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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057336
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】改ざん防止機構付き紙容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/62 20060101AFI20230414BHJP
【FI】
B65D75/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166814
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青木 和美
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AA11
3E067AB01
3E067AB99
3E067BA06A
3E067BB01A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB25A
3E067BB26A
3E067BC06A
3E067BC07A
3E067CA04
3E067CA07
3E067CA11
3E067CA12
3E067EA04
3E067EA05
3E067EB11
3E067EB17
3E067EB18
3E067EB19
3E067EB29
3E067EE02
3E067EE59
3E067FC01
(57)【要約】
【課題】紙容器の開封において、開封の痕跡が残る機構を有して、かつ再封も可能な、改ざん防止機構付き紙容器を提供することを課題とする。
【解決手段】紙または紙を基材とする複合材からなる紙基材から組み立てられた紙容器であって、紙容器本体の一部に、開封して開口部を形成するための、開封誘導線を有しており、紙容器本体の開封誘導線の周縁外側は、紙基材の表面に凝集ニス層がパターンで塗工されて設けられており、開封誘導線に囲まれた領域と、開封誘導線の周縁外側の凝集ニスの塗工された領域とを含んで、プラスチックフィルムを基材として粘着剤層を表面に有するシール材を、粘着剤層を介して貼付してあることを特徴とする、改ざん防止機構付き紙容器である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙または紙を基材とする複合材からなる紙基材から組み立てられた紙容器であって、
紙容器本体の一部に、開封して開口部を形成するための、開封誘導線を有しており、
紙容器本体の開封誘導線の周縁外側は、紙基材の表面に凝集ニス層がパターンで塗工されて設けられており、
開封誘導線に囲まれた領域と、開封誘導線の周縁外側の凝集ニスの塗工された領域とを含んで、プラスチックフィルムを基材として粘着剤層を表面に有するシール材を、粘着剤層を介して貼付してあることを特徴とする、改ざん防止機構付き紙容器。
【請求項2】
前記開封誘導線は、ミシン目もしくは貫通傷で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の改ざん防止機構付き紙容器。
【請求項3】
前記粘着剤層を表面に有するシール材には周縁の一部に、開封を開始するためのタブが設けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の改ざん防止機構付き紙容器。
【請求項4】
前記粘着剤層を表面に有するシール材の粘着力は、JIS Z 0237に基づく測定で、8N/10mm以下であることを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれかに記載の改ざん防止機構付き紙容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙容器に係るものである。特に、意図する、意図しないにかかわらず開封した際には、開封の痕跡が不可逆的に残る、改ざん防止機構付き紙容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
包装容器は、内容物を携帯、輸送したり、また保護したりする目的で用いられてきた。その歴史は古く、ガラス瓶や金属、あるいは陶器製のものが使われてきたが、近年は食品や生活用品をはじめ、様々な分野の幅広い用途に紙容器が用いられ、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの商品棚をにぎわしている。
【0003】
紙容器が広範に用いられている背景には、紙容器にはたとえば下記のような特徴、利便性があることがあげられる。
・紙を材料とするために比較的安価である。
・軽量であり、折りたたみも可能で保管、輸送コストが少ない。
・表面に各種印刷が可能であり、意匠性向上、内容物に関する情報表示が容易である。
・一定の耐衝撃性を有し、持ち運びにも便利である。
・植物もしくは木材由来の素材であり、廃棄に際して減容性、焼却性に優れ、環境適合型である。
【0004】
一方で、紙容器として、要求品質も内容物や用途に対応して多岐にわたっており、たとえば、下記のような機能も求められている。
・微生物からの保護、密封性に優れる。
・保存性の向上を目的とした、遮光性、ガスバリア性を有する。
・内容液の外力からの保護を目的とした剛性や強靭性を有する。
・内容物に液体を収納可能である。
・意図しない開封や、改ざん防止機能を備える。
などである。
【0005】
このうち改ざん防止機能については、特許文献1に改ざん防止機構付き包装用箱の提案がなされているが、スリットにフラップを差し込んでロックし、開封においてはロック部が破れて開封される構造であって、改ざん防止には一定の効果は期待できるものの、再封は困難である。
【0006】
また。特許文献2には改ざん防止箱の提案がなされているが、開封はミシン目を切り裂いて行うものであって、ミシン目は破壊を伴う作業であって、再封をしたい用途には不向きである。
【0007】
このうち改ざん防止機構については、いたずらや犯罪、意図しない開封を未然に防止することを目的として、特許文献のほかにも、ミシン目や糊付け、外装をシュリンクフィルムで覆うなどの方法がとられてきたが、いずれも破壊による開封であって、再封をしたい用途には用いることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3210436号公報
【特許文献2】特許第4234853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであって、紙容器の開封において、開封の痕跡が残る機構を有して、かつ再封も可能な、改ざん防止機構付き紙容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
紙、または紙を基材とする複合材からなる紙基材から組み立てられた紙容器であって、
紙容器本体の一部に、開封して開口部を形成するための、開封誘導線を有しており、
紙容器本体の開封誘導線の周縁外側は、紙基材の表面に凝集ニス層がパターンで塗工されて設けられており、
開封誘導線に囲まれた領域と、開封誘導線の周縁外側の凝集ニスの塗工された領域とを含んで、プラスチックフィルムを基材として粘着剤層を表面に有するシール材を、粘着剤層を介して貼付してあることを特徴とする、改ざん防止機構付き紙容器である。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、
前記開封誘導線は、ミシン目もしくは貫通傷で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の改ざん防止機構付き紙容器である。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、
前記粘着剤層を表面に有するシール材には周縁の一部に、開封を開始するためのタブが設けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の改ざん防止機構付き紙容器である。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、
前記粘着剤層を表面に有するシール材の粘着力は、JIS Z 0237に基づく測定で、8N/10mm以下であることを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれかに記載の改ざん防止機構付き紙容器である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、紙容器の開封において、開封の痕跡が残る機構を有して、かつ再封も可能な、改ざん防止機構付き紙容器を提供することが可能である。
【0015】
紙容器本体の一部に、開封して開口部を形成するための、開封誘導線を有しており、この開封誘導線によって、開封を容易に行うことが可能となり、また開口部を意図した形状に形成することができる。
【0016】
紙容器本体の開封誘導線の周縁外側は、紙基材の表面に凝集ニス層がパターンで塗工されて設けられており、開封誘導線に囲まれた領域と、開封誘導線の周縁外側の凝集ニスの塗工された領域とを含んで、プラスチックフィルムを基材として粘着剤層を表面に有するシール材を、粘着剤層を介して貼り付けてあることによって、シール材を引き上げて、紙容器を開封しようとする際には、開封誘導線の破壊による開封と、凝集ニスの層内においての凝集破壊とが、同時かつ不可逆的に起こるため、開封の痕跡が凝集ニスが塗工された部分に残り、意図しない開封や、故意や悪意による開封が可視状態となって残る。
【0017】
すなわち、開封時に凝集ニスの層内においての凝集破壊が起こり、紙基材側に残留する部分とシール材に付着する部分に分離するために、凝集破壊された面が粗面となって、白化して可視化されるとともに、この部分には再封時には接着力がなく、分離、可視化され
たまま開封の痕跡が残る。このように、この開封は不可逆にその痕跡を残すものであって、意図しない開封であっても可視化することができ、また故意やいたずら、悪意による開封や改ざん防止に効果的である。
【0018】
またシール材が、粘着剤層を表面に有するシール材であることによって、開封後の再封は粘着剤が露出した部分で可能であり、利便性にも優れた紙容器とすることができ、再封の後も、凝集ニス部分には前述のように、開封の痕跡が可視化された状態となって残留する。なお、この再封は繰り返し行うことが可能である。
【0019】
本発明においては、この開封の痕跡が可視状態となって残留することによって、改ざん防止機構とすることができ、意図的な開封やいたずら、悪意による開封や改ざんを未然に防止することが可能となる。
【0020】
また特に請求項2に記載の発明によれば、開封誘導線は、ミシン目もしくは貫通傷で形成されていることによって、この部分は外力に対しては脆弱化した部分となるため、シール材による開封は、あらかじめ意図した部分、あらかじめ意図した形状に容易に、また安定して行うことができる。
【0021】
また、特に請求項3に記載の発明によれば、粘着剤層を表面に有するシール材には縁辺の一部に、開封を開始するためのタブが設けられていることによって、紙容器の開封はタブを手指でつまみ、この部分をきっかけとして、開封を容易に、また安定して行うことができる。
【0022】
タブの部分に粘着剤が設けてある場合には粘着剤層を剥がしてシール材を引き上げて開封することができ、タブの部分に粘着剤が設けられていない場合においては、そのまま引き上げてより容易に開封することが可能である。
【0023】
また、特に請求項4に記載の発明によれば、粘着剤層を表面に有するシール材の粘着力は、JIS Z 0237に基づく測定で、8N/10mm以下の範囲であることによって、シール材による開封を確実に、また再封をより安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明に係る改ざん防止機構付き紙容器の一実施態様を説明するための、斜視模式図である。
図2図2は、本発明に係る改ざん防止機構付き紙容器の一実施態様を説明するための、天面から見た平面模式図である。
図3図3は、本発明に係る改ざん防止機構付き紙容器の一実施態様を説明するための、開口部付近のシール材貼り付け前の部分断面模式図である。
図4図4は、本発明に係る改ざん防止機構付き紙容器の一実施態様を説明するための、開口部付近にシール材を貼り付けた状態の部分断面模式図である。
図5図5は、本発明に係る改ざん防止機構付き紙容器の一実施態様を説明するための、開口部付近のシール材を剥がして開封し、開口部を形成した状態の部分断面模式図である。
図6図6は、本発明に係る改ざん防止機構付き紙容器の一実施態様を説明するための、開封の様子を示す斜視模式図である。
図7図7は、本発明に係る改ざん防止機構付き紙容器の一実施態様を説明するための、再封の様子を示す斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を図1図7を参照しながら、更に詳しい説明を加える。ただし本発明は
、ここに示す例によってのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって特定されるものである。
【0026】
図1は、本発明に係る改ざん防止機構付き紙容器の一実施態様を説明するための、斜視模式図である。
【0027】
本発明は、紙または紙を基材とする複合材からなる紙基材から組み立てられた紙容器であって、改ざん防止機構付き紙容器(100)である。この紙容器本体の一部には、開封して開口部(1)を形成するための、開封誘導線(2)を有している。
【0028】
紙基材は、紙単体を材料とするものでもよく、あるいは紙が重量の50%以上である複合材でもよい。複合材の紙以外の要素としては、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂などを用いることができる。
【0029】
複合材は積層体とすることができ、例えばあらかじめフィルム状に成膜した材料を接着剤等を用いて積層することも可能であり、押出機を用いて熱で溶融した樹脂層を積層することも可能である。
【0030】
また、図1に示す改ざん防止機構付き紙容器(100)の例においては、その外形は6面体であって、矩形の天面(3)に矩形の開口部(1)を設けたものである。
【0031】
紙容器本体の開封誘導線(2)の周縁外側は、表面に凝集ニス層がパターンで塗工されて形成されており、図1においては開口部(1)が予定されている領域の左右に菱形の凝集ニスの塗工部を示してある。
【0032】
ただし、図1に示す未開封の状態において、この凝集ニスの塗工部は不可視、もしくは見えにくい状態であり、少なくともシール材(10)の外側から顕著に視認できる状態ではない。
【0033】
これは、紙容器本体の表面に凝集ニス層がパターンで塗工されており、開封誘導線(2)に囲まれた領域と、開封誘導線(2)の周縁外側の凝集ニスの塗工された領域とを含んで、粘着剤層を表面に有するシール材(10)を、粘着剤層を介して貼り付けてあることによって、凝集ニスの塗工部は粘着剤層に埋没した状態となって、シール材(10)の外側からは見えにくくなっていることによる。
【0034】
粘着剤層を表面に有するシール材(10)には縁辺の一部に、開封を開始するためのきっかけとなるタブ(4)を設けることができる。図1に示す改ざん防止機構付き紙容器(100)の例においては、タブ(4)は、天面(3)から前側胴部(5)に沿って張り出して設けてある。紙容器の開封は、例えば手指を用いてこのタブ(4)をつまみ、上方に引き上げて行うことができる。
【0035】
なお、タブ(4)の部分に粘着剤が設けてある場合には、粘着剤層を紙基材から剥がし、手指でつまんでシール材を引き上げて紙容器を開封することができ、タブ(4)の部分に粘着剤が設けられていない場合には、そのまま手指でつまんでシール材(10)を引き上げて、より容易に開封することが可能である。
【0036】
図2は、本発明に係る改ざん防止機構付き紙容器の一実施態様を説明するための、天面から見た平面模式図である
【0037】
図2に示す改ざん防止機構付き紙容器(100)の例において、紙容器は6面体で、そ
の天面(3)は矩形であり、中央に開口部(1)を形成するための、開封誘導線(2)が設けてあり、これも矩形である。
【0038】
紙容器本体の開封誘導線(2)の周縁外側は、表面に凝集ニスがパターンで塗工されており、図2においては開口部(1)の予定されている領域の左右に菱形の凝集ニスの塗工部(11)を示してある。
【0039】
ただし、図2に示す紙容器の未開封の状態において、図示はしてあるもの、凝集ニスの塗工部(11)は、粘着剤層を表面に有するシール材(10)の下になって、不可視もしくは見えにくい状態であり、少なくともシール材(10)の外側から顕著に視認できる状態ではない。
【0040】
これは、紙容器本体の表面に凝集ニスがパターンで塗工されており、開封誘導線(2)に囲まれた領域と、開封誘導線(2)の周縁外側の凝集ニスの塗工部(11)とを含んで、粘着剤層を表面に有するシール材(10)を、粘着剤層を介して貼り付けてあることによって、凝集ニスの塗工部(11)は粘着剤層と密着して、いわば粘着剤層に埋没した状態となって、シール材(10)の外側からは見えにくくなっていることによる。
【0041】
粘着剤層を表面に有するシール材(10)には縁辺の一部に、開封を開始するためのきっかけとなるタブ(4)を設けることができる。紙容器の開封は、このタブ(4)を図の手前側に引いて行うことができる。
【0042】
また、本発明において開封誘導線(2)は、ミシン目もしくは貫通傷で形成することができる。すなわち、開封誘導線(2)は紙基材の脆弱部として設けられ、開封に際して、開口部(1)の紙基材はシール材(10)の引き上げによってシール材(10)とともに引き上げられる。その結果紙基材は、開封誘導線(2)に沿って引き裂かれて、開口部(1)を意図した矩形の形状に形成することができる。
【0043】
図3は、本発明に係る改ざん防止機構付き紙容器の一実施態様を説明するための、開口部付近のシール材貼り付け前の部分断面模式図である
【0044】
本発明による改ざん防止機構付き紙容器(100)において、シール材(10)は、プラスチックフィルム(13)を基材として粘着剤層(12)を表面に有して構成される。これによって、開封後の再封は粘着剤層(12)が露出した部分では可能であり、利便性にも優れた紙容器とすることができる。この再封は、繰り返し行うことが可能である。
【0045】
一方、紙容器本体を構成する紙基材(7)には、開封誘導線(2)の周縁外側の表面に凝集ニスの塗工部(11)がパターンで塗布、形成されている。
【0046】
凝集ニスの塗工は、例えば印刷手法を用いて行うことができる。印刷の種類については特段の限定を加えるものではないが、例えば凹版印刷やフレキソ印刷、シルクスクリーン印刷などを用いて行うことができる。特にシルクスクリーン印刷を用いる場合には、凝集ニス層の厚みを持たせることに好適であり、望ましい。
【0047】
凝集ニスの組成については、特段の制約を加えるものではなく、改ざん防止機構として適性を有することを考慮すれば、たとえばゴム系、ウレタン系、アクリル系の無色透明インキなどの中から適宜選択して用いることができる。
【0048】
我々は本発明を考案する過程で、鋭意検討を重ねた結果、凝集ニスの塗工部(11)の厚みが0.1μm~20μmの範囲が、本発明が課題とするところの、改ざん防止機構と
して適切であることを見出した。この改ざん防止機構については、更に図4以降においても図で示しながら逐次説明を加える。
【0049】
また、本発明による改ざん防止機構付き紙容器(100)において、図1図7に示す例では、紙容器の天面(3)には、開口部(1)を形成するための開封誘導線(2)が設けられている。この開封誘導線(2)は、ミシン目もしくは貫通傷で形成することができる。
【0050】
本発明による改ざん防止機構付き紙容器(100)においては、紙容器本体の 開封誘導線(2)に囲まれた領域と、開封誘導線(2)の周縁外側の凝集ニスの塗工部(11)とを含んで、プラスチックフィルム(13)を基材として粘着剤層(12)を表面に有するシール材(10)を、粘着剤層(12)を介して貼り付けて、改ざん防止機構とするのである。
【0051】
プラスチックフィルム(13)は、高分子樹脂組成物からなるフィルムであって、たとえばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロンー6、ナイロンー66等)、ポリイミドなどが使用でき、内容物や用途に応じて適宜選択される。特にポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートをプラスチックフィルム(13)とする場合は、フィルム強度と価格においてより好ましい。また、これらの材料を布状に組み合わせたものを用いることもできる。
【0052】
本発明による改ざん防止機構付き紙容器(100)においては、プラスチックフィルム(13)の特徴の一つである可撓性や、引っ張りに対する機械的強度によって、開口部(1)の紙基材をシール材(10)と一緒に引き上げて開封するには好適である。
【0053】
さらに、プラスチックフィルム(13)は透明性を有するために、凝集ニスの塗工部(11)が紙容器の開封に伴って凝集破壊を起こした際にも、開封の痕跡として視認することがプラスチックフィルム(13)側から可能であって、改ざん防止の機能として好都合である。
【0054】
この紙容器本体の開封時の凝集ニスの塗工部(11)の凝集破壊については、更に図5に示す例の説明においてさらに説明を加える。
【0055】
図4は、本発明に係る改ざん防止機構付き紙容器の一実施態様を説明するための、開口部付近にシール材を貼り付けた状態の部分断面模式図である。
【0056】
この状態において、シール材(10)は、紙容器本体に設けられた開封誘導線(2)に囲まれて開封後には開口部(1)となる領域と、開封誘導線(2)の周縁外側の凝集ニスの塗工部(11)とを含んで、粘着剤層(12)を介して紙容器の天面(3)に密着した状態である。
【0057】
また、この状態では、凝集ニスの塗工部(11)と、シール材(10)の粘着剤層(12)もまた密着しており、シール材(10)の外側すなわちプラスチックフィルム(13)側からは、凝集ニスの塗工部(11)は容易に視認しづらい状態となっている。
【0058】
これは、粘着剤層を表面に有するシール材(10)を、粘着剤層(12)を介して貼り付けてあることによって、凝集ニスの塗工部(11)は粘着剤層(12)と密着して、いわば粘着剤層(12)に埋没した状態となって、シール材(10)の外側からは見えにくくなっていることによる。
【0059】
また、開封誘導線(2)は、紙基材へのミシン目もしくは貫通傷で形成することができる。これによって、シール材(10)による紙容器本体の開封は、あらかじめ意図した部分、かつあらかじめ意図した形状に開口部(1)を形成することができ、容易かつ安定して行うことができる。
【0060】
図5は、本発明に係る改ざん防止機構付き紙容器の一実施態様を説明するための、開口部付近のシール材を剥がして開封し、開口部を形成した状態の部分断面模式図である
【0061】
図5に示す状態は、紙基材(7)が開封誘導線(2)に沿って引き裂かれて紙容器が開封された状態である。すなわち、開口部(1)の紙基材(7)はシール材(10)とともに引き上げられて開口部(1)を形成し、また凝集ニスの塗工部(11)はその層内で、凝集破壊を起こしてシール材(10)側と紙基材(7)側とに分離した状態である。
【0062】
このように凝集ニス層は、層内で凝集破壊を起こしやすい層であってこの分離した境界面は粗面となっている。そのため、この凝集破壊した境界面では反射光が散乱して白化して見えるために、シール材(10)を剥離した痕跡として顕著に可視となる。この痕跡は、シール材(1)の表裏から視認することが可能である。
【0063】
また、我々は本発明による改ざん防止機構付き紙容器(100)を鋭意検討する過程において、シール材(10)に用いる粘着剤層(12)の紙容器表面への粘着力について以下の知見を得た。
【0064】
すなわち、粘着剤層(12)を表面に有するシール材(10)の粘着力は、JIS Z
0237に基づく測定で、8N/10mm以下とすることができる。この範囲であることによって、シール材(10)による改ざん防止機構付き紙容器(100)の開封を確実にし、また再封をより安定して行うことができる。
【0065】
図6は、本発明に係る改ざん防止機構付き紙容器の一実施態様を説明するための、開封の様子を示す斜視模式図である。
【0066】
改ざん防止機構付きの紙容器(100)の開封はシール材(10)を剥離して行うことができる。このときシール材(10)にタブ(4)を設けてある場合には、タブ(4)を手指でつまんでシール材(10)を、図6中の矢印方向に引き上げて剥離することが、より容易に可能となる。
【0067】
図6に示す例でも示すように、シール材(10)は、紙容器本体の開封誘導線(2)に囲まれた領域と、開封誘導線(2)の周縁外側の凝集ニスの塗工部(11)とを含んで、プラスチックフィルム(13)を基材として粘着剤層(12)を表面に有するシール材(10)を、粘着剤層(12)を介して天面(3)の紙基材に貼り付けてあるために、シール材(10)の中央部では開口部(1)の紙基材が紙基材(7)と一緒に引き上げられて、予定された開口部(1)を形成する。
【0068】
一方、開封誘導線(2)の周縁外側では、凝集ニスの塗工部(11)の凝集破壊を引き起こして、シール材(10)側と紙基材(7)側とに分離した状態となり、その分離した表面に粗面を形成して、シール材(10)の剥離の痕跡を不可逆に形成する。
【0069】
図7は、本発明に係る改ざん防止機構付き紙容器の一実施態様を説明するための、再封の様子を示す斜視模式図である。
【0070】
本発明による改ざん防止機構付き紙容器(100)は、紙容器本体を開封した後、開口部(1)を再封することも可能であり、包装容器として利便性が高い。すなわち、シール材(10)は粘着剤層(12)を介して紙容器の開口部(1)、及びその周縁部に貼着されており、剥離して紙容器本体を開封した後においても、周縁部の粘着力は維持され、くり返し再封することが可能である。
【0071】
しかし、シール材(10)で再封した場合でも、凝集ニスの塗工部(11)の凝集破壊は残るために、剥離の痕跡として不可逆であり、破壊された界面は可視であり、またシール材(10)のプラスチックフィルム(13)面側からも可視である。
【0072】
すなわち、本発明による改ざん防止機構付き紙容器(100)においては、開封の痕跡は不可逆的に残留し、かつ再封も可能であるから本発明が課題とするところの、紙容器の開封において、開封の痕跡が残る機構を有して、かつ再封も可能な、改ざん防止機構付き紙容器(100)を提供することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1・・・開口部
2・・・開封誘導線
3・・・天面
4・・・タブ
5・・・前側胴部
7・・・紙基材
10・・・シール材
11・・・凝集ニスの塗工部
12・・・粘着剤層
13・・・プラスチックフィルム
100・・・改ざん防止機構付き紙容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7