(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059301
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】モアレ発現パーティション
(51)【国際特許分類】
B41M 3/00 20060101AFI20230420BHJP
E04B 2/74 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
B41M3/00 A
E04B2/74 561H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169214
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 佑美
【テーマコード(参考)】
2H113
【Fターム(参考)】
2H113AA06
2H113BA05
2H113BA09
2H113BA18
2H113BB07
2H113BB22
2H113BB32
2H113CA34
2H113CA37
2H113CA44
2H113DA57
2H113EA06
2H113FA04
(57)【要約】
【課題】モアレをパネルの一部分に形成し、パネルを挟んだ両側に存在する人と人とのコミュニケーション空間を快適に仕切るパーティションとして活用すること。
【解決手段】
透光性基板の第1の面に繰り返しパターンである第1パターンが形成されており、第2の面にはモアレ発現用パターンである第2パターンが形成されており、このような透光性基板をパーティションとして用いる。これによって、パーティションの両側からモアレ縞が視認され、空間を快適に区切ることができる。
なお、第1パターンと第2パターンのパターンピッチが0.5mm以上、30mm以下であり、第1パターンと第2パターンのパターンの印刷部が重ね合わされた部分の透過率が54%以上、75%以下であることが望ましい。さらに、前記第1の面に形成された繰り返しパターン及び前記第2の面に形成されたモアレ発現用パターンは、フィルムに印刷されたパターンを前記透光性基板に貼り付けたものであってもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板と
前記透光性基板の第1の面に形成された繰り返しパターンである第1パターン、
前記透光性基板の第2の面に形成されたモアレ発現用パターンである第2パターン、
を備えたモアレ発現パーティションであって、
前記第1パターンと前記第2パターンのパターンピッチが0.5mm以上、30mm以下であり、
前記第1パターンと前記第2パターンのパターンの印刷部が重ね合わされた部分の透過率が54%以上、75%以下であることを特徴とするモアレ発現パーティション。
【請求項2】
請求項1に記載のモアレ発現パーティションにおいて、
前記第1の面に形成された繰り返しパターン及び前記第2の面に形成されたモアレ発現用パターンの少なくとも一方は、フィルムに印刷されたパターンを前記透光性基板に貼り付けたものである
ことを特徴とするモアレ発現パーティション。
【請求項3】
請求項1または2に記載のモアレ発現パーティションにおいて、
前記透光性基板は、2枚以上の異なる透光性基板が重ねられており、前記第1の面と前記第2の面は、前記異なる透光性基板における面である
ことを特徴とするモアレ発現パーティション。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のモアレ発現パーティションにおいて、
前記2枚以上の異なる透光性基板は、相互に平行移動が可能である
ことを特徴とするモアレ発現パーティション。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のモアレ発現パーティションにおいて、
前記2枚以上の異なる透光性基板は、相互に平行移動させる位置を規定するための切込み部を有する
ことを特徴とするモアレ発現パーティション。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のモアレ発現パーティションを含む、飛沫飛散防止用パーティション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、モアレ発現パーティションに関する。
【背景技術】
【0002】
「モアレ(またはモワレ)」とは、周期的な模様や構造を複数重ね合わせたときに、視覚的に発生する干渉縞である。また、物理学的にいうと、モアレとは二つの空間周波数のうなり現象といえる。
モアレは、様々な形態で発生するため、モアレを望ましくないものとして取り除く場合もあるが、逆に発生したモアレを有用なものとして利用する場合もある。
【0003】
例えば、特許文献1においては、偽造/複製の防止用のとしてモアレ像を作成したものとして、
「基材上に、横波である波形状万線と、前記波形状万線の背景に該波形状万線に略直交する万線パターンと、を設け、
該波形状万線は、レリーフ像を形成し、該万線パターンは、1/2ピッチ分ずらしてある潜像部と、前記潜像部以外の非潜像部と、から構成されていることを特徴とする潜像を有する画像形成体」が記載されている。
【0004】
また、特許文献2においては、
マーブリング模様等の複雑な模様をディスプレイとカメラの干渉によるモアレを用いてパターン生成を実施し、モアレで発生する複雑な図柄をアートとして利用する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4403694号公報
【特許文献2】特許第6218986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術においては、単にモアレ像を対象物の全面に顕像化することが意図されており、モアレは常に一方向のみから視認することを前提としていた。そして、モアレをパネルの一部分に形成し、パネルを挟んだ両側に存在する人と人との空間を快適に仕切るパーティションとして活用することは検討されていなかった。
【0007】
本開示の実施形態は斯かる問題を鑑みてなされたもので、人と人との間に存在し、一定の空間を仕切るパーティションにモアレを活用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、代表的な本開示の実施形態のモアレ発現パーティションの一つは、
透光性基板と
前記透光性基板の第1の面に形成された繰り返しパターン、
前記透光性基板の第2の面に形成されたモアレ発現用パターンである第2パターン、
を備えたモアレ発現パーティションである。
そして、前記第1パターンと第2パターンのパターンピッチが0.5mm以上30mm以下であり、
第1パターンと第2パターンのパターン印刷部の重ね合わせた部分の透過率が54%以上、75%以下であることを特徴とする。
【0009】
また、上記の課題を解決するために、代表的な本開示の実施形態のモアレ発現パーティションの一つは、飛沫飛散防止用パネルとして用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の実施形態は斯かる問題を鑑みてなされたもので、人と人との間に存在し、一定の空間をパーティションにモアレを活用することができる。また、パーティションを飛沫飛散防止用パネルとして活用することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施をするための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、モアレ像を発現させるためのパターンと発現したモアレの例を示す図である。
【
図2】
図2は、目視による感性評価の環境を説明する概略図である。
【
図3】
図3は、被験者が観察するサンプルの種類を示すリストである。
【
図4】
図4は、SD法による回答票の項目と回答例を示す図である。
【
図5】
図5は、主成分分析を実施した結果を示す図である。
【
図6】
図6は、主成分と予測子との関係を示す図である。
【
図7】
図7は、各予測子の目視評価への寄与度を示す図である。
【
図8】
図8は、絵柄の分類別に第1主成分及び第2主成分との関係を示す図である。
【
図9】
図9は、モアレ縞が与える印象の傾向を示す図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態におけるモアレ発現パネルの概略図である。
【
図11】
図11は、2枚の透光性基板をz軸方向、y軸方向にずらした場合の配置を示す図である。
【
図12】
図12は、第2の実施形態におけるモアレ発現用パーティションの設置手段について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態は以下に記載する実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて設計の変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も、本発明の実施の形態の範囲に含まれうるものである。
【0013】
以下では、まず、モアレ像の特徴について説明する。
【0014】
<1 モアレについて>
本開示で説明するモアレについて、
図1を参照して説明する。
図1は、モアレ像の生成に用いる(a)手前側パターンと(b)奥側パターンを示したものである。また、(c)は(a)手前側パターンと(b)奥側パターンを重ね合わせるとモアレ(モアレ縞)が発現するモアレパターンを示したものである。手前側パターンが単純な構造(ストライプパターン、格子状パターンなど)、奥側パターンを、手前側パターンの構造に対応し、かつ発現させたいモアレ縞に応じてパターン位相を動かしているパターンとすることが多い。手前側パターン・奥側パターンは逆転してもよい。
<2 モアレの設計について>
【0015】
モアレ像は、第1パターンである繰り返しパターンと、第2パターンであるモアレ発現用パターンにより発現することが可能となる。上述のように、第1パターンはストライプパターン、格子状パターンなどの単純な繰り返しパターンの構造で形成され、第2パターンは第1パターンの構造に対応し、かつ、発現したいモアレ縞に応じてパターン位相を動かしたパターンとすることができる。
【0016】
第1パターンと第2パターンは、公知のモアレ発現パターンの設計方法を活用して設計することができる。
具体的には、パターンの開口部と非開口部の距離を意味するピッチ(パターンにおける1周期の距離)を適宜に設定することにより、観察者の移動による、モアレの見え方の変化に影響を与えることができる。一例として、ピッチが細かい(つまり、1周期の距離が短い)場合には、モアレ縞が強調され、また見かけの重なりも変化しやすいため、パターンが沈んで見える効果(奥行効果)が感じられやすい。
【0017】
ピッチは、原則として、パターンの走査方向(つまり、開口部と非開口部が繰り返す方向)で定義される。例えば、第1パターンと第2パターンがストライプ模様の場合、ストライプの線の延伸方向と直交する向きにパターンが繰り返される。そのため、パターンのピッチは、パターンの線の延伸方向と直交する方向で定義される。
【0018】
また、同様に、開口部と非開口部が曲線状の領域からなり、繰り返してパターンを形成する場合には、ピッチは、パターンの繰り返す方向(曲線の延伸方向と直交する方向)に測定される。更に、開口部と非開口部が繰り返す方向が複数あるパターンの場合(例えば、チェックパターン等)、ピッチは各方向で定義されてもよく、1方向のみで定義されてもよい。
【0019】
また、ピッチが同一であっても、パターンの延伸方向(例えば、ストライプ模様の場合、直線方向)の角度は、モアレ像の変化に影響を与えることがある。例えば、パターンの延伸方向の角度によっては、観察者が移動する方向に対して、モアレが変化する速度が変わる場合がある。
【0020】
本開示の第1パターンと第2パターンのピッチは、0.5mm以上、30mm以下が好ましく、パーティションへの適用を考えると、好ましくは1mm以上、20mm以下である。この範囲にすることで、観察者の移動による発現するモアレ像の変化を視認しやすくなる。
【0021】
本開示の第1パターンと第2パターンのパターンの濃さはパーティションへの適用を考慮すると、好ましくは50%以上、100%以下である。この範囲にすることで、濃淡がはっきりするため、発現するモアレ像およびモアレ縞を認識しやすくなる。パターンの濃さは、第1パターンと第2パターンを印刷する際のインク量で決定され、第1パターンと第2パターンのそれぞれのパターンの印刷部が重ね合わされた部分の透過率と相関がある。
【0022】
以下にインク濃度、透過率(%)、ヘイズの関係を測定した結果を表1として示す。
【表1】
上記表1は以下の条件で計測したものである。
インク濃度 K単色
印刷装置 OKI カラーLEDプリンター C931dn
印刷基材 PETフィルム(KOKUYO OHPフィルム(レーザープリンタ用))
測定装置 日本電色工業 ヘ-ズ測定機NDH-20 C光源
なお、第1パターンと第2パターンが重ね合わされた場合、パターンの濃さ20~100%は、第1パターンと第2パターンのパターンの印刷部が重ね合わされた部分の透過率が15%~75%に相当し、パターンの濃さ50~100%は第1パターンと第2パターンのパターンの印刷部が重ね合わされた部分の透過率が54%~75%に相当している。
したがって、パーティションへの適用を考慮すると、第1パターンと第2パターンのパターンの印刷部が重ね合わされた部分の透過率が54%~75%であることが好ましい。
【0023】
また、本開示におけるモアレ像に発生するモアレ縞は、1つ以上5つ以下が好ましい。
【0024】
モアレ像のコントラストや明度は、第1パターン及び第2のパターンの開口部/非開口部比で調整することができる。モアレ像は、第1パターン及び第2パターンが、第1パターンと第2パターンの間にあるギャップを介して重なっているため、観察者の位置(角度)によってモアレが異なる。このとき、開口部/非開口部比が高いほど、モアレ像は明るいまま保たれやすい。開口部/非開口部比が低いほど、モアレ像は暗いまま保たれやすい傾向がある。また、開口部/非開口部比が1に近いほどモアレ像およびモアレ縞のコントラストが大きくなるため、観察者の移動に伴うモアレ像の変化が大きくなる傾向がある。
【0025】
第1パターンと第2パターンは、透光性基板の第1面とその反対側の第2面に配置することができる。透光性基板は、透明なプラスチックの板であればよく、透明性、視認性の観点からアクリル樹脂が好ましい。透光性基板の厚みとしては、自立性やハンドリング性の観点から1mm以上、8mm以下が好ましい。
【0026】
透光性基板に第1パターンと第2パターンを配置する方法としては、透光性基板にインクジェット印刷やスクリーン印刷やオフセット印刷等で直接印刷してもよいし、第1パターンと第2パターンを印刷したフィルムを透光性基板に貼付する方法でもよい。
【0027】
<3 モアレについての感性評価>
上述のように、モアレ像は、第1パターンと第2パターンを重ね合わせることによって発現させることができる。2つのパターンは所定の間隔を置いて配置することによって、観察者の視点方向が変化することによって異なるモアレ縞を視認することが可能となり、単純にモアレ縞を印刷したものとは異なる印象を与えることができる。
【0028】
この点について、
図2から
図5を参照して感性評価結果について説明する。
図2は、目視による感性評価の環境を説明する概略図である。ここで説明する感性評価では、モアレ縞を発現させる場合は、透光性のアクリル板(厚さ約5mm)の第1面と第2面にモアレを発現させるための第1パターンと第2パターンを配置する。観察者側の手前側に第1パターンを配置し、奥側にモアレ縞を発現させたいパターンに応じて位相をずらした第2パターンを配置している。
また、モアレを発現させるのではなく、モアレ縞が発現したイメージを画像で作成し、印刷したものを奥側のアクリル板に貼り付けたサンプルも準備して比較評価を行っている。(なお、イメージを貼り付けるアクリル板は、手前側でも奥側でも差は無い)
観察者は、上記のパターンが貼付されたアクリル板を約50cm離間した場所から観察し、目視評価を行うこととなる。
【0029】
図3は、被験者が観察するサンプルの種類を示すリストである。サンプルは、3種類の絵柄について、様々にパターンピッチ、パターンの濃さ、モアレ発現の有無や、発現するモアレ縞の数を変化させたものを準備し、被験者はサンプル番号の順に視認して、その印象を8種類の評価軸に沿って7段階評価を実施した。
なお、
図3に示した絵柄において、「モアレ」と表記されているのは、第1パターンと第2パターンによって、モアレ縞が発現しているものを示している。また、「ストライプ」と表記されているのは、第1パターンもしくは第2パターンのみの画像であることを示している。そして、「モアレ画像」と表記されているものは、モアレ縞が発現したイメージを画像で作成し印刷したパターンを用いたものである。
また、モアレの有無は、透光性基板に配置された第1パターンと第2パターンによって、モアレ縞が発現したか否かを示している。本開示における感性評価に用いたサンプルでは、「モアレ画像」については、モアレ縞が発現しているわけではないので、モアレの有無は「0」としており、「ストライプ」においてもモアレ縞は発生していないので、モアレの有無は「0」と表記している。。
【0030】
また、本開示における目視評価の評定尺度としては、形容詞を用いて物事のイメージを数値化し、特徴や類似品との共通点、もしくは相違点を分析するSD法(semantic differential method)を用い、評価性(Evaluation)、力量性(Potency)、活動性(Activity)の観点から評価を行っている。
具体的には、評価因子としては、きれい/きたない、華やか/地味、解放感/圧迫感、好き/嫌い、優しい/激しいを採用した。また、活動因子については、静的な/動的な、自然/人工を採用した。さらに、力量因子としては、弱い/強いを採用した。
図4はSD法による回答票の項目と回答例を示す図である。
図4に示すように、対極的な回答票により、-3,-2,-1,0,+1,+2,+3の7段階にて、集計分析を行った。
【0031】
次に、
図5を参照して、上記の目視評価について主成分分析の結果について説明する。主成分分析の結果、
図5に示すように、分布幅の大きい第1主成分として、激しい・強いから優しい・弱いに向けての要素と、分布幅の小さい第2主成分として、地味・静的から華やか・動的に向けての要素が存在することが判明した。
【0032】
さらに、主成分と予測子との関係について、
図6を参照して説明する。
図6は第1主成分のやさしさ・弱さと第2主成分の華やかさ・動的さの予測子であるパターンピッチ、パターンの濃さ、モアレ有無、モアレ縞の数、絵柄、評価者との相関を分析した結果である。分析結果からは、第1主成分のやさしさ・弱さはパターンの濃さと相関が高いことが分かる。さらに、第2主成分の華やかさ・動的さはモアレ縞の数と相関が高いことがわかる。
【0033】
次に、各予測子目視評価への寄与度について、
図7を参照して説明する。
図7は、各予測子が被験者に視覚的に訴える効果について分析したものである。
図7の結果から、絵柄(モアレ・ストライプパターン・モアレ画像)について、各予測子の寄与度が高いため、「静的な」の観点で有意な差があることがわかる。
【0034】
次に、絵柄の分類別に第1主成分及び第2主成分との関係について、
図8を参照して説明する。
図8は絵柄ごとの第1主成分・第2主成分との相関を示す図であり、それぞれの絵柄毎に横幅が広いほど該当するサンプルが多いことを示している。
図8に示すように、第1主成分については、絵柄ごとに顕著な差はみられない。
第2主成分については、ストライプパターンの領域X、モアレ画像の領域Yで示した領域で該当するサンプルがないことが示されている。
領域Xは、ストライプパターンに比べ、モアレ・モアレ画像を印刷したもののほうが華やかさ・動的さが優れていることを示している。一方、領域Yは、モアレ画像よりも、発現するモアレのほうが地味さ・静的さを表現するのに適していることを示している。
つまり、単に絵柄を印刷したフィルムよりも、モアレ縞を用いれば、より華やかさ・動的さについて繊細な表現が可能であることを示していると考えられる。
【0035】
これらの結果から、モアレ縞を活用すると、
図9に示すように、透光性基板にに配置されるサンプルに関しては、(a)パターンの濃さが薄いほうが優しい・弱い、(b)モアレが発現し、モアレ縞の数が多いほうが華やか・動的、(c)モアレ画像を印刷するよりも、実際にモアレを発現させた方が動的さ&華やかさ・静的さ&地味さが強調される、といった傾向があることが確認できる。
【0036】
<第1の実施形態>
上述したようなモアレの特性を活かし、透光性基板の第1の面及びその反対側の第2の面にそれぞれ第1パターンと第2パターンを配置することによって、透光性基板を挟んだ両側に存在する人と人との空間を快適に仕切るパーティションとして活用することができる。
【0037】
<第2の実施形態>
次に
図10を参照して、第2の実施形態について説明する。
図10は第2の実施形態におけるモアレ発現パネルの概略図である。第1の実施形態においては、1枚の透光性基板の第1の面及びその反対側の第2の面に第1パターンと第2パターンを配置したパーティションの例を説明したが、第2の実施形態においては、透光性基板を2枚(100,200)で構成する点で、第1の実施形態と異なっている。
【0038】
図10(a)は、透光性基板100及び200を側面が重なるように配置した場合の図である。第2の実施形態においては、第1パターンを配置した透光性基板と第2パターンを配置した透光性基板を用いているため、これら2枚の透光性基板の位置をずらすことによって、発現するモアレ像を変更することができる。
2枚の透光性基板の位置のずらし方には、y軸方向、z軸方向が考えられる。
図10(b)は、2枚の透光性基板をy軸方向に距離d1だけずらした場合の配置を示している。また、
図11(a)は2枚の透光性基板をz軸方向に距離d2だけずらした場合の配置を示している。さらに、
図11(b)は、2枚の透光性基板をy軸方向に距離d3だけずらし、z軸方向に距離d4だけずらした場合の配置を示している。
【0039】
第2の実施形態においては、第1パターンと第2パターンの重なりを2枚の透光性基板の位置のずらすことによって変化させることができるので、パーティションが設置された状況やニーズに合わせて発現するモアレ縞を適宜に変化させることができる。
【0040】
次に、
図12を参照して、第2の実施形態におけるモアレ発現用パーティションの設置手段について説明する。
図12は、2枚の透光性基板を立てた場合の左下隅部及び右下隅部における自立するための脚が差し込まれる透光性基板の切り込みの状況を表す概略図である。透光性基板100には、基準となる切込み101以外にy軸方向に位置をずらした切込み102,103を設けてある。また、切込み103は切込みの深さ(z軸方向)が切込み101及び102と異なっている。
一方、透光性基板200には、切込み101とy軸位置が同一の位置に切込み201が設けられている。また、切込み103とy軸位置が同一の位置に切込み201が設けられている。
このように、透光性基板に複数の切込みを設けることによって、透光性基板100の切込み101と透光性基板200の切込み201を用いて脚を固定した場合には、
図10(a)に示したように、透光性基板100及び200が完全に重なった位置で組み合わせることができる。また、透光性基板100の切込み102と透光性基板200の切込み201を組み合わせて脚を固定した場合には、
図10(b)に示したように、透光性基板100及び200がy軸方向にずれた位置で組み合わせることができる。
さらに、透光性基板100の切込み103と透光性基板200の切込み203を組み合わせて脚を固定した場合には、
図10(c)に示したように、透光性基板100及び200がy軸方向にずれた位置で組み合わせることができる。
【0041】
また、透光性基板100の切込み103と透光性基板200の切込み201を組み合わせて脚を固定した場合には、
図10(c)に示したように、透光性基板100及び200がy軸方向及びz軸方向の両方にずれた位置で組み合わせることができる。
このように、透光性基板100及び透光性基板200の重ね合わせの位相をずらすことによって、発現するモアレ縞の形状を選択することが可能となり、同一のモアレ縞の発現パターンを用いて、様々なモアレ縞をパーティションに発現させることができ、パーティションを設置する環境や用途に応じてモアレ縞を選択することができる。