(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059734
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】転写オーバーレイフィルム、抗ウイルス性カード、抗ウイルス性カードの製造方法及び貼合ローラ
(51)【国際特許分類】
A01N 25/34 20060101AFI20230420BHJP
G09F 1/02 20060101ALI20230420BHJP
B42D 15/00 20060101ALI20230420BHJP
B41M 5/382 20060101ALI20230420BHJP
B41M 5/52 20060101ALI20230420BHJP
B44C 1/17 20060101ALI20230420BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230420BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20230420BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20230420BHJP
A01N 61/00 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
A01N25/34 A
G09F1/02 H
B42D15/00 341B
B42D15/00 351Z
B41M5/382 800
B41M5/52 400
B44C1/17 E
B32B27/18 F
A01P1/00
A01P3/00
A01N61/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169907
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】牛腸 智
【テーマコード(参考)】
2H111
3B005
4F100
4H011
【Fターム(参考)】
2H111AA26
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4H011BB08
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4H011DA07
4H011DH08
(57)【要約】
【課題】被転写物に優れた抗ウイルス性を付与し、且つ被転写物の意匠性を向上することができる抗ウイルス性の転写オーバーレイフィルム、当該転写オーバーレイフィルムを用いた抗ウイルス性カード、抗ウイルス性カードの製造方法及び抗ウイルス性カードの製造に用いる貼合ローラを提供する。
【解決手段】抗ウイルス性を有する転写オーバーレイフィルム1は、基材シート11と、基材シート11の一方の面に形成された転写フィルム21と、を備え、転写フィルム21は、抗ウイルス剤を含有する複数の層で形成され、複数の層のうち少なくとも一層は、抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤を含有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、
前記基材シートの一方の面に形成された転写フィルムと、を備え、
前記転写フィルムは、抗ウイルス剤を含有する複数の層で形成され、
前記複数の層のうち少なくとも一層は、前記抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤を含有している
ことを特徴とする転写オーバーレイフィルム。
【請求項2】
前記転写フィルムにおける前記複数の層は、いずれも樹脂と前記抗ウイルス剤とを含んで形成され、
前記複数の層は、前記抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤又は無機系抗ウイルス剤のうちいずれか一方を含有する層と、前記抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤を含有する層とで構成される
ことを特徴とする請求項1記載の転写オーバーレイフィルム。
【請求項3】
前記転写フィルムは、
前記複数の層として、前記基材シートの前記一方の面側に接する剥離層と、前記転写フィルムの表層側に位置する受像層と、前記剥離層と前記受像層との間に位置するアンカー層と、を有し、
前記剥離層及び前記アンカー層は、前記抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤又は無機系抗ウイルス剤のうちいずれか一方を含有し、
前記受像層は、前記抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤を含有している
ことを特徴とする請求項2に記載の転写オーバーレイフィルム。
【請求項4】
前記剥離層、前記アンカー層および前記受像層の各層における有機系抗ウイルス剤の含有量は、前記樹脂100質量部に対して8質量部以上17質量部以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項3に記載の転写オーバーレイフィルム。
【請求項5】
前記剥離層および前記アンカー層の各層における無機系抗ウイルス剤の含有量は、樹脂100質量部に対して0.7質量部以上3.0質量部以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項3に記載の転写オーバーレイフィルム。
【請求項6】
前記剥離層又は前記アンカー層のうち、いずれか一方が前記抗ウイルス剤として無機系抗ウイルス剤を含有し、他方が前記抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤を含有する
ことを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の転写オーバーレイフィルム。
【請求項7】
前記剥離層および前記アンカー層のいずれも、前記抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤を含有する
ことを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の転写オーバーレイフィルム。
【請求項8】
前記剥離層および前記アンカー層のいずれも、前記抗ウイルス剤として無機系抗ウイルス剤を含有する
ことを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の転写オーバーレイフィルム。
【請求項9】
前記抗ウイルス剤の含有量は、前記転写フィルムが有する前記複数の層のうち前記受像層が最も多いこと
を特徴とする請求項3から8のいずれか1項に記載の転写オーバーレイフィルム。
【請求項10】
前記剥離層は、前記樹脂としてアクリル系樹脂を含む
ことを特徴とする請求項3から9のいずれか1項に記載の転写オーバーレイフィルム。
【請求項11】
前記剥離層の膜厚は、0.5μm以上3.0μm以下の範囲内であること
を特徴とする請求項5から8のいずれか1項に記載の転写オーバーレイフィルム。
【請求項12】
前記アンカー層の膜厚は、0.5μm以上2.0μm以下の範囲内であること
を特徴とする請求項5から9のいずれか1項に記載の転写オーバーレイフィルム。
【請求項13】
前記受像層の膜厚は、1.0μm以上7.0μm以下の範囲内であること
を特徴とする請求項5から10のいずれか1項に記載の転写オーバーレイフィルム。
【請求項14】
前記転写フィルムがポリエチレンワックスを含む
ことを特徴とする請求項1記載から13のいずれか1項に記載の転写オーバーレイフィルム。
【請求項15】
コア基材と、
前記コア基材の少なくとも一方の面側に積層された請求項1から14のいずれか1項に記載の転写オーバーレイフィルムの前記転写フィルムと、を備える
抗ウイルス性カード。
【請求項16】
前記コア基材の少なくとも前記一方の表面と前記転写フィルムとの間に設けられ、所定の画像が形成された絵柄印字層を備える
ことを特徴とする請求項15に記載の抗ウイルス性カード。
【請求項17】
前記コア基材の少なくとも前記一方の表面と前記コア基材の側面の少なくとも一部とが、前記転写フィルムに連続的に覆われている
ことを特徴とする請求項15又は16に記載の抗ウイルス性カード。
【請求項18】
コア基材の一方の表面と転写オーバーレイフィルムの転写フィルムとを対向配置し、
前記転写フィルムが有する複数の層の表層に位置する受像層を前記コア基材の一方の表面側に配置した状態でラミネート加工を行い、前記転写フィルムを前記コア基材の前記一方の面に転写する
ことを特徴とする抗ウイルス性カードの製造方法。
【請求項19】
前記転写フィルムの受像層に、所定の画像を形成した絵柄印字層を設ける
ことを特徴とする請求項18に記載の抗ウイルス性カードの製造方法。
【請求項20】
前記ラミネート加工において、前記転写フィルムで前記コア基材の前記一方の表面と前記コア基材の側面の少なくとも一部とを連続的に覆う
ことを特徴とする請求項19に記載の抗ウイルス性カードの製造方法。
【請求項21】
請求項18から20のいずれか1項に記載の抗ウイルス性カードの製造方法において前記ラミネート加工に用いる貼合ローラであって、
表面に凹部を備え、
前記凹部は、内面の表面積が前記抗ウイルス性カードのコア基材の一方の表面の面積よりも大きい
ことを特徴とする貼合ローラ。
【請求項22】
前記凹部の内壁面は、前記抗ウイルス性カードのコア基材の側面の少なくとも半分の高さを有している
ことを特徴とする請求項21記載の貼合ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、種々の物品の表面に抗ウイルス性を有する樹脂フィルムを転写することが可能な転写オーバーレイフィルム、樹脂を主材料とし情報記録媒体として用いられるカード型媒体であって最表層に当該転写オーバーレイフィルムにより抗ウイルス性を付与した抗ウイルス性カード及びその製造方法、抗ウイルス性カードの製造に用いる貼合ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抗菌・抗ウイルス性能の需要が高まり、特に抗ウイルス性能を付与した抗ウイルス製品の開発が急務となっている。これに伴い、人の手に触れる頻度が高いIDカード等のカード型媒体に対しても抗菌・抗ウイルス性の付与の必要性が高まっている。
【0003】
従来、物品の表面に抗ウイルス性を有する樹脂層を転写することで、物品の表面を当該樹脂層で被覆し、抗ウイルス性を付与する転写箔(転写シート)が知られている。
例えば特許文献1では、熱転写シートの剥離層に抗菌剤を入れることで、抗菌性を有した熱転写シートおよび中間転写媒体が提案されている。
また特許文献2では、所定量の無機系抗ウイルス剤と樹脂で形成された機能層を有する抗ウイルス性転写シートおよび抗ウイルス性シュリンクフィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6849031号公報
【特許文献2】特許第6159895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1に開示されている熱転写シートおよび中間転写媒体は無機系抗菌剤を含有しており、抗菌性を有しているものの、抗ウイルス性については検討されていない。また、無機系抗菌剤によって抗ウイルス性を有効にするには、添加量を多くする必要がある。しかしながら、無機系抗菌剤の含有量が増大すると、熱転写シートに白濁が生じ、被転写物の意匠性が損なわれるおそれがある。
【0006】
また、樹脂に練り込む抗ウイルス剤の添加量が減少するとシートの白濁が抑制されて意匠性は確保される。しかしながら、例えば特許文献2に開示されている転写シートやシュリンクフィルムの構成では、転写後に被転写物の最表層となる機能層に存在する抗ウイルス剤の量が減少すると、抗ウイルス剤がウイルスと接触しづらくなり、結果として抗ウイルス効果を十分に発揮されないことがある。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、被転写物に優れた抗ウイルス性を付与し、且つ被転写物の意匠性を向上することができる転写オーバーレイフィルム、当該転写オーバーレイフィルムを用いた抗ウイルス性カード、抗ウイルス性カードの製造方法及び抗ウイルス性カードの製造に用いる貼合ローラを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る転写オーバーレイフィルムは、基材シートと、前記基材シートの一方の面に形成された転写フィルムと、を備え、前記転写フィルムは、抗ウイルス剤を含有する複数の層で形成され、前記複数の層のうち少なくとも一層は、前記抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤を含有していることを特徴とする。
【0009】
また、本開示の一態様に係る抗ウイルス性カードは、コア基材と、前記コア基材の少なくとも一方の面側に積層された上記の転写オーバーレイフィルムの前記転写フィルムと、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本開示の一態様に係る抗ウイルス性カードの製造方法は、コア基材の一方の表面と転写オーバーレイフィルムの転写フィルムとを対向配置し、前記転写フィルムが有する複数の層の表層に位置する受像層を前記コア基材の一方の表面側に配置した状態でラミネート加工を行い、前記転写フィルムを前記コア基材の前記一方の面に転写することを特徴とする。
【0011】
また、本開示の一態様に係る貼合ローラは、上記の抗ウイルス性カードの製造方法において前記ラミネート加工に用いる貼合ローラであって、表面に凹部を備え、前記凹部は、内面の表面積が前記抗ウイルス性カードのコア基材の一方の表面の面積よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本開示の態様によれば、転写対象物の表面に優れた抗ウイルス性を付与し、且つ転写対象物の意匠性を向上することができる転写オーバーレイフィルム、当該転写オーバーレイフィルムを用いた抗ウイルス性カード、抗ウイルス性カードの製造方法及び抗ウイルス性カードの製造に用いる貼合ローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の第一実施形態に係る転写オーバーレイフィルムの一構成例を示す断面図である。 面図である。
【
図2】本開示の第二実施形態に係る抗ウイルス性カードの一構成例を示す断面図である。
【
図3】本開示の第二実施形態に係る抗ウイルス性カードの一構成例を示す平面図である。
【
図4】本開示の第二実施形態に係る抗ウイルス性カードのラミネート方法の一例を示す概念図である。
【
図5】本開示の第二実施形態に係る抗ウイルス性カードの製造方法の一例を示す図である。
【
図6】本開示の第三実施形態に係る抗ウイルス性カードの一構成例を示す断面図である。
【
図7】本開示の第三実施形態に係る抗ウイルス性カードのラミネート方法の一例を示す概念図である。
【
図8】本開示の第三実施形態に係る抗ウイルス性カードの製造方法の一例を示す図である。
【
図9】本開示の第三実施形態に係る抗ウイルス性カードの製造時に用いる貼合ローラの一構成例を示す正面斜視図である。
【
図10】
図9に示す貼合ローラの機構の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明を行う。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
なお、以下の説明では、転写オーバーレイフィルムにおいて被転写物に接触する側を「上」、被転写物に接触する側と反対側(基材シート側)を「下」として説明する場合がある。
【0015】
また、本開示において「抗ウイルス」とは、ウイルスを不活化することを示す抗ウイルスと、細菌を増殖させないことを示す抗菌とを総称する用語とする。また「抗菌」も同様に、抗ウイルスと抗菌とを総称する用語とする。特に断らない限り、本開示では抗ウイルスと抗菌は各々単独で両者を意味する。
以下、図面を参照して本開示の各実施形態の各態様について説明する。
【0016】
1.第一実施形態
(転写オーバーレイフィルム1の基本構成)
本発明の第一実施形態(以下、「本実施形態」という)に係る転写オーバーレイフィルムの基本構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態の転写オーバーレイフィルム1の概略構成を示す断面模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1は、基材シート11と、基材シート11の一方の面に形成された転写フィルム21とを備えている。転写オーバーレイフィルム1は例えばシート状に形成されており、転写シート又は転写箔とも称する。なお、製造方法によっては、転写オーバーレイフィルム1をロール状に形成することができる。またロール状の転写オーバーレイフィルムをシート化することにより、シート状の転写オーバーレイフィルムを形成することができる。転写オーバーレイフィルム1は、基材シート11に転写フィルム21を積層した積層体である。
【0017】
転写オーバーレイフィルム1において、転写フィルム21は被転写物に転写されることで、当該被転写物に耐傷性、耐摩耗性、耐汚染性などの機能を付与する薄型のオーバーレイフィルムである。
図1に示すように、本実施形態において転写フィルム21は複数の層(本例では、3層)で構成されている。転写フィルム21は、基材シート11の一方の面側に剥離層12とアンカー層13と受像層14とをこの順に積層してなる積層体である。
詳しくは後述するが、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1において、転写フィルム21が有する複数の層は、抗ウイルス剤を含有している。したがって、転写フィルム21は、被転写物に抗ウイルス性を付与することができる。
【0018】
本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1は、例えば転写フィルム21の基材シート11と反対側に位置する受像層14を被転写物の表面側に配置し、転写フィルム21の基材シート11と接する面、すなわち剥離層12を基材シート11から剥離することで、オーバーレイフィルムである転写フィルム21を被転写物に転写することができる。これにより、転写フィルム21が被転写物の最表面(最外面)に位置する層(最表層)として適用される。
【0019】
転写オーバーレイフィルム1を転写する被転写物は特に限定されないが、例えばカード型媒体(以下、単に「カード」と称する)の表面に転写フィルム21を転写することで、転写フィルム21をカードの最表層として適用することができる。
被転写物となるカードは、定期券,乗車券,入場券,プリペイドカード,クレジットカード,キャッシュカード,ポイントカード,各種有価証券,身分証明書等の種々の用途が想定される。中でも、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1は、券面(カード表面)に個人の顔写真を含む個人認証用画像が印字されたIDカードのオーバーレイフィルムとして好適に用いることができる。
【0020】
また基材シート11は、転写オーバーレイフィルム1において転写フィルム21の支持体となるものである。詳しくは後述するが、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1において、基材シート11及び転写オーバーレイフィルム1はいずれも樹脂材料で形成されている。つまり転写オーバーレイフィルム1は、樹脂材料の積層体である。
以下、基材シート11、転写フィルム21の各層について詳細に説明する。
【0021】
(基材シート11)
基材シート11は、転写オーバーレイフィルム1の基材となる層である。本実施形態では、基材シート11として、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体、エチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用できる。
【0022】
基材シート11は、後述する
図7に示す印字装置7に用いる転写オーバーレイリボン71のように、ロール状に形成され、円筒管状の巻出しロールに巻き付けて使用する場合がある。このため、基材シート11の材料としては、熱可塑性樹脂のうちポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)が好適に用いられる。基材シート11の材料にポリエチレンテレフタレートを使用する場合には、例えば、透明な二軸延伸PETを用いてもよい。
【0023】
基材シート11の厚さは特に制限されないが、印字装置7の搬送性等を考慮すると、9μm以上300μm以下の範囲内であることが好ましい。また、後述する
図7に示す印字装置7におけるサーマルヘッド73による多色画像の形成およびカード表面への転写フィルム21の転写時の熱ロール加熱などを考慮すると、12μm以上100μm以下の範囲内が好ましい。
【0024】
(転写フィルム21)
転写フィルム21は、
図1に示すように基材シート11の一方の面上に形成される層である。詳しくは後述するが、上述のように、転写フィルム21は、抗ウイルス剤を含有する複数の層で形成されている。また、転写フィルム21における複数の層のうち少なくとも一層は、抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤を含有している。これにより、被転写物(カード)に優れた抗ウイルス性を付与し、且つ転写フィルム21の白濁を抑制して被転写物の意匠性を向上することができる。抗ウイルス剤についての詳細は、後述する。
なお、抗ウイルス剤を含むことで抗ウイルス性が付与された転写オーバーレイフィルムを「抗ウイルス性転写オーバーレイフィルム」という。また、「抗ウイルス性転写箔」と称してもよい。
【0025】
本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1は、
図1に示すように複数の層を重ねて転写フィルム21としている。より具体的には、本実施形態において転写フィルム21は、基材シート11の一方の面に接する剥離層12と、転写フィルム21の表層側に位置する受像層14と、剥離層12と受像層14との間に位置するアンカー層13と、を有している。
本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1において転写フィルム21の各層(剥離層12、アンカー層13、受像層14)は、例えばグラビアコート法によって基材シート11の一方の表面側に塗工される。なお、これに限られず、転写フィルム21の各層は、ロールコート法等の各種塗工法等によって基材シート11上に塗工されてもよい。
【0026】
また、転写フィルム21の各層は、転写フィルム21の転写対象の一例であるカードや、カードの製造工程において受像層14に形成される絵柄印字層(後述する
図4に示す絵柄印字層15)に施された画像(文字や模様、絵柄等)を透視可能な程度の透明性(無色透明、有色透明、半透明)を有することが好ましい。
以下、転写フィルム21を形成する剥離層12、アンカー層13および受像層14の各層について詳細に説明する。
【0027】
〔剥離層12〕
剥離層12は、被転写物(カード)の最表面を形成する層であって、被転写物の表面強度の確保や、後加工適性を向上するための層である。剥離層12は、被転写物の最表面を覆って被転写物の表面を保護することから、「剥離保護層」とも称する。また、剥離層12は、被転写物(例えばカード)への転写フィルム21の転写時において、基材シート11と剥離層12との界面が剥離する機構となっている。
【0028】
剥離層12は抗ウイルス剤と樹脂材料とを含んで構成される。また剥離層12は、光透過性を有しており、基本的に無色透明であることが望ましい。このため、剥離層12の樹脂材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、セルロース計樹脂、ポリアセタール樹脂等を単独もしくは2種以上を混合して用いることが出来る。またこれらの樹脂に、シリコーン樹脂やフッ素系のパウダーや添加剤、あるいはポリエチレンフックスや各種天然ワックス類、合成炭化水素系ワックス、脂肪族アルコールと酸系ワックス、脂肪酸エステルとグリセライト系ワックス、アミンおよびアマイド系ワックス、高級脂肪酸金属塩などを添加したものを挙げることができる。
剥離層12は、上述のように抗ウイルス剤を含むことから、剥離層12の材料と抗ウイルス剤との相性の観点から、剥離層12はアクリル系樹脂を含むこと、より具体的にはアクリル系樹脂を主成分とすることが好ましい。
また、本実施形態において剥離層12の膜厚は、0.5μm以上3.0μm以下の範囲内であることが好ましい。剥離層12の膜厚が当該範囲内であることにより、剥離層12の耐久性および加工適性を向上することができる。
【0029】
〔アンカー層13〕
アンカー層13は、剥離層12と接する層であり、転写フィルム21において基材シート11と反対側に形成されている。アンカー層13は、剥離層12と受像層14との密着性を高めるために設けるものである。
アンカー層13は抗ウイルス剤と樹脂材料とを含んで構成される。アンカー層13の樹脂材料は特に限定されないが、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル系樹脂等を単独、または2種以上を混合して用いることが出来る。
アンカー層13の膜厚は、剥離層12と受像層14の密着性を高める機能が発揮できる膜厚であればよく、0.5μm以上2.0μm以下の範囲であればよい。
【0030】
〔受像層14〕
受像層14は、転写フィルム21の被転写物となるカード(例えばIDカード)の製造時において、印字装置によって絵柄印字層を転写可能に形成された層である。絵柄印字層には、例えば個人の顔写真を含む個人認証用画像等が印字されている。また受像層14は、転写フィルム21が有する複数の層のうち基材シート11と反対側の表層に位置し、被転写物への転写時において被転写物の表面側に配置される。
【0031】
受像層14の材料としては、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えばポリスチレン、ポリα-メチルスチレン等のスチレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸エチル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール系のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、エチレンアクリル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ロジン、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ブタジエンアクリルニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン、セルロース誘導体等が挙げられる。受像層14の主成分としては、これらの熱可塑性樹脂のうち1種または2種以上を混合して用いることが出来る。
受像層14の膜厚は、1.0μm以上7.0μm以下の範囲内が好ましい。これにより、例えば被転写物となるカードの製造時において、転写フィルム21をカード基材の表面に転写する場合に、カード基材表面の凹凸を埋める目止めの役割を果たすことができる。
【0032】
上述のように、転写オーバーレイフィルム1の転写フィルム21の各層(剥離層12、アンカー層13、受像層14)には、それぞれ抗ウイルス剤が含まれている。これにより人や物が触れる物品(例えばカード)の表面において優れた抗菌・抗ウイルス効果が発揮される。また擦過による疵などにより、被転写物(カード)の最表面となる層(剥離層12)が削られた場合であっても、その下のアンカー層13、受像層14にも抗ウイルス剤が含まれているため、転写フィルム21による抗菌・抗ウイルス効果は持続される。つまり、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1は、従来のように被転写物の最表面となる層(剥離層)に抗ウイルス剤を添加して被転写物表面に抗ウイルス剤を露出する場合と比べて、抗ウイルス効果の持久性に優れたものとなる。
【0033】
〔抗ウイルス剤〕
本実施形態において、転写フィルム21の各層に添加される抗ウイルス剤は、有効成分が有機系材料であることが好ましい。これにより、本実施形態による転写オーバーレイフィルム1には、優れた抗ウイルス性が付与され、さらに無機材料による抗ウイルス剤(無機系抗ウイルス剤)に比べて、即効性の抗ウイルス効果を発揮することができる。
【0034】
また、転写フィルム21の各層に添加する抗ウイルス剤として無機系抗ウイルス剤を用いると、転写フィルム21に濁りや変色などの影響が生じる場合がある。上述のように、絵柄印字層が設けられる受像層14においては、濁りや変色などが生じると、絵柄印字層に形成された画像や文字情報の視認性が低減し、カードの役割を果たすことが困難となる場合がある。例えば、被転写物であるカードがIDカードである場合、絵柄印字層よりも表層側に配置される受像層14に濁りや変色等が生じると、個人の顔写真を含む個人識別用の画像や、個人を識別するための氏名や所属組織の情報の視認性が低下し、IDカードとしての個人識別機能が低減される場合がある。
さらに、転写フィルム21の濁りや変色等は視認性の低減だけでなく、画像(絵柄印字層)の形成不良(例えば、熱溶融リボンの転写不良など)につながる場合がある。
【0035】
これらの点を鑑みると、転写フィルム21の各層、特に受像層14に添加する抗ウイルス剤としては、有機系抗ウイルス剤を用いることが好ましい。つまり、転写オーバーレイフィルム1の転写フィルム21において、複数の層(剥離層12、アンカー層13および受像層14)のうち少なくとも一層(受像層14)は、抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤を含有していることが好ましい。
【0036】
本実施形態による転写オーバーレイフィルム1において、転写フィルム21の各層に添加する有機系抗ウイルス剤としては、例えば、ハロカルバン、クロロフェネシン、塩化リゾチーム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、イソプロピルメチルフェノール、チモール、ヘキサクロロフェン、ベルベリン、チオキソロン、サリチル酸およびそれらの誘導体、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、パラクロルメタクレゾール、塩化ベンザルコニウム、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノール、石炭酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ヘキサクロロフェン、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、チアントール、ヒノキチオール、トリクロサン、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル、クロルヘキシジングルコン酸塩、フェノキシエタノール、レゾルシン、アズレン、サリチル酸、ジンクピリチオン、モノニトログアヤコールナトリウム、ウイキョウエキス、サンショウエキス、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム及びウンデシレン酸誘導体、アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、スチレンスルホン酸塩を含む共重合体、陰イオン系ナトリウム塩等が挙げられる。
【0037】
本実施形態において、転写フィルム21の各層中には、上記した有機系抗ウイルス剤が1種類のみ含まれていてもよく、2種類以上の有機系抗ウイルス剤が含まれていてもよい。
【0038】
このように、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1において、転写フィルム21の各層(剥離層12、アンカー層13、受像層14)は、主成分としての樹脂材料と抗ウイルス剤(例えば、有機系抗ウイルス剤)とを含んでいる。転写フィルム21の各層中に樹脂材料と抗ウイルス剤とが含有されることで、樹脂材料がバインダーとなり、転写オーバーレイフィルム1の製造工程や、被転写物の一例であるカード表面への転写加工時およびユーザのカード使用環境下において抗ウイルス剤の欠落を抑制し、抗ウイルス性能を維持することができる。
【0039】
本実施形態において、転写フィルム21の各層、すなわち剥離層12、アンカー層13および受像層14における有機系抗ウイルス剤の含有量は、各層における樹脂100質量部に対して、8質量部以上17質量部以下の範囲内であることが好ましい。抗ウイルス剤の含有量が当該範囲内であることにより、転写オーバーレイフィルム1に対して優れた抗ウイルス性を確実に付与することができ、結果として被転写物(カード)に優れた抗ウイルス性を確実に付与することができる。さらに転写オーバーレイフィルム1の白濁をより抑制して被転写物の意匠性を向上することができる。
【0040】
一方、転写フィルム21の各層における有機系抗ウイルス剤の含有量が、転写フィルム21の各層における樹脂100質量部に対して7質量部未満であると、抗ウイルス効果の発現が安定せず、抗ウイルス効果が低減し得る。また、抗ウイルス剤の含有量が、転写フィルム21の各層における樹脂100質量部に対して17質量部を超えると、転写フィルム21の白濁が十分に抑制されず被転写物の意匠性が低減し得る。さらに、抗ウイルス剤の含有量が17質量部を超過すると、転写フィルム21の被転写物への転写性能が低減したり、転写フィルム21を転写後の被転写物表面における後加工適性が低減したりする場合がある。
【0041】
また、転写フィルム21の各層における有機系抗ウイルス剤の含有量は、転写フィルム21の各層における樹脂100質量部に対して、8質量部以上12質量部以下の範囲内であることがさらに好ましい。抗ウイルス剤の含有量が当該範囲内であることにより、被転写物に優れた抗ウイルス性を確実に付与し、且つ転写フィルム21の白濁をさらに抑制して被転写物の意匠性をさらに良好に維持することができる。
【0042】
また例えば、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、エイズウイルス、B型肝炎ウイルス等のエンベロープウイルスに対して抗ウイルス効果を発揮する観点からは、転写フィルム21の各層における有機系抗ウイルス剤の含有量は、転写フィルム21の各層における樹脂100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましい。
また例えば、ノロウイルス、ネコカリシウイルス、ライノウイルス 、アデノウイルス等のノンエンベロープウイルスに対して抗ウイルス効果を発揮する観点からは、転写フィルム21の各層における有機系抗ウイルス剤の含有量は、転写フィルム21の各層における樹脂100質量部に対して、8質量部以上であることが好ましい。
【0043】
また、本発明において、転写フィルム21において剥離層12およびアンカー層13が含有する抗ウイルス剤は、有機系抗ウイルス剤に限定されない。剥離層12およびアンカー層13には、無機系抗ウイルス剤が含有されていてもよい。
無機系抗ウイルス剤は、抗ウイルス効果の点で銀系材料であることが好ましい。無機系抗ウイルス剤としては、無機化合物のゼオライト、アパタイト、ジルコニアなどの物質に銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンのいずれかの金属イオンを取り込んで形成した抗菌性ゼオライト、抗菌性アパタイト、抗菌性ジルコニア等が使用できる。
また、抗ウイルス剤は銀系材料が無機材料に担持されている構成であってもよい。「無機材料」としては、例えば「ガラス」を使用できるが、「無機材料」はガラスに限定されない。銀を無機物に担時させることで、経時での銀成分の脱落や、基材シート11への転移を防ぐことができる。無機系抗ウイルス剤は抗ウイルス効果の持続性に優れているため、無機系抗ウイルス剤を添加することにより、抗ウイルス効果の持続性をより向上させることができる。
【0044】
また、剥離層12およびアンカー層13には、上記した無機系抗ウイルス剤が1種類のみ含まれていてもよく、2種類以上の無機系抗ウイルス剤が含まれていてもよい。剥離層12またはアンカー層13のうち少なくともいずれか一方に無機系抗ウイルス剤を用いる場合、剥離層12およびアンカー層13の各層における無機系抗ウイルス剤の含有量は、樹脂100質量部に対して0.7質量部以上3.0質量部以下の範囲内であることが好ましく、1質量部以上2質量部以下の範囲内であることがより好ましい。これにより、転写オーバーレイフィルム1は、無機系抗ウイルス剤による優れた抗ウイルス性を被転写物に付与するとともに、無機系抗ウイルス剤を含む層(剥離層12またはアンカー層13のうち少なくともいずれか一方)の濁り(白濁)や変色を抑制して、被転写物の意匠性を向上することができる。
【0045】
このように、本実施形態において、転写フィルム21における複数の層(剥離層12、アンカー層13、受像層14)は、いずれも樹脂と抗ウイルス剤とを含んで形成され、当該複数の層は、抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤又は無機系抗ウイルス剤のうちいずれか一方を含有する層(本例では剥離層12、アンカー層13)と、抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤を含有する層(本例では受像層14)とで構成される。
これにより、転写オーバーレイフィルム1は、無機系抗ウイルス剤による持久性の高い抗ウイルス効果を発揮する層と、有機系抗ウイルス剤による即効性の高い抗ウイルス効果を発揮する層とによって、被転写物により優れた抗ウイルス効果を付与することができる。
【0046】
具体的には、転写フィルム21において、剥離層12およびアンカー層13の各層は、抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤又は無機系抗ウイルス剤のうちいずれか一方を含有し、受像層14は、抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤を含有している。
これにより、転写オーバーレイフィルム1は、被転写物の表面側に配置される剥離層12、アンカー層13において持久性の高い抗ウイルス効果を発揮するとともに、受像層14において即効性の高い抗ウイルス効果を発揮することができる。さらに、受像層14における濁り(例えば白濁)や変色を確実に抑制し、被転写物の意匠性を確実に向上させることができる。
【0047】
このように、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1において、転写フィルム21の各層は、抗ウイルス剤を含有している。
ここで、転写フィルム21は、剥離層12およびアンカー層13のうち、いずれか一方が抗ウイルス剤として無機系抗ウイルス剤を含有し、他方が抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤を含有する構成であってもよい。つまり、剥離層12とアンカー層13とで、抗ウイルス剤の種類が異なっていてもよい。これにより、被転写物(例えばカード)の用途や使用される環境などに合わせて、受像層14以外の層に用いる抗ウイルス剤として、有機系抗ウイルス剤または無機系抗ウイルス剤のいずれかを適宜選択することができる。
【0048】
また、転写フィルム21は、剥離層12およびアンカー層13のいずれも、有機系抗ウイルス剤を含有する構成であってもよい。つまり、転写フィルム21は、剥離層12、アンカー層13および受像層14の各層が有機系抗ウイルス剤を含有する構成であってもよい。
これにより、転写オーバーレイフィルム1は、被転写物にさらに優れた抗ウイルス効果(特に即効性のある抗ウイルス効果)を付与することができるとともに、被転写物の意匠性をさらに向上することができる。
【0049】
また、転写フィルム21は、剥離層12およびアンカー層13のいずれも、無機系抗ウイルス剤を含有する構成であってもよい。つまり、転写フィルム21は、受像層14以外の層が無機系抗ウイルス剤を含む構成であってもよい。
これにより、転写オーバーレイフィルム1は、例えばカードの表層側において持久性の高い抗ウイルス性を発揮し、カードの基材側の受像層14においてより即効性が高く優れた抗ウイルス性を発揮することができる。また、受像層14の濁りや変色を抑制して、被転写物(カード)の意匠性をより向上することができる。
【0050】
また、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1において、転写フィルム21の各層における抗ウイルス剤の含有量は、同等であってもよいし、異なっていてもよいが、同等であることがより好ましい。
また転写フィルム21の各層における抗ウイルス剤の含有量が異なる場合、転写フィルム21が有する複数の層のうち、剥離層12における抗ウイルス剤の含有量が最も多い構成、すなわち剥離層12における抗ウイルス剤の含有量がアンカー層13および受像層14の各層における抗ウイルス剤の含有量よりも多い構成であることが好ましい。これにより、被転写物に転写された転写フィルム21の表面(例えば、カードの最表面)において、より優れた抗ウイルス効果を発揮することができる。またこの場合、剥離層12における抗ウイルス剤の含有量が最も多く、次いでアンカー層13の抗ウイルス剤の含有量が多く、受像層14の抗ウイルス剤の含有量が最も少ない構成、つまり剥離層12、アンカー層13、受像層14の順に抗ウイルス剤の含有量が減少していく構成であってもよい。また、アンカー層13よりも受像層14の方が抗ウイルス剤の含有量が多い構成であってもよい。
また例えば、転写フィルム21が有する複数の層のうち、受像層14における抗ウイルス剤の含有量が最も多い構成、すなわち受像層14における抗ウイルス剤の含有量が剥離層12およびアンカー層13の各層における抗ウイルス剤の含有量よりも多い構成であってもよい。これにより、被転写物に転写された転写フィルム21の内部(例えば、カード基材側)においてより優れた抗ウイルス効果を発揮するとともに、転写フィルム21全体の濁りや変色を抑制して、被転写物の意匠性をより確実に向上することができる。
またこの場合、受像層14における抗ウイルス剤の含有量が最も多く、次いでアンカー層13の抗ウイルス剤の含有量が多く、剥離層12の抗ウイルス剤の含有量が最も少ない構成、つまり受像層14、アンカー層13、剥離層12の順に抗ウイルス剤の含有量が減少していく構成であってもよい。
また、アンカー層13よりも剥離層12の方が抗ウイルス剤の含有量が多い構成であってもよい。
このように、転写フィルム21の各層において、抗ウイルス剤の含有量を適宜設定することにより、被転写物(例えばカード)の使用環境や、保管環境等に応じた抗ウイルス効果を被転写物に付与することができる。
【0051】
〔転写フィルム21の各層の膜厚〕
転写フィルム21の各層(剥離層12、アンカー層13および受像層14)の膜厚については、上述のとおりである。
ここで、転写フィルム21においては、絵柄印字層を設ける受像層14の膜厚が最も厚いことが好ましい。これにより、絵柄印字層の形成不良を抑制することができる。また、転写フィルム21において、受像層14における抗ウイルス剤の含有量が最も多い場合、受像層14の膜厚を他の層よりも厚くすることによって、被転写物により確実に優れた抗ウイルス性を付与することができる。
また、剥離層12とアンカー層13とでは、剥離層12の膜厚の方が厚いことが好ましい。アンカー層13は、被転写物(カード)の表面を保護する剥離層12と熱転写印字リボンによる画像が形成される受像層14とを、より強固に密着させるために設けられるものである。このため、アンカー層13の膜厚は、剥離層12と受像層14とを十分に密着できる厚みであればよい。また、アンカー層13の膜厚が厚すぎると、剥離層12による効果(表面保護の効果)が維持されない場合がある。したがって、剥離層12およびアンカー層13の膜厚の大小関係は「剥離層12の膜厚>アンカー層13の膜厚」となることが好ましい。
【0052】
以上、転写フィルム21の各層について説明した。
また、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1において転写フィルム21は、ポリエチレンワックスを含んで構成されてもよい。より具体的には、被転写物において最表面となる剥離層12にポリエチレンワックスを添加してもよい。これにより、例えば被転写物の最表層となる転写フィルム21の表面粗さが小さくなり、転写フィルム21の最表面における摩擦抵抗が低下する。これにより、例えばカードの最表面となる剥離層12に耐傷性や耐磨耗性が付与され、結果として、剥離層12を最表面とするカード等の被転写物の耐傷性や耐磨耗性を向上させることができる。
【0053】
剥離層12におけるポリエチレンワックスの含有量は、剥離層12における樹脂100質量部に対して0.6質量部以上1.0質量部以下の範囲内が好ましい。含有量が0.6質量部未満の場合、耐傷性や耐摩耗性を付与することができず、1.0質量部を超えると剥離層12に白化が生じる場合がある。ポリエチレンワックスの含有量が上述の範囲内であることにより、剥離層12の他の機能(抗ウイルス性、意匠性、耐久性、および密着性など)を維持しつつ、さらに被転写物に対して耐傷性や耐摩耗性を付与することができる。
【0054】
(製造方法)
本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1は、上記した構成を有するものであり、その製造方法は、次の第1工程及び第2工程の構成を有するものである。
(1)第1の工程
第1の工程は、基材シート11を準備する工程である。
(2)第2の工程
第2の工程は、基材シート11の一方の面に転写フィルム21を形成する工程である。第2の工程では、基材シート11の一方の面に抗ウイルス剤(有機系抗ウイルス剤または無機系抗ウイルス剤のいずれか)を添加した第一の樹脂材料を塗工して剥離層12を形成し、剥離層12上に抗ウイルス剤を添加した第二の樹脂材料を塗工してアンカー層13を形成し、アンカー層13上に抗ウイルス剤(有機系抗ウイルス剤)を添加した第三の樹脂材料を塗工して転写フィルム21の表層側に受像層14を形成する。
転写フィルム21の各層を形成する樹脂材料(第一から第三の樹脂材料)に対する抗ウイルス剤の添加方法は、有機溶剤中に溶かした抗ウイルス剤を樹脂中に分散させる方法、樹脂を乳化剤によりエマルジョン化させた液中に抗ウイルス剤を分散させる方法等がある。このように、本実施形態では、転写フィルム21の形成時において各層に抗ウイルス剤を添加している。
剥離層12、アンカー層13および受像層14は、グラビアコート法等の各種塗工方法により塗工すればよい。このとき、例えば受像層14は、剥離層12およびアンカー層13よりも膜厚が厚くなるように形成することが好ましい。
また、転写フィルム21の各層における抗ウイルス剤の含有量は、同量とすることが好ましい。また転写フィルム21の各層で、抗ウイルス剤の含有量が異なっていてもよい。この場合、剥離層12はアンカー層13および受像層14よりも抗ウイルス剤の添加量が多くなるように形成することが好ましい。また、受像層14を剥離層12およびアンカー層13よりも抗ウイルス剤の添加量が多くなるように形成してもよい。
【0055】
このような製造法により、被転写物に優れた抗ウイルス性を付与し、且つ被転写物の意匠性を向上することができる転写オーバーレイフィルムを得ることができる。
【0056】
(第一実施形態の効果)
(1)本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1は、基材シート11と、基材シート11の一方の面に形成された転写フィルム21と、を備え、転写フィルム21は、抗ウイルス剤を含有する複数の層で形成され、当該複数の層のうち少なくとも一層は、抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤を含有している。
これにより、転写オーバーレイフィルム1は、被転写物(転写対象物)の表面に優れた抗ウイルス性を付与し、且つ被転写物の意匠性を向上することができる。
(2)また、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1において、転写フィルム21における複数の層は、いずれも樹脂と抗ウイルス剤とを含んで形成され、当該複数の層は、抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤又は無機系抗ウイルス剤のうちいずれか一方を含有する層と、抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤を含有する層とで構成されてもよい。
これにより、転写オーバーレイフィルム1は、無機系抗ウイルス剤による持久性の高い抗ウイルス効果を発揮する層と、有機系抗ウイルス剤による即効性の高い抗ウイルス効果を発揮する層とによって、被転写物により優れた抗ウイルス効果を付与することができる。
【0057】
(3)また、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1において、転写フィルム21は、複数の層として、基材シート11の一方の面側に接する剥離層12と、転写フィルム21の表層側に位置する受像層14と、剥離層12と受像層14との間に位置するアンカー層13と、を有し、剥離層12及びアンカー層13は、抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤又は無機系抗ウイルス剤のうちいずれか一方を含有し、受像層14は、抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤を含有していてもよい。
これにより、転写オーバーレイフィルム1は、被転写物の表面側に配置される剥離層12、アンカー層13において持久性の高い抗ウイルス効果を発揮するとともに、受像層14において即効性の高い抗ウイルス効果を発揮することができる。さらに、受像層14における濁り(例えば白濁)や変色を確実に抑制し、被転写物の意匠性を確実に向上させることができる。
【0058】
(4)また、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1において、剥離層12、アンカー層13および受像層14の各層における有機系抗ウイルス剤の含有量は、樹脂100質量部に対して8質量部以上17質量部以下の範囲内であってもよい。
これにより、転写オーバーレイフィルム1に対して優れた抗ウイルス性を確実に付与することができ、結果として転写オーバーレイフィルム1は、被転写物に優れた抗ウイルス性を確実に付与することができる。さらに転写オーバーレイフィルム1の白濁がより抑制されるため、結果として転写オーバーレイフィルム1は、被転写物の意匠性をさらに向上することができる。
(5)また、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1において、剥離層12およびアンカー層13の各層における無機系抗ウイルス剤の含有量は、樹脂100質量部に対して0.7質量部以上3.0質量部以下の範囲内であってもよい。
これにより、転写オーバーレイフィルム1は、無機系抗ウイルス剤による優れた抗ウイルス性を被転写物に付与するとともに、無機系抗ウイルス剤を含む層(剥離層12またはアンカー層13のうち少なくともいずれか一方)の濁り(白濁)や変色を抑制して、被転写物の意匠性を向上することができる。
【0059】
(6)また、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1において、剥離層12又はアンカー層13のうち、いずれか一方が抗ウイルス剤として無機系抗ウイルス剤を含有し、他方が前記抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤を含有していてもよい。
これにより、転写オーバーレイフィルム1において、被転写物(例えばカード)の用途や使用される環境などに合わせて、受像層14以外の層に用いる抗ウイルス剤として、有機系抗ウイルス剤または無機系抗ウイルス剤のいずれかを適宜選択することができる。
(7)また、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1において、剥離層12およびアンカー層13のいずれも、抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤を含有していてもよい。
これにより、転写オーバーレイフィルム1は、被転写物にさらに優れた抗ウイルス効果(特に即効性のある抗ウイルス効果)を付与することができるとともに、被転写物の意匠性をさらに向上することができる。
【0060】
(8)また、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1において、剥離層12およびアンカー層13のいずれも、抗ウイルス剤として無機系抗ウイルス剤を含有していてもよい。
これにより、転写オーバーレイフィルム1は、例えばカードの表層側において持久性の高い抗ウイルス性を発揮し、カードの基材側の受像層14においてより即効性が高く優れた抗ウイルス性を発揮することができる。また、受像層14の濁りや変色を抑制して、被転写物(カード)の意匠性をより向上することができる。
(9)また、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1において、抗ウイルス剤の含有量は、転写フィルム21が有する複数の層のうち受像層14が最も多くてもよい。
これにより、転写オーバーレイフィルム1は、被転写物に転写された転写フィルム21の内部(例えば、カード基材側)においてより優れた抗ウイルス効果を発揮するとともに、転写フィルム21全体の濁りや変色を抑制して、被転写物の意匠性をより確実に向上することができる。
【0061】
(10)また、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1において剥離層12は、前記樹脂としてアクリル系樹脂を含んでもよい。
これにより、転写オーバーレイフィルム1は、剥離層12の材料と抗ウイルス剤との相性を良好とすることができる。
(11)また、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1において剥離層12の膜厚は、0.5μm以上3.0μm以下の範囲内であってもよい。
これにより、転写オーバーレイフィルム1は、剥離層12の耐久性および加工適性を向上することができる。
(12)また、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1においてアンカー層13の膜厚は、0.5μm以上2.0μm以下の範囲内であってもよい。
これにより、転写オーバーレイフィルム1は、剥離層12と受像層14の密着性を高めることができる。
【0062】
(13)また、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1において受像層14の膜厚は、1.0μm以上7.0μm以下の範囲内であってもよい。
これにより、例えば被転写物となるカードの製造時において、転写フィルム21をカード基材の表面に転写する場合に、受像層14はカード基材表面の凹凸を埋める目止めの役割を果たすことができる。
(14)また、本実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1において、転写フィルム21がポリエチレンワックスを含んでいてもよい。
これにより、転写オーバーレイフィルム1は、カード等の被転写物の耐傷性や耐磨耗性を向上させることができる。
【0063】
2.第二実施形態
(カード2の構成)
本発明の第二実施形態に係る樹脂製のカードについて、
図2から
図5を用いて説明する。
図2は、本発明の第二実施形態に係るカード2の一構成例を説明するための断面図である。本実施形態に係るカードは、樹脂を主材料とするカード型の情報記録媒体であり、例えば定期券,乗車券,入場券,プリペイドカード,クレジットカード,キャッシュカード,ポイントカード,各種有価証券,身分証明用のIDカード等として用いられる。
【0064】
(カードの構成)
図2に示すように、カード2は、コア基材16と、コア基材16の少なくとも一方の面に設けられた上記第一実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1の転写フィルム21と、を備える。本実施形態に係るカード2は、コア基材16の少なくとも一方の面に転写フィルム21を積層する構成を有することにより、優れた抗ウイルス性を有する。本開示及び本明細書において、抗ウイルス性を有する転写フィルム21を最表層とすることで抗ウイルス性が付与されたカードを「抗ウイルス性カード」という。
また、上述のように、転写フィルム21の複数の層(剥離層12、アンカー層13及び受像層14)のうち少なくとも一層(受像層14)は、有機系抗ウイルス剤を含んでいる。このため、転写フィルム21の濁りや変色が抑制されてカード2の意匠性が向上される。なお、
図2ではコア基材16の表裏の両面(表面16a,16b)に転写フィルム21が形成された構成例を示している。
【0065】
上述のように、カード2においてコア基材16に積層される転写フィルム21は、複数の層(剥離層12、アンカー層13および受像層14)を有しており、複数の層すべてに抗ウイルス剤が含まれている。このため、カード2の表面に擦れによる疵などが生じ、カード2の最表面(例えば転写フィルム21の剥離層12、アンカー層13)が削れた場合であっても、抗ウイルス効果を維持することができる。
【0066】
また、カード2は、コア基材16の少なくとも一方の表面(本例では、表面16a)と転写フィルム21との間に設けられ、所定の画像が形成(印画)された絵柄印字層15を備えている。
図2に示すように、絵柄印字層15は、転写フィルム21においてアンカー層13とは反対側の面に形成される。詳しくは後述するが、絵柄印字層15は、転写フィルム21をコア基材16に転写する前段階において、転写フィルム21の受像層14上に形成される。つまり、コア基材16の表面16aには、転写フィルム21と絵柄印字層15とで構成される絵柄印字オーバーレイフィルム210が積層されている。なお、カード2は、コア基材16の表裏両面(表面16a,16b)側に絵柄印字層15を備え、コア基材16の表裏両面に絵柄印字オーバーレイフィルム210が積層されていてもよい。
【0067】
〔絵柄印字層〕
図2に示すように、カード2のコア基材16には、転写フィルム21の受像層14に転写された絵柄印字層15が積層されている。具体的には、絵柄印字層15は、
図2中において、コア基材16の上側の表面(表面16a)に積層されており、コア基材16の上側の表面と転写フィルム21との間に配置されている。絵柄印字層15は、カード2の機能に応じた所望の情報(画像、文字情報)をカード券面に付与するために転写フィルム21の受像層14に形成される。絵柄印字層15として形成される画像や文字情報の種類は、特に限定されるものではない。
【0068】
絵柄印字層15は、転写リボン(後述の
図5に示す転写リボン72)の各色カラーパネル(インキ層)を熱溶融させて転写フィルム21の受像層14に形成している。
絵柄印字層15を形成する転写リボンは、基本構成例としてC(シアン)、M(マジェンタ)、Y(イエロー)、Bk(ブラック)の色パネル(インキ層)を用いて、様々な色を形成する。これらの色パネルに用いる顔料としては、種々の公知の顔料を使用することができ、例えばカーボンブラック、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、アンスラキノン系、イソインドリノン系等の顔料が挙げられる。これらの顔料は、単体で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、色相調整のために公知の染料を添加しても良い。
【0069】
転写リボンにおいて、上述の色材を有する各インキ層のバインダー樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、スルホンアミド樹月旨、ポリエステルポリオール樹脂、石油系樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、スチレン及びその誘導体、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ヒドロキシメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等のメタクリァレ酸エステル類及びメタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル系単量体の単独あるいは共重合体などを用いることができる。また、これらの樹脂は単体で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
【0070】
また、転写リボンの各色インキ層には上述の色材(顔料・染料)やバインダー樹脂の他に、適宜、離型剤、軟化剤、界面活性剤といった添加剤を添加することができる。
【0071】
絵柄印字層15の膜厚は、受像層14に転写される転写リボンの膜厚に応じて設計されるものであるが、0.3μm以上5.0μm以下の範囲内であることが好ましい。絵柄印字層15の膜厚が0.3μm未満であると、膜厚が薄くなり過ぎて絵柄の認識が悪くなる場合がある。また絵柄印字層15の膜厚が5.0μmを超えると、膜厚が厚くなり過ぎて、転写リボンからのインキの転移が悪くなり、絵柄(画像)のシャープさが失われる場合がある。
【0072】
また、
図2では、絵柄印字層15がコア基材16の上側の表面(表面16a)における転写フィルム21に形成され、コア基材16の上側の表面に積層されているが、本開示はこれに限られない。カード2において、コア基材16の表裏両面(表面16a,16b)に絵柄印字層15が積層されていてもよい。つまり、絵柄印字層15は、コア基材16の下側の表面(表面16b)における転写フィルム21に形成されてもよい。これにより、コア基材16の表裏両面に所望の画像や文字情報を形成し、カード2の表裏の券面において所望の情報を表示することができる。
【0073】
ここで
図3を用いて絵柄印字層15の一例について説明する。
図3は、カード2の一構成例を説明するための平面図である。
本例では、一例としてカード2がIDカードである場合を例示している。このため、絵柄印字層15として、個人識別を行うための個人識別画像15aが形成されている。本例では、個人識別画像15aは、顔写真である。また、個人識別画像15a以外にも、個人識別を行うための識別文字情報15bや、カード種類を示す一般文字情報15c等が絵柄印字層15として形成されている。本例では、識別文字情報15bとして、例えば、個人の氏名や所属組織に関する情報、カードの有効期限などが含まれている。
このように、本例においてカード2は、絵柄印字層15として個人識別画像15a、識別文字情報15b、一般文字情報15cを備えることにより、身分証明書の役割を果たすことができる。なお、本開示はこれに限られず、絵柄印字層15として種々の画像や文字情報を受像層14に形成し、受像層14を有する絵柄印字オーバーレイフィルム210をコア基材16に積層することで、カード2の機能に応じた所望の情報(画像、文字情報)をカード券面に付与することができる。
【0074】
また、
図3では理解を容易にするために図示を省略しているが、
図2に示すように絵柄印字層15の上層として転写フィルム21が積層されている。上述のように、転写フィルム21において絵柄印字層15が形成される受像層14には、抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤が含有されている。これにより、受像層14ひいては転写フィルム21の濁りや変色が抑制され、絵柄印字層15の視認性を向上することができる。したがって、カード2の意匠性を向上することができる。
【0075】
また従来は、IDカードのように、カードごとに個別の情報を付加する必要がある場合、工場における型抜き等によって外装フィルムがラミネートされたカードを作製した後に、追加の構成としてフィルムの最表層に画像や文字情報を形成していた。このため、例えば、外装フィルムに抗ウイルス剤が含有されていたとしても、その上に画像や文字情報が印画・印字されてしまうため、抗ウイルス効果が十分に発揮されていなかった。これに対し、本実施形態に係るカード2では、転写フィルム21の受像層14に絵柄印字層15が形成される。このため、絵柄印字層15の上層として、抗ウイルス剤を含有した転写フィルム21が配置される。これにより、カードごとに個別の情報が付加される場合であっても、カード2は優れた抗ウイルス効果を発揮することができる。
【0076】
ここで、コア基材16への転写フィルム21の転写の概要を説明する。なお、カード2の製造方法の詳細は、後述する。
図4は、抗ウイルス性カードのラミネート方法の一例を示す概念図である。
カード2は、ラミネート加工により転写フィルム21をコア基材16に転写することで形成される。具体的には、コア基材16の表面上に上記第一実施形態に係る転写オーバーレイフィルム1を配置し、ラミネート加工により転写フィルム21をコア基材16の表面に接着させて基材シート11を除去(剥離)し、転写フィルム21をコア基材16に転写する。
【0077】
本例では、コア基材16の表裏両面(表面16a,16b)への転写フィルム21の転写について説明する。
図4に示すように、コア基材16の表面16aと転写オーバーレイフィルム1とを対向配置し、転写フィルム21の表層に位置する受像層14を表面16a側に配置した状態で、ラミネート加工を行い、転写フィルム21を表面16aに転写する。また、表面16aに転写される転写フィルム21には、受像層14には絵柄印字層15が形成されている。
つまり、表面16a上には、転写フィルム21と絵柄印字層15とで構成される絵柄印字オーバーレイフィルム210が積層される。
また
図4に示すように、転写オーバーレイフィルム1とコア基材16の表面16bとを対向配置し、転写フィルム21の表層に位置する受像層14を表面16b側に配置した状態で、ラミネート加工を行い、転写フィルム21を表面16bに転写する。こうして、コア基材16の表裏両面(表面16a,16b)に転写フィルム21を転写することができる。
【0078】
なお、上述のように、カード2は、少なくともコア基材16の一方の表面に転写フィルム21が転写されていればよく、
図4に示すように、コア基材16の表裏両面(表面16a,16b)に転写フィルム21を転写してもよいし、表面16aのみに転写フィルム21を転写してもよいし、表面16bのみに転写フィルム21を転写してもよい。
また、カード2が、IDカードのようにカードごとに個別の情報を付与する必要がない場合には、転写フィルム21に絵柄印字層15を設けなくてもよい。
【0079】
(コア基材16)
カード2のコア基材16としては、例えば転写オーバーレイフィルム1における基材シート11と同様に、熱可塑性樹脂を用いることができる。
コア基材16に用いる熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体、エチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用できる。
【0080】
本実施形態では、一般的なカード用のコア基材16として、熱可塑性樹脂のうちポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリ塩化ビニル(PVC)を好適に用いることができる。
【0081】
コア基材16、絵柄印字層15および転写フィルム21を含めたカード2の厚さは、JIS規格(JISX6301:2005)で規定されたカードの厚さ(680μm以上840μm以下)の範囲内であることが好ましい。したがって、転写オーバーレイフィルム1において基材シート11の厚さを除いた転写フィルム21の厚さを考慮した上で、カード2の厚さが当該範囲内となるように、コア基材16、絵柄印字層15の厚さを適宜設計すればよい。
また、カード2の厚さは、上記JIS規格の規定外である、0.15mm以上0.6mm以下の薄膜カードに対応するように構成してもよい。
【0082】
(カード2の製造方法)
本実施形態に係るカード2は、上記した構成を有するものであり、その製造方法は、次の第1工程及び第2工程の構成を有するものである。
以下、
図5を用いて、カード2の製造方法について説明する。
図5は印字装置7を用いたカード2の製造方法の一例を説明する図である。
【0083】
(1)第1の工程
第1の工程は、転写フィルム21の受像層14に、所定の画像を形成した絵柄印字層15を設ける工程である。つまり、第1の工程では、転写フィルム21に絵柄印字層15を設けて絵柄印字オーバーレイフィルム210が形成される。つまり第1の工程では、転写フィルム21の受像層14に、所定の画像を形成した絵柄印字層
図5に示すように、第1の工程では、印字装置7において熱転写リボンである転写リボン72をサーマルヘッド73により熱溶融させて転写オーバーレイリボン71に絵柄印字層15を転写させる。転写オーバーレイリボン71は、円筒管状の巻き出しロール711に巻き付けられたロール状の転写オーバーレイフィルム1である。
【0084】
具体的には、第1の工程では、転写リボン72をサーマルヘッド73により熱溶融させて、各色のインキ層を転写オーバーレイリボン71(転写オーバーレイフィルム1)の受像層14に転写する。
図5では、図示を省略しているが、巻き出しロール711から巻き出された転写オーバーレイリボン71において、サーマルヘッド73側には受像層14が配置される。これにより、所定の画像や文字情報が受像層14上に転写されて、絵柄印字層15が形成される。例えば、転写オーバーレイリボン71がIDカードに転写される場合には、個人識別画像15a(
図3参照)や、識別文字情報15b等が受像層14上に印画されて絵柄印字層15が形成される。なお、第1の工程において絵柄印字層15の形成に用いる転写リボン72は、巻出しロール721からサーマルヘッド73を経由して印画後に巻取りロール722へ巻き取られる。
【0085】
(2)第2の工程
第2の工程は、コア基材16に転写オーバーレイリボン71(転写オーバーレイフィルム1)の転写フィルム21を転写する工程である。第2の工程では、上述のように、コア基材16の一方の表面と転写オーバーレイリボン(転写オーバーレイフィルム1)の転写フィルム21とを対向配置し、転写フィルム21が有する複数の層の表層に位置する受像層14をコア基材16の一方の表面側に配置した状態でラミネート加工を行い、転写フィルム21をコア基材16の当該一方の表面に転写する。
【0086】
図5に示すように、第2の工程では、例えば貼合ローラ75によるラミネートプレスによって、コア基材16の一方の表面(例えば表面16a)に転写オーバーレイリボン71(転写オーバーレイフィルム1)の転写フィルム21が転写され、少なくともコア基材16の一方の表面を転写フィルム21が覆うカードが作製される。なお、コア基材16の表裏両面に転写フィルム21を転写する場合は、貼合ローラ75による転写フィルム21の転写を、コア基材16の表裏両面に対して実行すればよい。
【0087】
図5では図示を省略しているが、巻き出しロール711から巻き出された転写オーバーレイリボン71において、貼合ローラ75側には基材シート11が配置され、コア基材16側には転写フィルム21の受像層14が配置されている。
また、貼合ローラ75は、例えば熱ローラ(ヒートローラ)であって、貼合ローラ75により転写オーバーレイリボン71が基材シート11側から加熱加圧され、転写フィルム21がコア基材16の一方の表面に圧着されて、コア基材16の一方の表面と転写フィルム21とが貼り合わされる。これにより、基材シート11が剥離し、転写フィルム21がコア基材16の一方の表面に転写される。
【0088】
また本例では、絵柄印字層15が設けられた転写フィルム21がコア基材16の一方の表面に転写される。これにより、所定の画像や文字情報がカード2に付与される。例えば絵柄印字層15として、個人識別画像15a(
図3参照)や、識別文字情報15b等が受像層14上に印画・印字されている場合、カード2には、個人識別機能が付与され、IDカードとして用いることができる。
なお、第1の工程及び第2の工程において、転写オーバーレイリボン71は巻出しロール711からプラテンローラ74、貼合ローラ75を経由して巻取りロール712に巻き取られる。貼合ローラ75を経由後、すなわち転写フィルム21の転写後の転写オーバーレイリボン71は基材シート11のみとなっている。
【0089】
このような製造法により、
図2に示すように、コア基材16の少なくとも一方の表面に、抗ウイルス剤を含有する複数の層を有する転写フィルム21を積層したカード2を得ることができる。また、上述のように、転写フィルム21が有する複数の層のうち少なくとも一層は有機系抗ウイルス剤を含有している。
これにより、被転写物に優れた抗ウイルス性を付与し、且つ被転写物の意匠性を向上することができる抗ウイルス性の転写オーバーレイフィルム1(転写オーバーレイリボン71)を用いて、抗ウイルス性を有するカードを得ることができる。
【0090】
また、本開示におけるカード2の製造方法はこれに限られず、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷等、既知の印刷方法により、絵柄印字層をコア基材上に直接印刷してもよい。
また、第2工程におけるラミネート加工は、加熱加圧によるラミネートプレスに限られず、コールドラミネートであってもよい。この場合、貼合ローラ75は、熱ローラでなく加圧用のローラであればよい。
【0091】
(第二実施形態の効果)
(15)本実施形態に係るカード2は、コア基材16と、コア基材16の少なくとも一方の面側に積層された転写オーバーレイフィルム1の転写フィルム21と、を備える。
これにより、カード2は、転写オーバーレイフィルム1の転写フィルム21によって表面に優れた抗ウイルス性が付与され、且つ意匠性が向上される。
(16)また本実施形態に係るカード2は、コア基材16の少なくとも一方の表面と転写フィルム21との間に設けられ、所定の画像が形成された絵柄印字層15を備えていてもよい。
これにより、カード2は、表裏の券面において所望の情報を表示することができる。
【0092】
3.第三実施形態
(カード3の構成)
本開示の第三実施形態に係るカードについて、
図6から
図10を用いて説明する。
図6は、本開示の第三実施形態に係るカードの概略構成を示す断面模式図である。
図6に示すように、カード3は、コア基材16の一方の表面側に積層された転写フィルム21が、コア基材16の一方の表面に加えて、側面の少なくとも一部を覆う点で、上記第二実施形態に係るカード2と相違する。
以下、カード3について説明する。なお、カード2と同様の構成には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0093】
図6に示すようにカード3は、コア基材16の少なくとも一方の表面とコア基材の側面の少なくとも一部とが、転写フィルム21に連続的に覆われている。ここで「連続的に覆う」とは、転写フィルム21に隙間なく覆われていることを示す。本実施形態に係るカード3は、コア基材16の少なくとも一方の表面側に積層された転写フィルム21が当該一方の表面と側面の一部とを連続的に覆う構成を有することにより、側面での細菌の増殖やウイルスの活性化をも抑制することができる。このため、カード3にはさらに優れた抗ウイルス性が付与される。
【0094】
ここで、
図6ではコア基材16の表裏の両面(表面16a,16b)側に転写フィルム21が形成され、各転写フィルム21がコア基材16の表裏の両表面と側面の少なくとも一部とを連続的に覆う構成例を示している。
具体的には、カード3において、コア基材16の表面16a側に積層された転写フィルム21は、コア基材16の側面16cの一部(高さ方向の上半分の領域)と、表面16aの全面とを連続的に(隙間なく)覆っている。
また、例えば、コア基材16の表面16b側に積層された転写フィルム21は、コア基材16の側面16cの一部(高さ方向の下半分の領域)と、表面16bの全面とを連続的に(隙間なく)覆っている。これにより、本例では、コア基材16の外表面全体(表面16a,16b,側面16c)が連続的に転写フィルム21に覆われている。これにより、カード3に極めて優れた抗ウイルス性を付与することができる。
【0095】
ここで、本実施形態におけるコア基材16への転写フィルム21の転写の概要を説明する。なお、カード3の製造方法の詳細は、後述する。
図7は、抗ウイルス性カードのラミネート方法の一例を示す概念図である。本実施形態においては、
図7に示すように転写フィルム21の表面積がコア基材16の表面(16a,16b)の面積よりも大きく構成している。これにより、ラミネート加工により転写フィルム21をコア基材16に転写する際に、一の転写フィルム21によって、コア基材16の一方の表面に加えて、側面の少なくとも一部を連続的に覆うことができる。
【0096】
具体的には、コア基材16の表面16a側に積層する転写フィルム21の表面積を、表面16aの面積、および側面16cの高さ方向の上半分の領域の面積を合わせた大きさに形成する。これにより、転写フィルム21の表層に位置する受像層14を表面16a側に配置した状態で、ラミネート加工を行い、転写フィルム21を表面16aに転写することで、表面16aと側面16cの高さ方向の上半分の領域とを覆うことができる。
また、同様に、コア基材16の表面16b側に積層する転写フィルム21の表面積を、表面16bの面積、および側面16cの高さ方向の下半分の領域の面積を合わせた大きさに形成する。これにより、転写フィルム21の表層に位置する受像層14を表面16b側に配置した状態で、ラミネート加工を行い、転写フィルム21を表面16bに転写することで、表面16bと側面16cの高さ方向の下半分の領域とを覆うことができる。
【0097】
(カード3の製造方法)
本実施形態に係るカード3は、上記した構成を有するものであり、その製造方法は、次の第3工程及び第4工程の構成を有するものである。
以下、
図8を用いて、カード3の製造方法について説明する。
図8は印字装置8を用いたカード3の製造方法の一例を説明する図である。
【0098】
(1)第3の工程
第3の工程は、転写フィルム21の受像層14に、所定の画像を形成した絵柄印字層15を設ける工程であって、上記第二実施形態における第1の工程と同様である。
図8に示すように、第3の工程では、印字装置8において転写リボン82をサーマルヘッド83により熱溶融させて転写オーバーレイリボン81に絵柄印字層15を転写させる。転写オーバーレイリボン81は、円筒管状の巻き出しロール811に巻き付けられたロール状の転写オーバーレイフィルム1である。つまり、転写オーバーレイリボン81は、上記第二実施形態における転写オーバーレイリボン71と同様の構成である。
【0099】
具体的には、第3の工程では、サーマルヘッド83によるパルス熱により、熱転写リボンである転写リボン82の各インキ層を転写オーバーレイリボン81(転写オーバーレイフィルム1)の受像層14に転写(転移)する。
図8では、図示を省略しているが、巻き出しロール811から巻き出された転写オーバーレイリボン81において、サーマルヘッド83側には受像層14が配置される。これにより、上記第1の工程と同様に、所定の画像や文字情報が受像層14上に転写されて、絵柄印字層15が形成される。なお、第3の工程において絵柄印字層15の形成に用いる転写リボン82は、巻出しロール821からサーマルヘッド83を経由して巻取りロール822に巻き取られる。
【0100】
(2)第4の工程
第4の工程は、上第二実施形態における第2の工程と同様に、コア基材16に転写オーバーレイリボン81(転写オーバーレイフィルム1)の転写フィルム21を転写する工程である。第4の工程では、上述のように、コア基材16の一方の表面と転写オーバーレイリボン(転写オーバーレイフィルム1)の転写フィルム21とを対向配置し、転写フィルム21が有する複数の層の表層に位置する受像層14をコア基材16の一方の表面側に配置した状態でラミネート加工を行い、転写フィルム21をコア基材16の前記一方の面に転写する。本実施形態において、第4の工程では、ラミネート加工において、転写フィルム21でコア基材16の一方の表面とコア基材16の側面の少なくとも一部とが連続的に覆われる。
【0101】
図8に示すように、第4の工程では、窪み付き貼合ローラ85によるラミネートプレスによって、コア基材16の一方の表面(例えば表面16a)に転写オーバーレイリボン71(転写オーバーレイフィルム1)の転写フィルム21が転写される。これにより、コア基材16の一方の表面よりも大きい表面積の転写フィルム21が、コア基材16に転写される。
なお、本例ではコア基材16において、転写フィルム21に絵柄印字層15を設けた絵柄印字オーバーレイフィルム210がラミネートされる例を説明するが、絵柄印字層15を設けていない転写フィルム21も同様にしてラミネートすることができる。
【0102】
ここで、窪み付き貼合ローラ85の構成について、
図9、
図10を用いて説明する。
図9は、窪み付き貼合ローラ85の一構成例を示す正面斜視図である。また、
図10は、窪み付き貼合ローラ85の機構の一例を示す図である。
図9に示すように、窪み付き貼合ローラ85は、抗ウイルス性カードの製造時においてラミネート加工に用いる貼合ローラであって、凹部88を備えている。例えば窪み付き貼合ローラ85は熱ローラ(ヒートローラ)であって、加熱加圧によってコア基材16に絵柄印字オーバーレイフィルム210をラミネートする。
具体的には、窪み付き貼合ローラ85は2つの凹部88a,88bを有している。凹部88a,88bは同等の構成であるため、以下凹部88aを例にとって説明する。
【0103】
凹部88aは、内底面881と内壁面882とで構成されている。凹部88aの内底面881は、コア基材16と同様の矩形状である。また内底面881の表面積は、絵柄印字オーバーレイフィルム210で被覆されたコア基材16の表面(表面16a,16b)の面積と同等である。つまり、内底面881の表面積は、少なくとも絵柄印字オーバーレイフィルム210の分だけ、コア基材16の表面の面積よりも大きくなっている。
また、凹部88aの内壁面882の高さは、絵柄印字オーバーレイフィルム210で被覆されたコア基材16の側面(側面16c)の少なくとも半分の高さである。つまり、内壁面882の表面積は、コア基材16における側面16cの、高さ方向の半分の領域の面積よりも大きい。
窪み付き貼合ローラ85がこのような構成の凹部88を備えることにより、コア基材16の一方の表面よりも大きい表面積(具体的には、表面16a又は表面16bの面積、および側面16cの高さ方向の半分の領域の面積を合わせた大きさ)の絵柄印字オーバーレイフィルム210を、コア基材16に転写することができる。
【0104】
図10に示すように、本実施形態における第4工程において、窪み付き貼合ローラ85を用いて、コア基材16に転写オーバーレイリボン81の転写フィルム21に絵柄印字層15を設けた絵柄印字オーバーレイフィルム210をラミネートする。このとき、
図10に示すように、まず凹部88aの内壁面882がコア基材16の移動方向102の先頭側の側面16cに、絵柄印字オーバーレイフィルム210をラミネートする。さらに、矢印9で示す方向に窪み付き貼合ローラ85が回転することに伴い、凹部88aの内底面881がコア基材の一方の表面(例えば表面16a)上を移動しながら絵柄印字オーバーレイフィルム210をラミネートし、最後に移動方向102の後尾側の側面16cを絵柄印字オーバーレイフィルム210でラミネートする。
【0105】
これにより、
図10の下段に示すように、コア基材16の一方の表面(例えば表面16a)の面積、および側面16cの高さ方向の半分の領域(側面16cを高さ方向に二等分した領域のうち一の領域)の面積を合わせた大きさの絵柄印字オーバーレイフィルム210がコア基材16の一方の面側に積層される。
【0106】
図8に戻って、上述のように、窪み付き貼合ローラ85によって一方の表面に絵柄印字オーバーレイフィルム210をラミネートしたコア基材16は、スイングローラ86により表裏反転され、移動ベルト87を通して、再度、他方の表面(例えば表面16b)および側面16cの高さ方向の残り半分の領域(側面16cを高さ方向に二等分した領域のうち残余の領域)をラミネートされる。
【0107】
このように、本実施形態に係る窪み付き貼合ローラ85において、凹部88(88a,88b)の内面の表面積は、カード3のコア基材16の表面(表面16a,16b)の面積よりも大きい。これにより、窪み付き貼合ローラ85を用いることで、コア基材16の少なくとも一方の表面と側面16cの少なくとも一部とを連続して覆うことができる。
また、凹部88(88a,88b)の内壁面882は、カード3のコア基材16の側面16cの少なくとも半分の高さを有している。これにより、窪み付き貼合ローラ85を用いることでコア基材16の側面16cの少なくとも半分の位置から、コア基材16の表面(表面16a又は表面16b)の全面を、絵柄印字オーバーレイフィルム210(転写フィルム21)により連続して覆うことができる。
【0108】
なお、第3の工程及び第4の工程において、転写オーバーレイリボン81は巻出しロール811からプラテンローラ84、窪み付き貼合ローラ85を経由して巻取りロール812に巻き取られる。窪み付き貼合ローラ85を経由後、すなわち絵柄印字オーバーレイフィルム210の転写後の転写オーバーレイリボン81は基材シート11のみとなっている。
【0109】
このような製造法により、
図6に示すように、コア基材16の少なくとも一方の表面(表面16aまたは表面16b)とコア基材16の側面16cの少なくとも一部とが、転写フィルム21(又は絵柄印字オーバーレイフィルム210)に連続的に覆われたカード3を得ることができる。
これにより、被転写物に優れた抗ウイルス性を付与し、且つ被転写物の意匠性を向上することができる抗ウイルス性の転写オーバーレイフィルム1(転写オーバーレイリボン81)を用いて、さらに優れた抗ウイルス性を有するカードを得ることができる。
【0110】
(第三実施形態の効果)
(17)本実施形態に係るカード3は、コア基材16の少なくとも一方の表面(表面16a,16b)とコア基材16の側面16cの少なくとも一部とが、転写フィルム21に連続的に覆われていてもよい。
これにより、転写オーバーレイフィルム1の被転写物としてのカード3において、さらに優れた抗ウイルス性が付与される。
(18)本実施形態に係る貼合ローラ85は、カード3の製造方法において、ラミネート加工に用いる貼合ローラであって、表面に凹部88を備え、凹部88は、内底面881の表面積がカード3のコア基材16の一方の表面(表面16a,16b)の面積よりも大きい。
これにより、窪み付き貼合ローラ85を用いることで、カード3のコア基材16の少なくとも一方の表面と側面16cの少なくとも一部とを連続して覆うことができる。
(19)また本実施形態に係る貼合ローラ85において、凹部88の内壁面882は、カード3のコア基材16の側面16cの少なくとも半分の高さを有している。
これにより、窪み付き貼合ローラ85を用いることで、カード3のコア基材16の側面16cの少なくとも半分の位置から、コア基材16の表面(表面16a又は表面16b)の全面を、転写フィルム21により連続して覆うことができる。
【0111】
<実施例>
以下本発明を実施例によってさらに具体的かつ詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0112】
〔実施例1〕
厚さ16μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)を材料とする基材シート上にグラビアコート法により剥離層をドライ膜厚が1.5μmとなるように塗工した。さらにその上にアンカー層をドライ膜厚1.0μmとなるように塗工し、さらにその上に受像層をドライ膜厚が5.0μmとなるように塗工した。これにより、基材シートの一方の面上に転写フィルムを設けた。
転写フィルムの各層(剥離層、アンカー層、受像層)中には、それぞれ樹脂100質量部に対して8.5質量部の有機系抗ウイルス剤を含有させた。有機系抗ウイルス剤としては「積水マテリアルソリューションズ株式会社製、ウィルテイカーVM」を用いた。これにより、抗ウイルス性を有する転写オーバーレイフィルムを得た。
【0113】
上述の転写オーバーレイフィルムを幅60mmのリボンにして、印字装置の中間転写箔(オーバーレイ)として設置した。この転写オーバーレイフィルムの受像層上に、顔料パネルから成る転写リボンを使ってサーマルヘッドにより顔写真等を印字(印画)して、絵柄印字層を設け、絵柄印字オーバーレイフィルムを形成した。
印字装置の熱ローラにより、ポリ塩化ビニルを材料とするコア基材の表裏両面に、絵柄印字オーバーレイフィルムを転写した。ラミネート条件は、加熱温度160℃、搬送スピード30mm/秒とし、コア基材の片面ずつに絵柄印字オーバーレイフィルムの熱転写を行った。これにより、表裏両面に絵柄印字オーバーレイフィルムを積層したカードを作製した。
【0114】
〔実施例2〕
転写フィルムの各層(剥離層、アンカー層、受像層)中に、それぞれ樹脂100質量部に対して8.0質量部の有機系抗ウイルス剤を含有させた。
それ以外は実施例1と同様にして、本実施例による絵柄印字オーバーレイフィルムおよびカードを得た。
〔実施例3〕
転写フィルムの各層(剥離層、アンカー層、受像層)中に、それぞれ樹脂100質量部に対して17.0質量部の有機系抗ウイルス剤を含有させた。
それ以外は実施例1と同様にして、本実施例による絵柄印字オーバーレイフィルムおよびカードを得た。
【0115】
〔比較例1〕
転写フィルムの各層(剥離層、アンカー層、受像層)中に抗ウイルス剤を添加しなかった。
それ以外は実施例1と同様にして、本比較例による絵柄印字オーバーレイフィルムおよびカードを得た。
〔比較例2〕
転写フィルムの各層(剥離層、アンカー層、受像層)中に、それぞれ樹脂100質量部に対して1.0質量部の無機系抗ウイルス剤を含有させた。
それ以外は実施例1と同様にして、本比較例による絵柄印字オーバーレイフィルムおよびカードを得た。
【0116】
<評価>
〔抗ウイルス性能〕
各実施例および各比較例のカードについて、IS0 21702に準じて抗ウイルス試験を実施した。50mm四方の試料片を滅菌シャーレ内に置き、0.4mLのウイルス液を試料上に接種した。このとき、ウイルス液は、ネコカリシウイルスおよびインフルエンザウイルスを含むウイルス液を使用した。その後、試料上に40mm四方のポリエチレンフィルムを被せた。シャーレに蓋をした後、温度25℃・湿度90%以上の条件で、試料とウイルスを接種させた。所定時間(24時間)静置した。静置後、試験片のウイルスを洗い出して回収した後、ウイルス感染価を測定した。抗ウイルス活性値は、次式により算出した。
R1=Ut1-At1
R1:抗ウイルス活性値(antiviral activity)
Ut1:無加工品の24時間静置後のウイルス感染価(PFU/cm2)の常用対数
At1:抗ウイルス加工品の24時間静置後のウイルス感染価(PFU/cm2)の常用対数の平均
抗ウイルス性能試験結果のうち、ネコカリシウイルスおよびインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性値(R1)がいずれも2.0以上のものは、抗ウイルス性能が認められる。また抗ウイルス性能が認められたカードに対して、以下の抗菌性能試験を実施した。ここでの「抗ウイルス性能」は、ウイルスを不活化することを示す抗ウイルスの性能を示す。
【0117】
[抗菌性能]
ネコカリシウイルスおよびインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性値(R1)がいずれも2.0以上の実施例によるカードについて、JIS Z 2801に準じて抗菌性試験を実施した。
50mm四方の試料片を滅菌シャーレ内に置き、0.4mLの菌液を試料上に接種した。この時菌液は、黄色ブドウ球菌および大腸菌を含む菌液を使用した。その後、試料上に40mm四方のポリエチレンフィルムを被せた。シャーレに蓋をした後、温度35℃・湿度90%以上の条件で培養した。静置後、試料片上の試験菌を洗い出して回収した後、1cm2あたりの生菌数を測定した。抗菌活性値は、次式により算出した。
R2=Ut2-At2
R2:抗菌活性値
Ut2:無加工品の24時間後の1cm2あたりの生菌数の対数値の平均値
At2:抗菌加工試料片の24時間後の1cm2あたりの生菌数の対数値の平均値
抗菌性能試験結果のうち、黄色ブドウ球菌および大腸菌に対する抗菌活性値(R2)がいずれも2.0以上のものは、抗菌性があると認められる。ここでの「抗菌性能」は、細菌を増殖させないことを示す抗菌の性能を示す。
【0118】
〔意匠性〕
各実施例及び各比較例の各カードの製造後に外観を目視で確認するカードの外観検査を行い、以下の基準により「〇」、「△」、「×」の3段階で官能評価した。
<評価基準>
〇:カード外観に白濁、ヌケ(絵柄印字層の形成不良(印字の抜け))等が認められない
△:カード外観にやや白濁、ヌケ等が認められる
×:カード外観に白濁、ヌケ等が認められる
【0119】
以上の評価結果を表1に示す。なお評価結果判定において、「〇」を合格「×」を不合格とする。また、総合的な判定として、以上の評価結果がすべて「△」以上であれば「〇」(合格)、以上の評価結果として1つでも「×」又は「-」がある場合を「×」(不合格)とした。
また表1中の「転写フィルム」欄の「-」は、転写フィルムの各層に抗ウイルス剤を添加していない場合を示す。また表1中の評価欄の「-」は、抗ウイルス活性値(R1)が2.0未満であり、抗菌性試験を実施していない場合を示す。
【0120】
【0121】
表1中に表されるように、実施例1~3のカードは、抗ウイルス性の評価結果において、抗ウイルス活性値(R1)がいずれも2以上(合格)であった。さらに実施例1~3のカードは、抗菌性の評価結果においても、抗菌活性値(R2)がいずれも2以上(合格)であった。すなわち、実施例1~3の絵柄印字オーバーレイフィルム(転写オーバーレイフィルム)は、被転写物であるカードに優れた抗ウイルス性(抗ウイルスおよび抗菌性)を付与できることが分かった。
さらに、実施例1~3の転写箔を転写したカードは、いずれも意匠性の評価が「△」以上(合格)であった。すなわち、実施例1~3の絵柄印字オーバーレイフィルム(転写オーバーレイフィルム)は被転写物であるカードの意匠性を向上することができることが分かった。
【0122】
一方、比較例1および2のカードは、抗ウイルス性能試験において、抗ウイルス活性値(R1)がいずれも判定不能(表1中の「-」)であり、抗ウイルス性の評価結果がいずれも不合格であった。さらに、比較例1および2のカードは、抗菌性能試験においても、抗菌活性値(R2)がいずれも判定不能(表1中の「-」)であり、抗菌性の評価結果がいずれも不合格であった。すなわち、比較例1および2の絵柄印字オーバーレイフィルム(転写オーバーレイフィルム)は、被転写物であるカードに十分な抗ウイルス性を付与できないことが分かった。
また、比較例2のカードでは、転写フィルムの全ての層(剥離層、アンカー層、受像層)に無機系抗ウイルス剤が添加されたことで、受像層と印字装置の転写リボンとの相性が悪化し、ピンホールの発生等による絵柄印字層の形成不良(印字の抜け等)が生じた。このため、比較例2のカードは、意匠性評価が「×」となり、実施例1~3よりも低い評価となった。つまり、転写フィルムの全ての層(剥離層、アンカー層、受像層)に無機系抗ウイルス剤が添加されると、被転写物(カード)の意匠性が低減されることが分かった。
【0123】
つまり、複数の層のうち少なくとも一層が抗ウイルス剤として有機系抗ウイルス剤を含有している転写オーバーレイフィルムは、被転写物に優れた抗ウイルス性を付与し、且つ被転写物の意匠性を向上できることが分かった。
また、実施例3に比べて、実施例1、2において意匠性の評価に差が出たのは、転写オーバーレイフィルムの転写フィルム各層における抗ウイルス剤(有機系抗ウイルス剤)の含有量が影響しているものと推測できる。すなわち、実施例1、2の転写オーバーレイフィルムにおいて、転写フィルム各層における抗ウイルス剤の含有量は8質量部以上12質量部以下の範囲内であり、これにより、意匠性の評価において有利であるものと推測できる。
【0124】
なお、本開示の転写オーバーレイフィルム及び抗ウイルス性カードは、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0125】
1 転写オーバーレイフィルム
2、3 カード
7、8 印字装置
11 基材シート
12 剥離層
13 アンカー層
14 受像層
15 絵柄印字層
16 コア基材
21 転写フィルム
71、81 転写オーバーレイリボン
72、82 転写リボン
73、83 サーマルヘッド
74、84 プラテンローラ
75、85 貼合ローラ
86 スイングローラ
87 移動ベルト
88、88a、88b 凹部
210 絵柄印字オーバーレイフィルム