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特開2023-58357構造部材の製造方法、構造部材及び建物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058357
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】構造部材の製造方法、構造部材及び建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/04 20060101AFI20230418BHJP
   E04B 1/20 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
E04B1/04 J
E04B1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168344
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】井戸硲 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 楓子
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 智仁
(72)【発明者】
【氏名】中島 奈央子
(72)【発明者】
【氏名】高尾 全
(72)【発明者】
【氏名】高津 比呂人
(57)【要約】
【課題】配筋精度を確保し易い構造部材の製造方法、構造部材及び建物を提供する。
【解決手段】構造部材の製造方法は、湿式材22を積層すると共に、湿式材22の所定の層数ごとに湿式材22の外側へ突出するガイド筋24を複数設置して外枠部材20を形成する工程と、外枠部材20に沿う鉄筋30をガイド筋24に固定して配筋する工程と、鉄筋30を配筋する前又は配筋した後に外枠部材20を対向配置する工程と、対向配置された外枠部材20間に充填材を充填する工程と、を有する。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式材を積層すると共に、前記湿式材の所定の層数ごとに前記湿式材の外側へ突出するガイド筋を複数設置して外枠部材を形成する工程と、
前記外枠部材に沿う鉄筋を前記ガイド筋に固定して配筋する工程と、
前記鉄筋を配筋する前又は配筋した後に前記外枠部材を対向配置する工程と、
対向配置された前記外枠部材間に充填材を充填する工程と、
を有する構造部材の製造方法。
【請求項2】
前記鉄筋を配筋した後に前記外枠部材を対向配置する、
請求項1に記載の構造部材の製造方法。
【請求項3】
前記外枠部材を対向配置させた後に前記鉄筋を配筋する、
請求項1に記載の構造部材の製造方法。
【請求項4】
複数層に亘って積層された湿式材と、前記湿式材の所定の層数毎に設けられ前記湿式材の外側へ突出する複数のガイド筋と、を備えた外枠部材と、
前記ガイド筋に固定され、前記外枠部材に沿って配筋された鉄筋と、
対向配置された前記外枠部材間に充填された充填材と、
を備えた構造部材。
【請求項5】
床版と、前記床版に固定されると共に、複数層に亘って積層された湿式材と、前記湿式材の所定の層数毎に設けられ前記湿式材の外側へ突出するガイド筋と、を備えた外枠部材と、を有する部屋ユニットと、
前記ガイド筋に固定され、前記外枠部材に沿って配筋された鉄筋と、
互いに隣り合う前記部屋ユニットにおけるそれぞれの外枠部材間に充填された充填材と、を備えた建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構造部材の製造方法、構造部材及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、支持構造体に隣接して強化材を配置するステップ、マトリックス材を支持構造体に対して相対的に移動可能なノズルから支持構造体に対して漸次注入して強化材を覆っていくステップ、を有する、付加製造プロセスが記載されている。
【0003】
この付加製造プロセスでは、マトリックス材の注入前に、モールド空間を形成する支持構造体の内部にワイヤメッシュ形状の強化材が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2018-535861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の付加製造プロセスでは、マトリックス材の注入前にワイヤメッシュ形状の強化材を配筋する必要があるため、配筋精度を確保することが難しい。
【0006】
本開示は、上記事実を考慮して、配筋精度を確保し易い構造部材の製造方法、構造部材及び建物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一態様の構造部材の製造方法は、湿式材を積層すると共に、前記湿式材の所定の層数ごとに前記湿式材の外側へ突出するガイド筋を複数設置して外枠部材を形成する工程と、前記外枠部材に沿う鉄筋を前記ガイド筋に固定して配筋する工程と、前記鉄筋を配筋する前又は配筋した後に前記外枠部材を対向配置する工程と、対向配置された前記外枠部材間に充填材を充填する工程と、を有する。
【0008】
第一態様の構造部材の製造方法では、湿式材を積層して形成される外枠部材に、所定の層数ごとに複数のガイド筋が設置される。すなわち、所定の高さ毎に、ガイド筋が設置される。
【0009】
これにより、ガイド筋に固定される鉄筋も、所定の高さ毎に配筋することができる。したがって、構造部材の配筋精度を高くすることができる。
【0010】
また、鉄筋がガイド筋に固定されるため、湿式材、ガイド筋及び鉄筋が一体化した捨て型枠部材を形成できる。この捨て型枠部材を工場又は現場で生産し、設置場所で対向配置して充填材を充填すれば構造部材を製造できるため、設置場所での製造作業を軽減できる。
【0011】
第二態様の構造部材の製造方法は、第一態様に記載の構造部材の製造方法において、前記鉄筋を配筋した後に前記外枠部材を対向配置する。
【0012】
第二態様の構造部材の製造方法では、鉄筋を配筋した後に外枠部材を対向配置する。このため、外枠部材の間隔が狭くても配筋できる。これにより、構造部材として壁体を形成する場合でも、壁配筋としての鉄筋の配筋が容易である。
【0013】
第三態様の構造部材の製造方法は、第一態様に記載の構造部材の製造方法において、前記外枠部材を対向配置させた後に前記鉄筋を配筋する。
【0014】
第三態様の構造部材の製造方法では、外枠部材を対向配置させた後に鉄筋を配筋する。このため、対向配置された外枠部材間に跨る鉄筋を配筋できる。これにより、例えば構造部材として梁や柱を形成する場合でも、外枠部材間に跨る梁のあばら筋や、柱のフープ筋を配筋できる。
【0015】
第四態様の構造部材は、複数層に亘って積層された湿式材と、前記湿式材の所定の層数毎に設けられ前記湿式材の外側へ突出する複数のガイド筋と、を備えた外枠部材と、前記ガイド筋に固定され、前記外枠部材に沿って配筋された鉄筋と、対向配置された前記外枠部材間に充填された充填材と、を備える。
【0016】
第四態様の構造部材では、湿式材を積層して形成された外枠部材の所定の層数ごとに、複数のガイド筋が配筋されている。すなわち、所定の高さ毎に、ガイド筋が設置されている。これにより、ガイド筋に固定された鉄筋も、所定の高さ毎に配筋される。したがって、構造部材の配筋精度が高い。
【0017】
また、鉄筋がガイド筋に固定されているため、湿式材、ガイド筋及び鉄筋が一体化した捨て型枠部材を形成できる。この捨て型枠部材を工場又は現場で生産し、設置場所で対向配置して充填材を充填すれば構造部材を製造できるため、設置場所での製造作業を軽減できる。
【0018】
第五態様の建物は、床版と、前記床版に固定されると共に、複数層に亘って積層された湿式材と、前記湿式材の所定の層数毎に設けられ前記湿式材の外側へ突出するガイド筋と、を備えた外枠部材と、を有する部屋ユニットと、前記ガイド筋に固定され、前記外枠部材に沿って配筋された鉄筋と、互いに隣り合う前記部屋ユニットにおけるそれぞれの外枠部材間に充填された充填材と、を備えている。
【0019】
第五態様の建物は、湿式材を積層して形成された外枠部材の所定の層数ごとに、複数のガイド筋が配筋されている。すなわち、所定の高さ毎に、ガイド筋が設置されている。これにより、ガイド筋に固定された鉄筋も、所定の高さ毎に配筋される。したがって、構造部材の配筋精度が高い。
【0020】
また、鉄筋がガイド筋に固定されているため、湿式材、ガイド筋及び配筋が一体化した捨て型枠部材を形成できる。また、外枠部材は床版に固定されているため、床版と捨て型枠部材とが一体化した部屋ユニットを形成できる。この部屋ユニットを工場又は現場で生産し、部屋ユニットの設置場所で対向配置して充填材を充填すれば建物を構築できるため、設置場所での施工作業を軽減できる。
【発明の効果】
【0021】
本開示によると、配筋精度を確保し易い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】本開示の実施形態に係る構造部材としての壁体を示す斜視図である。
図1B】本開示の実施形態に係る構造部材としての梁を示す斜視図である。
図2A】本開示の実施形態に係る構造部材としての壁体の外枠部材を形成している状態を示す立面図である。
図2B図2AのB-B線断面図である。
図2C】ガイド筋の間隔を示す斜視図である。
図3A】本開示の実施形態に係る構造部材としての壁体の横筋を配筋している状態を示す立面図である。
図3B図3AのB-B線断面図である。
図4A】本開示の実施形態に係る構造部材としての壁体の縦筋を配筋している状態を示す立面図である。
図4B図4AのB-B線断面図である。
図5A】本開示の実施形態に係る構造部材としての壁体における捨て型枠部材を対向配置した状態を示す立断面図である。
図5B】捨て型枠部材の間に充填材を充填した状態を示す立断面図である。
図6A】本開示の実施形態に係る構造部材としての梁の外枠部材を形成している状態を示す立面図である。
図6B図6AのB-B線断面図である。
図6C】外枠部材を対向配置した状態を示す平断面図である。
図7A】本開示の実施形態に係る構造部材としての梁の鉄筋を配筋している状態を示す立断面図である。
図7B図7AのB-B線断面図である。
図7C】捨て型枠部材の間に充填材を充填した状態を示す立断面図である。
図8A】本開示の実施形態に係る部屋ユニット及び建物を示す平面図である。
図8B図8AのB-B線断面図である。
図9】本開示の実施形態に係る構造部材を、柱及び梁の複合体とした例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施形態に係る構造部材の製造方法、構造部材及び建物について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0024】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0025】
各図において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向(上下方向)に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0026】
<構造部材の概略構成>
本開示の実施形態に係る構造部材は、一例として、図1Aに示す壁体10及び図1Bに示す梁12である。壁体10は、外枠部材20、鉄筋30(例えば図4A参照)及び充填材40を用いて形成されている。同様に、梁12は、外枠部材50、鉄筋60(例えば図7A参照)及び充填材40を用いて形成されている。なお、本開示の構造部材には、壁体10及び梁12のほか、後述するように、柱、壁及び柱の複合体並びに柱及び梁の複合体等も含まれる。
【0027】
本明細書においては、まず、これらの構造部材の「製造方法」を、構造部材の構成と共に説明し、次にこの構造部材を用いて形成される「建物」の構築方法について説明する。
【0028】
<構造部材(壁体)の製造方法>
図2A図5Bには、構造部材としての壁体10の製造方法が示されている。
【0029】
(外枠部材の形成)
壁体10を製造するためには、まず、図2A図2Bに示す外枠部材20を形成する。外枠部材20は、後述する充填材40の捨て型枠となる部材であり、湿式材22及びガイド筋24を含んで構成される。
【0030】
湿式材22は例えばモルタルであり、造形装置(例えば3Dプリンター等)のノズル100からペースト状で吐出され、ノズル100を横方向へ移動させることに伴って、長尺の層状に形成される。この層を鉛直方向に積層することにより、湿式材22による板状の捨て型枠が形成される。
【0031】
ガイド筋24は、湿式材22の所定の層数毎に設けられ、湿式材22の外側へ突出する鉄筋である。ここでの「外側」とは、湿式材22の長手方向と交わる方向である。ガイド筋24は、図2Cに示すように、湿式材22を所定の層数(N層)積層する毎に、積層された湿式材22の上面に設置される。また、ガイド筋24は、湿式材22の長手方向(X方向)に沿って所定の間隔(間隔M)で、複数配置される。
【0032】
これにより、ガイド筋24は、上下方向(Z方向)において「N層の湿式材22の厚み」毎に配置される。また、ガイド筋24は、横方向(X方向)において、「間隔M」毎に配置される。なお、上下方向及び横方向は、壁体10の面内方向に沿う方向である。以上の工程により、外枠部材20が形成される。
【0033】
(鉄筋の配筋)
次に、図3A図3Bに示すように、外枠部材20に沿う横筋32を、ガイド筋24に固定して配筋する。具体的には、同じ高さに配置された複数のガイド筋24に横筋32を載せて固定する。これにより、横筋32が、上下方向(Z方向)において、「N層(図2(C)参照)の湿式材22の厚み」毎に配置される。
【0034】
なお、横筋32と外枠部材20との間には隙間を形成してもよいし、しなくてもよい。
隙間を形成する場合は、仮に外枠部材20の湿式材22に欠損箇所があっても、被り厚を確保できる。一方、湿式材22を欠損なく密実に施工できる場合は、隙間を形成しないでも、湿式材22の厚みにより被り厚を確保できる。
【0035】
次に、図4A図4Bに示すように、外枠部材20に沿う縦筋34を、ガイド筋24に固定して配筋する。具体的には、横方向における同じ位置に配置された複数のガイド筋24に縦筋34を沿わせて固定する。これにより、縦筋34が、横方向(X方向)において、間隔M(図2C参照)毎に配置される。
【0036】
なお、縦筋34は、横筋32に固定してもよい。また、縦筋34と横筋32との施工順序は、入れ替えてもよい。本明細書においては、横筋32及び縦筋34を総称して、鉄筋30と称す場合がある。以上の工程により、外枠部材20に鉄筋30が固定され、捨て型枠部材S1が形成される。
【0037】
(壁体の形成)
次に、図5Aに示すように、外枠部材20に鉄筋30が固定された捨て型枠部材S1を対向配置する。「対向配置」とは、外枠部材20において鉄筋30が固定された側を向かい合わせて配置することである。
【0038】
そして、図5Bに示すように、対向配置した外枠部材20間に、充填材40を充填する。充填材40は、例えばコンクリートである。外枠部材20が配置されない部分、すなわち外枠部材20の長手方向(X方向)の端部には、必要に応じて型枠を設置して、充填材40の漏れ止めとする。
【0039】
以上の工程により、外枠部材20を捨て型枠として用いた壁体10が形成される。この壁体10は、図5Aに示すように、複数層に亘って積層された湿式材22と、湿式材22の所定の層数(N層:図2C参照)毎に設けられ湿式材22の外側へ突出する複数のガイド筋24と、を備えた外枠部材20を備えている。
【0040】
また、壁体10は、ガイド筋24に固定して配筋され、外枠部材20に沿う鉄筋30(横筋32及び縦筋34)を備えている。さらに、壁体10は、図5Bに示すように、対向配置された外枠部材20間に充填された充填材40を備えている。
【0041】
(施工場所)
壁体10を形成する際は、一例として、上記の「外枠部材の形成」及び「鉄筋の配筋」を工場で実施する。すなわち、図4A図4Bに示す捨て型枠部材S1を工場で製造する。そして工場で製造された捨て型枠部材S1を、建物などの建設現場へ搬入し、上記の「壁体の形成」を実施する。
【0042】
また、別の一例として、上記の「外枠部材の形成」を工場で実施する。そして工場で製造された図2A図2Bに示す外枠部材20を、建物などの建設現場へ搬入し、上記の「鉄筋の配筋」を実施して型枠部材S1を形成する。型枠部材S1は、壁体10を施工する場所のほか、建設現場における作業ヤードなどで形成してもよい。その後、上記の「壁体の形成」を実施する。
【0043】
<構造部材(梁)の製造方法>
図6A図7Cには、構造部材としての梁12の製造方法が示されている。
【0044】
(外枠部材の形成)
梁12を製造するためには、まず、図6A図6Bに示す外枠部材50を形成する。外枠部材50は、上述した外枠部材20と同様に、充填材40の捨て型枠となる部材であり、湿式材52及びガイド筋54を含んで構成される。
【0045】
湿式材52は、上述した湿式材22と同様に、例えばモルタルであり、造形装置のノズルからペースト状で吐出される。そして、ノズル100を横方向へ移動させることに伴って、図6Bに示されるように、平面視で「L型」に形成される。また、図6Aに示すように、層状に形成される。この層を鉛直方向に積層することにより、湿式材52による平面視で「L型」の捨て型枠が形成される。
【0046】
なお、「L型」とは、四角形における一つの辺及びこの辺と接する他の一つの辺によって形成される形状である。本実施形態においては、一方の辺が長く、他方の辺が短い。以下の説明においては、湿式材52におけるこれらの辺を、長辺52A及び短辺52Bと称す。
【0047】
ガイド筋54は、上述したガイド筋24と同様に、湿式材52を所定の層数積層する毎に、積層された湿式材52の上部に設置される。また、ガイド筋54は、湿式材52の延設方向(X方向及びY方向)に沿って、複数配置される。
【0048】
なお、ガイド筋54の、湿式材52の延設方向における間隔及び本数は、特に限定されるものではないが、後述するあばら筋62(図7A図7B参照)を位置決めし易くする観点から、長辺52Aにおいては2本以上、短辺52Bにおいては1本以上設けることが好適である。
【0049】
また、後述する梁主筋64を位置決めし易くする観点から、ガイド筋54は、梁主筋64が設置される場所に設けることがさらに好適である。
【0050】
次に、図6Cに示すように、外枠部材50を対向配置する。「対向配置」とは、外枠部材50においてガイド筋54が突出した側を向かい合わせて配置することである。また、本実施形態において、2つの外枠部材50は、それぞれの短辺52Bの端面を突き付けて配置する。これにより2つの外枠部材50は、断面形状が「U字形状」に配置される。
【0051】
(鉄筋の配筋)
次に、図7A図7Bに示すように、外枠部材50に沿うあばら筋62を、ガイド筋54に固定して配筋する。この図においては、外枠部材50を、湿式材52の積層方向が横方向に沿うように、図6に示した状態から置き換えている。すなわち、外枠部材50は、図1Bに示した梁12の捨て型枠として使用する姿勢で配置されている。
【0052】
あばら筋62は、横方向(X方向)で同じ位置に配置された複数のガイド筋54に固定する。あばら筋62は、図7Bに示すように、矩形の枠状に形成され、対向配置された外枠部材50に跨って配筋する。また、あばら筋62は、それぞれの外枠部材50におけるガイド筋54に固定する。
【0053】
これにより、あばら筋62が、横方向(X方向)において所定の間隔で配置される。なお、上述した横筋32と同様に、あばら筋62と外枠部材50との間には隙間を形成してもよいし、しなくてもよい。
【0054】
次に、あばら筋62の角に、梁主筋64を固定する。梁主筋64は、湿式材52の積層方向、つまり、梁12(図1B参照)の延設方向に沿って配筋する。また、梁主筋64は、あばら筋62の内側に配筋される。なお、梁主筋64は、ガイド筋54に固定してもよい。さらに、梁主筋64は、少なくともあばら筋62の四隅に設置されるが、本数及び位置は、適宜増減できる。
【0055】
本明細書においては、あばら筋62及び梁主筋64を総称して、鉄筋60と称す場合がある。以上の工程により、外枠部材50に鉄筋60が固定された捨て型枠部材S2が形成される。
【0056】
(梁の形成)
次に、図7Cに示すように、対向配置した外枠部材50間に、充填材40を充填する。外枠部材50が配置されない部分、すなわち外枠部材50の長手方向(X方向)の端部には、必要に応じて型枠を設置して、充填材40の漏れ止めとする。
【0057】
以上の工程により、外枠部材50を捨て型枠として用いた梁12が形成される。この梁12は、図7Aに示すように、複数層に亘って積層された湿式材52と、湿式材52の所定の層数毎に設けられ湿式材52の外側へ突出する複数のガイド筋54と、を備えた外枠部材50を備えている。
【0058】
また、梁12は、ガイド筋54に固定して配筋され、外枠部材50に沿う鉄筋60(あばら筋62及び梁主筋64)を備えている。さらに、梁12は、図7Cに示すように、対向配置された外枠部材50間に充填された充填材40を備えている。
【0059】
(施工場所)
梁12を形成する際は、一例として、上記の「外枠部材の形成」及び「鉄筋の配筋」を工場で実施する。すなわち、図7Bに示す捨て型枠部材S2を工場で製造する。そして工場で製造された捨て型枠部材S2を、建物などの建設現場へ搬入し、上記の「梁の形成」を実施する。
【0060】
また、別の一例として、上記の「外枠部材の形成」を工場で実施する。そして工場で製造された図6Bに示す外枠部材50を、建物などの建設現場へ搬入して対向配置し、上記の「鉄筋の配筋」を実施して図7Bに示す型枠部材S2を形成する。型枠部材S2は、梁12を施工する場所のほか、建設現場における作業ヤードなどで形成してもよい。その後、上記の「壁体の形成」を実施する。
【0061】
<構造部材(柱)の製造方法>
上記の外枠部材50、鉄筋60及び充填材40を用いて、柱を製造することもできる。柱を製造するためには、図6A図6Bに示した姿勢の外枠部材50に対して、図7A図7Bに示す鉄筋60を配筋する。この際、あばら筋62をフープ筋として配筋し、梁主筋64を柱主筋として配筋する。
【0062】
充填材40を充填する際には、湿式材52の長辺52Aの端部に型枠を設置する。そして、外枠部材50及び型枠を用いて、外枠部材50の内側を閉塞する。この状態で充填材40を充填することにより、柱を製造することができる。
【0063】
また、柱を製造する場合は、湿式材を平面視で「コ型(アングル形状)」に形成し、外枠部材が、対向配置した状態で矩形状となるようにしてもよい。
【0064】
<建物の構築方法>
本開示の実施形態に係る構造部材は、建物90を構築する際に用いることができる。建物90は、一例として、図8A図8Bに示す部屋ユニット70を工場で製造し、この部屋ユニット70を現場で組み付けることで構築することができる。
【0065】
(部屋ユニットの製造方法)
部屋ユニット70は、床版72及び上述した外枠部材20を備えている。床版72は、工場においてコンクリート等を用いて製造される。図8Bに示すように、床版72の端面からは、充填材40に埋設する鉄筋72Aが突出している。
【0066】
外枠部材20は、床版72の上部かつ外周部に、ガイド筋24を配置しながら湿式材22を積層することで構築される。
【0067】
図8Aに示されるように、本例における外枠部材20は、床版72の外周部に沿って、屈曲部を持つ形状とされている。このように、本開示の実施形態に係る外枠部材20(壁体10を形成する外枠部材)は、屈曲部を備えていてもよい。また、平面視で曲線状に形成してもよい。
【0068】
また、外枠部材20は、一部が壁体を構成し、他の一部が柱を構成する。このように、本開示の実施形態に係る外枠部材20は、必ずしも壁体のみを構成する必要はなく、壁体及び柱の複合体を構成するものとしてもよい。
【0069】
本実施形態においては、工場において、外枠部材20に鉄筋30(横筋32及び縦筋34)が固定され、捨て型枠部材S1が形成されている。この鉄筋30は、建物を構築する現場で外枠部材20に固定してもよい。
【0070】
部屋ユニット70には、工場出荷時において、鉄筋30のほか、雑壁80、玄関ドア82、掃き出し窓84が固定されている。部屋ユニット70には、その他、間仕切壁、キッチンやトイレなどの設備機器、床の仕上げ材など各種の部材を、適宜固定できる。また、部屋ユニット70には、雑壁80、玄関ドア82、掃き出し窓84を固定しなくてもよい。
【0071】
(建物の構築方法)
部屋ユニット70によって建物90を構築するためには、図8Aに破線で示すように、部屋ユニット70を複数並べて配置する。これにより、それぞれの部屋ユニット70における外枠部材20が対向配置される。なお、この際、図示は省略するが、図8Aにおいて破線で示した部屋ユニット70の外枠部材20にも、鉄筋30を固定しておく。
【0072】
また、部屋ユニット70を並べて配置した際に、外枠部材20同士が対向しない部分には、壁鉄筋や柱鉄筋を配筋したうえで、型枠86を配置する。
【0073】
最後に、対向する外枠部材20間又は外枠部材20と型枠86との間に充填材40(図1A等参照)を充填することにより壁体10(図1A参照)が構築され、部屋ユニット70同士が連結された建物90が構築される。部屋ユニット70は横方向に連結されるが、これらをさらに上下方向に積層してもよい。
【0074】
<作用及び効果>
本開示の実施形態に係る構造部材の製造方法では、図2A図2Bに示すように、湿式材22を積層して形成される外枠部材20に、所定の層数ごとに複数のガイド筋24が設置される。すなわち、所定の高さ(湿式材1層の厚み×層数N)毎に、ガイド筋24が設置される。
【0075】
これにより、図3A図3Bに示すように、ガイド筋24に固定される横筋32も、所定の高さ毎に配筋することができる。したがって、構造部材としての壁体10(図1A参照)の配筋精度を高くすることができる。
【0076】
また、図4A図4Bに示すように、鉄筋30(横筋32及び縦筋34)がガイド筋24に固定されるため、湿式材22、ガイド筋24及び鉄筋30が一体化した捨て型枠部材S1を形成できる。この捨て型枠部材S1を工場又は現場で生産し、図5A図5Bで示すように、設置場所で対向配置して充填材40を充填すれば、構造部材としての壁体10を製造できるため、設置場所での製造作業を軽減できる。
【0077】
また、本開示の実施形態に係る構造部材としての壁体10の製造方法では、図4A図4B及び図5Aに示すように、鉄筋30を配筋した後に外枠部材20を対向配置する。このため、外枠部材20の間隔が狭くても、換言すると外枠部材20の間隔の大きさに関わらず、鉄筋30配筋できる。これにより、壁配筋としての鉄筋30の配筋が容易である。
【0078】
なお、構造部材として壁体10を構築する場合でも、壁体10の厚みが大きい場合は、外枠部材20を対向配置した後で鉄筋30を外枠部材20に固定してもよい。
【0079】
一方、構造部材としての梁12の製造方法では、図6C図7A及び図7Bに示すように、外枠部材50を対向配置させた後に鉄筋60(あばら筋62及び梁主筋64)を配筋する。このため、対向配置された外枠部材50間に跨る鉄筋であるあばら筋62を配筋できる。
【0080】
なお、構造部材として梁12や柱を構築する場合でも、外枠部材50を対向配置する前に、鉄筋60を外枠部材50に固定してもよい。
【0081】
これらの効果は、壁体10を用いて構築される建物90においても得ることができる。また建物90においては、図8A図8Bに示すように、外枠部材20は床版72に固定されているため、床版72と捨て型枠部材S1とが一体化した部屋ユニット70を形成できる。
【0082】
この部屋ユニット70を工場又は現場で生産し、鉄筋30を配筋したうえで、部屋ユニット70の設置場所で対向配置して充填材40(図1A等参照)を充填すれば、建物90を構築できるため、設置場所での施工作業を軽減できる。
【0083】
なお、建物90においては、外枠部材20が壁体及び柱の複合体を構成するものとしたが、本開示の実施形態はこれに限らない。本開示の外枠部材は、図9に示す外枠部材92のように、柱及び梁の複合体を形成するものとしてもよい。なお、外枠部材92におけるガイド筋は、図示を省略している。
【0084】
外枠部材92を製造するためには、一例として、柱部92Aを、図6A図6Bに示す外枠部材50と同様に、湿式材を用いて積層する。梁部92Bを形成する際は、梁下に当て板及び支保工を設置して、湿式材を積層する。湿式材が硬化したら、当て板及び支保工を撤去する。
【0085】
このような外枠部材92を用いることで、建物90を柱梁構造(ラーメン構造)として構築することができる。
【0086】
以上説明したように、本開示の構造部材は、壁体10、梁12、柱、壁体及び柱の複合体、柱及び梁の複合体など、様々な態様とすることができる。また、本開示の構造部材を用いて構築される建物90には、これらの各種の構造部材を用いることができる。
【符号の説明】
【0087】
10 壁体(構造部材)
12 梁(構造部材)
20 外枠部材
22 湿式材
24 ガイド筋
30 鉄筋
32 横筋(鉄筋)
34 縦筋(鉄筋)
40 充填材
50 外枠部材
52 湿式材
54 ガイド筋
60 鉄筋
62 あばら筋(鉄筋)
64 梁主筋(鉄筋)
72 床版
90 建物
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9