(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060620
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 75/62 20060101AFI20230421BHJP
B65D 33/38 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
B65D75/62
B65D33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170313
(22)【出願日】2021-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 操
(72)【発明者】
【氏名】佐々 志歩
【テーマコード(参考)】
3E064
3E067
【Fターム(参考)】
3E064AB23
3E064BA01
3E064BA16
3E064BA27
3E064BA28
3E064BA29
3E064BA30
3E064BA36
3E064BA38
3E064BA46
3E064BA55
3E064BB03
3E064BC08
3E064BC18
3E064EA12
3E064EA23
3E064FA04
3E064HF10
3E064HG10
3E064HM01
3E064HP01
3E064HP02
3E064HS05
3E064HS10
3E067AA03
3E067AA04
3E067AB81
3E067AC01
3E067BA12A
3E067BB11A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB25A
3E067CA04
3E067CA07
3E067CA15
3E067CA16
3E067CA17
3E067CA24
3E067EA06
3E067EB03
3E067EB07
3E067EB11
3E067EE59
3E067FA01
3E067FB07
3E067FC01
3E067GD02
3E067GD07
(57)【要約】
【課題】本発明の解決しようとする課題は、製品のコストを抑えつつ、詰め替え時に注出口が閉塞することなく、安定して迅速に内容物を注出することができ、特に小さい口径のボトル等にも差し込み易く、安定して内容物を注出することができる包装袋を提供するものである。
【解決手段】周縁部と、周縁部の間に形成された収納部とを備える包装袋であって、不要な部分を除去することで形成される注出口と、注出口から収納部まで連通する注出流路とを備え、注出流路は、第1のエンボス部と、第2のエンボス部と、第3のエンボス部とを有し、注出口の幅は、12mm以上17mm以下であることを特徴とする包装袋である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面部材と、背面部材と、それぞれの周縁を互いに接合することにより形成された周縁部と、周縁部の間に形成された収納部とを備える包装袋であって、
周縁部の一部に設けられ、不要な部分を除去することで形成される注出口と、
注出口と収納部との間に設けられ、注出口から収納部まで連通する注出流路とを備え、
注出流路は、注出口から収納部に向かって直線状に延び、外方に膨らんだ凸状に形成され、幅方向の寸法が一定である第1のエンボス部と、
第1のエンボス部と離間して、第1のエンボス部よりも上側に設けられ、内方に窪んだ凹状に形成された第2のエンボス部と、
第1のエンボス部と離間して、第1のエンボス部よりも下側に設けられ、内方に窪んだ凹状に形成された第3のエンボス部とを有し、
前記第2のエンボス部は、注出口から収納部に向かうにつれて第1のエンボス部から離間するように延びる直線状に形成された第1の線部と、
第1の線部の収納部側の端部から第1のエンボス部に接近するように延びる直線状に形成された第2の線部とを有し、
前記第3のエンボス部は、注出口から収納部に向かうにつれて第1のエンボス部から離間するように延びる直線状に形成された第3の線部と、
第3の線部の収納部側の端部から第1のエンボス部に接近するように延びる直線状に形成された第4の線部とを有し、
前記注出口の幅は、12mm以上17mm以下であることを特徴とする包装袋。
【請求項2】
前記第1の線部と第2の線部のなす角度は、90°以上180°未満であることを特徴とする請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記第1のエンボス部および第2のエンボス部の幅方向の寸法は、0.5mm以上5.0mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の包装袋。
【請求項4】
粘度が1mPa以上1000mPa以下の流動物が収納されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の包装袋。
【請求項5】
前記収納部は、70ミリリットル以上300ミリリットル以下の容量を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋に関し、特に内容物である液体を注出する際に、注出口が閉塞しにくく、注出性の改善された包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
熱シール可能なシーラント層を有する積層体を、そのシーラント層同士を対向させて周縁を熱シールして成形した包装袋が、さまざまな用途に使用されている。中でも積層体を折り込んだり、底テープ部材を追加したりして、底面にガセット構造を設け、広い底面部を形成して、自立性を持たせた所謂スタンディングパウチは、包装袋として特に液体の内容物を収納する用途を中心として広く用いられている。
【0003】
包装袋を液体詰替え容器として使用する場合、内容物を本来の容器に詰替える作業において、包装袋の注出口が閉塞して詰替えに時間がかかるという問題を解決するために、従来よりさまざまな工夫が試みられてきた。
【0004】
特許文献1に記載された詰替え用液体収納容器は、注出口部にプラスチック製のパイプ状部材を取り付けた液体収納容器である。この容器は、注出性については、安定した性能を発揮するものの、プラスチック部材のコストに加えて、これを取り付けるための工程が増えるためコストアップが大きな問題となる。
【0005】
特許文献2に記載された自立型袋は、紙基材を用い、注出口部に閉塞防止のために1本の組立用罫線を施したものであるが、1本の罫線だけでは、十分な効果を得ることはできないものである。
【0006】
特許文献3に記載された収納容器は、注出口に1本の直線状の外側に凸のエンボス部を設け、これを取り囲むように3本の、くの字状ないしは直線状の、外側に凹のエンボス部を設けたものである。
【0007】
特許文献2または3に記載された容器において、自然落下に近い状態で内容物を注出する場合には大きな問題はないが、内容物の注出を急ぐために容器を加圧すると、狭い注出口に圧力が集中する結果、かえって注出口が閉塞してしまうという問題点があることが判明したのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9-240692号公報
【特許文献2】特開2009-57071号公報
【特許文献3】特許第6554920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は、製品のコストを抑えつつ、詰め替え時に注出口が閉塞することなく、安定して迅速に内容物を注出することができ、特に小さい口径のボトル等にも差し込み易く、安定して内容物を注出することができる包装袋を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、前面部材と、背面部材と、それぞれの周縁を互いに接合することにより形成された周縁部と、周縁部の間に形成された収納部とを備える包装袋であって、周縁部の一部に設けられ、不要な部分を除去することで形成される注出口と、注出口と収納部との間に設けられ、注出口から収納部まで連通する注出流路とを備え、注出流路は、注出口から収納部に向かって直線状に延び、外方に膨らんだ凸状に形成され、幅方向の寸法が一定である第1のエンボス部と、第1のエンボス部と離間して、第1のエンボス部よりも上側に設けられ、内方に窪んだ凹状に形成された第2のエンボス部と、第1のエンボス部と離間して、第1のエンボス部よりも下側に設けられ、内方に窪んだ凹状に形成された第3のエンボス部とを有し、前記第2のエンボス部は、注出口から収納部に向かうにつれて第1のエンボス部から離間するように延びる直線状に形成された第1の線部と、第1の線部の収納部側の端部から第1のエンボス部に接近するように延びる直線状に形成された第2の線部とを有し、前記第3のエンボス部は、注出口から収納部に向かうにつれて第1のエンボス部から離間するように延びる直線状に形成された第3の線部と、第3の線部の収納部側の端部から第1のエンボス部に接近するように延びる直線状に形成された第4の線部とを有し、前記注出口の幅は、12mm以上17mm以下であることを特徴とする包装袋である。
【0011】
本発明に係る包装袋は、注出流路に3本のエンボス部を設け、さらに注出口の幅を限定することにより、小さな口径の容器に対しても、円滑な注出が可能となった。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、前記第1の線部と第2の線部のなす角度が、90°以上180°未満であることを特徴とする請求項1に記載の包装袋である。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、前記第1のエンボス部および第2のエンボス部の幅方向の寸法が、0.5mm以上5.0mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の包装袋である。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、粘度が1mPa以上1000mPa以下の流動物が収納されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の包装袋である。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、前記収納部が、70ミリリットル以上300ミリリットル以下の容量を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の包装袋である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る包装袋は、注出流路に凸状のエンボスと凹状のエンボスの組み合わせからなる3本のエンボス部を設けたことにより、内容物を注出する際に注出流路の閉塞が生じ難くなった。
【0017】
さらに注出口の幅を12mm以上17mm以下と限定することにより、小口径のボトルに対しても安定した注出操作を行うことができる。
【0018】
請求項2に記載の発明のように、第1の線部と第2の線部のなす角度を、90°以上180°未満とすることで、注出性はさらに向上する。
【0019】
請求項3に記載の発明のように、第1のエンボス部および第2のエンボス部の幅方向の寸法を、0.5mm以上5.0mm以下とすることによっても、注出性が向上する。
【0020】
請求項4に記載の発明のように、内容物の粘度を1mPa以上1000mPa以下とした場合や、請求項5に記載の発明のように、収納部の容量を、70ミリリットル以上30
0ミリリットル以下とした場合には、本発明の包装袋の特徴が最大限に生かせ、小口径のボトルに対しても安定した注出が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明に係る包装袋の一実施態様を示した立面模式図である。
【
図2】
図2は、
図1のA-A´断面を示した断面模式図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した包装袋の注出口部分の拡大説明図である。
【
図4】
図4は、実施例に示した包装袋に用いた積層体の層構成を示した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明に係る包装袋について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る包装袋の実施態様の一例を示した立面模式図である。
図2は、
図1のA-A´断面を示した断面模式図である。また
図3は、
図1に示した包装袋の注出口部分の拡大説明図である。
【0023】
本発明に係る包装袋1は、
図1に示したように、前面部材2と、背面部材3と、それぞれの周縁を互いに接合することにより形成された周縁部5と、周縁部5の間に形成された収納部6とを備える包装袋である。
【0024】
周縁部5の一部に設けられ、不要な部分を除去することで形成される注出口部には、注出口7と、注出口7と収納部6との間に設けられ、注出口7から収納部6まで連通する注出流路8とを備えている。
【0025】
注出流路8は、注出口7から収納部6に向かって直線状に延び、外方に膨らんだ凸状に形成され、幅方向の寸法wが一定である第1のエンボス部9と、第1のエンボス部9と離間して、第1のエンボス部9よりも上側に設けられ、内方に窪んだ凹状に形成された第2のエンボス部10と、第1のエンボス部9と離間して、第1のエンボス部9よりも下側に設けられ、内方に窪んだ凹状に形成された第3のエンボス部13とを有する。
【0026】
第2のエンボス部10は、注出口7から収納部6に向かうにつれて第1のエンボス部9から離間するように延びる直線状に形成された第1の線部11と、第1の線部11の収納部側の端部から第1のエンボス部9に接近するように延びる直線状に形成された第2の線部12とを有する。
【0027】
第3のエンボス部13は、注出口7から収納部6に向かうにつれて第1のエンボス部9から離間するように延びる直線状に形成された第3の線部14と、第3の線部14の収納部側の端部から第1のエンボス部9に接近するように延びる直線状に形成された第4の線部15とを有する。
【0028】
さらに本発明に係る包装袋の一実施態様として、注出口7の幅が、12mm以上17mm以下である場合には、小口径のボトルに対しても安定した注出作業が可能となることを特徴とする。
【0029】
図1に示した例では、前面部材2と背面部材3との間に底テープ4が挿入されており、いわゆるスタンディングパウチと称する自立性包装袋となっている。
【0030】
本発明に係る包装袋1においては、注出流路8に外側に凸状に膨らんだ第1のエンボス部9と、第1のエンボス部9の上方に配置され、内方に窪んだ凹状に形成された第2のエンボス部10と、第1のエンボス部9の下方に配置され、内方に窪んだ凹状に形成された第3のエンボス部13とを設けたことにより、内容物を注出する際に、注出流路8や注出口7が閉塞することがなく、円滑な注出を行うことができる。
【0031】
さらに第2のエンボス部10と第3のエンボス部13を第1のエンボス部9を取り囲むようにカギ状に配置したことにより、この閉塞防止効果はさらに高まった。
【0032】
図3は、
図1に示した包装袋の注出口部分の拡大説明図である。第2のエンボス部10において、第1の線部11と第2の線部12のなす角度αを、90°以上180°未満とした場合には、注出流路8および注出口7の閉塞防止効果がより十分に発揮される。
【0033】
また、第1のエンボス部9および第2のエンボス部10の幅方向の寸法wについては、0.5mm以上5.0mm以下とすることが、より望ましい結果をもたらすことが分かっている。
【0034】
この例では、注出口の先端部を開封するための、レーザー加工によるハーフカット線が、注出口の先端部を構成する前面部材2と背面部材3に形成されている。このようにすることで、カッターやハサミを用いることなく、手での開封が容易になる。
【0035】
なお、本発明に係る包装袋においては、収納部の容量を70ミリリットル以上300ミリリットル以下とする場合には、本発明の包装袋の特徴が最大限に生かせる。
【0036】
図4は、実施例に示した包装袋に用いた積層体20の層構成を示した断面模式図である。前面部材2、背面部材3、底テープ4を構成する積層体20としては、基材層21、シーラント層25を必須とする。この例では、基材層21とシーラント層25の間に中間層23を有し、それぞれの層は、接着剤層22、24によって貼り合わされている。
【0037】
本発明に係る包装袋1に用いる積層体20に使用する材料について説明する。基材層21および中間層23としては、シーラント層25よりも耐熱性の高い各種合成樹脂フィルムや紙、金属箔等が用いられる。合成樹脂フィルムとしては、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、セロハン、三酢酸セルロース(TAC)樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂(PMMA)、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、ポリカーボネート樹脂(PC)、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂等の合成樹脂フィルムである。
【0038】
シーラント層12としては、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリオレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂が一般的に用いられる。この他、エチレン-酢酸ビニル系共重合樹脂(EVA)、アイオノマー樹脂等が用いられることもある。以下実施例および比較例に基づいて、本発明に係る包装袋についてさらに具体的に説明する。
【実施例0039】
基材層として、厚さ15μmの延伸ナイロンフィルム(ONY)を用い、中間層として厚さ12μmのアルミ蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(VMPET)を用い、シーラント層として厚さ100μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂フィルム(LLDPE)を用いた。これら3層をドライラミネート用ウレタン樹脂系接着剤を用いて貼り合わせて積層体とした。積層体を用いて
図1に示したような包装袋を製袋した。
【0040】
包装袋の高さは、190mm(未充填時)、幅は、106mm、注出口の幅(W)は16mm、注出口の内径(開口幅)は、9mmである。
【0041】
この包装袋に、内容物として室温における粘度が約66mPa/secのクレンジングオイルを200ミリリットル充填し、上部をヒートシールして封入した後、10人のモニターによる詰め替え実験を行った。詰め替え先のボトルは、容量230ミリリットル、開口部の内径約17mmである。
【0042】
<評価1、ボトルへの差し込み易さ>
官能評価による。
【0043】
<評価2、こぼさずに安定して注げるか>
官能評価による。
【0044】
<評価3、詰め替え時間>
注ぎ始めから、注ぎ終わりまでの時間を計測。
【0045】
<比較例1>
注出口の幅Wを19mmとし、開口幅を13mmとした以外は、実施例と同様の材料を用い、同様に包装袋を製袋し、同様に評価した。
【0046】
<比較例2>
注出口に
図3のようなエンボス加工を施さなかった以外は、実施例と同様の材料を用い、同様に包装袋を製袋し、同様に評価した。
【0047】
以上の結果を表1にまとめた。
【0048】
【0049】
この結果から、本発明に係る包装袋は、注出口が閉塞し難く、注出時間が短くて済むことが分かる