(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061178
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】飛行体制御装置、飛行体制御方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/10 20060101AFI20230424BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20230424BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20230424BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
G05D1/10
B64C39/02
B64C27/08
B64D47/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171013
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹川 憲二
(72)【発明者】
【氏名】藁科 正彦
(72)【発明者】
【氏名】川端 俊一
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 直孝
(72)【発明者】
【氏名】上田 紘司
(72)【発明者】
【氏名】坂本 直弥
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 健司
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA06
5H301BB05
5H301CC04
5H301CC07
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG10
5H301GG24
5H301GG25
(57)【要約】
【課題】シンプルな構成で高精度な自己位置推定を実現する飛行体制御装置、飛行体制御方法を提供すること。
【解決手段】実施形態の飛行体制御装置は、点群データからなる三次元の3D地図情報を記憶する第1記憶部と、飛行体の全方位を撮影して全方位画像を生成する第1撮影部と、全方位画像と3D地図情報とに基づき飛行体の絶対位置を示す第1推定位置情報を生成する第1自己位置推定部と、飛行体から所定の方向を撮影した移動画像を生成する第2撮影部と、移動画像に基づいて所定の位置を基準とした飛行体の相対位置を示す第2推定位置情報を生成する第2自己位置推定部と、第1推定位置情報および第2推定位置情報の少なくとも一方に基づいて飛行体の推定位置を示す自己推定位置情報を生成する位置監視部と、を具備する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体を制御する飛行体制御装置であって、
点群データからなる三次元の3D地図情報を記憶する第1記憶部と、
前記飛行体の全方位を撮影して全方位画像を生成する第1撮影部と、
前記全方位画像と前記3D地図情報とに基づき前記飛行体の絶対位置を示す第1推定位置情報を生成する第1自己位置推定部と、
前記飛行体から所定の方向を撮影した移動画像を生成する第2撮影部と、
前記移動画像に基づいて所定の位置を基準とした前記飛行体の相対位置を示す第2推定位置情報を生成する第2自己位置推定部と、
前記第1推定位置情報および前記第2推定位置情報の少なくとも一方に基づいて前記飛行体の推定位置を示す自己推定位置情報を生成する位置監視部と、
を具備する飛行体制御装置。
【請求項2】
前記位置監視部は、前記第1推定位置情報および前記第2推定位置情報それぞれの尤度を算出し、いずれか尤度の高い方に基づいて前記自己推定位置情報を生成することを特徴とする請求項1記載の飛行体制御装置。
【請求項3】
点群データからなる二次元の2D地図情報を記憶する第2記憶部と、
前記飛行体の全周方向を撮影して周囲の障害物までの距離情報を生成する距離センサと、
前記距離情報と前記2D地図情報とに基づき前記飛行体周囲の平面方向の位置を示す第3推定位置情報を生成する第3自己位置推定部と、を備え、
前記位置監視部は、さらに前記第3推定位置情報に基づいて前記自己推定位置情報を生成すること
を特徴とする請求項1記載の飛行体制御装置。
【請求項4】
前記位置監視部は、前記第1推定位置情報および前記第2推定位置情報が生成されなかった場合に前記第3自己推定位置情報に基づいて前記自己推定位置情報を生成することを特徴とする請求項3記載の飛行体制御装置。
【請求項5】
飛行体を制御する飛行体制御方法であって、
点群データからなる三次元の3D地図情報を記憶する第1記憶部に記憶させ、
前記飛行体の全方位を撮影して全方位画像を生成し、
前記全方位画像と前記3D地図情報とに基づき前記飛行体の絶対位置を示す第1推定位置情報を生成し、
前記飛行体から所定の方向を撮影した移動画像を生成し、
前記移動画像に基づいて所定の位置を基準とした前記飛行体の相対位置を示す第2推定位置情報を生成し、
前記第1推定位置情報および前記第2推定位置情報の少なくとも一方に基づいて前記飛行体の推定位置を示す自己推定位置情報を生成すること
を特徴とする飛行体制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば飛行体の自律的な飛行を実現する飛行体制御装置、飛行体制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所や変電所などのプラント施設における点検業務は、現状、人が巡回することによる巡視によって行われている。一方、少子高齢化により点検員の高齢化やそれによる人手不足といった課題が顕在化している。こうした課題を解決するため、ロボットなどを用いた無人点検などが要望されている。
【0003】
高所や多層階の点検が必要なプラント施設では、今後、ドローンなどの飛行体を用いた点検が実現していくことが想定される。ドローンの飛行制御としては、複数のセンサを用いて自律巡視により参照する環境マップを作成する方法が提案されている。この方法では、環境マップの作成のために多くのマップを合成するため、多くのデータ処理が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態に係る飛行体制御装置、飛行体制御方法は、シンプルな構成で高精度な自己位置推定を実現する飛行体制御装置、飛行体制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の飛行体制御装置は、点群データからなる三次元の3D地図情報を記憶する第1記憶部と、飛行体の全方位を撮影して全方位画像を生成する第1撮影部と、全方位画像と3D地図情報とに基づき飛行体の絶対位置を示す第1推定位置情報を生成する第1自己位置推定部と、飛行体から所定の方向を撮影した移動画像を生成する第2撮影部と、移動画像に基づいて所定の位置を基準とした飛行体の相対位置を示す第2推定位置情報を生成する第2自己位置推定部と、第1推定位置情報および第2推定位置情報の少なくとも一方に基づいて飛行体の推定位置を示す自己推定位置情報を生成する位置監視部と、を具備する。
【0007】
実施形態の飛行体制御方法は、点群データからなる三次元の3D地図情報を記憶する第1記憶部に記憶させ、飛行体の全方位を撮影して全方位画像を生成し、全方位画像と3D地図情報とに基づき飛行体の絶対位置を示す第1推定位置情報を生成し、飛行体から所定の方向を撮影した移動画像を生成し、移動画像に基づいて所定の位置を基準とした飛行体の相対位置を示す第2推定位置情報を生成し、第1推定位置情報および第2推定位置情報の少なくとも一方に基づいて飛行体の推定位置を示す自己推定位置情報を生成すること、
を特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る飛行体の様子を示す概念図である。
【
図2】第1の実施形態に係る飛行体制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る飛行体の動作パターンの一例を示す遷移図である。
【
図4】第1の実施形態に係る飛行体制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】第2の実施形態に係る飛行体制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】第2の実施形態に係る飛行体の動作パターンの一例を示す遷移図である。
【
図7】第2の実施形態に係る飛行体制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態の構成)
以下、
図1および
図2を参照して、第1の実施形態に係る飛行体FVの構成を説明する。
図1に示すように、実施形態の飛行体FVは、いわゆるドローンのように自律的な飛行制御が可能に構成される。飛行体FVは、その自律飛行を実現する飛行体制御装置1、光学センサとしての第1撮影部10および第2撮影部20、モータ70、およびモータ70により駆動されるプロペラPを備えている。
【0010】
実施形態の飛行体FVは、プラント施設が存在する領域やプラント施設の建屋内などでの飛行を可能にするため、光学センサとしての撮影部を複数備えている。飛行体制御装置1は、第1撮影部10および第2撮影部20により取得した画像情報に基づいて、飛行体FVの自己位置を推定し、自律的な三次元飛行を実現する。
【0011】
第1撮影部10は、飛行体FVの周囲の全方位を撮影する。第1撮影部10は、例えば360度カメラのように飛行体FVの全方位の画像情報を取得可能なカメラである。第1撮影部10は、全方位を撮影可能な複数のカメラにより実現してもよい。第2撮影部20は、例えばステレオカメラのように飛行体FVから特定の方向について立体画像情報を取得可能なカメラである。
【0012】
モータ70は、飛行体制御装置1からの制御信号により駆動される。モータ70は、プロペラPと接続される。飛行体FVは、モータ70およびプロペアPの組み合わせを少なくとも2組以上有している。
【0013】
また、
図2に示すように、実施形態の飛行体制御装置1は、第1撮影部10、第2撮影部20、およびモータ70が接続されている。飛行体制御装置1は、第1自己位置推定部15、第2自己位置推定部25、位置監視部30、記憶部40、飛行制御部50、機構制御部60、および送受信部80を有している。
【0014】
実施形態の飛行体制御装置1は、三次元の3D地図情報を格納する記憶部40を備えている。3D地図情報は、飛行体FVを飛行させる領域について点群データを用いて障害物や地形を三次元で表したものである。点群データからなる3D地図情報を用いることにより、データサイズを抑えつつ、周囲の地形や構造物を立体的に表すことができる。
【0015】
3D地図情報は、例えば飛行体FVを実際に飛行させ第1撮影部10により取得した全方位の画像情報から地形や構造物などの特徴点を抽出し、点群データに変換することで生成される。3D地図情報における点群データは、一つ一つの点に立体的な位置情報が対応付けられており、立体地図として利用することが可能である。3D地図情報は、第1撮影部10に点群データ変換機能を持たせて変換した点群データを記憶部40に記憶させてもよいし、別の飛行体により取得した点群データを記憶部40に記憶させてもよい。
【0016】
3D地図情報の生成は、第1撮影部10などにより実際に撮影した全方位の画像情報に基づくものに限定されない。地形図や精密図面データなどに基づいて点群データを生成してもよい。点群データを生成するための全方位の画像情報は、第1撮影部10における360度カメラにより取得してもよいし、複数のカメラを用いてそれぞれのカメラが取得した画像情報を合成して生成してもよい。
【0017】
記憶部40は、飛行体FVが自律飛行する場合の飛行経路などの経路情報を記憶してもよい。経路情報は、例えば飛行経路、滞空時間、飛行時間など自律飛行するために必要なパラメータが含まれる。
【0018】
第1自己位置推定部15は、記憶部40に記憶した3D地図情報と、飛行体FVが動作中に第1撮影部10が取得した全方位の画像情報とに基づいて、飛行体FVの位置の推定を行う演算ブロックである。第1自己位置推定部15は、第1撮影部10が取得した画像情報に基づいて、点群データからなる全方位情報を生成する。全方位情報は、飛行体FVから全方位を撮影した画像情報である。
【0019】
第1自己位置推定部15は、生成した全方位情報と、記憶部40に記憶した3D地図情報とを対比することで、3D地図情報が示す領域における飛行体FVの位置(第1推定位置)を算出する。第1推定位置は、あらかじめ生成した3D地図情報と、実際に飛行体FVの第1撮影部10が取得した画像情報に基づく全方位情報との対比により演算した位置情報である。なお、全方位情報の生成は、第1自己位置推定部15ではなく第1撮影部10が行ってもよい。この場合、第1自己位置推定部15は、第1撮影部10から受け取った全方位情報と記憶部40に記憶した3D地図情報とを対比する。
【0020】
第2自己位置推定部25は、飛行体FVが動作中に第2撮影部20が取得した画像情報に基づいて飛行体FVの位置の推定を行う演算ブロックである。第2自己位置推定部25は、第2撮影部20が取得した画像情報に基づいて飛行体FVの移動軌跡を生成する。移動軌跡は、飛行体FVの動作開始位置からの相対的な位置情報となる。すなわち、飛行体FVの動作前に出発点の位置情報などを基準点として第2自己位置推定部25に与えておき、第2撮影部20が取得した画像情報に基づいて算出した飛行体FVの相対位置を用いて飛行体FVの位置(第2推定位置)を算出する。第2推定位置は、出発点の位置情報と、実際に飛行体FVの第2撮影部20が取得した画像情報に基づく相対位置とに基づいて演算された位置情報である。第2自己位置推定部25による第2推定位置の算出は、第1自己位置推定部15による第1推定位置の算出よりも高速処理が可能である。
【0021】
位置監視部30は、第1自己位置推定部15が生成する第1推定位置および第2自己位置推定部25が生成する第2推定位置を監視し、第1推定位置および第2推定位置のいずれか一以上に基づいて飛行体FVの位置(自己推定位置)を決定する演算ブロックである。位置監視部30による自己推定位置の決定手法としては、例えば、第1推定位置および第2推定位置それぞれの尤度を算出し、その尤度が大きい推定位置を自己推定位置として決定する方法が考えられる。あるいは、第1推定位置および第2推定位置が、第1自己位置推定部15および第2自己位置推定部25それぞれから正常に出力されたか否か(例えば出力データの有無)を判定し、正常に出力された推定位置を自己推定位置として選択してもよい。
【0022】
第1推定位置および第2推定位置は、いずれも第1撮影部10や第2撮影部20が取得した画像情報を処理した演算結果から求めているため、飛行体FVが飛行する際の外乱要因によって自己推定位置を失う可能性がある。そこで、実施形態の飛行体制御装置1は、第1撮影部10が取得した画像情報に由来する第1推定位置と第2撮影部20が取得した画像情報に由来する第2推定位置を組み合わせて最終的な自己推定位置を生成することで、確実な自己位置推定を可能にしている。すなわち、第1推定位置は3D地図情報に基づく絶対位置であり、第2推定位置は基準点からの相対位置である。実施形態の飛行体制御装置1は、複数の異なる手法による推定位置を生成するので、外乱要因の事故を減らすことができる。
【0023】
飛行制御部50は、位置監視部30が決定した自己推定位置に基づいて、飛行体FVの自律的制御を行う演算ブロックである。飛行制御部50は、記憶部40から経路情報を読み出し、自己推定位置を用いて経路情報に従った飛行制御を行う。飛行制御は、飛行体FVの飛行方向や高度などの制御であり、例えばモータ70の回転数を制御して実現する。機構制御部60は、例えばモータ70のように飛行体FVの飛行を実現する機構部分を制御する機構部品である。飛行体FVがいわゆるドローンのようなプロペラPだけの制御で飛行する場合、機構制御部60は、飛行制御部50からの制御によりモータ70の駆動電圧を生成し供給する。飛行体FVが翼をもつものであれば、機構制御部60は、アクチュエータやサーボモータのような機構部品を含んでもよい。
【0024】
送受信部80は、図示しない子機と通信する無線インタフェースである。実施形態の飛行体制御装置1が自律飛行ではなく手動による飛行制御を行う場合、送受信部80は、制御信号を受信して直接機構制御部60に指令を送る。機構制御部60は、送受信部80から送られる制御信号に基づいてモータ70などを駆動制御する。すなわち、実施形態の飛行体FVは、自律飛行制御だけでなく無線による手動飛行制御も可能に構成される。
【0025】
(第1の実施形態の飛行体FVの動作)
図3および
図4を参照して、第1の実施形態に係る飛行体FVの動作を説明する。
図3に示すように、飛行体FVは「待機」、「離陸」、「自動巡回」または「遠隔制御」、「着陸」の4つの状態が存在する。待機状態において、ユーザは3D地図情報や経路情報、起点情報などの記憶部40への記録などを行う。飛行制御部50は、記憶部40に記憶された経路情報に基づいて離陸動作を行う。
【0026】
離陸動作が正常かつ自律飛行モードの場合(正常:a)、第1撮影部10は、飛行体FVの全方位の画像情報を取得し、第1自己位置推定部15は全方位の画像情報に基づいて第1推定位置を生成する。一方、第2撮影部20は、飛行体FVの特定方向(例えば前方)の立体画像情報を生成し、第2自己位置推定部25は立体画像情報に基づいて第2推定位置を生成する。位置監視部30は、第1推定位置および第2推定位置に基づいて自己推定位置を生成する。
【0027】
図4は、位置監視部30による位置推定動作の一例を示している。位置監視部30が第1推定位置を受信できず(S100のYes)、かつ第2推定位置をも受信できない場合(S110のYes)、自己推定位置の生成ができない(S120)。そのため、飛行制御部50は、自動巡回ではなく手動による遠隔制御により飛行体FVを制御する(
図3の正常:t)。送受信部80が制御信号を受信できない場合、飛行制御部50は遠隔制御を中断し処理を終了する。
【0028】
位置監視部30が第1推定位置を受信できず(S100のYes)、第2推定位置を受信できた場合(S110のNo)、位置監視部30は、第2推定位置に基づいて自己推定位置を生成する(S130)。飛行制御部50は、自己推定位置に基づく自動巡回が可能なので、経路情報と自己推定位置に基づいて自律飛行を継続する。
【0029】
位置監視部30が第1推定位置を受信し(S100のNo)、第2推定位置を受信できない場合(S140のYes)、位置監視部30は、第1推定位置に基づいて自己推定位置を生成する(S150)。飛行制御部50は、自己推定位置に基づく自動巡回が可能なので、経路情報と自己推定位置に基づいて自律飛行を継続する。
【0030】
位置監視部30が第1推定位置を受信し(S100のNo)、第2推定位置も受信した場合(S140のNo)、位置監視部30は、第1推定位置および第2推定位置に基づいて自己推定位置を生成する(S160)。飛行制御部50は、自己推定位置に基づく自動巡回が可能なので、経路情報と自己推定位置に基づいて自律飛行を継続する。
【0031】
飛行制御部50は、経路情報に基づき所定の経由点を巡回した後、着陸地に着陸する。
【0032】
実施形態に係る飛行体制御装置によれば、複数の手段、例えば飛行体の絶対位置を取得する手段と飛行体の相対位置を取得する手段とを組み合わせて自己の位置推定を行うので、飛行体の自己位置が不定状態に陥る可能性を大きく減らす事ができる。また、実施形態に係る飛行体制御装置によれば、光学的な画像情報に基づいて自己の位置推定を行うので、例えばGNSSなどの電波を使うことができない建屋内などにおいても飛行体の自律制御を実現することができる。
【0033】
(第2の実施形態の構成)
以下、
図1および
図5を参照して、第2の実施形態に係る飛行体FVaの構成を説明する。
図5に示すように、この実施形態の飛行体FVaにおける飛行体制御装置2は、第1の実施形態に係る飛行体FVの構成に距離センサ90および第3自己位置推定部95を備えたものである。以下の説明において、共通する要素について共通の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0034】
距離センサ90は、例えば2次元レーザセンサや超音波センサのように周囲の障害物までの距離を計測して平面方向の領域の距離情報を取得可能なセンサである。第1撮影部10や第2撮影部20は光学的な画像情報を取得する一方、距離センサ90は距離情報を取得する。距離センサ90は平面方向(
図1におけるx-y平面)の情報しか得られないが、第1撮影部10や第2撮影部20よりも高い処理速度を得ることができる。
【0035】
この実施形態では、記憶部40は、3D地図情報および経路情報に加えて、2D地図情報をも格納している。2D地図情報は、飛行体FVを飛行させる領域について点群データを用いて障害物や地形を二次元で表したものである。2D地図情報は、飛行体FVを実際に飛行させ距離センサ90により取得した平面方向の全周囲の距離情報から点群データに変換することで生成される。
【0036】
第3自己位置推定部95は、記憶部40に記憶した2D地図情報と、飛行体FVが動作中に距離センサ90が取得した平面方向の距離情報とに基づいて、飛行体FVの平面方向の位置の推定を行う演算ブロックである。第3自己位置推定部95は、距離センサ90により取得した平面方向の全周囲の距離情報と、記憶部40に記憶した2D地図情報とを対比することで、2D地図情報が示す領域における飛行体FVの平面方向の位置(第3推定位置)を算出する。第3推定位置は、あらかじめ生成した2D地図情報と、実際に飛行体FVの距離センサ90が取得した距離情報に基づく平面方向の全周囲距離情報との対比により演算した位置情報である。
【0037】
距離センサ90が取得した距離情報に基づいて算出した第3推定位置は平面方向(x-y方向)の情報であるから、第1推定位置および第2推定位置の補間情報に留まってしまう。そこで、第3自己位置推定部95は、第1推定位置や第2推定位置のz方向のパラメータをさらに用いて第3推定位置を算出してもよい。これにより、第3推定位置は、第1推定位置および第2推定位置と併せ三次元の自己位置の推定情報として用いることが可能になる。
【0038】
(第2の実施形態の飛行体FVaの動作)
図6および
図7を参照して、第2の実施形態に係る飛行体FVaの動作を説明する。
図6に示すように、飛行体FVaは「待機」、「離陸」、「自動巡回」または「自動巡回(LiDAR)」または「遠隔制御」、「着陸」の4つの状態が存在する。待機状態において、ユーザは3D地図情報や経路情報、起点情報などの記憶部40への記録などを行う。飛行制御部50は、記憶部40に記憶された経路情報に基づいて離陸動作を行う。
【0039】
離陸動作が正常かつ自律飛行モードの場合(正常:a)、第1撮影部10は、飛行体FVaの全方位の画像情報を取得し、第1自己位置推定部15は第1推定位置を生成する。一方、第2撮影部20は、飛行体FVaの特定方向(例えば前方)の立体画像情報を生成し、第2自己位置推定部25は第2推定位置を生成する。位置監視部30は、第1推定位置および第2推定位置に基づいて自己推定位置を生成する。さらに、距離センサ90は、飛行体FVaの平面方向の全周囲の距離情報を取得し、第3自己位置推定部95は第3推定位置を生成する。
【0040】
図7は、位置監視部30による位置推定動作の一例を示している。位置監視部30が第1推定位置を受信できず(S200のYes)、かつ第2推定位置をも受信できない場合(S210のYes)、位置監視部30は、第3推定位置に基づいて自己推定位置を生成する(S220)。飛行制御部50は、自己推定位置に基づく自動巡回が可能なので、経路情報と自己推定位置に基づいて自律飛行を継続する。
【0041】
位置監視部30が第1推定位置を受信できず(S200のYes)、第2推定位置を受信できた場合(S210のNo)、位置監視部30は、第2推定位置に基づいて自己推定位置を生成する(S230)。飛行制御部50は、自己推定位置に基づく自動巡回が可能なので、経路情報と自己推定位置に基づいて自律飛行を継続する。
【0042】
位置監視部30が第1推定位置を受信し(S200のNo)、第2推定位置を受信できない場合(S240のYes)、位置監視部30は、第1推定位置に基づいて自己推定位置を生成する(S250)。飛行制御部50は、自己推定位置に基づく自動巡回が可能なので、経路情報と自己推定位置に基づいて自律飛行を継続する。
【0043】
位置監視部30が第1推定位置を受信し(S200のNo)、第2推定位置も受信した場合(S240のNo)、位置監視部30は、第1推定位置および第2推定位置に基づいて自己推定位置を生成する(S260)。飛行制御部50は、自己推定位置に基づく自動巡回が可能なので、経路情報と自己推定位置に基づいて自律飛行を継続する。
【0044】
飛行制御部50は、経路情報に基づき所定の経由点を巡回した後、着陸地に着陸する。この実施形態の飛行体制御装置2によれば、第1撮影部10および第2撮影部20それぞれの推定位置算出の成否に応じて、第1推定位置および/または第2推定位置に基づく「自動巡回」、および第3推定位置に基づく「自動巡回(LiDAR)」のシーケンスにより自動巡回が可能になる。これにより、第1推定位置および第2推定位置を用いる通常時には処理負荷を減らし、光学系の第1推定位置および第2推定位置が得られない状況でも制御不能に陥る可能性の低い自律飛行制御が可能となる。
【0045】
この実施形態では、第1推定位置および第2推定位置による位置推定に障害が生じた場合、その障害が復旧するまで第3推定位置による自律制御が可能になる。なお、距離センサ90は、周囲の構造物との距離を測定することができるから、第1推定位置および第2推定位置による位置推定に障害が生じた場合に、飛行制御部50は、障害から復旧するまで、第3推定位置を使わずに周囲の構造物や障害物から一定の距離を保った位置の飛行を実行させてもよい。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが,これらの実施形態は,例として提示したものであり,発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は,その他の様々な形態で実施されることが可能であり,発明の要旨を逸脱しない範囲で,種々の省略,置き換え,変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は,発明の範囲や要旨に含まれるとともに,特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
FV…飛行体、
1…飛行体制御装置、
10…第1撮影部、15…第1自己位置推定部、
20…第2撮影部、25…第2自己位置推定部、
30…位置監視部、
40…記憶部、
50…飛行制御部、
60…機構制御部、
70…モータ、
80…送受信部。