(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060421
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/135 20060101AFI20230421BHJP
【FI】
A61B3/135
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170020
(22)【出願日】2021-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】森嶋 俊一
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA01
4C316AA07
4C316AA09
4C316AB16
4C316AB19
4C316FY02
4C316FY04
4C316FY05
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】ムラの少ないスリット光で被検眼を照明するための新たな技術を提供する。
【解決手段】眼科装置は、光源と、虹彩絞りと、集光部材と、スリットと、イメージセンサとを含む。光源は、被検眼の虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能である。虹彩絞りは、光源と光学的に略共役な位置に配置され、光軸から偏心した位置に光源からの照明光が通過する開口が形成されている。集光部材は、光源と虹彩絞りとの間に配置されている。スリットは、被検眼の眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、開口を通過した照明光が通過するスリット状開口が形成されている。イメージセンサは、スリットを通過した照明光で照明された眼底からの戻り光を受光する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能な光源と、
前記光源と光学的に略共役な位置に配置され、光軸から偏心した位置に前記光源からの照明光が通過する開口が形成された虹彩絞りと、
前記光源と前記虹彩絞りとの間に配置された集光部材と、
前記被検眼の眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、前記開口を通過した前記照明光が通過するスリット状開口が形成されたスリットと、
前記スリットを通過した前記照明光で照明された前記眼底からの戻り光を受光するイメージセンサと、
を含む、眼科装置。
【請求項2】
前記集光部材の焦点位置に、前記前記虹彩絞りの開口が配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記虹彩絞りには、2以上の開口が形成されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記2以上の開口のそれぞれに対応して配置された2以上の前記集光部材を含む
ことを特徴とする請求項3に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記集光部材は、前記虹彩絞りの光軸から偏心された位置に配置されたレンズを含む
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記レンズは、光軸が前記虹彩絞りの開口を通過するように配置されている
ことを特徴とする請求項5に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記虹彩絞りには、2以上の開口が形成され、
前記2以上の開口のそれぞれに対応して配置された前記集光部材としての2以上のレンズを含み、
前記2以上のレンズのうち互いに隣接する2つのレンズのそれぞれの周辺部は、Dカット加工されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の眼科装置。
【請求項8】
前記光源からの照明光を略平行光にするコンデンサレンズと、
前記虹彩絞りと前記スリットとの間に配置されたリレーレンズと、
を含み、
前記スリット状開口の長手方向に対応した第1方向について、前記スリットの長さをLxとし、前記リレーレンズの焦点距離をf1とし、前記レンズの焦点距離をf2とし、前記コンデンサレンズの焦点距離をf3とし、前記光源の出射半値半角をθとしたとき、下記の式(1)を満たし、
【数1】
前記スリット状開口の短手方向に対応した第2方向について、前記スリットの長さをLyとし、光軸に対する前記開口の偏心量をhとしたとき、下記の式(2)~式(4)を満たす
【数2】
ことを特徴とする請求項5~請求項7のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項9】
前記集光部材は、
前記虹彩絞りに形成された開口数分の偏向面を有し、各偏向面で前記照明光を対応する開口に向けて偏向するプリズムと、
前記プリズムと前記虹彩絞りとの間に配置されたレンズとを含む
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項10】
前記スリットを通過した前記照明光を偏向し、偏向された前記照明光を前記眼底に導く光スキャナを含み、
前記光スキャナの偏向制御に同期して前記イメージセンサにより得られた前記戻り光の受光結果を取り込む
ことを特徴とする請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項11】
前記被検眼の虹彩と光学的に略共役な位置に孔部が形成され、前記スリットを通過した前記照明光の光路と前記眼底からの戻り光の光路とを結合する穴鏡を含む
ことを特徴とする請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項12】
前記被検眼の状態に応じて光軸方向に前記スリットを移動する移動機構を含む
ことを特徴とする請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、眼科装置を用いたスクリーニング検査が行われる。このような眼科装置は、自己検診への応用も期待されており、より一層の小型化、軽量化が望まれる。
【0003】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、スリット光を用いて被検眼をパターン照明し、その戻り光をCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサで検出するように構成された眼科装置が開示されている。この眼科装置は、照明パターンと、CMOSイメージセンサによる受光タイミングとを調整することにより、簡素な構成で被検眼の画像を取得することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7831106号明細書
【特許文献2】米国特許第8237835号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スリット光を用いて被検眼を照明して被検眼の画像を取得する場合、ムラの少ないスリット光で被検眼を照明することで、高効率でコントラストが高い画像を取得することができる。
【0006】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、ムラの少ないスリット光で被検眼を照明するための新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の第1態様は、被検眼の虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能な光源と、前記光源と光学的に略共役な位置に配置され、光軸から偏心した位置に前記光源からの照明光が通過する開口が形成された虹彩絞りと、前記光源と前記虹彩絞りとの間に配置された集光部材と、前記被検眼の眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、前記開口を通過した前記照明光が通過するスリット状開口が形成されたスリットと、前記スリットを通過した前記照明光で照明された前記眼底からの戻り光を受光するイメージセンサと、を含む、眼科装置である。
【0008】
実施形態の第2態様は、第1態様において、前記集光部材の焦点位置に、前記前記虹彩絞りの開口が配置されている。
【0009】
実施形態の第3態様では、第1態様又は第2態様において、前記虹彩絞りには、2以上の開口が形成されている。
【0010】
実施形態の第4態様は、第3態様において、前記2以上の開口のそれぞれに対応して配置された2以上の前記集光部材を含む。
【0011】
実施形態の第5態様は、第1態様~第4態様のいずれかにおいて、前記集光部材は、前記虹彩絞りの光軸から偏心された位置に配置されたレンズを含む。
【0012】
実施形態の第6態様では、第5態様において、前記レンズは、光軸が前記虹彩絞りの開口を通過するように配置されている。
【0013】
実施形態の第7態様では、第1態様又は第2態様において、前記虹彩絞りには、2以上の開口が形成され、眼科装置は、前記2以上の開口のそれぞれに対応して配置された前記集光部材としての2以上のレンズを含み、前記2以上のレンズのうち互いに隣接する2つのレンズのそれぞれの周辺部は、Dカット加工されている。
【0014】
実施形態の第8態様は、第5態様~第7態様のいずれかにおいて、前記光源からの照明光を略平行光にするコンデンサレンズと、前記虹彩絞りと前記スリットとの間に配置されたリレーレンズと、を含み、前記スリット状開口の長手方向に対応した第1方向について、前記スリットの長さをLxとし、前記リレーレンズの焦点距離をf1とし、前記レンズの焦点距離をf2とし、前記コンデンサレンズの焦点距離をf3とし、前記光源の出射半値半角をθとしたとき、下記の式(1)を満たす。
【0015】
【0016】
更に、前記スリット状開口の短手方向に対応した第2方向について、前記スリットの長さをLyとし、光軸に対する前記開口の偏心量をhとしたとき、下記の式(2)~式(4)を満たす
【0017】
【0018】
実施形態の第9態様は、第1態様~第4態様のいずれかにおいて、前記集光部材は、前記虹彩絞りに形成された開口数分の偏向面を有し、各偏向面で前記照明光を対応する開口に向けて偏向するプリズムと、前記プリズムと前記虹彩絞りとの間に配置されたレンズとを含む。
【0019】
実施形態の第10態様は、第1態様~第9態様のいずれかにおいて、前記スリットを通過した前記照明光を偏向し、偏向された前記照明光を前記眼底に導く光スキャナを含み、前記光スキャナの偏向制御に同期して前記イメージセンサにより得られた前記戻り光の受光結果を取り込む。
【0020】
実施形態の第11態様は、第1態様~第10態様のいずれかにおいて、前記被検眼の虹彩と光学的に略共役な位置に孔部が形成され、前記スリットを通過した前記照明光の光路と前記眼底からの戻り光の光路とを結合する穴鏡を含む。
【0021】
実施形態の第12態様は、第1態様~第11態様のいずれかにおいて、前記被検眼の状態に応じて光軸方向に前記スリットを移動する移動機構を含む。
【0022】
なお、上記した複数の態様に係る構成を任意に組み合わせることが可能である。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、ムラの少ないスリット光で被検眼を照明するための新たな技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【
図2】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【
図3】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の概要を示す概略図である。
【
図4】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の概要を示す概略図である。
【
図5】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の概要を示す概略図である。
【
図6】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の概要を示す概略図である。
【
図7】実施形態に係る眼科装置の動作説明図である。
【
図8】実施形態に係る眼科装置の動作説明図である。
【
図9】実施形態に係る眼科装置の動作説明図である。
【
図10】実施形態に係る眼科装置の制御系の構成例を示す概略図である。
【
図11】実施形態に係る眼科装置の動作例のフロー図である。
【
図12】実施形態の第1変形例に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【
図13】実施形態の第2変形例に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【
図14】実施形態の第2変形例に係る眼科装置の光学系の構成の概要を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明に係る眼科装置の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書に記載された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として適宜援用することが可能である。
【0026】
実施形態に係る眼科装置は、スリット状の照明光を用いたスリットスキャン方式で被検眼の画像を取得することが可能である。具体的には、眼科装置は、光スキャナを用いてスリット状の照射位置(照射範囲)を移動させながら被検眼の所定部位を照明し、1次元的に又は2次元的に受光素子が配列されたイメージセンサを用いて所定部位からの戻り光を受光する。戻り光の受光結果は、照明光の照射位置の移動タイミングに同期して、照明光の照射位置に対応した戻り光の受光位置における受光素子から読み出される。
【0027】
実施形態に係る眼科装置は、照明側に設けられた虹彩絞りと、虹彩絞りに形成された開口に集光するように配置された集光部材とを含む。これにより、光源から出射された照明光を、スリット状の照明光を生成するためのスリットに効率的に照射することができる。更に、虹彩絞りの開口を通過した照明光でスリットをムラなく照射することができる。その結果、照明光で被検眼を高効率で照明し、コントラストが高い被検眼の画像を取得することが可能になる。
【0028】
いくつかの実施形態では、所定部位は、前眼部、又は後眼部である。前眼部には、角膜、虹彩、水晶体、毛様体、チン小帯などがある。後眼部には、硝子体、眼底又はその近傍(網膜、脈絡膜、強膜など)などがある。
【0029】
実施形態に係る眼科装置の制御方法は、実施形態に係る眼科装置においてプロセッサ(コンピュータ)により実行される処理を実現するための1以上のステップを含む。実施形態に係るプログラムは、プロセッサに実施形態に係る眼科装置の制御方法の各ステップを実行させる。実施形態に係る記録媒体は、実施形態に係るプログラムが記録された非一時的な記録媒体(記憶媒体)である。
【0030】
本明細書において「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
【0031】
以下、実施形態に係る眼科装置が、主に、被検眼の眼底の画像を取得する場合について説明する。
【0032】
以下、X方向は、対物レンズの光軸方向に直交する方向(左右方向)であり、Y方向は、対物レンズの光軸方向に直交する方向(上下方向)であるものとする。Z方向は、対物レンズの光軸方向であるものとする。
【0033】
[光学系の構成]
図1~
図6に、実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例を示す。
図1は、実施形態に係る眼科装置1の光学系の構成例を表す。
図2は、光軸Oの方向からみたときの
図1の虹彩絞り21の構成例を模式的に表す。
図3は、
図1の偏心レンズ12A、12Bの配置例を3次元的に模式的に表す。
図4は、X断面及びY断面における偏心レンズ12A、12Bの構成例を模式的に表す。
図5は、
図1のリレーレンズ系RL1、RL2の構成の概要を表す。
図6は、
図1の光源10からスリット22までの光学系の配置の説明図を表す。
図1~
図6において、同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0034】
眼科装置1は、照明光学系20と、光スキャナ30と、投影光学系35と、撮影光学系40と、撮像装置50とを含む。いくつかの実施形態では、照明光学系20の外部に光源10が設けられる。いくつかの実施形態では、照明光学系20は、光スキャナ30、及び投影光学系35の少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、撮影光学系40は、撮像装置50を含む。いくつかの実施形態では、投影光学系35又は照明光学系20は、光スキャナ30を含む。
【0035】
(照明光学系20)
照明光学系20は、光源10からの光を用いてスリット状の照明光を生成し、生成された照明光を光スキャナ30に導く。
【0036】
照明光学系20は、光源10と、コンデンサレンズ11と、偏心レンズ12A、12Bと、虹彩絞り21と、リレーレンズ系RL2と、スリット22と、リレーレンズ系RL1とを含む。
【0037】
(光源10)
光源10は、被検眼の虹彩(瞳孔)と光学的に略共役な位置に配置される。光源10は、可視領域の光を発生する可視光源を含む。例えば、光源10は、420nm~700nmの波長範囲の中心波長を有する光を発生する。このような光源10は、例えば、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)、ハロゲンランプ、又はキセノンランプを含む。いくつかの実施形態では、光源10は、白色光源又はRGBの各色成分の光を出力可能な光源を含む。いくつかの実施形態では、光源10は、赤外領域の光又は可視領域の光を切り換えて出力することが可能な光源を含む。いくつかの実施形態では、光源10は、蛍光体(中心蛍光波長550nm)と、蛍光体を励起する励起光を出射する第1LD(中心波長450nm)と、第2LED(中心波長450nm)と、光路結合部材とを含む。光路結合部材は、第1LEDにより励起された蛍光体からの出射光と、第2LEDからの出射光とを合成することで、白色光を出力する。
【0038】
(コンデンサレンズ11)
コンデンサレンズ11は、光源10から出射された光を集光する。コンデンサレンズ11の焦点位置に光源10が配置され、光源10から出射された光を略平行光にして、偏心レンズ12A、12Bに導く。
【0039】
(虹彩絞り21)
虹彩絞り21(具体的には、後述の開口)は、被検眼Eの虹彩(瞳孔)と光学的に略共役な位置に配置可能である。虹彩絞り21には、光軸Oから離れた位置に1以上の開口が形成されている。
【0040】
【0041】
虹彩絞り21には、光軸Oと中心とする円周方向に沿って所定の厚さを有する開口21A、21Bが形成されている。虹彩絞り21に形成された開口は、被検眼Eの虹彩における照明光の入射位置(入射形状)を規定する。例えば、
図2に示すように開口21A、21Bを形成することにより、光軸Oに被検眼Eの瞳孔中心が配置されたとき、瞳孔中心から偏心した位置(具体的には、瞳孔中心を中心とする点対称の位置)から照明光を眼内に入射させることが可能である。
【0042】
図2では、虹彩絞り21には、開口21A、21Bが形成されているが、実施形態は、虹彩絞り21に形成される開口の数に限定されるものではない。例えば、虹彩絞り21には、単一の開口又は3以上の開口が形成されていてもよい。
【0043】
(偏心レンズ12A、12B)
図1に示すように、偏心レンズ12A、12Bのそれぞれは、光軸O(虹彩絞り21の光軸)から偏心された位置に配置されたレンズであり、集光部材として機能する。偏心レンズ12A、12Bは、コンデンサレンズ11(光源10)と虹彩絞り21との間に配置される。偏心レンズ12A、12Bのそれぞれは、虹彩絞り21に形成された開口21A、21Bに対応して配置される。虹彩絞り21にn(nは2以上の整数)個の開口が形成されている場合、n個の開口のそれぞれに対応して配置されたn個の偏心レンズが、コンデンサレンズ11と虹彩絞り21との間に配置される。
【0044】
図1では、偏心レンズ12Aは、虹彩絞り21の開口21Aに対向するように、照明光学系20の光軸Oから偏心した位置に配置される。また、偏心レンズ12Aの焦点位置には、虹彩絞り21の開口21Aが配置される。すなわち、偏心レンズ12Aは、コンデンサレンズ11からの照明光を開口21Aに集光する。
【0045】
同様に、偏心レンズ12Bは、虹彩絞り21の開口21Bに対向するように、照明光学系20の光軸Oから偏心した位置に配置される。また、偏心レンズ12Bの焦点位置には、虹彩絞り21の開口21Bが配置される。すなわち、偏心レンズ12Bは、コンデンサレンズ11からの照明光を開口21Bに集光する。
【0046】
図3に、虹彩絞り21と、偏心レンズ12A、12Bの3次元的な位置関係を模式的に示す。
図3において、
図1及び
図2と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
図4に、X断面及びY断面における偏心レンズ12A、12Bの構成例を模式的に示す。
図4において、
図1~
図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0047】
偏心レンズ12Aの光軸O1が、虹彩絞り21の開口21Aを通過するように配置される。また、偏心レンズ12Bの光軸O2が、虹彩絞り21の開口21Bを通過するように配置される。
【0048】
例えば、開口21A、21Bが、光軸Oを中心とする円周に沿って光軸Oを基準とする点対称の位置に形成されているものとする。このとき、光軸O1は、虹彩絞り21上において、Y方向が光軸Oの位置から円周の半径分だけ+Y方向にシフトし、且つ、X方向が開口21Aの長手方向の重心位置に一致するように配置される。同様に、光軸O2は、虹彩絞り21上において、Y方向が光軸Oの位置から円周の半径分だけ-Y方向にシフトし、且つ、X方向が開口21Bの長手方向の重心位置に一致するように配置される。
【0049】
いくつかの実施形態では、虹彩絞り21に形成された開口に対応して配置された偏心レンズのうち、互いに隣接する2つの偏心レンズのそれぞれの周辺部は、Dカット加工されている。
【0050】
図3及び
図4に示すように、偏心レンズ12Aは、偏心レンズ12Bに隣接する周辺部がDカット加工された偏心Dカットレンズである。また、偏心レンズ12Bは、偏心レンズ12Aに隣接する周辺部がDカット加工された偏心Dカットレンズである。偏心レンズ12A、12Bの一方の周辺部だけがDカット加工されていてもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、偏心レンズ12Aの加工面が偏心レンズ12Bの加工面と接するように配置される。いくつかの実施形態では、偏心レンズ12Aの加工面が、偏心レンズ12Bの加工面と所定の間隔を空けて配置される。
【0052】
(スリット22)
図1に示すように、スリット(眼底スリット)22(具体的には、後述の開口)は、被検眼Eの眼底Efと光学的に略共役な位置に配置可能である。例えば、スリット22には、後述するイメージセンサ51からローリングシャッター方式で読み出されるライン方向(ロウ方向)に対応した方向に開口(スリット状開口)が形成されている。スリット22に形成された開口は、被検眼Eの眼底Efにおける照明光の照射パターンを規定する。
【0053】
スリット22は、移動機構(後述の移動機構22D)により照明光学系20の光軸方向に移動可能である。移動機構は、後述の制御部100からの制御を受け、スリット22を光軸方向に移動する。例えば、制御部100は、被検眼Eの状態に応じて移動機構を制御する。これにより、被検眼Eの状態(具体的には、屈折度数、眼底Efの形状)に応じてスリット22の位置を移動することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、スリット22は、被検眼Eの状態に応じて、光軸方向に移動されることなく開口の位置及び形状の少なくとも1つを変更可能に構成される。このようなスリット22の機能は、例えば液晶シャッターにより実現される。
【0055】
(リレーレンズ系RL1、RL2)
図1では、光スキャナ30とスリット22との間にリレーレンズ系RL1が配置され、スリット22と虹彩絞り21との間にリレーレンズ系RL2が配置されている。
【0056】
図5に、実施形態に係るリレーレンズ系RL1、RL2の構成の概要を模式的に示す。
図5において、
図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0057】
リレーレンズ系RL1は、1以上のレンズを含む。リレーレンズ系RL1の後側焦点位置F1が、被検眼Eの虹彩と光学的に略共役な位置に配置される。
【0058】
後述のように、被検眼Eの虹彩と略共役な位置に配置された光スキャナ30が、リレーレンズ系RL1の後側焦点位置F1又はその近傍に配置される。従って、被検眼Eの状態(屈折度数)に応じてスリット22が光軸方向に移動された場合でも、被検眼Eの状態にかかわらず、眼底Efに投影されるスリット像(スリット22に形成された開口を通過した光により形成される像)の大きさは変化しない。これは、スリット22が光軸方向に移動しても、眼底Efへのスリット像の投影倍率が変化しないことを意味する。
【0059】
すなわち、リレーレンズ系RL1の後側焦点位置F1(又はその近傍)に光スキャナ30を配置することにより、リレーレンズ系RL1、リレーレンズ41、44、及び対物レンズ46でバーダル光学系が構成される(
図1参照)。
【0060】
それにより、被検眼Eの状態(屈折度数など)にかかわらず、被検眼Eの視軸に対するスリット像の投影画角(投影倍率)(スリット22の長手方向及び短手方向)を一定にすることができる。その結果、被検眼Eの状態にかかわらずスリット像の大きさが変化しないため、光スキャナ30の偏向動作速度を一定にすることが可能になり、光スキャナ30の制御を簡素化することができる。
【0061】
また、被検眼Eの状態(屈折度数など)にかかわらず、被検眼Eの視軸に対するスリット像の投影画角(投影倍率)が一定であるため、眼底Efにおけるスリット像の照度を一定にすることができる。
【0062】
更に、眼科装置においてあらかじめ決められた撮影画角で画像を取得する場合に、上記のように投影倍率が一定であるため、所定の大きさのスリット像を取得するために設けられたスリット22の長手方向の長さにマージンを設ける必要がなくなる。
【0063】
また、リレーレンズ系RL2は、リレーレンズ系RL1と同様に、1以上のレンズを含む。リレーレンズ系RL2の前側焦点位置F2又はその近傍に、虹彩絞り21(開口)が配置される。
【0064】
上記のように、リレーレンズ系RL1の後側焦点位置F1とリレーレンズ系RL2の前側焦点位置F2とは、被検眼の虹彩と光学的に略共役な位置である。従って、虹彩絞り21から(後側焦点位置F1に配置された)光スキャナ30までの投影倍率は、リレーレンズ系RL1の焦点距離faとリレーレンズ系RL2の焦点距離fbで決定される。このとき、投影倍率は、(fa/fb)である。
【0065】
実施形態に係る眼科装置は、被検眼Eの虹彩上に所定の大きさで虹彩絞り21の像を形成する必要がある。被検眼Eの虹彩から対物レンズ46を経由して光スキャナ30までの投影倍率が既知の投影倍率であるとき、光スキャナ30上に所定の大きさの虹彩絞り21の像を投影すればよい。このとき、虹彩絞り21から光スキャナ30までの投影倍率は、リレーレンズ系RL1の焦点距離faとリレーレンズ系RL2の焦点距離fbで決定される。従って、焦点距離fa、fbの少なくとも一方を変更することで、被検眼Eの虹彩上に所定の大きさで虹彩絞り21の像を容易に形成することが可能になる。いくつかの実施形態では、焦点距離faを固定したまま、焦点距離fbだけが変更される。
【0066】
焦点距離faは、リレーレンズ系RL1の合成焦点距離である。いくつかの実施形態では、リレーレンズ系RL1は、屈折度が異なる複数のレンズを含み、リレーレンズ系RL1を構成するレンズの少なくとも1つを変更することにより焦点距離faを変更する。いくつかの実施形態では、リレーレンズ系RL1を構成するレンズの少なくとも1つは、屈折度が変更可能なレンズである。焦点距離が変更可能なレンズの例として、液晶レンズ、液体レンズ、アルバレツレンズなどがある。焦点距離faを変更する場合でも、リレーレンズ系RL1の後側焦点位置が被検眼Eの虹彩と光学的に略共役な位置(瞳共役位置)に配置される。
【0067】
焦点距離fbは、リレーレンズ系RL2の合成焦点距離である。いくつかの実施形態では、リレーレンズ系RL2は、屈折度が異なる複数のレンズを含み、リレーレンズ系RL2を構成するレンズの少なくとも1つを変更することにより焦点距離fbを変更する。いくつかの実施形態では、リレーレンズ系RL2を構成するレンズの少なくとも1つは、屈折度が変更可能なレンズである。焦点距離fbを変更する場合でも、リレーレンズ系RL2の前側焦点位置が被検眼Eの虹彩と光学的に略共役な位置(瞳共役位置)に配置される。
【0068】
また、眼底Efの撮影のために、高輝度な光を発する光源であることが望ましい。しかしながら、汎用的に入手可能な光源(量産されている光源)は、発光面のサイズ(発光面積、出力光束断面サイズ)が限られており、光源の発光面のサイズに対応した投影倍率で虹彩絞り21の像を光スキャナ30上に投影する必要がある。
【0069】
この実施形態によれば、焦点距離fa、fbの少なくとも一方を変更することで、虹彩絞り21から光スキャナ30までの投影倍率を変更することができるため、任意の大きさの虹彩絞り21の像を光スキャナ30上に所望の大きさで投影することができる。それにより、光源の発光面のサイズが異なる場合でも、焦点距離fa、fbの少なくとも一方を変更するだけで光スキャナ30上に所望の大きさの虹彩絞り21の像を投影することができ、光学系の設計自由度が向上する。特に、焦点距離faを固定し、焦点距離fbだけを変更することで、被検眼Eの屈折度数の変化に対するスリット22の移動量(屈折度数の変化に対するスリット22の移動の感度)を固定することができ、光学系の設計自由度をより一層向上させることができる。
【0070】
また、
図1の構成では、リレーレンズ系RL1を構成する1以上のレンズの有効径を小さくすることができる。
【0071】
その理由は、光スキャナ30と虹彩絞り21との間には、被検眼Eの眼底Efと光学的に略共役な位置に配置されるスリット22が配置されている。スリット22は、被検眼Eの屈折度数に応じて光軸方向に移動可能である。ここで、虹彩絞り21から光スキャナ30までの投影倍率は、光スキャナ30とリレーレンズ系RL1との第1距離と、虹彩絞り60とリレーレンズ系RL1との第2距離で決定されるため、第1距離を短くすると、第2距離も短くする必要がある。しかしながら、スリット22の光軸方向の移動スペースを確保しつつ、虹彩との共役関係及び眼底Efとの共役関係を維持する必要があるため、第1距離が長くなり、リレーレンズ系RL1の有効径が大きくなる。この実施形態によれば、リレーレンズ系RL2を設けることにより、第1距離を短くしても、リレーレンズ系RL2を用いて投影倍率を調整することが可能になる。それにより、スリット22の光軸方向の移動スペースを確保し、且つ、虹彩との共役関係及び眼底Efとの共役関係を維持しつつ、第1距離を短くすることが可能になり、リレーレンズ系RL1を構成する1以上のレンズの有効径を小さくすることができる。
【0072】
また、リレーレンズ系RL1を構成する1以上のレンズの有効径を小さくすることができるので、光スキャナ30から光源10までの光学系の長さを小さくすることができる。
【0073】
このような照明光学系20では、光源10から出射した光は、コンデンサレンズ11を透過し、偏心レンズ12A、12Bを透過し、虹彩絞り21に形成された開口21A、21Bを通過する。虹彩絞り21に形成された開口21A、21Bを通過した光は、リレーレンズ系RL2を透過し、スリット22に形成された開口を通過することによりスリット状の照明光として出力される。スリット状の照明光は、リレーレンズ系RL1を透過して、光スキャナ30に導かれる。
【0074】
実施形態では、スリット状の照明光で効率のよい照明を行うため、下記の条件を満たすことが望ましい。
【0075】
図6に、
図1の光源10からスリット22までの光学系を模式的に示す。
図6において、
図1~
図5と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。なお、
図6において、説明の便宜上、スリット22に形成された開口について、長手方向をX方向とし、短手方向をY方向とする。
【0076】
ここで、リレーレンズ系RL2の後側焦点距離をf1(
図5では、焦点距離fb)とし、偏心レンズ12A、12Bのそれぞれの後側焦点距離をf2とし、コンデンサレンズ11の前側焦点距離をf3とする。また、光源10からの出射半値半角をθとし、光軸Oに対する虹彩絞り21の開口21A、21Bの偏心量(高さ)をhとする。
【0077】
まず、X方向(ここでは、長手方向)について、以下の通りである。
【0078】
上記のように、虹彩絞り21は、光源10と光学的に略共役な位置に配置される。また、スリット22は、偏心レンズ12A、12Bとコンデンサレンズ11との中間のレンズ中間位置と光学的に略共役な位置に配置される。このとき、スリット22の像を、リレーレンズ系RL2、及び偏心レンズ12A(又は偏心レンズ12B)によりレンズ中間位置にリレーしたときの投影倍率は、「f2/f1」である。従って、X方向についてスリット22に形成された開口の長さをLxとすると、スリット22に形成された開口の長さLxを照明するために必要なレンズ中間位置での照明光束径をDxは、下記の式(5)より表される。
【0079】
【0080】
上記の照明光束径Dxを照明するために、コンデンサレンズ11の光束径は、次の式(6)を満たすことが望ましい。
【0081】
【0082】
式(6)では、スリット22の長さLx、リレーレンズ系RL2の前側焦点距離f1は、眼科装置1が実現する機能(仕様)から決定することができる。また、出射半値半角θは、光源10が実現する機能(仕様)から決定することができる。
【0083】
同様に、Y方向(ここでは、短手方向)について、以下の通りである。
【0084】
スリット22の像を、リレーレンズ系RL2、及び偏心レンズ12A(又は偏心レンズ12B)によりレンズ中間位置にリレーしたときの倍率は、「f2/f1」である。従って、Y方向についてスリット22に形成された開口の長さをLyとすると、スリット22に形成された開口の長さLyを照明するために必要なレンズ中間位置での照明光束径をDyは、下記の式(7)より表される。
【0085】
【0086】
上記の照明光束径Dyを照明するために、コンデンサレンズ11の光束径は、次の式(8)を満たすことが望ましい。
【0087】
【0088】
また、Y方向に並ぶ2つの照明光束径が重ならないために、次の式(9)を満たすことが望ましい。
【0089】
【0090】
式(8)及び式(9)では、スリット22の長さLy、リレーレンズ系RL2の前側焦点距離f1、偏心量hは、眼科装置1が実現する機能(仕様)から決定される。また、出射半値半角θは、光源10が実現する機能(仕様)から決定される。
【0091】
以上のように、X方向について式(6)を満たし、且つ、Y方向について式(8)~式(9)を満たすように、偏心レンズ12A、12Bの後側焦点距離f2とコンデンサレンズ11の前側焦点距離f3とを決定することが望ましい。これにより、光学系のサイズを大きくすることなく、スリット22をムラ無く照明光で効率よく照明することが可能になる。
【0092】
(光スキャナ30)
光スキャナ30は、被検眼Eの虹彩と光学的に略共役な位置に配置される。光スキャナ30は、リレーレンズ系RL1を透過するスリット状の照明光(スリット22に形成された開口を通過したスリット状の光)を偏向する。具体的には、光スキャナ30は、被検眼Eの虹彩又はその近傍をスキャン中心位置として所定の偏向角度範囲内で偏向角度を変更しつつ、眼底Efの所定の照明範囲を順次に照明するためのスリット状の照明光を偏向し、投影光学系35に導く。光スキャナ30は、照明光を1次元的又は2次元的に偏向することが可能である。
【0093】
1次元的に偏向する場合、光スキャナ30は、所定の偏向方向を基準に所定の偏向角度範囲で照明光を偏向するガルバノスキャナを含む。2次元的に偏向する場合、光スキャナ30は、第1ガルバノスキャナと、第2ガルバノスキャナとを含む。第1ガルバノスキャナは、照明光学系20の光軸に直交する水平方向に照明光の照射位置を移動するように照明光を偏向する。第2ガルバノスキャナは、照明光学系20の光軸に直交する垂直方向に照明光の照射位置を移動するように、第1ガルバノスキャナにより偏向された照明光を偏向する。光スキャナ30による照明光の照射位置を移動するスキャン態様としては、例えば、水平スキャン、垂直スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋スキャンなどがある。
【0094】
(投影光学系35)
投影光学系35は、光スキャナ30により偏向された照明光を被検眼Eの眼底Efに導く。実施形態では、投影光学系35は、後述の光路結合部材としての穴鏡45により撮影光学系40の光路と結合された光路を介して、光スキャナ30により偏向された照明光を眼底Efに導く。
【0095】
投影光学系35は、リレーレンズ41、黒点板42、反射ミラー43、リレーレンズ44を含む。リレーレンズ41、44のそれぞれは、1以上のレンズを含む。
【0096】
(黒点板42)
黒点板42は、対物レンズ46のレンズ表面又はその近傍と光学的に略共役な位置に配置される。これにより、対物レンズ46のレンズ表面からの反射光が光源10に導光されることを防ぐことができる。
【0097】
このような投影光学系35では、光スキャナ30により偏向された照明光は、リレーレンズ41を透過し、黒点板42を通過し、反射ミラー43によりリレーレンズ44に向けて反射され、リレーレンズ44を透過し、穴鏡45に導かれる。
【0098】
(撮影光学系40)
撮影光学系40は、投影光学系35を導かれてきた照明光を被検眼Eの眼底Efに導くと共に、眼底Efからの照明光の戻り光を撮像装置50に導く。
【0099】
撮影光学系40では、投影光学系35からの照明光の光路と、眼底Efからの照明光の戻り光の光路とが結合される。これらの光路を結合する光路結合部材として穴鏡45を用いることで、照明光とその戻り光とを瞳分割することが可能である。
【0100】
撮影光学系40は、穴鏡45、対物レンズ46、合焦レンズ47、リレーレンズ48、及び結像レンズ49を含む。リレーレンズ48のそれぞれは、1以上のレンズを含む。
【0101】
(穴鏡45)
穴鏡45には、撮影光学系40の光軸に配置される孔部が形成される。穴鏡45の孔部は、被検眼Eの虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能である。穴鏡45は、孔部の周辺領域において、投影光学系35からの照明光を対物レンズ46に向けて反射する。このような穴鏡45は、撮影絞りとして機能する。
【0102】
また、穴鏡45は、スリット22を通過した照明光の光路と眼底Efからの戻り光の光路とを結合する光路結合部材として機能する。すなわち、穴鏡45は、照明光学系20(投影光学系35)の光路と孔部を通過する光軸の方向に配置された撮影光学系40の光路とを結合すると共に、孔部の周辺領域において反射された照明光を眼底Efに導くように構成される。
【0103】
(合焦レンズ47)
合焦レンズ47は、図示しない移動機構により撮影光学系40の光軸方向に移動可能である。移動機構は、後述の制御部100からの制御を受け、合焦レンズ47を光軸方向に移動する。これにより、被検眼Eの状態に応じて、穴鏡45の孔部を通過した照明光の戻り光を撮像装置50のイメージセンサ51の受光面に結像させることができる。
【0104】
このような撮影光学系40では、投影光学系35からの照明光は、穴鏡45に形成された孔部の周辺領域において対物レンズ46に向けて反射される。穴鏡45の周辺領域において反射された照明光は、対物レンズ46により屈折されて、被検眼Eの瞳孔を通じて眼内に入射し、被検眼Eの眼底Efを照明する。
【0105】
眼底Efからの照明光の戻り光は、対物レンズ46により屈折され、穴鏡45の孔部を通過し、合焦レンズ47を透過し、リレーレンズ48を透過し、結像レンズ49により撮像装置50のイメージセンサ51の受光面に結像される。
【0106】
(撮像装置50)
撮像装置50は、撮影光学系40を通じて被検眼Eの眼底Efから導かれてきた照明光の戻り光を受光するイメージセンサ51を含む。撮像装置50は、後述の制御部100からの制御を受け、戻り光の受光結果の読み出し制御を行うことが可能である。
【0107】
(イメージセンサ51)
イメージセンサ51は、ピクセル化された受光器としての機能を実現する。イメージセンサ51の受光面(検出面、撮像面)は、眼底Efと光学的に略共役な位置に配置可能である。
【0108】
イメージセンサ51による受光結果は、後述の制御部100からの制御を受け、ローリングシャッター方式により読み出される。
【0109】
このようなイメージセンサ51は、CMOSイメージセンサを含む。この場合、イメージセンサ51は、ロウ方向に配列された複数のピクセル(受光素子)群がカラム方向に配列された複数のピクセルを含む。具体的には、イメージセンサ51は、2次元的に配列された複数のピクセルと、複数の垂直信号線と、水平信号線とを含む。各ピクセルは、フォトダイオード(受光素子)と、キャパシタとを含む。複数の垂直信号線は、ロウ方向(水平方向)に直交するカラム方向(垂直方向)のピクセル群毎に設けられる。各垂直信号線は、受光結果に対応した電荷が蓄積されたピクセル群と選択的に電気的に接続される。水平信号線は、複数の垂直信号線と選択的に電気的に接続される。各ピクセルは、戻り光の受光結果に対応した電荷を蓄積し、蓄積された電荷は、例えばロウ方向のピクセル群毎に順次読み出される。例えば、ロウ方向のライン毎に、各ピクセルに蓄積された電荷に対応した電圧が垂直信号線に供給される。複数の垂直信号線は、選択的に水平信号線と電気的に接続される。垂直方向に順次に上記のロウ方向のライン毎の読み出し動作を行うことで、2次元的に配列された複数のピクセルの受光結果を読み出すことが可能である。
【0110】
このようなイメージセンサ51に対してローリングシャッター方式で戻り光の受光結果を取り込む(読み出す)ことにより、ロウ方向に延びる所望の仮想的な開口形状に対応した受光像が取得される。このような制御については、例えば、米国特許第8237835号明細書等に開示されている。
【0111】
図7に、実施形態に係る眼科装置1の動作説明図を示す。
図7は、眼底Efに照射されるスリット状の照明光の照射範囲IPと、イメージセンサ51の受光面SRにおける仮想的な開口範囲OPとを模式的に表す。
【0112】
例えば、後述の制御部100は、照明光学系20により形成されたスリット状の照明光を光スキャナ30を用いて偏向する。それにより、眼底Efにおいて、スリット状の照明光の照射範囲IPがスリット方向(例えば、ロウ方向、水平方向)と直交する方向(例えば、垂直方向)に順次に移動される。
【0113】
イメージセンサ51の受光面SRでは、後述の制御部100によって読み出し対象のピクセルをライン単位で変更することによって、仮想的な開口範囲OPが設定される。開口範囲OPは、受光面SRにおける照明光の戻り光の受光範囲IP´又は受光範囲IP´より広い範囲であることが望ましい。後述の制御部100は、照明光の照射範囲IPの移動制御に同期して、開口範囲OPの移動制御を実行する。それにより、不要な散乱光の影響を受けることなく、簡素な構成で、コントラストが強い眼底Efの高画質の画像を取得することが可能である。
【0114】
図8及び
図9に、イメージセンサ51に対するローリングシャッター方式の制御タイミングの一例を模式的に示す。
図8は、イメージセンサ51に対する読み出し制御のタイミングの一例を表す。
図9は、照明光の照射範囲IP(受光範囲IP´)の移動制御タイミングを
図8の読み出し制御タイミングに重畳させて表したものである。
図8及び
図9において、横軸はイメージセンサ51のロウ数、縦軸は時間を表す。
【0115】
なお、
図8及び
図9では、説明の便宜上、イメージセンサ51のロウ数が1920であるものとして説明するが、実施形態に係る構成はロウ数に限定されるものではない。また、
図9において、説明の便宜上、スリット状の照明光のスリット幅(ロウ方向の幅)が40ロウ分であるものとする。
【0116】
ロウ方向の読み出し制御は、リセット制御と、露光制御と、電荷転送制御と、出力制御とを含む。リセット制御は、ロウ方向のピクセルに蓄積されている電荷の蓄積量を初期化する制御である。露光制御は、フォトダイオードに光を当てて、受光量に対応した電荷をキャパシタに蓄積させる制御である。電荷転送制御は、ピクセルに蓄積された電荷量を垂直信号線に転送する制御である。出力制御は、複数の垂直信号線に蓄積された電荷量を水平信号線を介して出力する制御である。すなわち、
図8に示すように、ロウ方向のピクセルに蓄積された電荷量の読み出し時間Tは、リセット制御に要する時間Tr、露光制御に要する時間(露光時間)Te、電荷転送制御に要する時間Tc、出力制御に要する時間Toutの和である。
【0117】
図8では、ロウ単位で読み出し開始タイミング(時間Tcの開始タイミング)をシフトさせることで、イメージセンサ51における所望の範囲のピクセルに蓄積された受光結果(電荷量)が取得される。例えば、
図8に示すピクセル範囲が1フレーム分の画像である場合、フレームレートFRが一意に決まる。
【0118】
この実施形態では、複数のロウ数分のスリット幅を有する照明光の眼底Efにおける照射位置を、眼底Efにおいてカラム方向に対応する方向に順次にシフトさせる。
【0119】
例えば、
図9に示すように、所定のシフト時間Δt毎に、照明光の眼底Efにおける照射位置をカラム方向に対応する方向にロウ単位でシフトさせる。シフト時間Δtは、イメージセンサ51におけるピクセルの露光時間Teを照明光のスリット幅(例えば、40)で分割することにより得られる(Δt=Te/40)。この照射位置の移動タイミングに同期させて、シフト時間Δt単位でロウ毎にピクセルの各ロウの読み出し開始タイミングを遅延させて開始させる。これにより、簡素な制御で、且つ、短時間に、コントラストが強い眼底Efの高画質の画像を取得することが可能になる。
【0120】
いくつかの実施形態では、イメージセンサ51は、1以上のラインセンサにより構成される。
【0121】
偏心レンズ12A、12Bは、実施形態に係る「集光部材」の一例である。
【0122】
[制御系の構成]
図10に示すように、眼科装置1の制御系は、制御部100を中心に構成されている。なお、制御系の構成の少なくとも一部が眼科装置1に含まれていてもよい。
【0123】
(制御部100)
制御部100は、眼科装置1の各部を制御する。制御部100は、主制御部101と、記憶部102とを含む。主制御部101は、プロセッサを含み、記憶部102に記憶されたプログラムに従って処理を実行することで、眼科装置1の各部の制御処理を実行する。
【0124】
(主制御部101)
主制御部101は、照明光学系20の制御、光スキャナ30の制御、撮影光学系40の制御、撮像装置50の制御、及びデータ処理部200の制御を行う。
【0125】
照明光学系20の制御には、光源10の制御、移動機構22Dの制御が含まれる。光源10の制御には、光源の点灯や消灯(又は光の波長領域)の切り換え、光源の光量の変更制御が含まれる。移動機構22Dは、スリット22を照明光学系20の光軸方向に移動する。主制御部101は、被検眼Eの状態に応じて移動機構22Dを制御することにより、被検眼Eの状態に対応した位置にスリット22を配置する。被検眼Eの状態として、眼底Efの形状、屈折度数、眼軸長などがある。屈折度数は、例えば、特開昭61-293430号公報又は特開2010-259495号公報に開示されているような公知の眼屈折力測定装置から取得可能である。眼軸長は、公知の眼軸長測定装置、又は光干渉断層計の測定値から取得可能である。
【0126】
例えば、屈折度数に対して照明光学系20の光軸におけるスリット22の位置があらかじめ関連付けられた第1制御情報が記憶部102に記憶されている。主制御部101は、第1制御情報を参照して屈折度数に対応したスリット22の位置を特定し、特定された位置にスリット22が配置されるように移動機構22Dを制御する。
【0127】
いくつかの実施形態では、スリット22の移動に伴い、スリット22に形成された開口を通過する光の光量分布の変化に対応して、主制御部101は、光源10の位置及び向きを変更する。いくつかの実施形態では、スリット22の移動に伴い、スリット22に形成された開口を通過する光の光量分布の変化に対応して、主制御部101は、偏心レンズ12A、12Bの少なくとも一方の位置及び向きを変更する。
【0128】
光スキャナ30の制御には、スキャン範囲(スキャン開始位置及びスキャン終了位置)及びスキャン速度の制御が含まれる。
【0129】
撮影光学系40の制御には、移動機構47Dの制御が含まれる。移動機構47Dは、合焦レンズ47を撮影光学系40の光軸方向に移動する。主制御部101は、イメージセンサ51を用いて取得された画像の解析結果に基づいて移動機構47Dを制御することが可能である。また、主制御部101は、後述の操作部110を用いたユーザの操作内容に基づいて移動機構47Dを制御することが可能である。
【0130】
撮像装置50の制御には、イメージセンサ51の制御(ローリングシャッター制御)が含まれる。イメージセンサ51の制御には、リセット制御、露光制御、電荷転送制御、出力制御などが含まれる。また、リセット制御に要する時間Tr、露光制御に要する時間(露光時間)Te、電荷転送制御に要する時間Tc、出力制御に要する時間Tout等を変更することが可能である。
【0131】
データ処理部200の制御には、イメージセンサ51から取得された受光結果に対する各種の画像処理や解析処理が含まれる。画像処理には、受光結果に対するノイズ除去処理、受光結果に基づく受光像に描出された所定の部位を識別しやすくするための輝度補正処理がある。解析処理には、合焦状態の特定処理などがある。
【0132】
データ処理部200は、主制御部101(制御部100)からの制御を受けてローリングシャッター方式によりイメージセンサ51から読み出された受光結果に基づいて、任意の開口範囲に対応した受光像を形成することが可能である。データ処理部200は、開口範囲に対応した受光像を順次に形成し、形成された複数の受光像から被検眼Eの画像を形成することが可能である。
【0133】
データ処理部200は、プロセッサを含み、記憶部等に記憶されたプログラムに従って処理を行うことで、上記の機能を実現する。
【0134】
(記憶部102)
記憶部102は、各種のコンピュータプログラムやデータを記憶する。コンピュータプログラムには、眼科装置1を制御するための演算プログラムや制御プログラムが含まれる。
【0135】
(操作部110)
操作部110は、操作デバイス又は入力デバイスを含む。操作部110には、眼科装置1に設けられたボタンやスイッチ(たとえば操作ハンドル、操作ノブ等)や、操作デバイス(マウス、キーボード等)が含まれる。また、操作部110は、トラックボール、操作パネル、スイッチ、ボタン、ダイアルなど、任意の操作デバイスや入力デバイスを含んでいてよい。
【0136】
(表示部120)
表示部120は、データ処理部200により生成された被検眼Eの画像を表示させる。表示部120は、LCD(Liquid Crystal Display)等のフラットパネルディスプレイなどの表示デバイスを含んで構成される。また、表示部120は、眼科装置1の筺体に設けられたタッチパネルなどの各種表示デバイスを含んでいてもよい。
【0137】
なお、操作部110と表示部120は、それぞれ個別のデバイスとして構成される必要はない。例えばタッチパネルのように、表示機能と操作機能とが一体化されたデバイスを用いることも可能である。その場合、操作部110は、このタッチパネルとコンピュータプログラムとを含んで構成される。操作部110に対する操作内容は、電気信号として制御部100に入力される。また、表示部120に表示されたグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)と、操作部110とを用いて、操作や情報入力を行うようにしてもよい。いくつかの実施形態では、表示部120及び操作部110の機能は、タッチスクリーンにより実現される。
【0138】
(その他の構成)
いくつかの実施形態では、眼科装置1は、更に、固視投影系を含む。例えば、固視投影系の光路は、
図1に示す光学系の構成において、撮影光学系40の光路に結合される。固視投影系は、内部固視標又は外部固視標を被検眼Eに提示することが可能である。内部固視標を被検眼Eに提示する場合、固視投影系は、制御部100からの制御を受けて内部固視標を表示するLCDを含み、LCDから出力された固視光束を被検眼Eの眼底に投影する。LCDは、その画面上における固視標の表示位置を変更可能に構成されている。LCDにおける固視標の表示位置を変更することにより、被検眼Eの眼底における固視標の投影位置を変更することが可能である。LCDにおける固視標の表示位置は、操作部110を用いることによりユーザが指定可能である。
【0139】
いくつかの実施形態では、眼科装置1は、アライメント系を含む。いくつかの実施形態では、アライメント系は、XYアライメント系と、Zアライメント系とを含む。XYアライメント系は、装置光学系(対物レンズ46)の光軸に交差する方向に装置光学系と被検眼Eとの位置合わせを行うために用いられる。Zアライメント系は、眼科装置1(対物レンズ46)の光軸の方向に装置光学系と被検眼Eとの位置合わせを行うために用いられる。
【0140】
例えば、XYアライメント系は、被検眼Eに輝点(赤外領域又は近赤外領域の輝点)を投影する。データ処理部200は、輝点が投影された被検眼Eの前眼部画像を取得し、取得された前眼部画像に描出された輝点像とアライメント基準位置との変位を求める。制御部100は、求められた変位がキャンセルされるように図示しない移動機構により装置光学系と被検眼Eとを光軸の方向と交差する方向に相対的に移動させる。
【0141】
例えば、Zアライメント系は、装置光学系の光軸から外れた位置から赤外領域又は近赤外領域のアライメント光を投影し、被検眼Eの前眼部で反射されたアライメント光を受光する。データ処理部200は、装置光学系に対する被検眼Eの距離に応じて変化するアライメント光の受光位置から、装置光学系に対する被検眼Eの距離を特定する。制御部100は、特定された距離が所望の作動距離になるように図示しない移動機構により装置光学系と被検眼Eとを光軸の方向に相対的に移動させる。
【0142】
いくつかの実施形態では、アライメント系の機能は、装置光学系の光軸から外れた位置に配置された2以上の前眼部カメラにより実現される。例えば、特開2013-248376号公報に開示されているように、データ処理部200は、2以上の前眼部カメラで実質的に同時に取得された被検眼Eの前眼部画像を解析して、公知の三角法を用いて被検眼Eの3次元位置を特定する。制御部100は、装置光学系の光軸が被検眼Eの軸に略一致し、かつ、被検眼Eに対する装置光学系の距離が所定の作動距離になるように図示しない移動機構により装置光学系と被検眼Eとを3次元的に相対的に移動させる。
【0143】
[動作]
次に、眼科装置1の動作について説明する。
【0144】
図11に、実施形態に係る眼科装置1の動作例のフロー図を示す。記憶部102には、
図11に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部101は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、
図11に示す処理を実行する。
【0145】
ここでは、図示しないアライメント系により被検眼Eに対して装置光学系のアライメントが完了し、図示しない固視投影系により所望の固視位置に導くように被検眼Eの眼底に対して固視標が投影されているものとする。
【0146】
(S1:屈折度数を取得)
まず、主制御部101は、外部の眼科測定装置又は電子カルテから被検眼Eの屈折度数を取得する。
【0147】
例えば、主制御部101は、図示しない通信部を介して外部の眼科測定装置又は電子カルテから被検眼Eの屈折度数を取得する。
【0148】
(S2:スリットの位置を変更)
次に、主制御部101は、ステップS1において取得された被検眼Eの屈折度数に応じて、照明光学系20の光軸におけるスリット22の位置を変更する。
【0149】
具体的には、主制御部101は、記憶部102に記憶された第1制御情報を参照して屈折度数に対応したスリット22の位置を特定し、特定された位置にスリット22が配置されるように移動機構22Dを制御する。
【0150】
(S3:照明光を照射)
次に、主制御部101は、照明光学系20によりスリット状の照明光を生成させ、光スキャナ30の偏向制御を開始させることにより、眼底Efにおける所望の照射範囲に対する照明光の照射を開始させる。照明光の照射が開始されると、上記のように、スリット状の照明光が所望の照射範囲内で順次に照射される。
【0151】
(S4:受光結果を取得)
主制御部101は、上記のように、ステップS3において実行された眼底Efにおける照明光の照射範囲に対応したイメージセンサ51の開口範囲におけるピクセルの受光結果を取得する。
【0152】
(S5:次の照射位置?)
主制御部101は、次に照明光で照射すべき照射位置があるか否かを判定する。主制御部101は、順次に移動される照明光の照射範囲があらかじめ決められた眼底Efの撮影範囲を網羅したか否かを判定することにより、次に照明光で照射すべき照射位置があるか否かを判定することが可能である。
【0153】
次に照明光で照射すべき照射位置があると判定されたとき(S5:Y)、眼科装置1の動作はステップS3に移行する。次に照明光で照射すべき照射位置があると判定されなかったとき(S5:N)、眼科装置1の動作はステップS6に移行する。
【0154】
(S6:画像を形成)
ステップS5において、次に照明光で照射すべき照射位置があると判定されなかったとき(S5:N)、主制御部101は、ステップS4において照明光の照射範囲を変更しつつ繰り返し取得された受光結果から被検眼Eの画像をデータ処理部200に形成させる。
【0155】
例えば、データ処理部200は、ステップS3~ステップS5の処理の繰返し回数分の互いに照明光の照射範囲(イメージセンサ51の受光面SRにおける開口範囲)が異なる複数の受光結果を照射範囲の移動順序に基づいて合成する。それにより、眼底Efの1フレーム分の眼底画像が形成される。
【0156】
いくつかの実施形態では、ステップS3では、隣接する照射範囲との重複領域が設けられるように設定された照射範囲に照明光が照射される。それにより、ステップS6では、互いの重複領域が重なるように画像を合成することで1フレーム分の眼底画像が形成される。
【0157】
以上で、眼科装置1の動作は終了である(エンド)。
【0158】
<第1変形例>
実施形態に係る眼科装置の構成は、上記の構成に限定されるものではない。例えば、実施形態の第1変形例に係る眼科装置は、中心波長が互いに異なる2以上の照明光で眼底Efを照明して眼底Efの画像を取得することが可能である。
【0159】
以下、実施形態の第1変形例に係る眼科装置の構成について、実施形態に係る眼科装置1の構成との相違点を中心に説明する。
【0160】
図12に、実施形態の第1変形例に係る眼科装置の構成例を示す。
図12において、
図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0161】
実施形態の第1変形例に係る眼科装置1aの構成が実施形態に係る眼科装置1の構成と異なる点は、照明光学系20に代えて照明光学系20aが設けられた点である。
【0162】
照明光学系20aの構成が照明光学系20の構成と異なる点は、光源10aと、コンデンサレンズ11aと、ダイクロイックミラー13aとが追加された点である。ダイクロイックミラー13aは、コンデンサレンズ11と、偏心レンズ12A、12Bとの間に配置され、光源10からの光の光路に光源10aからの光の光路を結合する。コンデンサレンズ11aは、光源10aとダイクロイックミラー13aとの間に配置される。光源10aは、コンデンサレンズ11aの前側焦点位置に配置される。
【0163】
この場合、光源10aからの照明光を用いて、実施形態と同様のローリングシャッター方式により眼底Efの画像が取得される。
【0164】
いくつかの実施形態では、コンデンサレンズ11aの前側焦点距離はコンデンサレンズ11の前側焦点距離と略同一であり、光源10の発光径Sx、Syのそれぞれは光源10aの発光径Sx、Syと略同一であり、光源10の出射半値半角θは光源10aの出射半値半角θと略同一である。これにより、実施形態と同様に、光源10aからの照明光を用いてスリット22を効率よくムラ無く照明することが可能になる。
【0165】
いくつかの実施形態では、光源10からの照明光と、光源10aからの照明光と切り換えて、虹彩絞り21に照射するように構成される。
【0166】
<第2変形例>
実施形態に係る眼科装置の構成は、実施形態又はその第1変形例に係る構成に限定されるものではない。例えば、実施形態の第2変形例に係る眼科装置は、集光部材としてプリズムが用いられる。
【0167】
以下、実施形態の第2変形例に係る眼科装置の構成について、実施形態に係る眼科装置1の構成との相違点を中心に説明する。
【0168】
図13に、実施形態の第2変形例に係る眼科装置の構成例を示す。
図13において、
図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0169】
実施形態の第2変形例に係る眼科装置1bの構成が実施形態に係る眼科装置1の構成と異なる点は、照明光学系20に代えて照明光学系20bが設けられた点である。
【0170】
照明光学系20bの構成が照明光学系20の構成と異なる点は、偏心レンズ12a、12bに代えて、プリズム14bと、レンズ15bとが設けられた点である。プリズム14bは、コンデンサレンズ11と虹彩絞り21との間に配置される。レンズ15bは、プリズム14bと虹彩絞り21との間に配置される。
【0171】
図14に、Y断面におけるプリズム14b及びレンズ15bの構成の概要を模式的に示す。
図14において、
図4又は
図13と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0172】
プリズム14bは、虹彩絞り21に形成された開口数分の偏向面を有し、各偏向面で照明光を対応する開口に向けて偏向する。ここでは、プリズム14bは、第1偏向面及び第2偏向面を有し、第1偏向面で光源10(コンデンサレンズ11)から照明光を虹彩絞り21に形成された開口21Aに向けて偏向し、第2偏向面で光源10(コンデンサレンズ11)から照明光を虹彩絞り21に形成された開口21Bに向けて偏向する。
【0173】
レンズ15bは、プリズム14bの偏向面で偏向された照明光を、虹彩絞り21に形成され当該偏向面に対応する開口に集光する。具体的には、レンズ15bは、プリズム14bの第1偏向面で偏向された照明光を虹彩絞り21の開口21Aに集光し、プリズム14bの第2偏向面で偏向された照明光を虹彩絞り21の開口21Bに集光する。
【0174】
いくつかの実施形態では、レンズ15bの焦点距離は偏心レンズ12A(12B)の焦点距離と略同一である。これにより、実施形態と同様に、光源10からの照明光を用いてスリット22を効率よくムラ無く照明することが可能になる。
【0175】
第2変形例において、第1変形例と同様の構成で、中心波長が互いに異なる2以上の照明光で眼底Efを照明して眼底Efの画像を取得することが可能である。
[作用]
実施形態に係る眼科装置について説明する。
【0176】
いくつかの実施形態に係る眼科装置(1、1a、1b)は、光源(10、10a)と、虹彩絞り(21)と、集光部材(偏心レンズ12a、12b、プリズム14b及びレンズ15b)と、スリット(22)と、イメージセンサ(51)とを含む。光源は、被検眼(E)の虹彩と光学的に略共役な位置に配置可能である。虹彩絞りは、光源と光学的に略共役な位置に配置され、光軸(O)から偏心した位置に光源からの照明光が通過する開口(21A、21B)が形成されている。集光部材は、光源と虹彩絞りとの間に配置されている。スリットは、被検眼の眼底(Ef)と光学的に略共役な位置に配置可能であり、開口を通過した照明光が通過するスリット状開口が形成されている。イメージセンサは、スリットを通過した照明光で照明された眼底からの戻り光を受光する。
【0177】
このような構成によれば、虹彩絞りに形成された開口を高効率で照明するようにしたので、ムラの少ない高効率の照明光でスリットを照明することが可能となり、高画質の被検眼の画像を取得することができるようになる。
【0178】
いくつかの実施形態では、集光部材の焦点位置に、虹彩絞りの開口が配置されている。
【0179】
このような構成によれば、虹彩絞りに形成された開口に照明光を集光するようにしたので、ムラのない照明光でスリットを照明することが可能となり、より高画質の被検眼の画像を取得することができるようになる。
【0180】
いくつかの実施形態では、虹彩絞りには、2以上の開口が形成されている。
【0181】
このような構成によれば、眼内に入射する照明光の光量を増やすことができるため、より高画質の被検眼の画像を取得することができるようになる。
【0182】
いくつかの実施形態では、2以上の開口のそれぞれに対応して配置された2以上の集光部材を含む。
【0183】
このような構成によれば、眼内に入射する照明光の光量を増やしつつ、虹彩絞りに形成された開口を高効率で照明することができる。それにより、ムラの少ない高効率の照明光でスリットを照明することが可能となり、より高画質の被検眼の画像を取得することができるようになる。
【0184】
いくつかの実施形態では、集光部材は、虹彩絞りの光軸から偏心された位置に配置されたレンズ(偏心レンズ12A、12B)を含む。
【0185】
このような構成によれば、簡素な構成で、虹彩絞りに形成された開口を効率よく照明することが可能になる。
【0186】
いくつかの実施形態では、レンズは、光軸が虹彩絞りの開口を通過するように配置されている。
【0187】
このような構成によれば、簡素な構成で、虹彩絞りに形成された開口を最も効率よく照明することが可能になる。
【0188】
いくつかの実施形態では、虹彩絞りには、2以上の開口が形成される。眼科装置は、2以上の開口のそれぞれに対応して配置された集光部材としての2以上のレンズを含み、2以上のレンズのうち互いに隣接する2つのレンズのそれぞれの周辺部は、Dカット加工されている。
【0189】
このような構成によれば、虹彩絞りに形成された開口に対応して配置されるレンズ同士が部品干渉する場合であっても、簡素な構成で、虹彩絞りに形成された開口を効率よく照明することが可能になる。
【0190】
いくつかの実施形態は、光源からの照明光を略平行光にするコンデンサレンズ(11、11a)と、虹彩絞りとスリットとの間に配置されたリレーレンズ(リレーレンズ系RL2)と、を含む。スリット状開口の長手方向に対応した第1方向(X方向)について、スリットの長さをLxとし、レンズの焦点距離をf2とし、コンデンサレンズの焦点距離をf3とし、光源の出射半値半角をθとしたとき、上記の式(1)を満たす。更に、スリット状開口の短手方向に対応した第2方向(Y方向)について、スリットの長さをLyとし、光軸に対する開口の偏心量をhとしたとき、上記の式(2)~式(4)を満たす。
【0191】
このような構成によれば、光学系のサイズ及びコストを最適化しつつ、虹彩絞りに形成された開口に照明光を集光することで、ムラのない照明光でスリットを照明することが可能になる。
【0192】
いくつかの実施形態では、集光部材は、虹彩絞りに形成された開口数分の偏向面を有し、各偏向面で照明光を対応する開口に向けて偏向するプリズム(14b)と、プリズムと虹彩絞りとの間に配置されたレンズ(15b)とを含む。
【0193】
このような構成によれば、簡素な構成で、虹彩絞りに形成された開口を効率よく照明することが可能になる。
【0194】
いくつかの実施形態は、スリットを通過した照明光を偏向し、偏向された照明光を眼底に導く光スキャナ(30)を含み、光スキャナの偏向制御に同期してイメージセンサにより得られた戻り光の受光結果を取り込む。
【0195】
このような構成によれば、光源からの光を効率よく被検眼に入射して眼底の広い範囲をスキャンすることで、広がり角が広い安価な光源を用いた場合でも、簡素な構成で、眼底の撮影に必要な照度を確保し、被検眼の高画質の画像を取得することが可能になる。
【0196】
いくつかの実施形態は、被検眼の虹彩と光学的に略共役な位置に孔部が形成され、スリットを通過した照明光の光路と眼底からの戻り光の光路とを結合する穴鏡(45)を含む。
【0197】
このような構成によれば、光源からの光を効率よく瞳分割で被検眼に入射することができる。従って、広がり角が広い安価な光源を用いた場合でも、簡素な構成で、眼底の撮影に必要な照度を確保し、被検眼の状態に影響されることなく被検眼の高画質の画像を取得することが可能になる。
【0198】
いくつかの実施形態は、被検眼の状態に応じて光軸方向にスリットを移動する移動機構(22D)を含む。
【0199】
このような構成によれば、被検眼の眼底と光学的に略共役な位置に配置されるスリットの位置を被検眼の状態に応じて移動するようにしたので、光源からの光を効率よく被検眼の眼底に導くことが可能になる。それにより、光源からの光を効率よく瞳分割で被検眼に入射することができる。従って、広がり角が広い安価な光源を用いた場合でも、簡素な構成で、眼底の撮影に必要な照度を確保し、被検眼の状態に影響されることなく被検眼の高画質の画像を取得することが可能になる。
【0200】
以上に示された実施形態又はその変形例は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
【0201】
上記の実施形態において、眼科装置は、例えば、眼軸長測定機能、眼圧測定機能、光干渉断層撮影(OCT)機能、超音波検査機能など、眼科分野において使用可能な任意の機能を有していてもよい。なお、眼軸長測定機能は、光干渉断層計等により実現される。また、眼軸長測定機能は、被検眼に光を投影し、当該被検眼に対する光学系のZ方向(前後方向)の位置を調整しつつ眼底からの戻り光を検出することにより、当該被検眼の眼軸長を測定するようにしてもよい。眼圧測定機能は、眼圧計等により実現される。OCT機能は、光干渉断層計等により実現される。超音波検査機能は、超音波診断装置等により実現される。また、このような機能のうち2つ以上を具備した装置(複合機)に対してこの発明を適用することも可能である。
【0202】
いくつかの実施形態では、上記の眼科装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。このようなプログラムを、コンピュータによって読み取り可能な非一時的な(non-transitory)任意の記録媒体に記憶させることができる。この記録媒体としては、たとえば、半導体メモリ、光ディスク、光磁気ディスク(CD-ROM/DVD-RAM/DVD-ROM/MO等)、磁気記憶媒体(ハードディスク/フロッピー(登録商標)ディスク/ZIP等)などを用いることが可能である。また、インターネットやLAN等のネットワークを通じてこのプログラムを送受信することも可能である。
【符号の説明】
【0203】
1、1a、1b 眼科装置
10、10a 光源
11、11a コンデンサレンズ
12A、12B 偏心レンズ
13a ダイクロイックミラー
14b プリズム
15b レンズ
20、20a、20b 照明光学系
21 虹彩絞り
21A、21B 開口
22 スリット
30 光スキャナ
35 投影光学系
40 撮影光学系
42 黒点板
43 反射ミラー
45 穴鏡
46 対物レンズ
47 合焦レンズ
49 結像レンズ
50 撮像装置
51 イメージセンサ
E 被検眼
Ef 眼底
RL1、RL2 リレーレンズ系