(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059384
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】水処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20230420BHJP
B01D 65/08 20060101ALI20230420BHJP
C02F 1/70 20230101ALI20230420BHJP
C02F 1/76 20230101ALI20230420BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D65/08
C02F1/70 Z
C02F1/76 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169363
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】岩本 健輔
(72)【発明者】
【氏名】松友 伸司
(72)【発明者】
【氏名】濱田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】武内 誠
(72)【発明者】
【氏名】村中 貴志
(72)【発明者】
【氏名】田中 義人
【テーマコード(参考)】
4D006
4D050
【Fターム(参考)】
4D006GA03
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4D050CA20
(57)【要約】
【課題】逆浸透膜の酸化劣化を防止でき、かつ薬注にかかるコストを低減できる水処理システムを提供すること。
【解決手段】水処理システム1は、逆浸透膜モジュール17と、逆浸透膜モジュール17に給水を供給する給水ラインと、逆浸透膜モジュール17で分離された透過水W20を送出する透過水ラインL2と、濃縮排水ラインL5と、逆浸透膜モジュール17に供給される給水に安定化剤及び還元剤のうちいずれかを薬注する第1薬注手段と、第1薬注手段による安定化剤及び還元剤のうちいずれかの薬注量である第1薬注量を制御する制御部30と、逆浸透膜モジュール17で分離された透過水のハロゲン濃度を検出するハロゲン検出手段6と、を有し、制御部30は、ハロゲン検出手段6により検出されるハロゲン濃度に基づいて、第1薬注量を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜モジュールと、
前記逆浸透膜モジュールに給水を供給する給水ラインと、
前記逆浸透膜モジュールで分離された透過水を送出する透過水ラインと、
前記逆浸透膜モジュールで分離された濃縮水の一部又は全部を濃縮排水として、系外に排出する濃縮排水ラインと、
前記逆浸透膜モジュールに供給される給水に安定化剤及び還元剤のうちいずれかを薬注する第1薬注手段と、
前記第1薬注手段による前記安定化剤及び前記還元剤のうちいずれかの薬注量である第1薬注量を制御する薬注制御手段と、
前記逆浸透膜モジュールで分離された透過水のハロゲン濃度を検出するハロゲン検出手段と、を有し、
前記薬注制御手段は、前記ハロゲン検出手段により検出されるハロゲン濃度に基づいて、前記第1薬注量を制御する、水処理システム。
【請求項2】
前記薬注制御手段は、前記ハロゲン検出手段で検出されるハロゲン濃度が所定の数値以上である場合に、前記第1薬注量を増大させる制御を行う、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記給水ラインには、給水に対して次亜ハロゲン酸を薬注する、第2薬注手段が設けられ、
前記薬注制御手段は、前記ハロゲン検出手段で検出されるハロゲン濃度が所定の数値以上である場合に、前記第2薬注手段による前記次亜ハロゲン酸の薬注量である第2薬注量を低減する制御を行う、請求項1又は2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記薬注制御手段は、前記給水ラインの給水中のハロゲンのモル濃度と、前記安定化剤及び前記還元剤のうちいずれかのモル濃度とが所定の比率となるように、前記第1薬注量或いは前記第2薬注量を制御する、請求項3に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記ハロゲン検出手段は、ハロゲンと試薬との反応により発色した透過水の吸光度を測定する比色式のハロゲン検出手段である、請求項1~4のいずれかに記載の水処理システム。
【請求項6】
前記逆浸透膜モジュールに使用される逆浸透膜は、耐ハロゲン膜である、請求項1~5のいずれかに記載の水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜を用いた膜ろ過プロセスを実行する水処理システムにおいて、微生物の繁茂に由来するバイオフィルムの抑制のため、微生物を除去するための塩素系殺菌剤として次亜塩素酸ナトリウムが用いられることがある。
【0003】
例えば、特許文献1は、逆浸透膜を用いた造水方法であって、バイオフィルムの発生によるバイオファウリングの抑制のため、次亜塩素酸ナトリウムを水処理システム中の逆浸透膜に流入させる造水方法を開示している。
【0004】
次亜塩素酸ナトリウム等のハロゲン系酸化剤の添加や電気分解によりハロゲンを存在させた水を逆浸透膜で処理すると、逆浸透膜は酸化劣化する。このため、例えば特許文献2に開示されるように、逆浸透膜の前段で、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)や亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を添加して、ハロゲンを除去する技術が知られている。この他、逆浸透膜の前段で、安定化剤を添加する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-190214号公報
【特許文献2】特開平7-308671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水処理システムにおいて還元剤や安定化剤を用いる場合、ハロゲンと還元剤や安定化剤との混合不良が発生する可能性がある。また、水処理システムの給水中のハロゲン濃度が過多となる場合がある。上記のような場合に、ハロゲンが逆浸透膜に漏えいし、逆浸透膜の酸化劣化が起こるリスクがある。一方、逆浸透膜の酸化劣化を防止するために、還元剤や安定化剤を給水中に過剰に薬注することも考えられるが、薬注にかかるコストが増大する問題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、逆浸透膜の酸化劣化を防止でき、かつ薬注にかかるコストを低減できる水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、逆浸透膜モジュールと、前記逆浸透膜モジュールに給水を供給する給水ラインと、前記逆浸透膜モジュールで分離された透過水を送出する透過水ラインと、前記逆浸透膜モジュールで分離された濃縮水の一部又は全部を濃縮排水として、系外に排出する濃縮排水ラインと、前記逆浸透膜モジュールに供給される給水に安定化剤及び還元剤のうちいずれかを薬注する第1薬注手段と、前記第1薬注手段による前記安定化剤及び前記還元剤のうちいずれかの薬注量である第1薬注量を制御する薬注制御手段と、前記逆浸透膜モジュールで分離された透過水のハロゲン濃度を検出するハロゲン検出手段と、を有し、前記薬注制御手段は、前記ハロゲン検出手段により検出されるハロゲン濃度に基づいて、前記第1薬注量を制御する、水処理システムに関する。
【0009】
上記の水処理システムにおいて、前記薬注制御手段は、前記ハロゲン検出手段で検出されるハロゲン濃度が所定の数値以上である場合に、前記第1薬注量を増大させる制御を行うことが好ましい。
【0010】
上記の水処理システムにおいて、前記給水ラインには、給水に対して次亜ハロゲン酸を薬注する、第2薬注手段が設けられ、前記薬注制御手段は、前記ハロゲン検出手段で検出されるハロゲン濃度が所定の数値以上である場合に、前記第2薬注手段による前記次亜ハロゲン酸の薬注量である第2薬注量を低減する制御を行うことが好ましい。
【0011】
上記の水処理システムにおいて、前記薬注制御手段は、前記給水ラインの給水中のハロゲンのモル濃度と、前記安定化剤及び前記還元剤のうちいずれかのモル濃度とが所定の比率となるように、前記第1薬注量或いは前記第2薬注量を制御することが好ましい。
【0012】
上記の水処理システムにおいて、前記ハロゲン検出手段は、ハロゲンと試薬との反応により発色した透過水の吸光度を測定する比色式のハロゲン検出手段であることが好ましい。
【0013】
上記の水処理システムにおいて、前記逆浸透膜モジュールに使用される逆浸透膜は、耐ハロゲン膜であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る水処理システムの全体構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る水処理システムに備わる制御部の機能ブロック図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る水処理システムの全体構成図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る水処理システムに備わる制御部の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔1 第1実施形態〕
〔1.1 全体構成〕
以下、本発明の第1実施形態である水処理システム1について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の水処理システム1の全体構成図である。
【0016】
水処理システム1は、
図1に示すように、第2薬注手段としての酸化剤添加装置3と、第1薬注手段としての安定化剤添加装置4と、スケール分散剤添加装置5と、ハロゲン検出手段6と、加圧ポンプ15と、インバータ16と、逆浸透膜モジュール(以下、「RO膜モジュール」ともいう)17と、流量調整弁18と、比例制御排水弁19と、制御部30と、第1流量センサFM1と、第2流量センサFM2と、第3流量センサFM3と、を備える。なお、制御部30と被制御対象機器との電気的接続線の図示については、省略している。
【0017】
水処理システム1は、ラインとして、第1給水ラインL11及び第2給水ラインL12と、透過水ラインL2と、濃縮水ラインL3と、循環水ラインL4と、濃縮排水ラインL5と、を備える。「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。また、その由来(出所)やその水質によらず、給水ラインL1、濃縮水ラインL3又は循環水ラインL4を流通する水を、「給水」ともいい、濃縮水ラインL3、循環水ラインL4又は濃縮排水ラインL5を流通する水を、「濃縮水」ともいう。
【0018】
第1給水ラインL11及び第2給水ラインL12は、それぞれ、給水W11及びW12を逆浸透膜モジュール17に向けて供給するラインである。
【0019】
第1給水ラインL11の上流側の端部は、給水W11の水源2に接続されている。第1給水ラインL11の下流側の端部は、接続部J1において、第2給水ラインL12及び循環水ラインL4に接続されている。第1給水ラインL11には、例として、酸化剤添加装置3、安定化剤添加装置4、スケール分散剤添加装置5が、上流側から下流側に向けてこの順で設置される。上記以外に、第1給水ラインL11には、酸化剤添加装置3の上流側に、給水W11中の残留ハロゲン濃度を検出可能な、残留ハロゲン濃度検出装置が設置されていてもよい。
【0020】
なお、給水W11は、ろ過装置(不図示)によってろ過処理された処理水でもよく、水道水等の、遊離ハロゲンを含有する水であってもよい。
【0021】
第2薬注手段としての酸化剤添加装置3は、第1給水ラインL11における給水W11に酸化剤としての例えば次亜ハロゲン酸を薬注する装置である。酸化剤添加装置3は、制御部30と電気的に接続されている。酸化剤添加装置3は、給水W11に酸化剤を添加することで、RO膜モジュール17におけるバイオフィルムの析出を抑制する。上記次亜ハロゲン酸の例としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム等が挙げられる。上記以外に、酸化剤として液化塩素、さらし粉、塩素化イソシアヌル酸等を用いてもよい。上記酸化剤は、1種又は2種以上を併用して用いてもよい。
【0022】
第1薬注手段としての安定化剤添加装置4は、RO膜モジュール17に備わる逆浸透膜の劣化を防ぐために、第1薬剤として安定化剤を添加する。安定化剤の添加により、例えば給水W11に含まれる次亜ハロゲン酸は、安定化次亜ハロゲン酸になる。RO膜モジュール17において、逆浸透膜の劣化を効果的に抑制可能なことから、安定化剤の例としては、アミン系化合物、例えばスルファミン酸系化合物等の安定化剤が挙げられる。
【0023】
上記安定化剤は、給水W11に次亜塩素酸が含まれる場合、更に臭化ナトリウム等の臭素化合物を含んでいてもよい。臭素化合物により、先ず、次亜塩素酸が還元されると共に次亜臭素酸が生成される。次に、生成された次亜臭素酸は、スルファミン酸系化合物等の安定化剤と反応し、安定化次亜臭素酸となる。これにより、安定化次亜塩素酸を生成する場合と比較して、ROモジュール17に備わる逆浸透膜へのダメージを少なくすることが可能となる。なお、給水W11に臭化物イオン等の臭素源が含まれる場合、上記安定化剤に臭素化合物は含まれていなくてもよい。或いは、次亜塩素酸と臭素化合物を別々に添加してもよい。
【0024】
更に、上記安定化剤は、スルファミン酸系化合物と結合したハロゲンを含んでもよい。すなわち、安定化剤の中に、安定化ハロゲン形態の成分と、余剰分のスルファミン酸系化合物とを含んでいてもよい。これにより、安定化次亜塩素酸、安定化次亜臭素酸に加えて、安定化ハロゲン酸塩を殺菌剤として用いることが可能となる。
【0025】
スケール分散剤添加装置5は、ROモジュール17におけるシリカ・硬度成分等のスケールの生成を抑制するために、第1給水ラインL11における給水W11にスケール分散剤を添加する。スケール分散剤の例としては、金属イオンに対する封鎖、分散作用を有するキレート剤、及び/又は低分子ポリマーが挙げられる。
【0026】
第2給水ラインL12の上流側の端部は、接続部J1に接続されている。第2給水ラインL12の下流側の端部は、ROモジュール17の一次側入口ポートに接続されている。第2給水ラインL12には、加圧ポンプ15が設けられる。
【0027】
加圧ポンプ15は、給水W12を吸入し、ROモジュール17に向けて圧送(吐出)する装置である。加圧ポンプ15には、インバータ16から周波数が変換された駆動電力が供給される。加圧ポンプ15は、供給(入力)された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
【0028】
インバータ16は、加圧ポンプ15に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路(又はその回路を持つ装置)である。インバータ16は、制御部30と電気的に接続されている。インバータ16には、制御部30から指令信号が入力される。インバータ16は、制御部30により入力された指令信号(電流値信号又は電圧値信号)に対応する駆動周波数の駆動電力を加圧ポンプ15に出力する。
【0029】
給水W12は、加圧ポンプ15を介してROモジュール17に供給される。また、給水W12は、給水W11及び後述する循環水W40からなる。
【0030】
ROモジュール17は、給水W12を透過水W20と濃縮水W30とに分離する設備である。詳細には、ROモジュール17は、加圧ポンプ15から吐出された給水W12を、溶存塩類が除去された透過水W20と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W30とに膜分離処理する設備である。ROモジュール17は、単一又は複数の逆浸透膜エレメント(図示せず)を備える。ROモジュール17は、これら逆浸透膜エレメントにより給水W12を膜分離処理し、透過水W20と濃縮水W30とを製造する。
【0031】
ROモジュール17における逆浸透膜は、耐ハロゲン膜であることが好ましい。これにより、後述するハロゲン検出手段6により透過水W20中にハロゲンが検出された場合であっても、給水W11中のハロゲンを低下させる制御を適用するまでの間、逆浸透膜の劣化を抑制することができる。耐ハロゲン膜としては、例えば、ポリアミド系、酢酸セルロース系等の材料を用いて製造されるものが挙げられる。上記耐ハロゲン膜としては、市販品を用いることができる。ポリアミド系の耐ハロゲン膜としては、例えば、TM720D-440(商品名、東レ社製)等が挙げられる。酢酸セルロース系の耐ハロゲン膜としては、例えば、HA3110(商品名、東洋紡社製)、SC4201(商品名、東レ社製)等が挙げられる。酢酸セルロース系の耐ハロゲン膜は、素材特性から耐ハロゲン性が高いため、本実施形態に係る水処理システム1は、ハロゲン濃度の管理に対してより注意を要するポリアミド系の耐ハロゲン膜を逆浸透膜として使用する際により好適である。
【0032】
透過水ラインL2は、ROモジュール17で分離された透過水W20を送出するラインである。透過水ラインL2の上流側の端部は、逆浸透膜モジュール17の二次側ポートに接続されている。透過水ラインL2の下流側の端部は、貯留タンク(図示せず)に接続されている。透過水ラインL2には、ハロゲン検出手段6と、第1流量センサFM1と、が設置される。
【0033】
ハロゲン検出手段6は、透過水W20中のハロゲン濃度を測定する。ハロゲン検出手段6は、例えば、透過水W20中の遊離塩素や遊離臭素等の遊離ハロゲンを含むハロゲンの総量を測定可能である。給水W12中に遊離ハロゲンが含まれる場合、遊離ハロゲンはROモジュール17に形成されたバイオフィルムと結合することで消費され、これによりバイオフィルムの形成が抑制される。しかし、給水W12中に含まれる遊離ハロゲンの総量が、上記バイオフィルムの形成を抑制するための必要量に対して過剰である場合、遊離ハロゲンがROモジュール17の逆浸透膜に到達し、逆浸透膜の劣化が起こる恐れがある。逆浸透膜に到達した過剰な遊離ハロゲンは分子量が小さいことから逆浸透膜を透過する。ハロゲン検出手段6により、ROモジュール17の逆浸透膜を透過する遊離ハロゲンを含むハロゲンの総量を検出できる。従って、給水W11に対して添加される酸化剤と第1薬剤の量を最適化する制御が可能になる。
【0034】
ハロゲン検出手段6の具体例としては、例えば、ハロゲンと試薬との反応により発色した透過水の吸光度を測定する比色式のハロゲン検出手段であることが好ましい。具体的には、上記比色式のハロゲン検出手段6は、所定の間隔をあけて間欠的に透過水ラインL2から透過水W20の一部を採取し、採取した透過水W20に呈色試薬を添加して発色させ、この発色した透過水W20の吸光度を測定することで、透過水W20のハロゲン濃度を測定する。ハロゲン検出手段6として比色式のハロゲン検出手段を適用することで、電気伝導度が低い透過水W20に対しても、精度良くハロゲン濃度を測定することができる。また、比色式のハロゲン検出手段は、透過水W20にクロラミン等の低分子量の結合性ハロゲンが混在している場合であっても、遊離ハロゲンの総量を選択的に測定することができるため好ましい。このような比色式のハロゲン検出手段としては、公知のものを用いることができる。ハロゲン検出手段6としては、比色式のハロゲン検出手段以外に、ポーラログラフ電極、酸化還元電位計(ORP計)等を用いることも可能ではあるが、透過水W20の電気伝導度の影響を受け難く、正確な測定を行えることから、ハロゲン検出手段6としては、比色式のハロゲン検出手段を用いることが最も好ましい。
【0035】
第1流量センサFM1は、透過水ラインL2を流通する透過水W20の流量を第1検出流量値として検出する機器である。第1流量センサFM1は、制御部30と電気的に接続されている。第1流量センサFM1で検出された透過水W20の第1検出流量値は、制御部30へパルス信号として送信される。第1流量センサFM1として、例えば、流路ハウジング内に軸流羽根車又は接線羽根車(不図示)を配置したパルス発信式の流量センサを用いることができる。
【0036】
濃縮水ラインL3は、ROモジュール17で分離された濃縮水W30が流通するラインである。濃縮水ラインL3の上流側の端部は、ROモジュール17の二次側ポートに接続されている。また、濃縮水ラインL3の下流側は、接続部J2において、循環水ラインL4及び濃縮排水ラインL5に分岐している。
【0037】
循環水ラインL4は、濃縮水ラインL3に接続され、給水としての濃縮水(循環水W40)を第2給水ラインL12に返送するラインである。本実施形態においては、循環水ラインL4は、濃縮水ラインL3を流通する濃縮水W30を循環水W40として、第2給水ラインL12における加圧ポンプ15よりも上流側に返送(循環)するラインである。循環水ラインL4の上流側の端部は、接続部J2において濃縮水ラインL3に接続されている。また、循環水ラインL4の下流側の端部は、接続部J1において、第2給水ラインL12に接続されている。循環水ラインL4には、流量調整弁18と、第2流量センサFM2とが設けられる。
【0038】
流量調整弁18は、循環水ラインL4を流通する循環水W40の流量を調整する弁である。流量調整弁18は、当該流量調整弁18における差圧によらず、実質的に定流量の循環水W40を流通させる定流量要素と、当該流量調整弁18における差圧に実質的に比例して循環水W40の流量が高くなる比例要素とを備える。流量調整弁18における差圧は、具体的には、流量調整弁18の前後のラインの水圧の差圧である。定流量要素は、補助動力や外部操作を必要とせずに一定流量値を保持し、例えば水ガバナの名称で呼ばれるものを用いてもよい。また、比例要素としては、例えばオリフィスの名称で呼ばれるものを用いてもよく、オリフィスから流れる循環水W40の流量が、当該流量調整弁18における差圧に比例する。
【0039】
なお、流量調整弁18に代えて、定流量弁を用いてもよい。定流量弁は、循環水ラインL4を流通する循環水W40の流量を所定の一定流量値に保持するように調節する機器である。定流量弁において保持される「一定流量値」とは、一定流量値に幅がある概念であり、定流量弁における目標流量値のみに限られない。例えば、定流量機構の特性(例えば、材質や構造に起因する温度特性等)を考慮して、定流量弁における目標流量値に対して、±10%程度の調節誤差を有するものを含む。定流量弁は、補助動力や外部操作を必要とせずに一定流量値を保持するものであり、例えば、水ガバナの名称で呼ばれるものが挙げられる。なお、定流量弁は、補助動力や外部操作により動作して、一定流量値を保持するものでもよい。
【0040】
第2流量センサFM2は、循環水ラインL4を流通する循環水W40の流量を第2検出流量値として検出する機器である。第2流量センサFM2は、制御部30と電気的に接続されている。第2流量センサFM2で検出された循環水W40の第2検出流量値は、制御部30へパルス信号として送信される。第1流量センサFM1と同様、第2流量センサFM2として、例えば、流路ハウジング内に軸流羽根車又は接線羽根車(不図示)を配置したパルス発信式の流量センサを用いることができる。
【0041】
濃縮排水ラインL5は、濃縮水ラインL3に接続され、濃縮排水W50としての濃縮水を系外へ排出するラインである。本実施形態においては、濃縮排水ラインL5は、接続部J2において濃縮水ラインL3に接続され、ROモジュール17で分離された濃縮水W30を、濃縮排水W50として装置外(系外)に排出するラインである。濃縮排水ラインL5には、比例制御排水弁19と第3流量センサFM3とが設けられる。
【0042】
比例制御排水弁19は、濃縮排水ラインL5から装置外に排出される濃縮排水W50の流量を調節する弁である。比例制御排水弁19は、制御部30と電気的に接続されている。比例制御排水弁19の弁開度は、制御部30から送信される駆動信号により制御される。制御部30から電流値信号(例えば、4~20mA)を比例制御排水弁19に送信して、弁開度を制御することにより、濃縮排水W50の排水流量を調節することができる。
【0043】
第3流量センサFM3は、濃縮排水W50の排水流量を第3検出流量値として検出する機器である。第3流量センサFM3は、制御部30と電気的に接続されている。第3流量センサFM3で検出された濃縮排水W50の第3検出流量値は、制御部30へパルス信号として送信される。第1流量センサFM1と同様、第3流量センサFM3として、例えば、流路ハウジング内に軸流羽根車又は接線羽根車(不図示)を配置したパルス発信式の流量センサを用いることができる。
【0044】
薬注制御手段としての制御部30は、給水W11に対する第1薬注量及び第2薬注量を制御する。制御部30は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(図示せず)により構成される。制御部30において、マイクロプロセッサのCPUは、メモリから読み出した所定のプログラムに従って、水処理システム1に係る各種の制御を実行する。以下、制御部30の機能の一部について説明する。
【0045】
図2は、制御部30の機能ブロック図である。制御部30は、安定化剤薬注制御部301と、酸化剤薬注制御部302と、薬注量算出部303と、分散剤薬注制御部304と、を備える。
【0046】
安定化剤薬注制御部301は、ハロゲン検出手段6により透過水W20において検出されるハロゲン濃度が所定の数値以上である場合に、透過水W20中のハロゲン濃度に応じて、給水W11における第1薬注量を増大させる制御を行う。すなわち、安定化剤添加装置4による、給水W11に対する安定化剤の薬注量を増大させる制御を行う。上記透過水W20において検出される所定のハロゲン濃度は、例えば0.002mmol/L以下とすることができる。上記以外に、安定化剤薬注制御部301は、透過水W20から検出されるハロゲン濃度がゼロであり、かつ、ROモジュール17の逆浸透膜の汚染が増大していると推定される場合に、予め定められた範囲内で安定化剤の薬注量を低減する制御を行ってもよい。上記逆浸透膜の汚染は、第1流量センサFM1によって検出される透過水W20の水温補正を行った流量或いは透過流束の低下、又はROモジュール17の逆浸透膜の膜間差圧の増大により推定される。ROモジュール17の逆浸透膜の膜間差圧は、例えば、ROモジュール17の一次側入口での給水W12の圧力、及びROモジュール17の二次側での濃縮水W30の圧力を、圧力センサ等により測定することで算出することができる。
【0047】
安定化剤薬注制御部301は、給水W11におけるハロゲンのモル濃度に対する、安定化剤のモル濃度が所定の比率となるように、安定化剤添加装置4による、給水W11に対する安定化剤の薬注量を制御する。上記モル濃度比は、例えば、ハロゲン1モル濃度に対する安定化剤のモル濃度を1~3とすることができる。上記モル濃度比は、1.5~3としてもよい。安定化剤添加後の混合状態によるが、上記モル濃度比の下限値を1.5とすることで、ハロゲンが安定化され、ROモジュール17を透過することを防止できる。一方、上記モル濃度比の下限値は、ハロゲン検出手段6により透過水W20からハロゲンが検出されない場合、1未満とすることもできる。これにより、逆浸透膜を透過しない程度に給水W11中のハロゲンの総量が増大することで、ROモジュール17におけるバイオフィルムの形成を抑制することができ、かつ安定化剤の薬注量を低減することができる。
【0048】
安定化剤薬注制御部301は、以下説明する薬注量算出部303により算出された安定化剤の増加量に基づき、安定化剤の薬注量を制御してもよいし、ハロゲン検出手段6により検出された透過水W20中のハロゲン濃度が所定の閾値を超えた場合に、予め定められた量の安定化剤を追加するように、安定化剤の薬注量を制御してもよい。
【0049】
酸化剤薬注制御部302は、安定化剤薬注制御部301と同様に、給水W11におけるハロゲンのモル濃度に対する、安定化剤のモル濃度が所定の比率となるように、酸化剤添加装置3による、給水W11に対する次亜ハロゲン酸の薬注量を制御する。即ち、ハロゲン検出手段6により透過水W20において検出されるハロゲン濃度が所定の数値以上である場合に、透過水W20中のハロゲン濃度に応じて、給水W11における第2薬注量を低減する制御を行う。上記以外に、酸化剤薬注制御部302は、透過水W20から検出されるハロゲン濃度がゼロであり、かつ、上記したようにROモジュール17の逆浸透膜の汚染が増大していると推定される場合に、予め定められた範囲内で次亜ハロゲン酸の薬注量を増大させる制御を行ってもよい。
【0050】
酸化剤薬注制御部302は、以下説明する薬注量算出部303により算出された次亜ハロゲン酸の低減量に基づき、次亜ハロゲン酸の薬注量を制御してもよいし、ハロゲン検出手段6により検出された透過水W20中のハロゲン濃度が所定の閾値を超えた場合に、予め定められた量の次亜ハロゲン酸の薬注量を低減するように、次亜ハロゲン酸の薬注量を制御してもよい。
【0051】
制御部30において、透過水W20において検出されるハロゲン濃度が所定の数値以上である場合に、安定化剤薬注制御部301により、給水W11における第1薬注量を増大させる制御を行うか、酸化剤薬注制御部302により、給水W11における第2薬注量を低減する制御を行うか、両者を並行して行うかは任意である。しかし、薬注量を低減できることから、給水W11における第2薬注量を低減する制御を優先的に行うことが好ましい。
【0052】
薬注量算出部303は、ハロゲン検出手段6により検出される透過水W20中のハロゲン濃度に基づき、給水W11に対して添加すべき安定化剤及び次亜ハロゲン酸の薬注量を算出する。薬注量算出部303は、例えば、透過水W20中のハロゲン濃度に基づき、給水W11に対して添加される安定化剤の増加量、又は次亜ハロゲン酸の低減量を算出する。そして、給水W11中のハロゲン濃度1モル濃度に対し、安定化剤が1~3モル濃度の範囲となるように、給水W11に対する安定化剤の増加量、又は次亜ハロゲン酸の低減量を算出する。上記モル濃度の範囲の下限値は、1.5としてもよく、1未満としてもよい。上記安定化剤の増加量、又は次亜ハロゲン酸の低減量は、給水W11の流量に基づき算出される。給水W11の流量は、例えば、第1流量センサFM1によって検出される透過水W20の流量と第3流量センサFM3によって検出される濃縮排水W50の流量との合計値として算出できる。なお、循環水W40の流量は、第2流量センサFM2によって検出される。
【0053】
分散剤薬注制御部304は、スケール分散剤添加装置5による給水W11へのスケール分散剤の薬注を制御する。分散剤薬注制御部304は、例えば、原水のカルシウム濃度やシリカ濃度に応じて、スケール分散剤の薬注量を制御してもよい。例えば、原水中のカルシウム濃度やシリカ濃度が上昇した場合、分散剤薬注制御部304は、スケール分散剤の添加量を増大させる制御を行ってもよい。
【0054】
〔1.2 第1実施形態の動作〕
以下、第1実施形態に係る水処理システム1の動作について説明する。水源2から給水W11が第1給水ラインL11に供給されると、給水W11に対して、酸化剤薬注制御部302の制御により、第2薬注手段としての酸化剤添加装置3から、次亜ハロゲン酸が薬注される。次に、給水W11に対して、安定化剤薬注制御部301の制御により、安定化剤添加装置4から、安定化剤が薬注される。この際に、次亜ハロゲン酸及び安定化剤の薬注量は、透過水W20中のハロゲン濃度に基づいて制御されると共に、給水W11中のハロゲンのモル濃度と、安定化剤のモル濃度とが所定範囲内の比率となるように制御される。
【0055】
次に、給水W11に対して、分散剤薬注制御部304の制御により、スケール分散剤添加装置5から、スケール分散剤が薬注される。これにより、ROモジュール17におけるシリカ・硬度成分等のスケールの生成を抑制することができる。
【0056】
接続部J1において、第1給水ラインL11を流通する給水W11と、循環水ラインL4を流通する循環水W40が合流し、第2給水ラインL12に対して給水W12として流入する。給水W12は、インバータ16から周波数が変換された駆動電力が供給される加圧ポンプ15により、ROモジュール17に向けて圧送(吐出)される。
【0057】
ROモジュール17に向けて圧送(吐出)された給水W12は、ROモジュール17において、溶存塩類が除去された透過水W20と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W30とに膜分離処理される。ROモジュール17で膜分離処理された透過水W20は、ROモジュール17の二次側ポートに接続される透過水ラインL2により送出される。
【0058】
一方、逆浸透膜モジュール17で膜分離処理された濃縮水W30は、逆浸透膜モジュール17の二次側ポートに接続される濃縮水ラインL3に流入する。濃縮水ラインL3に流入した濃縮水W30は、接続部J2において、循環水ラインL4を流通する循環水W40と、濃縮排水ラインL5を流通する濃縮排水W50とに分離される。
【0059】
循環水ラインL4に流入した循環水W40の流量は、流量調整弁18又は定流量弁により所定の流量値に調整される。循環水W40は、接続部J1まで返送される。濃縮排水ラインL5に流入した濃縮排水W50の流量は、比例制御排水弁19により調節される。比例制御排水弁19を経由した濃縮排水W50は、系外に排出される。
【0060】
透過水W20中のハロゲン濃度が目標値よりも過剰である場合に、水処理システム1を停止或いは系内の水を入れ替える際には、先ず、給水W11に対する酸化剤添加装置3による次亜ハロゲン酸の薬注を停止する。次に、循環水ラインL4への循環水W40の流入を停止し、濃縮水W30を全て濃縮排水W50として排水する。この状態として所定時間が経過した後に、水処理システム1の各装置を停止する。これにより、水処理システム1の停止時にROモジュール17の逆浸透膜にハロゲンが到達することを防止できる。上記酸化剤添加装置3による次亜ハロゲン酸の薬注の停止に代えて、還元剤の添加により、給水W11に含まれるハロゲンを除去してもよい。
【0061】
〔1.3 第1実施形態が奏する効果〕
上述した本実施形態に係る水処理システム1によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
【0062】
水処理システム1は、ROモジュール17で分離された透過水W20のハロゲン濃度を検出するハロゲン検出手段6を有し、制御部30は、ハロゲン検出手段6により検出されるハロゲン濃度に基づいて、安定化剤添加装置4による安定化剤の薬注量を制御する。ROモジュール17をハロゲンが透過している場合、ハロゲンの逆浸透膜への到達が明らかであり、ハロゲンによる逆浸透膜の劣化が懸念される。しかし、上記構成により、逆浸透膜をハロゲンが透過している場合に、透過しているハロゲン濃度を検出して薬注量を制御できる。このため、薬注量の最適化が可能となり、逆浸透膜の劣化を抑制し、かつ薬注にかかるコストを低減できる。
【0063】
制御部30は、ハロゲン検出手段6により検出されるハロゲン濃度が所定の数値以上である場合に、安定化剤添加装置4による安定化剤の薬注量を増大させる制御を行うことが好ましい。これにより、透過水W20のハロゲン濃度が予定の数値以上である場合に、安定化剤の薬注量を増大させることで、透過水W20のハロゲン濃度を低減できるため、逆浸透膜の劣化を抑制できる。
【0064】
水処理システム1の第1給水ラインL11には、給水W11に対して次亜ハロゲン酸を薬注する、酸化剤添加装置3が設けられ、制御部30は、ハロゲン検出手段6により検出されるハロゲン濃度が所定の数値以上である場合に、酸化剤添加装置3による次亜ハロゲン酸の薬注量を低減する制御を行うことが好ましい。これにより、透過水W20のハロゲン濃度が予定の数値以上である場合に、次亜ハロゲン酸の薬注量を低減することで、透過水W20のハロゲン濃度を低減できるため、逆浸透膜の劣化を抑制できる。また、薬注に係るコストを低減できる。
【0065】
制御部30は、給水W11中のハロゲンのモル濃度と、安定化剤のモル濃度とが所定の比率となるように、安定化剤の薬注量を制御する。これにより、予め設定された適切なモル比の範囲内で給水中のハロゲン濃度と安定化剤等の濃度が制御されるため、透過水W20へのハロゲンの漏出リスクを低減できる。
【0066】
ハロゲン検出手段6は、ハロゲンと試薬との反応により発色した透過水の吸光度を測定する比色式のハロゲン検出手段であることが好ましい。これにより、電気伝導度が低く、クロラミン等の結合性ハロゲンが混在している可能性がある透過水W20のハロゲン濃度を正確に測定できる。
【0067】
ROモジュール17に使用される逆浸透膜は、耐ハロゲン膜であることが好ましい。これにより、透過水W20中にハロゲンが検出された場合に、水処理システム1の運転を所定時間続行しても逆浸透膜の劣化を抑制できる。
【0068】
〔2 第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態である水処理システム1Aについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第2実施形態に係る水処理システム1Aが備える構成要素のうち、第1実施形態に係る水処理システム1が備える構成要素と同一の構成要素については同一の符号を用いて示し、説明を省略する場合がある。
【0069】
図3は、本発明の水処理システム1Aの全体構成図である。水処理システム1Aは、水処理システム1とは異なり、酸化剤添加装置3及び安定化剤添加装置4を備えず、第1薬注手段としての還元剤添加装置4Aを備える。
【0070】
第1薬注手段としての還元剤添加装置4Aは、第1給水ラインL11に還元剤を添加する装置である。還元剤添加装置4Aは、制御部30Aと電気的に接続されている。還元剤添加装置4Aは、ROモジュール17に備わる逆浸透膜の劣化を防ぐために、給水W11中のハロゲンを還元する還元剤を添加する。還元剤の例としては、SBS(NaHSO3:重亜硫酸ソーダ)、亜硫酸ソーダ、チオ硫酸ソーダ、亜硫酸ガス等の還元剤が挙げられる。
【0071】
図4は、制御部30Aの機能ブロック図である。制御部30Aは、制御部30が備える酸化剤薬注制御部302を備えず、安定化剤薬注制御部301に代えて還元剤薬注制御部301Aを、薬注量算出部303に代えて薬注量算出部303Aを、それぞれ備える。
【0072】
還元剤薬注制御部301Aは、ハロゲン検出手段6により透過水W20において検出されるハロゲン濃度が所定の数値以上である場合に、透過水W20中のハロゲン濃度に応じて、給水W11における第1薬注量を増大させる制御を行う。すなわち、還元剤添加装置4Aによる、給水W11に対する還元剤の薬注量を増大させる制御を行う。上記透過水W20において検出される所定のハロゲン濃度は、例えば0.002mmol/L以下とすることができる。上記以外に、還元剤薬注制御部301Aは、透過水W20から検出されるハロゲン濃度がゼロであり、かつ、ROモジュール17の逆浸透膜の汚染が増大していると推定される場合に、予め定められた範囲内で還元剤の薬注量を低減する制御を行ってもよい。
【0073】
還元剤薬注制御部301Aは、給水W11におけるハロゲンのモル濃度に対する、還元剤のモル濃度が所定の比率となるように、還元剤添加装置4Aによる、給水W11に対する還元剤の薬注量を制御する。上記モル濃度比は、例えば、ハロゲン1モル濃度に対する還元剤のモル濃度を1~5とすることができる。上記モル濃度比は、1.5~3としてもよい。還元剤添加後の混合状況によるが、上記モル濃度比の下限値を1.5とすることで、ハロゲンが還元され、ROモジュール17を透過することを防止できる。一方、上記モル濃度比の下限値は、ハロゲン検出手段6により透過水W20からハロゲンが検出されない場合、1未満とすることもできる。
【0074】
還元剤薬注制御部301Aは、以下説明する薬注量算出部303Aにより算出された還元剤の増加量に基づき、還元剤の薬注量を制御してもよいし、ハロゲン検出手段6により検出された透過水W20中のハロゲン濃度が所定の閾値を超えた場合に、予め定められた量の還元剤を追加するように、還元剤の薬注量を制御してもよい。
【0075】
薬注量算出部303Aは、ハロゲン検出手段6により検出される透過水W20中のハロゲン濃度に基づき、給水W11に対して添加すべき還元剤の薬注量を算出する。薬注量算出部303Aは、例えば、透過水W20中のハロゲン濃度に基づき、給水W11に対して添加される還元剤の増加量を算出する。そして、給水W11中のハロゲン濃度1モル濃度に対し、還元剤が1~5モル濃度の範囲となるように、給水W11に対する還元剤の増加量を算出する。上記モル濃度の範囲の下限値は、1.5としてもよく、1未満としてもよい。上記還元剤の増加量は、給水W11の流量に基づき算出される。
【0076】
上記の通り、第1薬注手段として還元剤添加装置4Aを用いる水処理システム1Aにおいても、水処理システム1と同様の効果が得られる。
【0077】
〔3 変形例〕
〔3.1 変形例1〕
上記の実施形態に係る水処理システム1、1Aにおいて、ハロゲン検出手段6はROモジュール17の後段の透過水W20中のハロゲン濃度を検出するものである。上記ハロゲン検出手段6に代えて、第1給水ラインL11における安定化剤添加装置4、或いは安定化剤添加装置4Aの後段のハロゲン濃度を検出するハロゲン検出手段を設けてもよい。これにより、水処理システムのより前段における給水中のハロゲン濃度の検出結果に応じ、薬注量を制御することが可能となるため、ハロゲン検出時に応答性良く薬注量を制御できる。該ハロゲン検出手段の前段には、測定の妨害物質となる結合性ハロゲンを分離するための逆浸透膜を設けることが好ましい。
【0078】
〔3.2 変形例2〕
上記の実施形態に係る水処理システム1、1Aにおいて、ハロゲン検出手段6に代えて、濃縮排水ラインL5におけるハロゲン濃度を検出するハロゲン検出手段を設けてもよい。これにより、ROモジュール17にバイオフィルムが形成されている場合であっても、バイオフィルムと結合することでハロゲンが消費されていない濃縮水のハロゲン濃度の検出結果に応じ、薬注量を制御することが可能となる。これにより、上記ハロゲン検出手段の測定精度を向上できる。上記ハロゲン検出手段の前段には、測定の妨害物質となる結合性ハロゲンを分離するための逆浸透膜を設けることが好ましい。
【0079】
〔3.3 変形例3〕
上記の第1実施形態を、水源2から供給される給水W11に対して、酸化剤添加装置3により次亜ハロゲン酸が薬注される水処理システム1として説明したが、これには限定されない。水処理システム1は、給水W11に対して、次亜ハロゲン酸等の酸化剤を薬注しなくてもよい。これに代えて、原水の残留ハロゲン濃度に変動があるような場合には、残留塩素濃度計を安定化剤添加装置4の前段に設けてもよい。また、ろ過装置及び/又は軟水装置を酸化剤添加装置3の前段に設けてもよい。これにより、給水W11中のハロゲン濃度を正確に把握できる。
【0080】
〔3.4 変形例4〕
上記の実施形態に係る水処理システム1、1Aにおいて、第1薬注手段である安定化剤添加装置4又は還元剤添加装置4Aの後段に、混合手段を設けてもよい。混合手段により、給水W11中のハロゲンと安定化剤又は還元剤の均一化が促進されるため、安定化剤又は還元剤の薬注量を低減することができる。混合手段としては、特に限定されないが、例えば、ミキサー等の装置であってもよいし、給水W11を構成する配管等の経路に曲げ部を設けることにより、給水W11に乱流を発生させるものであってもよい。
【0081】
〔3.5 変形例5〕
上記の実施形態に係る水処理システム1、1Aにおいて、第1薬注手段である安定化剤添加装置4又は還元剤添加装置4A、及び第2薬注手段である酸化剤添加装置3は、薬注開始時及び/又は薬注量を増大させる際に、薬注量の吐出量を一時的に増大させる加速薬注を行うものであってもよい。これにより、給水W11中のハロゲンと安定化剤又は還元剤の均一化が促進されると共に、薬注の応答遅れが改善され、迅速に適切な量の薬注を行うことができる。
【0082】
〔3.6 変形例6〕
上記の実施形態に係る水処理システム1、1Aにおいて、第1薬注手段である安定化剤添加装置4又は還元剤添加装置4A、及び第2薬注手段である酸化剤添加装置3は、薬剤の吐出不良を検知するための吐出量チェッカを有していてもよい。
【0083】
〔3.7 変形例7〕
上記の実施形態に係る水処理システム1、1Aを、循環水ラインL4を有するものとして説明したが、上記に限定されない。水処理システム1、1Aは、循環水ラインを有さず、濃縮水を全て濃縮排水として系外に排出するものであってもよい。
【0084】
〔3.8 変形例8〕
上記の実施形態に係る水処理システム1、1Aにおいて、透過水W20の電気伝導度、及びシリカ濃度のうち少なくともいずれかを測定する測定手段を設けてもよい。RO膜の劣化が進行している場合、透過水W20の電気伝導度やシリカ濃度が増加する。このため、上記測定手段によって、RO膜の劣化状況を把握できる。更に、上記測定手段によって把握したRO膜の劣化状況に応じて、酸化剤添加装置3による酸化剤の薬注量や、安定化剤添加装置4による安定化剤の薬注量を変更してもよい。
【符号の説明】
【0085】
1、1A 水処理システム
3 酸化剤添加装置(第2薬注手段)
4 安定化剤添加装置(第1薬注手段)
4A 還元剤添加装置(第1薬注手段)
6 ハロゲン検出手段
17 逆浸透膜モジュール
30、30A 制御部(薬注制御手段)
L11 第1給水ライン(給水ライン)
L12 第2給水ライン(給水ライン)
L2 透過水ライン
L5 濃縮排水ライン