(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057743
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】ロボット制御システム
(51)【国際特許分類】
B25J 19/06 20060101AFI20230417BHJP
【FI】
B25J19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167403
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】東野 剛
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707CS01
3C707HS27
3C707HT40
3C707KS21
3C707KS35
3C707KX10
3C707MS15
3C707MS27
3C707MS30
(57)【要約】
【課題】搬送ロボットの安全性を向上させつつ、搬送ロボットの安定的な運用によって作業効率を向上させること。
【解決手段】搬送装置13は、搬送ロボット21と、当該搬送ロボット21を駆動制御するコントローラと、搬送ロボット21を駆動させてワーク等を搬送する場合に当該搬送ロボット21周辺の監視エリアSEに位置する物体を検出可能な監視装置23とを備えている。コントローラは、監視装置23により監視エリアSEにて物体が検出された場合に搬送ロボット21を防護停止させるべく停止処理を実行し、その後は、防護停止を解除して搬送ロボット21による搬送を再開させるべく自動復帰用の起動処理を実行する。停止処理については自動復帰用の起動処理中も実行可能となっており、自動復帰用の起動処理は監視装置23により監視エリアSEにて物体が検出されなくなってから所定の待機時間が経過するのを待って実行される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ロボットを駆動制御するコントローラと、前記搬送ロボットを駆動させて物品を搬送する場合に当該搬送ロボット周辺の所定エリアに位置する物体を検出可能な物体検出装置とを備えているロボット制御システムであって、
前記コントローラは、
前記物体検出装置により前記所定エリアにて物体が検出された場合に前記搬送ロボットを防護停止させるべく防護停止処理を実行する防護停止部と、
前記防護停止部による前記防護停止を解除して前記搬送ロボットによる搬送を再開させるべく復帰処理を実行する自動復帰部と
を有し、
前記防護停止部は、前記復帰処理中であっても前記防護停止処理を実行可能となっており、
前記自動復帰部は、前記物体検出装置により前記所定エリアにて物体が検出されなくなってから所定の待機時間が経過するのを待って前記復帰処理を実行する構成となっているロボット制御システム。
【請求項2】
前記物体検出装置は、前記所定エリアにて物体を検出した場合に前記コントローラへの停止信号の出力を開始し、
前記防護停止部は、前記物体検出装置から前記停止信号が入力された場合に前記搬送ロボットを防護停止させるべく前記防護停止処理を実行し、
前記物体検出装置は、前記停止信号の出力中に前記所定エリアにて物体を非検出となった場合に、当該非検出となったタイミングから前記所定の待機時間が経過するまで前記停止信号の出力を継続した後に当該停止信号の出力を停止し、
前記自動復帰部は、前記物体検出装置から前記停止信号が入力されなくなった場合に、前記防護停止部による前記防護停止を解除して前記搬送ロボットによる搬送を再開させるべく前記復帰処理を実行する請求項1に記載のロボット制御システム。
【請求項3】
前記物体検出装置は、前記停止信号を出力している前記所定の待機時間中も前記所定エリアにて物体を検出可能となっており、前記所定の待機時間中に前記所定エリアにて再び物体を検出した場合には、次に前記所定エリアにて物体を非検出となったタイミングから新たに前記所定の待機時間が経過するまで当該停止信号の出力を継続する請求項2に記載のロボット制御システム。
【請求項4】
前記物体検出装置は、前記所定エリアにて物体を検出した場合に前記コントローラへの停止信号の出力を開始し、
前記防護停止部は、前記物体検出装置から前記停止信号が入力された場合に前記搬送ロボットを防護停止させるべく前記防護停止処理を実行し、
前記物体検出装置は、前記停止信号の出力中に前記所定エリアにて物体を非検出となった場合に前記停止信号の出力を停止し、
前記自動復帰部は、前記物体検出装置から前記停止信号が入力されなくなってから前記所定の待機時間が経過するのを待って前記復帰処理を実行する請求項1に記載のロボット制御システム。
【請求項5】
前記自動復帰部は、前記搬送ロボットが停止し且つ前記物体検出装置により前記所定エリアにて物体が検出されなくなってから前記所定の待機時間が経過するのを待って前記復帰処理を実行する請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載のロボット制御システム。
【請求項6】
前記所定の待機時間は、100msecよりも長い請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載のロボット制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
搬送ロボットに適用されるロボット制御システムには、搬送ロボット周辺の監視エリアに位置する物体(人等の障害物)を検出可能なレーザスキャナ等の物体検出装置を有しているものがある。監視エリアにて物体を検出した場合に搬送ロボットを強制的に減速・停止(所謂防護停止)させることにより、当該物体との衝突を回避したり衝突時のダメージを軽減したりする技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。この種のロボットシステムでは、搬送ロボットの停止後は物体非検出となることで自動的に搬送を再開させることにより、安全性の向上と搬送作業の作業効率の向上とが実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、例えば工場では注意事項等が記載された張り紙がテープや接着剤等で設備に固定される場合があり、上述した搬送ロボットについてもその対象となる可能性がある。仮に、搬送ロボットに固定された張り紙が部分的に剥がれている状態で当該搬送ロボットが動作した場合には、搬送ロボットの動きに伴って張り紙が揺れる。そして、張り紙が揺れることで監視エリアに対してIN(物体検出)→OUT(物体非検出)→IN(物体検出)となった場合には以下の事象が発生し得る。すなわち、最初の検出で搬送ロボットを停止させるべく防護用の停止処理が実行され、物体非検出となることで搬送を再開させるべく復帰処理が開始され、その復帰処理中に物体が再度検出されることで当該復帰処理と停止処理とが重なるといった事象が発生し得る。このような重なりは、ロボット制御システムにおけるエラーや誤作動等の異常の要因となり、搬送ロボットの安定的な運用によって作業効率の向上を図る上で妨げになると懸念される。なお、搬送ロボットに付属の部品であって当該搬送ロボットの動きに伴って揺れる配線等の部品についても張り紙と同様の理由によって上記事象が発生する要因となり得る。このように、搬送ロボットの安全性の向上を図りつつ、搬送ロボットの安定的な運用によって作業効率の向上を図る上で、ロボット制御システムに係る構成に未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、搬送ロボットの安全性を向上させつつ、搬送ロボットの安定的な運用によって作業効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段について記載する。
【0007】
第1の手段.搬送ロボットを駆動制御するコントローラと、前記搬送ロボットを駆動させて物品を搬送する場合に当該搬送ロボット周辺の所定エリアに位置する物体を検出可能な物体検出装置とを備えているロボット制御システムであって、
前記コントローラは、
前記物体検出装置により前記所定エリアにて物体が検出された場合に前記搬送ロボットを防護停止させるべく防護停止処理を実行する防護停止部と、
前記防護停止部による前記防護停止を解除して前記搬送ロボットによる搬送を再開させるべく復帰処理を実行する自動復帰部と
を有し、
前記防護停止部は、前記復帰処理中であっても前記防護停止処理を実行可能となっており、
前記自動復帰部は、前記物体検出装置により前記所定エリアにて物体が検出されなくなってから所定の待機時間が経過するのを待って前記復帰処理を実行する構成となっている。
【0008】
工場では注意事項等が記載された張り紙がテープや接着剤等で設備に固定される場合があり、工場に導入された搬送ロボットについてもその対象となり得る。仮に、搬送ロボットに固定された張り紙が部分的に剥がれている状態で当該搬送ロボットが動作した場合には、搬送ロボットの動きに伴って張り紙が揺れる。この際、上記所定エリアと張り紙との位置関係や張り紙の剥がれ具合いによっては、当該張り紙が所定エリアに対して短時間でIN(物体検出)→OUT(物体非検出)→IN(物体検出)となる可能性を否定できない。そして、短時間で物体検出→物体非検出→物体検出となることにより以下の懸念が生じる。すなわち、最初の検出で搬送ロボットが防護停止され、物体非検出となることで復帰処理が開始され、その復帰処理中に物体が再度検出されることで当該復帰処理と防護停止処理とが重なるといった事象が発生し得る。このような重なりは、制御システムにおけるエラーや搬送ロボットの誤作動等の異常の要因となり、搬送作業の作業効率の向上を図る上で妨げになると懸念される。なお、搬送ロボットに付属の部品であって当該搬送ロボットの動きに伴って揺れる配線等の部品についても張り紙と同様の理由によって上記異常が発生する要因となり得る。
【0009】
ここで、上述した張り紙や配線等の揺れは搬送ロボットが停止することで収まる(収束する)と想定される。搬送ロボットを防護停止させた後は、物体が非検出となった場合に直ちに復帰処理を実行(開始)するのではなく、物体が非検出となってから所定の待機時間の経過を待って復帰処理を実行(開始)することにより、以下の効果が期待できる。すなわち、復帰処理の実行を積極的に遅らせることにより、その遅らせている時間で上記揺れがある程度収まることが期待できる。揺れがある程度収まることで防護停止の原因となった張り紙等が再検出される可能性が低下し、防護停止処理と復帰処理とが重なる機会(エラー等の異常が発生する機会)を減らすことができる。このようにして搬送ロボットの安定的な運用が可能となることで、作業効率の更なる向上に寄与できる。
【0010】
因みに、張り紙や配線等が揺れると想定される部分(搬送ロボットの近傍等)を上記所定エリアから除外することにより、上記揺れに起因した異常を抑制することも可能である。このような構成においては、除外部分を大きくすることで抑制効果を高めることができるものの、除外部分が大きくなることは安全性の向上を図る上で好ましくない。この点、本特徴に示す構成では、張り紙等の揺れに配慮した除外部分の設定が不要であり、作業効率の向上と安全性の向上とを好適に両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態における加工設備の概要を示す斜視図。
【
図4】搬送ロボットの電気的構成を示すブロック図。
【
図5】通常タスクと特殊タスクとを対比した概略図。
【
図6】(a)防護停止用処理を示すフローチャート、(b)自動復帰用の起動処理を示すフローチャート。
【
図7】張り紙の動きによって防護停止が作動する際の挙動を示す概略図。
【
図9】張り紙の揺れと検出結果との関係を示す概略図。
【
図10】作業者の動きによって防護停止が作動する際の挙動を示す概略図。
【
図12】防護停止→自動復帰の流れを示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
以下、工場の加工工程などで用いられる搬送ロボットに具現化した第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。先ず、
図1及び
図2を参照して加工工程(加工設備)の概要を説明する。
【0013】
図1に示すように、加工設備10は、ワークの加工を行う複数の加工機11,12と、ワークを搬送する搬送装置13とが組み合されてなり、それら加工機11,12にて順に加工されたワークは本加工工程から検査工程へ受け渡される。加工設備10では、搬送装置13を構成している搬送ロボット21がワークの搬送等の作業を担当しており、加工機11,12の設定や加工状況の確認等の作業を担当者Wが担当している。つまり、本実施形態に示す加工工程(加工エリア)は、搬送ロボット21とともに担当者(人)が作業する協働工程(協働エリア)となっている。
【0014】
搬送ロボット21は、箱状のハウジング31に水平多関節型のロボットアーム32(
図2参照)が格納されてなるロボット本体25と、当該ロボット本体25(ハウジング31)を支持するレール26とを有してなる。加工機11,12は横並びとなるように配列されており、レール26はそれら加工機11,12の配列方向に延びている。加工機11,12の正面部にはワークの投入/排出を行うための正面開口が形成されており、レール26は各加工機11,12の正面部の手前側を横断するように配置されている。
【0015】
ハウジング31には移動用モータが設けられており、この移動用モータは搬送ロボット21用のコントローラに接続されている。コントローラによって移動用モータの駆動制御が実行されることでロボット本体25がレール26に沿ってスライド移動し、ロボット本体25が各加工機11,12の正面開口と対峙する位置に配置される。これらの位置では、ロボットアーム32が正面開口を通じて加工機11,12内へアクセス可能となる。
【0016】
ロボットアーム32は、ハウジング31に固定されたベースと、当該ベースに取り付けられたアームと、アームの先端(手先)に設けられたハンド(エンドエフェクタ)とを有している。アームは複数の可動部が連結されてなり、関節部毎に、それら可動部を駆動させるアーム用モータと、各関節部(軸)の回転角度を検出するロータリエンコーダと、各関節部(軸)の回転トルクを検出するトルクセンサとが配設されている。アーム用モータ、ロータリエンコーダ、トルクセンサは、コントローラに接続されており、コントローラでは、ロータリエンコーダにより検出された回転角度等に基づいて各アーム用モータ駆動制御を行う。具体的には、上記対峙する位置にてロボットアーム32を伸縮させることにより、加工機11,12へのワークの投入作業や加工済みのワークの回収作業を行う。
【0017】
ここで、
図3を参照して、加工設備10の動き(加工の流れ)について説明する。以下の説明では、加工機11を「第1加工機11」、当該第1加工機11の正面部と対峙する位置を「第1位置」、加工機12を「第2加工機12」、当該第2加工機12の正面部と対峙する位置を「第2位置」として適宜区別する。
【0018】
搬送装置13は、ロボット本体25の第1位置への配置に際して(
図3(a)参照)、第1加工機11におけるワークの加工が完了しているかを確認する。ワークの加工が完了している場合には、ロボットアーム32を作動させて、加工済みのワークを当該第1加工機11から取り出し、当該ワークをハウジング31に収容する。その後は、再びロボットアーム32を作動させて、ハウジング31に収容されている加工前のワークを取り出して第1加工機11の治具にセットする。ワークをセットした後は、ロボットアーム32をハウジング31に格納する。第1加工機11では、搬送ロボット21によるワークの回収/投入作業が完了したことに基づいて、新たにセットされたワークの加工を開始する。
【0019】
搬送装置13は、第1加工機11におけるワークの回収/投入作業が完了した後は、加工済みのワークを第2加工機12へ搬送すべくロボット本体25を第1位置から第2位置へと移動させる(
図3(b)参照)。そして、ロボット本体25の第2位置への配置に際して(
図3(c)参照)、第2加工機12におけるワークの加工が完了しているかを確認する。ワークの加工が完了している場合には、ロボットアーム32を作動させて、加工済みのワークを当該第2加工機12から取り出し、当該ワークをハウジング31に収容する。その後は、再びロボットアーム32を作動させて、ハウジング31に収容されているワーク(第1加工機11にて加工済みのワーク)を取り出して第2加工機12の治具にセットする。ワークをセットした後は、ロボットアーム32をハウジング31に格納する。第2加工機12は、搬送ロボット21によるワークの回収/投入作業が完了したことに基づいて、新たにセットされたワークの加工を開始する。
【0020】
その後は、第1加工機11及び第2加工機12による加工が完了したワークが搬送装置13によって検査工程に受け渡される。ワークの受渡完了後は、ロボット本体25が第1位置へと戻り(
図3(a)参照)、以降は上述した手順でワークの投入/回収作業、搬送作業、次工程への受渡作業を繰り返す。
【0021】
この加工工程については上述したように担当者Wと搬送ロボット21とが作業を分担する協働工程となっている。本搬送装置13においては、搬送ロボット21が人等の物体(障害物)と接触しそうになった場合に、当該搬送ロボット21を停止(所謂防護停止)させることにより、安全性の向上が図られている。以下、搬送装置13の安全機能に係る構成について説明する。
【0022】
図1等に示すように、搬送ロボット21のロボット本体25(詳しくはハウジング31の上面部)にはレーザスキャナ41が搭載されている。レーザスキャナ41は、ロボット本体25周辺の監視エリアSEへ斜め上方から不可視のレーザ光を照射する照射部と、監視エリアSEに位置する物体にて反射されたレーザ光(以下、反射光と称する)を受光する受光部とを有している。照射部及び受光部は監視制御部42(
図4参照)に接続されており、監視制御部42は、所定角度(例えば0.25°)毎に設定されている照射角度でレーザ光が監視エリアSEに照射されるように発光制御を行い、その照射角度と反射光を受光するまでの時間とによって監視エリアSEに物体が位置しているかを判定する。それらレーザスキャナ41及び監視制御部42によって監視装置23が構築されている。
【0023】
監視エリアSEは、面状をなし、ロボット本体25の正面部と対峙するように規定されている。また、監視エリアSEは、搬送装置13を上方から見てレール26と同じ方向に延びる横長矩形状となっており(
図2参照)、その左右両端がロボット本体25に対してその進行方向に突出している。これにより、ロボット本体25の周辺だけでなく、ロボット本体25の進路上に位置する物体を捕捉可能となっている。
【0024】
監視制御部42では、搬送ロボット21が作動中、待機中、防護停止中の何れの場合であっても監視エリアSEに物体が位置していないかを定期的に確認する。
図4に示すように、監視装置23はコントローラ22に接続されており、監視装置23にて物体を検出した場合にはそれを示す信号(停止信号)が監視装置23からコントローラ22に入力される。
【0025】
コントローラ22では、監視装置23から停止信号が入力された場合に移動用モータ34及びアーム用モータ35をOFFとし、搬送ロボット21に設けられた補助ブレーキである電磁ブレーキ36(
図4参照)をONとする。これにより、搬送ロボット21が停止(防護停止)され、物体との接触が抑制される(例えば
図3(c)→
図3(d)参照)。この状態は、防護停止が解除されるまで、具体的には停止信号が入力されなくなるまで継続される。なお、上記電磁ブレーキ36は、防護停止中のロボット本体25の動作を規制する規制部であるとも言える。また、本実施形態では、コントローラ22及び監視装置23によって「ロボット制御システム」が構築されている。
【0026】
ここで、
図5に示すように、コントローラ22のCPUにて実行されるタスクは、通常タスクと特殊タスクとに大別される。通常タスクは、搬送ロボット21の作動中及び待機中に実行される一方、防護停止中は実行されないタスクであり、回収作業、投入作業、搬送作業の動作シーケンスに係る搬送ロボット21の駆動制御処理は当該通常タスクに含まれる。これに対して、特殊タスクは、搬送ロボット21の作動中、待機中、防護停止中の何れにおいても実行されるタスク(所謂特権タスク)であり、この特殊タスクに上述した防護停止用の処理(防護停止用処理)が含まれる。以下、
図6(a)のフローチャートを参照して、防護停止用処理について説明する。防護停止用処理は、搬送ロボット21の作動中、待機中、防護停止中の何れにおいても定期的に実行される。
【0027】
防護停止用処理においては先ず、ステップS101にて監視装置23からの防護停止用の信号を取得する。この防護停止用の信号はHIレベル/LOWレベルの二値信号であり、HIレベル=上記停止信号となるように規定されている。
【0028】
続くステップS102では、防護停止中であるか否かを判定する。具体的には、コントローラ22のメモリに防護停止フラグがセットされているか否かを判定する。防護停止中ではないと判定した場合には、ステップS103に進み、防護停止用信号がHIレベルであるか、すなわち停止信号が入力されているか否かを判定する。停止信号が入力されていない場合にはそのまま本防護停止用処理を終了する。停止信号が入力されている場合には、ステップS104~S108の停止処理(「防護停止処理」に相当)を実行する。
【0029】
停止処理においては先ず、現時点での搬送ロボット21の動作シーケンスの実行状況を記憶する(ステップS104)。本実施形態に示すコントローラ22には、搬送ロボット21の動作シーケンスを規定する動作プログラム群を記憶したプログラムバンクが設けられており、通常タスクにおいては当該プログラムバンクから読み出した動作プログラムに従って搬送ロボット21の駆動制御を行う。ステップS104では、実行中の動作プログラムを事後的に特定可能とすべく当該動作プログラムのアドレスを保存(記憶)する。
【0030】
その後は、通常タスクを禁止し(ステップS105)、移動用モータ34及びアーム用モータ35を全てOFFとし(ステップS106)、電磁ブレーキ36をONとする(ステップS107)。これにより、ロボット本体25が減速→停止することとなる。そして、メモリに上記防護停止フラグをセットして(ステップS108)、本防護停止用処理を終了する。なお、停止処理においては、防護停止となったことを担当者等に報知すべく、警告ランプの点灯や警告音の出力等が実行される。
【0031】
ステップS102の説明に戻り、当該ステップS102にて肯定判定をした場合、すなわち防護停止中である場合には、ステップS109に進む。ステップS109では、停止信号の入力が終了したか否か、すなわち防護停止用信号がLOWレベルとなっているか否かを判定する。防護停止用信号がHIレベルのままである場合、すなわち停止信号の入力が続いている場合には、ステップS109にて否定判定をして、そのまま本防護停止用処理を終了する。これに対して、防護停止用信号がLOWレベルとなった場合、すなわち停止信号の入力が終了した場合には、ステップS109にて肯定判定をしてステップS110~S111の防護停止解除処理を実行した後、本防護停止用処理を終了する。
【0032】
防護停止解除処理では、メモリに記憶されている防護停止フラグを消去し(ステップS110)、通常タスクを再開させるための自動復帰用の起動処理を許可する(ステップS111)。ここで、
図6(b)のフローチャートを参照して、自動復帰用の起動処理について説明する。
【0033】
自動復帰用の起動処理においては先ず、ステップS201にて復帰先を特定する。具体的には、ステップS104にて保存したアドレスから防護停止時に実行中であった動作プログラムを特定する。続くステップS202ではステップS201にて特定した動作プログラムを読み出して、防護停止時の各種モータ34,35の状態を把握する。
【0034】
続くステップS203では電磁ブレーキ36をOFFとして搬送ロボット21の動作規制を解除し、ステップS204では搬送ロボット21の動作を再開させるべく状態復帰用の処理を実行する。この処理では、ステップS202にて把握した状態に合せて、各種モータ34,35の駆動制御(電力供給)を再開させる。
【0035】
以上詳述した構成によれば、防護停止中に監視エリアSEにて物体を非検出となることで搬送を含む搬送ロボット21の動作が自動的に再開される。これにより、安全性の向上と搬送作業等の作業効率の向上とが実現されている。
【0036】
ここで、例えば工場では注意事項等が記載された張り紙Pがテープや接着剤等で設備に固定される場合があり、上述した加工機11,12のみならず搬送ロボット21(詳しくはロボット本体25のハウジング31)についても固定の対象となり得る(例えば
図7(a)参照)。ここで、テープ等で張り紙Pを固定した場合には、作業ミスや粘着力の低下によって張り紙Pが剥がれる可能性がある(
図7(b)参照)。仮に、
図7(b)→
図7(c)に示すように、張り紙Pが部分的に剥がれている状態で搬送(スライド移動)を開始した場合には、ロボット本体25の動きに伴って張り紙Pが揺れる。
【0037】
張り紙Pの大きさや位置によっては、当該張り紙Pの揺れが大きくなった場合にその一部が監視エリアSEに掛かる可能性がある。
図8(a)には、張り紙Pがロボット本体25の正面部における上隅部付近に固定され且つ下側のテープが外れている場合を例示している。この例では、張り紙Pが揺れてロボット本体25の正面部から浮き上がることで監視エリアSEに掛かっている。そして、張り紙Pの揺れが続いた場合には、監視エリアSEに対してIN(物体検出)→OUT(物体非検出)→IN(物体検出)となり得る。
【0038】
例えば、
図9のタイミングチャートに示す例では、t1のタイミングにてワークの搬送が開始されている。搬送開始後は、ロボット本体25の動きによって張り紙Pが揺れており、t2のタイミングでは揺れが大きくなって張り紙Pが監視エリアSEに掛かっている。監視装置23では張り紙Pを検出したことに基づいてコントローラ22への停止信号の出力を開始し、コントローラ22では停止信号の入力を契機として上記停止処理を実行している。その後は、t3のタイミングにて張り紙Pが監視エリアSEから外れ、t4のタイミングにて搬送ロボット21が停止している。このような搬送ロボット21の急激な動きの変化によって直後のt5のタイミングでは張り紙Pが再び監視エリアSEに掛かっている。つまり、短時間で物体検出→物体非検出→物体検出となっている。
【0039】
なお、防護停止機能によって搬送ロボット21を急停止させる構成においては、張り紙Pの形状等によって差はあるものの、張り紙Pの揺れによって物体検出→物体非検出→物体検出となる場合に物体非検出となる時間が100msecよりも短くなることが多い。
【0040】
ここで、自動復帰用の起動処理にて駆動用のモータ34,35や電磁ブレーキ36等のアクチュエータを駆動制御する構成においては、アクチュエータの動作に若干のタイムラグ(本実施形態では200~300msec)が生じる。仮に物体非検出となったタイミングで自動復帰用の起動処理が直ちに開始される構成を想定した場合には、上記タイムラグの存在によって自動復帰用の起動処理中に物体が再度検出されることで当該起動処理と停止処理とが重なるといった事象が発生し得る。このような処理の重なりは、ロボット制御システムにおけるエラーや誤作動等の異常の要因となり、搬送ロボットの安定的な運用によって作業効率の向上を図る上で妨げになると懸念される。特に、異常発生によって搬送ロボットが異常停止した場合には、安全のため管理者等による確認が必要になる。この結果、作業効率が大きく低下すると懸念される。
【0041】
なお、搬送ロボットに付属の部品であって当該搬送ロボットの動きに伴って揺れる配線等の部品についても張り紙と同様の理由によって上記事象(各処理の重なり)が発生する要因となり得る。このようなケースでも、揺れによって物体検出→物体非検出→物体検出となる場合に物体非検出となる時間は100msecよりも短くなることが多い。
【0042】
ここで、監視エリアSEについては目視による確認が困難であるため、担当者Wが意図せず監視エリアSEに侵入し得るものの、このような場合には警告音等を確認した担当者Wは速やかに搬送ロボット21(監視エリアSE)から離れようとするため、基本的には物体検出→物体非検出に留まる。つまり、短時間で物体検出→物体非検出→物体検出となる可能性は低い。つまり、上述した各処理の重なりについては、基本的には張り紙や配線等の揺れが原因になると想定される。
【0043】
但し、例えば
図10に示すように、第2加工機12に向けて移動中の搬送ロボット21用の監視エリアSEを回避するようにして担当者Wが第1加工機11に勢いよく近づこうとした場合には、監視エリアSEを回避したはずが思わず監視エリアSEに掛かってしまうことがある。監視エリアSEを通過した直後に、担当者Wが振った手が監視エリアSEに掛かってしまった場合には、短時間で物体検出→物体非検出→物体検出となり得る。つまり、極めて稀ではあるが、人の動きによって上述した各処理の重なりが偶発的に発生する可能性も否定できない。
【0044】
本実施形態では、これらの事情に配慮して停止処理と自動復帰用の起動処理との重なりを抑制する工夫がなされていることを特徴の1つとしている。以下、
図11のフローチャートを参照して当該工夫、具体的には監視制御部42のCPUにて実行される監視処理について説明する。この監視処理は、防護停止中である場合及び防護停止中でない場合の何れにおいても当該CPUにて定期的に実行される。
【0045】
監視処理においては先ず、ステップS301にて、レーザスキャナ41からの情報に基づき監視エリアSEに物体が位置しているかを確認する。つまり、「物体検出」及び「物体非検出」を判定する。続くステップS302では、コントローラ22に停止信号を出力している最中であるか、すなわち防護停止用信号がHIレベルとなっているかを判定する。停止信号の出力中ではない場合に、ステップS303に進む。現時点で物体非検出となっている場合には、当該ステップS303にて否定判定をして本監視処理を終了する。現時点で物体検出となっている場合には、当該ステップS303にて肯定判定をしてステップS304に進む。ステップS304ではコントローラ22への停止信号の出力を開始する。すなわち、コントローラ22へ出力している防護停止用信号をLOWレベルからHIレベルに切り替える。コントローラ22では、停止信号の入力(防護停止用信号の立ち上がり)を契機として、搬送ロボット21(ロボット本体25)を停止させるべく上述した停止処理を実行する。
【0046】
ステップS302の説明に戻り、コントローラ22に停止信号を出力している最中である場合には、当該ステップS302にて肯定判定をして、ステップS305に進む。ステップS305では、監視制御部42のメモリに延長フラグがセットされているか否かを判定する。延長フラグがセットされていない場合には、ステップS306に進む。
【0047】
現時点で物体検出となっている場合にはステップS306にて肯定判定をしてそのまま本監視処理を終了する。現時点で物体非検出となっている場合にはステップS306にて否定判定をしてステップS307に進む。ステップS307では監視制御部42のメモリに上記延長フラグをセットする。そして、続くステップS308にて監視制御部42に設けられたタイマカウンタに所定の待機時間(300msec)に相当する値Xをセットして、本監視処理を終了する。
【0048】
ステップS305の説明に戻り、監視制御部42のメモリに延長フラグがセットされている場合には、ステップS305にて肯定判定をしてステップS309に進む。ステップS309では、現時点で物体検出となっているかを判定する。物体非検出となっている場合には、ステップS309にて否定判定をしてステップS310に進む。ステップS301では、タイマカウンタの値を更新(1減算)する。続くステップS311では、タイマカウンタの値が「0」となっているかを判定する。すなわち、物体非検出となってから上記所定の待機時間が経過したかを判定する。このように所定の待機時間の経過を特定する機能に着目すれば、上記タイマカウンタは待機時間計測カウンタであるとも言える。
【0049】
物体非検出となってから所定の待機時間が経過していない場合には、そのまま本監視処理を終了する。所定の待機時間が経過した場合には、ステップS312に進み、停止信号の出力を停止する。具体的には、防護停止用信号をHIレベルからLOWレベルに切り替える。その後は、ステップS313にて延長フラグを消去して本監視処理を終了する。
【0050】
コントローラ22では、停止信号の入力が停止されたこと(防護停止用信号の立ち下り)を契機として、搬送ロボット21(ロボット本体25)の動作を再開させるべく上述した自動復帰用の起動処理を実行する。
【0051】
ステップS309の説明に戻り、停止信号の出力を延長している状況下にて新たに物体検出となった場合には、ステップS309にて肯定判定をしてステップS313に進み、当該ステップS313にて延長フラグを消去して本監視処理を終了する。つまり、新たに物体検出となった場合には、所定の待機時間の計測がキャンセルされ停止信号の出力が継続されることとなる。
【0052】
次に、
図12のタイミングチャートを参照して、防護停止及び自動復帰の流れについて補足説明する。
図12(a)には自動復帰までに1度だけ物体を検出しているパターンを例示しており、
図12(b)には自動復帰までに物体を2度検出しているパターンを例示している。なお、
図12(a)におけるta1~ta3と、
図12(b)におけるtb1~tb3とは同じ流れである。
【0053】
図12(a)に示す例では、搬送ロボット21による搬送作業中(動作中)のta1のタイミングにて物体検出となり、監視装置23からコントローラ22に停止信号が出力されている。具体的には、防護停止用信号がLOWレベルからHIレベルに切り替わっている。コントローラ22では、停止信号の入力を契機として停止処理を実行している。これにより、各モータ34,35がOFFとなり電磁ブレーキ36がONとなるが、搬送ロボット21は少し遅れて停止(静止)することとなる(ta3のタイミング)。
【0054】
ta2のタイミングでは物体非検出となっている。但し、停止信号の出力は、ta2のタイミングで直ちに停止されることはなく、ta2のタイミングから上記所定の待機時間(300msec)が経過するまで継続される。
【0055】
ta2のタイミングから所定の待機時間が経過したta4のタイミングでは、停止信号の出力が停止されている。具体的には、防護停止用信号がHIレベルからLOWレベルに切り替わっている。これを契機として、コントローラ22では自動復帰用の起動処理が実行されている。具体的には、電磁ブレーキ36がOFFとなり移動用モータ34がONとなっている。但し、起動には若干のタイムラグが生じるため、起動処理完了となって搬送が再開されるのはta4のタイミングから当該タイムラグを経たta5のタイミングとなっている。
【0056】
検出した物体として張り紙Pを想定した場合には、搬送ロボット21が停止することで張り紙Pの揺れは収束に向かうと想定される。但し、防護停止に際しては搬送ロボット21の動きが急に変化することで、張り紙Pの揺れがta3のタイミングの直後に大きくなる可能性がある。この点、物体非検出となった後も防護停止を継続し自動復帰用の起動処理の開始を積極的に遅らせているため、仮に張り紙Pが監視エリアSEに掛ったとしても(2点鎖線参照)、張り紙Pの揺れに起因した自動復帰用の起動処理と停止処理との重なりが抑制される。
【0057】
図12(b)に示す例では、搬送作業中(動作中)のtb1のタイミングにて監視エリアSEに位置する物体が検出され、監視装置23からコントローラ22に停止信号が出力されている。コントローラ22では、停止信号の入力を契機として停止処理を実行している。これにより、各モータ34,35がOFFとなり電磁ブレーキ36がONとなるが、搬送ロボット21は少し遅れて停止(静止)することとなる(tb3のタイミング)。
【0058】
tb2のタイミングでは物体非検出となっており、所定の待機時間のカウントが開始されている。搬送ロボット21が停止する際に張り紙Pの揺れが大きくなることで、所定の待機時間をカウントしているtb4のタイミングにて再び物体検出となっている。この物体検出を契機として所定の待機時間のカウントがキャンセルされる。
【0059】
その後は、tb5のタイミングにて物体非検出となっているが、物体非検出となっても停止信号の出力は継続され、tb5のタイミングから新たに所定の待機時間のカウントが開始されている。tb5のタイミングから所定の待機時間が経過したtb6のタイミングでは、停止信号の出力が停止されており、これを契機としてコントローラ22では自動復帰用の起動処理が実行されている。
【0060】
以上詳述した第1の実施形態によれば、以下の優れた効果が期待できる。
【0061】
搬送ロボット21(ロボット本体25)に取り付けられた張り紙Pや配線等の揺れは搬送ロボット21が停止することで収まる(収束する)と想定される。搬送ロボット21を強制的に停止(防護停止)させた後は、物体が非検出となった場合に直ちに自動復帰用の起動処理を実行(開始)するのではなく、物体が非検出となってから所定の待機時間の経過を待って自動復帰用の起動処理を実行(開始)することにより、以下の効果が期待できる。すなわち、自動復帰用の起動処理の実行を積極的に遅らせることにより、その遅らせている時間で上記揺れがある程度収まることが期待できる。揺れがある程度収まることで防護停止の原因となった張り紙等が再検出される可能性が低下し、停止処理と自動復帰用の起動処理とが重なる機会(エラー等の異常が発生する機会)を減らすことができる。このようにして搬送ロボット21の安定的な運用が可能となることで、作業効率の更なる向上に寄与できる。
【0062】
張り紙P等の揺れの収まりについては張り紙P等の固定状態や風等の外的要因によってばらつく可能性がある。ここで、本実施形態に示したように、所定の待機時間中も監視を継続し、当該所定の待機時間中に再び物体を検出した場合には、次に物体非検出となったタイミングから新たに所定の待機時間が経過するまで停止信号の出力が続く構成とすれば、揺れの収まりが遅くなった場合であっても、上記異常が発生することを好適に抑制できる。つまり、上記
図12(b)に示した例にて仮に張り紙Pの揺れが続いて3度目の物体検出となった場合であっても、待機時間が不足することを抑制できる。
【0063】
本実施形態に示したように自動復帰用の起動処理の開始を遅らせる構成とすれば、例えば張り紙等の揺れに配慮して監視エリアSEに除外部分を設定するといった対策が不要となる。これは、作業効率の向上と安全性の向上との両立を図る上で有利である。
【0064】
監視装置23からの停止信号の有無によって防護停止や搬送再開を制御する構成とすることは、コントローラ22に係る構成が複雑になることを抑制する上で好ましい。
【0065】
目視による監視エリアSEの識別が困難又は不可である場合には、作業者は当該監視エリアSEを明確に避けて作業等を行うことが難しくなる。偶発的に作業者(手足等)が監視に引っ掛かるといった事象が繰り返された場合に搬送ロボット21に上記エラー等が発生することは、作業者に対するプレッシャを大きくし同作業者の作業効率を低下させる要因になり得る。この点、本実施形態に示した構成によれば、作業者(手足等)が監視エリアSEに掛かるといった事象が短時間で繰り返された場合であっても搬送ロボット21に上記エラー等が生じることを抑制し、作業者に対するプレッシャを軽減できる。
【0066】
<第2の実施形態>
本実施形態では、監視エリアSEにて物体非検出となった場合に所定の待機時間(300msec)が経過するのを待って自動復帰用の起動処理を実行する点で上述した第1の実施形態と同様であるものの、それを実現するための具体的構成が第1の実施形態と相違している。
【0067】
具体的には、第1の実施形態では、監視エリアSEにて物体を検出した場合には停止信号(検出信号)の出力を開始し、停止信号の出中に監視エリアSEにて物体非検出となった場合にはそのタイミングから所定の待機時間が経過するまで停止信号(ダミーの検出信号)の出力を継続する構成とした上でコントローラ22はこの停止信号が入力されなくなるまで防護停止を継続させる構成とした。これに対して、本実施形態では、物体非検出となった場合には、その時点で監視装置23からコントローラ22への停止信号の出力が停止される構成となっており、監視装置23から停止信号が入力されなくなった場合にはコントローラ22側で所定の待機時間が経過するまで自動復帰用の起動処理の開始を控える構成となっている。
【0068】
詳しくは、コントローラ22には特殊タスクの一環として定期的に更新(減算)される待機時間計測カウンタが設けられており、監視装置23から停止信号が入力されなくなったタイミングにて所定の待機時間に相当する所定値が当該待機時間計測カウンタにセットされる。その後は、この待機時間計測カウンタの値が定期的に減算され、同待機時間計測カウンタが0となったタイミング自動復帰用の起動処理を開始する。
【0069】
以上詳述したように、コントローラ22側で自動復帰用の起動処理の開始を遅らせる構成とすれば、例えば所定の待機時間中に監視装置23との通信が乱れる等した場合であっても、待機が途中で解除されることを簡易に回避できる。つまり、意図せず自動復帰用の起動処理が開始されることを抑制し、第1の実施形態に示したエラー回避機能を安定して発揮させる上で好ましい。
【0070】
なお、停止信号が入力されなくなってから所定の待機時間が経過するまでの間に停止信号が再び入力された場合には、待機時間計測カウンタの更新を停止させ且つ次に当該停止信号が入力されなくなった際に待機時間計測カウンタに上記所定値を再セットし、所定の待機時間が経過するのを待って自動復帰用の起動処理を実行する構成とするとよい。
【0071】
<その他の実施形態>
なお、上述した各実施形態の記載内容に限定されず例えば次のように実施してもよい。ちなみに、以下の各構成を個別に上記各実施形態に対して適用してもよく、一部又は全部を組み合わせて上記各実施形態に対して適用してもよい。また、上記各実施形態に示した各種構成の全て又は一部を任意に組み合わせることも可能である。この場合、組み合わせの対象となる各構成の技術的意義(発揮される効果)が担保されることが好ましい。実施形態の組み合わせからなる新たな構成に対して以下の各構成を個別に適用してもよく、一部又は全部を組み合わせて適用することも可能である。
【0072】
・上記各実施形態では、所定の待機時間として、300msecを設定する構成としたが、これに限定されるものではない。張り紙や配線等の揺れや人の急な動きによって検出→非検出→検出となる場合の非検出時間が100msecよりも短くなることが多い点に鑑みれば、所定の待機時間を100msecよりも長い時間、例えば200msec、400msec、500msecとすることで上述したエラー停止の機会を好適に減らすことができる。なお、所定の待機時間を500msecよりも長い時間とすることも可能ではあるが、エラー停止の発生機会を減らしつつ作業効率の向上を図る上では、所定の待機時間を例えば1000msecよりも短い時間とすることが好ましい。因みに、所定の待機時間を50msecとすることも可能ではあるが、このような長さではエラー停止の機会が減らす機能が低下すると想定されるため、少なくとも100msecよりも長い時間とすることが好ましい。
【0073】
・搬送ロボット21を防護停止させた場合には、物体非検出となるまでの停止時間に応じて自動復帰用の起動処理の開始を遅らせるか否かを分ける構成とすることも可能である。例えば、停止時間が予め設定されている第1の基準時間(例えば10sec)よりも長い場合には自動復帰用の起動処理の開始を遅らせる一方、停止時間が第1の基準時間よりも短い場合には速やかに自動復帰用の起動処理を開始させる構成としてもよい。
【0074】
・上記各実施形態では、所定の待機時間を何れの状況においても300msecとしたが、この所定の待機時間の長さを状況に応じて可変させる構成とすることも可能である。例えば、所定の待機時間の長さが第2の基準時間よりも長い場合(物体=人と想定される場合)には所定の待機時間として第1待機時間(100msecよりも長い時間)を設定し、所定の待機時間の長さが第2の基準時間よりも短い場合(物体=張り紙や配線と想定される場合)には所定の待機時間として第2待機時間(100msecよりも短い時間)を設定する構成としてもよい。
【0075】
・上記各実施形態では、監視エリアSEにて物体非検出となった場合には何れも自動復帰用の起動処理の開始を所定の待機時間が経過するまで待つ構成としたが、初回の物体非検出時には自動復帰用の起動処理の開始を待つ一方、2回目以降の物体非検出時には自動復帰用の起動処理の開始を待たない構成(速やかに自動復帰用の起動処理を開始する構成)とすることも可能である。
【0076】
・上記各実施形態では、物体非検出となってから所定の待機時間が経過した場合に自動復帰用の起動処理を実行する構成としたが、物体非検出となり且つ搬送ロボット21が停止(静止)してから所定の待機時間が経過した場合に自動復帰用の起動処理を実行する構成としてもよい。
【0077】
搬送ロボット21が停止(静止)することで張り紙等の揺れは収まると想定されるものの、搬送ロボット21が停止した状態であっても張り紙等が所定エリアに掛かっている状況では収束の目途が立ちにくい。他方で、張り紙等が検出されなくなっても搬送ロボット21の停止(静止)が未完の状況では張り紙等の揺れが一時的に大きくなる可能性がある。そこで、本変形例に示すように搬送ロボット21が停止し且つ物体が非検出となってから所定の待機時間の経過を待つ構成とすることにより、当該所定の待機時間が経過した時点で張り紙等の揺れの収まりが不十分となることを好適に抑制できる。また、このような構成によれば、所定の待機時間を必要最低限の時間にすることができる。
【0078】
・搬送ロボット21が停止した後に監視エリアSEにて物体が検出されなくなった場合には、その検出されなくなったタイミングから所定の待機時間が経過するのを待って自動復帰用の起動処理を実行し、搬送ロボット21が停止する前に監視エリアSEにて物体が検出されなくなった場合には、搬送ロボット21が停止したタイミングから所定の待機時間が経過するのを待って自動復帰用の起動処理を実行する構成とすることも可能である。
【0079】
物体が検出されたことを契機として搬送ロボット21を停止させる場合には、搬送ロボット21の動作状態によって実際に搬送ロボット21が停止するまでの時間が異なる。搬送ロボット21が停止(静止)することで張り紙等の物体の揺れは収まると想定されるものの、搬送ロボット21が停止した状態であっても当該物体が監視エリアSEに掛かっている状況では収束の目途が立ちにくい。そこで、このようなケースでは物体が検出されなくなってから所定の待機時間の経過を待つことにより、所定の待機時間が経過した時点で張り紙等の物体の揺れの収まりが不十分となることを抑制できる。他方で、物体が検出されなくなっても搬送ロボット21の停止(静止)が未完の状況では張り紙等の物体の揺れが一時的に大きくなる可能性がある。そこで、このようなケースでは搬送ロボット21が停止してから所定の待機時間の経過を待つことにより、所定の待機時間が経過した時点で張り紙等の物体の揺れの収まりが不十分となることを抑制できる。このように、不確定な要素に配慮して所定の待機時間の起算タイミングをケース毎に変える構成とすることは、所定の待機時間を極力短くする上で好ましい。
【0080】
・上記各実施形態に示した監視エリアSE(「所定エリア」に相当)については、搬送ロボット21の周辺の少なくとも一部のエリアを含むようにして設定されていれば足り、当該エリアに加えて搬送ロボット21の進路上のエリアを監視エリアSEに含むようにして設定することも可能である。
【0081】
・上記各実施形態に示したレーザスキャナ41は搬送ロボット21(ロボット本体25)の正面側に斜め上方からレーザ光を射出する構成とした。これに代えて又は加えて、搬送ロボット21の左右に斜め上方からレーザ光を照射する構成とすることも可能である。なお、レーザスキャナ41を搬送ロボット21の正面部や側面部に配設し、レーザ光を水平方向に射出する構成とすることも可能である。
【0082】
・上記各実施形態では、搬送ロボット21(ロボット本体25)に搭載したレーザスキャナ41によって搬送の妨げになり得る物体を検出する構成としたが、レーザスキャナ41の配置対象については任意である。例えば、レーザスキャナ41を加工機11,12や工場の天井等に配置してもよい。また、物体を検出するための具体的構成については任意であり、レーザスキャナ41に代えてカメラを用いてもよい。
【0083】
・上記各実施形態では、人協働タイプの搬送ロボット21を有する搬送装置13に搬送再開時のエラー停止を抑制する機能を付与したが、当該機能を非協働タイプの搬送ロボットを有する搬送装置に付与することも可能である。なお、上記各実施形態に示した搬送ロボット21はワークの投入/排出作業及び搬送作業を担う構成としたが、搬送ロボット21については搬送作業のみを担う構成を否定するものではない。
【0084】
<上記実施形態から抽出される発明群について>
以下、上記実施形態から抽出される発明群の特徴について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0085】
特徴1.搬送ロボット(搬送ロボット21のロボット本体25)を駆動制御するコントローラ(コントローラ22)と、前記搬送ロボットを駆動させて物品を搬送する場合に当該搬送ロボット周辺の所定エリア(監視エリアSE)に位置する物体(障害物等)を検出可能な物体検出装置(監視装置23)とを備えているロボット制御システムであって、
前記コントローラは、
前記物体検出装置により前記所定エリアにて物体が検出された場合に前記搬送ロボットを防護停止させるべく防護停止処理(防護停止用処理を構成しているステップS104~S108の各処理)を実行する防護停止部(コントローラ22にて防護停止処理におけるステップS104~S108の各処理を実行する機能)と、
前記防護停止部による前記防護停止を解除して前記搬送ロボットによる搬送を再開させるべく復帰処理(自動復帰用の起動処理)を実行する自動復帰部(コントローラ22にて自動復帰用の起動処理を実行する機能)と
を有し、
前記防護停止部は、前記復帰処理中であっても前記防護停止処理を実行可能となっており、
前記自動復帰部は、前記物体検出装置により前記所定エリアにて物体が検出されなくなってから所定の待機時間(例えば300msec)が経過するのを待って前記復帰処理を実行する構成となっているロボット制御システム。
【0086】
工場では注意事項等が記載された張り紙がテープや接着剤等で設備に固定される場合があり、工場に導入された搬送ロボットについてもその対象となり得る。仮に、搬送ロボットに固定された張り紙が部分的に剥がれている状態で当該搬送ロボットが動作した場合には、搬送ロボットの動きに伴って張り紙が揺れる。この際、上記所定エリアと張り紙との位置関係や張り紙の剥がれ具合い等によっては、当該張り紙が所定エリアに対して短時間でIN(物体検出)→OUT(物体非検出)→IN(物体検出)となる可能性を否定できない。そして、短時間で物体検出→物体非検出→物体検出となることにより以下の懸念が生じる。すなわち、最初の検出で搬送ロボットが防護停止され、物体非検出となることで復帰処理が開始され、その復帰処理中に物体が再度検出されることで当該復帰処理と防護停止処理とが重なるといった事象が発生し得る。このような重なりは、制御システムにおけるエラーや搬送ロボットの誤作動等の異常の要因となり、搬送作業の作業効率の向上を図る上で妨げになると懸念される。なお、搬送ロボットに付属の部品であって当該搬送ロボットの動きに伴って揺れる配線等の部品についても張り紙と同様の理由によって上記異常が発生する要因となり得る。
【0087】
ここで、上述した張り紙や配線等の揺れは搬送ロボットが停止することで収まる(収束する)と想定される。搬送ロボットを防護停止させた後は、物体が非検出となった場合に直ちに復帰処理を実行(開始)するのではなく、物体が非検出となってから所定の待機時間の経過を待って復帰処理を実行(開始)することにより、以下の効果が期待できる。すなわち、復帰処理の実行を積極的に遅らせることにより、その遅らせている時間で上記揺れがある程度収まることが期待できる。揺れがある程度収まることで防護停止の原因となった張り紙等が再検出される可能性が低下し、防護停止処理と復帰処理とが重なる機会(エラー等の異常が発生する機会)を減らすことができる。このようにして搬送ロボットの安定的な運用が可能となることで、作業効率の更なる向上に寄与できる。
【0088】
因みに、張り紙や配線等が揺れると想定される部分(搬送ロボットの近傍等)を上記所定エリアから除外することにより、上記揺れに起因した異常を抑制するといった対策を講じることも可能である。このような構成においては、除外部分を大きくすることで抑制効果を高めることができるものの、除外部分が大きくなることは安全性の向上を図る上で好ましくない。この点、本特徴に示す構成では、張り紙等の揺れに配慮した除外部分の設定が不要であり、作業効率の向上と安全性の向上とを好適に両立できる。
【0089】
なお、本特徴における「前記自動復帰部は、前記物体検出装置により前記所定エリアにて物体が検出されなくなってから所定の待機時間が経過するのを待って前記復帰処理を実行する構成となっているロボット制御システム。」との記載を「前記物体検出装置により前記所定エリアにて物体が検出されなくなってから所定の待機時間が経過したことに基づいて前記自動復帰部による前記復帰処理が許可されるロボット制御システム。」としてもよい。
【0090】
特徴2.前記物体検出装置は、前記所定エリアにて物体を検出した場合に前記コントローラへの停止信号の出力を開始し、
前記防護停止部は、前記物体検出装置から前記停止信号が入力された場合に前記搬送ロボットを防護停止させるべく前記防護停止処理を実行し、
前記物体検出装置は、前記停止信号の出力中に前記所定エリアにて物体を非検出となった場合に、当該非検出となったタイミングから前記所定の待機時間が経過するまで前記停止信号の出力を継続した後に当該停止信号の出力を停止し、
前記自動復帰部は、前記物体検出装置から前記停止信号が入力されなくなった場合に、前記防護停止部による前記防護停止を解除して前記搬送ロボットによる搬送を再開させるべく前記復帰処理を実行する特徴1に記載のロボット制御システム。
【0091】
物体検出装置からの停止信号については、物体を非検出となったタイミングで直ちに出力が停止されるのではなく、非検出となったタイミングから所定の待機時間が経過するまで出力が継続される。このような構成とすれば、特徴1に示した効果を発揮させる上で駆動制御用のコントローラに係る構成が複雑になることを抑制できる。
【0092】
特徴3.前記物体検出装置は、前記停止信号を出力している前記所定の待機時間中も前記所定エリアにて物体を検出可能となっており、前記所定の待機時間中に前記所定エリアにて再び物体を検出した場合には、次に前記所定エリアにて物体を非検出となったタイミングから新たに前記所定の待機時間が経過するまで当該停止信号の出力を継続する特徴2に記載のロボット制御システム。
【0093】
張り紙等の揺れの収まりについては張り紙等の固定状態や風等の外的要因によってばらつく可能性がある。ここで、本特徴に示すように、所定の待機時間中(ダミーの検出信号を出力している最中)も所定エリアの監視を継続し、当該所定の待機時間中に再び物体を検出した場合には、次に物体を非検出となったタイミングから新たに所定の待機時間が経過するまで停止信号の出力が続く構成とすれば、揺れの収まりが遅くなった場合であっても、上記異常が発生することを好適に抑制できる。
【0094】
特徴4.前記物体検出装置は、前記所定エリアにて物体を検出した場合に前記コントローラへの停止信号の出力を開始し、
前記防護停止部は、前記物体検出装置から前記停止信号が入力された場合に前記搬送ロボットを防護停止させるべく前記防護停止処理を実行し、
前記物体検出装置は、前記停止信号の出力中に前記所定エリアにて物体を非検出となった場合に前記停止信号の出力を停止し、
前記自動復帰部は、前記物体検出装置から前記停止信号が入力されなくなってから前記所定の待機時間が経過するのを待って前記復帰処理を実行する特徴1に記載のロボット制御システム。
【0095】
本特徴に示すように、コントローラ側で復帰処理の開始を遅らせる構成とすれば、例えば所定の待機時間中に物体検出装置との通信が乱れる等した場合であっても、待機が途中で解除されることを簡易に回避できる。つまり、意図せず復帰処理が開始されることを抑制し、特徴1に示したエラー回避機能を安定して発揮させる上で好ましい。
【0096】
特徴5.前記自動復帰部は、前記停止信号が入力されなくなってから前記所定の待機時間が経過するまでの間に前記停止信号が再び入力された場合には、次に当該停止信号が入力されなくなってから新たに前記所定の待機時間が経過するのを待って前記復帰処理を実行する特徴4に記載のロボット制御システム。
【0097】
張り紙等の揺れの収まりについては張り紙等の固定状態や風等の外的要因によってばらつく可能性がある。ここで、本特徴に示すように、待機時間の経過待ちの間に停止信号が再び入力された場合には、次に停止信号が入力されなくなってから新たに所定の待機時間が経過するのをまって復帰処理を実行する構成とすれば、揺れの収まりが遅くなった場合であっても、上記異常が発生することを好適に抑制できる。
【0098】
特徴6.前記自動復帰部は、前記搬送ロボットが停止し且つ前記物体検出装置により前記所定エリアにて物体が検出されなくなってから前記所定の待機時間が経過するのを待って前記復帰処理を実行する特徴1乃至特徴5のいずれか1つに記載のロボット制御システム。
【0099】
搬送ロボットが停止(静止)することで張り紙等の揺れは収まると想定されるものの、搬送ロボットが停止した状態であっても張り紙等が所定エリアに掛かっている状況では収束の目途が立ちにくい。他方で、張り紙等が検出されなくなっても搬送ロボットの停止(静止)が未完の状況では張り紙等の揺れが一時的に大きくなる可能性がある。そこで、本特徴に示すように搬送ロボットが停止し且つ物体が非検出となってから所定の待機時間の経過を待つ構成とすることにより、当該所定の待機時間が経過した時点で張り紙等の揺れの収まりが不十分となることを好適に抑制できる。また、このような構成によれば、所定の待機時間を必要最低限の時間にすることができる。
【0100】
特徴7.前記自動復帰部は、前記搬送ロボットが停止した後に前記物体検出装置により前記所定エリアにて物体が検出されなくなった場合には、その検出されなくなったタイミングから前記所定の待機時間が経過するのを待って前記復帰処理を実行し、前記搬送ロボットが停止する前に前記物体検出装置により前記所定エリアにて物体が検出されなくなった場合には、前記搬送ロボットが停止したタイミングから前記所定の待機時間が経過するのを待って前記復帰処理を実行する特徴1乃至特徴5のいずれか1つに記載のロボット制御システム。
【0101】
物体が検出されたことを契機として搬送ロボットを停止させる場合には、搬送ロボットの動作状態によって実際に搬送ロボットが停止するまでの時間が異なる。搬送ロボットが停止(静止)することで張り紙等の物体の揺れは収まると想定されるものの、搬送ロボットが停止した状態であっても当該物体が所定エリアに掛かっている状況では収束の目途が立ちにくい。そこで、このようなケースでは物体が検出されなくなってから所定の待機時間の経過を待つことにより、所定の待機時間が経過した時点で張り紙等の物体の揺れの収まりが不十分となることを抑制できる。他方で、物体が検出されなくなっても搬送ロボットの停止(静止)が未完の状況では張り紙等の物体の揺れが一時的に大きくなる可能性がある。そこで、このようなケースでは搬送ロボットが停止してから所定の待機時間の経過を待つことにより、所定の待機時間が経過した時点で張り紙等の物体の揺れの収まりが不十分となることを抑制できる。このように、不確定な要素に配慮して所定の待機時間の起算タイミングをケース毎に変える構成とすることは、所定の待機時間を極力短くする上で好ましい。
【0102】
特徴8.前記自動復帰部は、前記物体検出装置により前記所定エリアにて物体を検出していた時間が基準時間よりも短い場合には物体が非検出となってから前記所定の待機時間が経過するのを待って前記復帰処理を実行し、前記物体検出装置により前記所定エリアにて物体を検出していた時間が基準時間よりも長い場合には物体が非検出となってから前記所定の待機時間が経過するのを待つことなく前記復帰処理を実行する特徴1乃至特徴7のいずれか1つに記載のロボット制御システム。
【0103】
特徴1等に示したように所定の待機時間の経過を待って復帰処理を実行する構成とすることは、エラー等の発生を抑制する上では好ましい。他方で、検出した物体については必ずしも張り紙や配線とは限らず、検出した状態が長く続く場合には張り紙や配線である可能性が低くなる。そこで、物体の検出時間が基準時間よりも短い場合(張り紙や配線等を想定)には復帰処理の開始を遅らせる一方、物体の検出時間が基準時間よりも長い場合(作業者等を想定)には復帰処理を速やかに開始することにより、張り紙等の揺れに起因した上記異常の発生を抑制しつつ搬送ロボットの作業効率の向上に寄与できる。
【0104】
なお、例えば「基準時間」を「搬送ロボットを防護停止させる場合の所要時間」よりも長くなるように規定するとよい。
【0105】
特徴9.前記所定の待機時間は、100msecよりも長い特徴1乃至特徴8のいずれか1つに記載のロボット制御システム。
【0106】
張り紙が揺れて物体検出→物体非検出→物体検出となる場合に当該物体非検出となる時間は張り紙の形状等によって差はあるものの100msecよりも短くなることが多いと想定される。そこで、本特徴に示すように、所定の待機時間を100msecよりも長くすれば、復帰処理と防護停止処理とが重なることを抑制し、張り紙や配線の揺れに起因した上記エラー等の異常が発生する機会を減らすことができる。なお、当該異常をより好適に抑制する上では所定の待機時間を200msecよりも長くすること、更には300msecよりも長くすることが好ましい。
【0107】
特徴10.前記所定の待機時間は、1000mseよりも短い特徴9に記載のロボット制御システム。
【0108】
搬送ロボットを停止させてから張り紙の揺れが非検出となる程度に収まるまでの時間についてはある程度のばらつきが生じる。所定の待機時間をある程度長く設定することにより、このようなばらつきを許容できる。他方で、所定の待機時間が過度に長くなれば、搬送再開までの待ち時間が嵩むこととなる。上述したエラー等の異常が発生する機会を減らしつつ、搬送を速やかに再開させる構成を実現する上では、所定の待機時間を1000msecよりも短くすることが好ましい。
【符号の説明】
【0109】
10…加工設備、13…搬送装置、21…搬送ロボット、22…コントローラ、23…監視装置、34…移動用モータ、35…アーム用モータ、41…レーザスキャナ、42…監視制御部、SE…監視エリア、P…張り紙。