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特開2023-57254超電導マグネット装置、および、超電導マグネット装置の運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057254
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】超電導マグネット装置、および、超電導マグネット装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/00 20060101AFI20230414BHJP
   H01F 6/04 20060101ALI20230414BHJP
   H10N 60/355 20230101ALI20230414BHJP
【FI】
H01F6/00 180
H01F6/04
H01L39/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166664
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145816
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿股 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100195718
【弁理士】
【氏名又は名称】市橋 俊規
(74)【代理人】
【識別番号】100196003
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】小柳 圭
(72)【発明者】
【氏名】戸坂 泰造
(72)【発明者】
【氏名】岩井 貞憲
【テーマコード(参考)】
4M114
【Fターム(参考)】
4M114AA30
4M114CC03
4M114DB12
4M114DB13
4M114DB14
4M114DB16
4M114DB26
4M114DB29
4M114DB52
4M114DB53
4M114DB55
(57)【要約】
【課題】PCSのクエンチを抑制し、信頼性の高い超電導マグネット装置、および、超電導マグネット装置の運転方法を提供する。
【解決手段】超電導マグネット装置100は、超電導コイル1と、超電導コイル1に対して電流を導入する励磁電源4と、超電導コイル1および励磁電源4に対して並列に接続された永久電流スイッチ2と、永久電流スイッチ2を加熱するヒーター3と、を具備する。永久電流スイッチ2は、各々が自己インダクタンスを有し直列に接続された複数個の巻線体20を有する。複数個の巻線体20は、複数個の巻線体20間の相互インダクタンスが負の値を有するように配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導コイルと、
前記超電導コイルに対して電流を導入する励磁電源と、
前記超電導コイルおよび前記励磁電源に対して並列に接続された永久電流スイッチと、
前記永久電流スイッチを加熱するヒーターと
を具備し、
前記永久電流スイッチは、各々が自己インダクタンスを有し直列に接続された複数個の巻線体を有し、
複数個の前記巻線体は、複数個の前記巻線体間の相互インダクタンスが負の値を有するように配置されている
超電導マグネット装置。
【請求項2】
複数個の前記巻線体は、
第1方向側の第1端部と第2方向側の第2端部とを備える第1円筒形状を有し、超電導線材の第1部分を第1端部側から第2端部側へと第1巻回方向に巻回した第1巻線体と、
前記第1方向側の第3端部と前記第2方向側の第4端部とを備える第2円筒形状を有し、前記超電導線材の第2部分を第3端部側から第4端部側へと第2巻回方向に巻回した第2巻線体と
を含み、
前記第2巻回方向は、前記第1巻回方向とは逆の巻回方向であり、前記第1円筒形状の軸と前記第2円筒形状の軸とは平行であり、
前記第1巻線体の前記第1方向側の端と第2巻線体の前記第1方向側の端とが電気的に接続されている
請求項1に記載の超電導マグネット装置。
【請求項3】
複数個の前記巻線体は、
第1方向側の第1端部と第2方向側の第2端部とを備える第1円筒形状を有し、超電導線材の第1部分を第1端部側から第2端部側へと第1巻回方向に巻回した第1巻線体と、
前記第1方向側の第3端部と前記第2方向側の第4端部とを備える第2円筒形状を有し、前記超電導線材の第2部分を第3端部側から第4端部側へと第2巻回方向に巻回した第2巻線体と
を含み、
前記第2巻回方向は、前記第1巻回方向と同じ巻回方向であり、前記第1円筒形状の軸と前記第2円筒形状の軸とは平行であり、
前記第1巻線体の前記第2方向側の端と第2巻線体の前記第1方向側の端とが電気的に接続されるか、あるいは、前記第1巻線体の前記第1方向側の端と第2巻線体の前記第2方向側の端とが電気的に接続される
請求項1に記載の超電導マグネット装置。
【請求項4】
複数個の前記巻線体は、
第1方向側の第1端部と第2方向側の第2端部とを備える第1円筒形状を有し、超電導線材の第1部分を第1端部側から第2端部側へと第1巻回方向に巻回した第1巻線体と、
前記第1方向側の第3端部と前記第2方向側の第4端部とを備える第2円筒形状を有し、前記超電導線材の第2部分を第3端部側から第4端部側へと第2巻回方向に巻回した第2巻線体と
を含み、
前記第2巻回方向は、前記第1巻回方向とは逆の巻回方向であり、前記第1円筒形状の軸と前記第2円筒形状の軸とは同軸であり、
前記第1巻線体の前記第1方向側の端と第2巻線体の前記第2方向側の端とが電気的に接続されている
請求項1に記載の超電導マグネット装置。
【請求項5】
前記永久電流スイッチを構成する複数の前記巻線体に対応して、複数の独立したヒーターおよび複数の独立した伝導冷却用伝熱パスがそれぞれ設けられ、複数の独立した前記ヒーターの各々を選択的に加熱できるように構成され、複数の独立した前記伝導冷却用伝熱パスを用いて複数の前記巻線体の各々を選択的に冷却できるように構成される
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の超電導マグネット装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の超電導マグネット装置の運転方法であって、
前記巻線体を構成する線材は、マトリクス中に配置される多数の直径20μm以上のフィラメントを有する超電導多芯線であり、
前記永久電流スイッチの複数の前記巻線体を冷却することにより、複数の前記巻線体を超電導状態に移行させる第1移行工程と、
前記第1移行工程の後、複数の前記巻線体を流れる電流を徐々に増加させる第2移行工程と
を具備し、
前記第2移行工程において、前記超電導多芯線の臨界電流密度に対する前記超電導多芯線の平均電流密度の比率は0.2以下とされ、前記第2移行工程の末期において、前記巻線体自身によって前記超電導多芯線に0.5テスラ以上の経験磁場が印加されるように構成される
超電導マグネット装置の運転方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超電導マグネット装置、および、超電導マグネット装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低温超電導の線材を巻回してなるコイル(主コイル)と永久電流スイッチ(PCS)とで長時間安定した磁場を発生させる超電導マグネット装置において、PCSはオフ状態(常電導状態)において必要な抵抗値を有するよう、CuNiをマトリクスに使用したNbTi多芯線が一般的に使用される。CuNiマトリクス線材は一般的な銅マトリクスの超電導線材と比べると安定性が低く、自己磁界効果による磁気的不安定性のためにクエンチ(常電導化)を生じやすいという問題がある。このような自己磁界効果による磁気的不安定性を低減させる方法として、電流を流す線材において、電流と横磁界とを同時掃引させることにより電流の一様化を図る外部磁界効果が知られている。しかし、上記の超電導マグネット装置において、PCSはそれ自身が磁気エネルギーを有しないよう無誘導巻きされており、PCSはコイル磁場を発生しない。よって、主コイルが一定の磁場を発生した後にPCSへの電流を増加させるPCモード移行プロセスにおいて、PCSに対して電流増加とともに変動する横磁界を印加する手段は設けられていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-232979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PCSに磁気エネルギーを持たせないという設計思想に従うとPCS自身は磁場を発生させることができず、電流掃引とともに変動する横磁界を印加することができないという課題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、主コイル磁場への影響とPCモード移行時のエネルギー消費とを最小限に抑えつつ、PCSを複数の巻線体に分割し、個々の巻線体にインダクタンス(誘導成分)を持たせ、当該巻線体のPCS線材部分に変動する横磁場を印加して外部磁界効果を適用できるように構成することで、PCSのクエンチを抑制し、信頼性の高い超電導マグネット装置、および、超電導マグネット装置の運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、実施形態における超電導マグネット装置は、超電導コイルと、前記超電導コイルに対して電流を導入する励磁電源と、前記超電導コイルおよび前記励磁電源に対して並列に接続された永久電流スイッチと、前記永久電流スイッチを加熱するヒーターと、を具備し、前記永久電流スイッチは、各々が自己インダクタンスを有し直列に接続された複数個の巻線体を有し、複数個の前記巻線体は、複数個の前記巻線体間の相互インダクタンスが負の値を有するように配置されていることを特徴とする。
【0007】
また、実施形態における超電導マグネット装置の運転方法において、前記巻線体を構成する線材は、マトリクス中に配置される多数の直径20μm以上のフィラメントを有する超電導多芯線であり、前記運転方法は、前記永久電流スイッチの複数の前記巻線体を冷却することにより、複数の前記巻線体を超電導状態に移行させる第1移行工程と、前記第1移行工程の後、複数の前記巻線体を流れる電流を徐々に増加させる第2移行工程とを具備し、前記第2移行工程において、前記超電導多芯線の臨界電流密度に対する前記超電導多芯線の平均電流密度の比率は0.2以下とされ、前記第2移行工程の末期において、前記巻線体自身によって前記超電導多芯線に0.5テスラ以上の経験磁場が印加されるように構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態により、巻線体のPCS線材部分に変動する横磁場を印加して外部磁界効果を適用できるように構成することで、PCSのクエンチを抑制し、信頼性の高い超電導マグネット装置、および、超電導マグネット装置の運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態における超電導マグネット装置の内部の主要部品配置を示す概略図である。
図2図2は、第2の実施形態における超電導マグネット装置の内部の主要部品配置を示す概略図である。
図3図3は、第3の実施形態における超電導マグネット装置の内部の主要部品配置を示す概略図である。
図4図4は、第4の実施形態における超電導マグネット装置の内部の主要部品配置を示す概略図である。
図5図5は、第5の実施形態における超電導マグネット装置の内部の主要部品配置を示す概略図である。
図6図6は、巻線体を構成する線材の一例を模式的に示す図である。
図7図7は、フィラメント径と、電流飽和領域を発生させる平均電流密度の臨界電流密度に対する比率と、経験磁場の強度との間の関係を示すグラフである。
図8図8は、巻線体を構成する線材の諸元の一例を示すテーブルである。
図9図9は、従来例における超電導マグネット装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態における超電導マグネット装置100、および、超電導マグネット装置100の運転方法に関して、添付図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、同じ機能を有する部材、部位については、同一の符号が付され、同一の符号が付されている部材、部位について、繰り返しの説明は省略される。
【0011】
(第1の実施形態)
図1を参照して、第1の実施形態における超電導マグネット装置100Aについて説明する。図1は、第1の実施形態における超電導マグネット装置100Aの内部の主要部品配置を示す概略図である。
【0012】
(構成)
第1の実施形態における超電導マグネット装置100Aは、超電導コイル1と、励磁電源4と、永久電流スイッチ2と、ヒーター3と、を具備する。
【0013】
超電導コイル1は、主コイルであり、超電導マグネット装置100Aの定常運転時に所望の領域に安定した磁場を発生させる。超電導コイル1と、後述の永久電流スイッチ2と、ヒーター3とは、低温容器5内に配置される。
【0014】
励磁電源4は、超電導コイル1に対して電流を導入する。より具体的には、励磁電源4は、超電導コイル1を流れる電流が増加するように、超電導コイル1に直流電流を供給可能である。
【0015】
永久電流スイッチ2(略して、「PCS」と呼ばれることもある。なお、PCSは、「Persistent Current Switch」の略称である。)は、超電導コイル1および励磁電源4に対して並列に接続される。超電導マグネット装置100Aの定常運転時に(換言すれば、超電導コイル1および永久電流スイッチ2が超電導状態である時に)、超電導コイル1と永久電流スイッチ2とを含む閉回路に永久電流が流れる。
【0016】
ヒーター3は、永久電流スイッチ2(より具体的には、後述の巻線体20)を加熱する。ヒーター3が永久電流スイッチ2を加熱することにより、永久電流スイッチ2は、オフ状態(換言すれば、電気抵抗の大きな常電導状態)となる。また、永久電流スイッチ2が極低温冷凍機9および伝導冷却用伝熱パス6などを用いて冷却されることにより、永久電流スイッチ2は、オン状態(換言すれば、電気抵抗が実質的にゼロである超電導状態)となる。
【0017】
永久電流スイッチ2は、各々が自己インダクタンスを有し直列に接続された複数個の巻線体20を有する。図1に記載の例では、複数個の巻線体20は、第1巻線体21と、第2巻線体22とを含む。複数個の巻線体20は、第3巻線体を有していてもよい。換言すれば、永久電流スイッチ2は、2個の分割された巻線体(21、22)を有してもよく、3個以上の分割された巻線体(21、22、・・・)を有していてもよい。
【0018】
複数個の巻線体20の各々には、超電導線材が巻回されている。なお、以下の説明において、第1巻線体21を構成する超電導線材と、第2巻線体22を構成する超電導線材とを区別するために、前者を「超電導線材の第1部分21a」と呼び、後者を「超電導線材の第2部分22a」と呼ぶ。超電導線材の第1部分21aによって第1巻線体21が形成され、超電導線材の第2部分22aによって第2巻線体22が形成された後、当該第1部分21aと第2部分22aとが接続(超電導接続)されてもよいし、全長が巻線体2個分の連続した超電導線材の中点を巻き始めとして、当該中点の一方側の第1部分21aを巻回して第1巻線体21を形成し、当該中点の他方側の第2部分22aを巻回して第2巻線体22を形成してもよい。後者の場合は、図1に示す接続部7以外の接続部を設けることなく永久電流モード運転時の閉回路を構成できるので、閉回路に含まれる電気抵抗成分を小さくすることが可能になる。
【0019】
複数個の巻線体20は、複数個の巻線体20間の相互インダクタンスが負の値を有するように配置(換言すれば、差動結合)される。例えば、巻線体20の個数が2個である場合には、第1巻線体21と第2巻線体22との間の相互インダクタンスが負の値を有するように、第1巻線体21および第2巻線体22が配置される。
【0020】
これに対し、従来の超電導マグネット装置100’では、永久電流スイッチ2は、無誘導に、すなわち、永久電流スイッチの外側には磁場が生じないように構成されていた。より具体的には、図9に記載の例では、巻線体20’が、誘導成分(自己インダクタンス)を極力小さくするように、超電導線材の全長の中点を巻き始めとして2条巻きされて製造されている。なお、図9において図1と同一部分には同一符号を付し、その部分の構成の説明は省略する。
【0021】
(作用)
図1に例示されるように、第1の実施形態においては、個々の巻線体(21、22)は超電導線材を巻回してなるソレノイドコイルとして自己インダクタンスを有するが、全体として相互インダクタンスが負となるように(換言すれば、個々の巻線体が発生する磁束が互いに部分的に打ち消されるように)、複数個の巻線体20が、巻回・配置される。よって、直列接続された複数個の巻線体20によって構成される永久電流スイッチ2全体の合成インダクタンスが小さくなるように作用する。合成インダクタンスが小さくなることにより、永久電流スイッチ2に蓄積される磁気エネルギーを小さくすることができる一方、自己インダクタンスを有する個々の巻線体の内部では、当該巻線体を構成する超電導線材にコイル磁場を印加することができる。
【0022】
(効果)
上記の作用により、個々の巻線体20を構成している超電導線材に、巻線体20自身が発生する磁場を経験させることができ、且つ、複数の巻線体20によって構成される合成インダクタンスの小さな永久電流スイッチ2を構成することが可能になる。これにより、永久電流スイッチ2の電流値を掃引する永久電流モードへの移行プロセスにおいて、電流掃引と同時に、超電導線材部分(21a、22a)に変動する横磁場が印加され、外部磁界効果が得られる。これによって永久電流スイッチ2のクエンチが抑制され、信頼性の高い超電導マグネット装置を提供することが可能になる。
【0023】
(第2の実施形態)
図2を参照して、第2の実施形態における超電導マグネット装置100Bについて説明する。図2は、第2の実施形態における超電導マグネット装置100Bの内部の主要部品配置を示す概略図である。
【0024】
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。他方、第2の実施形態では、第1の実施形態で説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。したがって、第2の実施形態において、明示的に説明をしなかったとしても、第1の実施形態において説明済みの事項を第2の実施形態に適用できることは言うまでもない。例えば、第2の実施形態において、超電導コイル1、励磁電源4、ヒーター3に関しては、第1の実施形態と同様の構成を採用可能である。よって、これらの構成要素については、第1の実施形態における説明を援用し、これらの構成要素についての繰り返しとなる説明を省略する。
【0025】
(構成)
第1の実施形態と同様に、永久電流スイッチ2は、超電導コイル1および励磁電源4に対して並列に接続される。また、永久電流スイッチ2は、各々が自己インダクタンスを有し直列に接続された複数個の巻線体20を有する。図2に記載の例では、複数個の巻線体20は、第1巻線体21と、第2巻線体22とを含む。複数個の巻線体20は、第3巻線体を有していてもよい。
【0026】
図2に記載の例において、第1巻線体21は、第1方向DR1側の第1端部211と第1方向DR1とは反対の第2方向DR2側の第2端部212とを備える第1円筒形状SP1を有する。また、第1巻線体21を構成する超電導線材の第1部分21aは、第1巻回方向R1に巻回されている。
【0027】
図2に記載の例において、第2巻線体22は、第1方向DR1側の第3端部223と第2方向DR2側の第4端部224とを備える第2円筒形状SP2を有する。また、第2巻線体22を構成する超電導線材の第2部分22aは、第2巻回方向R2に巻回されている。
【0028】
上述の第2巻回方向R2は、上述の第1巻回方向R1とは逆の巻回方向であり、第1円筒形状SP1の軸AX1と第2円筒形状SP2の軸AX2とは平行である。より具体的には、超電導線材の第1部分21aは、第2方向DR2に向かう方向にみて、軸AX1まわりに、時計回り(代替的に、反時計回り)に巻回され、超電導線材の第2部分22aは、第2方向DR2に向かう方向にみて、軸AX1に平行な軸AX2まわりに、反時計回り(代替的に、時計回り)に巻回される。なお、「平行」には、多少の誤差が許容されることは言うまでもない。
【0029】
図2に記載の例では、第1巻線体21の第1方向DR1側の端21e(例えば、第1円筒形状SP1の下部の端)と第2巻線体22の第1方向DR1側の端22e(例えば、第2円筒形状SP2の下部の端)とが電気的に接続されている。
【0030】
(作用)
図2に例示される第2の実施形態においては、第1巻線体21を構成する超電導線材の第1部分21aと第2巻線体22を構成する超電導線材の第2部分22aとが互いに逆方向に巻回され、且つ、第1方向DR1側の端(21e、22e)同士が電気的に接続されることにより、第1巻線体21と第2巻線体22との間の相互インダクタンスが負の値となる。また、第1巻線体21の軸AX1と第2巻線体22の軸AX2とが平行に配置されることにより、複数個の巻線体20が発生する磁束がより効果的に打ち消されあうように作用する。
【0031】
(効果)
上記の作用により、永久電流スイッチ2の電流値を掃引する永久電流モードへの移行プロセスにおいて、電流掃引と同時に、超電導線材部分(21a、22a)に変動する横磁場が印加され、外部磁界効果が得られる。これによって永久電流スイッチ2のクエンチが抑制され、信頼性の高い超電導マグネット装置を提供することが可能になる。また、第1円筒形状SP1の軸AX1と第2円筒形状SP2の軸AX2とが平行であることにより、複数個の巻線体20全体としての高さ(換言すれば、軸AX1に平行な方向における、複数個の巻線体20全体としての長さ)をコンパクトにすることができる。
【0032】
(第3の実施形態)
図3を参照して、第3の実施形態における超電導マグネット装置100Cについて説明する。図3は、第3の実施形態における超電導マグネット装置100Cの内部の主要部品配置を示す概略図である。
【0033】
第3の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。他方、第3の実施形態では、第1の実施形態で説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。したがって、第3の実施形態において、明示的に説明をしなかったとしても、第1の実施形態において説明済みの事項を第3の実施形態に適用できることは言うまでもない。例えば、第3の実施形態において、超電導コイル1、励磁電源4、ヒーター3に関しては、第1の実施形態と同様の構成を採用可能である。よって、これらの構成要素については、第1の実施形態における説明を援用し、これらの構成要素についての繰り返しとなる説明を省略する。
【0034】
(構成)
第1の実施形態と同様に、永久電流スイッチ2は、超電導コイル1および励磁電源4に対して並列に接続される。また、永久電流スイッチ2は、各々が自己インダクタンスを有し直列に接続された複数個の巻線体20を有する。図3に記載の例では、複数個の巻線体20は、第1巻線体21と、第2巻線体22とを含む。複数個の巻線体20は、第3巻線体を有していてもよい。
【0035】
図3に記載の例において、第1巻線体21は、第1方向DR1側の第1端部211と第1方向DR1とは反対の第2方向DR2側の第2端部212とを備える第1円筒形状SP1を有する。また、第1巻線体21を構成する超電導線材の第1部分21aは、第1巻回方向R1に巻回されている。
【0036】
図3に記載の例において、第2巻線体22は、第1方向DR1側の第3端部223と第2方向DR2側の第4端部224とを備える第2円筒形状SP2を有する。また、第2巻線体22を構成する超電導線材の第2部分22aは、第2巻回方向R2に巻回されている。
【0037】
上述の第2巻回方向R2は、上述の第1巻回方向R1と同じ巻回方向であり、第1円筒形状SP1の軸AX1と第2円筒形状SP2の軸AX2とは平行である。より具体的には、超電導線材の第1部分21aは、第2方向DR2に向かう方向にみて、軸AX1まわりに、時計回り(代替的に、反時計回り)に巻回され、超電導線材の第2部分22aは、第2方向DR2に向かう方向にみて、軸AX1に平行な軸AX2まわりに、時計回り(代替的に、反時計回り)に巻回される。なお、「平行」には、多少の誤差が許容されることは言うまでもない。
【0038】
図3に記載の例では、第1巻線体21の第2方向DR2側の端21f(例えば、第1円筒形状SP1の上部の端)と第2巻線体の第1方向DR1側の端22e(例えば、第2円筒形状SP2の下部の端)とが電気的に接続されている。代替的に、第1巻線体21の第1方向DR1側の端21e(例えば、第1円筒形状SP1の下部の端)と第2巻線体の第2方向DR2側の端22f(例えば、第2円筒形状SP2の上部の端)とが電気的に接続されていてもよい。
【0039】
(作用)
図3に例示される第3の実施形態においては、第1巻線体21を構成する超電導線材の第1部分21aの巻回方向と第2巻線体22を構成する超電導線材の第2部分22aの巻回方向とが同じであり、且つ、互いに異なる側の端(21f、22e)が電気的に接続されることにより、第1巻線体21と第2巻線体22との間の相互インダクタンスが負の値となる。また、第1巻線体21の軸AX1と第2巻線体22の軸AX2とが平行に配置されることにより、複数個の巻線体20が発生する磁束がより効果的に打ち消されあうように作用する。
【0040】
(効果)
上記の作用により、永久電流スイッチ2の電流値を掃引する永久電流モードへの移行プロセスにおいて、電流掃引と同時に、超電導線材部分(21a、22a)に変動する横磁場が印加され、外部磁界効果が得られる。これによって永久電流スイッチ2のクエンチが抑制され、信頼性の高い超電導マグネット装置を提供することが可能になる。また、第1円筒形状SP1の軸AX1と第2円筒形状SP2の軸AX2とが平行であることにより、複数個の巻線体20全体としての高さ(換言すれば、軸AX1に平行な方向における、複数個の巻線体20全体としての長さ)をコンパクトにすることができる。
【0041】
続いて、上述の第2の実施形態、または、上述の第3の実施形態において採用可能な任意付加的な構成について説明する。
【0042】
(第1巻線体21の端と第2巻線体22の端との間の電気的な接続)
図2に記載の例において、第1巻線体21の端21eと第2巻線体22の端22eとの間の電気的な接続は、互いに別体である超電導線材の第1部分21aの端21eと、超電導線材の第2部分22aの端22eとを、直接的に、あるいは、他の超電導線材を介して間接的に接続することによって行われていてもよい。代替的に、第1巻線体21の端21eと第2巻線体22の端22eとの間の電気的な接続は、全長が巻線体2個分の連続した超電導線材の中間部分によって行われていてもよい。
【0043】
図3に記載の例において、第1巻線体21の端21f(または、端21e)と、第2巻線体22の端22e(または、端22f)との間の電気的な接続は、互いに別体である超電導線材の第1部分21aの端21f(または、端21e)と、超電導線材の第2部分22aの端22e(または、端22f)とを、直接的に、あるいは、他の超電導線材を介して間接的に接続することによって行われていてもよい。代替的に、第1巻線体21の端21f(または、端21e)と、第2巻線体22の端22e(または、端22f)との間の電気的な接続は、全長が巻線体2個分の連続した超電導線材の中間部分によって行われていてもよい。
【0044】
(第1円筒形状SP1、および、第2円筒形状SP2)
図2図3に例示されるように、第1円筒形状SP1と第2円筒形状SP2とは、互いに同一形状、同一サイズであってもよい。また、第1巻線体21における超電導線材の第1部分21aの巻数と第2巻線体22における超電導線材の第2部分22aの巻数とが互いに同一であってもよい。この場合、第1巻線体21が発生する磁束と、第2巻線体22が発生する磁束との間の打ち消し効果を容易に最大化することができる。
【0045】
図2図3に記載の例において、第1円筒形状SP1の第1方向DR1側の第1端部211(より具体的には、第1端面)と、第2円筒形状SP2の第1方向DR1側の第3端部223(より具体的には、第3端面)とは、同一平面上に配置されている。また、第1円筒形状SP1の第2方向DR2側の第2端部212(より具体的には、第2端面)と、第2円筒形状SP2の第2方向DR2側の第4端部224(より具体的には、第4端面)とは、同一平面上に配置されている。2つの端部(211、223)が同一平面上に配置され、他の2つの端部(212、224)が同一平面上に配置される場合、第1巻線体21および第2巻線体22の支持構造をシンプルにすることができる。また、第1巻線体21が発生する磁束と、第2巻線体22が発生する磁束との間の打ち消し効果を容易に最大化することができる。
【0046】
(第4の実施形態)
図4を参照して、第4の実施形態における超電導マグネット装置100Dについて説明する。図4は、第4の実施形態における超電導マグネット装置100Dの内部の主要部品配置を示す概略図である。
【0047】
第4の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。他方、第4の実施形態では、第1の実施形態で説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。したがって、第4の実施形態において、明示的に説明をしなかったとしても、第1の実施形態において説明済みの事項を第4の実施形態に適用できることは言うまでもない。例えば、第4の実施形態において、超電導コイル1、励磁電源4、ヒーター3に関しては、第1の実施形態と同様の構成を採用可能である。よって、これらの構成要素については、第1の実施形態における説明を援用し、これらの構成要素についての繰り返しとなる説明を省略する。
【0048】
(構成)
第1の実施形態と同様に、永久電流スイッチ2は、超電導コイル1および励磁電源4に対して並列に接続される。また、永久電流スイッチ2は、各々が自己インダクタンスを有し直列に接続された複数個の巻線体20を有する。図4に記載の例では、複数個の巻線体20は、第1巻線体21と、第2巻線体22とを含む。複数個の巻線体20は、第3巻線体を有していてもよい。
【0049】
図4に記載の例において、第1巻線体21は、第1方向DR1側の第1端部211と第1方向DR1とは反対の第2方向DR2側の第2端部212とを備える第1円筒形状SP1を有する。また、第1巻線体21を構成する超電導線材の第1部分21aは、第1巻回方向R1に巻回されている。
【0050】
図4に記載の例において、第2巻線体22は、第1方向DR1側の第3端部223と第2方向DR2側の第4端部224とを備える第2円筒形状SP2を有する。また、第2巻線体22を構成する超電導線材の第2部分22aは、第2巻回方向R2に巻回されている。
【0051】
上述の第2巻回方向R2は、上述の第1巻回方向R1とは逆の巻回方向であり、第1円筒形状SP1の軸AX1と第2円筒形状SP2の軸AX2とは同軸である。より具体的には、超電導線材の第1部分21aは、第2方向DR2に向かう方向にみて、軸AX1まわりに、時計回り(代替的に、反時計回り)に巻回され、超電導線材の第2部分22aは、第2方向DR2に向かう方向にみて、軸AX1と同軸の軸AX2まわりに、反時計回り(代替的に、時計回り)に巻回される。
【0052】
また、図4に記載の例では、第1巻線体21の第1方向DR1側の端21eと第2巻線体22の第2方向DR2側の端22fとが電気的に接続されている。端21eと端22fとの間の電気的な接続は、超電導線材の第1部分21aによって第1巻線体21が形成され、超電導線材の第2部分22aによって第2巻線体22が形成された後、第1部分21aの端21eと第2部分22aの端22fとを超電導接続することによって行われてもよい。代替的に、第1巻線体21の端21eと第2巻線体22の端22fとの間の電気的な接続は、円筒形の一つの巻枠に対して、全長が巻線体2個分の連続した超電導線材の中点を巻き始めとして巻枠円筒の軸方向中心部付近に配置し、当該中点の一方側の第1部分21aを巻枠円筒の一方側の端部に向かって巻回し、当該中点の他方側の第2部分22aを巻枠円筒の他方側の端部に向かって巻き回すことによって形成されてもよい。
【0053】
(作用)
図4に例示される第4の実施形態においては、第1巻線体21を構成する超電導線材の第1部分21aと第2巻線体22を構成する超電導線材の第2部分22aとが互いに逆方向に巻回され、且つ、第1巻線体21の第1方向DR1側の端21eと第2巻線体22の第2方向DR2側の端22fとが電気的に接続されることにより、第1巻線体21と第2巻線体22との間の相互インダクタンスが負の値となる。また、第1巻線体21の軸AX1と第2巻線体22の軸AX2とが同軸であることにより、複数個の巻線体20が発生する磁束がより効果的に打ち消されあうように作用する。
【0054】
(効果)
上記の作用により、永久電流スイッチ2の電流値を掃引する永久電流モードへの移行プロセスにおいて、電流掃引と同時に、超電導線材部分(21a、22a)に変動する横磁場が印加され、外部磁界効果が得られる。これによって永久電流スイッチ2のクエンチが抑制され、信頼性の高い超電導マグネット装置を提供することが可能になる。
【0055】
(第5の実施形態)
図1乃至図5を参照して、第5の実施形態における超電導マグネット装置100Eについて説明する。図5は、第5の実施形態における超電導マグネット装置100Eの内部の主要部品配置を示す概略図である。
【0056】
第5の実施形態では、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態および第4の実施形態と異なる点を中心に説明する。他方、第5の実施形態では、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態または第4の実施形態で説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。したがって、第5の実施形態において、明示的に説明をしなかったとしても、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態または第4の実施形態において説明済みの事項を第5の実施形態に適用できることは言うまでもない。例えば、第5の実施形態において、超電導コイル(主コイル)1、励磁電源4に関しては、第1の実施形態と同様の構成を採用可能であり、永久電流スイッチ2に関しては、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態、あるいは、第4の実施形態と同様の構成を採用可能である。よって、これらの構成要素については、第1の実施形態乃至第4の実施形態における説明を援用し、これらの構成要素についての繰り返しとなる説明を省略する。
【0057】
(構成)
図5に例示されるように、第5の実施形態では、永久電流スイッチ2を構成する複数の巻線体20に対応して、複数の独立したヒーター(3a、3b)および複数の独立した伝導冷却用伝熱パス(6a、6b)がそれぞれ設けられ、複数の独立したヒーター(3a、3b)の各々を選択的に加熱できるように構成される。また、複数の独立した伝導冷却用伝熱パス(6a、6b)を用いて複数の巻線体(21、22)の各々を選択的に冷却できるように構成される。より具体的には、図5に記載の例では、超電導マグネット装置100Eは、第1巻線体21を、第2巻線体22とは独立して加熱可能な第1ヒーター3aと、第2巻線体22を、第1巻線体21とは独立して加熱可能な第2ヒーター3bと、制御装置8とを備える。制御装置8は、第1ヒーター3aと第2ヒーター3bとを選択的に加熱制御可能である。また、超電導マグネット装置100Eは、第1巻線体21を、第2巻線体22とは独立して冷却可能な第1の伝導冷却用伝熱パス6aと、第2巻線体22を、第1巻線体21とは独立して冷却可能な第2の伝導冷却用伝熱パス6bと、を備える。制御装置8は、第1の伝導冷却用伝熱パス6aと、第2の伝導冷却用伝熱パス6bとを選択的に有効化することにより、第1巻線体21と、第2巻線体22とを、それぞれ、独立して冷却することが可能である。なお、図には明示していないが、主コイル1と極低温冷凍機9との間にも伝導冷却用伝熱パスが別途設けてある。
【0058】
(作用)
主コイル1に対して励磁電源4から電流を供給して主コイル1を励磁する励磁プロセスにおいて、永久電流スイッチ2はヒーター3によって加熱されてオフ状態になるが、第5の実施形態では、複数の巻線体20のうち特定の巻線体だけをヒーターでオフにすることができる。励磁プロセスにおいて、主コイル1および永久電流スイッチ2の両端には、励磁速度に比例した誘導電圧が発生する。このため、例えば、励磁速度が比較的早いときには全部の巻線体20をヒーター(3a、3b)で加熱してオフ状態にすることで、永久電流スイッチ2の電気抵抗を大きくする一方、励磁速度が比較的遅いときには全数でなく幾つかの巻線体20だけを選択されたヒーターで加熱してオフ状態にすることができる。こうして、励磁速度が比較的遅いときに、永久電流スイッチ2全体としての電気抵抗を相対的に小さくすることにより、励磁電圧による永久電流スイッチ2への電流分流を、励磁速度が速いときと同等にすることができる。
【0059】
(効果)
上記の作用により、主コイル1の励磁速度に応じて必要数の巻線体20だけをオフ状態にすることが可能になり、主コイル1の励磁速度を下げた運転では、ヒーター3全体としての加熱量を低減し、超電導マグネット装置100Eの冷却系に対する熱負荷を低減することが可能になる。
【0060】
(第6の実施形態)
図1乃至図8を参照して、第6の実施形態における超電導マグネット装置100の運転方法について説明する。図6は、巻線体20を構成する線材Wの一例を模式的に示す図である。図7は、フィラメント径dfと、電流飽和領域を発生させる平均電流密度(Jt)の線材断面当たりの臨界電流密度(λJc)に対する比率と、経験磁場の強度との間の関係を示すグラフである。図8は、巻線体20を構成する線材W(超電導線材)の諸元の一例を示すテーブルである。ここでλは超電導フィラメントの体積率、Jcは臨界電流密度である。
【0061】
(構成・作用)
図6に記載の例において、巻線体20を構成する線材W(より具体的には、第1巻線体21を構成する超電導線材の第1部分21aおよび第2巻線体22を構成する超電導線材の第2部分22aの各々)は、マトリクスM中に配置される多数の直径10μm以上のフィラメントFを有する超電導多芯線である。
【0062】
上述の線材Wの構成は、第1の実施形態乃至第5の実施形態において、巻線体20を構成する超電導線材における構成として採用されてもよい。
【0063】
図7は、CuNiをマトリクスに用いた線材Wにおけるフィラメント径dfと、電流-横磁界同時掃引時に電流飽和領域を発生させる電流レベルの計算例を示す図である。図8の表1は、図7の計算にて取り扱った線材Wの諸元を示す表である。多芯線の自己磁界効果によって線材Wの外周部に電流飽和領域が形成されて安定に流せる電流値の上限が制約されてしまうが、外部磁界効果による電流一様化作用によって、磁気的な安定性を確保できることが知られている。外部磁界効果によって磁気的不安定性を回避する条件は、「電流-横磁界の同時掃引に対して電流飽和領域を生じさせない条件」として求めることができる。図7は、表1に示される典型的な超電導線材の諸元に基づいて、電流-横磁界同時掃引時に電流飽和領域を発生させる電流レベルを計算したものであり、図7のグラフ中の曲線よりも下方の領域(例えば、横軸において、フィラメント径dfが20μm以上の部分において、磁場強度が0.5テスラである場合の曲線よりも下方の領域を参照。)が、線材Wに電流飽和領域を発生させない運転条件に対応する。
【0064】
第6の実施形態における超電導マグネット装置の運転方法において、運転される超電導マグネット装置は、第1の実施形態における超電導マグネット装置100Aであってもよいし、第2の実施形態における超電導マグネット装置100Bであってもよいし、第3の実施形態における超電導マグネット装置100Cであってもよいし、第4の実施形態における超電導マグネット装置100Dであってもよいし、第5の実施形態における超電導マグネット装置100Eであってもよい。
【0065】
第6の実施形態における超電導マグネット装置の運転方法は、永久電流スイッチ2の複数の巻線体20(全ての巻線体20)を冷却することにより、複数の巻線体20(全ての巻線体20)を超電導状態に移行させる第1移行工程と、第1移行工程の後、複数の巻線体20(全ての巻線体20)を流れる電流を徐々に増加させる第2移行工程と、を有する。
【0066】
第2移行工程において、超電導多芯線の臨界電流密度に対する超電導多芯線の平均電流密度の比率は0.2以下とされ、また、第2移行工程の末期において、巻線体20自身によって超電導多芯線に0.5テスラ以上の経験磁場が印加されるように構成される。
【0067】
(効果)
上述の運転条件により、線材Wの磁気的不安定性を回避することができる。特に、第2移行工程の後半(特に、第2移行工程の末期)には、超電導多芯線の平均電流密度は増加されているが、超電導多芯線が経験する横方向の変動磁場によって、磁気的安定化が図られる。
【0068】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1…超電導コイル(主コイル)、2…永久電流スイッチ、3…ヒーター、3a…第1ヒーター、3b…第2ヒーター、4…励磁電源、5…低温容器、6…伝導冷却用伝熱パス、6a…第1の伝導冷却用伝熱パス、6b…第2の伝導冷却用伝熱パス、7…接続部、8…制御装置、9…極低温冷凍機、20…巻線体、20'…巻線体、21…第1巻線体、21a…超電導線材の第1部分、21e…第1方向側の端、21f…第2方向側の端、22…第2巻線体、22a…超電導線材の第2部分、22e…第1方向側の端、22f…第2方向側の端、100、100A、100B、100C、100D、100E…超電導マグネット装置、100'…超電導マグネット装置、211…第1端部、212…第2端部、223…第3端部、224…第4端部、F…フィラメント、M…マトリクス、SP1…第1円筒形状、SP2…第2円筒形状、W…線材、AX1、AX2…軸、DR1…第1方向、DR2…第2方向、R1…第1巻回方向、R2…第2巻回方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9