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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060978
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】ポリマーおよびワニス
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/08 20060101AFI20230424BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20230424BHJP
   C08K 5/372 20060101ALI20230424BHJP
   C08K 5/3495 20060101ALI20230424BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20230424BHJP
   C08F 299/00 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
C08G61/08
C08K5/13
C08K5/372
C08K5/3495
C08K5/07
C08F299/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170686
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】穴田 亘平
【テーマコード(参考)】
4J002
4J032
4J127
【Fターム(参考)】
4J002BK001
4J002EE036
4J002EH126
4J002EJ016
4J002EJ036
4J002EJ046
4J002EN106
4J002EU086
4J002EU176
4J002EV026
4J002EV046
4J002EV056
4J002EW066
4J002FD076
4J002GH01
4J002GH02
4J002HA03
4J032CA27
4J032CB04
4J032CC02
4J032CD02
4J032CE03
4J032CG06
4J127AA03
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB151
4J127BC031
4J127BC151
4J127BD031
4J127BE011
4J127BE01X
4J127BE01Y
4J127BG041
4J127BG04X
4J127BG04Y
4J127BG04Z
4J127BG171
4J127BG17X
4J127BG17Y
4J127BG17Z
4J127DA14
4J127DA21
4J127DA28
4J127EA13
4J127FA08
(57)【要約】
【課題】耐熱性および透明性に優れ、さらに部材との密着性、製膜性、および有機溶剤への溶解性に優れたポリマー、当該ポリマーを含むワニスを提供する。
【解決手段】本発明のポリマーは、下記一般式(1)および(2)で表される構成単位を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)および(2)で表される構成単位を含むポリマー。
【化1】
(一般式(1)中、Qは炭素数1~5のアルキレン基を示し、aは0、1または2であり、mは平均値で1以上500以下の数である。一般式(2)中、Qは単結合、炭素数1~5のアルキレン基を示し、bは0、1または2であり、nは平均値で1以上500以下の数である。)
【請求項2】
重量平均分子量が30,000以上800,000以下である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
以下の条件で得られた樹脂膜の波長300nm以上600nm以下の範囲における光線透過率が95%以上である、請求項1または2に記載のポリマー。
(条件)
前記ポリマー20重量%濃度のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を塗布し、大気下で100℃1分間加熱して膜厚3μmの樹脂膜を得る。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のポリマーと、有機溶剤とを含むワニス。
【請求項5】
さらに酸化防止剤を含む、請求項4に記載のワニス。
【請求項6】
前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、チオール系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系酸化防止剤、ベンゾフェノン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、サルチル酸エステル系酸化防止剤、およびトリアジン系酸化防止剤から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載のワニス。
【請求項7】
以下の条件で得られた硬化膜の波長350nmおける光線透過率が95%以上であり、波長400nmにおける光線透過率が95%以上である、請求項1~3のいずれかに記載のポリマー。
(条件)
酸化防止剤3phr配合したポリマー20重量%濃度のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を塗布し、大気下で160℃30分間加熱して膜厚3μmの硬化膜を得る。
【請求項8】
以下の条件で得られた硬化膜の波長350nmおける光線透過率が80%以上であり、波長400nmにおける光線透過率が90%以上である、請求項1~3のいずれかに記載のポリマー。
(条件)
酸化防止剤3phr配合したポリマー20重量%濃度のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を塗布し、大気下で200℃30分間加熱して膜厚3μmの硬化膜を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーおよびワニスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子部品には、デバイス部分を水分やほこり等の異物から守るために保護ガラス等と接着する接着剤組成物や、半導体レーザー、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池の保護、封止、接着等を行うための樹脂組成物等が用いられている。当該樹脂組成物に含まれるポリマーには、各種部材との密着性、耐熱性、透明性、製膜性等に優れることが求められる。さらにハンドリングの観点から有機溶媒への溶解性に優れることも好ましい。
【0003】
特許文献1には、所定の触媒下で、環状オレフィンを重合する方法が開示されている。当該文献には、環状オレフィンはアルケニル基やアルキルカルボニルオキシ基を含む基等を備えていてもよいと記載されている。しかしながら、当該文献には、このような基を備える環状オレフィンを用いて具体的に合成した例は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6455650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1において合成されたポリマーは、耐熱性、密着性、溶剤への溶解性、硬化性に改善の余地があり、特に硬化性を構造的に持たせたまま密着性、透過性を両立させる場合に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、所定の構造のポリマーであれば上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0007】
本発明によれば、
下記一般式(1)および(2)で表される構成単位を含むポリマーを提供することができる。
【化1】
(一般式(1)中、Qは炭素数1~5のアルキレン基を示し、aは0、1または2であり、mは平均値で1以上500以下の数である。一般式(2)中、Qは単結合、炭素数1~5のアルキレン基を示し、bは0、1または2であり、nは平均値で1以上500以下の数である。)
【0008】
本発明によれば、
前記ポリマーと、有機溶剤とを含むワニスが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐熱性および透明性に優れ、さらに部材との密着性、製膜性、および有機溶剤への溶解性に優れたポリマー、当該ポリマーを含むワニスを提供することができる。言い換えれば、本発明のポリマーはこれらの特性のバランスに優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1で得られたポリマーのH-NMRチャートである。
図2】実施例4で得られた樹脂膜を紫外可視分光光度計で測定した各波長における光線透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のポリマー、当該ポリマーを含むワニスについて、実施の形態に基づいて説明する。また、例えば「1~10」は特に断りがなければ「1以上」から「10以下」を表す。
【0012】
[ポリマー]
本実施形態のポリマーは、下記一般式(1)および(2)で表される構成単位を含む。
【0013】
【化2】
【0014】
一般式(1)中、Qは炭素数1~5のアルキレン基を示し、具体的にはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンを挙げることができる。
は、好ましくは炭素数1~3のアルキレン基、より好ましくは炭素数1~2のアルキレン基である。
【0015】
一般式(1)中、aは0、1または2であり、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。
【0016】
繰り返し単位数mの平均値は、1以上500以下の数である。
【0017】
一般式(2)中、Qは単結合、炭素数1~5のアルキレン基を示す。炭素数1~5のアルキレン基として、具体的にはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンを挙げることができる。
【0018】
は、好ましくは単結合または炭素数1~3のアルキレン基、より好ましくは単結合または炭素数1~2のアルキレン基であり、さらに好ましくは単結合または炭素数1のアルキレン基である。
【0019】
bは0、1または2であり、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。
繰り返し単位数nの平均値は、1以上500以下の数である。
本実施形態のポリマーは、本発明の効果の観点から、繰り返し単位数mと繰り返し単位数nの比(m:n)は、好ましくは5:95~95:5、より好ましくは15:85~85:15、さらに好ましくは20:80~80:20とすることができる。
【0020】
本実施形態のポリマーは前記構造単位を含むことから、耐熱性および透明性に優れ、さらにシリコンウェハ等の部材との密着性に優れる。さらに、本実施形態のポリマーは、膜厚5μm以上の硬化膜を得ることができ製膜性に優れるととともに、有機溶剤への溶解性に優れておりハンドリング性にも優れる。
【0021】
本実施形態のポリマーは、本発明の効果を奏する範囲で、他の構成単位を含むことができる。他の構成単位としては、例えば、ノルボルネンから誘導される構成単位を挙げることができる。
【0022】
本実施形態のポリマーの重量平均分子量Mwは、30,000以上800,000以下、好ましくは50,000以上500,000以下、より好ましくは100,000以上300,000以下である。
【0023】
重量平均分子量が当該範囲であることにより、本発明の効果に優れ、特に有機溶媒への溶解性に優れハンドリング性に優れるとともに、製膜性に優れ5μm以上の厚膜に形成することができる。
【0024】
また、ポリマーの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、好ましくは1.0~6.0、より好ましくは1.5~5.0、さらに好ましくは2.0~4.0である。分散度を適切に調整することで、ポリマーの物性を均質にすることができ、好ましい。
【0025】
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、GPC測定により得られる標準ポリスチレン(PS)の検量線から求めた、ポリスチレン換算値を用いる。GPC測定の測定条件は、例えば、以下の通りである。
東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC-8320GPC
カラム:東ソー社製TSK-GEL Supermultipore HZ-M
検出器:液体クロマトグラム用RI検出器
測定温度:40℃
溶剤:THF
試料濃度:2.0mg/ミリリットル
【0026】
ポリマーのガラス転移温度は、好ましくは150~350℃、より好ましくは200~300℃である。ポリマーは、一般式(1)および(2)で表される構成単位を含むことにより、比較的高いガラス転移温度を有する。このことは、電子部品の製造および使用環境において、部材間または部材表面等に形成された硬化膜等が安定に存在できるという点で好ましい。なお、ガラス転移温度は、例えば、示差熱分析(differential thermal analysis:DTA)により求めることができる。
【0027】
本実施形態のポリマーは透明性に優れており、光線透過率が高く、透過率が必要な電子部品の性能安定性に寄与する。具体的には、以下の条件で得られた樹脂膜の波長300nm以上600nm以下の範囲における光線透過率が、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは98%以上である。
上限値は特に限定されないが100%以下程度である。
(条件)
ポリマー20重量%濃度のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を塗布し、大気下で100℃1分間加熱して膜厚3μmの樹脂膜を得る。
【0028】
本実施形態のポリマーは、種々の有機溶媒への溶解性に優れていることから、ハンドリング性に優れるとともに、ワニス等において添加剤の種類やその量を所望のものとすることができ、処方設計の自由度に優れる。
【0029】
有機溶媒としては、例えばケトン類としてメチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等;エステル類として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、酢酸エチル、酢酸ブチル等;アルコール類として、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、n-プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等;エーテル類として、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルイソブチルエーテル等;その他溶解する溶媒としてトルエン、クロロホルム等;を挙げることができる。
【0030】
<ポリマーの製造方法>
本実施形態のポリマーを、下記一般式(1a)で表される環状オレフィン化合物(1a)と、下記一般式(2a)で表される環状オレフィン化合物(2a)と、を配位重合することにより合成することができる。
【0031】
【化3】
【0032】
一般式(1a)中、Qおよびaは一般式(1)と同義である。
一般式(2a)中、Qおよびbは一般式(2)と同義である。
【0033】
上記反応は、有機溶媒中、重合触媒および助触媒の存在下で行うことができる。
有機溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)などのケトン類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類;トルエン;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;並びにメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;等を挙げることができ、1種または2種以上を使用することができる。
重合触媒としては、ニッケル触媒、パラジウム触媒等が挙げられる。
【0034】
前記重合触媒としては、例えばパラジウム錯体又はニッケル錯体に対して、例えばホスフィン系又はジイミン系の配位子を配位させたカチオン性錯体と、カウンターアニオンと、からなるもの等を用いてもよい。有機金属触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記パラジウム錯体としては、例えば、(アセタト-κ0)(アセトニトリル)ビス[トリス(1-メチルエチル)ホスフィン]パラジウム(I)テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボレート、π-アリルパラジウムクロリドダイマーなどのアリルパラジウム錯体;パラジウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、マレイン酸塩、ナフトエ酸塩などのパラジウムの有機カルボン酸塩;酢酸パラジウムのトリフェニルホスフィン錯体、酢酸パラジウムのトリ(m-トリル)ホスフィン錯体、酢酸パラジウムのトリシクロヘキシルホスフィン錯体などのパラジウムの有機カルボン酸の錯体;パラジウムのジブチル亜リン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩などのパラジウムの有機スルフォン酸塩;ビス(アセチルアセトナート)パラジウム、ビス(ヘキサフロロアセチルアセトナート)パラジウム、ビス(エチルアセトアセテート)パラジウム、ビス(フェニルアセトアセテート)パラジウムなどのパラジウムのβ-ジケトン化合物;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス[トリ(m-トリルホスフィン)]パラジウム、ジブロモビス[トリ(m-トリルホスフィン)]パラジウム、アセトニルトリフェニルホスフォニウム錯体などのパラジウムのハロゲン化物錯体;等が挙げられる。
【0036】
前記ホスフィン系の配位子としては、トリフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンなどが挙げられる。
【0037】
前記カウンターアニオンとしては、例えば、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(2,4,6-トリフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジフェニルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなど挙げられる。
重合触媒と環状オレフィン化合物との反応生成物がカウンターアニオンによって活性化されることによって環状オレフィン化合物の重合が進行すると考えられる。
加熱温度は、80℃~200℃程度であり、反応時間は0.5~72時間程度である。なお、窒素バブリングにより溶剤中の溶存酸素を除去したうえで、溶液重合を行うことがより好ましい。
【0038】
本実施形態においては、触媒量や反応温度等によりポリマーの分子量を調整することができ、あるいは合成反応において別途分子量調整剤や連鎖移動剤を添加することによりポリマーの分子量を調整することもできる。
【0039】
重合工程では、必要に応じて、分子量調整剤や連鎖移動剤等を使用することができる。連鎖移動剤としては、例えば、トリメチルシラン、トリエチルシラン、トリブチルシランなどのアルキルシラン化合物;及びトリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、MAO(メチルアルモキサン)などの有機アルミニウム等が挙げられる。連鎖移動剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
重合反応の後、所望のポリマー以外の不要な成分の除去などのため、更に以下の工程を適宜行うことが好ましい。
例えば、反応溶液をイオン交換樹脂などのカラムを通して、金属不純物などを除去しておくことができる。
【0041】
さらに、この反応溶液を貧溶媒中に投入してポリマーを再沈殿析出させて未反応モノマーを除去し、乾燥固化させたもの再び有機溶剤に溶解し精製品として用いることもできる。特に不純物や異物が問題になる用途では、再び有機溶剤に溶解して濾過精製ワニスとすることが好ましい。
ワニス(ポリマー溶液)中(100重量%)のポリマー濃度は、特に限定されないが、10~30重量%程度である。
【0042】
[ワニス]
本実施形態のワニスは、前述のポリマーと、有機溶剤とを含む。
本実施形態のポリマーは種々の有機溶媒への溶解性に優れていることから、ハンドリング性に優れ、有機溶媒100質量部に対して、例えば10~50質量部、好ましくは15~40質量部溶解させることができる。ポリマー粘度を濃度で調整することで作業性等に優れる。
【0043】
有機溶媒としては、例えばケトン類としてメチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等;エステル類として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、酢酸エチル、酢酸ブチル等;アルコール類として、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、n-プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等;エーテル類として、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルイソブチルエーテル等;その他溶解する溶媒としてトルエン、クロロホルム等;を挙げることができる。
【0044】
本実施形態のワニスは、さらに酸化防止剤を含むことも好ましい。これにより、本実施形態のワニスから得られる硬化膜は耐熱性および透明性により優れる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、チオール系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系酸化防止剤、ベンゾフェノン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、サルチル酸エステル系酸化防止剤、またはトリアジン系酸化防止剤等を挙げることができ、これらから選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0045】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、4-[[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレンなどが挙げられる。
【0046】
チオエーテル系酸化防止剤としては、4,4’-チオビス[2-t-ブチル-5-メチルフェノール]ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオネート]、チオビス[2-(1,1-ジメチルエチル)-5-メチル-4,1-フェニレン]ビス[3-(テトラデシルチオ)-プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス(3-n-ドデシルチオプロピオネート)、ビス(トリデシル)チオジプロピオネート、2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル=ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオナート]が挙げられる。
【0047】
リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシルホスファイト)、4,4’-イソプロピリデン-ビス(フェニル-ジ-アルキル(C12~C15)ホスファイト)、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、などのジホスファイト系化合物などを挙げることができる。
【0048】
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ポリ〔{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}〕、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン重縮合物、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2、4-ビス〔N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ〕-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケートなどが挙げられる。
【0049】
チオール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン等が挙げられる。
【0050】
ベンゾトリアゾール系酸化防止剤としては、1,2,3-ベンゾトリアゾール(1H-ベンゾトリアゾール)、1H-ベンゾトリアゾールナトリウム塩、4-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、4-メチル-1H-ベンゾトリアゾールカリウム塩、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールカリウム塩、4-メチル-1H-ベンゾトリアゾールアミン塩、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールアミン塩、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0051】
ベンゾフェノン系酸化防止剤としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ドデシロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5スルフォベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0052】
ヒドロキシルアミン系酸化防止剤としては、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン硝酸塩、ヒドロキシルアミン硫酸塩、ヒドロキシルアミンリン酸塩、ヒドロキシルアミン塩酸塩、ヒドロキシルアミンクエン酸塩、ヒドロキシルアミンシュウ酸塩等が挙げられる。
【0053】
サルチル酸エステル系酸化防止剤としては、サリチル酸フェニル、サリチル酸p-オクチルフェニル、及びサリチル酸p-tertブチルフェニル等が挙げられる。
トリアジン系酸化防止剤としては、2,4-ビス(アリル)-6-(2-ヒドロキシフェニル)1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0054】
本実施形態のワニスは、ポリマー100質量部に対して酸化防止剤を好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部含むことができる。これにより、本実施形態のワニスから得られる硬化膜は耐熱性および透明性にさらに優れる。
【0055】
本実施形態のワニスは、必要に応じて、重合開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤、熱酸発生剤、熱塩基発生剤、酸化防止剤、界面活性剤、分散剤、紫外線吸収剤、紫外線カット剤、赤外線カット剤、反応性稀釈剤等を含むことができる。
【0056】
本実施形態のポリマーを含む下記ワニスから、以下の条件で得られた硬化膜の波長350nm以上600nm以下の範囲における光線透過率が好ましくは90%以上、より好ましくは91%以上、さらに好ましくは92%以上である。
上限値は特に限定されないが98%以下程度である。
(条件)
前記ポリマー20重量%濃度のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液(ワニス)を塗布し、大気下で160℃30分間加熱して膜厚3μmの硬化膜を得る。
このように、本実施形態のポリマーを含むワニスから得られる硬化膜は、耐熱性に優れ、変色が抑制されていることから透明性に優れる。
【0057】
本実施形態のポリマーを含む下記ワニスから、以下の条件で得られた硬化膜の波長350nmにおける光線透過率が好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは98%以上である。さらに、波長400nmにおける光線透過率が好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは98%以上である。
上限値は特に限定されないが、何れも100%以下程度である。
(条件)
前記酸化防止剤3phr配合したポリマー20重量%濃度のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液(ワニス)を塗布し、大気下で160℃30分間加熱して膜厚3μmの硬化膜を得る。
【0058】
さらに、本実施形態のポリマーを含む下記ワニスから、以下の条件で得られた硬化膜の波長350nmにおける光線透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは81%以上、さらに好ましくは82%以上である。さらに、波長400nmにおける光線透過率が好ましくは90%以上、より好ましくは91%以上、さらに好ましくは92%以上である。
上限値は特に限定されないが、何れも100%以下程度である。
(条件)
前記酸化防止剤3phr配合したポリマー20重量%濃度のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液(ワニス)を塗布し、大気下で200℃30分間加熱して膜厚3μmの硬化膜を得る。
【0059】
このように、本実施形態のポリマーと酸化防止剤とを含むワニスから得られる硬化膜は、耐熱性にさらに優れ、変色がより抑制されていることから透明性により優れる。
【0060】
本実施形態のポリマー同士は、ポリマーの一般式(2)で表される構成単位のビニル基を介して結合することから得られる硬化膜は耐熱性に優れており、ひいては透明性にも優れる。
【0061】
本実施形態のワニスから得られるポリマーからなる硬化膜は、各種電子部品に用いることができる。電子部品としては、半導体レーザー、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池等が挙げられる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例0063】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
(触媒溶液1の調製)
あらかじめ水分を除去済みの窒素雰囲気化にしたガラス製容器に、(アセタト-κ0)(アセトニトリル)ビス[トリス(1-メチルエチル)ホスフィン]パラジウム(I)テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.100g(0.000083mol)と、脱水酢酸ブチル20gを添加し、室温で1時間攪拌させて溶解させた後、次にN,N-ジメチルアニリニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.265g(0.00033mol)を加えてさらに30分攪拌して、フィルターで溶液をろ過して触媒溶液1とした。
【0065】
(触媒溶液2の調製)
あらかじめ水分を除去済みの窒素雰囲気化にしたガラス製容器に、(アセタト-κ0)(アセトニトリル)ビス[トリス(1-メチルエチル)ホスフィン]パラジウム(I)テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.72g(0.000015mol)と、脱水酢酸ブチル20g添加し、室温で1時間攪拌させて溶解させた後、次にN,N-ジメチルアニリニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート2.90g(0.00009mol)加えてさらに30分攪拌して、フィルターで溶液をろ過して触媒溶液2とした。
【0066】
(触媒溶液3の調製)
あらかじめ水分を除去済みの窒素雰囲気化にしたガラス製容器に、アリルパラジウム(II)クロリド(ダイマー)0.0391g(0.0001mol)とジフェニルシクロヘキシルホスフィン0.072g(0.00026mol)、脱水トルエン20g添加し、室温で1時間攪拌させて溶解させた後、次にN,N-ジメチルアニリニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.51g(0.00064mol)加えてさらに30分攪拌して、フィルターで溶液をろ過して触媒溶液3とした。
【0067】
(実施例1:共重合体1の合成)
撹拌機、冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、下記化学式(a)の環状オレフィン(537g、3.23mol)、および下記化学式(b)の環状オレフィン(209g、1.74mol)を計量し、1,500gの酢酸ブチルに溶解させた。この溶解液に対して、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去した後、撹拌しつつ、100℃に到達した際、あらかじめ調製した触媒溶液1を添加して100℃で5時間の条件で内温を保持させながら反応を行った。これにより、共重合体を得た。次いで、室温まで冷却した上記溶解液を大量のメタノールを用いて再沈させた後、析出物をろ取し、真空乾燥機にて乾燥させ、480gの白色粉末(共重合体1)を得た。
【化4】
得られたポリマーのMwは200,000、分子量分布(PDI)は4.0、重合収率は70%であった。
得られたポリマーのH-NMRチャートを図1に示す。当該ポリマーは、下記一般式(a1)および(b1)で表される構成単位を含む分子構造を有するものであった。繰り返し単位mと繰り返し単位nの比(m:n)は56.7:43.3であった。繰り返し単位数mの平均値は13であり、繰り返し単位数nの平均値は10であった。
【化5】
【0068】
(実施例2:共重合体2の合成)
撹拌機、冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、前記化学式(a)の環状オレフィン(660g、3.98mol)、および前記化学式(b)の環状オレフィン(119
g、0.99mol)を計量し、1,500gの酢酸ブチルに溶解させた。この溶解液に対して、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去した後、撹拌しつつ、100℃に到達した際、あらかじめ調整した触媒溶液1を添加して100℃で5時間の条件で内温を保持させながら反応を行った。これにより、共重合体を得た。次いで、室温まで冷却した上記溶解液を大量のメタノールを用いて再沈させた後、析出物をろ取し、真空乾燥機にて乾燥させ、440gの白色粉末(共重合体2)を得た。
得られたポリマーのMwは160,000、分子量分布(PDI)は3.2、重合収率は68%であった。
当該ポリマーは、前記一般式(a1)および(b1)で表される構成単位を含む分子構造を有するものであった。繰り返し単位mと繰り返し単位nの比(m:n)は78.0:22.0であった。繰り返し単位数mの平均値は35であり、繰り返し単位数nの平均値は10であった。
【0069】
(実施例3:共重合体3の合成)
撹拌機、冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、前記化学式(a)の環状オレフィン(165g、0.99mol)、および前記化学式(b)の環状オレフィン(477
g、3.98mol)を計量し、1,500gの酢酸ブチルに溶解させた。この溶解液に対して、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去した後、撹拌しつつ、100℃に到達した際、あらかじめ調整した触媒溶液1を添加して100℃で5時間の条件で内温を保持させながら反応を行った。これにより、共重合体を得た。次いで、室温まで冷却した上記溶解液を大量のメタノールを用いて再沈させた後、析出物をろ取し、真空乾燥機にて乾燥させ、520gの白色粉末(共重合体3)を得た。
得られたポリマーのMwは300,000、分子量分布(PDI)は4.2、重合収率は77%であった。
当該ポリマーは、前記一般式(a1)および(b1)で表される構成単位を含む分子構造を有するものであった。繰り返し単位mと繰り返し単位nの比(m:n)は13.6:86.4であった。繰り返し単位数mの平均値は10であり、繰り返し単位数nの平均値は64であった。
【0070】
(比較例1:ホモポリマー1の合成)
撹拌機、冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-メタノール,2-アセテート(996g、6.0mol)を計量し、20,000gの酢酸ブチルに溶解させた。この溶解液に対して、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去した後、撹拌しつつ、80℃に到達した際、あらかじめ調整した触媒溶液2を添加して80℃で24時間の条件で内温を保持させながら反応を行った。これにより、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-メタノール,2-アセテート,ホモポリマーを得た。次いで、室温まで冷却した上記溶解液を大量のノルマルヘキサンを用いて再沈させた後、析出物をろ取し、真空乾燥機にて乾燥させ、550gの白色粉末(ホモポリマー1)を得た。
このようにして得られたホモポリマー1の重量平均分子量(Mw)は150,000であり、分散度(Mw/Mn)は2.4であった。
【0071】
(比較例2:ホモポリマー2の合成)
撹拌機、冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、(ビニル)ノルボルネン(1000g、8.3mol)を計量し、4,000gのトルエンに溶解させた。この溶解液に対して、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去した後、撹拌しつつ、60℃に到達した際、あらかじめ調整した触媒溶液3を添加して60℃で5時間の条件で内温を保持させながら反応を行った。これにより、(デシル)ノルボルネンホモポリマーを得た。次いで、室温まで冷却した上記溶解液を大量のメタノールを用いて再沈させた後、析出物をろ取し、真空乾燥機にて乾燥させ、950gの白色粉末(ホモポリマー2)を得た。
このようにして得られたホモポリマー2の重量平均分子量(Mw)は620,000であり、分散度(Mw/Mn)は3.9であった。
【0072】
(重量平均分子量(Mw)・数平均分子量(Mn)・分子量分布(PDI))
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(PDI:Mw/Mn)は、GPC測定により得られる標準ポリスチレン(PS)の検量線から求めた、ポリスチレン換算値を用いる。測定条件は、以下の通りである。結果を表1に示す。
東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC-8320GPC
カラム:東ソー社製TSK-GEL Supermultipore HZ-M
検出器:液体クロマトグラム用RI検出器
測定温度:40℃
溶媒:THF
試料濃度:2.0mg/ミリリットル
【0073】
(ガラス転移温度(Tg))
得られた共重合体およびホモポリマーの約3mgを標準的アルミニウム製TA-Instrumentサンプルパンに移した。サンプルパンを蓋で閉鎖し、そして、RCS冷却装置を装備したTA-Instruments DSC 2920 Modulated DSCを用いて、下記の条件にて、窒素下で測定を行い、DSC曲線を記録した。得られたDSC曲線からガラス転移温度(Tg)を算出した。単位は℃である。結果を表1に示す。
変調:熱のみ60秒
周期:±2℃
傾斜:5℃/分
最終温度:300℃
【0074】
【表1】
【0075】
下記実施例においてワニスの調製に用いた材料は以下のとおり。
[酸化防止剤]
酸化防止剤1:アデカスタブAO-50(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル;以下の化学式)、ADEKA社製
【化6】
【0076】
酸化防止剤2:アデカスタブAO-60(ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート];以下の化学式)、ADEKA社製
【化7】
【0077】
酸化防止剤3:アデカスタブAO-412S(2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル=ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオナート];以下の化学式)、ADEKA社製
【化8】
【0078】
酸化防止剤4:アデカスタブPEP-36(3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン;以下の化学式)、ADEKA社製
【化9】
【0079】
[実施例4]
(ワニスの調製)
実施例1で得られたポリマー20質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート80質量部を混合し24時間攪拌を行い完全にポリマーを溶解させた。
得られたポリマー溶液は必要に応じてPTFEメンブレンフィルターMillex-LS(メルクミリポア社製)でろ過し、不溶分を取り除いた。
【0080】
[透明性]
実施例4で得られたポリマー溶液を縦100mm、横100mmサイズのコーニング社製ガラス基板上にスピンコーターを使用して塗布し、100℃、1分間の条件で乾燥し、約3.0μm厚の樹脂膜を得た。この樹脂膜を、波長250nmから600nmまで10nm間隔での光線透過率を紫外可視分光光度計で評価し、得られた透過率を各波長における樹脂膜の透明性とした。測定結果を図2に示す。
【0081】
[実施例5~7、比較例3~4]
(酸化防止剤含有ワニスの調製)
全固形分濃度が15質量%になるように、以下の成分をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解して、感光性樹脂組成物を調製した。
・ポリマー溶液中の固形分(合成された各ポリマー):100質量部
・酸化防止剤(アデカスタブAO-50):3質量部
・光重合開始剤(BASF社製、Irgacure OXE01):5質量部
・密着助剤(信越化学工業株式会社製、KBM-403):1質量部
・界面活性剤(DIC株式会社製、F-556):0.5質量部
得られた感光性樹脂組成物は必要に応じてPTFEメンブレンフィルターMillex-LS(メルクミリポア社製)でろ過し、不溶分を取り除いた。
【0082】
[透明性]
感光性樹脂組成物を縦100mm、横100mmサイズのコーニング社製ガラス基板上にスピンコーターを使用して塗布し、100℃、120秒間の条件で乾燥し、g+h+i線マスクアライナー(キヤノン(株)社製、PLA-501F(超高圧水銀ランプ))を用いてg+h+i線を積算光量が100mJ/cmとなるように全面露光して、約3.0μm厚の樹脂膜を得た。この樹脂膜を大気雰囲気下、160℃、30分間加熱して得られた硬化膜について、波長350nm及び400nmの光線透過率を紫外可視分光光度計で評価し、得られた透過率を各波長における硬化膜の透明性とした。またポストベークの温度をさらに上げた200℃、30分間に関しても、プリベーク後のサンプルを別に調整してサンプルを作製して測定を行った。
【0083】
[製膜性・密着性]
感光性樹脂組成物を、3インチのシリコンウェハ上に回転塗布し、ホットプレートを用いて100℃、120秒の条件でプリベークすることにより樹脂膜を得た。また、プリベークした後に、200℃30分間硬化させた。樹脂膜はそれぞれ厚み(1μm、50μm、100μm)を変えて製膜し、プリベーク後、ポストベーク後の表面を光学顕微鏡で観察し、クラックの有無を確認した。
基板との密着性が低い樹脂膜にはクラックが入ることから、クラックの有無は基材との密着性の指標にもなる。
【0084】
【表2】
【0085】
本発明の実施例で得られたポリマーは、有機溶剤への溶解性に優れ、厚膜が形成可能でありクラックの発生が抑制されていることから製膜性に優れ、部材との密着性に優れていた。さらに、当該ポリマーから得られた硬化膜は、耐熱性および透明性に優れていた。
図1
図2