IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

特開2023-59466中心位置計測装置および中心位置計測方法
<>
  • 特開-中心位置計測装置および中心位置計測方法 図1
  • 特開-中心位置計測装置および中心位置計測方法 図2
  • 特開-中心位置計測装置および中心位置計測方法 図3
  • 特開-中心位置計測装置および中心位置計測方法 図4
  • 特開-中心位置計測装置および中心位置計測方法 図5
  • 特開-中心位置計測装置および中心位置計測方法 図6
  • 特開-中心位置計測装置および中心位置計測方法 図7
  • 特開-中心位置計測装置および中心位置計測方法 図8
  • 特開-中心位置計測装置および中心位置計測方法 図9
  • 特開-中心位置計測装置および中心位置計測方法 図10
  • 特開-中心位置計測装置および中心位置計測方法 図11
  • 特開-中心位置計測装置および中心位置計測方法 図12
  • 特開-中心位置計測装置および中心位置計測方法 図13
  • 特開-中心位置計測装置および中心位置計測方法 図14
  • 特開-中心位置計測装置および中心位置計測方法 図15
  • 特開-中心位置計測装置および中心位置計測方法 図16
  • 特開-中心位置計測装置および中心位置計測方法 図17
  • 特開-中心位置計測装置および中心位置計測方法 図18
  • 特開-中心位置計測装置および中心位置計測方法 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059466
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】中心位置計測装置および中心位置計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
G01B11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169502
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高岡 正成
(72)【発明者】
【氏名】宮 啓之
(72)【発明者】
【氏名】アジラン アブドラ アリ アブドラ
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA17
2F065BB05
2F065DD06
2F065FF11
2F065FF41
2F065GG04
2F065HH04
2F065LL16
2F065PP12
2F065UU04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】球状反射器を測定対象の中心に正確かつ簡易に合わせることを可能とする。
【解決手段】実施形態によれば、中心位置計測装置100は、上面111に球状反射器を搭載可能に形成された円形の窪み111aを有する円筒形の筐体110と、筐体110により回転可能に支持された回動軸128およびそれに接続する板状部を有し第1の面122には渦巻き状の回動板第1歯123が形成される回動板120と、回動板120を回動させる回動駆動部140と、板状であって、周方向に互いに間隔をあけて配されて、測定対象と密着する拘束面が回動板120の回転中心と同芯の円上にあり、それぞれの一方の面に回動板第1歯123と螺合する把持部歯131が形成され筐体110の側面に形成された把持部用側面切り欠き113aに挿入可能で回動板120の回動により径方向に互いに等しい距離を移動する複数の把持部130とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の中心位置を測定する中心位置計測装置であって、
上下方向に中心軸を有し、上面に球状反射器を搭載可能に形成された円形の窪みを有する円筒形の筐体と、
前記筐体により回転可能に支持された回動軸および前記回動軸に接続する板状部を有し第1の面には渦巻き状の回動板第1歯が周方向に亘って形成される回動板と、
前記回動板を回動させる回動駆動部と、
板状であって、周方向に互いに間隔をあけて配されて、前記測定対象と密着する拘束面が前記回動板の回転中心と同芯の円上にあり、それぞれの一方の面に前記回動板第1歯と螺合する把持部歯が形成され前記筐体の側面に形成された把持部用側面切り欠きに挿入可能で前記回動板の回動により前記回動板の径方向に互いに等しい距離を移動する複数の把持部と、
を備えることを特徴とする中心位置計測装置。
【請求項2】
前記回動駆動部は、前記筐体の側面に挿入されて、前記回動板を回動させるための傘歯車を有するハンドルであり、
前記回動板の第2の面には前記傘歯車と螺合する回動板第2歯が周方向に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の中心位置計測装置。
【請求項3】
前記回動駆動部は、前記筐体の側面に挿入されて、前記回動軸に接続するゼンマイばねであることを特徴とする請求項1に記載の中心位置計測装置。
【請求項4】
前記複数の把持部は、前記測定対象の径方向外側から径方向内側に向かって前記測定対象を把持することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の中心位置計測装置。
【請求項5】
前記複数の把持部は、前記測定対象の径方向内側から径方向外側に向かって前記測定対象を把持することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の中心位置計測装置。
【請求項6】
前記複数の把持部は、前記筐体に挿抜可能で、前記測定対象の径方向外側から径方向内側に向かって前記測定対象を把持可能な状態と、前記測定対象の径方向内側から径方向外側に向かって前記測定対象を把持可能な状態とを、選択可能なことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の中心位置計測装置。
【請求項7】
前記筐体の前記窪みの底部に前記球状反射器を前記筐体に固定するための磁石を有することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の中心位置計測装置。
【請求項8】
前記筐体の前記上面は、前記測定対象が傾いていた場合に、前記測定対象の傾きを測定するために複数個所に前記球状反射器を設置可能な広さを有することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の中心位置計測装置。
【請求項9】
測定対象の中心位置を測定する中心位置計測方法であって、
前記測定対象を選択するステップと、
中心位置計測装置の各把持部の拘束面が前記測定対象の被拘束面に対向するように、前記中心位置計測装置を前記測定対象上に設置するステップと、
前記中心位置計測装置の前記各把持部の前記拘束面が前記測定対象の被拘束面に密着するまで回動駆動部を操作して前記中心位置計測装置を設定するステップと、
前記中心位置計測装置の筐体の上面の窪みに球状反射器を設置するステップと、
レーザ受発信器から前記球状反射器にレーザ光を送受信し前記レーザ受発信器の送受信端と前記球状反射器の中心間の距離L0を得て、前記距離L0と前記レーザ光の進行方向とから前記送受信端を基準とした前記球状反射器の中心位置座標を算出するステップと、
を有することを特徴とする中心位置計測方法。
【請求項10】
前記筐体の前記上面の高さ位置と前記把持部の前記測定対象の把持領域の上端の高さ位置との差と、前記窪みの深さおよび径の寸法に基づいて、前記球状反射器の前記中心位置の座標を算出するステップの結果から、前記測定対象の高さ方向の位置の座標を算出するステップを、さらに有することを特徴とする請求項9に記載の中心位置計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、中心位置計測装置および中心位置計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元(3D)計測において、ボルトやボルト穴の中心位置を正確にかつ簡易に把握することが重要である。たとえば、ボルト、ナットを用いた装置の組み立てにおける場合、部材に設けられた複数のボルト穴の間の距離寸法を必要粗する場合、あるいは、基礎ボルトが設けられた基礎に据え付ける装置のボルト貫通孔の孔あけ加工の場合には、特に重要である。
【0003】
ここで、3D計測においては、球状反射器を測定対象に接触させた状態で、3D計測装置から照射したレーザ光を反射器が再帰反射させることにより、3次元の座標位置を計測することが可能となる。この球状反射器をボルト等の中心位置に目測で当てることにより測定を行う場合、球状反射器を当てる位置のずれにより、計測結果に誤差を生ずることになる。
【0004】
この誤差を無くす方法として、例えばボルトを固定しているナット部の形状を利用し、ナット側面を複数個所測定して3D計測装置のソフト処理で、ボルトの中心座標を算出することは可能である。しかしながら、この方法ではボルトの中心座標の1つの計測のためにナット側面の座標計測を多数回実施する必要がある上、ソフト上での処理も煩雑となってしまうという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3735422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の様に、従来の計測方法ではボルト・ナット構造部や円筒形部品、あるいは穴の中心座標の計測のために、例えば測定対象がボルトであればそれと螺合するナットの側面を多数回計測する必要がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、球状反射器を測定対象の中心に正確かつ簡易に合わせることが可能な中心位置計測装置および中心位置計測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、中心位置計測装置は、測定対象の中心位置を測定する中心位置計測装置であって、上下方向に中心軸を有し、上面に球状反射器を搭載可能に形成された円形の窪みを有する円筒形の筐体と、前記筐体により回転可能に支持された回動軸および前記回動軸に接続する板状部を有する回動板と、前記回動板を回動させる回動駆動部と、板状であって、前記筐体の側面に挿入され周方向に互いに間隔をあけて配されて、一方の面に把持部歯が形成された複数の把持部と、を備え、前記回動板の第1の面には前記把持部歯と螺合する渦巻き形の回動板第1歯が周方向に亘って形成され、前記複数の把持部は、測定対象との接触部が前記回動板の回転中心と同芯の円上にあり、前記回動板の回動により前記回動板の径方向に互いに等しい距離を移動する、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る中心位置計測装置の構成を示す平面図である。
図2】第1の実施形態に係る中心位置計測装置の構成を示す図1のA-A矢視断面図である。
図3】第1の実施形態に係る中心位置計測装置の構成を示す裏面図である。
図4】第1の実施形態に係る中心位置計測装置の回動板の構造を示す平面図である。
図5】第1の実施形態に係る中心位置計測装置の回動板の構造を示す裏面図である。
図6】第1の実施形態に係る中心位置計測装置を中心位置の測定対象であるナットの外側面に取り付けた場合を示す断面図である。
図7】第1の実施形態に係る中心位置計測方法の手順を示すフロー図である。
図8】第1の実施形態に係る中心位置計測方法における位置座標算出を説明する概念的な斜視図である。
図9】第1の実施形態に係る中心位置計測装置の使用例を説明する概念的な斜視図である。
図10】第1の実施形態に係る中心位置計測装置の変形例の構成を示す縦断面図である。
図11】第2の実施形態に係る中心位置計測装置の構成を示す平面図である。
図12】第2の実施形態に係る中心位置計測装置の構成を示す図11のB-B矢視断面図である。
図13】第2の実施形態に係る中心位置計測装置の構成を示す裏面図である。
図14】第2の実施形態に係る中心位置計測装置を中心位置測定対象である穴の内側面に取り付けた場合を示す概念的断面図である。
図15】第2の実施形態に係る中心位置計測装置の把持部の変形例を示す側面図である。
図16】第3の実施形態に係る中心位置計測装置の構成を示す図17のD-D矢視平面図である。
図17】第3の実施形態に係る中心位置計測装置の構成を示す図16のC-C矢視断面図である。
図18】第4の実施形態に係る中心位置計測装置の構成を示す平面図である。
図19】第4の実施形態に係る中心位置計測装置を中心位置の測定対象の外側面に取り付けた場合を示す概念的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る中心位置計測装置および中心位置計測方法について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る中心位置計測装置の構成を示す平面図、図2は、図1のA-A矢視断面図、また、図3は、裏面図である。
【0012】
中心位置計測装置100は、図1図2に示すように、筐体110、回動板120、複数の把持部130、および回動駆動部140としてのハンドル150を有する。図1では、3つの把持部130を有する場合が例示されているが、これに限定されない。把持部130の数は、測定対象1(図6参照)の形状によって2つ、あるいは4つ以上であってもよい。
【0013】
筐体110は、外形が鉛直方向に中心軸を有し、外形が円柱形状であり、上面111の中心部には、筐体110と同芯に円形の窪み111aが形成されている。窪み111aの深さは、窪み111a上に、後述する再帰反射器である球状反射器を搭載した時に、球状反射器が窪み111aの底面に接しないような十分な深さを有する。なお、筐体110の外形は、多角柱でもよい。
【0014】
回動板120は、筐体110の上面111および下面112により回動可能に支持された回動軸128を有する円板状である。回動板120の下面122には渦巻状の回動板第1歯123が複数形成されている。また、回動板120の上面121には回動板第2歯124が複数形成されている。
【0015】
回動板120は、回動駆動部140としてのハンドル150により回動軸128を中心に回動する。ハンドル150は、傘歯車151、軸152、および取っ手153を有する。傘歯車151は軸152の先端に取り付けられ、取っ手153により軸152および傘歯車151が回転する。回動板120に形成された回動板第2歯124は、傘歯車151と螺合するように形成されている。回動板120の詳細については、後に図4、5を引用しながら説明する。
【0016】
複数の把持部130のそれぞれは、平面的には長方形であり、上面は平面状、下面は階段状に形成されている。把持部130はそれぞれ、その長手方向が、筐体110の中心軸から径方向に放射状に延びた方向に沿うように配されている。それぞれの把持部130は、中心方向およびその逆方向に移動可能に筐体110に支持されている。このため、筐体110側は、その側面113には把持部用側面切り欠き113aが、また、その下面112には下面切り欠き112aが形成されている。なお、把持部用側面切り欠き113aのみで把持部130が筐体110内に挿入可能であれば、下面切り欠き112aは形成されていなくてもよい。
【0017】
各把持部130の上面には、回動板120の下面122に形成された回動板第1歯123と螺合するように複数の把持部歯131が形成されている。
【0018】
各把持部130の下側には、上述のように内向き段付き部132が形成されている。詳細には、第1段差面132aおよびその径方向外側に第2段差面132bがそれぞれ形成されている。各把持部130の高さ方向の厚みは、径方向内側から径方向外側になるにつれて、第1段差面132aおよび第2段差面132bにおいて順次厚みを増す。なお、図2、3では、内向き段付き部132として2つの段差面を有する場合を例示したが、中心位置の測定対象1のバリエーションによって、1つの場合でもよく、あるいは3つ以上の場合でもよい。
【0019】
図4は、第1の実施形態に係る中心位置計測装置100の回動板120の構造を示す平面図であり、図5は、裏面図である。
【0020】
回動板120は、円筒状のハブ125と環状部126とこれらを結合する放射状に延びた複数のスポーク127を有する平板状の部分と、回動軸128を有する。なお、図4、5ではスポーク127が4本の場合を例示しているが環状部126に付加される回転力が回動板120全体に伝達されるのであれば本数は限定しない。また、スポーク127を有さずに、ハブ125と環状部126とが直接に接続される、すなわち、環状ではなく円板状である場合でもよい。
【0021】
図4に示すように、回動板120の上面121に形成された回動板第2歯124は、それぞれが放射状に互いに等しい間隔をあけて配されている。なお、回動板第2歯124が形成されている周方向の角度範囲は、必要に応じて図示した範囲より狭くてもよく、あるいは広くてもよい。
【0022】
図5に示すように、下面122に形成された複数の回動板第1歯123は、それぞれが、らせん状に形成され、周方向に互いに等しい角度間隔で配されている。回動板120が図5の矢印Rの方向に回動すると、回動板120の回動板第1歯123と螺合する複数の把持部歯131を有する各把持部130は、中心方向に移動する。
【0023】
図6は、第1の実施形態に係る中心位置計測装置を中心位置の測定対象1であるナット3の外側面に取り付けた場合を示す断面図である。図6は、3つの把持部130の把持部130のうちの2つの把持部130の中心に沿った断面図である。ただし、ナット3については、図示の都合上、側面を示している。以下、それぞれの把持部130側で測定対象1であるナット3の側面に密着する面、すなわち内向き段付き部132(第1段差面132aあるいは第2段差面132b)を拘束面と呼ぶこととする。また、ナット3の拘束面に密着する側面を被拘束面と呼ぶこととする。
【0024】
前述のように、3つの把持部130のそれぞれの第1段差面132aから中心位置計測装置100の中心軸CLまでの距離は等しい、あるいは等しくなるように各把持部130を筐体110に取り付けることができる。すなわち、回動板120の回動を開始する際に、全ての把持部130の上面の把持部歯131を回動板120の回動板第1歯123との螺合が開始される位置に設定すればよい。また、筐体110に形成された窪み111aの平面的な中心は、中心位置計測装置100の筐体110の中心軸CL上にある。
【0025】
この結果、3つの把持部130のそれぞれの第1段差面132aにより3つの側面をそれぞれ拘束されたナット3の中心軸は、筐体110の中心軸CLに実質的に一致する。すなわち、ナット3の中心軸は、中心位置計測装置100およびナット3の製作精度の範囲で、筐体110の中心軸CLに一致する。通常、中心位置計測装置100およびナット3の製作精度は、ナット3の中心位置の必要精度に比べて十分に良く、ナット3の中心位置の必要精度を満たす。
【0026】
筐体110に形成された窪み111aは筐体110の外形と同芯であるので、窪み111aに搭載された球状反射器10の中心は、筐体110の中心軸CLに一致することから、窪み111aに搭載された球状反射器10の中心を、ナット3の中心軸に一致させることができる。
【0027】
さらに、図3に示すように、内向き段付き部132が複数ある場合には、第1段差面132aによるカバー可能範囲を越える測定対象1にも第2段差面132bにより拘束することができる。
【0028】
図7は、第1の実施形態に係る中心位置計測方法の手順を示すフロー図である。
【0029】
中心位置計測方法は、中心位置計測装置を設定するステップS10および測定対象の中心位置の測定・算出を行うステップS20を有する。
【0030】
まず、中心位置計測装置を設定するステップS10について説明する。
【0031】
最初に、中心位置の測定対象1を選択する(ステップS11)。
【0032】
次に、中心位置計測装置100の各把持部130の状態を非拘束位置に設定する(ステップS12)。すなわち、中心位置計測装置100の筐体110における各把持部130の径方向の位置を、中心軸CLから十分に離れた位置に設定する。これは、次のステップで、中心位置計測装置100と測定対象1との干渉を防止して、中心位置計測装置100をスムーズに測定対象1を包囲するように設置するためである。
【0033】
次に、中心位置計測装置100の各把持部130の拘束面が測定対象1の被拘束面に対向するように中心位置計測装置を測定対象1上に設置する(ステップS13)。すなわち、ナット3の被拘束面である3つの側面に、中心位置計測装置100の各把持部130の内向き段付き部132である第1段差面132aあるいは第2段差面132bのそれぞれが対向する位置に中心位置計測装置100を設置する。
【0034】
次に、中心位置計測装置100の各把持部130の拘束面が測定対象1の被拘束面に密着するまで回動駆動部140であるハンドル150を操作して中心位置測定装置100を設定する(ステップS14)。この結果、中心位置計測装置100が測定対象1に固定される。
【0035】
次に、測定対象1の中心位置の測定・算出を行うステップS20の内容を説明する。
【0036】
まず、中心位置計測装置100の筐体110の窪み111a上に再帰反射器である球状反射器10を設置する(ステップS21)。なお、この際、球状反射器10の受光面側がレーザ光受発信器(図8参照)の方向を向くように球状反射器10の向きを設定する。
【0037】
次に、レーザ光受発信器15から球状反射器10にレーザ光を送受信しレーザ光受発信器15の送受信端と球状反射器10の中心間の距離L0を得る(ステップS22)。
【0038】
次に、レーザ光進行方向と距離L0とから送受信端基準の球状反射器中心位置座標を算出する(ステップS23)。
【0039】
さらに、測定対象1の中心位置および高さ位置を算出する(ステップS24)。
【0040】
次に、全ての測定対象1についての中心位置の測定・算出が実施されたか否かを判定する(ステップS25)。全ての測定対象1についての中心位置の測定・算出が実施されたと判定されなかった(ステップS25 NO)場合は、ステップS11以降を繰り返す。全ての測定対象1についての中心位置の測定・算出が実施されたと判定された(ステップS25 YES)場合は、中心位置計測方法の手順を終了する。
【0041】
図8は、第1の実施形態に係る中心位置計測方法における位置座標算出を説明する概念的な斜視図である。具体的には、ステップS22ないしステップS24に対応する。
【0042】
ステップS22では、レーザ光受発信器15の送受信端(位置P1)から球状反射器10(中心位置P2)にレーザ光を送受信する。この結果、レーザ光の送信方向として、x軸方向からの水平方向角度が角度Θ、その方向からの鉛直方向角度が角度Φとして得られる。また、送受信時間は、位置P1と位置P2との距離L0の2倍の距離のレーザ光の移動時間であるから、レーザ光の高速と側受信時間とから位置P1と位置P2との距離L0が得られる。
【0043】
ステップS23では、ステップS22で得られた情報から、レーザ光受発信器15の送受信端(位置P1)の位置を原点とした、球状反射器10の中心位置P2のx、y、z体系での座標(x、y、z)を、次の式(1)、(2)および(3)により求める。
【0044】
=L・cosΦ・cosΘ ・・・(1)
【0045】
=L・cosΦ・sinΘ ・・・(2)
【0046】
=-L・sinΦ ・・・(3)
【0047】
ステップS24では、球状反射器10の中心位置P2のx、y、z体系での座標から、測定対象1であるナット3の中心位置P3の座標を算出する。なお、位置P3はナット3の上面内の点とする。
【0048】
ここで、球状反射器10の中心位置P2と筐体110の上面111間の間隔をh1とする。また、中心位置計測装置100の把持部130をナット3の上面に密着させた状態での、ナット3の中心位置P3と筐体110の上面111との間隔をh2とする。
【0049】
h1は、球状反射器10の半径Rと、窪み111aの半径rとから一義的に算出される。
【0050】
h2は、中心位置計測装置100の筐体110と把持部130との結合時の寸法から一義的に算出される。
【0051】
この結果、ナット3の中心位置P3の座標(x、y、z)は、次の式(4)、(5)および(6)により求められる。
【0052】
=x =L・cosΦ・cosΘ ・・・(4)
【0053】
=y =L・cosΦ・sinΘ ・・・(5)
【0054】
=z - (h1+h2) =-L・sinΦ- (h1+h2) ・・・(6)
【0055】
図9は、第1の実施形態に係る中心位置計測装置の使用例を説明する概念的な斜視図である。開口5の周囲に例えば図示しない水車発電機用の複数の基礎ボルトが基礎コンクリートに埋設されている場合の例を示している。
【0056】
それぞれの基礎ボルトには、ナットが取り付けられた状態であるとし、各ナットが測定対象1であるとする。また、いずれの基礎ボルトも、その中心位置が開口5の縁から等しい間隔dの位置に設置されているものとする。
【0057】
このような場合において、各測定対象1のナットに中心位置計測装置100を順次取り付けて球状反射器10を搭載し、レーザ光受発信器15を有する装置からレーザ光を受発信する。このように、順次、各測定対象1の座標位置を取得する。それぞれの測定対象1が、同一の円上にあるとして、その中心を算出することができる。また、算出された中心位置は、開口5の中心位置とみなせる。この結果、水車発電機などの据付け対象を据え付けるべき中心位置を決定することができる。
【0058】
以上のように、本実施形態に係る中心位置計測装置100は、搭載する球状反射器10の中心位置を、測定対象1の中心位置に正確かつ簡易に一致させることができる。
【0059】
図10は、第1の実施形態に係る中心位置計測装置の変形例の構成を示す縦断面図である。
【0060】
変形例は、筐体110の上面111に形成された窪み111aの底部に、磁石114を設けている点が異なる。磁石114を設けることにより、窪み111aに球状反射器10を設置する際に、球状反射器10をさらに安定した状態にすることができる。
【0061】
[第2の実施形態]
図11は、第2の実施形態に係る中心位置計測装置100aの構成を示す平面図、図12は、図11のB-B矢視断面図、また、図13は、裏面図である。
【0062】
本実施形態に係る中心位置計測装置100aにおいては、把持部130の筐体110への取り付け方向が第1の実施形態と逆になっている。この点以外は、第1の実施形態と同様である。以下、第1の実施形態との相違点のみ説明する。
【0063】
把持部130は、外向き段付き部133を有する。外向き段付き部133は、径方向内側から、第1段差面133a、第2段差面133bからなる。すなわち、本実施形態では、
【0064】
図14は、第2の実施形態に係る中心位置計測装置100aを中心位置の測定対象1である穴4の内側面に取り付けた場合を示す断面図である。
【0065】
図14は、3つの把持部130のうちの2つの把持部130に沿った断面を示している。本実施形態においては、拘束面は、それぞれの把持部130の外向き段付き部133すなわち第1段差面133aあるいは第2段差面133bである。また、被拘束面は、穴4の内表面である。
【0066】
前述のように、3つの把持部130のそれぞれの第1段差面133aから中心位置計測装置100の中心軸CLまでの距離は等しい、あるいは等しくなるように各把持部130を筐体110に取り付けることができる。また、筐体110に形成された窪み111aの平面的な中心は、中心位置計測装置100の筐体110の中心軸CL上にある。
【0067】
この結果、第1の実施形態と同様に、窪み111aに搭載された球状反射器10の中心を、穴4の中心軸に一致させることができる。
【0068】
図15は、第2の実施形態に係る中心位置計測装置100aの把持部の変形例を示す側面図である。
【0069】
この変形例による把持部130aには、ガイド部130gが形成されている。また、上面に形成された把持部歯131aは、上面の長手方向の両端部間に形成されている。
【0070】
このように形成された把持部130aは、筐体110からの取り外しが可能、すなわち挿抜可能である。また、把持部130aの、筐体110への挿入方向は、任意に選択可能である。すなわち、すべての把持部130aを第2の実施形態と同様の方向に向けて筐体110に取り付けると、段差部は、外向き段付き部133と同様に機能させることができる。また、すべての把持部130aを第2の実施形態と反対の方向に向けて筐体110に取り付けると、段差部は、第1の実施形態の内向き段付き部132と同様に機能させることができる。
【0071】
このように、変形例による把持部130aを用いることによって、挿入方向を変更することによって、第1の実施形態および第2の実施形態と同様に機能させることができる。
【0072】
[第3の実施形態]
図16は、第3の実施形態に係る中心位置計測装置100bの構成を示す図17のD-D矢視平面図、また、図17は、図16のC-C矢視断面図である。
【0073】
本実施形態は、第1の実施形態の変形であり中心位置計測装置100bは、回動駆動部140として、第1の実施形態におけるハンドル150に代えてゼンマイばね160を有する。また、ハンドル150に代えてゼンマイばね160を使用することから、回動板120aは、第1の実施形態におけるような回動板第2歯を有しない。ゼンマイばね160およびこれに関連する部分を除いては、第1の実施形態と同様である。
【0074】
ゼンマイばね160は、渦巻状に形成されたバネ部161、バネ部161を回動板120の回動軸128に結合する結合部162、バネ部161の結合部162の反対端に取り付けられた開閉爪163を有する。
【0075】
ゼンマイばね160の開閉爪163側の部分を、筐体の外側に配するために、筐体110の側面113には、バネ部用 側面切り欠き113bが形成されている。また、ゼンマイばね160の開閉爪163側の部分を固定するためのストッパ113cが、筐体110の側面113の複数個所に設けられている。ストッパ113cには、ゼンマイばね160の開閉爪163が通過可能な開口が形成され、かつ、ストッパ113cにおいてゼンマイばね160の開閉爪163を固定可能に形成されている。すなわち、開閉爪163は、折畳めるとともに、たとえば90度以上には開かないように形成されている。
【0076】
また、ゼンマイばね160と把持部130との干渉を防止するために、ゼンマイばね160と把持部130との間に設けられた区画板170が設けられている。
【0077】
以上のような構成により、ゼンマイばね160を引き出して、ゼンマイばね160の開閉爪163側を先頭にして、筐体110の側面113に設けられた各ストッパ113cをくぐらせながら側面113の周囲を囲むようにすることができる。把持部と被把持部とが接触した後は、ゼンマイばね160を引き出す荷重が増加する。しかしながら、ゼンマイばね160に弾性があることから把持部と被把持部との接触力は急激には上昇しない。このため、適度の荷重の位置で、ゼンマイばね160の開閉爪163をストッパ113cに固定することが可能である。
【0078】
以上のように本実施形態では、ゼンマイばね160を用いることにより、中心位置計測装置100bを測定対象1に取り付ける際に、測定対象1を締め付ける力をほぼ一定に保持して、測定対象1を必要以上に締め付けて損傷させる可能性を回避することができる。
【0079】
[第4の実施形態]
図18は、第4の実施形態に係る中心位置計測装置の構成を示す平面図である。
【0080】
本実施形態は、第1の実施形態の変形であり、筐体110の径を大きくしている点が特徴である。すなわち、筐体110の上面111が、その複数個所に球状反射器10を設置可能なスペースを有する大きさである。
【0081】
なお、図18では、窪み111aが、上面111の中央部のみに形成されているが、球状反射器10を設置する箇所のそれぞれに窪み111aが形成されていてもよい。
【0082】
図19は、第4の実施形態に係る中心位置計測装置100bを中心位置の測定対象の外側面に取り付けた場合を示す概念的断面図である。
【0083】
今、測定対象1であるナット3が、水平方向から傾いている場合を想定する。このような測定対象1に中心位置計測装置100bを取り付けると、中心位置計測装置100bの筐体110の上面111も、測定対象1の傾きに応じて、同様に傾くことになる。
【0084】
筐体110の上面111の複数の箇所に球状反射器10を順次設置してその中心位置の座標を計測する。この結果、たとえば、それぞれの中心位置の座標が、Pa(xa,ya,za)、Pb(xb,yb,zb)、および図示しないPc(xc,yc,zc)のように得られる。
【0085】
これらの結果から、Pa、PbおよびPcを含む平面を算出することにより、上面111の傾き、すなわち、測定対象1の傾きを算出することができる。
【0086】
以上、説明した実施形態によれば、回動板120の渦巻き状の回動板第1歯123に螺合する把持部歯131を有して径方向に移動可能な複数の把持部130を有する中心位置計測装置を用いることによって、球状反射器を測定対象の中心に正確かつ簡易に合わせることが可能な中心位置計測装置および中心位置計測方法を提供することを可能とする。
【0087】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1…測定対象、2…ボルト、3…ナット、5…開口、10…球状反射器、15…レーザ光受発信器、100…中心位置計測装置、110…筐体、111…上面、111a…窪み、112…下面、112a…下面切り欠き、113…側面、113a…把持部用側面切り欠き、113b…バネ部用側面切り欠き、113c…ストッパ、114…磁石、120、120a…回動板、121…上面、122…下面、123…回動板第1歯、124…回動板第2歯、125…ハブ、126…環状部、127…スポーク、128…回動軸、130、130a…把持部、130g…ガイド溝、131、131a…把持部歯、132…内向き段付き部、132a…第1段差面、132b…第2段差面、133…外向き段付き部、133a…第1段差面、133b…第2段差面、140…回動駆動部、150…ハンドル、151…傘歯車、152…軸、153…取っ手、160…ゼンマイばね、161…バネ部、162…結合部、163…開閉爪、170…区画板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19