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特開2023-5838モータ制御装置、モータ制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005838
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】モータ制御装置、モータ制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/08 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
H02P27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108041
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 蓮也
(72)【発明者】
【氏名】園田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】今田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】増田 隆宏
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505BB09
5H505DD03
5H505EE49
5H505GG02
5H505HA09
5H505HA10
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ13
5H505JJ16
5H505JJ17
5H505JJ26
5H505KK04
5H505LL22
5H505LL41
(57)【要約】
【課題】モータ制御に関する応答性の改善を図ること。
【解決手段】ディジタル制御部17は電圧指令値S1を算出する。PWM部16は電圧指令値S1を三角波と比較することでPWM変調する。電力変換部18は駆動電圧V1を印加する。モータ電流検出部11は駆動電圧V1により流れる電流をアナログ電圧に変換する。ΔΣ型ADコンバータ12は、アナログ電圧を、AD変換クロックClk1毎に1ビットのディジタル信号に変換する。間引きフィルタ14は、間引きクロック毎にモータ電流検出値D1として出力する。クリア信号出力部A1は、間引きフィルタ14をクリアさせるためのクリア信号Cs1を出力する。クリア信号出力部A1は、間引きクロックにおけるモータ電流検出値D1の出力完了タイミングが、三角波の半周期毎に行われる電圧指令値S1の算出に関する処理タイミングに同期するように、クリア信号Cs1を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相の巻線を巻回したステータを備えるモータに対し、前記巻線に流れる電流を検出するモータ電流検出部を有し、前記モータの動作を制御するモータ制御装置であって、
上位装置からの動作指令と前記モータの位置情報と前記巻線に流れる電流の電流値であるモータ電流検出値とに基づき、前記モータを駆動するための電圧指令値を算出するディジタル制御部と、
前記電圧指令値を三角波と比較することでPWM変調し、PWMスイッチング信号を出力するPWM部と、
前記PWMスイッチング信号に従い電力変換素子をオン/オフすることで、前記巻線に駆動電圧を印加する電力変換部と、
前記駆動電圧により前記巻線に流れる電流をアナログ電圧に変換する前記モータ電流検出部と、
前記アナログ電圧を、AD変換クロック毎に1ビットのディジタル信号に変換するΔΣ型ADコンバータと、
前記1ビットのディジタル信号を多ビットのディジタル信号に変換し、前記AD変換クロックを分周した間引きクロック毎に前記モータ電流検出値として出力する少なくとも1つの間引きフィルタと、
前記間引きフィルタをクリアさせるためのクリア信号を出力するクリア信号出力部と、
を備え、
前記クリア信号出力部は、前記間引きクロックにおける前記モータ電流検出値の出力完了タイミングが、前記三角波の半周期毎に行われる前記電圧指令値の算出に関する処理タイミングに同期するように、前記クリア信号を出力する、
モータ制御装置。
【請求項2】
前記ディジタル制御部は、前記三角波の半周期毎に、当該半周期の開始時点から最短のタイミングで、前記出力完了タイミングが前記処理タイミングに同期可能なように、前記クリア信号を出力させる、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの間引きフィルタは、第1間引きフィルタ及び第2間引きフィルタを含み、
前記クリア信号出力部は、前記三角波の各周期において、
前段の半周期では、前記第1間引きフィルタに対して、前記出力完了タイミングが前記処理タイミングに同期するように、前記クリア信号を出力し、
後段の半周期では、前記第2間引きフィルタに対して、前記出力完了タイミングが前記処理タイミングに同期するように、前記クリア信号を出力する、
請求項1又は2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記ディジタル制御部は、前記第1間引きフィルタ及び前記第2間引きフィルタのうちの一方が、前記クリア信号によりクリアされてから所定の期間が過ぎるまでの間、他方から出力される前記モータ電流検出値を取得する、
請求項3に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記ディジタル制御部は、前記前段の半周期において、
前記第1間引きフィルタが前記クリア信号によりクリアされてから所定の期間が過ぎるまでの間、前記第2間引きフィルタから出力される前記モータ電流検出値を取得し、
前記第1間引きフィルタの動作が開始されると、前記第1間引きフィルタから出力される前記モータ電流検出値を取得する、
請求項3又は4に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記ディジタル制御部は、前記後段の半周期において、
前記第2間引きフィルタが前記クリア信号によりクリアされてから所定の期間が過ぎるまでの間、前記第1間引きフィルタから出力される前記モータ電流検出値を取得し、
前記第2間引きフィルタの動作が開始されると、前記第2間引きフィルタから出力される前記モータ電流検出値を取得する、
請求項3~5のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
3相の巻線を巻回したステータを備えるモータに対し、前記巻線に流れる電流を検出するモータ電流検出部を有し、前記モータの動作を制御するモータ制御装置のモータ制御方法であって、前記モータ制御装置は、上位装置からの動作指令と前記モータの位置情報と前記巻線に流れる電流の電流値であるモータ電流検出値とに基づき、前記モータを駆動するための電圧指令値を算出するディジタル制御部と、前記電圧指令値を三角波と比較することでPWM変調し、PWMスイッチング信号を出力するPWM部と、前記PWMスイッチング信号に従い電力変換素子をオン/オフすることで、前記巻線に駆動電圧を印加する電力変換部と、前記駆動電圧により前記巻線に流れる電流をアナログ電圧に変換する前記モータ電流検出部と、前記アナログ電圧を、AD変換クロック毎に1ビットのディジタル信号に変換するΔΣ型ADコンバータと、前記1ビットのディジタル信号を多ビットのディジタル信号に変換し、前記AD変換クロックを分周した間引きクロック毎に前記モータ電流検出値として出力する少なくとも1つの間引きフィルタと、を備え、
前記モータ制御方法は、
前記間引きフィルタをクリアさせるためのクリア信号を出力するクリア信号出力ステップを含み、
前記クリア信号出力ステップでは、前記間引きクロックにおける前記モータ電流検出値の出力完了タイミングが、前記三角波の半周期毎に行われる前記電圧指令値の算出に関する処理タイミングに同期するように、前記クリア信号を出力する、
モータ制御方法。
【請求項8】
1以上のプロセッサに、請求項7に記載のモータ制御方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、モータ制御装置、モータ制御方法、及びプログラムに関する。より詳細には本開示は、モータの巻線に印加する駆動電圧をPWM(Pulse Width Modulation)制御することでモータの制御を行うモータ制御装置、モータ制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ΔΣAD変換によりモータ電流を検出するモータ制御装置が開示されている。特許文献1には、電源に接続されたスイッチング素子をスイッチングすることにより、モータの巻線を駆動する駆動波形をPWMパルスで擬似的に形成した駆動電圧を生成する点が記載される。そして特許文献1には、スイッチングの瞬間に発生し得る漏れ電流が、AD変換部に対してノイズ等として影響し、その結果、モータ電流検出値の精度が劣化する可能性がある点が記載される。そこで特許文献1では、所定の期間だけAD変換部の動作を停止させることで、漏れ電流の影響を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/239792号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1におけるモータ制御装置について、更なるモータ制御に関する応答性の改善が望まれる。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされ、モータ制御に関する応答性の改善を図る、モータ制御装置、モータ制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様のモータ制御装置は、3相の巻線を巻回したステータを備えるモータに対し、前記巻線に流れる電流を検出するモータ電流検出部を有し、前記モータの動作を制御する。前記モータ制御装置は、ディジタル制御部と、PWM部と、電力変換部と、前記モータ電流検出部と、ΔΣ型ADコンバータと、少なくとも1つの間引きフィルタと、クリア信号出力部と、を備える。前記ディジタル制御部は、上位装置からの動作指令と前記モータの位置情報と前記巻線に流れる電流の電流値であるモータ電流検出値とに基づき、前記モータを駆動するための電圧指令値を算出する。前記PWM部は、前記電圧指令値を三角波と比較することでPWM変調し、PWMスイッチング信号を出力する。前記電力変換部は、前記PWMスイッチング信号に従い電力変換素子をオン/オフすることで、前記巻線に駆動電圧を印加する。前記モータ電流検出部は、前記駆動電圧により前記巻線に流れる電流をアナログ電圧に変換する。前記ΔΣ型ADコンバータは、前記アナログ電圧を、AD変換クロック毎に1ビットのディジタル信号に変換する。前記少なくとも1つの間引きフィルタは、前記1ビットのディジタル信号を多ビットのディジタル信号に変換し、前記AD変換クロックを分周した間引きクロック毎に前記モータ電流検出値として出力する。前記クリア信号出力部は、前記間引きフィルタをクリアさせるためのクリア信号を出力する。前記クリア信号出力部は、前記間引きクロックにおける前記モータ電流検出値の出力完了タイミングが、前記三角波の半周期毎に行われる前記電圧指令値の算出に関する処理タイミングに同期するように、前記クリア信号を出力する。
【0007】
本開示の一態様のモータ制御方法は、3相の巻線を巻回したステータを備えるモータに対し、前記巻線に流れる電流を検出するモータ電流検出部を有し、前記モータの動作を制御するモータ制御装置のモータ制御方法である。前記モータ制御装置は、ディジタル制御部と、PWM部と、電力変換部と、前記モータ電流検出部と、ΔΣ型ADコンバータと、少なくとも1つの間引きフィルタと、を備える。前記ディジタル制御部は、上位装置からの動作指令と前記モータの位置情報と前記巻線に流れる電流の電流値であるモータ電流検出値とに基づき、前記モータを駆動するための電圧指令値を算出する。前記PWM部は、前記電圧指令値を三角波と比較することでPWM変調し、PWMスイッチング信号を出力する。前記電力変換部は、前記PWMスイッチング信号に従い電力変換素子をオン/オフすることで、前記巻線に駆動電圧を印加する。前記モータ電流検出部は、前記駆動電圧により前記巻線に流れる電流をアナログ電圧に変換する。前記ΔΣ型ADコンバータは、前記アナログ電圧を、AD変換クロック毎に1ビットのディジタル信号に変換する。前記少なくとも1つの間引きフィルタは、前記1ビットのディジタル信号を多ビットのディジタル信号に変換し、前記AD変換クロックを分周した間引きクロック毎に前記モータ電流検出値として出力する。前記モータ制御方法は、前記間引きフィルタをクリアさせるためのクリア信号を出力するクリア信号出力ステップを含む。前記クリア信号出力ステップでは、前記間引きクロックにおける前記モータ電流検出値の出力完了タイミングが、前記三角波の半周期毎に行われる前記電圧指令値の算出に関する処理タイミングに同期するように、前記クリア信号を出力する。
【0008】
本開示の一態様のプログラムは、1以上のプロセッサに、上記のモータ制御方法を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、モータ制御に関する応答性の改善が図れる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係るモータ制御装置を備えるシステム全体の構成図である。
図2図2は、同上のモータ制御装置におけるモータ電流の検出に関する動作を説明するための動作波形図である。
図3図3は、同上のモータ制御装置に対する比較例に関する動作を説明するための動作波形図である。
図4図4は、同上のモータ制御装置の変形例における要部の構成図である。
図5図5は、同上の変形例におけるモータ電流の検出に関する動作を説明するための動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)概要
以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0012】
本実施形態に係るモータ制御装置1は、3相の巻線を巻回したステータを備えるモータ2に対し、巻線に流れる電流を検出するモータ電流検出部11を有し、モータ2の動作を制御する(図1参照)。
【0013】
モータ制御装置1は、図1に示すように、ディジタル制御部17と、PWM部16と、電力変換部18と、モータ電流検出部11と、ΔΣ型ADコンバータ12と、少なくとも1つの間引きフィルタ14と、クリア信号出力部A1と、を備える。図1では、ΔΣ型ADコンバータを「ΔΣ型ADC」に略して図示する。本実施形態では一例として、図1に示すように、U相モータ線とW相モータ線の電流をそれぞれ検出するモータ電流検出部11が2つ設けられ、各モータ電流検出部11に対応するAD変換部15に、間引きフィルタ14が1つ設けられている。
【0014】
ディジタル制御部17は、上位装置4(上位コントローラ)からの動作指令とモータ2の位置情報と巻線に流れる電流の電流値であるモータ電流検出値D1とに基づき、モータ2を駆動するための電圧指令値S1を算出する。
【0015】
PWM部16は、電圧指令値S1を三角波(キャリア信号B1:図2参照)と比較することでPWM変調し、PWMスイッチング信号P1を出力する。電力変換部18は、PWMスイッチング信号P1に従い電力変換素子をオン/オフすることで、巻線に駆動電圧V1を印加する。モータ電流検出部11は、駆動電圧V1により巻線に流れる電流をアナログ電圧に変換する。ΔΣ型ADコンバータ12は、アナログ電圧を、AD変換クロックClk1毎に1ビットのディジタル信号に変換する。少なくとも1つの間引きフィルタ14は、1ビットのディジタル信号を多ビットのディジタル信号に変換し、AD変換クロックClk1を分周した間引きクロック毎にモータ電流検出値D1として出力する。
【0016】
クリア信号出力部A1は、間引きフィルタ14をクリアさせるためのクリア信号Cs1(フィルタ制御信号)を出力する。クリア信号出力部A1は、間引きクロックにおけるモータ電流検出値D1の出力完了タイミングt1(図2参照)が、三角波の半周期毎に行われる電圧指令値S1の算出に関する処理タイミング(ここでは開始タイミングt2:図2参照)に同期するように、クリア信号Cs1を出力する。
【0017】
この構成によれば、モータ電流検出値D1の出力完了タイミングt1が、電圧指令値S1の算出に関する処理タイミング(開始タイミングt2)に同期するように、クリア信号Cs1が出力されて間引きフィルタ14がクリアされる。そのため、常に最新のモータ電流検出値D1でモータ制御を行える可能性が高まる。結果的に、モータ制御に関する応答性の改善が図れる、という利点がある。
【0018】
また本実施形態に係るモータ制御方法は、モータ制御装置1のモータ制御方法である。モータ制御装置1は、(上述した)ディジタル制御部17とPWM部16と電力変換部18とモータ電流検出部11とΔΣ型ADコンバータ12と少なくとも1つの間引きフィルタ14とを備える。モータ制御方法は、間引きフィルタ14をクリアさせるためのクリア信号Cs1を出力するクリア信号出力ステップを含む。クリア信号出力ステップでは、間引きクロックにおけるモータ電流検出値D1の出力完了タイミングt1が、三角波の半周期毎に行われる電圧指令値S1の算出に関する処理タイミング(開始タイミングt2)に同期するように、クリア信号Cs1を出力する。この構成によれば、モータ制御に関する応答性の改善が図れるモータ制御方法を提供できる。このモータ制御方法は、コンピュータシステム(モータ制御装置1)上で用いられる。つまり、このモータ制御方法は、プログラムでも具現化可能である。本実施形態に係るプログラムは、本実施形態に係るモータ制御方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0019】
(2)詳細
(2.1)全体構成
以下、本実施形態に係るモータ制御装置1及びその周辺構成を含んだ全体のシステム(モータ制御システム100)について、図1図3を参照しながら詳しく説明する。なお、周辺構成の少なくとも一部が、モータ制御装置1の構成に含まれてもよい。
【0020】
モータ制御システム100は、図1に示すように、モータ制御装置1と、モータ2と、位置検出センサ3と、上位装置4とを備える。モータ制御システム100は、上位装置4の指令制御に従ってモータ制御装置1がモータ2の動作を制御するように構成されている。
【0021】
上位装置4は、例えばプログラマブルロジックコントローラ等を利用して構成され、モータ制御装置1に対して動作指令等により制御する。上位装置4とモータ制御装置1とは制御バスライン等を介して通信可能に接続されており、上位装置4からの動作指令がモータ制御装置1に伝送されるとともに、モータ制御装置1からの情報が上位装置4へと伝送される。
【0022】
モータ2は、例えば3相のブラシレスモータであり、3相の巻線を巻回したステータを備える。具体的には、モータ2は、U相、V相、W相とする各相の巻線をステータコアに巻回したステータと、永久磁石を有したロータとを備える。そして、モータ制御装置1で生成した駆動電圧V1を、U相の巻線には駆動電圧V1Uとし、V相の巻線には駆動電圧V1Vとし、W相の巻線には駆動電圧V1Wとして印加することで、ロータが回転する。
【0023】
位置検出センサ3は、モータ2におけるロータの近傍に配置されて、ロータの位置(回転位置)を検出するように構成される。位置検出センサ3は、例えば、ロータリエンコーダ、リニアスケール、又はホールCT等により構成される。位置検出センサ3は、検出したロータの位置の情報を位置情報Sen1(図1参照)としてモータ制御装置1へ出力する。なお、位置検出センサ3は、ロータの位置を検出可能であれば、そのセンサの種類は特に限定されない。
【0024】
モータ制御装置1は、モータ2の動作を制御するように構成される。モータ制御装置1は、ディジタル制御部17と、PWM部16と、電力変換部18と、一対のモータ電流検出部11と、一対のAD変換部15と、クリア信号出力部A1と、停止信号生成部19と、停止信号制御部20と、を備える。なお、クリア信号出力部A1、停止信号生成部19、及び停止信号制御部20については次の欄で説明する。
【0025】
ディジタル制御部17は、DSP(Digital Signal Processor)やマイクロコンピュータのソフトウェア或いはASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)のロジック回路で構成され、モータ2の回転動作を制御する。すなわち、ディジタル制御部17は、プログラム等の処理手順を示すソフトウェアに従って各処理を実行するように構成されている。またディジタル制御部17は、処理する信号として、所定のビット数のデータを並べたデータ列で構成されるディジタル信号を主体にして処理している。
【0026】
ディジタル制御部17は、上位装置4から、位置、速度、及びトルク等を指令する動作指令の情報等を受信する。またディジタル制御部17は、モータ制御装置1における種々の情報を上位装置4へ送信する。ディジタル制御部17は、このような情報を伝送する通信機能を有するとともに、モータ2の回転動作を制御し、モータ2が所定の動きをするように動作制御を行う。
【0027】
ディジタル制御部17のより具体的な処理の一例として、ディジタル制御部17は、フィードバック制御に基づき、次のような制御処理を実行する。ディジタル制御部17は、上位装置4からの位置を指令する動作指令と位置検出センサ3の位置情報Sen1とで位置制御演算を行い、速度指令を生成する。次に、ディジタル制御部17は、位置情報Sen1の微分により、モータ2の実速度に対応するモータ速度値を算出し、モータ速度と速度指令とから速度制御演算で電流指令を算出する。次に、ディジタル制御部17は、一対のモータ電流検出部11及び一対のAD変換部15を介してそれぞれ得られたU相のモータ電流検出値D1UとW相のモータ電流検出値D1Wと、算出した電流指令とから電流制御演算により各相の電圧指令を算出する。そして、ディジタル制御部17は、モータを駆動するためのU相、V相、W相の電圧指令を示す電圧指令値S1として、U相電圧指令値S1U、V相電圧指令値S1V、W相電圧指令値S1Wを出力する。すなわち、ディジタル制御部17は、上位装置4からの動作指令とモータ2の位置情報と巻線に流れる電流の電流値であるモータ電流検出値D1とによりトルク演算を行い、モータ2を駆動するための電圧指令値S1(3相電圧指令値)を算出する。
【0028】
PWM部16は、PWMスイッチング信号(以下、単に「PWM信号」と呼ぶこともある)P1を生成する。PWM部16は、マイクロコンピュータ内蔵の周辺回路(ペリフェラル)やASIC、FPGAのロジック回路で構成される。PWM部16は、例えばアップダウンカウンタにより形成される三角波のキャリア信号B1(図2参照)と、各相の電圧指令値S1とを比較することで各相のPWM信号P1を生成している。
【0029】
図2の上側半分では、三角波のキャリア信号B1、電圧指令値S1(S1U,S1V,S1W)、及びPWM信号P1(P1U,P1V,P1W)を示している。図2に示すように、三角波のレベルが順次増加する期間である第1期間R1において、三角波のレベルが電圧指令値S1のレベル以上となった時点で、PWM信号P1はハイレベルからローレベルへと立ち下がる。そして、三角波のレベルが順次減少する期間である第2期間R2において、三角波のレベルが電圧指令のレベル以下となった時点で、PWM信号P1はローレベルからハイレベルへと立ち上がる。PWM部16では、このような動作を繰り返すことにより、電圧指令値S1のレベルに応じたパルス幅、或いはデューティ比のパルス列で構成されるPWM信号P1を相ごとに生成している。このようにして生成されたPWM信号P1が電力変換部18に供給される。すなわち、PWM部16は、電圧指令値S1(3相電圧指令値)を三角波と比較することでPWM変調し、PWM信号P1(3相PWMスイッチング信号)を出力する。
【0030】
電力変換部18は、モータ2の巻線を通電駆動する。具体的には、電力変換部18は、PWM部16からの各相のPWM信号P1を受けて駆動電圧V1を生成し、U相の駆動電圧V1U、V相の駆動電圧V1V、W相の駆動電圧V1Wとして、モータ線を介してモータ2のそれぞれの巻線にこれらの電圧を印加する。電力変換部18は、いわゆるインバータであり、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はパワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)といった高速パワースイッチング素子及びダイオード等の電力変換素子を含む。電力変換部18は、IGBTのようなスイッチング素子(電力変換素子)を用いて、電源から供給された電圧をPWM信号P1に応じてスイッチング、すなわちオン/オフすることにより駆動電圧V1を生成している。すなわち、電力変換部18は、PWM信号P1(3相PWMスイッチング信号)に従い電力変換素子をオン/オフすることで、巻線に駆動電圧V1を印加する。電力変換部18は、電力変換素子を駆動するためのプリドライブ回路を内蔵したIPM(Intelligent Power Module)により実現され得る。
【0031】
一対のモータ電流検出部11は、駆動電圧V1をモータ2の巻線に印加したとき、その巻線に流れるモータ電流の電流量を検出し、電流検出信号C1として出力する。具体的には、一対のモータ電流検出部11は、U相モータ線とW相モータ線とに流れるモータ電流をそれぞれ電圧に変換して、U相の電流検出信号C1UとW相の電流検出信号C1Wとして出力する。各モータ電流検出部11は、モータ電流が小電流の場合はシャント抵抗を用いるが、特に大電流の場合はCT(Current Transfer)で電流を数千分の1の値に変換し、CTからの出力電流をシャント抵抗で検出する。すなわち、各モータ電流検出部11は、巻線に流れる電流を検出し、駆動電圧V1(所定範囲内における任意の電圧)により巻線に流れる電流をアナログ電圧に変換する。各モータ電流検出部11が出力する電流検出信号C1は、AD変換部15(ΔΣAD変換部)に供給される。
【0032】
一対のAD変換部15は、図1に示すように、U相の電流検出信号C1Uが供給される第1AD変換部151と、W相の電流検出信号C1Wが供給される第2AD変換部152とで構成される。また、各AD変換部15は、ΔΣ型のアナログ-ディジタル変換器であるΔΣ型ADコンバータ12と、間引きフィルタ14と、クロック生成部13とを有し、対応するモータ電流検出部11から供給されたアナログ信号(アナログ電圧)をディジタル信号に変換して出力する。
【0033】
各AD変換部15において、クロック生成部13は、クロック発生器と論理積ゲートとを有している。クロック発生器は、ΔΣ型ADコンバータ12の変換周期を決める原クロックを生成する。また、論理積ゲートでは、原クロックと(後述する)停止制御信号Cnt1との論理積を取り、AD変換クロックClk1(図1及び図2参照)として出力する。また、原クロックの周波数は、ディジタル制御部17の電流制御で必要なAD変換分解能とフィルタの間引きによる変換遅れの許容量で決めればよく、通常数十MHzの周波数を使用する。すなわち、クロック生成部13は、ΔΣ型ADコンバータ12と間引きフィルタ14とを動作させるための動作クロックであるAD変換クロックClk1を出力する。そして、AD変換部15は、停止制御信号Cnt1により動作クロックであるAD変換クロックClk1を停止させる。
【0034】
各AD変換部15において、ΔΣ型ADコンバータ12は、アナログ電圧をAD変換クロックClk1毎に1ビットのディジタル信号に変換する。具体的には、ΔΣ型ADコンバータ12は、例えば閾値と比較する比較器を有しており、供給された電流検出信号C1をその閾値と大小比較する。ΔΣ型ADコンバータ12は、その比較結果を二値に対応させることで、1ビットのディジタル信号に変換する。そして、ΔΣ型ADコンバータ12は、その変換した1ビットディジタル信号を、AD変換クロックClk1毎にAD変換信号dS1として出力する。すなわち、ΔΣ型ADコンバータ12から出力されるAD変換信号dS1は、パルスで構成された信号であり、例えばその信号のハイとローのレベルが1ビットディジタル信号の1と0の値に対応している。このように、ΔΣ型ADコンバータ12は、入力されたアナログ電圧を1ビットのディジタル信号に変換する。
【0035】
各AD変換部15において、間引きフィルタ14(AD変換間引きフィルタ)は、sincフィルタと呼ばれる周波数特性がsinc関数のディジタルフィルタを構成しており、加算器と減算器とを含む。加算器は、ΔΣ型ADコンバータ12から出力された1ビットのディジタル信号であるAD変換信号dS1をAD変換クロックClk1毎に積分することで、多ビットとなる加算データを生成している。加算データのビット数が、AD変換部15のAD変換分解能に対応している。
【0036】
また間引きフィルタ14は、AD変換クロックClk1を1/N(Nは2のn乗、nは整数)に分周した間引きクロックを生成するAD変換クロック分周器を有する。すなわち、間引きフィルタ14は、いわゆるオーバサンプリングクロックと呼ばれるAD変換クロックClk1の高クロックレートから、所望の低クロックレートの間引きクロックに分周している。減算器は、間引きクロック毎に動作し、加算データの前回値と今回値の差分を演算することで、sinc関数となる周波数特性を得ている。このように構成される間引きフィルタ14により、ローパス特性のフィルタを実現しており、高周波ノイズをカットするとともに、所望の分解能のビット数に変換したフィルタ後のモータ電流検出値D1を生成する。すなわち、間引きフィルタ14は、1ビットのディジタル信号を多ビットのディジタル信号に変換し、AD変換クロックClk1を分周した間引きクロック毎にモータ電流検出値D1として出力する。
【0037】
第1AD変換部151で生成されたモータ電流検出値D1Uと、第2AD変換部152で生成されたモータ電流検出値D1Wとは、ディジタル制御部17に供給される。ディジタル制御部17は、供給されたモータ電流検出値D1U、D1Wを用いて電流制御演算を行い、それぞれの駆動電圧V1を生成するための電圧指令値S1を算出している。
【0038】
(2.2)応答性の改善
本実施形態におけるモータ制御装置1は、上述の通り、クリア信号出力部A1を備えており、応答性の改善機能(以下、第1機能と呼ぶことがある)を有する。またモータ制御装置1は、上述の通り、停止信号生成部19及び停止信号制御部20を備えており、ノイズの低減機能(以下、第2機能と呼ぶことがある)を有する。なお、第2機能は、本開示におけるモータ制御装置1にとって必須ではなく、停止信号生成部19及び停止信号制御部20は、適宜に省略されてもよい。以下、主に図2及び図3を参照しながら、第1機能及び第2機能についてそれぞれ説明する。
【0039】
<第1機能>
先ず、図2及び図3について詳細に説明する。図2は、モータ制御装置1におけるモータ電流の検出に関する動作を説明するための動作波形図(つまり、横軸は時間)である。
【0040】
図2における中段に示す第1群F1は、AD変換クロックClk1、及びフィルタ後のモータ電流検出値D1を示し、ただし、モータ制御装置1が第1機能のみを有する場合の動作波形図である。仮に第2機能がモータ制御装置1から省略される場合、第1群F1に示す動作波形となる。
【0041】
図2における下段に示す第2群F2は、AD変換クロックClk1、及びフィルタ後のモータ電流検出値D1を示し、ただし、モータ制御装置1が第1機能及び第2機能を有する場合の動作波形図である。
【0042】
一方、図3は、モータ制御装置1に対する比較例に関する動作を説明するための動作波形図(横軸は時間)であり、第2機能は有するものの、第1機能を有さない、つまりクリア信号出力部A1を備えない比較例に関する動作波形図である。
【0043】
図2及び図3では、三角波の頂点となる時点と底点となる時点との間を1つの期間としており、底点となる時点から頂点となる時点までの期間を第1期間R1と定義し、頂点となる時点から底点となる時点までの期間を第2期間R2と定義している。第1期間R1及び第2期間R2における期間の合計(つまり底点から次の底点までの期間)が、三角波の1周期に相当する。ディジタル制御部17は、上述の通り、フィルタ後のモータ電流検出値D1を用いて電流制御演算を行って電圧指令値S1を算出する処理(以下、単に「電流制御処理」と呼ぶことがある)を実行するが、この電流制御処理は、三角波の半周期毎に行われる。図2及び図3では、三角波の半周期毎に行われる電流制御処理の開始タイミングt2から終了タイミングt3までの区間を、処理区間J1として図示される。各電流制御処理の終了タイミングt3は、三角波の頂点又は底点と概ね一致する。
【0044】
電流制御処理は、直近(最新)のモータ電流検出値D1を用いて行われることが好ましく、直近のモータ電流検出値D1の出力完了タイミングt1から、電流制御処理の開始タイミングt2までの時間は、出来るだけ短いことが好ましい。しかし、モータ電流検出値D1の出力完了タイミングt1と三角波のキャリア信号B1とが非同期であることに起因して、出力完了タイミングt1から開始タイミングt2までの時間が大きくなる可能性がある。図3の例では、出力完了タイミングt1から開始タイミングt2までにおいて、遅れ時間T3が発生している。さらに遅れ時間T3は、一定でなく揺らぎ(ジッタ)がある。図3では、第2期間R2における遅れ時間T3(図3の右隅)は、第1期間R1における遅れ時間T3(図3の中央)よりも長い。遅れ時間T3やジッタの発生は、電流制御処理において最新のモータ電流検出値D1を用いること、及び電流制御処理の安定性を阻害する可能性があり、モータ制御の応答性に影響する。
【0045】
そこで、クリア信号出力部A1は、クリア信号Cs1(図1参照)を各間引きフィルタ14に出力し(モータ制御方法における信号出力ステップに相当)、各間引きフィルタ14をクリアさせるように構成される。クリア信号出力部A1は、間引きクロックにおけるモータ電流検出値D1の出力完了タイミングt1が、三角波の半周期毎に行われる電圧指令値S1の算出に関する処理タイミング(ここでは開始タイミングt2)に同期するように、クリア信号Cs1を出力する。クリア信号出力部A1は、ディジタル制御部17による制御下で、間引きフィルタ14のクリアと動作開始を制御するためのクリア信号Cs1(フィルタ制御信号)を生成し、一対のAD変換部15の2つの間引きフィルタ14にそれぞれ出力している。図1では、クリア信号出力部A1が、ディジタル制御部17と別体に図示されているが、クリア信号出力部A1の機能は、ディジタル制御部17の内部に設けられてよい。
【0046】
ディジタル制御部17は、クリア信号出力部A1に対して制御信号Cnt2(図1参照)を供給する。クリア信号出力部A1は、ディジタル制御部17から供給される制御信号Cnt2に基づいて、所定のタイミング及び所定のパルス幅のクリア信号Cs1を生成する。クリア信号Cs1は、間引きフィルタ14の動作をコントロールするための信号であり、例えば、信号波形の立ち上がりエッジ等において瞬間的に間引きフィルタ14を停止(クリア)させる信号である。以下、クリア信号Cs1によって間引きフィルタ14がクリアされた時点から、一定の期間を非参照期間T1(図2参照)と呼ぶ。クリア直後では、間引きフィルタ14から正常なモータ電流検出値D1(変換値)は出力されないため、非参照期間T1は、モータ電流検出値D1を参照出来ない(言い換えると、参照するべきではない)期間とされている。図2では、非参照期間T1に対応する二つ分のモータ電流検出値D1(変換値)は、白抜きで図示され、ドットハッチングで示すモータ電流検出値D1は、正常な値として出力されている。なお、ドットハッチングで示すモータ電流検出値D1の途中で、白抜きで示すモータ電流検出値D1が部分的に重なっている箇所は、そこで間引きフィルタ14がクリアされたことを意味する。
【0047】
非参照期間T1の長さは、フィルタの種類に依存する。本実施形態では、間引きフィルタ14が三次sincフィルタ(sinc3)を構成しており、sincフィルタの三段分をクリアすることになり、3回変換後に正常なモータ電流検出値D1(変換値)が取得可能となる。そのため、クリア直後の二つ分のモータ電流検出値D1(変換値)は、異常値となり得るので、非参照期間T1は、二つ分のモータ電流検出値D1(変換値)の期間としている。例えば、間引きフィルタ14が、二次sincフィルタ(sinc2)を構成する場合、クリア直後の一つ分の変換値は、異常値となり得るので、非参照期間T1は、一つ分のモータ電流検出値D1(変換値)の期間となる。
【0048】
ディジタル制御部17は、間引きフィルタ14から供給されるモータ電流検出値D1に基づき、出力完了タイミングt1から次の出力完了タイミングt1までの処理時間T4(図2及び図3参照:間引きクロックの周期に相当)を演算する。ディジタル制御部17は、その演算結果を用いて、三角波のキャリア信号B1に基づく電流制御処理の開始タイミングt2から逆算して、間引きフィルタ14をクリアするタイミング及び非参照期間T1を決定し、制御信号Cnt2を送信する。非参照期間T1は、一例として処理時間T4の2倍に相当する。ここでは一例として、間引きフィルタ14を停止するタイミングは、各半周期の開始時点から最短のタイミングとする。つまり、ディジタル制御部17は、三角波の半周期毎に、当該半周期の開始時点から最短のタイミングで、出力完了タイミングt1が処理タイミング(開始タイミングt2)に同期可能なように、クリア信号Cs1を出力させる。言い換えると、非参照期間T1は、各半周期内において、予定される電流制御処理の処理区間J1から最も離れた位置に設定される。
【0049】
各間引きフィルタ14では、入力されるクリア信号Cs1における立ち上がりエッジに応じて加算器及び減算器で生成されるデータはゼロにクリアされる。そして、クリアされたその時点からフィルタ処理が再開される。そして、各間引きフィルタ14のモータ電流検出値D1(変換値)を正常な値として参照可能となるタイミング、つまり、非参照期間T1が終了するタイミングが、電流制御処理の開始タイミングt2からの逆算により決定されている。
【0050】
このようにモータ制御装置1は、第1機能を有するため、図2に示すように、直近のモータ電流検出値D1の出力完了タイミングt1と電流制御処理の開始タイミングt2とがほぼ一致し、図3に示した遅れ時間T3やジッタの発生が解消されやすくなる。
【0051】
<第2機能>
モータ制御装置1は、上述の通り、電源に接続されたスイッチング素子をスイッチングすることにより、巻線を駆動する駆動波形をPWMパルスで擬似的に形成した駆動電圧V1を生成している。このため、スイッチングの瞬間(例えば図2のスイッチング区間H1)に漏れ電流が発生し、この漏れ電流がAD変換部15にノイズ等として影響し得る。その結果、モータ電流検出値D1U、D1Wの精度が劣化する可能性がある。また、モータ電流検出部11は、大電流の検出用にCTとシャント抵抗を組み合わせた構成となる場合、CTで変換する際に数μs~十数μsの遅れが発生し、電流検出信号C1に含まれる漏れ電流の発生タイミングがスイッチングの瞬間から遅れることとなる。
【0052】
そこで、停止信号生成部19及び停止信号制御部20は、漏れ電流の影響を抑制するように、停止制御信号Cnt1を利用して、所定のマスク期間T2(図2及び図3参照)だけAD変換部15の動作を停止させることで、漏れ電流の影響を抑制している。
【0053】
停止信号生成部19には、各相の電圧指令値S1(U相の電圧指令値S1U、V相の電圧指令値S1V、W相の電圧指令値S1W)、及び、各相のPWM信号P1(U相のPWM信号P1U、V相のPWM信号P1V、W相のPWM信号P1W)が供給される。停止信号生成部19は、各相の電圧指令値S1や、供給されたPWM信号P1のレベルが変化するエッジ(ローレベルからハイレベルへの立ち上りエッジや、その逆の立ち下がりエッジ)等に基づいて、所定のタイミング及び所定のパルス幅の停止信号Stp1を生成し、停止信号制御部20に供給する。
【0054】
停止信号制御部20には、停止信号Stp1が供給される。停止信号制御部20は、上述のスイッチングの瞬間に発生する漏れ電流が、電流検出信号C1に変換されるまでの遅れ時間を補正し、停止制御信号Cnt1を生成し、各AD変換部15におけるクロック生成部13の論理積ゲートの入力に供給される。例えば、停止制御信号Cnt1がローレベル(又はハイレベル)のとき、クロック生成部13からは原クロックが出力されず、結果、AD変換クロックClk1も出力されない。その結果、図2の下段の第2群F2のAD変換クロックClk1において、マスク期間T2が生成される。逆に停止制御信号Cnt1がハイレベル(又はローレベル)のとき、原クロックがAD変換クロックClk1として出力される。
【0055】
マスク期間T2において、AD変換クロックClk1の出力が停止されるため、ΔΣ型ADコンバータ12及び間引きフィルタ14の動作も停止する。そのため、マスク期間T2において、モータ電流検出値D1も出力されない。したがって、スイッチング区間H1に発生し得る漏れ電流による電流検出信号C1の検出精度劣化を低減することができる。また、不要な成分の混入が抑制された電流検出信号C1が得られるので、モータに発生する不要なトルクが小さくなり、微振動を抑えることができる。
【0056】
<利点>
以上説明したようにモータ制御装置1では、モータ電流検出値D1の出力完了タイミングt1が、電圧指令値S1の算出に関する処理タイミング(ここでは開始タイミングt2)に同期するように、間引きフィルタ14がクリアされる。そのため、常に最新のモータ電流検出値D1でモータ制御を行える可能性が高まり、特に図3に示した遅れ時間T3やジッタの発生が解消されやすくなる。結果的に、モータ制御装置1には、モータ制御に関する応答性の改善が図れる、という利点がある。
【0057】
また非参照期間T1は、各半周期内において、予定される電流制御処理の処理区間J1から最も離れた位置に設定されるため、電流制御処理に用いられる最新のモータ電流検出値D1が、間引きフィルタ14のクリアによる影響を受けにくくできる。
【0058】
さらにモータ制御装置1は、第1機能に加えて、第2機能を更に有するため、ノイズを低減しつつ、遅れ時間T3やジッタの発生が解消されやすくなる。
【0059】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、上記実施形態に係るモータ制御装置1と同様の機能は、モータ制御方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
【0060】
以下、上記実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。以下では、上記実施形態を「基本例」と呼ぶこともある。
【0061】
本開示におけるモータ制御装置1は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示におけるモータ制御装置1としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0062】
また、モータ制御装置1における複数の機能が、1つのハウジング内に集約されていることは必須の構成ではない。例えば、モータ制御装置1の構成要素は、複数のハウジングに分散して設けられていてもよい。
【0063】
反対に、モータ制御装置1における複数の機能が、1つのハウジング内に集約されてもよい。さらに、モータ制御装置1の少なくとも一部の機能、例えば、モータ制御装置1の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0064】
基本例では、モータ制御装置1は、各AD変換部15において、1つの間引きフィルタ14が設けられている。しかし、モータ制御装置1は、各AD変換部15において、2つ以上の間引きフィルタ14が設けられてもよい。
【0065】
以下、各AD変換部15において、2つの間引きフィルタ14が設けられた変形例のモータ制御装置1Aについて、図4及び図5を参照しながら説明する。なお、以下のモータ制御装置1Aについて、基本例のモータ制御装置1と実質的に共通する構成要素については同一の参照符号を付して適宜に説明を省略する場合がある。
【0066】
図4は、モータ制御装置1Aの要部の構成図を示し、具体的には、一対のAD変換部15のうち、第1AD変換部151についてのみ図示されるが、第2AD変換部152も、第1AD変換部151と同様の構成を有する。
【0067】
AD変換部15は、図4に示すように、クロック生成部13と、ΔΣ型ADコンバータ12と、2つの間引きフィルタ14(第1間引きフィルタ141及び第2間引きフィルタ142)とを有する。つまり、少なくとも1つの間引きフィルタ14は、第1間引きフィルタ141及び第2間引きフィルタ142を含む。第1間引きフィルタ141と第2間引きフィルタ142は、互いに同種のディジタルフィルタである。
【0068】
第1間引きフィルタ141と第2間引きフィルタ142は、互いに並列に接続される。クロック生成部13から出力されるAD変換クロックClk1は、第1間引きフィルタ141及び第2間引きフィルタ142にそれぞれ入力される。またΔΣ型ADコンバータ12から出力されるAD変換信号dS1は、第1間引きフィルタ141及び第2間引きフィルタ142にそれぞれ入力される。
【0069】
図5は、モータ制御装置1Aにおけるモータ電流の検出に関する動作を説明するための動作波形図(つまり、横軸は時間)である。図5における中段の第1群F1は、AD変換クロックClk1、第1間引きフィルタ141によるフィルタ後のモータ電流検出値D1A、第2間引きフィルタ142によるフィルタ後のモータ電流検出値D1Bを示す。ただし、図5の第1群F1は、基本例で説明した図2の第1群F1と同様に、第1機能のみを有する場合の動作波形図である。
【0070】
図5における下段の第2群F2は、AD変換クロックClk1、第1間引きフィルタ141によるフィルタ後のモータ電流検出値D1A、第2間引きフィルタ142によるフィルタ後のモータ電流検出値D1Bを示す。ただし、図5の第2群F2は、基本例で説明した図2の第2群F2と同様に、第1機能及び第2機能を有する場合の動作波形図である。
【0071】
モータ制御装置1Aのクリア信号出力部A1は、三角波の各周期において、前段の半周期では、第1間引きフィルタ141に対して、出力完了タイミングt1が処理タイミング(開始タイミングt2)に同期するように、クリア信号Cs1を出力する。またモータ制御装置1Aのクリア信号出力部A1は、三角波の各周期において、後段の半周期では、第2間引きフィルタ142に対して、出力完了タイミングt1が処理タイミング(開始タイミングt2)に同期するように、クリア信号Cs1を出力する。つまり、モータ制御装置1Aでは、前段の半周期(第1期間R1)と後段の半周期(第2期間R2)とで、クリアする対象の間引きフィルタ14を切り替えている。
【0072】
さらにモータ制御装置1Aでは、ディジタル制御部17は、第1間引きフィルタ141及び第2間引きフィルタ142のうちの一方が、クリア信号Cs1によりクリアされてから非参照期間T1(所定の期間)が過ぎるまでの間、他方から出力されるモータ電流検出値D1を取得する。
【0073】
具体的には、ディジタル制御部17は、前段の半周期(第1期間R1)において、第1間引きフィルタ141がクリア信号Cs1によりクリアされてから非参照期間T1(所定の期間)が過ぎるまでの間、第2間引きフィルタ142から出力されるモータ電流検出値D1を取得する。ディジタル制御部17は、前段の半周期において、第1間引きフィルタ141における非参照期間T1が過ぎると、第1間引きフィルタ141から出力されるモータ電流検出値D1を取得する。
【0074】
つまり、第1期間R1では、クリアのタイミング、及び第1間引きフィルタ141の変換値を正常な値として参照可能となるタイミングが、電流制御処理の開始タイミングt2からの逆算により決定される。ディジタル制御部17は、第1期間R1では、第1間引きフィルタ141から出力される最新のモータ電流検出値D1を用いて電流制御処理(処理区間J1)を実行する一方で、非参照期間T1にて欠損したモータ電流検出値D1について、第2間引きフィルタ142から出力されるモータ電流検出値D1で補間する。
【0075】
そのため、基本例では、第1期間R1において、非参照期間T1に起因してモータ電流検出値D1を取得できない期間が存在していたが、本変形例では、クリア直後の非参照期間T1だけ、第2間引きフィルタ142のモータ電流検出値D1で補間される。そのため、例えば、モータ制御等において第1期間R1にわたってモータ電流検出値D1の平均値の演算を必要とする場合に、演算結果の信頼性が向上する。
【0076】
またディジタル制御部17は、後段の半周期(第2期間R2)において、第2間引きフィルタ142がクリア信号Cs1によりクリアされてから非参照期間T1(所定の期間)が過ぎるまでの間、第1間引きフィルタ141から出力されるモータ電流検出値D1を取得する。ディジタル制御部17は、後段の半周期において、第2間引きフィルタ142における非参照期間T1が過ぎると、第2間引きフィルタ142から出力されるモータ電流検出値D1を取得する。
【0077】
つまり、第2期間R2では、クリアのタイミング、及び第2間引きフィルタ142の変換値を正常な値として参照可能となるタイミングが、電流制御処理の開始タイミングt2からの逆算により決定される。ディジタル制御部17は、第2期間R2では、第2間引きフィルタ142から出力される最新のモータ電流検出値D1を用いて電流制御処理(処理区間J1)を実行する一方で、非参照期間T1にて欠損したモータ電流検出値D1について、第1間引きフィルタ141から出力されるモータ電流検出値D1で補間する。
【0078】
そのため、基本例では、第2期間R2において、非参照期間T1に起因してモータ電流検出値D1を取得できない期間が存在していたが、本変形例では、クリア直後の非参照期間T1だけ、第1間引きフィルタ141のモータ電流検出値D1で補間される。そのため、例えば、モータ制御等において第2期間R2にわたってモータ電流検出値D1の平均値の演算を必要とする場合に、演算結果の信頼性が向上する。
【0079】
なお、モータ制御装置1Aでは、図5に示すように、第1間引きフィルタ141と第2間引きフィルタ142とでは、モータ電流検出値D1の出力完了タイミングt1がずれている。
【0080】
モータ制御装置1Aにおいても、基本例と同様に、第2機能を有することで、図5の第2群F2に示すように、ノイズを低減しつつ、遅れ時間T3やジッタの発生が解消されやすくなる。
【0081】
(4)まとめ
以上説明したように、第1の態様に係るモータ制御装置(1,1A)は、3相の巻線を巻回したステータを備えるモータ(2)に対し、巻線に流れる電流を検出するモータ電流検出部(11)を有し、モータ(2)の動作を制御する。モータ制御装置(1,1A)は、ディジタル制御部(17)と、PWM部(16)と、電力変換部(18)と、モータ電流検出部(11)と、ΔΣ型ADコンバータ(12)と、少なくとも1つの間引きフィルタ(14)と、クリア信号出力部(A1)と、を備える。ディジタル制御部(17)は、上位装置(4)からの動作指令とモータ(2)の位置情報と巻線に流れる電流の電流値であるモータ電流検出値(D1)とに基づき、モータ(2)を駆動するための電圧指令値(S1)を算出する。PWM部(16)は、電圧指令値(S1)を三角波と比較することでPWM変調し、PWMスイッチング信号(P1)を出力する。電力変換部(18)は、PWMスイッチング信号(P1)に従い電力変換素子をオン/オフすることで、巻線に駆動電圧(V1)を印加する。モータ電流検出部(11)は、駆動電圧(V1)により巻線に流れる電流をアナログ電圧に変換する。ΔΣ型ADコンバータ(12)は、アナログ電圧を、AD変換クロック(Clk1)毎に1ビットのディジタル信号に変換する。少なくとも1つの間引きフィルタ(14)は、1ビットのディジタル信号を多ビットのディジタル信号に変換し、AD変換クロック(Clk1)を分周した間引きクロック毎にモータ電流検出値(D1)として出力する。クリア信号出力部(A1)は、間引きフィルタ(14)をクリアさせるためのクリア信号(Cs1)を出力する。クリア信号出力部(A1)は、間引きクロックにおけるモータ電流検出値(D1)の出力完了タイミング(t1)が、三角波の半周期毎に行われる電圧指令値(S1)の算出に関する処理タイミング(開始タイミングt2)に同期するように、クリア信号(Cs1)を出力する。
【0082】
この態様によれば、モータ電流検出値(D1)の出力完了タイミング(t1)が、電圧指令値(S1)の算出に関する処理タイミング(開始タイミングt2)に同期するように、クリア信号(Cs1)が出力されて間引きフィルタ(14)がクリアされる。そのため、常に最新のモータ電流検出値(D1)でモータ制御を行える可能性が高まる。結果的に、モータ制御に関する応答性の改善が図れる、という利点がある。
【0083】
第2の態様に係るモータ制御装置(1,1A)に関して、第1の態様において、ディジタル制御部(17)は、三角波の半周期毎に、当該半周期の開始時点から最短のタイミングで、出力完了タイミング(t1)が処理タイミング(開始タイミングt2)に同期可能なように、クリア信号(Cs1)を出力させる。
【0084】
この態様によれば、電圧指令値(S1)の算出に用いられる最新のモータ電流検出値(D1)が、間引きフィルタ(14)のクリアによる影響を受けにくくできる。
【0085】
第3の態様に係るモータ制御装置(1,1A)に関して、第1又は第2の態様において、少なくとも1つの間引きフィルタ(14)は、第1間引きフィルタ(141)及び第2間引きフィルタ(142)を含む。クリア信号出力部(A1)は、三角波の各周期において、前段の半周期では、第1間引きフィルタ(141)に対して、出力完了タイミング(t1)が処理タイミング(開始タイミングt2)に同期するように、クリア信号(Cs1)を出力する。クリア信号出力部(A1)は、三角波の各周期において、後段の半周期では、第2間引きフィルタ(142)に対して、出力完了タイミング(t1)が処理タイミング(開始タイミングt2)に同期するように、クリア信号(Cs1)を出力する。
【0086】
この態様によれば、2つの間引きフィルタ(14)を用いた場合におけるモータ制御に関する応答性を改善できる。
【0087】
第4の態様に係るモータ制御装置(1,1A)に関して、第3の態様において、ディジタル制御部(17)は、第1間引きフィルタ(141)及び第2間引きフィルタ(142)のうちの一方が、クリア信号(Cs1)によりクリアされてから所定の期間(非参照期間T1)が過ぎるまでの間、他方から出力されるモータ電流検出値(D1)を取得する。
【0088】
この態様によれば、2つの間引きフィルタ(14)を用いることで、間引きフィルタ(14)が1つの場合では取得できないクリア直後のモータ電流検出値(D1)を取得できる。
【0089】
第5の態様に係るモータ制御装置(1,1A)に関して、第3又は第4の態様において、ディジタル制御部(17)は、前段の半周期において、第1間引きフィルタ(141)がクリア信号(Cs1)によりクリアされてから所定の期間(非参照期間T1)が過ぎるまでの間、第2間引きフィルタ(142)から出力されるモータ電流検出値(D1)を取得する。ディジタル制御部(17)は、前段の半周期において、第1間引きフィルタ(141)の動作が開始されると、第1間引きフィルタ(141)から出力されるモータ電流検出値(D1)を取得する。
【0090】
この態様によれば、前段の半周期において、クリア直後の所定の期間(非参照期間T1)だけ第2間引きフィルタ(142)からのモータ電流検出値(D1)を取得することで、前段の半周期におけるモータ電流検出値(D1)を補間できる。
【0091】
第6の態様に係るモータ制御装置(1,1A)に関して、第3~第5の態様のいずれか1つにおいて、ディジタル制御部(17)は、後段の半周期において、第2間引きフィルタ(142)がクリア信号(Cs1)によりクリアされてから所定の期間(非参照期間T1)が過ぎるまでの間、第1間引きフィルタ(141)から出力されるモータ電流検出値(D1)を取得する。ディジタル制御部(17)は、後段の半周期において、第2間引きフィルタ(142)の動作が開始されると、第2間引きフィルタ(142)から出力されるモータ電流検出値(D1)を取得する。
【0092】
この態様によれば、後段の半周期において、クリア直後の所定の期間(非参照期間T1)だけ第1間引きフィルタ(141)からのモータ電流検出値(D1)を取得することで、後段の半周期におけるモータ電流検出値(D1)を補間できる。
【0093】
第7の態様に係るモータ制御方法は、3相の巻線を巻回したステータを備えるモータ(2)に対し、巻線に流れる電流を検出するモータ電流検出部(11)を有し、モータ(2)の動作を制御するモータ制御装置(1,1A)のモータ制御方法である。モータ制御装置(1,1A)は、ディジタル制御部(17)と、PWM部(16)と、電力変換部(18)と、モータ電流検出部(11)と、ΔΣ型ADコンバータ(12)と、少なくとも1つの間引きフィルタ(14)と、を備える。ディジタル制御部(17)は、上位装置(4)からの動作指令とモータ(2)の位置情報と巻線に流れる電流の電流値であるモータ電流検出値(D1)とに基づき、モータ(2)を駆動するための電圧指令値(S1)を算出する。PWM部(16)は、電圧指令値(S1)を三角波と比較することでPWM変調し、PWMスイッチング信号(P1)を出力する。電力変換部(18)は、PWMスイッチング信号(P1)に従い電力変換素子をオン/オフすることで、巻線に駆動電圧(V1)を印加する。モータ電流検出部(11)は、駆動電圧(V1)により巻線に流れる電流をアナログ電圧に変換する。ΔΣ型ADコンバータ(12)は、アナログ電圧を、AD変換クロック(Clk1)毎に1ビットのディジタル信号に変換する。少なくとも1つの間引きフィルタ(14)は、1ビットのディジタル信号を多ビットのディジタル信号に変換し、AD変換クロック(Clk1)を分周した間引きクロック毎にモータ電流検出値(D1)として出力する。モータ制御方法は、間引きフィルタ(14)をクリアさせるためのクリア信号(Cs1)を出力するクリア信号出力ステップを含む。クリア信号出力ステップでは、間引きクロックにおけるモータ電流検出値(D1)の出力完了タイミング(t1)が、三角波の半周期毎に行われる電圧指令値(S1)の算出に関する処理タイミング(開始タイミングt2)に同期するように、クリア信号(Cs1)を出力する。
【0094】
この態様によれば、モータ制御に関する応答性の改善が図れるモータ制御方法を提供できる。
【0095】
第8の態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、第7の態様におけるモータ制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0096】
この態様によれば、モータ制御に関する応答性の改善が図れる機能を提供できる。
【0097】
第2~6の態様に係る構成については、モータ制御装置(1,1A)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0098】
1,1A モータ制御装置
11 モータ電流検出部
12 ΔΣ型ADコンバータ
14 間引きフィルタ
141 第1間引きフィルタ
142 第2間引きフィルタ
16 PWM部
17 ディジタル制御部
18 電力変換部
A1 クリア信号出力部
Clk1 AD変換クロック
Cs1 クリア信号
D1 モータ電流検出値
V1 駆動電圧
P1 PWMスイッチング信号
S1 電圧指令値
T1 非参照期間(所定の期間)
t1 出力完了タイミング
t2 開始タイミング(処理タイミング)
2 モータ
4 上位装置
図1
図2
図3
図4
図5