IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-燃料電池システム、及び排出方法 図1
  • 特開-燃料電池システム、及び排出方法 図2A
  • 特開-燃料電池システム、及び排出方法 図2B
  • 特開-燃料電池システム、及び排出方法 図3
  • 特開-燃料電池システム、及び排出方法 図4
  • 特開-燃料電池システム、及び排出方法 図5
  • 特開-燃料電池システム、及び排出方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058387
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】燃料電池システム、及び排出方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04791 20160101AFI20230418BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20230418BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20230418BHJP
   H01M 8/2475 20160101ALI20230418BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20230418BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20230418BHJP
【FI】
H01M8/04791
H01M8/04746
H01M8/04 J
H01M8/2475
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168407
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌平
(72)【発明者】
【氏名】中澤 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】吉野 正人
(72)【発明者】
【氏名】中森 洋二
(72)【発明者】
【氏名】干鯛 将一
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H126FF10
5H127AA03
5H127AA04
5H127AA06
5H127AA07
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB10
5H127BB12
5H127BB37
5H127DC12
5H127DC15
5H127DC32
5H127DC35
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE24
5H127EE29
5H127EE30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】煙突効果をより向上させることが可能な燃料電池システム及び排出方法を提供する。
【解決手段】本実施形態によれば、燃料電池システム(100)は、燃料電池スタック(31)と、第1供給装置(331)と、第1流路(333a、333b)と、排気口(4)と、を備える。燃料電池スタック(31)は、燃料電池を挟持する。第1供給装置(331)は、酸化ガスを供給する。排気口(4)は、重力と反対方向に管状に伸びる。第1流路(333a、333b)は、第1供給装置(331)から燃料電池スタック(31)の空気極を通って排気口(4)の鉛直下方領域である排出部(4a)へ接続される。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を挟持した燃料電池スタックと、
酸化ガスを供給する第1供給装置と、
重力と反対方向に伸びる管状の排気口と、
前記第1供給装置から前記燃料電池スタックの空気極を通って前記排気口の鉛直下方領域である排出部へ接続される第1流路と、
を備え、
前記第1流路から前記排出部へ供給されるガスよりも低密度なガスが前記排出部へ供給される、燃料電池システム。
【請求項2】
前記酸化ガスよりも低密度な燃料ガスを供給する第2供給装置と、
前記第2供給装置から前記燃料電池スタックの燃料極を通って前記排出部へ接続される第2流路と、を更に備え、
前記低密度なガスは、前記第2流路から前記排出部へ供給される、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料電池スタックと、前記第1供給装置と、前記第2供給装置と、は、密閉された第1ユニット内に配置され、
前記排出部及び前記排気口の少なくともいずれかは、前記第1ユニットの内面から前記第1ユニット外に伸びる、請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記排気口内に前記排出部から供給されるガスを燃焼する燃焼器を更に備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記第2流路と、前記排気口との接続部に設置されるガス制御弁を更に備える、請求項2又は3に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記排気口の外周部に設置される断熱材を更に備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
燃料電池を挟持した燃料電池スタックと、
アノードガスを前記燃料電池スタックに供給する還元ガス供給装置と、
カソードガスを前記燃料電池スタックに供給する酸化ガス供給装置と、
前記還元ガス供給装置から前記燃料電池スタックの燃料極を通って排出部へ接続された流路を有する還元ガス流路と、
前記酸化ガス供給装置から前記燃料電池スタックの空気極を通って前記排出部へ接続された流路を有する酸化ガス流路と、
を備え、
前記燃料電池スタックから前記排出部へ接続された酸化ガス流路が重力と反対方向に伸びており、前記酸化ガス流路に対して、前記燃料電池スタックから前記排出部へ前記還元ガス流路が接続されている、燃料電池システム。
【請求項8】
燃料電池を挟持した燃料電池スタックと、酸化ガスを供給する第1供給装置と、重力と反対方向に伸びる管状の排気口と、前記第1供給装置から前記燃料電池スタックを通って前記排気口の鉛直下方領域である排出部へ接続される第1流路と、を備える燃料電池システムの排出方法であって、
前記第1流路から前記排出部へ供給されるガスよりも低密度なガスが前記排出部へ供給される、燃料電池システムの排出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃料電池システム、及び排出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新エネルギーのひとつとして、水素が挙げられる。この水素の利用分野として、水素と酸素を電気化学的に反応させることにより、化学エネルギーを電気エネルギーに変換することのできる燃料電池が注目されている。燃料電池は高いエネルギー利用効率を有することから、大規模分散電源、家庭用電源、移動用電源として開発が進められている。燃料電池のシステムは、電気化学反応に寄与する電気化学セルと、電気化学セルを積層させた燃料電池スタックと、燃料電池スタックを作動させるための周辺機器で構成されている。
【0003】
周辺機器の一つとして、電気化学反応に必要なガスを供給するガス系統が挙げられる。燃料電池スタックでは、水素などの還元性ガスと、酸素などの酸化性ガスの2種類を電気化学反応に使用する。2種のガスのうち、酸化性ガスの流路は圧力損失が大きい傾向があり、酸化ガスのガス供給装置から排気するまでの送風装置(ファンやブロワ、コンプレッサーなど)の動力が大きくなる。このため、送風装置の動力が大きくなることにより、燃料電池モジュールの発電コストを上昇させてしまう。また、大型の送風装置を採用することによる燃料電池モジュールの大型化、重量増大を招いてしまう。
【0004】
一方で、電力を用いない能動的な排気システムを排気側に設置することにより、送風装置の動力を低減させる方法が知られている。能動的な排気システムの一例として、重力と反対方向に垂直に排気口を設置する方法がある。一般的に、燃料電池の電気化学反応によって生じた反応熱によって、燃料電池スタックの出口側ガスの温度は大気より高くなる。このように、煙突効果により、大気より温度の高いガスは、密度差によって能動的に重力と反対方向に進む力を得ることなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-95542号公報
【特許文献2】特開2010-146994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、酸化性ガスの温度差による密度変化は大きくないため、煙突効果による効果は小さくなってしまう。このため、送風装置の動力をあまり抑制することができない恐れがある。例えば、酸化性ガスの密度は、26.85℃で1.176kg/m、86.85℃で0.9799 kg/mであり、この60℃の差で密度差は0.1961kg/mと小さい。これでは、送風装置の動力をあまり小さくできず、特に移動用電源への搭載が難しくなる場合もある。
【0007】
そこで、発明が解決しようとする課題は、煙突効果をより向上させることが可能な燃料電システム、及び排出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態によれば、燃料電池システムは、燃料電池スタックと、第1供給装置と、第1流路と、排気口と、を備える。燃料電池スタックは、燃料電池を挟持する。第1供給装置は、酸化ガスを供給する。排気口は、重力と反対方向に管状に伸びる。第1流路は、第1供給装置から燃料電池スタックの空気極を通って排気口の鉛直下方領域である排出部へ接続される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、煙突効果をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】燃料電池システムの構成例を示した模式図。
図2A】燃料電池スタックとガスラインの構成例を示した模式図。
図2B】燃料電池スタックとガスラインの構成例を示した別の模式図。
図3】水素及び酸素の密度を示すグラフ。
図4】シミュレーションモデルを示す2次元モデル図。
図5】シミュレーション結果を示す図。
図6】気部のガス吸引力を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る燃料電システム、及び排出方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0012】
(一実施形態)
図1は、燃料電池システム100の構成例を示した模式図である。燃料電池システム100は、燃料電池モジュール1と排気口4とを備える。さらに燃料電池モジュール1は、電気系システム2と、ガス系システム3とを有する。電気系システム2は、コンバーターなどの電気関連装置を有する。本実施形態では、鉛直上方をZ方向とする。すなわち、Z方向は重力方向とは反対の方向である。
【0013】
一方で、ガス系システム3は、燃料電池スタック、酸化性ガス系統、及び還元性ガス系統などを有する。すなわち、ガス系システム3には、燃料電池スタック、燃料電池スタックに酸化性ガスを供給する酸化性ガス系統、及び燃料電池スタックに還元性ガスを供給する還元性ガス系統などが設置される。
【0014】
排気口4は、排出部4aから重力と反対方向である鉛直上方に伸びる管状の構成を有する。すなわち、この排気口4は、排出部4aから上端部まで続く中空の排気路を内部に有する。なお、排気口4は、煙突と称する場合がある。排出部4aは、排気口4の鉛直下方の領域であり、酸化性ガス系統、及び還元性ガス系統が接続される領域である。
【0015】
燃料電池モジュール10は、電気関連区域ユニット11とガス関連区域ユニット12とを有する。電気関連区域ユニット11とガス関連区域ユニット12とは、例えば、それぞれが密閉した容器として構成される。すなわち、図1に示すように、電気関連区域ユニット11内には電気系システム2が配置される。一方で、ガス関連区域ユニット12内にはガス系システム3が配置される。これから分かるように、燃料電池モジュール10を、このような分離構成にすることで、電気系システム2からの静電気などでガス系システム3内の水素が引火するなどのリスクを抑制可能となる。なお、本実施形態に係るガス関連区域ユニット12が第1ユニットに対応する。
【0016】
このガス関連区域ユニット12の天井面やその近傍に排気口4の排出部4aが設置される。そして、還元性ガスの排気管323bと、酸化性ガスの排気管333bと、が排出部4aに接続される。例えば、排気管323bと、排気管333bとは、それぞれ直接的に、排気口4に接続される。これにより、燃料電池モジュール10の稼働中には、排気口4内の排出部4aに外気より高温の気体が入り、高温の気体は低温の排気口4外の酸化性ガスより密度が低いため、排気口4内の気体に浮力が生じる。これにより、排気口4下部の排出部4aがより低圧となり、排出部4aから排気管323b内、及びの排気管333b内の気体が排気口4に引き入れられる。これにより、排気管323b内、及び排気管333b内から排気口4に向けて吸引力が働くので、図2を用いて後述する還元性ガスの還元性ガス送風装置321、及び酸化性ガスの酸化性ガス送風装置332の動力を下げること、又は還元性ガス送風装置321、及び酸化性ガスの配置を不要とすることが可能となる。
【0017】
このように、排気口4の排出部4aでの所謂煙突効果によって還元性ガス、酸化性ガスの送風装置の動力を下げることができる。なお、煙突効果(stack effect)とは、排気口4の中に外気より高温のガスがある時に、高温のガスは低温のガスより密度が低いため排気口4内のガスに浮力が生じる結果、排気口4の下部のガス取り入れ口である排出部4aからガスを排気口4内に引き入れながら暖かいガスが上昇する現象のことである。
【0018】
図2Aは、燃料電池スタック31とガスラインの構成例を示した模式図である。ガス関連区域ユニット12は、還元性ガス供給装置321と、還元性ガス送風装置322と、酸化性ガス供給装置331と、酸化性ガス送風装置332と、を備える。
【0019】
更にガス関連区域ユニット12には、燃料電池スタック31に接続されているガスラインとして、還元性ガスラインと酸化性ガスラインとが構成される。還元性ガスラインは配管323aと、排気管323bと、排気管323cとを有する。配管323aは、還元性ガス供給装置321と、燃料電池スタック31の燃料極とを、還元性ガス送風装置322を介して接続する。また、排気管323bは、燃料電池スタック31の燃料極と、排出部4aとを、接続する。更に、排気管323bは、分岐部N32から排気管323cに分岐する。
【0020】
酸化性ガスラインは配管333aと、排気管333bとを有する。配管333aは、酸化性ガス供給装置331と、燃料電池スタック31の酸化性ガス極とを、酸化性ガス送風装置332を介して接続する。また、排気管333bは、燃料電池スタック31の酸化性ガス料極と、排出部4aとを、接続する。換言すると、酸化性ガスの排気管333bを鉛直上方に延ばした管部領域が排気口4であり、酸化性ガスの排気管333bを鉛直上方に延ばした管部領域の下方に還元性ガスの排気管323bが接続されている。なお、本実施形態に係る酸化性ガスラインが第1流路に対応し、酸化性ガス供給装置331が第1供給装置に対応する。また、本実施形態に係る還元性ガスラインが第2流路に対応し、還元性ガス供給装置321が第2供給装置に対応する。
【0021】
燃料電池スタック31は、燃料極と、空気極とを有する燃料電池を積層して構成される。すなわち、燃料電池スタック31は、燃料電池を挟持して構成される。なお、本実施形態では、少なくとも燃料極と、空気極とを含むセルを燃料電池と称する。また、電気系システム2のコンバーターは、例えば負荷に応じて、燃料電池スタック31の発電量を調整することが可能である。
【0022】
還元性ガス供給装置321から配管323aを通じて還元性ガスが供給されるとともに、酸化性ガス供給装置331から配管333aを通じて酸化性ガスが供給される。還元性ガス供給装置321は、例えば水素タンクである。還元性ガス供給装置321には、還元性ガスとして、例えば高圧の水素が充填されている。
【0023】
酸化性ガス供給装置331は、例えば酸素タンクである。酸化性ガス供給装置331には、酸化性ガスとして、例えば高圧の酸素が充填されている。
【0024】
燃料電池スタック31では、配管323aを通じて供給される還元性ガスがアノードガスとして、燃料極111aに供給される。また、配管333aを通じて供給される酸化性ガスに含まれる酸素がカソードガスとし酸化性ガス極111bに供給される。
【0025】
燃料電池スタック31は、アノードガスとしての還元性ガスとカソードガスとしての酸素との化学反応に基づき発電する。燃料電池スタック31が有する燃料電池は、例えば固体高分子形燃料電池でもよいし、リン酸形燃料電池でもよいし、溶融塩形燃料電池でもよいし、固体酸化物形燃料電池でもよい。
【0026】
燃料電池スタック31において発電に寄与しなかった燃料ガス及び酸化性ガスは排気管323b、排気管323c、及び配気管333bを通じてそれぞれ排出される。このように、発電に寄与しなかった還元ガスの一部、もしくは全ては、排気口4を通って排気される。
【0027】
還元性ガス送風装置322は、例えばコンプレッサ、ブロアなどであり、配管323aの途中に設けられている。還元性ガス送風装置322は、配管323aを流れる還元性ガスを過給する。還元性ガス送風装置322により過給された還元性ガスは燃料電池スタック31に導入される。還元性ガスを過給することにより、燃料電池スタック31に供給される実質的な還元性ガ量を増加させることができるため、燃料電池スタック31の発電量を増加させることができる。
【0028】
酸化性ガス供給装置331は、例えばコンプレッサ、ブロアなどであり、配管333aの途中に設けられている。酸化性ガス供給装置331は配管333aを流れる酸化性ガスを過給する。酸化性ガス供給装置331により過給された酸化性ガスは燃料電池スタック31に導入される。酸化性ガスを過給することにより、燃料電池スタック31に供給される実質的な酸化性ガス量を増加させることができるため、燃料電池スタック31の発電量を増加させることができる。
【0029】
なお、還元性ガス供給装置321が貯蔵する圧縮水素が高圧である場合、所定の発電量を維持できる場合には、還元性ガス送風装置322を小型化してもよく、或いは、配置しなくてもよい。同様に、酸化性ガス供給装置331が貯蔵する酸素が高圧である場合、所定の発電量を維持できる場合には、酸化性ガス送風装置332を小型化してもよく、或いは、配置しなくてもよい。
【0030】
図2Bは、燃料電池スタック31とガスラインの別の構成例を示した模式図である。図2Bに示すように、燃料電池システム100は、ガス制御弁342と、燃焼器344と、断熱材346とを更に備える点で、図2Aの燃料電池システム100と相違する。
【0031】
ガス制御弁342は、排気口4からの逆流を防ぐ逆止弁、ガス流量を制御する流量制御装置、ガスの流量を制限するオリフィスなどの絞り、などである。ガス制御弁342は、排気管323bと排気口4との接続部に構成される。これにより、排気口4からの逆流を防ぐことが可能となる。また、ガス制御弁342は、排気管323bの上流側(燃料電池スタック31寄り)に設置してもよいし、下流側(排出部4a寄り)に設置してもよい。
【0032】
燃焼器344は、還元ガスと酸化ガスを反応させる。燃焼器344は、排気口4に設置される。例えば、水素と酸素から水が生成する反応は発熱反応であるため、還元ガスと酸化ガスを反応させる燃焼器344を排気口4に設置することで、排出部4a中のガス温度の上昇が可能となる。これにより煙突効果をより高めることが可能となる。
【0033】
断熱材346は、排出部4aの外周部に設置される。断熱材346を設置することで、排出部4a内部の温度を保持することが可能となる。これにより煙突効果をより高めることができる。さらにまた、排出部4aへのごみ混入を防ぐため、排出部4aの出口面は地面に垂直でもよいし、斜めでもよい。また、排出部4aの出口面にフィルターを入れてもよい。また、燃料電池スタック31のガス下流の配管部にドレイン水を除去する装置を接続してもよい。これにより、燃料電池スタック31から排出されるガスが含む水蒸気によるドレイ水を排出できる。
【0034】
なお、排出部4aへの排気管323bと、排気管333bとの接続は、排気管323bと、排気管333bとを合流させて、その合流させたガスラインを排出部4aに接続する方法でもよい。或いは、排出部4aと、排気管323bと、排気管333bとの端部を継手などにより接続させてもよい。或いは、排気管323bと、排気管333bとの端部が排出部4a内にあるように設置してもよい。さらに、排気管323b、及びや排気管333bの少なくも一方を延長させて排出部4a及び排気口4と同等の役割を持たせてもよい。更に、排気管323b、及びや排気管333bは、燃料電池モジュール1の中にあってもよいし、外にあってもよい。
【0035】
排出部4aは、ガス関連区域ユニット12(図1参照)の天井面にあってもよいし、燃料電池モジュール1(図1参照)の側面に沿わせてもよい。或いは、排出部4aは、別のシステム(例えば、家庭用燃料電池であれば家、移動用燃料電池であれば移動体の筐体など)に沿わせて設置させてもよい。還元性ガスの排気管323の接続例は一例であり、酸化性ガスより密度の低いガスを代わりに排気口4に接続させてもよい。或いは、還元性ガスの排気管323に加え、更に還元性ガスと異なり、且つ酸化性ガスより密度の低いガスの排気管を排気口4に接続させてもよい。
【0036】
以上が、本実施系形態の構成例の説明であるが、以下に排気管323bから供給される水素排気ガスであって、水素の燃焼をしなかったガスを含む水素排気ガスの排気口4における煙突効果による排気能力の向上について説明する。図3は、水素及び酸素の密度を示すグラフである。横軸は温度を示し、縦軸は密度を示す。
【0037】
図3に示すように、30度(℃)の外気の空気密度に対して、50~100度(℃)の高温空気の密度との差は最大0.3 kgm-3程度であるが、水素の密度との差は1.0 kgm-3以上となる。排気管323bから供給される水素排気ガスを排気口4に混ぜると、排気口4内のガスにより強い浮力が生じる。この結果、排気口4の下部のガス取り入れ口である排出部4aからガスを排気口4内に引き入れる吸引力がより増加する。
【0038】
図4は、シミュレーションモデルを示す2次元モデル図である。シミュレーションモデルでは、外気を30℃とし、排気ガスを80℃とする。さらに、排気口4の幅を1/2インチとし、高さを500ミリメートル(mm)とする。例えば、シミュレーションのガス条件Aとして、排出部4aから空気を流す。ガス条件Bとして、ガス条件Aと同量の空気ガス量に加え、水素排気ガスとして、水素含有量を3モルパーセント追加したガスを流す。
【0039】
図5は、シミュレーション結果を示す圧力コンター図である。本シミュレーション結果では排出部4aの圧力が外気より低い数値を示した。圧力が低い部分にはガスが流れ込むため、本シミュレーション結果はガス供給部にはガスを吸引する力が働くことが示唆され、煙突効果が表れていることを確認することができる。
【0040】
図6は、シミュレーションによって得られた排出部4aのガス吸引力を示す図である。横軸はシミュレーション条件を示し、縦軸は、ガス吸引力(a.u.)を示す。例えば、水素を混入させたガス条件Bでは、ガス吸引圧力が50%以上増加する。このように、排気管323bから供給される水素排気ガスを排気口4に混ぜると、一般的な運用条件では、ガス吸引圧力が50%以上増加する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る燃料電池システム100は、酸化性ガス供給装置331から燃料電池スタック31を通って排出部4aへ接続される酸化性ガスラインから排出部4aへ供給されるガスよりも低密度なガスが排出部4aへ供給されることとした。これにより、排気口4における煙突効果を増加させることが可能となる。このため、還元性ガス供給装置321及び酸化性ガス供給装置331を小型化することが可能となる。或いは、還元性ガス供給装置321及び酸化性ガス供給装置331を設置しないことが可能となる。
【0042】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1:燃料電池モジュール、4:排気口、4a:排出部、12:ガス関連区域ユニット、31:燃料電池スタック、100:燃料電池システム、321:還元性ガス供給装置、322:還元性ガス送風装置、323a:配管、323b:排気管、323c:排気管、331:酸化性ガス供給装置、333a:配気管、333b:排気管。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6