(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060915
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】紙製道具製造装置及び紙製道具の製造方法
(51)【国際特許分類】
B26F 1/38 20060101AFI20230424BHJP
B30B 9/00 20060101ALI20230424BHJP
A47G 21/00 20060101ALI20230424BHJP
A47G 21/02 20060101ALI20230424BHJP
A47G 21/04 20060101ALI20230424BHJP
A47G 21/10 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
B26F1/38 A
B30B9/00 Z
A47G21/00 C
A47G21/00 D
A47G21/02 Z
A47G21/04 Z
A47G21/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170594
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】後藤 美嵐司
(72)【発明者】
【氏名】森越 諒
【テーマコード(参考)】
3B115
3C060
【Fターム(参考)】
3B115BA01
3B115BA06
3B115BA10
3B115BA11
3B115BA16
3B115BA27
3B115DA17
3B115EA01
3C060AA01
3C060BA03
3C060BB05
3C060BC04
3C060BC21
3C060BD04
3C060BF02
3C060BG03
3C060BH01
(57)【要約】
【課題】耐水性及び強度がより優れ、かつより安全性に優れた紙製道具を製造する。
【解決手段】紙製道具を製造する紙製道具製造装置2は、紙製さじ生成用の厚紙P1にさじ形状の切り込みを入れるさじ押し切り部4及びさじ形厚紙P2を打ち抜くさじ押し切り部4及び分離部5と、分離部5で打ち抜かれたさじ形厚紙P2を圧縮する潰し部6と、を備える。打ち抜かれたさじ形厚紙P2を圧縮し、さじ形厚紙P2の切断面を押し潰すことで、切断面の形状を滑らかにすると共に圧縮することで硬度を向上させることができる。そのため、紙製さじ生成用の厚紙P1から打ち抜いたさじ形厚紙P2をさらに圧縮して紙製さじ1を得ることで、さじ形厚紙P2に比較してより一層、硬度及び吸水性の観点で優れた紙製さじ1を得ることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製道具を製造する紙製道具製造装置であって、
厚紙から道具形厚紙を打ち抜くカッター装置と、
当該カッター装置で打ち抜かれた前記道具形厚紙を圧縮する圧縮装置と、を備え、
圧縮後の前記道具形厚紙を前記紙製道具とすることを特徴とする紙製道具製造装置。
【請求項2】
前記カッター装置は押し切り方式のカッターであって、
前記カッター装置の刃部は、平面視で前記道具形厚紙と相似な枠状に配置され、
前記刃部を、前記刃部が連なる方向を垂線とする面で切断した端面は、山型形状であることを特徴とする請求項1に記載の紙製道具製造装置。
【請求項3】
前記山型形状をなす左右2辺のうちの前記枠の内側寄りに位置する辺と前記山型形状の高さ方向に伸びる線分とがなす内側角度は、前記左右の2辺のうちの前記枠の外側寄りに位置する辺と前記山型形状の高さ方向に伸びる線分とがなす外側角度よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の紙製道具製造装置。
【請求項4】
前記内側角度は12度以上18度以下であり、前記外側角度は17度以上23度以下であることを特徴とする請求項3に記載の紙製道具製造装置。
【請求項5】
前記枠状に配置された前記刃部の枠の内側となる領域に、シート状の弾性部材を備え、
前記弾性部材は、平面視で前記刃部との間に隙間を持って配置されていることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の紙製道具製造装置。
【請求項6】
前記紙製道具は、紙製のカトラリ又は紙製の医療機器であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の紙製道具製造装置。
【請求項7】
紙製道具を製造する方法であって、
厚紙から道具形厚紙を打ち抜く工程と、
打ち抜かれた前記道具形厚紙を圧縮する工程と、を備え、
圧縮後の前記道具形厚紙を前記紙製道具として用いることを特徴とする紙製道具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製道具製造装置及び紙製道具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨てのスプーンやフォーク等のカトラリとして、木製のもの、紙製のもの、プラスチック製のもの、等が提案されている。
また、プラスチック製品は海洋汚染や海洋生物の生態系に影響を与えるため、近年、環境保護の観点から、プラスチック製のカトラリに替わるものとして、耐水性及び耐熱水性を向上させた紙製の攪拌用スティックやスプーン、ナイフが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-79505号公報
【特許文献2】特開2020-196990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、紙製のカトラリにおいては耐水性や強度の点でさらなる向上が求められる。また、紙を切断して作成した紙製のカトラリは、その端面、つまり切断面が鋭い場合があることから、使用時に口腔内を傷つけたり違和感を与えたりする可能性があり改善が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記未解決の課題に着目されてなされたものであり、耐水性及び強度がより優れ、且つ安全性により優れた紙製道具を製造することの可能な紙製道具製造装置及び紙製道具の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するべく、本発明の一態様によれば、紙製道具を製造する紙製道具製造装置であって、厚紙から道具形厚紙を打ち抜くカッター装置と、カッター装置で打ち抜かれた道具形厚紙を圧縮する圧縮装置と、を備え、圧縮後の道具形厚紙を紙製道具とする、紙製道具製造装置が提供される。
【0007】
また、本発明の他の態様によれば、紙製道具を製造する方法であって、厚紙から道具形厚紙を打ち抜く工程と、打ち抜かれた道具形厚紙を圧縮する工程と、を備え、圧縮後の道具形厚紙を紙製道具として用いるようにした紙製道具の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、耐水性及び強度がより優れ且つ安全性がより優れた紙製道具を製造するができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明の第一実施形態に係る紙製道具製造装置の一例を示す構成図である。
【
図4】さじ形厚紙の切断面の形状の一例を説明するための説明図である。
【
図5】さじ押し切り部の要部の一例を示す図である。
【
図6】さじ押し切り部の刃部の一例を示す切断面の端面図である。
【
図7】弾性部材の配置位置を説明するための説明図である。
【
図9】本発明の第二実施形態に係る紙製道具製造装置の一例を示す構成図である。
【
図11】楊枝押し切り部の要部の一例を示す図である。
【
図12】楊枝押し切り部の刃部の一例を示す切断面の端面図である。
【
図13】座屈荷重測定に用いた測定装置の一例の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各厚みの比率などは現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
<第一実施形態>
まず、本発明の第一実施形態について説明する。
【0012】
<紙製道具>
紙製道具としては、さじ、フォーク、ナイフ、マドラー、箸、楊枝、串等といったカトラリや、舌圧子、拭い棒等の医療機器等、人が手に持って使用し物や人体に作用する道具であり且つ紙製の道具を挙げることができる。
ここでは、紙製道具として紙製のさじ(以下、紙製さじともいう。)を製造する場合について説明する。
【0013】
<紙製さじの形状>
図1は、紙製さじ1の一例の概略構成を示したものであり、(a)は平面図、(b)は右側面図である。
図1に示すように、紙製さじ1は、平面視で、板状の先細りした細長い四角形状を有し、長手方向の長さが8cm弱程度、最大幅が3cm弱程度、厚みが2mm程度である。紙製さじ1は、幅方向中央を通る線分を軸として線対称な形状を有し、四隅はR面取りがなされている。そして幅がより狭い端部側を持ち手1aとして人差し指と親指とで厚み方向から挟んで掴み、幅がより広い他端側で、アイスクリームや餅等といった対象物をすくうようになっている。
【0014】
なお、ここでは、
図1に示すように、板状の先細りした四角形状を有する紙製さじ1としているが、紙製さじ1の形状は
図1に示す形状に限定されるものではなく、例えば平面視で長方形状等であってもよく、対象物をすくうことができる等、さじとしての機能を発揮できる形状であればよい。
【0015】
<紙製さじ生成用の厚紙>
紙製さじ生成用の厚紙は、耐水性を有する紙を3枚合紙してなる三層構造の硬質紙で形成される。なお、紙製さじ生成用の厚紙は、三層構造に限るものではなく、単層、二層、四層以上の耐水性を有する紙が積層されて形成されている厚紙であってもよく、耐水性及び高強度を有する厚紙であれば適用することができる。
【0016】
<紙製道具製造装置の構成>
図2は、本発明の一実施形態に係る紙製道具製造装置2の一例を示す構成図である。
紙製道具製造装置2は、
図2に示すように、例えば、エンボス加工部3と、さじ押し切り部(カッター装置)4と、分離部5と、潰し部(圧縮装置)6と、紙製さじスタッカ7とを備える。工程的には、
図2において、右から左に各部での処理工程が行われ、各部間では、例えば図示しない搬送ベルト等によって、処理対象物の授受を行うようになっている。
【0017】
紙製さじ生成用の厚紙はシート状を有し、まずエンボス加工部3に導入され、紙製さじ生成用の厚紙のうち、紙製さじ1の完成品において持ち手1aとなる領域にエンボス加工や箔押しが施される。エンボス加工部3は必ずしも備えていなくてもよいが、マーク或いは模様等をエンボス加工すること、或いは箔押しを行うこと等によって、紙製さじ1のデザイン性を向上させることができる。また、持ち手1aとなる部分にエンボス加工を施すことで、使用者が紙製さじ1を持つ際に滑りにくくすることができ、紙製さじ1を使用する際の、持つ、切る、刺す、挟む等といったアフォーダンスを向上させることができる。エンボス加工部3で加工が行われた紙製さじ生成用の厚紙は、さじ押し切り部4に搬送される。
【0018】
なお、エンボス加工或いは箔押し等は、完成した紙製さじ1の持ち手1aとなる領域に限らず、完成した紙製さじ1の表面全体に加工することも可能である。このように、紙製さじ1全体にエンボス加工等を行うことによって、食品との摩擦性、或いは口腔内との摩擦性を調整することができる。
【0019】
さじ押し切り部4は、例えば、公知の押し切り方式のダイロールカッターで構成される。さじ押し切り部4は、紙製さじ生成用の厚紙に対して押し切り加工を施すことにより、紙製さじ生成用の厚紙に、後に
図1に示す紙製さじ1となる、平面視で紙製さじ1と略同一形状を有するさじ形厚紙(道具形厚紙)を打ち抜くための切り込みを入れる。切り込みが入れられた紙製さじ生成用の厚紙は、分離部5に搬送される。
【0020】
なお、ここでは、さじ押し切り部4では、押し切り方式のダイロールカッターにより、紙製さじ生成用の厚紙に対して押し切り加工を行うことで、さじ形厚紙を打ち抜く場合について説明したが、これに限るものではなく、他の切断方式によって紙製さじ生成用の厚紙からさじ形厚紙を得るようにしてもよい。
【0021】
分離部5は、紙製さじ生成用の厚紙を、さじ形厚紙と、紙製さじ生成用の厚紙からさじ形厚紙が取り除かれた残存部分とに分離する。分離部5は、例えば、金属製のテンプレートと、打ち抜きピンを備えた打ち抜き装置とを含んで構成される。テンプレートは、紙製さじ生成用の厚紙のシートと同等程度の大きさを有する長方形の板状であって、押し切り加工後であり、さじ形厚紙を打ち抜くための切り込みが入った状態の紙製さじ生成用の厚紙と、テンプレートとを重ねたとき、平面視で、押し切り加工されたさじ形厚紙部分それぞれと重なる位置に、さじ形厚紙よりも多少小さい略相似形の貫通孔が形成されている。また、打ち抜きピンは板状を有し、テンプレートの貫通孔よりも小さく、さじ形厚紙部分の端部近傍ではなく中央近傍を押圧する形状を有し、例えば、貫通孔よりも多少小さく、貫通孔と略相似形状を有する。また、打ち抜きピンは、板状の支持部材の下面側に突出して設けられ、テンプレートと打ち抜きピンの支持部材とを重ねたとき、平面視で、テンプレートの貫通孔の内側に打ち抜きピンが位置するように、貫通孔それぞれに対応して形成されている。
【0022】
テンプレートは、テンプレートをその縁部分で支える枠状部材によって下側から支持され、テンプレートと枠状部材との間に、紙製さじ生成用の厚紙が挟持されるようになっている。また、打ち抜きピンの支持部材は、打ち抜き装置本体により上下方向に移動可能に形成されている。
【0023】
そして、枠状部材とテンプレートとの間に紙製さじ生成用の厚紙を、さじ押し切り部4から搬送されたときの上下の姿勢を維持したままの状態で挟み、平面視で、さじ形厚紙部分の内側にテンプレートの貫通孔が位置し、さらに、貫通孔の内側に打ち抜きピンが位置するように位置決めした状態で、打ち抜きピンを下降させることで、打ち抜きピンがテンプレートの貫通孔を通過してさじ形厚紙部分を下方向に押圧することで、さじ形厚紙部分が紙製さじ生成用の厚紙から切り離され、紙製さじ生成用の厚紙におけるさじ形厚紙の配置位置を維持したまま、打ち抜かれたさじ形厚紙のみが、搬送ベルト上に残る。搬送ベルト上のさじ形厚紙は、潰し部6に搬送され、紙製さじ生成用の厚紙の残存部分は、残存シートスタッカ8にストックされる。
【0024】
分離部5では、紙製さじ生成用の厚紙の上にテンプレートを重ね、テンプレートに形成された貫通孔を通してさじ形厚紙部分を打ち抜きピンで押圧して打ち抜くことにより、打ち抜き時に、さじ形厚紙の端部に力が加わることによってさじ形厚紙の端部の形状や密度等が変化することを抑制している。つまり、紙製さじ生成用の厚紙からさじ形厚紙を打ち抜く際にさじ形厚紙の端部に力が加わると、押し切り加工により切り込みが入れられた端部の密度や形状が変化する可能性がある。例えば、さじ形厚紙部分と打ち抜きピンとの平面視における位置関係がずれた場合には、打ち抜きピンがさじ形厚紙の端部近傍を押圧する可能性がある。このようにさじ形厚紙部分と打ち抜きピンとの平面視における位置関係がずれたとしても、テンプレートの貫通孔を通してさじ形厚紙部分を押圧することによって、打ち抜きピンはさじ形厚紙部分の略中央付近を押圧するように位置調整が行われることになり、さじ形厚紙部分の端部近傍が打ち抜きピンによって押圧され、押し切り加工により切り込みが入れられた端部の密度や形状が変化することを回避することができる。つまり、分離工程を行うことによって、さじ形厚紙の端部の形状や密度等が変化することを抑制することができる。
【0025】
なお、上記分離部5において、テンプレートと紙製さじ生成用の厚紙との位置が逆になるように構成してもよい。つまり、搬送ベルト上にテンプレートを載置し、紙製さじ生成用の厚紙をテンプレート上に重ねて配置する。このとき、紙製さじ生成用の厚紙に形成された切り込みとテンプレートの貫通孔と打ち抜きピンとが平面視で重なるように位置決めする。この状態で、打ち抜きピンを下降させ、さじ形厚紙部分を押圧することによって、テンプレート上の紙製さじ生成用の厚紙からさじ形厚紙が切り離されて、テンプレートの貫通孔の下端つまり搬送ベルト上に移動する。この状態で、テンプレートを上昇させることにより、搬送ベルト上にさじ形厚紙が、紙製さじ生成用の厚紙に切り込みが入れられた状態でのさじ形厚紙の配置状態を維持して整列配置された状態となる。この場合、打ち抜きピンで押圧されたさじ形厚紙は、テンプレートの上面の位置からテンプレートが配置された搬送ベルト上の位置に移動することになり、その移動量はテンプレートの厚み相当である。そのため、紙製さじ生成用の厚紙におけるさじ形厚紙の配置位置を維持したまま、搬送ベルト上に切り出さすことができる。テンプレートは、例えばテンプレートを上下動させる上下動装置を設け、まずテンプレートを下降させてテンプレートを搬送ベルト上に載置し、さじ形厚紙が切り出された後、テンプレートを上昇させて、さじ形厚紙を移動可能な状態とすればよい。
【0026】
潰し部6は、例えば、同一径の上下二つのロールを含み、二つのロール間に、さじ形厚紙を通すことによって、さじ形厚紙を圧縮加工する。圧縮されたさじ形厚紙は、紙製さじ1として紙製さじスタッカ7にストックされる。
【0027】
潰し部6の二つのロールとしては、例えばスチール、銅、合金類、クロムメッキを施した部材、アルミ等からなる金属ロール同士であってもよく、また例えばクロロプレンゴム等からなる硬質ゴムロール同士であってもよく、一方が金属ロール、他方が硬質ゴムロールの組み合わせであってもよく、紙製さじに要求される硬さ等を考慮して、ロールの材質や、圧縮度合を設定すればよい。
【0028】
<さじ形厚紙の面付け>
図3は、紙製さじ生成用の厚紙P1における、さじ形厚紙P2の面付けを示したものである。さじ形厚紙P2は、紙製さじ生成用の厚紙P1から打ち抜いた後に紙製さじ1となる部分である。すなわち、さじ形厚紙P2は平面視で紙製さじ1と略同一形状を有し、長手方向一端側が他端側よりも短い、先細りした細長い四角形状を有する。また、さじ形厚紙P2は、幅方向中央を通る線分を軸として線対称な形状を有し、四隅はR面取りがなされている。
【0029】
図3に示すように、搬送ベルト等による紙製さじ生成用の厚紙P1の搬送方向に対して直交する方向を紙製さじ生成用の厚紙P1の幅方向としたとき、さじ形厚紙P2は、長手方向が搬送方向と平行になるように配置され、紙製さじ生成用の厚紙P1の幅方向に3列、搬送方向に一定間隔となるように面付けされる。また、幅方向に並ぶ3列のさじ形厚紙P2のそれぞれは、紙製さじ生成用の厚紙P1において、その先端及び後端が、他のいずれのさじ形厚紙P2の先端及び後端とも長手方向の位置が一致しないように面付けされる。
【0030】
また、紙製さじ生成用の厚紙P1において、さじ形厚紙P2は、搬送方向先端側にさじ形厚紙P2の幅が短い方、すなわち、後に紙製さじ1の持ち手1aとなる側が位置するように面付けされる。
ここで、後述するように、さじ押し切り部4では、刃部4aを紙製さじ生成用の厚紙P1に押し付けることによりさじ形状の切り込みを入れるようになっている。
【0031】
一方、さじ形厚紙P2の長手方向両端は互いに平行な辺となっている。そのため、仮に、紙製さじ生成用の厚紙P1において3列のさじ形厚紙P2の先端の長手方向の位置を揃えて面付けした場合、さじ押し切り部4の刃部4aによって紙製さじ生成用の厚紙P1に切り込みをいれる場合、紙製さじ生成用の厚紙P1のうち、刃部4aと接する幅方向の部分の長さは、さじ形厚紙P2の先端部に相当する部分では、3列に面付けされたさじ形厚紙P2それぞれの先端部の幅の総和となる。同様に、さじ形厚紙P2の後端部に相当する部分では、3列に面付けされたさじ形厚紙P2それぞれの、後端部の幅の総和となる。これに対し、紙製さじ生成用の厚紙P1の、さじ形厚紙P2の先端部及び後端部に相当する部分を除く部分では、3つのさじ形厚紙P2それぞれの長手方向に伸びる2つの辺と刃部4aとが交差している部分の長さの総和となる。つまり、刃部4aが、紙製さじ生成用の厚紙P1において、さじ形厚紙P2のどの部分に相当する切り込みを入れているか、つまり、さじ形厚紙P2の先端部又は後端部に相当する部分に切り込みを入れているのか否かによって、刃部4aから紙製さじ生成用の厚紙P1に対して加わる力が異なり、特に、先端部又は後端部に切り込みを入れる場合には、刃部4aから紙製さじ生成用の厚紙P1に加わる力が幅方向に分散し、その結果、刃部4aの切れ味が変化し、これに伴いさじ形厚紙P2を打ち抜いた際に、さじ形厚紙P2の切断面の形状にばらつきが生じ、切断面にささくれや髭状等の端材つまり、ばりが生じ、その結果、耐水性や強度の低下、或いは、安全性の低下につながる可能性がある。
【0032】
本実施形態では、紙製さじ生成用の厚紙P1にさじ形厚紙P2の面付けを行う際に、各さじ形厚紙P2の先端部と他のさじ形厚紙P2の先端部又は後端部の、紙製さじ生成用の厚紙P1の長手方向における位置、また、各さじ形厚紙P2の後端部と他のさじ形厚紙P2の先端部又は後端部の、紙製さじ生成用の厚紙P1の長手方向における位置、がそれぞれ同一とならないようしている。これによって、さじ押し切り部4での押し切り加工時に、紙製さじ生成用の厚紙P1に伝わる力が幅方向に分散することによって、さじ形厚紙P2の切断面にささくれや髭状等の端材(ばり)が生じることを抑制している。
【0033】
また、後述するように、さじ押し切り部4の刃部4aは、後述の
図6に示すように、刃部4aが連なる方向を垂線とする面で切断した端面は、山型形状である。そのため、紙製さじ生成用の厚紙P1から打ち抜いたさじ形厚紙P2は下面よりも上面の方が小さい略錐台形状を有し、
図4に示すように、さじ形厚紙P2の切断面(端部)は略垂直な面ではなく、さじ形厚紙P2の中央方向に傾いた面となる。また、さじ形厚紙P2の下面と切断面とがなす角度は、搬送方向先端側の角度θ1よりも、搬送方向後端側の角度θ2の方が鋭角になる傾向がある。なお、
図4において、(a)はさじ形厚紙P2の平面図、(b)は(a)のA-A′面で切断した面の端面図である。
【0034】
ここで、紙製さじ1の機能を考えると、特に餅などの粘性の食品をすくったり削ぎ落としたりする場合には、紙製さじ1の下面と切断面とがなす角度が鋭角である方が好ましい。そのため、紙製さじ1のすくう側となる幅の広い側が、搬送方向後端側となるように配置している。
【0035】
また、図示しないが、紙製さじ生成用の厚紙P1から打ち抜かれた複数のさじ形厚紙P2を搬送する搬送ラインにはさじ形厚紙P2を整列搬送するため、一般に設けられているガイド等の各種設備が設けられており、例えば各さじ形厚紙P2の幅方向の位置をガイドによって調整している。この場合、さじ形厚紙P2の幅方向のずれが大きいとガイドに引っかかりやすくなる。そのため、さじ形厚紙P2において幅がより狭く抵抗となりにくい幅がより狭い側を、搬送方向先端側となるように面付けを行うことで、打ち抜いたさじ形厚紙P2がガイド等の設備に引っかかることを抑制するようにしている。
【0036】
また、さじ形厚紙P2は、
図4に示すように、下面よりも上面の方が小さい略錐台形状を有している。略錐台形状を有するさじ形厚紙P2を、錐台の底面側が下、錐台の上面側が上となるようにして搬送した場合に比較して、錐台の底面側が上、錐台の上面側が下となるようにして搬送した場合の方が、さじ形厚紙P2がガイド等の設備に引っかかり易い。そのため、紙製さじ生成用の厚紙P1から打ち抜かれた複数のさじ形厚紙P2を搬送する際には、幅がより狭く抵抗となりにくい錐台の上面側が上となる状態で搬送することで、打ち抜いたさじ形厚紙P2がガイド等の設備に引っかかることを抑制するようにしている。
【0037】
<さじ押し切り部の刃部>
さじ押し切り部4の刃部4aは、円柱又は円筒状のダイロールカッターの周面に形成され、
図5に示すように、
図3に示すさじ形厚紙P2の面付けのパターンと同一パターンで複数形成される。また、各刃部4aは、平面視でさじ形厚紙P2の外形と相似形状を有する枠状に形成される。
図5において、(a)はさじ押し切り部4の刃部4a部分を示す側面図、(b)はさじ押し切り部4の刃部4aが設けられたロールの周面の展開図である。
【0038】
刃部4aは、
図6に示すように、刃部4aの連なる方向を垂線とする面で刃部4aを切断した端面が山型形状となるように形成され、山型形状をなす左右2辺のうちの枠状に配置された刃部4aの枠の内側寄りに位置する辺と山型形状の高さ方向に伸びる線分とがなす内側角度θinは、山型形状をなす左右の2辺のうちの枠の外側寄りに位置する辺と山型形状の高さ方向に伸びる線分とがなす外側角度θoutよりも小さい。内側角度θinは例えば12度以上18度以下の範囲内の値に設定され、外側角度θoutは例えば17度以上23度以下の範囲内の値に設定される。なお、刃部4aの強度を確保する観点から内側角度θinと外側角度θoutとの和が、ある角度以上(例えば30度以上等)であることが好ましい。なお、
図6は、
図5(b)に示す刃部4aをB-B′面で切断した端面における刃部4aの外形のみを示す図である。
【0039】
刃部4aの、内側角度θin及び外側角度θoutは、紙製さじ1の縁部の形状及び紙製さじ1の特性、紙製さじ生成用の厚紙P1の材質及び厚み等に応じて設定される値である。つまり、紙製さじ1は、口腔内で用いられるため口腔内を傷つけることのない安全性の高い形状であることが要求され、また、口腔内で紙製さじ1に触れたときに違和感を与えることのない形状が要求される。
【0040】
また、紙製さじ1による突き刺し性、カット性等、紙製さじの対象としている食品の種類(粘性のもの、固体、液体のもの)等に応じて、食品を取り扱いやすい縁部の形状が要求される。特に、餅等の粘性があり容器から剥がしにくいものの場合には、紙製さじの先端の、紙製さじ1の下面(さじ押し切り部4で押し切り加工が行われるときに下となる面)と切断面とがなす角度は鋭角である方が剥がしやすい。さらに、紙製さじ1の縁部には、特に耐水性及び強度が要求される。
【0041】
ここで、さじ形状の型紙の縁部つまり切断面の形状は、刃部4aの形状によっても変化する。すなわち、刃部4aは、
図6に示すように、刃部4aが連なる方向を垂線とする面で刃部4aを切断した面の端面が山型形状を有する。そのため、紙製さじ生成用の厚紙P1に刃部4aで切り込みを入れると、紙製さじ生成用の厚紙P1は、刃部4aにより押し潰されつつ切り込みが入り、切り込みが深くなるほどより潰されることになる。押し潰されることにより、潰された部分の密度が高くなりその結果硬度が高くなり、さじ形厚紙P2の切断面及び端部近傍の硬度が高くなる。
【0042】
また、刃部4aにより押し潰されつつ切り込みが入ることによって、打ち抜かれたさじ形厚紙P2の切断面は
図4(b)に示すように、さじ形厚紙P2の中央に傾いた形状となり、上面の方がより潰されるため、平面視で上面の方が下面よりも小さくなる。その結果、さじ形厚紙P2において下面と切断面とがなす角度θ1やθ2が鋭角となり、粘性の食品等を削ぎ落し易くしている。
【0043】
また、刃部4aの内側角度θinが変化すると、さじ形厚紙P2の切断面の潰れ具合が変化することから、紙製さじ1の縁部の形状や、耐水性、強度等が変化する。したがって、刃部4aの内側角度θinは、紙製さじ1として要求される縁部の形状や、耐水性、強度等を考慮して設定される。また、刃部4aの内側角度θinが変化すると、押し切り加工時に刃部4a側にかかる圧力が変化し、例えば、内側角度θinが大きくなると刃部4aにかかる圧力も増加することから、刃部4aの強度を確保する必要がある。そのため、刃部4aの外側角度θoutは、内側角度θinに応じて、刃部4aが強度を確保することの可能な角度に設定される。なお、刃部4aの強度を確保することができれば、外側角度θoutは大きな角度としなくてもよい。
【0044】
刃部4aの高さは、例えば紙製さじ生成用の厚紙P1の厚さ、押し切り加工時に刃部4aにかかる圧力等といった押し切り加工時の刃部4aの使用条件等に応じて設定される。また、刃部4aの高さは刃部4aの形状変化も考慮して設定される。すなわち、刃部4aは使用に伴い摩耗することから研ぎ出しを行う必要があり、研ぎ出しを繰り返すと、刃部4aの形状が変化することから、刃部4a自体を交換する必要がある。研ぎ出しを行う際には、通常、刃部4aの先端近傍を研ぐため、刃部4aの先端部分の形状が変化する。具体的には刃部4aの高さが短くなり、また刃部4aの厚みが薄くなる。使用開始初期の刃部4aの場合には、刃部4aの高さは十分にあり、研ぎ出しを行ったとしても、先端部分よりも刃部4aの付け根寄りの部分が研がれることはほとんどないため、刃部4aの付け根寄りの部分の形状は、研ぎ出しを行う前と比較してほとんど変化しない。前述のように刃部4aの形状、特に付け根寄りの部分の形状は、さじ形厚紙P2の端部の密度や、さじ形厚紙P2の切断面の傾き、つまり
図4中の角度θ1やθ2を決定する要因の一つとなるが、使用開始初期の刃部4aの場合には、研ぎ出しを行ったとしても、先端部分よりも刃部4aの付け根寄りの部分の形状は、研ぎ出しを行う前後でほとんど変化しないため、この研ぎ出しを行った使用開始初期の刃部4aを使用して押し切り加工を行ったとしても、さじ形厚紙P2の端部の密度やさじ形厚紙P2の切断面の傾きは、研ぎ出しを行う前後で略同等となる。
【0045】
一方、複数回研ぎ出しを繰り返すと、刃部4aの高さはより低くなり、刃部4aの先端近傍を研いだとしても、刃部4aそのものの高さが低いため、使用開始初期の刃部4aの研ぎ出しを行った場合に比較して、より刃部4aの付け根寄りの部分の形状が変化することになる。そのため、このような複数回研ぎ出しを行った刃部4aを用いて押し切り加工を行うと、さじ形厚紙P2の端部の密度やさじ形厚紙P2の切断面の傾きが、使用開始初期の刃部4aを使用した場合に比較して、大きく異なる可能性がある。
【0046】
このように、刃部4aは研ぎ出しにより刃部4aの形状が変化し、この刃部4aの形状変化により、さじ形厚紙P2の端部の密度やさじ形厚紙P2の切断面の傾きが変化することから、刃部4aの高さは、さじ形厚紙P2の端部の密度やさじ形厚紙P2の切断面の傾きが許容範囲となり得るときの刃部4aの高さの取り得る範囲や、刃部4aの交換間隔等も考慮して設定される。例えば、紙製さじ生成用の厚紙P1の厚さが2.1mmである場合、刃部4aの使用開始時の高さは4mm±0.2mmに設定される。
【0047】
<さじ押し切り部の弾性部材>
図7は、さじ押し切り部4の刃部4a部分を示す拡大図である。
図7に示すように、枠状に配置された刃部4aの内側の領域には、シート状の弾性部材4bが設けられている。弾性部材4bは例えばゴム製又は合成樹脂製のスポンジで形成される。弾性部材4bは、平面視で刃部4aの枠形状よりも一回り小さい相似形状又はほぼ相似形状に形成され、刃部4aと弾性部材4bとの間に数mm程度の隙間をもって配置される。また、弾性部材4bは、枠状に配置された刃部4aの内側に接着剤等によって着脱可能に取り付けられ、経時劣化等により弾性部材4bの弾力性が低下した時点等で交換するようになっている。
【0048】
このように、弾性部材4bを設けることによって、ダイロールカッターが回転し、ダイロールカッターのロールの周面に形成された刃部4aが紙製さじ生成用の厚紙P1に切り込みを入れる際に紙製さじ生成用の厚紙P1を押さえると共に、切り込みが入れられた後に、さじ形厚紙P2が紙製さじ生成用の厚紙P1から切り離され、枠状の刃部4aの内側に嵌まり込むことを抑制するようにしている。
【0049】
なお、弾性部材4bの高さは、紙製さじ生成用の厚紙P1の厚みや、刃部4aにより切り込みを入れる際に紙製さじ生成用の厚紙P1にかかる圧力、また、弾性部材4bの弾性といった特性等に応じて設定すればよい。例えば、弾性部材4bの高さを、その上端が刃部4aの上端よりも高くなるようにすれば、弾性部材4bの反発力によって紙製さじ生成用の厚紙P1を弾性部材4bと刃部4aとで固定し、切り込みを入れ易くすることができる。逆に、弾性部材4bの高さを、その上端が刃部4aの上端よりも低くなるようにすれば、弾性部材4bが妨げとなり刃部4aが紙製さじ生成用の厚紙P1を十分に押し切ることができなくなることを回避し、刃部4aの切れ性の低下を抑制することができる。
【0050】
また、刃部4aと弾性部材4bとの間に隙間を設けることによって、刃部4aが紙製さじ生成用の厚紙P1を押し切り加工する際に、弾性部材4bが却って妨げになることを回避している。
【0051】
なお、弾性部材4bの形状及び配置位置等は、弾性部材4bの弾性等の特性と、弾性部材4bと刃部4aとの相対位置関係、また、紙製さじ生成用の厚紙P1の厚み、硬度等の特性、また、ダイロールカッターのロールの周速等に応じて、刃部4aの切れ味を十分確保することができるように決定される。
【0052】
なお、弾性部材4bとしては、スポンジに限るものではなくコルクやゴム等であってもよく、紙製さじ生成用の厚紙P1の仕様や刃部4aの形状等に応じて、刃部4aの内側領域にさじ形状の型紙側が嵌まり込むことを抑制し得る弾性を有する部材であれば適用することができる。
【0053】
また、ここでは弾性部材4bの形状は刃部4aと相似形状としているが、必ずしも相似形状でなくてもよく、例えば、刃部4aの内側に納まる大きさの長方形であってもよい。要は、刃部4aとの間に隙間を有し、刃部4aの内側領域にさじ形状の型紙側が嵌まり込むことを抑制する弾性力を発揮することができる形状であればよい。
【0054】
<効果>
(1)本実施形態に係る紙製さじ1は、耐水性の紙製さじ生成用の厚紙P1を押し切り加工してさじ形厚紙P2を打ち抜いた後、さじ形厚紙P2をさらに圧縮して紙製さじ1を得ている。そのため、押し切り加工によって縁部がある程度硬化したさじ形厚紙P2を再度圧縮加工により潰すことによってさらに密度が向上し、これに伴い硬度が向上して耐水性や強度が向上する。そのため、紙製さじ1の耐水性及び強度をより向上させることができ、さじとしての機能をより一層発揮させることができる。
【0055】
その結果、水を含んだ食品に使用した場合でも、紙製さじ1としての強度をより確保することができ、短時間で紙製さじ1が座屈したり、層間割れ等が生じたりすることを抑制することができる。
【0056】
また、刃部4aの形状を調整することで押し切り加工時のさじ形厚紙P2の切断面の形状を調整しているため、紙製さじ1の端面を、さじとして機能させる際に適した形状とすることができ、紙製さじ1の端面によって口腔内を傷付ける等といったことが生じることを抑制することができ、安全性のより高い紙製さじを実現することができる。
【0057】
また、紙製さじ生成用の厚紙P1からさじ形厚紙P2を打ち抜いた後、圧縮することによって、より強度を持たせることができるため、紙製道具として、例えば楊枝や串など、比較的細いカトラリを製造した場合でも、楊枝や串等としての機能をより発揮させることができる。
【0058】
また、紙製さじ生成用の厚紙P1から打ち抜いたさじ形厚紙P2を圧縮するだけで、紙製さじ1の硬度を向上させることができるため、特別な工程を含むことなく容易に紙製さじ1の硬度を向上させることができる。
【0059】
また、紙製さじ生成用の厚紙P1からさじ形厚紙P2を打ち抜いた場合、さじ形厚紙P2の縁部にばりが生じる可能性があり、ばりが生じたさじ形厚紙P2をそのままさじとして用いた場合、さじ(さじ形厚紙P2)の縁部によって口腔内を傷つけたり違和感を与える可能性がある。また、ばりが生じた状態でさじ形厚紙P2を積層した場合、ばりがあることからさじ形厚紙P2同士を密着させて重ねることができず、取り扱いに手間がかかる可能性がある。
【0060】
しかしながら、さじ形厚紙P2を打ち抜いた後にさじ形厚紙P2を圧縮することで、ばりを押し潰すことができる。そのため、さじ形厚紙P2をそのままさじとして用いる場合に比較して、ばりによって口腔内が傷つくこと等を回避することができ、紙製さじ1の安全性を向上させることができる。また、ばりを押し潰すことができるため、紙製さじ1を積層する場合には、紙製さじ1どうしを密着させて重ねることができ、紙製さじ1を容易に取り扱うことができる。
【0061】
また、紙製さじ生成用の厚紙P1からさじ形厚紙P2を打ち抜いた際に、さじ形厚紙P2に反りが生じる可能性があるが、さじ形厚紙P2を打ち抜いた後に圧縮加工を行っているため、紙製さじ1に生じる反りも抑制することができる。
【0062】
また、紙製さじ1は紙製であるため、エンボス加工や箔押しを容易に付与することができる。そして、紙製さじ1にエンボス加工や箔押しを行うことによって、紙製さじ1を硬化させたり剛度を付与したりすることができる。そのため、紙製さじ1の硬度や剛度といった特性を容易に調整することができ、紙製さじ1の用途や使用方法に応じてエンボス加工や箔押しを行うことによって、より使い勝手のよい紙製さじを実現することができる。また、エンボス加工や箔押しを行うことによって、紙製さじ1を持ったときの摩擦力を向上させることができるため、滑りにくく持ちやすい、扱いやすい紙製さじ1を実現することができる。
【0063】
(2)さじ押し切り部4の刃部4aは板状ではなく切断面が山型となる形状であり、刃部4aの頂点の角度を、切断面の形状が所望の形状となるように調整している。そのため、押し切り加工により打ち抜いたさじ形厚紙P2の切断面が口腔内においてより安全となる形状に打ち抜くことができる。その結果、紙製さじ1の安全性をより向上させることができる。つまり、刃部4aの内側角度θin及び外側角度θoutを調整することによって、押し切り加工したさじ形厚紙P2の切断面を圧縮することができる。そのため、紙製さじ1の縁部の硬度を向上させることができると共に、口腔内における安全性を向上させることもできる。
【0064】
(3)さじ押し切り部4には、枠状に配置された刃部4aの内側となる領域にスポンジ等の弾性部材4bを設けている。そのため、ダイロールカッター等により紙製さじ生成用の厚紙P1に押し切り加工した際に、枠状に配置された刃部4aの内側に、押し切り加工により打ち抜かれたさじ形厚紙P2が嵌まり込むことを抑制することができ、押し切り加工の加工効率が低下することを抑制することができる。
【0065】
(4)紙製さじ生成用の厚紙P1においてさじ形厚紙P2を面付けする際に、紙製さじ生成用の厚紙P1の幅方向3列に配置された各さじ形厚紙P2の紙製さじ生成用の厚紙P1の長手方向における位置が、各さじ形厚紙P2の先端の位置が他のさじ形厚紙P2の先端の位置及び後端の位置と一致せず、且つ、各さじ形厚紙P2の後端の位置が他のさじ形厚紙P2の先端の位置及び後端の位置と一致しないように、面付けしている。
【0066】
そのため、さじ形厚紙P2の先端または後端どうし、或いはさじ形厚紙P2の先端と他のさじ形厚紙の後端とに対して同時に押し切り加工が行われることを回避することができ、そのため、刃部4aにかかる圧力が幅方向に分散することによって切れ味が低下し、切断面にささくれや髭状等の端材が生じることを抑制することができる。
【0067】
(5)紙製さじ生成用の厚紙P1として、耐水性の紙を三層重ねた合紙を用いている。そのため、単層の厚紙を用いた場合に比較して厚紙のより大きな剛度を得ることができる。特に、紙製さじ1によって、粘性の高い食物を削ぎ落とす場合等には、剛度が高い方が扱い易い。そのため、使い勝手の良い紙製さじ1を実現することができる。
【0068】
<変形例>
図2に示す紙製道具製造装置2の製造ラインにおいて、分離部5の下流側に、例えば集塵部を設け、紙製さじ生成用の厚紙P1からさじ形厚紙P2を分離した際に例えば搬送ベルト上に散らばった紙片等を除去するようにしてもよい。また、潰し部6の下流に、例えば紙製さじ1に対してブラシをかけること等により紙製さじ1に生じたばりを取り除いたり、粘着ロール等により紙製さじ1に付着している紙粉等を除去するクリーナー部を設け、紙製さじ1に付着している紙片や紙粉をそぎ落とすようにしてもよい。さらに、クリーナー部の下流に、例えば搬送ベルト上、或いはさじ形厚紙P2に付着している金属片等を検出するための、金属探知機を備えた金属探知部を設けてもよい。
【0069】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態を説明する。
この第二実施形態は、第一実施形態でさじ形厚紙P2を打ち抜いた後の紙製さじ生成用の厚紙P1、つまり、残存シートスタッカ8にストックされた残存シートを用いてさらに紙製楊枝11を製造するようにしたものである。
【0070】
<紙製楊枝の形状>
図8は、紙製楊枝11の一例の概略構成を示したものであり、(a)は平面図、(b)は右側面図である。
図8に示すように、紙製楊枝11は、平面視で、一端が先細りした棒形状を有し、長さ9cm程度、最大幅7mm程度、厚みが2mm程度である。紙製楊枝11は、幅方向中央を通る線分を軸として線対称な形状を有する。そして、先細りしていない端部側を持ち手11aとして人差し指と親指とで掴み、先細りしている端部側を対象物に刺すようになっている。
【0071】
<紙製道具製造装置の構成>
図9は、本発明の第二実施形態に係る紙製道具製造装置2aの一例を示す。
第二実施形態に係る紙製道具製造装置2aは、
図9に示すように、
図2に示す第一実施形態に係る紙製道具製造装置2において、さらに楊枝押し切り部(カッター装置)9、残存シートスタッカ10a、及び紙製楊枝スタッカ10bを設けたこと以外は、紙製道具製造装置2と同一である。すなわち、第二実施形態に係る紙製道具製造装置2aは、さじ押し切り部4と、楊枝押し切り部9とを備える。楊枝押し切り部9は、例えばさじ押し切り部4と同様に公知の押し切り方式のダイロールカッターで構成され、残存シートスタッカ8にストックされた、さじ形厚紙P2が打ち抜かれた後の紙製さじ生成用の厚紙P1である残存シートP3(
図10)に対し、楊枝形厚紙P4を押し切り加工する。楊枝形厚紙P4が押し切り加工された残存シートP3は、分離部5に搬送される。つまり、分離部5には、さじ押し切り部4でさじ形厚紙P2が押し切り加工された後の紙製さじ生成用の厚紙P1と、楊枝押し切り部9で楊枝形厚紙P4が押し切り加工された後の残存シートP3とが搬送される。
【0072】
分離部5では、第1実施形態における紙製道具製造装置2における分離部5と同様に、紙製さじ生成用の厚紙P1からさじ形厚紙P2を分離し、さじ形厚紙P2は潰し部6に搬送され、紙製さじ生成用の厚紙P1からさじ形厚紙P2を分離した後の残存シートP3は、残存シートスタッカ8にストックされる。また、分離部5では、残存シートP3から楊枝形厚紙P4を分離し、楊枝形厚紙P4は潰し部6に搬送され、残存シートP3から楊枝形厚紙P4を分離した後の残存シートは、残存シートスタッカ10aにストックされる。
【0073】
なお、
図9では、楊枝形厚紙P4を潰し部6に搬送し圧縮する構成としているが、楊枝形厚紙P4は必ずしも圧縮しなくてもよい。楊枝形厚紙P4はさじ形厚紙P2に比較して細長く、棒形状を有しているため、押し切り加工時に、後述の楊枝押し切り部9の刃部9a全周にわたって残存シートP3を押圧し易く、比較的押圧力に偏りがないためばりが生じにくい。そのため、残存シートP3(つまり、紙製さじ生成用の厚紙P1)の厚さや、刃部9aの押圧力等を考慮し、残存シートP3に切り込みを入れるために十分な押圧力を刃部9aに生じさせることができ、ばりが生じる可能性が低いと予測されるときには、圧縮しなくてもよい。
【0074】
また、
図9では、さじ押し切り部4と楊枝押し切り部9とを個別に備える場合について説明しているが、これに限るものではない。例えば、押し切り方式のダイロールカッターにおいて、さじ用のロールと、楊枝用のロールとを用意し、一台のダイロールカッターにおいてロールを除く主要部分は共通とし、さじ用のロールを取り付けたダイロールカッターをさじ押し切り部4として用い、楊枝用のロールを取り付けたダイロールカッターを楊枝押し切り部9として用いるように構成してもよい。このように、一台のダイロールカッターにおいてロールを取り替えることで、さじ押し切り部4と楊枝押し切り部9とを切り替えて用いる構成とすることで、設備の有効活用を行うことができると共に、敷設面積の縮小化、またコスト削減を図ることができる。
【0075】
<紙製楊枝の面付け>
図10は、残存シートP3における楊枝形厚紙P4の面付けを示したものである。残存シートP3は、さじ形厚紙P2が打ち抜かれた部分であるさじ形厚紙孔P2′が幅方向に3列、搬送方向に一定間隔で形成されている。
【0076】
図10に示すように、楊枝形厚紙P4は、残存シートP3の幅方向に2列、つまり、3列に形成されているさじ形厚紙孔P2′の列の間に、搬送方向に一定間隔で面付けされる。また、各楊枝形厚紙P4は、その長手方向両端それぞれの、残存シートP3の長手方向における位置と、他の楊枝形厚紙P4の長手方向両端の、残存シートP3の長手方向における位置とが同一とならないように面付けされる。さらに各楊枝形厚紙P4は、その長手方向両端それぞれの残存シートP3の長手方向における位置が、さじ形厚紙孔P2′の長手方向両端それぞれの残存シートP3の長手方向における位置と一致しないように面付けされる。つまり、第一実施形態と同様に、残存シートP3の長手方向において、各楊枝形厚紙P4の先端及び後端の位置が、他の楊枝形厚紙P4の先端及び後端の位置、また、さじ形厚紙孔P2′の先端及び後端の位置、のいずれとも一致しないように面付けすることで、楊枝押し切り部9による押し切り加工時に、幅方向の圧力分散に起因して楊枝形厚紙P4の切断面にささくれや髭状等の端材(ばり)が生じることを抑制している。
【0077】
また、第一実施形態と同様に、楊枝形厚紙P4を打ち抜く場合も、楊枝形厚紙P4の幅が狭い方が搬送方向先端となるようにした方が、搬送時に、楊枝形厚紙P4がガイド等の設備に引っかかる等といったことが生じにくい。そのため、搬送方向の先頭側が、楊枝形厚紙P4の先細りしている側となるように楊枝形厚紙P4の面付けする。
【0078】
<楊枝押し切り部の刃部>
楊枝押し切り部9の刃部9aは、円柱又は円筒状のダイロールカッターの周面に形成され、
図11に示すように、
図10に示す楊枝形厚紙P4の面付けのパターンと同一パターンで複数形成される。また、各刃部9aは、平面視で、楊枝形厚紙P4の外形と相似形状を有する枠状に形成される。
図11において、(a)は楊枝押し切り部9の刃部9a部分を示す側面図、(b)は楊枝押し切り部9の刃部9aが設けられたロールの周面の展開図である。
【0079】
刃部9aは、
図12に示すように、刃部9aが連なる方向を垂線とする面で刃部9aを切断した端面が山型形状となるように形成され、山型形状をなす左右2辺のうちの枠状に配置された刃部9aの枠の内側寄りに位置する辺と山型形状の高さ方向に伸びる線分とがなす内側角度θ1inは、山型形状をなす左右の2辺のうちの枠の外側寄りに位置する辺と山型形状の高さ方向に伸びる線分とがなす外側角度θ1outよりも小さい。内側角度θ1inは例えば12度以上18度以下の範囲内の値に設定され、外側角度θ1outは例えば17度以上23度以下の範囲内の値に設定される。なお、刃部9aの強度を確保する観点から内側角度θ1inと外側角度θ1outとの和が、ある角度以上(例えば30度以上等)であることが好ましい。なお、
図12は、
図11(b)に示す刃部9aをC-C′面で切断した端面における刃部9aの外形のみを示す図である。
【0080】
刃部9aの、内側角度θ1in及び外側角度θ1outは、刃部4aと同様に、紙製楊枝11の縁部の形状及び紙製楊枝11の特性等に応じて設定される。なお、ここでは、刃部9aと刃部4aとが同一形状となるように刃部9aを形成した場合について説明したが、楊枝押し切り部9の刃部9aの形状は、必ずしもさじ押し切り部4の刃部4aの形状と同一でなくてもよく、紙製楊枝11に要求される縁部の形状に応じて刃部9aの形状を設定してよい。
【0081】
<効果>
第二実施形態に係る紙製楊枝11は、上記第一実施形態における紙製さじ1と同等の作用効果を得ることができる。
また、第二実施形態においては、さじ形厚紙P2を打ち抜いた後の、残存シートP3から楊枝形厚紙P4を打ち抜いているため、紙製さじ生成用の厚紙P1を効率よく利用することができる。
【0082】
なお、第二実施形態では、紙製さじ生成用の厚紙P1から、さじ形厚紙P2と楊枝形厚紙P4とを打ち抜く場合について説明したが、これに限るものではなく、例えば、さじ形厚紙P2と、マドラーとなるマドラー形厚紙との組み合わせ等、他の異なる道具となる厚紙の組み合わせでもよく、また同一の道具となる厚紙どうしの組み合わせでもよい。また、同一の紙製さじ生成用の厚紙P1に対して押し切り加工を3回以上繰り返して、紙製道具となる3種類の厚紙を切り出すようにしてもよい。
【0083】
<変形例>
さじ形厚紙P2を打ち抜いた残存シートP3に対して、楊枝押し切り部9で押し切り加工する際に、押し切り加工を行う前に、残存シートP3に反りを加えた後、押し切り加工を行うようにしてもよい。つまり、さじ形厚紙P2を打ち抜いた後に、楊枝形厚紙P4等、特に細長い形状の厚紙を打ち抜く際には、打ち抜いた楊枝形厚紙P4に反りが生じる可能性がある。そのため、楊枝形厚紙P4を打ち抜く前、具体的には、残存シートP3に対して押し切り加工を行う前に残存シートP3に対して反りを予め付与し、その後、楊枝形厚紙P4を打ち抜くための切り込みを入れる。残存シートP3には予め反りが付与されているため、打ち抜き後の楊枝形厚紙P4に反りが生じることを抑制することができる。
【0084】
具体的には、楊枝押し切り部9の上流に、残存シートP3に反りを付与する反り付与部(図示せず)を設ける。反り付与部は、例えば3つのローラを備えた公知の反りの強制等を行うロール装置で構成される。反り付与部で付与する反りの方向は、楊枝形厚紙P4を打ち抜いたときに生じる反りと逆方向とする。そして、残存シートスタッカ8にストックされた残存シートP3を反り付与部に導入して反りを付与した後、反りが付与された残存シートP3を楊枝押し切り部9に搬送し、残存シートP3に押し切り加工を施す。楊枝押し切り部9で押し切り加工をする際に、楊枝形厚紙P4、つまり残存シートP3に反りを生じさせる力が加わるが、残存シートP3には、予め反りが付与されているため、楊枝押し切り部9で押し切り加工された後の残存シートP3は略平坦となり、残存シートP3に反りが生じることが抑制される。なお、反り付与部による反りの付与量は、楊枝形厚紙P4に生じる反りに応じて調整すればよく、残存シートP3において残存している部分と、楊枝形厚紙P4との大小関係、また、厚紙の仕様や刃部4a、9aの形状等によっても楊枝形厚紙P4に生じる反りの反り量が変わってくるため、実際に楊枝形厚紙P4に生じた反りに応じて予め付与する反り量を調整すればよい。
【実施例0085】
紙製さじ生成用の厚紙P1と、さじ押し切り部4で紙製さじ生成用の厚紙P1を打ち抜いて得たさじ形厚紙P2と、さじ形厚紙P2をさらに潰し部6で圧縮して得た紙製さじ1と、木匙とについて、吸水性及び強度を評価した。つまり、紙製さじ生成用の厚紙P1の原紙1Aと、紙製さじ生成用の厚紙P1を打ち抜いた状態であり圧縮する前の紙さじ1Bと、紙製さじ生成用の厚紙P1を打ち抜いた後圧縮した後の紙さじ1Cと、木匙1Dとについて吸水性及び強度を評価した。
【0086】
市販の手持ち式の刃の薄いカッターナイフを用いて原紙1Aからさじ形厚紙P2と同一形状の厚紙片を切り出し、これを原紙1Aの試験片とした。
【0087】
また、さじ形厚紙P2とほぼ同一厚さ及びほぼ同一形状の木匙を用意し、これを木匙1Dの試験片とした。
【0088】
また、さじ形厚紙P2を紙さじ(圧縮前)1Bの試験片とし、さらに、紙製さじ1を紙さじ(圧縮後)1Cの試験片とした。
【0089】
原紙1A及び紙さじ(圧縮前)1Bの試験片としてそれぞれ8枚の試験片(No.1~No.8)を用意し、紙さじ(圧縮後)1C及び木匙1Dとしてそれぞれ5枚の試験片(No.1~No.5)を用意した。
【0090】
<吸水性評価>
原紙1A、紙さじ(圧縮前)1B、紙さじ(圧縮後)1C及び木匙1Dそれぞれについて、試験片それぞれを、全体が浸かるように水道水に10分間浸漬した。
そして、原紙1Aの試験片毎に、吸水前後の重量を測定し、吸水前後の重量差分から、吸水率を算出した。このとき、各試験片を水道水から取り出した後に、表面に付着した水分をティッシュ等でふき取った。そして、吸水前後の重量の平均値を演算し、求めた平均値から厚紙A1の吸水率(平均吸水率)を演算した。
【0091】
同様に、紙さじ(圧縮前)1B、紙さじ(圧縮後)1C及び木匙1Dそれぞれについて、試験片毎に、吸水前後の重量を測定し、吸水前後の重量の平均値を演算し、求めた平均値から吸水率を演算し、紙さじ(圧縮前)1Bの吸水率、紙さじ(圧縮後)1Cの吸水率(平均吸水率)及び木匙1Dの吸水率(平均吸水率)を演算した。この場合も、各試験片を水道水から取り出した後に、表面に付着した水分をティッシュ等でふき取った。
吸水率(平均吸水率)の演算結果を表1に示す。
【0092】
表1に示すように、原紙1Aよりも、切断面の端面が山型形状である刃部4aにより切断して得た紙さじ(圧縮前)1Bの方が、吸水率が小さいことがわかる。また、紙さじ(圧縮前)1Bをさらに圧縮して得た紙さじ(圧縮後)1Cの方が、圧縮を行わない紙さじ(圧縮前)1Bよりも、吸水率が小さいことがわかる。また、原紙1A、紙さじ(圧縮前)1B及び紙さじ(圧縮後)1Cの方が、木匙よりも吸水率が小さいことがわかる。
【表1】
【0093】
<強度評価>
吸水性評価で用いた原紙1A、紙さじ(圧縮前)1B、紙さじ(圧縮後)1C及び木匙1Dと同様にして、強度評価用の原紙2Aの試験片を3枚(No.1~No.3)、紙さじ(圧縮前)2Bの試験片を3枚(No.1~No.3)、紙さじ(圧縮後)2Cの試験片を5枚(No.1~No.5)、木匙2Dの試験片を5枚(No.1~No.5)、それぞれ用意した。また、吸水性評価で用いた試験片のうち、吸水後の原紙1Aの試験片3枚(No.1~No.3)、吸水後の紙さじ(圧縮前)1Bの試験片3枚(No.1~No.3)、吸水後の紙さじ(圧縮後)1Cの試験片5枚(No.1~No.5)、吸水後の木匙1Dの試験片5枚(No.1~No.5)を、強度評価用の試験片として用いた。
【0094】
そして、原紙(吸水後)1A、紙さじ(圧縮前)(吸水後)1B、紙さじ(圧縮後)(吸水後)1C及び木匙(吸水後)1Dと、原紙2A、紙さじ(圧縮前)2B、紙さじ(圧縮後)2C及び木匙2Dとの、それぞれの試験片を用いて、強度を評価した。
【0095】
具体的には、原紙1A、紙さじ(圧縮前)1B、紙さじ(圧縮後)1C及び木匙1Dと、原紙2A、紙さじ(圧縮前)2B、紙さじ(圧縮後)2C及び木匙2Dそれぞれの試験片を用いて座屈荷重を測定した、座屈荷重の測定は、例えば、
図13に示す試験装置12を用いて行った。すなわち、間隔を空けて配置した直方体形状の2つの台座12a間に、試験片S1をかけ渡した。試験片S1に対して上下方向に移動可能に支持された支持板12bと試験片S1の長手方向中央部との間に重量1kgのロール12cを、その曲面が試験片S1と接するように載置して支持板12bと試験片S1とでロール12cを挟持し、支持板12b上に重しを載せ、試験片S1にかかる荷重を増やすことで座屈荷重を測定した。
【0096】
各試験片について座屈荷重を測定し、原紙2A,1A、紙さじ(圧縮前)2B,1B、紙さじ(圧縮後)2C,1C、木匙2D,1Dそれぞれの各試験片の座屈荷重の測定値から、試験片の種類毎に、吸水前の座屈荷重の平均値及び吸水後の座屈荷重の平均値を求め、求めた平均値から吸水前後の強度低下率を演算した。吸水前後の強度低下率の演算結果を表2に示す。
【0097】
表2に示すように、吸水前の状態では、紙さじ(圧縮後)2Cは、原紙2A及び紙さじ(圧縮前)2Bのいずれよりも座屈荷重が大きく、切断面の端面が山型形状である刃部4aにより圧縮しながら切断することにより紙さじ(圧縮前)2Bの強度が向上し、圧縮することで紙さじ(圧縮後)2Cの強度がさらに向上することが確認された。
また、原紙2A,1Aよりも紙さじ(圧縮前)2B,1Bの方が吸水前及び吸水後共に座屈荷重が大きくすなわち強度があり、また強度低下率が小さいことが確認された。また、紙さじ(圧縮後)2C,1Cは、紙さじ(圧縮前)2B,1Bよりも強度低下率は大きいが、吸水前後の座屈荷重そのものは、吸水前及び吸水後のいずれの場合も、紙さじ(圧縮前)2B,1Bよりも紙さじ(圧縮後)2C,1Cの方が大きく、吸水後でも強度が高い状態が維持されることが確認された。
【表2】
【0098】
<評価>
表1及び表2より、紙製さじ生成用の厚紙P1を、切断面の端面が山型形状である刃部4aにより押し潰しながら切断して得たさじ形厚紙P2の方が、吸水性及び強度の観点で優れ、さらに、さじ形厚紙P2を圧縮した紙製さじ1の方が、吸水性及び強度の観点でさらに優れていることが確認された。