(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058306
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】水電解装置及び水電解セルの制御方法
(51)【国際特許分類】
C25B 1/04 20210101AFI20230418BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20230418BHJP
C25B 15/00 20060101ALI20230418BHJP
C25B 15/02 20210101ALI20230418BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20230418BHJP
C25B 15/023 20210101ALI20230418BHJP
C25B 9/65 20210101ALI20230418BHJP
C25B 11/052 20210101ALI20230418BHJP
C25B 11/081 20210101ALI20230418BHJP
H02J 15/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B15/00 303
C25B15/02
C25B15/08 302
C25B15/023
C25B9/65
C25B11/052
C25B11/081
H02J15/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168247
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】松永 温
(72)【発明者】
【氏名】中森 洋二
(72)【発明者】
【氏名】吉永 典裕
(72)【発明者】
【氏名】村山 博俊
(72)【発明者】
【氏名】干鯛 将一
(72)【発明者】
【氏名】霜鳥 宗一郎
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA20
4K011AA30
4K011BA07
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC01
4K021BC06
4K021CA05
4K021CA06
4K021CA08
4K021DB04
4K021DB28
4K021DB31
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC03
4K021EA06
(57)【要約】
【課題】アノード電極の金属触媒の溶出を抑制しつつ、不純物の排出が可能な水電解装置、及び水電解セルの制御方法を提供する。
【解決手段】本実施形態によれば、水電解装置は、水電解セルと、電源部と、制御部と、を備える。水電解セルは、一方の面にアノード電極を設置し、他方の面にカソード電極を設置した固体高分子電解質膜を用いてアノード電極に供給された水を電気分解して、水素と酸素を発生する。電源部は、水電解セルの端子間に直流電源による電流及び電圧を供給する。制御部は、水素の生成を停止した後に、水電解セル内における水素生成時の電流の向きと逆方向の放電電流が発生する接続状態とすると共に、放電電流が発生する際のアノード電極における電位低下速度を所定の値としながら、且つ、アノード電極の電位を第1電位に制御する第1モードの制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面にアノード電極を設置し、他方の面にカソード電極を設置した固体高分子電解質膜を用いて前記アノード電極に供給された水を電気分解して、水素と酸素を発生する水電解セルと、
前記水電解セルの端子間に直流電源による電流及び電圧を供給する電源部と、
前記水素の生成を停止した後に、前記水電解セル内における水素生成時の電流の向きと逆方向の放電電流が発生する接続状態とすると共に、前記放電電流が発生する際の前記アノード電極における電位低下速度を所定の値としながら、且つ、前記アノード電極の電位を第1電位に制御する第1モードの制御を行う制御部と、
を備える、水電解装置。
【請求項2】
前記端子間に接続可能な可変抵抗を更に備え、
前記制御部は、前記可変抵抗の抵抗値を前記アノード電極の電位低下速度が所定の範囲となるように制御する、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1モードにおいて前記水電解セルの前記端子間に前記可変抵抗を接続させる、請求項2に記載の水電解装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1モードにおいて、前記可変抵抗の抵抗値を前記端子間における電位低下速度が所定の値範囲となるように制御する、請求項2又は3のいずれか一項に記載の水電解装置。
【請求項5】
前記制御部は、
水素生成の停止時における前記第1モードでは、前記アノード電極の電位を前記第1電位に制御し、
水素生成の停止時における第2モードでは、前記第1電位よりも高く、且つ前記アノード電極の電位を前記逆方向の放電電流が発生しない第2電位に制御する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の水電解装置。
【請求項6】
前記第2電位は、前記アノード電極の触媒の溶媒溶出電位以上となる範囲である、請求項5に記載の水電解装置。
【請求項7】
前記アノード電極の触媒の金属成分が酸化イリジウムである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の水電解装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記アノード電極に供給される水の電導度が所定値以上になった場合に、前記第1モードでの制御を行う、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の水電解装置。
【請求項9】
前記制御部は、水素生成中の前記水電解セルの前記端子間の電圧が所定の値以上になった場合に、前記第1モードでの制御を行う、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の水電解装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1モードにおいて、前記水として所定の電導度以下の純水を供給する制御を行う、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の水電解装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記水電解セルの水素生成時間の積算値が所定値を越えた場合に、前記第1モードの制御を行う、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の水電解装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記水電解セルの起動又は停止回数が所定値を越えた場合に、前記第1モードの制御を行う、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の水電解装置。
【請求項13】
前記電源部は、直流電源と、電気的に接続又は非接続になる複数のスイッチとを、有し、
前記制御部は、前記可変抵抗を前記端子間に接続する第1接続状態、前記直流電源を前記端子間に接続する第2接続状態、前記直流電源及び前記可変抵抗を直列に前記端子間に接続する第3接続状態、の少なくともいずれかとなるように前記複数のスイッチを制御し、前記第1モードでは、前記第1接続状態となるように前記接続状態を制御する、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の水電解装置。
【請求項14】
一方の面にアノード電極を設置し、他方の面にカソード電極を設置した固体高分子電解質膜を用いて前記アノード電極に供給された水を電気分解して、水素と酸素を発生する水電解セルの制御方法であって、
前記水素の生成を停止した後に、前記水電解セル内における水素生成時の電流の向きと逆方向の放電電流が発生する接続状態とすると共に、前記放電電流が発生する際の前記アノード電極の電位低下速度を所定の値としながら、且つ、前記アノード電極の電位を第1電位に制御する、水電解セルの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水電解装置及び水電解セルの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水電解装置は、水素と酸素を発生する装置である。稼働時は、水電解装置が備える水電解セルに外部から直流電流を流し、水を電気分解することによりカソード電極から水素を、アノード電極から酸素を発生する。水電解セルとしては、固体高分子形電解質膜を隔膜として使用した固体高分子形水電解セル(PEM水電解セル)や、アルカリ電解液中に隔膜を設けたアルカリ水電解セル、固体酸化物を電解質として用いた固体酸化物形水電解セルが挙げられる。中でも固体高分子形水電解セルは作動温度が低く、且つ純度の高い水素の生成が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この固体高分子形水電解セルでは、セル内に供給する循環水に金属イオンなどの不純物が混入すると、セル電極内に付着して性能低下を起こす恐れがある。また、稼働を停止させた際に、アノード電極の残留する酸素ガスとカソード電極の水素ガスが反応し逆起電力が発生し、逆電流が流れる際に不純物の放出が可能となることがわかってきた。しかしながら、この放電に伴う急速な電圧変動と電圧低下によってアノード電極の金属触媒が溶出し、水電解セルが劣化する恐れがある。
【0005】
そこで、発明が解決しようとする課題は、アノード電極の金属触媒の溶出を抑制しつつ、不純物の排出が可能な水電解装置及び水電解セルの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態によれば、水電解装置は、水電解セルと、電源部と、制御部と、を備える。水電解セルは、一方の面にアノード電極を設置し、他方の面にカソード電極を設置した固体高分子電解質膜を用いてアノード電極に供給された水を電気分解して、水素と酸素を発生する。電源部は、水電解セルの端子間に直流電源による電流及び電圧を供給する。制御部は、水素の生成を停止した後に、水電解セル内における水素生成時の電流の向きと逆方向の放電電流が発生する接続状態とすると共に、放電電流が発生する際のアノード電極における電位低下速度を所定の値としながら、且つ、アノード電極の電位を第1電位に制御する第1モードの制御を行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アノード電極の金属触媒の溶出を抑制しつつ、不純物の排出ができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】水電解セルを構成する単セルの構成例を示す図。
【
図5】アノード電極と、カソード電極と、の反応を模式的に示す図。
【
図6】不純物混入時のアノード電極と、カソード電極と、の反応を模式的に示す図。
【
図7】回復操作時におけるアノード電極と、カソード電極と、の反応を模式的に示す図。
【
図11】第1モードでの水電解セルの状態を示す図。
【
図13】第2モードでの水電解セルの状態を示す図。
【
図14】水電解セルに対する制御例を示すフローチャート。
【
図15】水素生成の停止時における制御例を示すフローチャート。
【
図16】第2実施形態に係る水電解装置の構成を示すブロック図。
【
図17】第2実施形態に係る制御部の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る水電解装置及び水電解セルの制御方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、水電解装置1の構成を示すブロック図である。この
図1に示すように、本実施形態に係る水電解装置1は、固体高分子電解質膜を用いて水素と酸素を発生する水電解装置の一例である。水電解装置1は、水電解セル20と、酸素ガス/気液分離タンク23と、循環水供給タンク24と、循環水供給ポンプ25と、フィルタ26と、純水供給部27と、水素ガス/気液分離タンク28と、電源部30と、制御部40と、複数の制御弁V10、V12、V14、V16、V18、V20と、供給管P10、P12、P14、P16と、電導計D10と、水素計H10とを備える。
図1には更に水素ガス貯蔵タンク29と、市水供給管P16と、制御弁V20、V22とが図示されている。なお、水電解装置1を水電解ユニットと称する場合がある。
【0011】
図2は、水電解セル20を構成する単セル100の構成例を示す図である。
図2に示すように、単セル100は、固体高分子(PEM:Polymer Electrolyte Membrane)電解質膜101と、アノード電極102と、カソード電極104と、アノード集電体106と、カソード集電体108と、を有する。単セル100は、固体高分子電解質膜101がアノード電極102とカソード電極104とで挟持され、さらにその両外側にアノード集電体106及びカソード集電体108が配置される。そして、水電解セル20は、複数の単セル100を積層して構成される。なお、本実施形態に係る水電解セル20は、複数の単セル100を直列に積層して構成されるが、これに限定されない。例えば、水電解セル20を単セル100で構成してもよい。或いは、複数の単セル100を並列に接続して水電解セル20を構成してもよい。
【0012】
固体高分子電解質膜101は、例えばスルホン酸基を有するフッ素系高分子を含んで構成される。アノード電極102は、例えば酸化イリジウム触媒(IrOx)を含む触媒層が固体高分子電解質膜101とチタン不織布に挟持されたもので構成されている。カソード電極104は、例えば白金担持カーボン触媒もしくは白金合金担持カーボン触媒とアイオノマーの混合物がカーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン不織布もしくはチタン不織布に塗工されたもので構成されている。
【0013】
アノード集電体106は、電源部30の陽極に接続され、カソード集電体108は、電源部30の陰極に接続される。これにより、固体高分子電解質膜101の中で水素イオンが移動して、供給部G2から供給された水H2Oが電解される。このとき、アノード電極102では、2H2O→4H++4e-+O2の反応が起き、酸素O2と未反応の水H2Oが排出部G4から排出される。
【0014】
一方で、カソード電極104では、4H++4e-→2H2の反応が起き、水素H2が排出部G6から排出される。このように単セル100内では、2H2O→2H2+O2の反応が起きる。
【0015】
複数の制御弁V10、V12、V14、V16、V18、V20、V20、V22の開閉は、制御部40により制御される。循環水供給管P10は、水電解セル20と、酸素ガス/気液分離タンク23と、循環水供給タンク24と、循環水供給ポンプ25と、フィルタ26と、電導計D10と、を連通する。酸素ガス/気液分離タンク23は、水電解セル20内の各単セル100の排出部G4から排出される酸素を含む水を回収し、酸素と水を分離する。
【0016】
循環水供給タンク24は、酸素ガス/気液分離タンク23により分離された水と、純水供給部27から補給される純水を貯水する。循環水供給ポンプ25は、各単セル100の排出部G4から排出される酸素を含む水を、酸素ガス/気液分離タンク23に供給する。また、循環水供給ポンプ25は、循環水供給タンク24の水を、フィルタ26を介して、各単セル100の供給部G2に供給する。フィルタ26は、循環水内の不純物を濾過する。
【0017】
電導計D10は、循環水の電導度(電気伝導率)を測定する。水素計H10は、排出管P16内の水素量を測定する。
【0018】
純水供給部27は、市水供給管P16を介して供給される水から純水を生成し、供給する。純水供給部27は、通常の運転時には、第1純水補給管P14を介して循環水供給タンク24に対して純水を補給する。一方で、水電解セル20における不純物の除去処理中には、第2純水補給管P12を介して、各単セル100に純水を供給する。純水供給部27が供給する純水は、所定の電導度以下に調整された水で、例えばイオン交換水や、その他の方法で不純物が除去された精製水である。例えば、イオン交換水の電導度は、1μS/cm以下、望ましくは0.06μS/cm以下(電気抵抗率に換算して 18MΩ・cm以上)である。
【0019】
排出管P16は、水素ガス/気液分離タンク28と各単セル100の排出部G6とを接続する。これにより、各単セル100の排出部G6から排出される水素ガス及び、水素イオンと共に固体高分子電解質膜101内を移動して凝縮した水は、水素ガス/気液分離タンク28に供給される。
【0020】
水素ガス/気液分離タンク28は、水素ガスと水を分離する。水素ガス/気液分離タンク28は、更に水素ガス貯蔵タンク29に接続される。これにより、分離された水素は、水素ガス貯蔵タンク29に貯蔵され、配給される。
【0021】
図3Aは、電源部30の構成例を示すブロック図である。
図3Aに示すよう、電源部30は、供給電流及び電圧を制御させることが可能な直流電源30aと、可変抵抗30bと、複数のスイッチT10、T14、T16、T20と、電圧計V10とを有する。複数のスイッチT10、T14、T16、T20は、電気的に接続又は非接続になるスイッチである。なお、本実施形態に係る電気的な接続状態が複数のスイッチT10、T14、T16、T20の接続状態に対応する。
【0022】
直流電源30aの陽極はスイッチT10の一端に接続されスイッチT10の他端はアノード集電体106と接続される。すなわち、スイッチT10が接続状態となる場合に、直流電源30aの陽極は、スイッチT10を介してアノード集電体106と接続され、陰極はカソード集電体108と接続される。スイッチT14の一端はスイッチT10の他端に接続され、他端はスイッチT16の一端と接続される。スイッチT16の他端は、直流電源30aの陰極に接続される。なお、本実施形態に係るアノード集電体106とカソード集電体108とが端子に対応する。可変抵抗30bの一端は、カソード集電体108と接続され、他端はスイッチT20の一端に接続される。スイッチT20の他端は、スイッチT14の他端に接続される。
【0023】
可変抵抗30bは、スイッチT10、T16が非接続状態となり、スイッチT14、T20が接続状態となる場合に、アノード集電体106とカソード集電体108とに接続される。すなわち、可変抵抗30bは、スイッチT10、T16が非接続状態となり、スイッチT14、T20が接続状態となる場合に、アノード集電体106とカソード集電体108との間の抵抗を可変とする。
【0024】
一方で、上述のようにスイッチT10を非接続状態とする場合に、直流電源30aを非接続状態とすることが可能である。複数のスイッチT10、T14、T16、T20の接続、非接続の状態は制御部40により制御される。
【0025】
図3Bは、電源部30の別の構成例を示すブロック図である。
図3Bに示すよう、電源部30は、供給電流及び電圧を制御させることが可能な直流電源30aと、可変抵抗30bと、複数のスイッチT10、T14、T16、T20と、電圧計V10とを有する。直流電源30aの陽極はアノード集電体106と接続され、陰極はスイッチT10の一端と接続される。スイッチT10の他端は、可変抵抗30bの一端と、スイッチT16の一端と接続される。スイッチT16の他端は、カソード集電体108と接続される。すなわち、スイッチT10、T16が接続状態となる場合に、直流電源30aの陽極は、アノード集電体106と接続され、陰極はスイッチT10、T16を介してカソード集電体108と接続される。
【0026】
可変抵抗30bの他端は、スイッチT20の一端と接続される。スイッチT20の他端は、カソード集電体108と接続される。可変抵抗30bは、スイッチT10、T16が非接続状態となり、スイッチT14、T20が接続状態となる場合に、アノード集電体106とカソード集電体108とに接続される。すなわち、可変抵抗30bは、スイッチT10、T16が非接続状態となり、スイッチT14、T20が接続状態となる場合に、アノード集電体106とカソード集電体108との間の抵抗を可変とする。
【0027】
図4は、制御部40の構成例を示すブロック図である。
図4に示すように、制御部40は、水電解装置1の全体を制御し、例えば記憶部400と、取得部402と、接続制御部404と、電流・電圧制御部406と、抵抗制御部408と、弁制御部410と、判定部412とを有する。制御部40は、例えばCPU(CentralProcessingUnit)やMPU(MicroProcessor)を含んで構成され、記憶部400に記憶される制御プログラムを実行することにより各処理部を構成する。なお、各処理部を電子回路で構成してもよい。
【0028】
制御部40の具体的な構成は限定されず、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)、その他ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のデバイスが用いられてもよい。或いは、この制御部40は、汎用のコンピュータなどにより構成してもよい。
【0029】
記憶部400は、例えばHDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)等で構成される。この記憶部400は、上述のように、制御プログラムと、
図9により後述する各種金属のペーハ(PH)と、溶媒溶出電位との関係を示すテーブルL10(
図9参照)などを記憶している。
【0030】
取得部402は、水電解装置1の制御に関する情報を取得する。本実施形態では、例えば、電圧計V10(
図3A、及びB参照)の電圧に関する情報と、電導計D10(
図1参照)の電導度に関する情報を少なくとも取得する。
【0031】
接続制御部404は、上述のように、複数のスイッチT10、T14、T16、T20の接続、非接続の状態を制御する。また、電流・電圧制御部406は、直流電源30aの電圧を制御し、単セル100(
図2参照)のアノード集電体106に印可される電位を制御する。
【0032】
抵抗制御部408は、可変抵抗30bの抵抗値を制御する。また、弁制御部410は、上述のように、複数の制御弁V12、V14、V16、V18、V20、V22の開閉を制御する。判定部412は、例えば電導計D10(
図1参照)の電導度に関する情報に基づき、循環水の水質を判定する。
【0033】
図5は、水電解時におけるアノードの電極102と、カソード電極104と、の反応を模式的に示す図である。水電解時においては、接続制御部404は、スイッチT10、T16により直流電源30aを接続状態とし、スイッチT14、T20により可変抵抗30bを非接続状態とする。また、電流・電圧制御部406は、電圧計V10(
図3A、及びB参照)の電圧に関する情報に基づき、単セル100(
図2参照)のアノード集電体106と、カソード集電体108とに印可される電圧が所定値、例えば1.8ボルトとなるように、直流電源30aを制御する。
【0034】
この際に、弁制御部410は、制御弁V10の供給管P10側の弁を開状態とし、供給管P12側の弁を閉状態にする。また、弁制御部410は制御弁V12、V20、V22の弁を開状態とし、制御弁V14、V16、V18の弁を閉状態とする。なお、これらの制御弁の開閉状態は一例で有り、これらの開閉状態に限定されない。
【0035】
このとき、上述のように、アノード電極102では、2H2O→4H++4e-+O2の反応が起き、酸素O2と未反応の水H2Oが排出部G4から排出される。
【0036】
図6は、運転の経過と共に循環水に不純物が混入した場合の水電解時におけるアノードの電極102と、カソード電極104と、の反応を模式的に示す図である。
図5と同様の制御が行われると、循環水に含まれる不純物が、単セル100内に流入し、アノードの電極102、及び電解質膜101に蓄積される。不純物が蓄積されるに従い、水電解セル20は劣化し、同じ水素量を生成するためには、アノード集電体106と、カソード集電体108とに印可される電流及び電圧をセル劣化に応じて制御する必要が生じる。
【0037】
図7は、不純物が混入した場合に行う回復操作時におけるアノード電極102と、カソード電極104と、の反応を模式的に示す図である。接続制御部404は、直流電源30aを停止すると共に、スイッチT10、T16により回路を非接続状態とし、可変抵抗30bのスイッチT14、T20を接続状態とする。
【0038】
この際に、弁制御部410は、制御弁V10の供給管P12側の弁を開状態にする。また、弁制御部410は制御弁V10の供給管P10側の弁と、弁V12を閉状態又は、水電解時よりも絞った状態にする。これにより、純水供給部27から供給される純水が主として、各単セル100(
図2参照)のアノード電極102に供給される。水電解を停止した直後の各単セル100内に残留したガスにより、所謂燃料電池反応が起き、アノード電極102では、O
2+4H
++4e
-→2H
2Oの反応が起きる。一方で、カソード電極104では、2H
2→4H
++4e
-の反応が起きる。この際に、水電解とは逆方向の水生成反応で触媒に吸着した不純物が脱離して、アノードの電極102、及び電解質膜101から除去される。なお、これらの制御弁の間閉状態は一例で有り、これらの開閉状態に限定されない。
【0039】
図8及び
図9を用いて、比較例としての制御例を説明する。
図8は、酸化イリジウムの熱力学安定性を示す図である。縦軸は、アノード集電体106の水素基準における電位を示し、横軸は、アノード電極102の水素イオン濃度であるペ-ハー(PH)を示している。ラインL10は、酸化イリジウムのペーハーと溶媒溶出電位との関係を示すグラフの破線L10により数値例を示す。
図8において、電位の高い状態(グラフの破線L10より上)で酸化イリジウム触媒IrO
xは、安定であり、電位の低い状態(グラフの破線L10より下)では、酸化イリジウム触媒IrO
xは不安定となり、Ir金属は溶出する傾向があることを示す。この数値例L10は、テーブル化したデータとして記憶部400に記憶される。本実施形態における水素基準の0ボルトは、水素分子と水素イオンとの分離、合成が平衡状態での電位を意味する。このため、本実施形態において水素基準に対する電位と称する場合には、水素分子と水素イオンとの分離、合成が平衡状態での0ボルトに対する電位を意味する。
【0040】
図9は、比較例における水電解セル20の状態を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は、水電解セル20内を流れる水電解電流、水電解セル20のアノード電極102の電圧(電位)、水電解セル20の単セル100内部の電界をそれぞれ示す。
【0041】
図8に示すように、水電解中の運転中の時間t10(
図9参照)までの状態St10では水素の生成中であり、アノード電極102の電位は、電流の制御により所定値、例えば 1.8ボルトとなる。この際に
図5又は
図6に示したように、水素ガスが生成される。
【0042】
図8及び
図9に示すよう、t10、t10aで直流電源30aの通電を運転状態からゼロに低下させる過程で、水素の生成は停止すると共に、時間t12までアノード電極102の電位は低下を続け、状態St12まで低下する。そして、時間t12を過ぎて、回路を接続したまま放置すると、残留ガスによる逆反応(燃料電池反応)により水電界電流はマイナスとなり、水素生成時の電流の向きと逆方向の放電電流が発生し、放電電流は次第に0となる。時間t14で電流及び電位は次第に0となり、状態St14となる。水素生成時の電流の向きと逆方向の放電電流が発生している期間T1214(t12とt14の間)に、各セル100の内部では水素イオンが水電解時と逆方向で移動し、随伴する水分子(ドラック水)と共にアノード電極102の触媒上に吸着した不純物の脱離を促進して、
図7に示すように不純物の除去が行われる。
【0043】
しかしながら、期間T1214に生じる放電電流のピークA10は急峻に変化し、放電電流に伴いアノード電極102の電位が低下することによる電位低下速度がより早くなる。この場合、アノード電極102の電位が溶媒溶出電位の範囲(
図8の溶媒溶出電位L10の破線より下側の範囲)にある状態、例えば状態St14が維持されるため、アノード電極102における酸化イリジウムの溶媒溶出が生じてしまう。このため、アノード電極102の触媒がより劣化してしまう。
【0044】
本実施形態に係る制御例を
図10乃至14を用いて説明する。本実施形態に係る制御例は、2つの停止モードを有する。第1モードは、放電電流が0に近づいた時点におけるアノード電極102の電位が所定値である第1電位、例えば0.5ボルトとなるように制御する。第1モードは主として、不純物をアノードの電極102、及び電解質膜101から除去する際に用いるモードである。
【0045】
第2モードは、第1電位よりも高く、且つアノード電極102の電位を水電解反応とは逆方向の放電電流が発生しない第2電位に制御するモードである。例えば、第2電位は、1.5ボルトであり、アノード電極102における所定触媒、例えば酸化イリジウムの溶媒溶出電位L10以上で酸化イリジウムが安定な状態St12である(
図12参照)。
【0046】
図10は、
図8と同様に、酸化イリジウムの熱力学安定性を示す図で、第1モードでの停止時の電位状態を説明する図である。縦軸は、アノード集電体106の水素基準における電位を示し、横軸は、アノード電極102の水素イオン濃度であるペ-ハー(PH)を示している。
【0047】
図11は、第1モードでの水電解セル20の状態を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は、水電解セル20内を流れる電解電流、水電解セル20のアノード電極102の電圧、水電解セル20の単セル100内部の電界をそれぞれ示す。
【0048】
第1モードでは、水素生成の停止時に、接続制御部404は、電源部30のスイッチT10、T16により直流電源30aを非接続状態とし、スイッチT14、T20により可変抵抗30bを接続状態とする。そして、抵抗制御部408は、電圧計V10の情報に基づき、可変抵抗30bの抵抗値を制御し、T1216(時間t12とt16間)(
図11参照)の電位低下速度を、触媒の劣化を抑制する範囲に制御する。抵抗制御部408は、電位低下速度を、例えば、単セル100当たり20mV/sec以下、望ましくは単セル100当たり15mV/sec以下の範囲に制御する。
第1モードでは、
図10及び
図11に示すよう、直流電源30aの通電を運転状態からゼロに低下させる過程の時間t10からt10aの間で水素の生成が停止されると、時間t12までアノード電極102の電位は、状態St12まで低下する。そして、時間t12で各スイッチを第1モードとした後で、水電界電流はマイナスとなり、水素生成時の電流の向きと逆方向の放電電流が発生する。期間T1216、すなわち時間t12からt16の間で放電電流を制御することにより、アノード電極102の電位が低下して状態St16となる。この際、状態St16での電位は、比較例(
図8参照)の状態St14より高い所定電位、例えば0.5ボルトに維持される。水素生成時の電流の向きと逆方向の放電電流が発生している期間T1216の間に、
図7に示すように不純物の除去が行われる。
【0049】
期間T1216の間に生じる放電電流のピークB12は、ピークA10(
図9参照)よりもなだらかに変化し、期間T1216の電位低下速度がより遅くなる。この際、
図10に示した様なアノード電極102おける酸化イリジウム触媒IrO
xの電位の急速な状態変化が抑制される。また、状態St16でのアノード電極102の電位も比較例、例えば
図8の状態St14よりも高く維持され、酸化イリジウムの溶媒溶出も比較例よりも抑制される。このため、アノード電極102の触媒の劣化がより抑制される。なお、可変抵抗30bにより、状態St16におけるアノード電極102の電位の変化は抑制されるが、可変抵抗30bの接続を継続すると放電電流が流れ続け、次第に低下する。このため、次に
図3AのスイッチT14、T20を非接続状態として放電電流を停止する。あるいは、例えば
図3Bに示すように、接続制御部404は、電源部30の回路内で可変抵抗30bと直流電源30aとを直列に接続するように、スイッチT14、T16を非接続状態とし、スイッチT10、T20を接続状態とし、電流・電圧制御部406は、状態St16におけるアノード電極102の電位が一定値となるように直流電源30aと可変抵抗30bをそれぞれ制御してもよい。この場合、電流・電圧制御部406は、直流電源30aの通電を運転状態からゼロに低下させた後に電源部30で放電電流を制御し、アノード電極102の電位が、溶媒溶出電位L10以上で酸化イリジウムが安定な状態(
図10参照)に継続が可能となるように制御してもよい。
【0050】
図12は、
図8と同様に、酸化イリジウムの熱力学安定性を示す図で、第2モードでの停止時の電位状態を示す説明図である。縦軸は、アノード集電体106の水素基準における電位を示し、横軸は、アノード電極102の水素イオン濃度であるペ-ハー(PH)を示している。
【0051】
図13は、第2モードでの水電解セル20の状態を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は、水電解セル20内を流れる電解電流、水電解セル20のアノード電極102の電圧、水電解セル20の単セル100内部の電界をそれぞれ示す。
【0052】
第2モードでは、水素生成の停止時の時間t10からt10aの間に、接続制御部404は、スイッチT10、T16により直流電源30aを接続状態とし、スイッチT14、T20により可変抵抗30bを非接続状態とする。そして、電流・電圧制御部406は、状態St12におけるアノード電極102の電位が第2電位となるように直流電源30aを電流値が所定値、例えばゼロ近傍で制御する。第2電位は、アノード電極102の電位が、放電電流を発生しない電位である。例えば、第2電位は、1.5ボルトであり、
図12に示す様にアノード電極102における所定触媒、例えば酸化イリジウムが安定な状態で存在しうる溶媒溶出電位以上となる範囲である。アノード電極102の電位を酸化イリジウムの溶媒溶出電位以上とすることにより、酸化イリジウムの溶媒溶出が抑制される。このため、循環水への不純物の混入量が少ない場合には、第2モードで停止することにより、酸化イリジウムの溶媒溶出を比較例、及び第1モードより抑制できる。或いは、更に水素生成の停止直後に直流電源30aを接続するスイッチT10、T16を非接続状態とし、放電電流を発生しない状態とすることも選択可能である。
【0053】
図14は、本実施形態に係る制御部40の水電解セル20に対する制御例を示すフローチャートである。ここでは、第1モードでの停止制御例を説明する。
図14に示すように、まず、制御部40は、循環水供給ポンプ25を制御し、各単セル100の供給部G2に水を供給する。続けて、接続制御部404は、スイッチT10、T16を導通状態とし、スイッチT14、T20を非導通状態とする。そして、電流・電圧制御部406は、単セル100のアノード集電体106と、カソード集電体108との間の電位が例えば1.8ボルトになるように、直流電源30aの電圧を制御し、水素生成を開始する(ステップS100)。
【0054】
次に、制御部40は、電流・電圧制御部406は、直流電源30aの電流(電圧)供給を停止し(ステップS102)、続けて、接続制御部404は、スイッチT10、T16を非導通状態とし、スイッチT14、T20を導通状態とする(ステップS104)。これにより、第1モードでの放電が開始される(ステップS106)。
【0055】
次に、抵抗制御部408は、電圧計V10の情報に基づき、可変抵抗30bの抵抗値を制御し、T1216(
図11参照)の電位低下速度が触媒の劣化を抑制する範囲に制御する(ステップS108)。そして、抵抗制御部408は、アノード電極102の電位が所定に到達すると(ステップS110)、接続制御部404は、スイッチT14、T20を非導通状態とする(ステップS112)。弁制御部410は、各種の弁の開閉状態を、所定の状態に制御し(ステップS114)、第1モードでの停止制御が終了する。このように、可変抵抗30bの抵抗値を制御し、T1216(
図11参照)の電位低下速度が触媒の劣化を抑制する範囲に制御して、アノード電極102の触媒が、溶媒溶出が抑制される電位で維持できる様になるため、水電解セル20の劣化を抑制できる。
【0056】
図15は、水素生成の停止時における制御部40の水電解セル20に対する制御例を示すフローチャートである。まず、取得部402は、
図14の水電解時のステップS100において、電導計D10の測定する循環水の電導度を取得する(ステップS200)。続けて、判定部412は、循環水の電導度が、例えば1μS/cm以下であるか否かを判定する(ステップS202)。判定部412は、例えば1μS/cm以下であると判定する場合(ステップS202のYES)、判定部412は、第2モードでの停止処理を、接続制御部404と、電流・電圧制御部406と、抵抗制御部408と、弁制御部410に対して行う(ステップS204)。
【0057】
一方で、判定部412は、水質として循環水の電導度が例えば1μS/cmより高い(循環水の不純物混入による劣化)と判定する場合(ステップS202のNO)、第1モードでの停止処理を、接続制御部404と、電流・電圧制御部406と、抵抗制御部408と、弁制御部410に対して行う(ステップS205)。そして、制御部40は、処理を終了するか否かを判定し(ステップS206)、終了しないと判定する場合(ステップS206のNO)、例えば水電解運転を再起動して停止する際にステップS200からの処理を繰り返す。一方で、制御部40は、一時的に運転状態とし、再度停止時にステップS200からの処理を繰り返し行い、終了すると判定する場合(ステップS206のYES)、全体処理を終了する。
【0058】
このように、循環水の電導度により、循環水の水質を判定し、水質が所定の基準範囲に維持されている場合には、第2モードで停止させることにより、アノード電極102の電極は触媒金属(酸化イリジウム)が安定な状態で存在しうる溶媒溶出電位以上、すなわち溶媒溶出の発生し難い電位範囲にできるので、劣化を抑制できる様になる。一方で、水質が所定の基準を満たさない場合、例えば循環水の電導度が所定値以上の場合には、第1モードで停止させることにより、アノード電極102の電位を触媒金属の溶媒溶出を抑制する電位で制御しつつ、不純物の除去処理を行うことができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、制御部40は、水電解セル20における水素の生成を停止する際に、アノード電極102の電位を所定電位に制御し、且つ、放電電流が発生する際のアノード電極102の電位低下速度を可変抵抗30bにより所定の値とすることとした。これにより、放電電流が発生する際のアノード電極102の単位時間あたりの電位変動が抑制され、触媒金属の溶出が抑制される電位に制御することが可能となり、水電解セル20の劣化が抑制される。
【0060】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る水電解装置1は、循環水の水質判定に複数の判定モードを更に有する点で第1実施形態に係る水電解装置1と相違する。以下では第1実施形態に係る水電解装置1と相違する点を説明する。
【0061】
図16は、第2実施形態に係る水電解装置1の構成を示すブロック図である。この
図16に示すように、本実施形態に係る水電解装置1は、循環水供給管P10から酸素ガス/気液分離タンク23を分離可能となる水管P18を有する。
【0062】
図17は、第2実施形態に係る制御部40の構成を示すブロック図である。この
図17に示すように、本実施形態に係る制御部40は、計測部414を更に有する。計測部414は、水電解装置1の水素生成に関する運転状態、例えば運転時間、水電解セルの電位、及び起動停止回数の少なくともいずれかを計測する。
【0063】
制御部40は、第1モードにより水素の生成を停止する場合に、制御弁V26、V24を制御し、酸素ガス/気液分離タンク23から、酸素ガス中の水蒸気から分離し、気液分離された純度の高い水(電導度の低い水)を回収して、制御弁V26から配管P18を経由して制御弁V24に供給できる様にする。これにより、システム構成に応じてより効率的に不純物を水電解セル20から除去可能となる。
【0064】
制御部40の判定部412は、水電解運転中の水素生成中における水電解セル20の端子間の電圧が、所定値以上になった場合に、第1モードでの制御を行う21モードを有する。更に、判定部412は、水電解セル20の水素生成時間の積算値が所定値を越えた場合に、第1モードの制御を行う22モードと、水電解セル20の起動又は停止回数が所定値を越えた場合に、第1モードの制御を行う23モードと、を有する。
【0065】
より詳細には、21モードでは、判定部412は、例えば計測部414で水電解運転中に所定量の水素生成を継続する条件で水電解セル20の端子間の電圧が運転初期の電圧よりも10%増加した場合に第1モードでの制御を行う。水電解セル20は、劣化が進むと、水電解反応のセル過電圧が増加して反応ロスが発生することに伴い、再生可能エネルギーなどによる外部供給電力当たりの水素生成量は減少する。一方で、所定量の水素を生成するために電解電流を維持する様な運転を行うと、劣化によるセル過電圧の増加により端子間の電圧が劣化前よりも高くなるので、端子間の電圧を測定することにより、より高精度に水電解セル20の劣化の程度を判定できる。
【0066】
22モードでは、判定部412は、例えば水素生成時間の積算値が500時間を越えた場合に第1モードでの制御を行う。統計的に、例えば積算値が所定時間を越えると水電解セル20は劣化するので、水素生成時間の積算値により、より高精度に水電解セル20の劣化の程度を判定できる。
【0067】
23モードでは、判定部412は例えば、計測部414による計測で起動又は停止回数が30回を越えた場合に、第1モードでの制御を行う。統計的に、起動又は停止回数が所定回数を越えると水電解セル20は劣化するので、起動又は停止回数により、より高精度に水電解セル20の劣化の程度を判定できる。
【0068】
以上説明したように、判定部412は、水電解セル20の劣化の程度を判定する複数のモードを有するため、より客観的に水電解セル20の劣化の程度を判定可能となる。このため、より高精度に第1モードでの水素生成の停止を行えるので、劣化を抑制しつつ水電解セル20の回復処理を行える。換言すると、より高精度に第2モードでの水素生成の停止をも行えるので、アノード電極102での溶媒溶質を抑制できる。
【0069】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1:水電解装置、20:水電解セル、30:電源部、30a:直流電源、30b:可変抵抗、40:制御部、100:単セル、101:固体高分子電解質膜、102:アノード電極、104:カソード電極。