領域とを含む。各狭拡散領域および各広拡散領域は、第1方向に沿って延びる。前記第1方向と交差する第2方向において、前記狭拡散領域と前記広拡散領域とが交互に並ぶ。前記複数の狭拡散領域は、前記第2方向において第1長さを有する前記狭拡散領域と、前記第2方向において第2長さを有する前記狭拡散領域とを含み、前記第2長さは前記第1長さと異なる。前記複数の広拡散領域は、前記第2方向において第3長さを有する前記広拡散領域と、前記第2方向において第4長さを有する前記広拡散領域とを含み、前記第4長さは前記第3長さと異なる。
【0006】
上記発色構造体によれば、拡散された光の広がる範囲が相対的に狭い狭拡散領域と、拡散された光の広がる範囲が相対的に広い広拡散領域とが交互に並ぶから、発色構造体は、狭拡散領域と広拡散領域とのコントラストによる絵柄を表示することが可能である。さらには、各拡散領域が第2方向における長さの異なる拡散領域を含むから、第2方向における長さが同一である領域のみを含む場合のような絵柄の単調さが軽減され、絵柄の複雑さが高められる。これにより、発色構造体の意匠性が高められる。
【0007】
上記発色構造体では、前記第2方向において、前記広拡散領域の長さにおける最大値に対する、前記狭拡散領域の長さにおける最小値の比が0.3以上であり、前記広拡散領域の前記長さにおける前記最大値に対する、前記狭拡散領域の前記長さにおける最大値の比が1.0以下である、または、前記狭拡散領域の長さにおける最大値に対する、前記広拡散領域の前記長さにおける最小値の比が0.3以上であり、前記狭拡散領域の前記長さにおける前記最大値に対する、前記広拡散領域の前記長さにおける前記最大値の比が1.0以下であってもよい。
【0008】
上記発色構造体によれば、第2方向において、狭拡散領域の長さと広拡散領域の長さとの差が大きくなりすぎないから、狭拡散領域と広拡散領域とのコントラストによる絵柄が表示されやすい。
【0009】
上記発色構造体において、前記複数の狭拡散領域および前記複数の広拡散領域の少なくとも一方が拡散領域群であり、前記拡散領域群において、前記第2方向における長さが、拡散領域毎に非周期的に変わってもよい。
【0010】
上記発色構造体によれば、拡散領域群において第2方向における長さが拡散領域毎に非周期的に変わるから、拡散領域群の全体において非周期性を有した絵柄を表示することが可能である。
【0011】
上記発色構造体において、各広拡散領域は、複数の凸部または複数の凹部のいずれかである複数の凹凸要素を備え、各狭拡散領域は、複数の凹凸要素、または、平坦な面を備えてもよい。
【0012】
上記発色構造体において、前記表面と対向する視点から見て、前記凹凸要素は楕円形状、または、楕円に内接する多角形状を有してもよい。
【0013】
上記発色構造体において、前記凹凸要素は、長軸と短軸とを有し、前記長軸の長さは、10μm以上200μm以下の範囲内に含まれ、前記長軸の長さに対する前記短軸の長さの比は、0.1以上0.8以下の範囲内に含まれてもよい。
【0014】
上記発色構造体によれば、長軸および短軸の各々の長さが10μm以上であることによって、複数の凸部に入射した光が回折することが抑えられる。長軸および短軸の各々の長さが200μm以下であることによって、発色構造体の観察者に、発色構造体を拡大する道具を用いない場合において、凸部が視認されることが抑えられる。長軸の長さに対する短軸の長さの比が0.8以下であることによって、凸部が異方的に光を拡散することができる。
【0015】
上記発色構造体では、前記構造層の厚さ方向において、前記凹凸要素が有する寸法は、5μm以上50μm以下の範囲内に含まれてもよい。この発色構造体によれば、凸部の寸法が5μm以上50μm以下の範囲内に含まれることによって、凸部の形成が容易である。
【0016】
上記発色構造体において、各狭拡散領域は、前記複数の凹凸要素を備え、前記表面と対向する視点から見て、各広拡散領域が備える前記凹凸要素は、各狭拡散領域が備える前記凹凸要素よりも大きくてもよい。
【0017】
上記発色構造体によれば、各拡散領域が備える凹凸要素の大きさによって、広拡散領域が備える凹凸要素によって光が散乱される範囲を、狭拡散領域が備える凹凸要素によって光が散乱される範囲よりも大きくすることが可能である。
【0018】
上記発色構造体において、前記凹凸要素は、長軸と短軸とを有し、各狭拡散領域は、前記複数の凹凸要素を備え、各広拡散領域が備える前記凹凸要素は、各狭拡散領域が備える前記凹凸要素と同一の形状を有し、前記表面と対向する視点から見て、各広拡散領域の前記凹凸要素が有する前記長軸の向きが、各狭拡散領域の前記凹凸要素が有する前記長軸の向きと交差してもよい。
【0019】
上記発色構造体によれば、各拡散領域が備える凹凸要素における長軸の向きによって、広拡散領域が備える凹凸要素によって光が散乱される範囲を、狭拡散領域が備える凹凸要素によって光が散乱される範囲よりも大きくすることが可能である。
【0020】
上記発色構造体において、前記光学層は、複数の誘電体層を備え、前記光学層の厚さ方向において、互いに隣合う誘電体層の屈折率が互いに異なってもよい。この発色構造体によれば、光学層を構成する誘電体層の屈折率に応じた構造色を発色構造体が呈することが可能である。
【0021】
上記発色構造体において、前記構造層に対して前記光学層とは反対側に位置し、前記光学層を透過した光の少なくとも一部を吸収する吸収層をさらに備えてもよい。この発色構造体によれば、光学層における反射光の支配色の波長域とは異なる波長域の光が、発色構造体の内部における各層の界面、および、発色構造体と発色構造体の外部との界面において反射することが抑えられる。これにより、光学層における反射光の支配色の波長域とは異なる波長域の光が観察者に向けて射出されることが抑えられる。結果として、発色構造体が呈する支配色の鮮明さが高められる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、発色構造体の意匠性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態における発色構造体の構造を示す断面図である。
【
図2】
図1が示す発色構造体が備える表面と対向する視点から見た表面の構造を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図1が示す発色構造体が備える凸部の構造における第1例を示す三面図である。
【
図4】
図1が示す発色構造体が備える凸部の構造における第2例を示す三面図である。
【
図5】
図3が示す凸部における長軸の向きを説明するための平面図である。
【
図6】
図2が示す発色構造体の構造における一例を示す平面図である。
【
図7】
図2が示す発色構造体の構造における一例を示す平面図である。
【
図8】
図2が示す発色構造体の構造における一例を示す平面図である。
【
図9】発色構造体の作用を説明するための模式図である。
【
図10】発色構造体の作用を説明するための模式図である。
【
図11】発色構造体の作用を説明するための模式図である。
【
図12】発色構造体の作用を説明するための模式図である。
【
図13】発色構造体の作用を説明するための作用図である。
【
図14】発色構造体の作用を説明するための作用図である。
【
図15】発色構造体の作用を説明するための作用図である。
【
図16】正反射での反射光のスペクトルを示すグラフ。
【
図17】狭拡散領域から反射された光の強度と波長との関係を受光角毎に示すグラフ。
【
図18】広拡散領域から反射された光の強度と波長との関係を受光角毎に示すグラフ。
【
図21】狭拡散領域から反射された光の強度と波長との関係を受光角毎に示すグラフ。
【
図22】広拡散領域から反射された光の強度と波長との関係を受光角毎に示すグラフ。
【
図23】発色構造体の一例を取付対象の一例に適用した例を示す斜視図である。
【
図24】
図23が示す発色構造体の作用を説明するための模式図である。
【
図26】発色構造体の第1変更例における構造を示す断面図である。
【
図27】発色構造体の第2変更例における構造を示す斜視図である。
【
図28】
図27が示す発色構造体の作用を説明するための作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1から
図25を参照して、発色構造体の一実施形態を説明する。なお、本開示において、可視領域の光とは、360nm以上830nm以下の波長域に含まれる光である。
【0025】
[構造]
図1から
図8を参照して、発色構造体の構造を説明する。
図1が示すように、発色構造体10は、構造層11と光学層12とを備えている。構造層11は、表面11Fを有している。光学層12は、表面11Fに位置し、表面11Fに追従する形状を有している。光学層12は、干渉によって強められた光を反射する。光学層12は、複数の誘電体層を備えている。光学層12の厚さ方向において、互いに隣り合う誘電体層の屈折率が互いに異なっている。発色構造体10は、光学層12を構成する誘電体層の屈折率に応じた構造色を呈することが可能である。
【0026】
構造層11は、可視領域の光に対して透明な樹脂、すなわち、可視領域の光を透過する合成樹脂から形成される。構造層11を形成する合成樹脂は、例えば、紫外線硬化性樹脂または熱可塑性樹脂であってよい。
【0027】
本実施形態において、光学層12は、複数の高屈折率層12aと複数の低屈折率層12bとを備えている。光学層12において、高屈折率層12aと低屈折率層12bとが交互に積層されている。高屈折率層12aは、低屈折率層12bよりも高い屈折率を有している。
【0028】
高屈折率層12aと低屈折率層12bとの各々は、誘電体薄膜である。例えば、光学層12のなかで、構造層11と接する層は高屈折率層12aであり、光学層12の最外層は低屈折率層12bである。高屈折率層12aと低屈折率層12bとは、可視領域の光に対して透明な材料、すなわち、可視領域の光を透過する材料から形成される。高屈折率層12aの屈折率が、低屈折率層12bの屈折率よりも高ければ、高屈折率層12aの材料と低屈折率層12bの材料は限定されないが、高屈折率層12aの屈折率と低屈折率層12bとの屈折率の差が大きいほど、少ない積層数によって高い強度の反射光を得ることが可能である。
【0029】
そのため、高屈折率層12aと低屈折率層12bとを無機化合物から形成する場合には、高屈折率層12aが二酸化チタン(TiO2)から形成され、かつ、低屈折率層12bが二酸化珪素(SiO2)から形成されることが好ましい。なお、高屈折率層12aおよび低屈折率層12bの各々は、有機化合物から形成されてもよい。
【0030】
高屈折率層12aおよび低屈折率層12bの各々の膜厚は、発色構造体にて発色させる色に応じて、転送行列法などを用いて設計されればよい。高屈折率層12aおよび低屈折率層12bの各々の膜厚は、例えば、10nm以上500nm以下の範囲から選択される。光学層12が備える各層の膜厚は、すべて同一であってもよい。あるいは、光学層12は、第1の厚さを有する層と、第1の厚さとは異なる第2の厚さを有する層とを有してもよい。
【0031】
図1が示す例では、光学層12は、3層の高屈折率層12aと3層の低屈折率層12bとを備えている。光学層12において、高屈折率層12aが構造層11に接し、かつ、高屈折率層12aと低屈折率層12bとが交互に積層されている。なお、光学層12のうち、低屈折率層12bが構造層11に接し、かつ、低屈折率層12bと高屈折率層12aとが交互に積層されてもよい。また、高屈折率層12aと低屈折率層12bとが交互に積層されていれば、高屈折率層12aの層数と、低屈折率層12bの層数とが異なってもよい。また、光学層12は、第1屈折率を有する誘電体層、第2屈折率を有する誘電体層、および、第3屈折率を有する誘電体層を含んでもよい。
【0032】
光学層12に光が入射すると、高屈折率層12aと低屈折率層12bとの界面の各々において反射した光が干渉する。また、構造層11の表面11Fが凹凸を有するから、各界面に対する光の入射角度が発色構造体10内で変わるため、反射光は様々な方向に射出される。すなわち、光学層12の反射光が散乱される。結果として、様々な方向からの入射光に対し、干渉によって強められた特定の波長域の光が、様々な方向に射出され、これによって、特定の色を有した光が広い観察角度において視認される。なお、構造層11に対して光学層12とは反対側から発色構造体10が観察された場合でも、また、光学層12に対して構造層11とは反対側から発色構造体10が観察された場合でも、上述した特定の波長域の反射光は観察される。
【0033】
図2は、表面11Fと対向する視点から見た発色構造体10の構造を模式的に示している。
図2が示すように、表面11Fは、複数の狭拡散領域11FNと複数の広拡散領域11FWとを含んでいる。狭拡散領域11FNにおいて拡散された光が広がる範囲は、広拡散領域11FWにおいて拡散された光が広がる範囲よりも狭い。各狭拡散領域11FNおよび各広拡散領域11FWは、第1方向D1に沿って延びている。第1方向D1と直交する第2方向D2において、狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとが交互に並んでいる。
【0034】
狭拡散領域11FNは、第2方向D2に沿う長さLNを有している。広拡散領域11FWは、第2方向D2に沿う長さLWを有している。複数の狭拡散領域11FNは、第2方向D2において第1長さを有する狭拡散領域11FNと、第2方向D2において第2長さを有する狭拡散領域11FNとを含んでいる。第2長さは、第1長さと異なる。複数の広拡散領域11FWは、第2方向D2において第3長さを有する狭拡散領域11FNと、第2方向D2において第4長さを有する広拡散領域11FWとを含んでいる。第4長さは、第3長さと異なる。
【0035】
拡散された光の広がる範囲が相対的に狭い狭拡散領域11FNと、拡散された光の広がる範囲が相対的に広い広拡散領域11FWとが交互に並ぶから、発色構造体10は、狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとのコントラストによる絵柄を表示することが可能である。すなわち、狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとの明暗の差による絵柄を表示することが可能である。さらには、各拡散領域11FN,11FWが第2方向D2における長さの異なる拡散領域11FN,11FWを含む。これにより、発色構造体10が表示する絵柄において、第2方向D2における長さが同一である領域のみを含む場合のような単調さが軽減され、絵柄の複雑さが高められる。結果として、発色構造体10の意匠性が高められる。こうした発色構造体10の高い意匠性は、発色構造体10が付された物品の誘目性を高めること、および、価値を高めることなどに寄与する。
【0036】
第2方向D2において、広拡散領域11FWの長さLWにおける最大値に対する、狭拡散領域11FNの長さLNにおける最小値の比が0.3以上であり、広拡散領域11FWの長さLWにおける最大値に対する、狭拡散領域11FNの長さLNにおける最大値の比が1.0以下であってよい。または、狭拡散領域11FNの長さLNにおける最大値に対する、広拡散領域11FWの長さLWにおける最小値の比が0.3以上であり、狭拡散領域11FNの長さLNにおける最大値に対する、広拡散領域11FWの長さLWにおける最大値の比が1.0以下であってよい。
【0037】
狭拡散領域11FNの長さLNにおける最小値は、最小値LNmnであり、狭拡散領域11FNの長さLNにおける最大値は、最大値LMMXである。広拡散領域11FWにおける長さLWにおける最小値は、最小値LWmnであり、広拡散領域11FWの長さLWにおける最大値は、最大値LWMXである。狭拡散領域11FNの長さLNと、広拡散領域11FWの長さLWとは、以下の関係を満たすことが好ましい。
【0038】
LNmn/LWMX≧0.3
LNMX/LWMX≦1.0
LWmn/LNMX≧0.3
LWMX/LNMX≦1.0
【0039】
これにより、第2方向D2において、狭拡散領域11FNの長さLNと広拡散領域11FWの長さLWとの差が大きくなりすぎないから、狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとのコントラストによる絵柄が表示されやすい。
【0040】
複数の狭拡散領域11FNおよび複数の広拡散領域11FWの少なくとも一方が拡散領域群である。拡散領域群において、第2方向D2における長さが、拡散領域11FN,11FW毎に非周期的に変わってよい。すなわち、複数の狭拡散領域11FNにおいて、第2方向D2における長さLNが狭拡散領域11FN毎に非周期的に変わってよい。また、複数の広拡散領域11FWにおいて、第2方向D2における長さLWが広拡散領域11FW毎に非周期的に変わってよい。なお、
図2が示す例では、複数の狭拡散領域11FNおよび複数の広拡散領域11FWのそれぞれが、拡散領域群である。
【0041】
このように、拡散領域群において第2方向D2における長さが拡散領域11FN,11FW毎に非周期的に変わるから、拡散領域群の全体において非周期性を有した絵柄を表示することが可能である。
【0042】
複数の狭拡散領域11FN、および、複数の広拡散領域11FWの各々について、拡散領域11FN,11FW毎の第2方向D2における長さを疑似乱数列に基づいて設定することができる。疑似乱数列は、例えば、整数の一様分布乱数、一様乱数、2進乱数、正規乱数、棄却サンプリング法、マルコフ連鎖モンテカルロ法などによって得られる。なお、正規乱数は、例えば、逆関数サンプリング法、ボックス=ミュラー法、ジッグラト法、マルサグリア法のいずれかであってよい。マルコフ連鎖モンテカルロ法は、メトロポリス・ヘイスティングス法、ハミルトニアン・モンテカルロ法、ランジュバン・モンテカルロ法のいずれかであってよい。疑似乱数は、数理モデルに基づいた関数から生成されてもよい。数理モデルは、力学的モデルであってよい。力学的モデルは、疑似乱数による外乱の項、弾性の項、および、抵抗の項の加算式であってよい。
【0043】
第2方向D2において、互いに隣合う狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとの境界は、
図2が示すように直線状を有してもよい。あるいは、狭拡散領域11FNと広拡散用行き11FWとの境界は、曲線状を有してもよい。曲線は、第1方向D1に沿って並ぶ複数の波から形成される。曲線状は、例えばサイン波状であってよい。あるいは、狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとの境界は、折線状を有してよい。折線は、第1方向D1に沿って並ぶ複数の屈曲点を有し、かつ、屈曲点間が直線で結ばれている。折線状は、例えば、矩形波状でもよいし、三角波状でもよい。
【0044】
図3は、各広拡散領域11FWが備える凹凸要素の第1例を示している。
図4は、各広拡散領域11FWが備える凹凸要素の第2例を示している。なお、各広拡散領域11FWは、複数の凸部または複数の凹部のいずれかである複数の凹凸要素を備えている。
図3および
図4は、凹凸要素の一例である凸部をそれぞれ示している。凹凸要素は、凹部であってもよい。また、各狭拡散領域11FNは、広拡散領域11FWと同様に、複数の凹凸要素を備えてもよいし、または、平坦な面を備えてもよい。
【0045】
図3が示すように、表面11Fと対向する視点から見て、凸部11Aは楕円形状を有することができる。凸部11Aは、長軸LAと短軸SAとを有している。長軸LAの長さLLAは、例えば、10μm以上200μm以下の範囲内に含まれてよい。長軸LAの長さLLAに対する短軸SAの長さLSAの比(LSA/LLA)は、例えば、0.1以上0.8以下の範囲内に含まれてよい。
【0046】
長軸LAおよび短軸SAの各々の長さが10μm以上であることによって、複数の凸部11Aに入射した光が回折することが抑えられる。長軸LAおよび短軸SAの各々の長さが200μm以下であることによって、発色構造体10の観察者に、発色構造体10を拡大する道具を用いない場合において、凸部11Aが視認されることが抑えられる。長軸LAの長さに対する短軸SAの長さLSAの比が0.8以下であることによって、凸部11Aが異方的に光を拡散することができる。
【0047】
構造層11の厚さ方向において、凸部11Aが有する寸法は、例えば、5μm以上50μm以下の範囲内に含まれてよい。凸部11Aが有する寸法は、10μm以上25μm以下の範囲内に含まれることが好ましい。凸部11Aの寸法が5μm以上50μm以下の範囲内に含まれることによって、凸部11Aの形成が容易である。なお、本実施形態では、凹凸要素が凸部11Aとして具体化されているから、構造層11の厚さ方向において凸部11Aが有する寸法は、凸部11Aの高さHである。凸部11Aの高さHは、凸部11A間の谷を含む平面と凸部11Aとの間の距離における最大値である。
【0048】
厚さ方向に沿う断面において、凸部11Aの外径は孤状を有している。凸部11Aは、凸状のマイクロレンズである。凸部11Aの接触角θCは、例えば5°以上40°以下であってよい。本開示において、凸部11Aの接触角θCは、凸部11Aの断面において接線法を用いて算出される。凸部11Aの接触角θCが40°以下であることによって、切削による凸部11Aの形成が可能である。
【0049】
図4が示すように、表面11Fと対向する視点から見て、凸部11Aは楕円に内接する多角形状を有することができる。
図4が示す例では、凸部11Aは、六角形状を有している。なお、凸部11Aは六角形状以外の多角形状を有してもよい。
【0050】
凸部11Aは、長軸LAと短軸SAとを有している。長軸LAの長さLLAは、例えば、10μm以上200μm以下の範囲内に含まれてよい。長軸LAの長さLLAに対する短軸SAの長さLSAの比(LSA/LLA)は、0.1以上0.8以下の範囲内に含まれてよい。
【0051】
長軸LAおよび短軸SAの各々の長さが10μm以上であることによって、複数の凸部11Aに入射した光が回折することが抑えられる。長軸LAおよび短軸SAの各々の長さが200μm以下であることによって、発色構造体10の観察者に、発色構造体10を拡大する道具を用いない場合において、凸部11Aが視認されることが抑えられる。長軸LAの長さに対する短軸SAの長さLSAの比が0.8以下であることによって、凸部11Aが異方的に光を拡散することができる。
【0052】
構造層11の厚さ方向において、凸部11Aが有する寸法は、5μm以上50μm以下の範囲内に含まれてよい。凸部11Aが有する寸法は、10μm以上25μm以下の範囲内に含まれることが好ましい。凸部11Aの寸法が5μm以上50μm以下の範囲内に含まれることによって、凸部11Aの形成が容易である。なお、本実施形態では、凹凸要素が凸部11Aとして具体化されているから、構造層11の厚さ方向において凸部11Aが有する寸法は、凸部11Aの高さHである。凸部11Aの高さHは、凸部11A間の谷を含む平面と凸部11Aとの間の距離における最大値である。
【0053】
厚さ方向に沿う断面において、凸部11Aの外径は孤状を有している。凸部11Aは、凸状のマイクロレンズである。凸部11Aの接触角θCは、例えば5°以上40°以下であってよい。本開示において、凸部11Aの接触角θCは、凸部11Aの断面において接線法を用いて算出される。凸部11Aの接触角θCが40°以下であることによって、切削による凸部11Aの形成が可能である。
【0054】
図5は、表面11Fと対向する視点から見た場合の凸部11Aの向きを示している。なお、
図5では、凹凸要素の第1例が例示されている。
図5が示すように、破線で示される凸部11Aでは、凸部11Aの長軸LAが第1方向D1と平行な方向に沿って延びている。一方で、実線で示される凸部11Aでは、凸部11Aの長軸LAが、第1方向D1に対して傾斜角θTだけ傾いている。例えば、広拡散領域11FWに含まれる凸部11Aの向きと、狭拡散領域11FNに含まれる凸部11Aの向きとが異なる場合には、広拡散領域11FWにおける凸部11Aの長軸LAに対する狭拡散領域11FNにおける凸部11Aの長軸LAの傾斜角θTは、例えば、20°以上90°以下の範囲内に含まれてよい。傾斜角θTは、45°以上90°以下の範囲内に含まれることが好ましい。傾斜角θTが20°以上90°以下の範囲内に含まれることによって、広拡散領域11FWと狭拡散領域11FNとの間におけるコントラストを高めることが可能である。
【0055】
図6から
図8の各々は、表面11Fと対向する平面視における広拡散領域11FWの構造と狭拡散領域11FNの構造における例を示している。
図6が示す例では、各広拡散領域11FWは、複数の凸部11AWを備えている。各狭拡散領域11FNは、複数の凸部11ANを備えている。表面11Fと対向する視点から見て、各広拡散領域11FWが備える凸部11AWは、各狭拡散領域11FNが備える凸部11ANよりも大きい。本例によれば、各拡散領域11FN,11FWが備える凸部11AN,11AWの大きさによって、広拡散領域11FWが備える凸部11AWによって光が散乱される範囲を、狭拡散領域11FNが備える凸部11ANによって光が散乱される範囲よりも大きくすることが可能である。広拡散領域11FWにおいて、凸部11AWの長軸LAは、第1方向D1と平行な方向に沿って延びている。狭拡散領域11FNにおいて、凸部11ANの長軸LAは、第1方向D1と平行な方向に沿って延びている。すなわち、凸部11AWの長軸LAと、凸部11ANの長軸LAとは、互いに平行である。
【0056】
図7が示す例では、各広拡散領域11FWは、複数の凸部11AWを備えている。各狭拡散領域11FNは、複数の凸部11ANを備えている。各広拡散領域11FWが備える凸部11AWは、各狭拡散領域11FNが備える凸部11ANと同一の形状を有している。表面11Fと対向する視点から見て、各広拡散領域11FWの凸部11AWが有する長軸LAの向きが、各狭拡散領域11FNの凸部11ANが有する長軸LAの向きと交差している。各拡散領域11FN,11FWが備える凸部11AN,11AWにおける長軸LAの向きによって、広拡散領域11FWが備える凸部11AWによって光が散乱される範囲を、狭拡散領域11FNが備える凸部11ANによって光が散乱される範囲よりも大きくすることが可能である。表面11Fと対向する所定の視点から見て、広拡散領域11FWが備える凸部11AWによって光が散乱される範囲が、狭拡散領域11FNが備える凸部11ANによって光が散乱される範囲よりも大きくなる。
図7が示す例では、凸部11AWの長軸LAと、凸部11ANの長軸LAとは直交している。
【0057】
図8が示す例では、各広拡散領域11FWは、複数の凸部11AWを備えている。これに対して、各狭拡散領域11FNは、凹凸要素を有してない。言い換えれば、狭拡散領域11FNは、広拡散領域11FWに対して平坦な領域である。
【0058】
なお、
図6から
図8が示す例では、凸部11AN,11AWが楕円状を有しているが、凸部11AN,11AWは上述したように多角形状を有してもよい。なお、凸部11AN,11AWが多角形状を有する場合には、表面11Fにおいて凸部11AN,11AWが占める割合を高めることが可能である。また、
図6から
図8が示す例では、凸部11AN,11AWが格子状に配列されているが、凸部11AN,11AWの向きが所定の方向に固定されていれば、各拡散領域11FN,11FW内における凸部11AN,11AWはランダムに配置されてもよい。また、狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとの間において、凸部11AN,11AWの密度は互いに同じであってもよいし、異なってもよい。
【0059】
[作用]
図9から
図15を参照して、発色構造体10の作用を説明する。なお、
図9から
図15のうち、
図9から
図12を参照して、発色構造体10の表面11Fと対向する平面視において、発色構造体10が表示することが可能な絵柄の例を説明する。
図9から
図12が示す発色構造体10では、狭拡散領域11FNは、凸部11Aを有している。これに対して、
図13から
図15を参照して、観察者に対する発色構造体10の向きと、発色構造体10から射出される光の波長との関係を説明する。
【0060】
図9は、発色構造体10が、第1方向D1に沿って延びる直線状を有した狭拡散領域11FNと、第1方向D1に沿って延びる直線状を有した広拡散領域11FWとを備える例を示している。なお、各拡散領域11FN,11FWに位置する凸部11AN,11AWの長軸LAも第1方向D1に沿って延びている。
【0061】
図9が示すように、狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとは、第2方向D2に沿って交互に並んでいるから、発色構造体10は、第1方向D1に沿って延びるヘアラインが第2方向D2に沿って連なるような絵柄を表示することができる。さらには、狭拡散領域11FNおよび広拡散領域11FWが配置された領域の外形が星型状を有するから、発色構造体10は、ヘアラインによって形成された星型を表示することが可能である。なお、表面11Fのうち、狭拡散領域11FNおよび広拡散領域11FWが配置された領域の外は、平坦領域11FFである。平坦領域11FFは、凸部11Aを有していない。
【0062】
図10は、発色構造体10が、第1方向D1に沿って延びる波線状を有した狭拡散領域11FNと、第1方向D1に沿って延びる波線状を有した広拡散領域11FWとを備える例を示している。なお、各拡散領域11FN,11FWに位置する凸部11AN,11AWの長軸LAも第1方向D1に沿って延びている。
【0063】
図10が示すように、狭拡散領域11FNおよび広拡散領域11FWの各々は、第1方向D1に沿って延び、かつ、第1方向D1に沿って並ぶ複数の屈曲点を有している。狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとは、第2方向D2に沿って交互に並んでいる。そのため、発色構造体10は、狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとのコントラストにより、第2方向D2に沿って複数の波線が連なった絵柄を表示することが可能である。なお、表面11Fのうち、狭拡散領域11FNおよび広拡散領域11FWが配置された領域の外は、平坦領域11FFである。平坦領域11FFは、凸部11Aを有していない。
【0064】
図11は、発色構造体10が、表面11Fの中心から延びる直線状を有した狭拡散領域11FNと、表面11Fの中心から延びる直線状を有した広拡散領域11FWとを備える例を示している。なお、各拡散領域11FN,11FWに位置する凸部11AN,11AWの長軸LAは、その凸部11AN,11AWが位置する拡散領域11FN,11FWが延びる方向に沿って延びている。
【0065】
図11が示すように、狭拡散領域11FNおよび広拡散領域11FWの各々は、表面11Fの中心から延びる直線状を有している。狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとは、例えば、各拡散領域11FN,11FWに交差する直線SLに沿って交互に並んでいる。なお、狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとが交互に並んでいれば、狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとの間に、平坦領域11FFが位置してもよい。発色構造体10は、狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとのコントラストにより、表面11Fの中心から放射状に延びる複数の直線を含む絵柄を表示することが可能である。
【0066】
図12は、発色構造体10が、円環状を有した狭拡散領域11FNと、円環状を有した広拡散領域11FWとを備える例を示している。
図12が示すように、狭拡散領域11FNおよび広拡散領域11FWは、それぞれ円環状を有している。表面11Fのうち、第1の領域に位置する狭拡散領域11FNおよび広拡散領域11FWは、同心円状を有している。そのため、狭拡散領域11FNおよび広拡散領域11FWの径方向において、狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとが交互に並んでいる。なお、各拡散領域11FN,11FWに位置する凸部11AN,11AWは、凸部11AN,11AWの長軸LAがその凸部11AN,11AWが位置する拡散領域11FN,11FWの周方向に沿うように並んでいる。
【0067】
表面11Fのうち、第1の領域とは異なる第2領域にも、狭拡散領域11FNおよび広拡散領域11FWが位置している。第2領域において、狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとは、同心円状を有している。狭拡散領域11FNおよび広拡散領域11FWの径方向において、狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとが交互に並んでいる。
【0068】
そのため、第1の領域および第2の領域の各々において、発色構造体10は、狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとのコントラストにより、狭拡散領域11FNおよび広拡散領域11FWの径方向において、複数の円環が連なった絵柄を表示することが可能である。
【0069】
図13は、発色構造体10の光学層12と発色構造体10の観察者とが対向する状態であって、かつ、観察者が発色構造体10が反射する光を観察する状態を示している。
図13が示すように、発色構造体10に入射した光である入射光ILは、光学層12から発色構造体10内に入射する。そして、入射光ILは、発色構造体10内において反射され、これによって、入射光ILの一部が反射光RLとして発色構造体10から射出される。なお、上述したように、光学層12は、干渉によって強められた特定の波長域の光を反射光RLとして射出する。これにより、観察者OBは、特定の波長域の光である反射光RLを視認することができる。
【0070】
図14は、発色構造体10の構造層11と観察者OBとが対向する状態であって、かつ、観察者OBが発色構造体10が反射する光を観察する状態を示している。
図14が示すように、入射光ILは、構造層11から発色構造体10内に入射する。構造層11から入射光ILが入射した場合であっても、光学層12から入射光ILが入射した場合と同様に、光学層12において特定の波長域の光が干渉によって強められる。そのため、光学層12と観察者OBが対向する場合と同じ波長域の光が、反射光RLとして発色構造体10から射出される。これにより、観察者OBは、特定の波長域の光である反射光RLを視認することができる。
【0071】
図15は、発色構造体10の光学層12と観察者OBとが対向する状態であって、かつ、観察者OBが発色構造体10を透過する光を観察する状態を示している。
図15が示すように、構造層11から入射した入射光ILのうち、特定の波長域の光は光学層12での干渉によって強められた状態で反射されるから、発色構造体10を透過した透過光TLには、光学層12において強められる特定の波長域の光は含まれていない。そのため、観察者OBは、特定の波長域以外の光である透過光TLを視認することができる。すなわち、観察者OBが反射光RLを観察した場合において観察者OBが視認する発色構造体10の色は、観察者OBが透過光TLを観察した場合において観察者OBが視認する発色構造体10の色と異なっている。
【0072】
[反射光の波長]
図16から
図22を参照して、狭拡散領域11FNから反射される光の波長、および、広拡散領域11FWから反射される光の波長を説明する。
【0073】
図16から
図20は、楕円状の凸部を備える狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとを有した発色構造体10に対するシミュレーションによって得られた結果を示している。なお、シミュレーションにおいて、狭拡散領域11FNが備える凸部11ANの短軸の長さを0.12mmに設定し、長軸の長さを0.19mmに設定し、高さを0.011mmに設定した。すなわち、凸部11ANにおいて、高さを短軸の長さで除算した値であるアスペクト比を0.058に設定した。また、広拡散領域11FWが備える凸部11AWの短軸の長さを0.19に設定し、長軸の長さを0.27に設定し、高さを0.024に設定した。すなわち、凸部11AWにおけるアスペクト比を0.089に設定した。
【0074】
各拡散領域11FN,11FWを正方形状に設定し、かつ、拡散領域11FN,11FWの幅を150mmに設定し、長さを150mmに設定した。各拡散領域11FN,11FWの長辺および短辺に沿って、凸部11AN,11AWを密に並べた。
また、面光源には、CIE標準D65光源を設定し、かつ、発色構造体10に対する入射角を30°に設定した。
【0075】
図16は、受光角を30°に設定した場合のスペクトルを示している。
図16において、狭拡散領域11FNから反射された光のスペクトルが破線で示され、広拡散領域11FWから反射された光のスペクトルが一点鎖線で示され、かつ、凸部を有しない構造体から反射された光のスペクトルが実線で示されている。すなわち、実線で示されるスペクトルが、光学層における干渉によって強められた光のスペクトルを示している。
【0076】
図16が示すように、狭拡散領域11FN、広拡散領域11FW、および、凸部を有しない構造体のいずれにおいて得られたスペクトルも、およそ450nmに第1ピークを有し、かつ、およそ420nmに第2ピークを有する。第1ピークでの波長に対応する色を第1色に設定し、第2ピークでの波長に対応する色を第2色に設定する場合に、第1色の強度(RI1)に対する第2色の強度(RI2)の比(RI2/RI1)が、広拡散領域11FWにおいて最も大きく、凸部を有しない構造において最も小さい。また、第1色の強度に対する第2色の強度の比は、広拡散領域11FWにおいて狭拡散領域11FNよりも大きい。
【0077】
図17は、狭拡散領域11FNから反射された光について、受光角を20°から50°に変更した場合に得られるスペクトルを示している。
図17が示すように、受光角の大きさに関わらず、狭拡散領域11FNから反射された光のスペクトルは、第1ピークと第2ピークとを有する。受光角が20°である場合の第1ピークの強度は、受光角が30°である場合の第1ピークの強度にほぼ等しく、かつ、受光角が20°である場合の第2ピークの強度は、受光角が30°である場合の第2ピークの強度にほぼ等しい。
【0078】
受光角が30°以上である範囲において、第1ピークの強度は受光角が大きいほど低く、第2ピークの強度も受光角が大きいほど低い。受光角が30°以上である範囲において、第1ピークの強度に対する第2ピークの強度の比は、受光角が大きいほど大きい。
【0079】
図18は、広拡散領域11FWから反射された光について、受光角を20°から50°に変更した場合に得られるスペクトルを示している。
図18が示すように、受光角の大きさに関わらず、広拡散領域11FWから反射された光のスペクトルは、第1ピークと第2ピークとを有する。受光角が20°である場合の第1ピークの強度は、受光角が30°である場合の第1ピークの強度にほぼ等しく、かつ、受光角が20°である場合の第2ピークの強度は、受光角が30°である場合の第2ピークの強度にほぼ等しい。
【0080】
受光角が30°以上である範囲において、第1ピークの強度は受光角が大きいほど低く、第2ピークの強度も受光角が大きいほど低い。受光角が30°以上である範囲において、第1ピークの強度に対する第2ピークの強度の比は、受光角が大きいほど大きい。
【0081】
広拡散領域11FWでは、受光角の変化に起因した第1ピークの強度における変化量、および、第2ピークの強度における変化量が、狭拡散領域11FNでの各変化量よりも小さい。
【0082】
図19は、xy色度図における色度xと受光角との関係を示している。
図19において、狭拡散領域11FNから反射された光のスペクトルが破線で示され、広拡散領域11FWから反射された光のスペクトルが一点鎖線で示され、かつ、凸部を有しない構造体から反射された光のスペクトルが実線で示されている。
【0083】
図19が示すように、受光角が20°以上35°未満の範囲では、狭拡散領域11FN、広拡散領域11FW、および、凸部を有しない構造のいずれにおいても、色度xの値がほぼ等しく、かつ、受光角が大きいほど色度xも大きい。これに対して、受光角が35°以上50°以下の範囲では、狭拡散領域11FNおよび広拡散領域11FWにおける色度xの値が、凸部を有しない構造における色度xよりも小さい。また、受光角が35°以上の範囲では、受光角が大きくなるほど、凸部を有しない構造における色度xと、各拡散領域における色度xとの差が大きい。このように、発色構造体10が狭拡散領域11FNおよび広拡散領域11FWを備えることによって、受光角の変化に起因する色度xの変化が抑えられる。
【0084】
図20は、xy色度図における色度yと受光角との関係を示している。
図20において、狭拡散領域から反射された光のスペクトルが破線で示され、広拡散領域から反射された光のスペクトルが一点鎖線で示され、かつ、凸部を有しない構造体から反射された光のスペクトルが実線で示されている。
【0085】
図20が示すように、受光角が20°以上30°未満の範囲では、凸部を有しない構造における色度yの値が、各拡散領域11FN,11FWにおける色度yの値よりも大きい。一方で、受光角が30°以上50°以下の範囲では、凸部を有しない構造における色度yの値が、各拡散領域11FN,11FWにおける色度yの値よりも小さい。このように、発色構造体10が狭拡散領域11FNおよび広拡散領域11FWを備えることによって、受光角の変化に起因する色度yの変化が抑えられる。
【0086】
図21および
図22は、正方形状の凸部を備える狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとを有した発色構造体10から反射される光の実測によって得られたスペクトルを示している。なお、狭拡散領域11FNが備える凸部11ANにおける対角線の長さを44.8μmに設定し、高さを7.9μmに設定した。すなわち、凸部11ANにおいて、高さを対角線の長さで除算した値であるアスペクト比を0.18に設定した。また、広拡散領域11FWが備える凸部11AWにおける対角線の長さを88.0μmに設定し、高さを16.9μmに設定した。すなわち、凸部11AWにおけるアスペクト比を0.19に設定した。
【0087】
図21は、入射角が30°である場合において、狭拡散領域11FNから反射された光のスペクトルを示している。
図21には、受光角が-10°以上60°以下の範囲における反射光のスペクトルが示されている。
【0088】
図21が示すように、受光角が-10°から30°の範囲では、反射光のスペクトルは、およそ450nmから520nmまでにわたるピークトップを有する。これに対して、受光角が40°から60°の範囲では、反射光のスペクトルは、およそ420nmから500nmまでにわたるピークトップを有する。すなわち、反射光のスペクトルは、受光角が大きいほどピークトップの波長が短波長にシフトする傾向を有する。また、受光角が-10°である場合を除き、反射光のスペクトルは、受光角が小さいほどピークの強度が高い傾向を有する。
【0089】
図22は、入射角が30°である場合において、広拡散領域11FWから反射される光のスペクトルを示している。
図22には、受光角が-10°以上60°以下の範囲における反射光のスペクトルが示されている。
【0090】
図22が示すように、受光角が-10°から30°の範囲では、反射光のスペクトルは、およそ450°から520°までにわたるピークトップを有する。これに対して、受光角が40°から60°の範囲では、反射光のスペクトルは、およそ420nmから500nmまでにわたるピークトップを有する。すなわち、反射光のスペクトルは、受光角が大きいほどピークトップの波長が短波長にシフトする傾向を有する。また、受光角が-10から30°までの範囲では、反射光のスペクトルは、受光角が大きいほどピークの強度が高い傾向を有する。また、広拡散領域11FWでは、受光角の変化に起因したピークの強度における変化量が、狭拡散領域11FNでの変化量よりも小さい。
【0091】
[発色構造体の使用方法]
図23から
図25を参照して、発色構造体10の使用方法における一例を説明する。
図23は、発色構造体10が取り付けられるテニスラケットを示している。テニスラケットは、発色構造体10の取付対象の一例である。
【0092】
図23が示すように、テニスラケット100は、略楕円状を有したヘッド100A、角柱状を有したグリップ100B、および、ヘッド100Aをグリップ100Bに接続するシャフト100Cを備えている。シャフト100Cは、表面100CFと、表面100CFに連なる側面100CSとを備えている。表面100CFは、ヘッド100Aが広がる平面に平行な面である。側面100CSは、表面100CFに対してほぼ直交している。
【0093】
図24は、側面100CSのうち、発色構造体10が取り付けられた部分を拡大して示している。
図24が示すように、発色構造体10は、側面100CSの一部に取り付けられている。発色構造体10は、側面100CSと対向する視点から見て、側面100CSが延びる方向に沿う長方形状を有している。発色構造体10において、上述した狭拡散領域11FNおよび広拡散領域11FWは、発色構造体10の長手方向に沿って延びる形状を有している。そのため、発色構造体10は、発色構造体10の長手方向に沿い、かつ、発色構造体10の幅方向において交互に繰り返される明暗による像を表示する。なお、
図24が示す例では、発色構造体10は、発色構造体10の幅方向において、幅方向の端部における明度が幅方向の中央部における明度よりも低くなるような明暗を有している。こうした明暗は、発色構造体10を備える側面100CSの形状により生じている。
【0094】
図24が示す発色構造体10は、印刷層13をさらに備えている。そのため、発色構造体10は、構造層による像と印刷層13による像とを組み合わせた像を表示することが可能である。
図24が示す例では、発色構造体10の印刷層13は、文字列である「Faster」を表示することが可能である。
【0095】
図25は、
図24が示す発色構造体10の断面構造を示している。
図25が示すように、発色構造体10は、
図1を参照して先に説明した発色構造体10に加えて印刷層13、粘着層14、および、基材15を備えている。粘着層14は、光学層12上に位置している。粘着層14は、光透過性を有する各種の粘着層14によって形成される。粘着層14は、例えば、アクリル系粘着剤、または、ウレタン系粘着間から形成される。粘着層14は、透明である。粘着層14の厚さは、例えば10μm以上100μm以下であってよい。
【0096】
基材15は、平坦な層であり、構造層11を支持している。基材15は、可視領域全体の光を透過する材料、すなわち、可視領域の光に対して透明な材料から形成されている。基材15は、例えば、合成石英製の基板であってもよいし、合成樹脂製のフィルムであってもよい。合成樹脂は、例えばポリエチレンテレフタレートであってよい。基材15の厚さは、例えば、10μm以上100μm以下であってよい。
【0097】
構造層11は、基材15上に位置している。構造層11は、基材15に接する面とは反対側の面に、凹凸構造を有している。なお、上述した実施形態において説明した発色構造体10は、基材15を備えてもよい。
【0098】
印刷層13は、各種のインキから形成されてよい。インキは、例えば顔料および染料の少なくとも一方を含んでよい。印刷層13は、単一の色を呈してもよいし、第1の色を有する第1部分と、第1の色とは異なる第2の色を呈する第2部分とを含んでもよい。印刷層13は、例えば、基材15のうちで、構造層11が位置する面に形成される。これにより、印刷層13は、基材15と構造層11との間に位置する。なお、印刷層13は、基材15のうち、構造層11が位置する面とは反対側の面に位置してもよい。
【0099】
[製造方法]
以下、発色構造体10の製造方法を説明する。
発色構造体10が備える構造層11は、例えば、押出成形装置を用いて形成される。押出成形装置は、例えば、ダイ、第1ロール、および、第2ロールを備えている。ダイは、構造層11を形成するための合成樹脂を溶融し、かつ、溶融した樹脂を第1ロールと第2ロールとの間に吐出する。第1ロールは、構造層11が備える凹凸要素を成形するための凹凸パターンを外周面に有している。第2ロールは、平坦な外周面を有している。第1ロールが、第1ロールと第2ロールとの間に吐出された合成樹脂を第2ロールとともに挟持し、これによって押し出すことによって、第1ロールの凹凸パターンが硬化前の合成樹脂に転写される。転写後の合成樹脂が硬化されることによって、構造層11が形成される。
【0100】
次いで、構造層11の表面11Fに光学層12が形成される。光学層12は、各種の成膜法によって形成される。光学層12を形成するための成膜法は、例えば、蒸着法、スパッタ法、CVD法などであってよい。上述したように、光学層12が、高屈折率層12aと低屈折率層12bとを備える場合には、構造層11の表面11F上に、いずれかの成膜法を用いて高屈折率層12aと低屈折率層12bとが交互に形成される。
【0101】
以上説明したように、発色構造体の一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)発色構造体10は、狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとのコントラストによる絵柄を表示することが可能である。
【0102】
(2)発色構造体10が表示する絵柄において、第2方向D2における長さが同一である領域のみを含む場合のような単調さが軽減され、絵柄の複雑さが高められる。
【0103】
(3)第2方向D2において、狭拡散領域11FNの長さLNと広拡散領域11FWの長さLWとの差が大きくなりすぎないから、狭拡散領域11FNと広拡散領域11FWとのコントラストによる絵柄が表示されやすい。
【0104】
(4)拡散領域群において第2方向D2における長さが拡散領域11FN,11FW毎に非周期的に変わる場合には、拡散領域群の全体において非周期性を有した絵柄を表示することが可能である。
【0105】
(5)長軸LAおよび短軸SAの各々の長さが10μm以上であることによって、複数の凸部11Aに入射した光が回折することが抑えられる。
【0106】
(6)長軸LAおよび短軸SAの各々の長さが200μm以下であることによって、発色構造体10の観察者に、発色構造体10を拡大する道具を用いない場合において、凸部11Aが視認されることが抑えられる。
【0107】
(7)長軸LAの長さに対する短軸SAの長さLSAの比が0.8以下であることによって、凸部11Aが異方的に光を拡散することができる。
【0108】
(8)構造層11の厚さ方向において、凸部11Aの寸法が5μm以上50μm以下の範囲内に含まれることによって、凸部11Aの形成が容易である。
【0109】
(9)各拡散領域11FN,11FWが備える凸部11AN,11AWの大きさによって、広拡散領域11FWが備える凸部11AWによって光が散乱される範囲を、狭拡散領域11FNが備える凸部11ANによって光が散乱される範囲よりも大きくすることが可能である。
【0110】
(10)各拡散領域11FN,11FWが備える凸部11AN,11AWにおける長軸LAの向きによって、広拡散領域11FWが備える凸部11AWによって光が散乱される範囲を、狭拡散領域11FNが備える凸部11ANによって光が散乱される範囲よりも大きくすることが可能である。
【0111】
(11)発色構造体10は、光学層12を構成する誘電体層の屈折率に応じた構造色を呈することが可能である。
【0112】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[吸収層]
・
図26が示すように、発色構造体20は、吸収層16を備えてもよい。吸収層16は、構造層11に対して光学層12とは反対側に位置している。吸収層16は、光学層12を透過した光の少なくとも一部を吸収する。なお、
図23が示す例では、発色構造体20は、吸収層16と構造層11との間に位置する基材15をさらに備えている。
【0113】
吸収層16は、可視領域の光のうち、少なくとも光学層12における反射光の支配色以外の光の一部を吸収する。吸収層16は、黒色を呈する層であって、可視領域全体の光を吸収してもよい。この場合には、吸収層16は、黒色の色素を含む層として具体化される。吸収層16によれば、光学層12における反射光の支配色の波長域とは異なる波長域の光が、発色構造体20の内部における各層の界面、および、発色構造体20と発色構造体20の外部との界面において反射することが抑えられる。これにより、光学層12における反射光の支配色の波長域とは異なる波長域の光が観察者に向けて射出されることが抑えられる。結果として、発色構造体20が呈する支配色の鮮明さが高められる。
【0114】
[構造層]
・
図27および
図28が示すように、発色構造体30は、2つの構造層を備えてもよい。
図27は、発色構造体30が備える層のうち、第1構造層31および第2構造層32のみを示す斜視図である。
図27では、各構造層31,32が備える広拡散領域が黒色の線で模式的に示され、かつ、各構造層31,32が備える狭拡散領域が白色の線で模式的に示されている。
【0115】
図27が示すように、第1構造層31は、第1方向D1に沿って延びる複数の狭拡散領域と、第1方向D1に沿って延びる複数の広拡散領域とを備えている。第1方向D1と直交する第2方向D2において、狭拡散領域と広拡散領域とが交互に並んでいる。第2構造層32は、第1構造層31と同様に、第1方向D1に沿って延びる複数の狭拡散領域と、第1方向D1に沿って延びる複数の広拡散領域とを備えている。第2方向D2において、狭拡散領域と広拡散領域とが交互に並んでいる。
【0116】
第1構造層31と第2構造層32との間では、複数の狭拡散領域および複数の広拡散領域の少なくとも一方において、拡散領域毎に設定される第2方向D2に沿う幅における規則が互いに異なっている。これにより、第1構造層31と第2構造層32とが重ねられた場合には、第1構造層31において拡散領域毎に設定される幅の規則と、第2構造層32において拡散領域毎に設定される幅の規則とに起因して、発色構造体30が干渉縞を呈するように構成されている。
【0117】
なお、発色構造体30は、第1構造層31上に位置する第1光学層と、第2構造層32上に位置する第2光学層とを備えている。第1光学層において干渉によって強められる光の波長と、第2光学層において干渉によって強められる光の波長とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なってもよい。
【0118】
また、発色構造体30では、第1構造層31、第1光学層、第2構造層32、第2光学層が、記載の順に積み重なっている。第1光学層と第2構造層32との間には、第1光学層が有する凹凸を埋め、これによって、第2構造層32が位置する面を平坦化するための平坦化層が位置している。
【0119】
図28は、発色構造体30の表面30Fと対向する平面視において、発色構造体30が表示する絵柄を模式的に示している。なお、
図28では、説明の便宜上、第1構造層31と第2構造層32とによって形成される干渉縞IFのみが発色構造体30の表面30Fに重なるように図示されている。
【0120】
図28が示すように、発色構造体30の表面30Fと対向する視点から見て、発色構造体30は、干渉縞IFを呈する。なお、
図25には示されていないが、発色構造体30は、
図9が示す発色構造体10と同様に、第1構造層31と第1光学層とによるヘアラインが連なる絵柄、および、第2構造層32と第2光学層とによるヘアラインが連なる絵柄を表示する。ヘアラインが連なる絵柄が発色構造体30の厚さ方向において重なることによって、干渉縞IFが形成される。
【符号の説明】
【0121】
10…発色構造体
11…構造層
12…光学層
11A…凸部
11F…表面
11FN…狭拡散領域
11FW…広拡散領域