(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060567
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】分別システム及び分別回収装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/30 20230101AFI20230421BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20230421BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230421BHJP
【FI】
G06Q10/00 400
G06Q50/10
G06T7/00 300D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170230
(22)【出願日】2021-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】太田 雅史
(72)【発明者】
【氏名】宮本 恵理
(72)【発明者】
【氏名】蛭田 直也
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 功
(72)【発明者】
【氏名】平井 千夏
(72)【発明者】
【氏名】新井 聡
【テーマコード(参考)】
5L049
5L096
【Fターム(参考)】
5L049AA20
5L049CC11
5L096AA06
5L096BA08
5L096CA02
5L096DA02
5L096EA03
5L096EA05
5L096EA12
5L096EA13
5L096EA16
5L096EA43
5L096FA06
5L096JA09
(57)【要約】
【課題】包装材を効率的にリサイクルするための分別システム及び分別回収装置を提供する。
【解決手段】分別システムは、包装材に付与され、包装材を構成する材料を示す情報が関連付けられた個別識別情報の画像データである個別識別情報画像を取得する個別識別情報取得部と、個別識別情報取得部で取得した個別識別情報画像に基づいて、個別識別情報が付与された包装材を構成する材料を判別する材料判別部と、材料判別部で判別された材料に基づいて、包装材の分別を行う分別制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装材に付与され、前記包装材を構成する材料を示す情報が関連付けられた個別識別情報の画像データである個別識別情報画像を取得する個別識別情報取得部と、
前記個別識別情報取得部で取得した前記個別識別情報画像に基づいて、前記個別識別情報が付与された前記包装材を構成する材料を判別する材料判別部と、
前記材料判別部で判別された前記材料に基づいて、前記包装材の分別を行う分別制御部と
を備える分別システム。
【請求項2】
前記個別識別情報画像から抽出された特徴点情報と、前記包装材を構成する前記材料とを予め対応付けて記憶した包装材情報記憶部を備える
請求項1に記載の分別システム。
【請求項3】
前記個別識別情報取得部は、回収された前記包装材に付与された個別識別情報を撮像して生成された個別識別情報画像から特徴点情報を抽出し、
前記材料判別部は、前記個別識別情報取得部が抽出した前記特徴点情報と、前記包装材情報記憶部に記憶された前記特徴点情報とを比較して、前記特徴点情報が一致した場合に一致した前記特徴点情報に関連付けられた前記材料を、前記包装材を構成する材料と判別する
請求項2に記載の分別システム。
【請求項4】
前記包装材情報記憶部は、前記包装材が積層体である場合には、前記包装材を構成する各層の材料及び前記各層の積層構成を前記包装材の前記材料として記憶する
請求項2又は3に記載の分別システム。
【請求項5】
前記包装材情報記憶部は、前記特徴点情報と、前記包装材を構成する前記材料と、前記包装材の製品を識別する製品識別情報とを対応付けて記憶している
請求項2又は3に記載の分別システム。
【請求項6】
前記製品識別情報は、前記製品の製品名及び製造会社名を特定可能な情報を含む
請求項5に記載の分別システム。
【請求項7】
前記製品識別情報は、さらに、前記製品の製造履歴、製造工場名、製造装置に関する情報及び製造日時の少なくとも1つを含む
請求項6に記載の分別システム。
【請求項8】
前記包装材情報記憶部は、前記包装材に付与された前記個別識別情報から抽出した前記特徴点情報と前記個別識別情報が抽出された状況とを対応付けて記憶する
請求項2から7のいずれか1項に記載の分別システム。
【請求項9】
前記包装材情報記憶部は、前記特徴点情報と、前記包装材に対応する前記製品識別情報とを対応付けて記憶しており、
前記包装材に付与された前記個別識別情報から抽出された特徴点情報と、前記包装材情報記憶部に記憶された前記特徴点情報とに基づいて、前記包装材を用いた前記製品を判別し、所定期間における前記製品の販売数量、出荷数量又は製造数量と、前記包装材の回収数量とに基づいて、前記包装材の回収率を算出する演算部を備える
請求項6又は7に記載の分別システム。
【請求項10】
前記演算部は、前記材料ごとの販売数量、出荷数量又は製造数量と、前記包装材を前記材料ごとに分離・洗浄する工程後における前記材料ごとのリサイクル数量とに基づいて、前記材料ごとのリサイクル率を算出する
請求項9に記載の分別システム。
【請求項11】
前記包装材に付与された前記個別識別情報は、前記包装材を構成する前記材料を示す情報を含んでいる
請求項1に記載の分別システム。
【請求項12】
前記包装材に付与された前記個別識別情報から抽出された前記特徴点情報に基づいて、前記個別識別情報が複製された個別識別情報であるか否かを判定する複製判別部を備える
請求項2から11のいずれか1項に記載の分別システム。
【請求項13】
ユーザに操作される端末にネットワークを介して接続される消費者情報システムを備え、
前記消費者情報システムは、
前記端末から取得した、前記包装材のリサイクルを行う個人を特定する個人特定情報と、前記特徴点情報とを受け付け、
前記包装材を用いた製品の購入又は前記包装材の回収が行なわれた際に、前記個人に対してインセンティブを提供する
請求項1から12のいずれか1項に記載の分別システム。
【請求項14】
包装材に付与され、前記包装材を構成する材料を示す情報が関連付けられた個別識別情報を撮像して個別識別情報画像を生成する撮像部と、
前記個別識別情報画像を取得する個別識別情報取得部と、
前記個別識別情報取得部で取得した前記個別識別情報の前記個別識別情報画像に基づいて、前記個別識別情報が付与された前記包装材を構成する材料を判別する材料判別部と、
前記材料判別部で判別された前記材料に基づいて、前記包装材の分別を行う分別部と、
同一の前記材料で形成された前記包装材ごとに前記包装材を収容する複数の収容部と、
を備える分別回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分別システム及び分別回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、包装材そのもの又は包装材を構成する材料を回収して原料をリサイクルすることが行われており、これまで特定の包装材(びん、缶及びペットボトル等)のリサイクルが行われていた。一方、例えば基材上に樹脂フィルムを積層させたラミネート又は基材の両面を樹脂フィルムで包み込んで密着させたパウチ等で作成した軟包装材や、樹脂ボトル等の包装材は分別回収が困難であり、回収後に焼却処分(単純焼却)や埋め立て処分とされたり、燃料材料用途で用いられることが多かった(非特許文献1及び非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“プラスチックリサイクルの基礎知識2021”,[online],2021年6月,一般社団法人プラスチック循環利用協会,[令和3年9月15日検索],インターネット <URL:https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf1.pdf>
【非特許文献2】“リサイクルのゆくえ プラスチック製容器包装”,[online],公益財団法人日本容器包装リサイクル協会,[令和3年9月15日検索],インターネット <URL:https://www.jcpra.or.jp/recycle/recycling/tabid/428/index.php>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、環境問題への意識の更なる高まりに応じて、これまでリサイクルされていなかった包装材についても同じ材料及び層構成の包装材ごとに分別して回収し、再生材の質を向上させて再生材の用途を広げることが望まれている。
本開示は、このような問題に鑑みてなされたもので、様々な材料及び層構成で形成された包装材のリサイクルの質を向上させるための分別システム及び分別回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するために、本開示の一態様に係る分別システムは、包装材に付与され、包装材を構成する材料を示す情報が関連付けられた個別識別情報の画像データである個別識別情報画像を取得する個別識別情報取得部と、個別識別情報取得部で取得した個別識別情報画像に基づいて、個別識別情報が付与された包装材を構成する材料を判別する材料判別部と、材料判別部で判別された材料に基づいて、包装材の分別を行う分別制御部と、を備える。
【0006】
また、本開示の一態様に係る分別回収装置は、包装材に付与され、包装材を構成する材料を示す情報が関連付けられた個別識別情報を撮像して個別識別情報画像を生成する撮像部と、個別識別情報画像を取得する個別識別情報取得部と、個別識別情報取得部で取得した個別識別情報の個別識別情報画像に基づいて、個別識別情報が付与された包装材を構成する材料を判別する材料判別部と、材料判別部で判別された材料に基づいて、包装材の分別を行う分別部と、同一の材料で形成された包装材ごとに包装材を収容する複数の収容部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、包装材のリサイクルの質を向上させるための分別システム及び分別回収装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第一実施形態に係る分別システムの機能及び動作の一構成例を示すブロック図である。
【
図2】分別回収装置10の外観の一例を示す概略図である。
【
図3A】本開示の第一実施形態に係る分別システムの機能及び動作の他の構成例を示すブロック図である。
【
図3B】本開示の第一実施形態に係る分別システムの機能及び動作の他の構成例を示すブロック図である。
【
図4】本開示の第二実施形態に係る分別システムの機能及び動作の一構成例を示すブロック図である。
【
図5】異なる印刷方法で印刷した場合の個別識別情報の一部を拡大して示す概略図である。
【
図6】本開示の第三実施形態に係る分別システムの全体像を説明する概略図である。
【
図7】本開示の第三実施形態に係る分別システムの機能及び動作の一構成例を示すブロック図である。
【
図8】本開示の第三実施形態に係る分別システムにおける包装材の回収率を説明する表である。
【
図9】本開示の第三実施形態に係る分別システムにおける包装材の回収率及びリサイクル率を説明する表である。
【
図10】本開示の第四実施形態に係る分別システムの全体像を説明する概略図である。
【
図11】本開示の第四実施形態に係る分別システムの機能及び動作の一構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本開示は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(例えば各実施形態を組み合わせる等)して実施することができる。
【0010】
1.第一実施形態
以下、第一実施形態に係る分別システム及び分別システムを用いて実現される包装材の分別回収装置について説明する。まず、
図1及び
図2を参照して、第一実施形態に係る分別システム1及び分別回収装置10の基本構成及び各部の機能について説明する。
図1は、分別システム1の機能及び動作の一構成例を示すブロック図である。
図2は、分別回収装置10の外観の一例を示す概略図である。
【0011】
(1.1)分別システムの基本構成
本実施形態に係る分別システム1は、包装材をリサイクルするリサイクルシステムの一部である。分別システム1によって例えば材料ごとに分別された包装材は、リサイクル業者の集約拠点に集められて分離、粉砕、洗浄され、材料ごとにリサイクルされる。より具体的には、分別された各材料が樹脂材料である場合、各材料は樹脂フレークや樹脂ペレット等に加工される。樹脂フレークや樹脂ペレットは、リサイクル前と同一の製品(例えば樹脂ボトルから樹脂ボトル)にリサイクル(水平リサイクル)されたり、リサイクル前と異なる製品(樹脂ボトルからパウチ)にリサイクル(カスケードリサイクル)される。
【0012】
分別システム1は、例えば
図2に示す分別回収装置10を動作させるためのシステムであり、分別回収装置10の各部のハードウェア資源が分別回収装置10の図示しない記憶部に記憶された分別プログラムと協働することにより、分別システム1の各機能が構築される。
まず、分別システム1により分別される包装材30及び包装材30に付与される個別識別情報31について説明する。
【0013】
<包装材>
包装材30は、液体、粉体、個体等の様々な形状を有する内容物を収容する収容体であり、例えば、樹脂ボトル、樹脂パッケージ、パウチ、ラミネート等で形成されている。パウチ及びラミネートは、例えば、製品名等が印刷された基材を樹脂で覆って形成されており、一種類の材料による単層又は複数の材料が積層されたフィルムで袋体形状とされている。また、樹脂ボトル、樹脂パッケージは、一種又は複数種類の樹脂材料により所望の包装材形状に形成されており、その外面に製品名等が印刷された樹脂フィルム(シュリンクフィルム)等が巻かれた状態、又は樹脂フィルムが除去された状態となっている。なお、包装材30は、内部に内容物を収容可能であればどのような素材で形成されていても、どのような形状とされていてもよく、上述した樹脂ボトル、樹脂パッケージ、パウチ、ラミネート以外の形状、材料であってもよい。
【0014】
<個別識別情報>
個別識別情報31は、例えば、包装材30に付与され、包装材30を構成する材料を示す情報が関連付けられている。個別識別情報31は、例えば包装材30に印刷されたJANコードのようなバーコード等の一次元コード及びQRコード(登録商標)等の二次元コードや、これらコード以外の絵柄、特殊コードであってもよい。また、個別識別情報31は、例えば包装材30表面の凹凸パターンやランダムパターン等の三次元パターンであってもよい。すなわち、個別識別情報31は、画像上から包装材30固有の特徴点情報が識別可能な情報であればよい。個別識別情報31が一次元コード又は二次元コード等である場合、個別識別情報31は包装材30に印刷(付与の一例)され、個別識別情報31が三次元パターン等である場合、個別識別情報31は包装材30表面に凹凸形状として付与される。
【0015】
個別識別情報31は、それぞれ異なる固有の特徴を有しており、個々の包装材30ごとに異なる特徴点情報を有するように形成される。このため、製品の包装材30に付与された個別識別情報31を解析することにより、製造された製品の一つ一つを区別し、個別識別情報31が付与された包装材30の材料を特定することができる。
【0016】
これにより、分別システム1は、読み取った個別識別情報31から抽出した特徴点情報と、記憶された特徴点情報と少なくとも包装材30の材料とを関連付けて記憶する包装材情報記憶部(詳細は後述する)とから、少なくとも包装材30の材料を判別する。この場合、特徴点情報と、包装材30に関する種々の情報とを関連付けて記憶しておくことができるため、二次元コードの情報量以上の関連情報から必要な情報を抽出して分別したり、分別・回収後の包装材30に関する情報を取得して回収情報の分析を行うこと等も可能となる。
【0017】
また、個別識別情報31を、包装材30の材料やその他の情報を示す情報を含む二次元コード等としてもよい。すなわち、分別システム1は、個別識別情報31から包装材30の材料を示す情報を直接読み取って、包装材30の材料を判別してもよい。
【0018】
以下、このような個別識別情報31が付与された包装材30を分別する分別システム1について、詳細に説明する。
図1に示すように、分別システム1は、包装材30に付与された個別識別情報31の画像(個別識別情報画像)を取得する個別識別情報取得部11と、各包装材を構成する材料を記憶する包装材情報記憶部12と、包装材30を構成する材料を判定する材料判別部13と、材料ごとに包装材30の分別制御を行う分別制御部14とを備えている。個別識別情報取得部11は、例えば、撮像部20と接続されている。
【0019】
このような個別識別情報31を用いる場合、安価かつ容易で、個体識別のためのチップ等のキャリアが不要である点で好ましい。
例えば、包装材を個体識別する方法として、ID-NEX(登録商標)のように個別のシリアル番号を発番し、対応する二次元コード等をパッケージに印字したり、シールに印字してパッケージに貼り付けることや、個別のシリアル番号等が読み出し可能なICチップをパッケージに貼り付けることが行われている。
しかしながら、リサイクルされる包装材にシール等を貼着することは好ましくなく、また、回収前に消費者がシール等をはがしてしまうおそれがある。また、廃棄される包装材に高コストの個体識別チップ等を貼り付けることは、コストの観点から現実的ではない。
【0020】
そこで、包装材30へ印刷された個別識別情報31や、包装材30表面の凹凸パターンを利用した個別識別情報31を用いることにより、コストをかけることなく包装材30に個別識別情報31を付与することができるため好ましい。また、包装材30の回収前に個別識別情報31が除去されて材料の判別ができなくなることを抑制することができる。
さらに、個別識別情報31として、従来から包装材30に印字されているJANコード、DataMatrixコード、QRコード(登録商標)等のコードを活用することもでき、材料判別のための個別識別情報を新たに付与しなくても分別システム1を運用することが可能となるため好ましい。
【0021】
<撮像部>
撮像部20は、例えばカメラであり、包装材30に付与された個別識別情報31を撮像して、個別識別情報31の個別識別情報画像21を生成する。包装材30に付与された個別識別情報31が、包装材30が回収される際に撮像部20で撮像されることにより、回収した包装材30の材料を判別して分別回収することが可能となる。
【0022】
撮像部20の撮像波長域は、撮像環境に応じて選択されればよい。撮像部20の撮像波長域は可視光の波長帯域であってもよく、赤外線、紫外線等の不可視光の波長帯域であっても良い。また、撮像部20で取得された個別識別情報画像21の解像度は、個別識別情報31を正確に認識可能な程度に高く設定されていればよく、例えば300dpi以上に設定される。
撮像部20は、個別識別情報31の個別識別情報画像を生成して、個別識別情報取得部11に入力する。
【0023】
<個別識別情報取得部>
図1に示すように、個別識別情報取得部11は、画像取得部111と画像解析部112とを有している。
【0024】
(画像取得部)
個別識別情報取得部11の画像取得部111は、包装材30に付与された個別識別情報31の個別識別情報画像21を取得する。画像取得部111は、例えば撮像部20から送信された個別識別情報画像21を取得する。個別識別情報画像21には、包装材30を構成する材料を示す情報が関連付けられている。
【0025】
画像取得部111が取得した個別識別情報画像21は、画像解析の前処理として、サイズの変更(拡大等)、ノイズ除去、二値化等が行なわれても良い。画像取得部111は、取得した個別識別情報画像21を画像解析部112に出力する。
なお、画像取得部111は、個別識別情報31を撮像して得られた個別識別情報画像21を取得すればよい。このため、画像取得部111は、例えば撮像部20で撮像された個別識別情報画像21のみならず、例えばスマートフォン等の携帯端末の撮像部で撮像された個別識別情報画像21や、USBメモリ等の記憶媒体に記憶された個別識別情報画像21や、一旦サーバ上に保存された個別識別情報画像21等を取得しても良い。
画像取得部111は、必要に応じて前処理を行った個別識別情報画像21を、画像解析部112に出力する。
【0026】
(画像解析部)
個別識別情報取得部11の画像解析部112は、包装材30に付与された個別識別情報31を撮像して生成された個別識別情報画像21から特徴点情報を抽出する。特徴点情報の抽出は、個別識別情報画像21を解析して、個別識別情報画像21中に表示される個別識別情報31の特徴点情報を画像認識技術を用いて抽出する。画像解析部112は、例えば、画像の回転によりコードの上下左右方向を所定の方向に一致させる処理や、ノイズの除去や画像の歪みの補正、彩度や明度の調整等の前処理を行った後、特徴点情報の抽出を行う。これにより、特徴点情報から製品を特定することで当該製品に用いられる包装材30の特定が可能となるため、包装材30の回収時に包装材30を構成する材料や層構成(各層を構成する材料や各層の積層構成)を判別することができる。
【0027】
本実施形態において「特徴点」とは、人間の目やスキャナ等のコード読取部では区別できない個々の画像に固有の特徴をいい、例えば個別識別情報31に含まれる情報に応じて相違する個別識別情報31毎の特徴的なパターン形状等をいう。具体的に、特徴点は、個別識別情報31の端部におけるエッジ線形性、明色領域と暗色領域とのコントラスト、パターンの相違(余分な暗色領域)、部分的な印刷のかすれ、外形のアスペクト比、配置位置とパターンのサイズ等の情報をいう。
【0028】
画像解析部112は、上述したような特徴点に着目し、各特徴を数値化した特徴点情報に変換する。個別識別情報31の形成には、形成時に自然発生する形成装置の振動、形成スピード、塗布スピード、インクなどの材料、形成公差、室温、湿度、形成時の包装材30の振動等の様々な環境要因により、微細な差異が生じる。このような差異は人の目には視認しにくいものの、画像認識技術を用いて特徴点を解析する事により認識することが可能となる。特徴点データは、個体に特有の情報であり、その個体を一意に識別する情報である。
【0029】
<包装材情報記憶部>
包装材情報記憶部12は、予め(例えば工場からの出荷前に)包装材30に付与された個別識別情報31が撮像されて生成された個別識別情報画像21から抽出された特徴点情報と、その個別識別情報31が付与された包装材30を構成する材料とが対応付けて記憶されている。
包装材情報記憶部12に記憶される特徴点情報及び包装材30を構成する材料は、商品が出荷されるたびに新しい情報が追加される。このため、分別システム1は、例えばインターネット等を経由して定期的に個別識別情報31の特徴点情報と包装材30を構成する材料とを取得して、包装材情報記憶部12に記憶されている情報に、新たな情報を追加して更新する。
【0030】
包装材情報記憶部12は、包装材30が積層体である場合には、包装材30を構成する各層の材料及び各層の積層構成を包装材30の材料として記憶する。例えば、包装材30がポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及び延伸ナイロン(ONY)がこの順に積層された層構成(PE/PET/ONY)である場合、包装材情報記憶部12は、この層構成と各層の材料とを記憶している。これにより、積層構造を有する包装材30をリサイクルする際に、同一の層構成を有する包装材30毎に分別することができる。また、回収した包装材30の層構成が包装材30の回収時にすでに判別済みであることから、積層構造の包装材30の各層を分離する手法を容易に判別することができる。
【0031】
包装材情報記憶部12は、特徴点情報と、包装材を構成する材料と、包装材の製品を識別する製品識別情報とを対応付けて記憶していてもよい。ここで、「製品識別情報」とは、例えば製品の製品名及び製造会社名を特定可能な情報を含んでいる。「製品名」は、同じ内容物(例えば洗剤)であっても容量が異なる商品は異なる製品名が割り当てられる。具体的には、個別識別情報31がJANコードである場合、JANコードに含まれる製造会社名を特定するGS1事業者コードと、製品名を特定する商品アイテムコードとが製品識別情報となる。また、「製品識別情報」は、さらに他の情報を含んでいてもよく、例えば、包装材30を用いた製品の製造履歴、包装材30の内容物を生成した製造工場名、製造装置に関する情報及び内容物の製造日時等を含んでいてもよい。
【0032】
<材料判別部>
材料判別部13は、個別識別情報取得部11で取得した個別識別情報画像21に基づいて、個別識別情報31が付与された包装材30を構成する材料を判別する。より詳細には、材料判別部13は、個別識別情報取得部11で取得した個別識別情報画像21から抽出した特徴点情報と包装材情報記憶部12に記憶された特徴点情報とを比較し、一致した特徴点情報を有する個別識別情報31に対応付けられた材料を、包装材30を構成する材料と判別する。
材料判別部13は、個別識別情報取得部11が抽出した特徴点情報と、包装材情報記憶部12に記憶された特徴点情報とを比較し、一致した特徴点情報に関連付けられた材料を、包装材30を構成する材料と判別する。
【0033】
<分別制御部>
分別制御部14は、材料判別部13で判別された包装材30の材料に基づいて、包装材30の分別の制御を行う。例えば、分別制御部14は、包装材30が回収される際に、撮像部20で読み取られた個別識別情報31に基づいて材料が判別されると、包装材30が材料ごとに異なる収容部に収容されるように分別部(詳細は後述する)を制御する。
【0034】
(1.2)分別回収装置
続いて、
図1及び
図2を参照して、
図2に一構成例を示す分別回収装置10について説明する。分別回収装置10は、分別システム1によって制御され、自動で分別・回収の動作を行う。
図2に示すように、分別回収装置10は、撮像部20と、包装材30を一時的に収容して分別する分別部25と、分別部25で分別された包装材30を材料ごとに分けて収容する複数の収容部26(
図2では3つの収容部26A,26B及び26C)を備えている。また、分別回収装置10は、装置内部に、個別識別情報取得部11、包装材情報記憶部12、材料判別部13、分別制御部14(
図1参照)を備えている。
以下、分別回収装置10について説明する。なお、分別回収装置10の撮像部20並びに個別識別情報取得部11、包装材情報記憶部12、材料判別部13及び分別制御部14は、分別システム1の各部の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0035】
<分別部>
分別部25は、材料判別部13で判別された材料に基づいて、包装材30の分別を行う。例えば、分別部25は、包装材30が一時的に収容可能であり、分別制御部14の制御に応じて適切な収容部26(例えば収容部26A,26B及び26Cのいずれか)に包装材30を振り分ける。分別部25は、包装材30を分別可能であればどのような構成であってもよいが、たとえばコンベアや仕切り板等を用いて包装材30を材料に応じた収容部26A,26B及び26Cのいずれかに振り分ける構成等(不図示)が用いられる。
【0036】
<収容部>
収容部26は、同一の材料で形成された包装材30ごとに包装材30を収容する。
図2では、2種類の材料を分別して収容する収容部26A,26B,26Cの例が記載されている。収容部26(26A,26B,26C)は、複数の包装材30が収容可能であればどのような形態であってもよく、例えば箱、籠、袋等の態様とすることができる。
収容部26(26A,26B,26C)には、包装材30に付与された個別識別情報31に基づいて分別部25によって分別された包装材30がそれぞれ収容される。
【0037】
分別回収装置10は、例えばスーパーマーケット等の店舗の店頭や、自治体の施設内等に配置される。この場合、利用者が包装材30に付与された個別識別情報31を分別回収装置10に読み取らせることで、包装材30が材料ごとに分別して回収される。
なお、回収された包装材30は、例えばリサイクル業者等によって定期的に収集され、集約拠点に集められる。店舗の店頭等に配置される分別回収装置10は、配置スペースの問題から外形を比較的小型にする必要がある。このため、分別可能な包装材30の材料の種類が比較的少なくなる場合がある。
また、分別回収装置10は、リサイクル業者等の集約拠点に配置されてもよい。このような分別回収装置10は、スーパーマーケット等の店舗の店頭に配置される装置より十分に大きい装置であってもよい。
【0038】
(1.3)変形例
上述したように、本実施形態に係る分別システム1は、インターネット等を経由して取得した情報を用いて分別回収装置10内に備えられた包装材情報記憶部12に記憶される情報を更新し、分別回収装置10内で材料の判別を行っていたが、このような構成に限られない。
例えば
図3Aに示すように、包装材情報記憶部12及び材料判別部13がインターネット等を経由して分別回収装置10と接続されていてもよい。この場合、分別システム1は、取得した特徴点情報をインターネット等を経由して分別回収装置10外の材料判別部13に送信し、材料判別部13は、材料の判別結果をインターネットを経由して分別制御部14に出力する。
また
図3Bに示すように、包装材情報記憶部12及び材料判別部13の一方が、インターネット等を経由して分別回収装置10と接続された構成であってもよい。
【0039】
(1.4)本実施形態の効果
本実施形態に係る分別システム及び分別回収装置は、以下の効果を有する。
(1)分別システムは、包装材に付与された個別識別情報から包装材を構成する材料を判別し、判別した材料に基づいて包装材の分別を行う。
このため、様々な材料や層構成を有する包装材を混在させずに回収することが可能となり、従来リサイクルされていなかった包装材についても、効率的にリサイクルすることができる。また、包装材をリサイクルしたリサイクル材の質が向上し、リサイクル材の用途を広げることができる。さらに、回収時に包装材の材料が明確であり、特定の材料の回収が容易となり、リサイクル率を向上させることができる。
【0040】
(2)分別システムは、個別識別情報から抽出された特徴点情報と、包装材を構成する材料とを予め対応付けて記憶した包装材情報記憶部を備えている。
これにより、包装材に付与された個別識別情報に基づいて適切に包装材の材料を判別することができる。
(3)分別システムは、包装材が回収された際に、個別識別情報像から特徴点情報を抽出し、特徴点情報と包装材情報記憶部に記憶された特徴点情報とを比較して、包装材を構成する材料と判別する。
これにより、包装材の回収時に材料ごとに分別することが容易に可能となる。
(4)分別システムは、積層体である包装材を構成する各層の材料及び各層の積層構成を包装材の材料として記憶している。
これにより、積層構造の包装材も効率的に分別できる。
【0041】
2.第二実施形態
以下、第二実施形態に係る分別システム2について、
図4を参照して説明する。
図4は、第二実施形態に係る分別システム2の一構成例を示すブロック図である。
【0042】
(2.1)分別システムの基本構成
図4に示すように、分別システム2は、個別識別情報取得部11と、包装材情報記憶部12と、材料判別部13と、分別制御部14と、複製判別部27とを備えている。すなわち、分別システム2は、複製判別部27を備え、画像取得部111で取得した個別識別情報画像21が複製であるか否かを判定する点で、分別システム1と相違する。
以下、複製判別部27について詳細に説明する。また、画像取得部111、包装材情報記憶部12の各部は、分別システム1の各部と同様であるため説明を省略する。
【0043】
(複製判別部)
複製判別部27は、個別識別情報31が複製された個別識別情報であるか否かを判定する。具体的には、複製判別部27は、画像解析部112で個別識別情報画像21から抽出された個別識別情報31の特徴点情報に基づいて、個別識別情報31の包装材30への付与方法(例えば印刷方法)を判定する形成方法判別部271を有している。
【0044】
例えば
図5(A)から
図5(C)に異なる印刷方法で印刷した場合の個別識別情報の一部を拡大して示す。
図5(A)及び
図5(B)は、オフセット印刷によって印刷した個別識別情報の一部を示し、
図5(C)は、
図5(A)の個別識別情報をレーザコピー機によりコピーした個別識別情報の一部を示す。
図5(A)及び
図5(B)のオフセット印刷によって印刷した個別識別情報は、暗色領域内に形状の異なる印刷のかすれがあるものの、個別識別情報の端部におけるエッジ線形性がいずれも高くなっている。そして、
図5(A)及び
図5(B)は、いずれもオフセット印刷によって印刷した個別識別情報の例であるが、個々の個別識別情報に微細な個体差が生じている。これは、同じ印刷方法であっても印刷時の環境や条件の相違により、個別識別情報が全く同一の印刷とはならないためであり、この個体差により、同一の商品であっても別の個体と判別することが可能となる。
一方、
図5(A)の個別識別情報をレーザコピー機によりコピーした
図5(C)の個別識別情報は、個別識別情報の端部におけるエッジ線形性が低く、暗色領域内のかすれもオフセット印刷とは異なるかすれ方となっていることから、印刷方法自体が異なると判別することができる。
【0045】
形成方法判別部271は、例えば、個別識別情報画像21から抽出された個別識別情報31の特徴点情報に基づいて印刷方法を判定する。形成方法判別部271は、予め定められた個別識別情報31の印刷方法の情報を記憶している。形成方法判別部271は、個別識別情報31の特徴点情報と、予め記憶された正しい印刷方法とを比較することにより、個別識別情報画像21に示される個別識別情報31の形成方法が予め定められた形成方法であるか否かを判定することができる。例えば、形成方法判別部271は、版を使用して印刷した真正の個別識別情報31と、真正の個別識別情報31の形状を読み取ってコピー機等で印刷した複製された個別識別情報31とを区別することが可能となる。これにより、複製判別部27は、形成方法判別部271が、個別識別情報画像21に示される個別識別情報31の形成方法が予め定められた形成方法ではないと判定した場合に、上述した個別識別情報31を複製された個別識別情報であると判定する。
複製判別部27は、個別識別情報31が複製された個別識別情報であるか否かを示す真贋情報を材料判別部13及び分別制御部14に出力する。
【0046】
なお、個別識別情報31の複製の判定方法として、印刷方法の判定以外の方法を用いてもよい。例えば、包装材30表面の凹凸パターンを個別識別情報31とする場合、複製判別部27は、画像解析部112で個別識別情報画像21から抽出された個別識別情報31の特徴点情報に基づいて、個別識別情報31である包装材30表面の凹凸パターンが正規のパターンであるかを判定するパターン判別部272を有していてもよい。
図5には、形成方法判別部271及びパターン判別部272を記載しているが、回収する包装材30に応じていずれか一方のみが備えられていてもよい。
【0047】
(材料判別部)
材料判別部13は、複製判別部27から、個別識別情報31が複製であるか否かの判定結果である真贋情報を取得する。材料判別部13は、個別識別情報31が複製された個別識別情報ではないことを示す真贋情報を取得した場合に、個別識別情報31の特徴点情報と同一の特徴点情報に対応する材料を包装材情報記憶部12から検索して判定する。一方、材料判別部13は、複製判別部27から個別識別情報31が複製された個別識別情報であることを示す真贋情報を取得した場合には、個別識別情報31の特徴点情報と包装材情報記憶部12に記憶されている特徴点情報との比較を中止する。
【0048】
(分別制御部)
分別制御部14は、複製判別部27から、個別識別情報31が複製であるか否かの判定結果である真贋情報を取得する。分別制御部14は、個別識別情報31が複製された個別識別情報であることを示す真贋情報を取得した場合、例えば材料不明の包装材30を収容する収容部26に包装材30を振り分けることができる。また、分別制御部14は、個別識別情報31が複製された個別識別情報であることを示す真贋情報を取得した場合、該当の包装材30の分別を中止してもよい。分別回収装置10に表示部、音声出力部又は発光部(不図示)が設けられている場合には、包装材30の分別を中止する際に、表示部に包装材30の分別を中止することを示す表示を行ったり、音声出力部から表示部に包装材30の分別を中止することを示す音声を出力したり、発光部を発光させて、利用者に知らせるようにしてもよい。
【0049】
(2.2)本実施形態の効果
本実施形態に係る分別システム及び分別回収装置は、第一実施形態で説明した(1)~(4)の効果に加えて以下の効果を有する。
(5)分別システムは、包装材に付与された個別識別情報から抽出された特徴点情報に基づいて、個別識別情報が複製された個別識別情報であるか否かを判定する複製判別部を備える。
このため、複製された個別識別情報が付与されていた包装材の分別を中止したり、材料が不明な包装材として分別することが可能となる。
【0050】
3.第三実施形態
以下、第三実施形態に係る分別システム3について、
図6から
図9を参照して説明する。
図6は、第三実施形態に係る分別システム3の全体像を説明する概略図であり、
図7は、分別システム3の一構成例を示すブロック図である。
【0051】
(3.1)分別システムの概略
分別システム3は、包装材30の材料を判別して分別・回収を行うのみでなく、包装材30の製造から回収後までの各状況において個別識別情報31を読み込むことで、各状況における包装材30の回収やリサイクルに関する情報を取得することができる。これにより、分別システム3は、リサイクル状況の分析を行うことが可能となる。
すなわち、分別システム3は、個別識別情報が抽出された各状況で得られた情報に基づいて、包装材30のリサイクル状況の診断を行うことが可能な点で、分別システム1又は2と相違する。
以下、分別システム3について
図6を参照して説明する。
【0052】
図6に示すように、分別システム3は、少なくとも包装材30の製造時、内容物が包装材30に充填された製品の出荷時又は製品の販売時と、包装材30の回収時とにおいて、包装材30に付与された個別識別情報31から個別識別情報画像21を取得し、特徴点情報の抽出を行う。このとき、分別システム3は、材料の判別や個別識別情報31の真贋判定等の個別識別情報画像21を用いた照合を行う。また、分別システム3は、各状況において個別識別情報31を読み込むことにより、製造、出荷、販売、回収時における包装材30の数量(包装材30の製造数量、出荷数量、販売数量、回収数量)や、製造、出荷、販売、回収時における包装材30を構成する各材料の数量(各材料の製造数量、出荷数量、販売数量、回収数量)を取得する。
【0053】
分別システム3は、個別識別情報が抽出された状況(例えば包装材30の製造時、内容物が包装材30に充填された製品の出荷時又は製品の販売時や、包装材30の回収時等の、包装材30の製造からリサイクルまでの各工程)や、各状況において得られた情報(例えば包装材の製造量、出荷量又は販売量や、回収量等)の登録を行う。これにより、分別システム3は、各状況において得られた情報に基づいて、例えば包装材30の回収率や、包装材30を構成する材料ごとのリサイクル率の算出等のリサイクル状況の診断を行うことが可能となる。
【0054】
(3.2)分別システムの基本構成
図7に示すように、分別システム3は、分別システム1又は2と同様に個別識別情報取得部11、包装材情報記憶部12、材料判別部13及び分別制御部14を備えており、分別システム2のように複製判別部27を備えていてもよい。さらに、分別システム3は、情報取得部38と、演算部39と、を備えている。
以下、分別システム3の各部について説明する。なお、個別識別情報取得部11、材料判別部13及び分別制御部14、並びに複製判別部27の各部は、分別システム1又は2の各部と同様であるため説明を省略する。
【0055】
<包装材情報記憶部>
包装材情報記憶部12は、特徴点情報と、その個別識別情報31が付与された包装材30を構成する材料とが対応付けて記憶されている。
また、本実施形態においては、包装材情報記憶部12は、包装材30に付与された個別識別情報31から抽出した特徴点情報と、特徴点情報が抽出された状況とを対応付けて記憶している。また、包装材情報記憶部12は、特徴点情報と、包装材30に対応する製品識別情報とを対応付けて記憶している。製品識別情報は、例えば包装材30を用いた製品の製造会社名及び製品名を特定する情報である。
【0056】
包装材情報記憶部12は、包装材30を用いた各製品の製造数量、出荷数量もしくは販売数量、又は当該製品の包装材30を構成する各材料の製造数量、出荷数量又は販売数量(以下、包装材30の製造数量、出荷数量又は販売数量等という場合がある)を記憶する。ここで、各材料の製造数量、出荷数量又は販売数量とは、製品の製造、出荷又は販売時において、包装材30に含まれる各材料の数量をいう。
さらに、包装材情報記憶部12は、包装材30の回収数量や、包装材30を構成する各材料の回収数量、包装材30を構成する各材料のリサイクル数量(マテリアルリサイクル後の数量)を記憶する。
【0057】
<情報取得部>
情報取得部38は、包装材30の製造から回収後までの各状況において、包装材30の製造数量、出荷数量又は販売数量等や回収数量、リサイクル数量を取得する。情報取得部38は、包装材30の製造から回収後までの各状況において、個別識別情報31が読み取られ、特徴点情報の抽出が行われ、特徴点情報の照合が行われた際に、包装材情報記憶部12に記憶された情報に基づいて、照合が行われた包装材30の数量を取得することができる。
【0058】
<演算部>
演算部39は、包装材30の製造から回収後までの各状況において、包装材30の製造数量、出荷数量又は販売数量等や回収数量、リサイクル数量を取得する。情報取得部38は、包装材30の製造から回収後までの各状況において、個別識別情報31が読み取られ、特徴点情報の抽出が行われ、特徴点情報の照合が行われた際に、包装材情報記憶部12に記憶された情報に基づいて、照合が行われた包装材30の数量を取得する。例えば、演算部39は、分別回収装置10で個別識別情報31が読み取られて特徴点情報の照合が行われた際には、照会が行われた包装材30が回収されたと判断し、照会された包装材30の回収数量を取得する。
【0059】
演算部39は、包装材30に付与された個別識別情報31から抽出された特徴点情報と、包装材情報記憶部12に記憶された情報とに基づいて、包装材30の製品の名称を判別し、各製品の販売数量、出荷数量又は製造数量と、包装材の回収数量とに基づいて、包装材の回収率を算出する。例えば、演算部39は、各製品の販売数量(販売された製品に用いられる包装材30の数量)に対する包装材の回収数量(回収数量/販売数量)から、回収率を算出する。
【0060】
また、分別システム3は、収集された情報に基づき、その他の指標の評価を行ってもよい。例えば、分別システム3は、再生材料や再生方法ごとの物性評価、物性評価の平均値の設定を行ったり、物性評価に応じたリサイクル方法の評価、再生品の物性の改善や品質の調整における評価を行ってもよい。また、分別システム3は、人工知能(AI)を活用して回収数量の予測を行ってもよい。
【0061】
また、演算部39は、各製品の販売数量、出荷数量又は製造数量から、当該製品の包装材30を構成する各材料の販売数量、出荷数量又は製造数量を算出する。演算部39は、各材料の販売数量、出荷数量又は製造数量と、各材料のリサイクル数量とに基づいて、各材料のリサイクル率を算出する。例えば、演算部39は、各製品の販売数量から、当該製品の包装材30を構成する各材料の販売数量を算出し、各材料の販売数量に対する各材料のリサイクル数量(リサイクル数量/販売数量)から、リサイクル率を算出する。ここで、各材料のリサイクル数量とは、例えば包装材30を材料ごとに分離・洗浄する工程後における各材料の数量をいう。
製品の一部は、製造されても出荷されない場合がある。このため、回収率及びリサイクル率の算出精度の観点から、販売時における包装材30の数量又は販売時における各材料の数量を基準として回収率及びリサイクル率を算出することが好ましい。
【0062】
分別システム3では、各状況において個別識別情報31の読み取りが行われることに応じて、包装材情報記憶部12に所定の情報が記憶される。
例えば、包装材30の製造時(
図6のステップS11)には、分別システム3は、撮像装置が個別識別情報31を読み取って個別識別情報画像21を取得すると、個別識別情報画像21から抽出した特徴点情報と、包装材30の材料や層構成等の材料情報や包装材30を用いた製品の製品名及び製造会社名を特定可能な情報を含む製品識別情報とが関連付けて包装材情報記憶部12に保存される。
【0063】
次に、内容物の充填時(
図6のステップS12)には、分別システム3は、個別識別情報画像21から抽出した特徴点情報と、製品識別情報とを関連付けて包装材情報記憶部12に保存する。
続いて、製品の出荷時(
図6のステップS13)には、分別システム3は、個別識別情報画像21から抽出した特徴点情報と、製品の出荷量等の出荷情報とを関連付けて包装材情報記憶部12に保存する。
なお、ステップS11に記載の特徴点情報と材料情報との関連付け、ステップS12に記載の特徴点情報と製品識別情報との関連付け、及びステップS13に記載の特徴点情報と出荷情報との関連付けは、製品出荷までのいずれかの工程で行われればよく、必ずしも包装材30の製造時、内容物の充填時及び製品の出荷時に行われる必要はない。例えば、
図6では、特徴点情報と材料情報との関連付けは、例えば包装材30メーカーの工場において包装材30の製造時に行われる場合を説明しているが、商品を製造するメーカーの工場において、内容物の充填時や製品の出荷時に行われても良い。また、特徴点情報と材料情報、製品識別情報及び出荷情報との関連付けは、必ずしもこの順に行われる必要はなく、異なる順番に関連付けられたり、全ての情報が同時に関連付けられてもよい。
【0064】
消費者の製品購入時(
図6のステップS14)には、分別システム3は、個別識別情報画像21から抽出した特徴点情報と、製品の出荷数量又は製品に用いられる包装材30を構成する材料の数量とを関連付けて包装材情報記憶部12に保存する。包装材30を構成する材料の数量は、例えば製品の出荷数量から算出される。
包装材回収時(
図6のステップS15)には、分別システム3は、個別識別情報画像21から抽出した特徴点情報と、包装材30の回収日、回収数量、回収地等とを関連付けて包装材情報記憶部12に保存する。なお、回収地は、例えば包装材30が回収された分別回収装置10の設置情報に基づいて特定される。
【0065】
包装材の集約拠点への集約時(
図6のステップS16)には、分別システム3は、個別識別情報画像21から抽出した特徴点情報と、例えば包装材30の振り分け先リサイクル工場名とを関連付けて包装材情報記憶部12に保存する。より具体的には、集約拠点では、例えば同一製品の包装材30を特定のリサイクル工場に搬送し、異なる製品の包装材30を他のリサイクル工場に搬送する。このため、包装材30がどのリサイクル工場に搬送されたかを示す情報(リサイクル工場名)を、個別識別情報画像21から抽出した特徴点情報に関連付けて記憶することで、包装材30のリサイクル工程を追跡することが可能となる。
【0066】
包装材のリサイクル時(
図6のステップS17)には、分別システム3は、個別識別情報画像21から抽出した特徴点情報の照合が行われる。これにより、特徴点情報と回収された包装材30が分離・粉砕・洗浄を経てリサイクルされる工程に入ったこととが関連付けて包装材情報記憶部12に保存される。
【0067】
以上のような分別システム3では、収集した情報を用いて、リサイクル状況の分析を行うことが可能となる。
例えば、
図8に示すように、製品(シャンプーA~D)ごとの包装材30の回収率を地域ごとに分析することができる。
また、
図9に示すように、包装材30の材料及び層構造ごとに、回収率とリサイクル率とを分析することができる。
図9には、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及び延伸ナイロン(ONY)がこの順に積層された層構成(PE/PET/ONY)の包装材30と、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及び延伸ナイロン(ONY)がこの順に積層された層構成(PP/PET/ONY)の包装材30と、ポリエチレン(PE)と紙とポリエチレン(PE)がこの順に積層された層構成(PE/紙/PE)の包装材30のそれぞれの製造会社名、回収率及びマテリアルリサイクル率が表示されている。これにより、「回収率は高いもののリサイクル率が低い材料」等の所望の条件を満たす包装材30を抽出して、包装材30の形状や材料の検討の資料とすることができる。また、リサイクル率をリユース率とマテリアルリサイクル率に分けてより詳細に分析することも可能となる。なお、分析には、製造会社名は分析結果に含まなくてもよく、製造会社名以外の他の情報が含まれていても良い。
【0068】
また、上述した分別システム3において包装材30に含まれる材料の管理及び明確化を行うことにより、リサイクル工程において包装材30の追跡を行い、より精度の高い分析を行うことができる。これにより、回収した包装材30の衛生面が向上するとともに、リサイクルされた材料の純度が向上し、再生品の価値を向上させることができる。
【0069】
(3.3)本実施形態の効果
本実施形態に係る分別システムは、第一実施形態で説明した(1)~(4)の効果に加えて以下の効果を有する。
(6)分別システムは、包装材の製造から回収後までの各状況において個別識別情報を読み込むことで、各状況における包装材の回収やリサイクルに関する情報を取得して保存する。
これにより、分別システムは、リサイクル状況の分析を詳細に行うことが可能となる。
【0070】
4.第四実施形態
以下、第四実施形態に係る分別システム4について、
図10及び
図11を参照して説明する。
図10は、第三実施形態に係る分別システム4の全体像を説明する概略図であり、
図11は、分別システム4の一構成例を示すブロック図である。
【0071】
(4.1)分別システムの概略
分別システム4は、包装材30に付与された個別識別情報31を用いて包装材30の材料を判別し、分別・回収を行う過程において、包装材30の回収を行った消費者に対してインセンティブを付与するシステムである。
すなわち、分別システム4は、
図10に示すステップS14において包装材30の回収を行った消費者に対してインセンティブを付与する点で、分別システム1~3と相違する。
以下、分別システム4について
図10を参照して説明する。
【0072】
図10に示すように、分別システム4の基本構成は、分別システム3と同様である。分別システム4は、ユーザに操作される端末にネットワークを介して接続される消費者情報システムであるインセンティブ付与サーバ40を備えている。インセンティブ付与サーバ40は、包装材30の回収を行った際に回収に協力した個人の個人特定情報を照合することで、回収に協力したユーザに対してインセンティブの付与を行う。
これにより、リサイクル率の向上や消費者へのリサイクルへの意識向上を図ることができる。
【0073】
(4.2)分別システムの基本構成
図11に示すように、上述した分別システム4は、分別システム1又は2と同様に、個別識別情報取得部11、包装材情報記憶部12、材料判別部13及び分別制御部14を備えており、分別システム2のように複製判別部27を備えていてもよい。分別システム4は、インセンティブ付与サーバ40を備え、包装材30を回収する際に、回収に協力したユーザの個人特定情報を照合することで、回収に協力したユーザに対してインセンティブの付与を行う。
以下、分別システム4のインセンティブ付与サーバ40及びインセンティブ付与サーバ40に関連する分別回収装置10の撮像部20について説明する。なお、個別識別情報取得部11、材料判別部13及び分別制御部14、並びに複製判別部27の各部は、分別システム1又は2の各部と同様であるため説明を省略する。
【0074】
<分別回収装置>
分別回収装置10の撮像部20は、包装材30の回収が行われる際に、例えばユーザの使用する端末50(
図11参照)の表示部に表示された、ユーザの個人特定情報を含む個人識別情報51(QRコード等)を読み取る。撮像部20は、個人識別情報51を撮像して個人識別情報画像52を生成し、分別システム4のインセンティブ付与サーバ40に送信する。撮像部20は、個人識別情報画像52を取得し、かつ包装材30の回収が行われた場合に、個人識別情報画像52をインセンティブ付与サーバ40に送信する。
【0075】
<インセンティブ付与サーバ>
インセンティブ付与サーバ40は、包装材30の回収に協力したユーザに対してインセンティブの付与を行うWEBサーバである。
インセンティブ付与サーバ40は、包装材30の回収が行われると、分別システム4から包装材30が回収されたことを示す情報を受信する。包装材30が回収されたことを示す情報は、回収された包装材30に付与された個別識別情報31が撮像されて生成された個別識別情報画像21又は個別識別情報画像21から抽出した特徴点情報であってもよい。また、インセンティブ付与サーバ40は、撮像部20で生成された個人識別情報画像52を受信する。
【0076】
インセンティブ付与サーバ40は、個人識別情報画像52からユーザの個人特定情報を抽出し、当該ユーザに対してインセンティブの付与を行う。ここで、「インセンティブ」とは、例えば景品や、他のポイントや現金、景品と交換可能なポイント等であってもよい。インセンティブ付与サーバ40は、例えば、回収された包装材30が用いられた商品と同一の、又は他の商品の割引券や引換券を提供してもよい。
【0077】
インセンティブ付与サーバ40は、個別識別情報31が付与された全ての製品(包装材)をインセンティブ付与対象としてもよく、例えば環境に与える影響を考慮して形成された包装材であるサスティナブルパッケージ等の特定の製品に対してのみをインセンティブ付与対象としてもよい。また、インセンティブ付与サーバ40は、個別識別情報31が付与された製品(包装材)ごとに異なるインセンティブを付与しても良い。
なお、インセンティブ付与サーバ40は、各製品を販売する事業者や当該事業者から委託された他の事業者に管理・運用させるために設置される。
【0078】
上述したインセンティブを受けるために、ユーザは、インセンティブ付与のためのWEBページで会員登録を行ったり、端末50に専用のアプリケーションをインストールして個人特定情報を登録する。インセンティブ付与のためのWEBページ又はアプリケーションは、例えば端末50の表示部51に、個人特定情報を含む個人識別情報51を表示する機能を有している。ユーザが、包装材30を分別回収装置10に収容する際に、端末50の表示部に表示された個人特定情報を含む個人識別情報51を分別回収装置10の撮像部20に読み込ませることで、インセンティブを付与するユーザが特定される。また、ユーザの個人特定情報のうち、性別、年代、在住地域等の属性等が包装材30の情報に関連付けられてもよい。これにより、リサイクル状況の分析において、リサイクルに協力したユーザの属性を示す情報も用いることが可能となる。
【0079】
なお、分別システム4では、ユーザが製品を購入した際に、端末50によって購入した製品の個別識別情報31を読み取り、個別識別情報画像32を個人特定情報と共にインセンティブ付与サーバ40に送信しても良い。この場合、個人特定情報と包装材30の個別識別情報31の特徴点情報とが分別システム4で記憶される。このため、包装材30の回収時には、分別回収装置10の撮像部20で包装材30に付与された個別識別情報31が読み込まれるだけで、製品を購入したユーザを回収に協力したユーザとみなして回収時のインセンティブを付与することができる。また、製品を購入したユーザに製品購入によるインセンティブを付与することもできる。
【0080】
また、分別システム4は、複製判別部27を備えることが好ましい。複製判別部27を備えることにより、複製された個別識別情報51が用いられた場合に、インセンティブの付与を中止して、インセンティブを与えるべきでないユーザにインセンティブが付与されることを防止することができる。
【0081】
(4.3)本実施形態の効果
本実施形態に係る分別システムは、第一実施形態で説明した(1)~(4)の効果に加えて以下の効果を有する。
(7)分別システムは、包装材30の回収を行ったユーザに対してインセンティブを付与するための消費者情報システムであるインセンティブ付与サーバを備えている。
これにより、リサイクル率の向上や消費者へのリサイクルへの意識向上を図ることができる。
【0082】
以上、本開示の実施形態を説明したが、上記実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本開示の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものでない。本開示の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0083】
1,2,3,4 分別システム
10 分別回収装置
11 個別識別情報取得部
111 画像取得部
112 画像解析部
12 包装材情報記憶部
13 材料判別部
14 分別制御部
20 撮像部
21 個別識別情報画像
25 分別部
26,26A,26B,26C 収容部
27 複製判別部
271 形成方法判別部
272 パターン判別部
30 包装材
31 個別識別情報
38 情報取得部
39 演算部
40 インセンティブ付与サーバ