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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061623
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】無段変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 15/20 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
F16H15/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171662
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲 大輔
【テーマコード(参考)】
3J051
【Fターム(参考)】
3J051AA03
3J051BA07
3J051BB01
3J051BC02
3J051BD02
3J051BE05
3J051CB05
3J051EA06
3J051EB03
3J051EC01
(57)【要約】
【課題】、遊星コーンを支持する軸受の耐久性が低下することを防止でき、動力伝達効率が低下することを防止できる無段変速機を提供すること。
【解決手段】無段変速機1において、遊星コーン5の円錐面14d、15dとサンローラ2Aとの接触位置P1と、遊星コーン5の円錐面14d、15dとリングローラ6との接触位置P2とが、入力軸2の軸方向の同位置にある。また、遊星コーン5の円錐面14dにおけるサンローラ2Aとの接触位置P1、および遊星コーン5の円錐面15dにおけるリングローラ6との接触位置P2は、それぞれ入力軸2と略平行に延びている。また、遊星コーン5は、サンローラ2Aが接触する入力側遊星コーン14と、入力側遊星コーン14と別体に設けられ、リングローラ6が接触する出力側遊星コーン15と、入力側遊星コーン14の底面14bと出力側遊星コーン15の底面15bとの間に圧縮状態で設けられた弾性部材5Aと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力源から回転動力が入力される入力軸に取付けられた入力部材と、
前記入力部材から入力された回転動力を出力軸に伝達する出力部材と、
前記入力部材と前記出力部材とが接触する円錐面を有し、円錐台形状に形成された遊星コーンと、
前記遊星コーンを回転自在でかつ、軸線方向に移動自在に支持する支持軸と、
前記遊星コーンの円錐面における前記入力部材の接触位置、および前記遊星コーンの円錐面における前記出力部材の接触位置を変更する移動機構と、を備える前記入力軸の回転動力を前記遊星コーンを介して前記出力軸に無段階で変速する無段変速機であって、
前記遊星コーンの円錐面と前記入力部材との接触位置と、前記遊星コーンの円錐面と前記出力部材との接触位置とが、前記入力軸の軸方向の同位置にあることを特徴とする無段変速機。
【請求項2】
前記遊星コーンの円錐面における前記入力部材との接触位置、および、前記遊星コーンの円錐面における前記出力部材との接触位置は、それぞれ前記入力軸と略平行に延びていることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機。
【請求項3】
前記遊星コーンは、
前記入力部材が接触する入力側遊星コーンと、
前記入力側遊星コーンと別体に設けられ、前記出力部材が接触する出力側遊星コーンと、
前記入力側遊星コーンの底面と前記出力側遊星コーンの底面との間に圧縮状態で設けられた弾性部材と、を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無段変速機。
【請求項4】
前記遊星コーンは、前記入力側遊星コーンの底面と前記出力側遊星コーンの底面とを連結して前記入力側遊星コーンから前記出力側遊星コーンに動力を伝達するボールカム機構を有し、
前記ボールカム機構は、
前記入力側遊星コーンの底面に形成された入力側カム溝と、
前記出力側遊星コーンの底面に形成された出力側カム溝と、
前記入力側カム溝と前記出力側カム溝に収容された球体とを有し、
前記入力側カム溝と前記出力側カム溝は、前記支持軸の軸心を中心とする円周方向に沿って延びており、
前記入力側カム溝と前記出力側カム溝は、円周方向の端部ほど浅く形成されていることを特徴とする請求項3に記載の無段変速機。
【請求項5】
変速機ケースに嵌合される外輪と、該外輪に転動体を介して連結され、前記出力軸の外周面に嵌合される内輪とを有するボールベアリングと、
前記出力軸の内周面に嵌合される外輪と、該外輪にローラ状の転動体を介して連結され、前記入力軸の外周面に嵌合される内輪とを有するテーパローラベアリングと、
前記ボールベアリングと前記変速機ケースとの間に圧縮状態で設けられ、前記テーパローラベアリングに予圧を付与するように、前記ボールベアリングを前記入力軸の軸方向に付勢する予圧付与部材と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の無段変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源の動力を無段階で変速する無段変速機として、特許文献1に記載されるものが知られている。特許文献1に記載される無段変速機は、入力軸の中心軸線上に中心を有するとともに中心軸線の方向に可動に設けられた変速リングと、中心軸線上に頂点をもつ仮想円錐面内に等間隔に配列され入力ローラに外接しかつ出力リングに内接する第1円錐部及び変速リングに内接する第2円錐部を有する複数の遊星ローラと、複数の遊星ローラを各々の回転軸線回りに自転可能にかつ中心軸線回りに公転可能に保持する可動ホルダと、中心軸線の方向にスラスト荷重を発生するローディングカム機構とを備えており、変速リングの位置を制御することにより、連続的な無段階の変速を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6071309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、遊星ローラを用いる無段変速機にあっては、滑りを生じることなく伝達できるトルクが大きいことが望ましい。伝達可能なトルクを大きくするためには、遊星ローラへの入力ローラおよび出力リングの接触部位の接触圧力を大きくして、各接触部位の法線力を大きくすることが考えられる。一方で、接触圧力を大きくすると、摩擦抵抗の増加等によって動力伝達効率が低下したり、遊星ローラ等を支持する軸受に作用する荷重が大きくなることにより耐久性が低下したりするおそれがある。
【0005】
さらに、特許文献1に記載の無段変速機にあっては、遊星ローラへの入力ローラおよび出力ローラの接触圧力の一部が、遊星ローラの姿勢を変化させるように作用してしまうため、伝達トルクを大きくするために接触圧力を大きくした場合に、遊星コーンの軸受の耐久性が低下したり、動力伝達効率が低下したりするおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、遊星コーンを支持する軸受の耐久性が低下することを防止でき、動力伝達効率が低下することを防止できる無段変速機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は、駆動力源から回転動力が入力される入力軸に取付けられた入力部材と、前記入力部材から入力された回転動力を出力軸に伝達する出力部材と、前記入力部材と前記出力部材とが接触する円錐面を有し、円錐台形状に形成された遊星コーンと、前記遊星コーンを回転自在でかつ、軸線方向に移動自在に支持する支持軸と、前記遊星コーンの円錐面における前記入力部材の接触位置、および前記遊星コーンの円錐面における前記出力部材の接触位置を変更する移動機構と、を備える前記入力軸の回転動力を前記遊星コーンを介して前記出力軸に無段階で変速する無段変速機であって、前記遊星コーンの円錐面と前記入力部材との接触位置と、前記遊星コーンの円錐面と前記出力部材との接触位置とが、前記入力軸の軸方向の同位置にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明によれば、遊星コーンを支持する軸受の耐久性が低下することを防止でき、動力伝達効率が低下することを防止できる無段変速機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施例に係る無段変速機の高速時における入力軸の回転中心軸と支持軸の軸心での断面図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る無段変速機における入力軸の回転中心軸とシフトドラム保持部材に沿った断面図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係る無段変速機の低速時における入力軸の回転中心軸と支持軸の軸心での断面図である。
図4図4は、本発明の一実施例に係る無段変速機の遊星コーンのスキュー時の接触面の変位を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る無段変速機は、駆動力源から回転動力が入力される入力軸に取付けられた入力部材と、入力部材から入力された回転動力を出力軸に伝達する出力部材と、入力部材と出力部材とが接触する円錐面を有し、円錐台形状に形成された遊星コーンと、遊星コーンを回転自在でかつ、軸線方向に移動自在に支持する支持軸と、遊星コーンの円錐面における入力部材の接触位置、および遊星コーンの円錐面における出力部材の接触位置を変更する移動機構と、を備える入力軸の回転動力を遊星コーンを介して出力軸に無段階で変速する無段変速機であって、遊星コーンの円錐面と入力部材との接触位置と、遊星コーンの円錐面と出力部材との接触位置とが、入力軸の軸方向の同位置にあることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る無段変速機は、遊星コーンを支持する軸受の耐久性が低下することを防止でき、動力伝達効率が低下することを防止できる。
【実施例0011】
以下、本発明の一実施例に係る無段変速機について、図面を用いて説明する。
【0012】
図1から図4は、本発明の一実施例に係る無段変速機を示す図である。なお、説明で使用する方向(上下左右)は説明の便宜上用いる方向である。図1から図3の断面図は、本発明の一実施例に係る無段変速機の上側の断面図であり、説明で使用する上下方向はこの図面に従う。つまり、図示されていない下側に関しては、上下の配置関係が逆となる。入力軸の回転中心軸を基準に言い換えると、入力軸の回転中心軸から径方向に離れる方向を上方として説明し、逆に、入力軸の回転中心軸に近づく方向を下方として説明する。左右方向も図面に従う。つまり、駆動力源が接続される入力軸2が配置される側を右側とし、この方向は入力側、入力軸側とも称する。逆に、駆動輪が接続される出力軸3が配置される側を左側とし、この方向は出力側、出力軸側とも称する。図4は、上方から見た遊星コーン5を説明する図であり、この図における前後方向は図面の座標指示に従うものとする。
【0013】
まず、構成を説明する。図1において、無段変速機1は、車両に搭載されており、内燃機関やモータ等の駆動力源10の回転動力を無段階に変速して図示しない駆動輪に伝達する。
【0014】
無段変速機1は、変速機ケース41と、駆動力源10から回転動力が入力される入力軸2と、この入力軸2に取付けられた入力部材としてのサンローラ2Aと、サンローラ2Aから入力された回転動力を出力軸3に伝達する出力部材としてのリングローラ6と、出力軸3とを備えている。
【0015】
また、無段変速機1は、キャリア4と、サンローラ2Aとリングローラ6とが接触する円錐面14d、15dを有し、円錐台形状に形成された複数の遊星コーン5と、遊星コーン5を回転自在でかつ、軸線方向に移動自在に支持する支持軸16と、を備えている。
【0016】
また、無段変速機1は移動機構30を備えており、移動機構30は、遊星コーン5を入力軸2の軸方向に沿って移動させ、遊星コーン5の円錐面14dにおけるサンローラ2Aの接触位置P1、および遊星コーン5の円錐面15dにおけるリングローラ6の接触位置P2を変更する。この変更により、無段変速機1は、入力軸2の回転動力を遊星コーン5を介して無段階で変速して出力軸3に出力する。
【0017】
変速機ケース41は、ライトケース42と、このライトケース42の左端部にボルト41Aにより連結されたレフトケース43とから構成されている。変速機ケース41の内部には、無段変速機1を構成する後述する各部材およびトラクションオイルが収容されている。
【0018】
入力軸2は、左右方向に延びており、入力軸2の右端には駆動力源10が連結されている。入力軸2の長手方向の中央部には径方向に突出する環状の拡径部2aが形成されており、この拡径部2aの外周にはサンローラ2Aがボルト2bにより取り付けられている。サンローラ2Aは、入力軸2と同軸の円環状の形状を有し、入力軸2から突出するように大径に形成されている。
【0019】
なお、左右方向に延びる入力軸2に沿う軸線2rは入力軸2の回転中心軸であり、入力軸2は軸線2rを中心に回動する。軸線2rの方向を軸線方向という。
【0020】
出力軸3は、入力軸2の軸線2rと同軸に設けられている。詳しくは、出力軸3は、入力軸2の左端部側に同軸で配置されている。出力軸3は、レフトケース43から突出する筒状の軸部3Aと、軸部3Aの右端から径方向の外方に広がる円盤状の拡径部3Bと、拡径部3Bの外周端から右方に延びる筒状で入力軸2の左端部が挿入される大径の大径部3Cと、大径部3Cの右端から径方向の外方に広がる円盤状の拡径部3Dとを備えている。軸部3A、拡径部3B、3Dおよび大径部3Cは、1つの部材から構成されている。
【0021】
出力軸3は、さらに筒状のアウトプットドラム3Eを有している。アウトプットドラム3Eは、入力軸2と同軸上に配置されており、拡径部3Dの径方向の外周縁から右方に延び、右方に行くほど入力軸2から径方向に離れる方向に拡径している。アウトプットドラム3Eの右端となる大径側端部にはリングローラ6がボルト6aにより取付けられている。リングローラ6は、入力軸2と同軸の円環状の形状を有し、アウトプットドラム3Eの右端の大径側端部よりも内径側に突出するように小径であって遊星コーン5の円錐面15dとの当接箇所が形成されている。
【0022】
アウトプットドラム3Eは、軸部3A、拡径部3B、3Dおよび大径部3Cとは別部材で構成されている。アウトプットドラム3Eの左端となる小径側端部が拡径部3Dに連結されて一体化されている。すなわち、出力軸3は、各構成部材のうちアウトプットドラム3Eが他の部材と別体で構成された、接合構造となっている。これにより、出力軸3の製造作業の作業性を向上でき、出力軸3の生産性を向上できる。
【0023】
出力軸3の軸部3Aには図示しないファイナルドライブギヤが取付けられており、ファイナルドライブギヤは、図示しないディファレンシャル装置のファイナルドリブンギヤに噛み合っている。ディファレンシャル装置は、図示しない左右のドライブ軸を介して左右の駆動輪に接続されている。ディファレンシャル装置は、出力軸3から伝達される駆動力源10の回転動力を左右のドライブ軸に分配し、左右の駆動輪に伝達する。
【0024】
キャリア4は、入力軸2の周りに配置されている。キャリア4は、複数の遊星コーン5を回転(自転)可能に軸支する支持軸16の入力軸2側の端部16A(右端部)を保持している。つまり、入力軸2はキャリア4を貫通する様に配置され、複数の遊星コーン5は入力軸2を取り囲む様に配置されている。
【0025】
キャリア4は、支持軸16を自動調心軸受17を介して保持している。自動調心軸受17は、外輪17aと、球体17bと、球体17bを介して外輪17aに回転自在に連結される内輪17cとを有する。自動調心軸受17は、球体17bを用いた自動調心ボールベアリングからなる。自動調心軸受17は、その内輪17cに取付けられた支持軸16の入力軸2側の端部16A(右端部)を揺動自在に支持している。自動調心軸受17は、支持軸16の軸心16rの方向に変位しないように支持軸16を支持している。自動調心軸受17は第2支持部47を構成する。
【0026】
図2において、キャリア4の内周面には、ボールスプライン4cを介して後述するシフトフランジ32が接している。ボールスプライン4cは、キャリア4とシフトフランジ32との入力軸2の周りの相対回転を規制し、入力軸2の軸方向の相対移動を許容している。シフトフランジ32はキャリア4を貫通する様に配置され、シフトフランジ32には入力軸2が貫通する様に配置されている。つまり、シフトフランジ32は、キャリア4の内径側で入力軸2を取り囲む様に配置されている。
【0027】
キャリア4は、入力軸2の軸方向でサンローラ2Aよりも入力軸2側(右側)に配置されている。キャリア4には、外周に入力軸2の軸方向に延びて外径側(外側)に開放するガイド溝40が形成されている。そして、ガイド溝40の内部空間には、変速機ケース41に固定されたガイドフォロア45が配置され、ガイドフォロア45がガイド溝40に当接している。ガイドフォロア45は、入力軸2に対して略垂直な方向に沿って外部から挿通されるボルト44によって変速機ケース41に固定されている。ガイドフォロア45とガイド溝40は、キャリア4が変速機ケース41に対して回転することを規制し、かつ、キャリア4が入力軸2の軸方向へ移動することを許容および案内する。ガイドフォロア45は、玉軸受と同様に構成されており、玉軸受の外輪に相当しガイド溝40に当接する接触部45Aを有している。そして、接触部45Aが回転することで、ガイドフォロア45とガイド溝40との接触部の摩擦抵抗が低減することにより、キャリア4はガイド溝40の延びる方向に容易に移動することができる。
【0028】
このように、ガイド溝40内に当接するガイドフォロア45によってキャリア4の入力軸2の周りの回転が規制されているため、キャリア4とボールスプライン4cを介して接続されているシフトフランジ32も、変速機ケース41に対して回転することが規制される。また、キャリア4は、ガイド溝40およびボールスプライン4cによって入力軸2の軸方向への移動が許容および案内される。なお、ボルト44に形成された雄ねじとガイドフォロア45に形成された雌ねじとの螺合により、ガイド溝40の内部空間に配置されたガイドフォロア45が変速機ケース41に固定されている。つまり、ボルト44およびガイドフォロア45は、互いに螺合して変速機ケース41を挟み込むことにより変速機ケース41に固定されている。また、ボルト44が挿通される変速機ケース41の孔の直径はボルト44の直径よりも大きく形成されており、変速機ケース41とボルト44との間に隙間が設けられているので、その隙間の範囲内で、変速機ケース41に対するボルト44およびガイドフォロア45の位置を微調整することができる。つまり、キャリア4のガイド溝40の位置に合わせて、ガイドフォロア45の位置を微調整することができる。
【0029】
なお、シフトフランジ32の外周面の左端部には、径方向の外方に突出する規制部32Aが形成されている。また、シフトフランジ32の外周面の右端部には、径方向の外方に突出するサークリップ32Bが装着されている。シフトフランジ32に対する入力軸2の軸方向へのキャリア4の相対移動量が大きくなると、規制部32Aおよびサークリップ32Bがキャリア4に接触し、それ以上のキャリア4の相対移動が制限される。つまり、シフトフランジ32には、キャリア4の移動範囲を制限する規制部32Aやサークリップ32Bがボールスプライン4cの軸方向の両側に配置されている。
【0030】
図1において、遊星コーン5は、支持軸16を介してキャリア4およびシフトドラム34に支持されている。キャリア4は、遊星コーン5に対して入力軸2の軸方向でサンローラ2Aよりも入力軸2側に配置されている。シフトドラム34は、遊星コーン5に対して入力軸2の軸方向でサンローラ2Aよりも出力軸3側に配置されている。シフトドラム34の内周側にはニードルベアリング63が保持されおり、ニードルベアリング63は、入力軸2を回転自在に支持している。つまり、シフトドラム34には入力軸2が貫通配置されており、シフトドラム34はニードルベアリング63を介して相対回転自在に入力軸2にて支持されている。
【0031】
遊星コーン5は、サンローラ2Aが接触する円錐台形状の入力側遊星コーン14と、入力側遊星コーン14と別体に設けられ、リングローラ6が接触する円錐台形状の出力側遊星コーン15と、を有する。入力側遊星コーン14および出力側遊星コーン15は、双方の底面14b、15bが向き合う姿勢で、支持軸16に対して相対回転自在に支持軸16によって支持されている。つまり、入力側遊星コーン14および出力側遊星コーン15は、底面14b、15bが対向するように逆向きに支持軸16に回転自在に取付けられている。入力側遊星コーン14および出力側遊星コーン15は、支持軸16の端部の自動調心軸受17とガイドローラ35の範囲内で軸心16rの方向に移動できるように、支持軸16によって支持されている。なお、組み立てられた状態では、入力側遊星コーン14はサンローラ2Aに当接することで支持軸16の出力軸3側(左端側)の位置が規制され、出力側遊星コーン15はリングローラ6に当接することで支持軸16の入力軸2側(右端側)の位置が規制される。
【0032】
遊星コーン5は、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15との間にボールカム機構21を有している。ボールカム機構21は、入力側遊星コーン14の底面14bと出力側遊星コーン15の底面15bとを連結して入力側遊星コーン14から出力側遊星コーン15、あるいは、出力側遊星コーン15から入力側遊星コーン14に動力を伝達する。
【0033】
ボールカム機構21は、入力側遊星コーン14の底面14bに形成された複数の入力側カム溝14fと、出力側遊星コーン15の底面15bに形成された複数の出力側カム溝15fと、入力側カム溝14fと出力側カム溝15fとにまたがる様に収容された球体20とを有している。入力側カム溝14fと出力側カム溝15fは、同数形成されており支持軸16の軸心16rを中心とする円周方向に沿って延びている。
【0034】
入力側カム溝14fと出力側カム溝15fは、支持軸16の軸心16rを中心とする径方向に沿った断面の形状が、球体20の半径寸法と同じ半径寸法の円弧形状となっている。このため、入力側カム溝14fおよび出力側カム溝15fに挟まれた空間内に配置された球体20は、支持軸16の軸心16rを中心とする径方向には移動しない。そして、入力側カム溝14fと出力側カム溝15fは、それぞれ円周方向で深さが変化するように形成されている。具体的には、入力側カム溝14fと出力側カム溝15fは、円周方向の中央が深く、円周方向の中央から円周方向の両端に近づくに従って漸次浅くなる形状に形成されている。つまり、入力側カム溝14fと出力側カム溝15fは、円周方向の端部ほど浅く形成されている。そして、球体20は、入力側カム溝14fと出力側カム溝15fに沿って円周方向に転動自在であり、入力側カム溝14fと出力側カム溝15fは、支持軸16の軸心16rを中心とする径方向の溝幅寸法が、当該位置の溝底に当接する球体20の寸法(遊星コーン5の底面14b、15bで切断した時の断面寸法)と同程度となるように設定されている。このため、入力側カム溝14fおよび出力側カム溝15fの溝幅は、円周方向の中央が広く、円周方向の中央から円周方向の両端に近づくに従って漸次細くなる形状に形成されている。
【0035】
入力側カム溝14fと出力側カム溝15fは、底面14bと底面15bを合わせた時に対向する位置に形成されており、その形状は同一である。また、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15は、同一形状に形成されている。つまり、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15は、同一形状であって互換性があり、生産性が向上されている。
【0036】
換言すれば、遊星コーン5は、入力側遊星コーン14を出力側遊星コーン15の位置に入れ替え、出力側遊星コーン15を入力側遊星コーン14の位置に入れ替えても同一形状の遊星コーン5を構成できる。
【0037】
入力側遊星コーン14は、球体20を介して出力側遊星コーン15に動力を伝達するようになっている。球体20は、例えば、鋼球から構成されているが、鋼球に限定されるものではない。
【0038】
本実施例では、遊星コーン5の入力側遊星コーン14の円錐面14dとサンローラ2Aとの接触位置P1に隙間を設けるように寸法公差が設定され、かつ、遊星コーン5の出力側遊星コーン15の円錐面15dとリングローラ6との接触位置P2に隙間を設けるように寸法公差が設定されている。つまり、接触位置P1、P2が圧入になることが無いように、各部の寸法が設定されている。これにより、無段変速機1への遊星コーン5の組付け作業を容易に行うことができる。
【0039】
遊星コーン5において、サンローラ2Aから入力側遊星コーン14に動力が入力されると、トルク差によって入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15との回転方向の位置がずれるように一時的に相対回転する。つまり、サンローラ2Aから入力側遊星コーン14に動力が入力されると、出力側遊星コーン15のリングローラ6との接触または出力側遊星コーン15の自重による慣性により、出力側遊星コーン15の回転が入力側遊星コーン14の回転に遅れる状態が一時的に発生する。これにより、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15との回転方向の相対的な位置がずれ、球体20が入力側カム溝14fと出力側カム溝15fの内部を移動(転動)する。球体20が入力側カム溝14fと出力側カム溝15fの内部を移動(転動)するとボールカム機構21が作用する。この場合、球体20によって入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15が支持軸16の軸線方向に離される。
【0040】
つまり、球体20が移動すると、球体20が当接する入力側カム溝14fと出力側カム溝15fの位置が変わり、深さの異なる場所に球体20が変位することになるので、入力側カム溝14fと出力側カム溝15fからの球体20の突出量が変化して、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15が支持軸16の軸線方向に離れたり近づいたりする。
【0041】
すなわち、球体20が位置する入力側カム溝14fと出力側カム溝15fの深さが浅くなっていく場合には、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15が支持軸16の軸線方向に離れていき、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15との回転方向の相対的な動きが収まると球体20を介して一体的に回転する。この状況は、伝達するトルクが増大する場合であって、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15が支持軸16の軸線方向に離れていき、入力側遊星コーン14とサンローラ2A、および、出力側遊星コーン15とリングローラ6がより強く接触し、大きなトルク伝達が可能となる。
【0042】
一方、球体20が位置する入力側カム溝14fと出力側カム溝15fの深さが深くなっていく場合には、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15が支持軸16の軸線方向に近づき、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15との回転方向の相対的な動きが収まると球体20を介して一体的に回転する。この状況は、伝達するトルクが減少する場合であって、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15が支持軸16の軸線方向に近づき、入力側遊星コーン14をサンローラ2Aに押し付ける力、および、出力側遊星コーン15をリングローラ6に押し付ける力が弱くなり、トルク伝達に不要な押し付け力を解消できて耐久性を向上させることができる。
【0043】
入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15は、トルク差による相対的な動き(ずれ)を除いて、ボールカム機構21を介して連結されて支持軸16の軸心16rを中心に一体的に回転する。
【0044】
なお、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15が支持軸16の軸線方向で最も離れた状態でも、球体20が入力側カム溝14fおよび出力側カム溝15fから抜け出ない。換言すれば、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15は、球体20の直径よりも小さい距離の範囲で支持軸16の軸線方向に移動する。
【0045】
また、入力側カム溝14fと出力側カム溝15fの円周方向の両端は、球体20に当接してそれ以上の入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15のずれ(相対的な回転角度)を規制するストッパとしての機能を有する。
【0046】
遊星コーン5は、入力側遊星コーン14の底面14bと出力側遊星コーン15の底面15bとの間に圧縮状態で設けられた弾性部材5Aを有する。弾性部材5Aは、例えば、皿ばねやウェーブワッシャからなり、圧縮時に復元力を発生する。遊星コーン5がトルクを伝達しない状態でも、弾性部材5Aの付勢力(復元力)は、入力側遊星コーン14をサンローラ2Aに押しつけ、出力側遊星コーン15をリングローラ6に押しつける。これにより、入力側遊星コーン14がサンローラ2Aに対して空転することを防止でき、出力側遊星コーン15がリングローラ6に対して空転することを防止でき、遊星コーン5は滑ることなくトルクを伝達可能となる。つまり、サンローラ2Aから入力側遊星コーン14に動力が入力されると、出力側遊星コーン15の自重による慣性の大きさに関わらず当接するリングローラ6からの力で、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15との相対回転を直ちに発生させることができ、ボールカム機構21を作用させることができる。なお、弾性部材5Aは、ボールカム機構21の作動に影響を与えないように、入力側カム溝14fおよび出力側カム溝15fや球体20との干渉を回避できるように、その形状および設置位置が決定され、入力側遊星コーン14あるいは出力側遊星コーン15に取付けられている。
【0047】
支持軸16の出力軸3側の端部16B(左端部)は、第1支持部46によって揺動自在に支持されている。第1支持部46は、シフトドラム34に形成された溝34A内に揺動自在に保持された球状のガイドローラ35と、ガイドローラ35の内部に設けられた軸受54と、から構成されている。軸受54は、ニードル軸受からなり、支持軸16の端部16Bをガイドローラ35に対して支持している。シフトドラム34に形成された溝34Aは、入力軸2に緩やかに巻きつくように形成された螺旋溝であって、入力軸2の軸方向への変位に伴い円周方向に変位するように形成されている。そして、溝34Aは、ガイドローラ35を揺動自在に保持するだけでなく、シフトドラム34が入力軸2の軸方向に変位することでガイドローラ35を入力軸2の円周方向に僅かに移動させる。
【0048】
支持軸16は、軸心16rが入力軸2の軸線2rに対して傾斜するように、入力軸2の軸線2rに対して傾斜した姿勢で設置されている。具体的には、支持軸16の軸心16rは、その中心軸が左方に行くほど入力軸2に近づくように、入力軸2の軸線2rに対して傾斜して設置されている。
【0049】
遊星コーン5は、移動機構30によってシフトドラム34が入力軸2の軸線2rの方向に移動されることで、シフトドラム34、シフトドラム保持部材33、シフトフランジ32およびキャリア4とともに入力軸2の軸線2rの方向に移動する。
【0050】
遊星コーン5は、入力軸2の径方向外方において入力軸2を取り囲むように、周方向に等間隔で複数個設けられている。これにより各遊星コーン5からサンローラ2Aやリングローラ6に作用する法線力を打ち消しあうことができる。また、本発明の一実施の形態に係る無段変速機1では、奇数個の遊星コーン5を設けている。これにより、入力軸2の軸線2rを含む平面上に支持軸16が複数存在しないので、遊星コーン5の設置の自由度が向上される。
【0051】
入力側遊星コーン14の円錐面14dにはサンローラ2Aが接触しており、出力側遊星コーン15の円錐面15dにはリングローラ6が接触している。
【0052】
入力側遊星コーン14は、その円錐面14dの母線が入力軸2の軸線2rと平行に延びてサンローラ2Aと常時接触する円錐面を構成するような姿勢で設置されている。
【0053】
出力側遊星コーン15は、その円錐面15dの母線が入力軸2の軸線2rと平行に延びてリングローラ6と常時接触する円錐面を構成するような姿勢で設置されている。
【0054】
すなわち、遊星コーン5は入力軸2の軸線2rの方向に移動したとしても、サンローラ2Aと常時接触する円錐面とリングローラ6と常時接触する円錐面とが入力軸2の軸線2rと平行となるような姿勢を保持しながら入力軸2の軸線2rの方向に移動するので、円錐面14dとサンローラ2Aの接触を維持するとともに、円錐面15dとリングローラ6の接触を維持する。
【0055】
図2に示すように、移動機構30は、シフトドラム34に接続された変速操作部31を備えており、変速操作部31は、アクチュエータ等によって外部から操作されることによりシフトドラム34を入力軸2の軸方向に移動させる。
【0056】
移動機構30は、さらに、シフトフランジ32とシフトドラム保持部材33と、を備えている。シフトフランジ32は、変速操作部31の外周側、かつキャリア4の内周側に設けられ、変速操作部31が操作されることで入力軸2の軸方向に移動する。シフトドラム保持部材33は、シフトフランジ32とシフトドラム34とを、入力軸2の軸方向に一体で移動可能に連結している。シフトドラム保持部材33は、遊星コーン5の間に入力軸2の軸方向に延びる様に配置されている柱状の部材であって、複数設けられている。ここで、キャリア4は、ガイドフォロア45およびガイド溝40によって、入力軸2の軸方向に移動自在で、かつ、入力軸2の周りには回転不能となるように設けられている。また、シフトフランジ32は、ボールスプライン4cを介してキャリア4により、入力軸2の軸方向に移動自在で、かつ、入力軸2の周りには回転不能になっている。そのため、シフトドラム保持部材33によってシフトフランジ32に連結されたシフトドラム34も、入力軸2の軸方向に移動自在で、かつ、入力軸2の周りには回転不能に設けられている。
【0057】
変速操作部31は、径方向に広がる円盤部の操作部31Aと、外周面に送りねじが形成された軸部31Bとを有している。また、シフトフランジ32は、変速操作部31の軸部31Bの外周部を取り囲むように円環状に形成されている。シフトフランジ32の内周面には軸部31Bと螺合する送りねじが形成されている。シフトフランジ32の左端部にはシフトドラム保持部材33が連結されている。シフトドラム保持部材33は、シフトフランジ32からサンローラ2Aの上方を通過して左方に延びる棒状に形成されている。シフトドラム保持部材33の左端部は、シフトドラム34に連結されている。
【0058】
移動機構30において、変速操作部31が外部から回転操作されると、送りねじ機構によってシフトフランジ32が入力軸2の軸方向に移動する。そして、シフトフランジ32にシフトドラム保持部材33を介して連結されているシフトドラム34は、シフトフランジ32と一体で入力軸2の軸方向に移動する。シフトドラム34が動くと、ガイドローラ35に対するシフトドラム34の溝34Aの位置が変わる。前述した様に、溝34Aは入力軸2回りの螺旋溝に形成されており、シフトドラム34の軸方向への変位に伴いガイドローラ35の位置を入力軸2の円周方向に僅かに移動させる。すると、支持軸16が入力軸2に対してねじれの方向に傾き、遊星コーン5が姿勢変化して傾転(スキュー)している状態となる。傾転(スキュー)状態の遊星コーン5は支持軸16の傾きを解消する方向の力を受け、傾きを解消するべくガイドローラ35がシフトドラム34の溝34A内を移動し、傾きが解消した段階で移動は終了する。傾きが解消するガイドローラ35の位置は、シフトドラム34が動く前にガイドローラ35が位置していた溝34A内の位置である。この移動はシフトドラム34が移動すると即座に自動的に発生する。このため、あたかもシフトドラム34に保持されたガイドローラ35がシフトドラム34とともに移動し、遊星コーン5が同方向に移動するように見える。このとき、キャリア4は、ボールスプライン4cにより、シフトフランジ32とは別体で遊星コーン5の移動に付随して同方向に移動する。本実施例では、キャリア4は、シフトフランジ32の移動に起因する遊星コーン5の傾転により生じた分力により、傾転が解消される位置まで移動する。
【0059】
なお、本実施例では、送りねじ機構によってシフトフランジ32が軸方向に移動するが、送りねじ機構を用いることなくシフトフランジ32をアクチュエータによって直接的に軸方向に移動させるようにしてもよい。また、シフトドラム34が軸方向の他方に移動した場合も同様に、遊星コーン5が移動し、遊星コーン5に付随してキャリア4がシフトドラム34の移動方向に移動する。これらの働きから、遊星コーン5の姿勢や配置が適切に保たれ、それに倣う様にシフトドラム34やキャリア4の位置が調整されるので、第1支持部46と第2支持部47の位置関係を規定する部品を不要とすることができ、部品製造時の寸法管理を容易にして、生産性を向上させることができる。
【0060】
変速操作部31の操作部31Aは変速機ケース41の外部に配置されている。変速操作部31の軸部31Bは、変速機ケース41の内部に配置されており、入力軸2の外周面を取り囲んでいる。
【0061】
操作部31Aの内周面と入力軸2の外周面との間には、シール部材64が設けられている。変速操作部31の軸部31Bの右端部の外周面と変速機ケース41の右端部の内周面との間には、シール部材65が設けられている。さらに、出力軸3の軸部3Aの外周面と変速機ケース41の左端部の内周面との間には、シール部材66が設けられている。これらのシール部材64、65、66は、変速機ケース41の内部から外部へのトラクションオイルの漏出を防止し、変速機ケース41の外部から内部への異物の侵入を防止している。
【0062】
変速操作部31の軸部31Bの右端部の内周面と入力軸2の外周面との間には玉軸受61が設けられている。変速操作部31の軸部31Bの左端部の内周面と入力軸2の外周面との間には玉軸受62が設けられている。
【0063】
変速操作部31の軸部31Bの右端部の近傍であってシール部材65の左側には、玉軸受53が設けられている。玉軸受53は、球状の転動体53bと、この転動体53bを介して相対回転自在な外輪53aおよび内輪53cと、を有している。玉軸受53の内輪53cは軸部31Bに嵌合されており、軸部31Bに装着されたサークリップ53dによって軸方向に抜け止めされている。玉軸受53の外輪53aは変速機ケース41の右端部の内周面に嵌合されている。
【0064】
このように、本実施例では、変速操作部31が、玉軸受53によって変速機ケース41に対して回転自在に支持されている。また、入力軸2の右端側の部位が、玉軸受61、62によって変速操作部31に対して回転自在に支持されている。
【0065】
本実施例の無段変速機1において、遊星コーン5の円錐面14dとサンローラ2Aとの接触位置P1と、遊星コーン5の円錐面15dとリングローラ6との接触位置P2とが、入力軸2の軸方向の位置で同位置にある。言い換えれば、サンローラ2Aとリングローラ6とは、入力軸2の軸に垂直な同一断面上に位置しており、入力軸2の径方向に対向している。このため、前述の傾転(スキュー)状態を除きサンローラ2Aおよびリングローラ6の接触圧力によって、遊星コーン5の軸心16rを傾けるような回転モーメントが発生することがない。
【0066】
本実施例の無段変速機1において、サンローラ2Aにおける遊星コーン5の円錐面14dとの接触位置P1、およびリングローラ6における遊星コーン5の円錐面15dとの接触位置P2は、それぞれ入力軸2と略平行に延びている。つまり、遊星コーン5に対するサンローラ2Aおよびリングローラ6の接触面は、入力軸2と略平行に延びている円筒形状となっている。
【0067】
本実施例の無段変速機1はボールベアリング50を備えている。ボールベアリング50は、変速機ケース41に嵌合される外輪50aと、この外輪50aに球状の転動体50bを介して連結され、出力軸3の外周面に嵌合される内輪50cとを有する。外輪50aは、変速機ケース41の左端部近傍に形成された筒状のベアリング保持部43Aの内周面に嵌合されている。また、内輪50cは、出力軸3に形成された筒状の大径部3Cの外周面に嵌合されている。
【0068】
また、無段変速機1は、テーパローラベアリング51を備えている。テーパローラベアリング51は、出力軸3の内周面に嵌合される外輪51aと、この外輪51aにローラ(円錐面を有するころ)状の転動体51bを介して連結され、入力軸2の外周面に嵌合される内輪51cとを有している。外輪51aは、出力軸3の大径部3Cの内周面に嵌合されている。内輪51cは、入力軸2の左端部に装着された筒状の軸受保持部材51dの外周面に嵌合されている。軸受保持部材51dは、内輪51cの右方への移動を規制している。内輪51cの右端部は、軸受保持部材51dの拡径部3Dの左端部に当接している。転動体51bは、入力軸2と出力軸3とを近づける方向のアキシアル荷重を受け持つように傾斜している。このように、テーパローラベアリング51は、入力軸2と出力軸3との間に作用する軸方向および径方向の荷重を受け持っている。したがって、テーパローラベアリング51は、サンローラ2Aとリングローラ6との間に作用する軸方向および径方向の荷重も受け持っている。特に、前述の傾転(スキュー)状態の時に入力軸2の軸方向に発生する荷重や、ボールカム機構21の作動時に入力軸2の軸方向に発生する荷重を効果的に受け止めることができる。
【0069】
さらに、無段変速機1は予圧付与部材52を備えている。予圧付与部材52は、ボールベアリング50と変速機ケース41との間に圧縮状態で設けられている。予圧付与部材52は、ダイヤフラムスプリングまたはウェーブワッシャ等からなり、テーパローラベアリング51に予圧を付与するように、ボールベアリング50を入力軸2の軸方向に付勢している。また、予圧付与部材52は、無段変速機1の入力軸2の軸方向のガタを抑制して、生産性を向上させている。
【0070】
詳しくは、予圧付与部材52は、ボールベアリング50の外輪50aの左端部と変速機ケース41のベアリング保持部43Aの右端部に連続する円盤状の予圧付与部材保持部43Bとの間に設けられている。予圧付与部材52の復元力は、ボールベアリング50を介して出力軸3を右方に押し付ける。これにより、テーパローラベアリング51の外輪51aには左方向の力が作用し、この力はテーパローラベアリング51に対して予圧として作用する。また、予圧付与部材52は、変速機ケース41を左方に付勢しているので、変速機ケース41が左方への荷重により軸方向に変位することを抑制し、変速機ケース41の変位による騒音や振動の発生を抑制する。
【0071】
なお、予圧付与部材52をダイヤフラムスプリングから構成する場合、テーパローラベアリング51への予圧が山なりの荷重特性となるように予圧付与部材52を設計することにより、ボールベアリング50の軸方向の位置公差のばらつきがある場合であっても、テーパローラベアリング51へ安定した予圧を付与することができる。
【0072】
次に、無段変速機1の動作を説明する。駆動力源10の回転動力は、無段変速機1の入力軸2に伝達され、入力軸2と一体のサンローラ2Aから入力側遊星コーン14に伝達される。入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15の間にはボールカム機構21が設けられているので、入力側遊星コーン14から球体20を介して出力側遊星コーン15に駆動力源10の回転動力が伝達された後、出力側遊星コーン15からリングローラ6に回転動力が伝達される。すなわち、サンローラ2Aの回転によって遊星コーン5が支持軸16とともに回転し、遊星コーン5の回転動力がリングローラ6に伝達される。
【0073】
出力側遊星コーン15からリングローラ6に回転動力が伝達されると、出力軸3からファイナルドライブギヤを介してディファレンシャル装置のファイナルドリブンギヤに回転動力が伝達された後、ディファレンシャル装置から左右のドライブシャフトを介して左右の駆動輪に回転動力が伝達される。
【0074】
無段変速機1では、以下の様に回転力(駆動力)が伝えられ、同時に変速(回転速度の変換)が行われる。サンローラ2Aの回転速度が入力側遊星コーン14に伝えられ、サンローラ2Aの半径寸法と入力側遊星コーン14における接触箇所の半径寸法との比率で遊星コーン5が変速された回転速度で回転する。遊星コーン5の回転速度は、リングローラ6に伝えられる。このとき、リングローラ6の半径寸法と遊星コーン5における接触箇所の半径寸法との比率でリングローラ6が変速された回転速度で回転する。
【0075】
例えば、移動機構30によって遊星コーン5が出力軸3の軸部3Aから最も離れた位置(遊星コーン5の可動範囲で最も右側の位置)に移動された場合には、図1に示すように、サンローラ2Aが入力側遊星コーン14の最も小径の円錐面14dに接触する。このとき、リングローラ6は、出力側遊星コーン15の底面15b側の最も大径の円錐面15dに接触する。これにより、サンローラ2Aの回転速度が遊星コーン5によって増速されてリングローラ6に伝達される。無段変速機1で変速比が最も小さくなる状態である。
【0076】
一方、移動機構30によって遊星コーン5が出力軸3の軸部3Aに最も近い位置(キャリア4の可動範囲で最も左側の位置)に移動された場合には、図3に示すように、サンローラ2Aが入力側遊星コーン14の底面14b側の最も大径の円錐面14dに接触する。このとき、リングローラ6は、出力側遊星コーン15の最も小径の円錐面15dに接触する。これにより、サンローラ2Aの回転速度が遊星コーン5によって減速されてリングローラ6に伝達される。無段変速機1で変速比が最も大きくなる状態である。
【0077】
すなわち、無段変速機1は、キャリア4によって入力側遊星コーン14の円錐面14dとサンローラ2Aの接触位置P1、および出力側遊星コーン15の円錐面15dとリングローラ6の接触位置P2を変更することにより、入力軸2の回転速度(回転動力)を、遊星コーン5を介して出力軸3に無段階で変速可能となっている。
【0078】
移動機構30によって遊星コーン5が移動する途中では、一時的に遊星コーン5が姿勢変化し、傾転(スキュー)している状態となるが、シフトドラム34の溝34A内のガイドローラ35の揺動と自動調心軸受17の作用と、スキューの角度が最小となるように傾転を抑制する推進力とにより、キャリア4がシフトフランジ32上を軸方向に移動する。このため、遊星コーン5は、スキューの角度が最小となる位置に自動的に復帰する。詳しくは、遊星コーン5とリングローラとの接触面を構成する線の位置は、図4に示すように、傾転していないときの位置L1から、傾転しているときの位置L2に一時的に変位する。また、遊星コーン5には、傾転していないときは入力軸2(図1参照)の周方向に法線力F1が作用し、傾転しているときは入力軸2(図1参照)の軸方向の分力F3を含む法線力F2が作用する。そして、傾転しているときの法線力F2の分力F3は、遊星コーン5の傾転を解消するように作用し、遊星コーン5およびキャリア4を入力軸2の軸方向(図4の左方)に移動させ、傾転を解消させる。
【0079】
なお、サンローラ2Aと入力側遊星コーン14の円錐面14dとの接触位置P1、リングローラ6と出力側遊星コーン15の円錐面15dとの接触位置P2には、図示しないトラクションオイルの油膜が形成される。これにより、サンローラ2Aから油膜を介して入力側遊星コーン14に動力が伝達され、リングローラ6から油膜を介して出力側遊星コーン15に動力が伝達される。
【0080】
また、入力側遊星コーン14は、その円錐面14dが入力軸2の軸線2rと平行に延び、サンローラ2Aと常時接触するように設置されている。また、出力側遊星コーン15は、その円錐面15dが入力軸2の軸線2rと平行に延び、リングローラ6と常時接触するように設置されている。
【0081】
これにより、変速時に、サンローラ2Aとリングローラ6に対して遊星コーン5を円錐面14d、15dに沿って平行に移動させることができ、サンローラ2Aと円錐面14dの間、およびリングローラ6と円錐面15dの間に過度な摩擦力が発生することを抑制できる。このため、円滑な変速を行うことができる。
【0082】
入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15は、同一の外径形状と同一の溝形状を有する同一形状であるので、入力側遊星コーン14に入力されるトルクが小さい場合には、球体20が入力側遊星コーン14の入力側カム溝14fと出力側カム溝15fの円周方向の中央の最も深い位置に位置する。つまり、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15は、最も接近した位置となっている。
【0083】
この場合、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15は、一体的に回転する。この状態で、入力側遊星コーン14から球体20を介して出力側遊星コーン15にトルクが伝達される。
【0084】
この状態は軽負荷時であって、入力側遊星コーン14の円錐面14dとサンローラ2Aとの接触面圧、および、出力側遊星コーン15の円錐面15dとリングローラ6との接触面圧は、滑りを生じない程度の適度な面圧に調整されている。これは、弾性部材5Aによるところが大きい。
【0085】
一方、入力側遊星コーン14に入力されるトルクが大きくなると(つまり、入力側遊星コーン14の回転に対して出力側遊星コーン15が回り難くなると)、出力側遊星コーン15が入力側遊星コーン14に対して遅れ始める。つまり、遊星コーン5全体では、ねじれる状態となる。すなわち、出力側遊星コーン15が入力側遊星コーン14の回転に追従できずに、入力側遊星コーン14が出力側遊星コーン15に対して回転方向に相対的にズレる。
【0086】
入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15の間は、球体20を介して動力が伝達されるが、この相対的なズレにより、球体20が入力側カム溝14fと出力側カム溝15fの深い部分(円周方向の中央)から浅い部分(円周方向の一方側)に移動し、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15が支持軸16の軸線方向に離れる。
【0087】
これは、球体20に対して入力側カム溝14fと出力側カム溝15fがカム斜面のように働くので、トルクカムのようなトルクに応じた斥力および移動が発生するためである。
【0088】
これにより、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15とが支持軸16上で互いに離れる方向に移動する。
【0089】
そのため、入力側遊星コーン14の円錐面14dとサンローラ2Aとの接触面圧、および出力側遊星コーン15の円錐面15dとリングローラ6との接触面圧は、遊星コーン5が伝達するトルク(入力荷重)に応じて増大する。
【0090】
なお、入力側カム溝14fと出力側カム溝15fにおける溝の深さの変化の形状を単純な傾斜角度とするのでなく、入力側カム溝14fと出力側カム溝15fの円周方向の中央部から円周方向の端部に行くほど傾きが大きくなるように傾斜を変化させるようにしてもよい。
【0091】
球体20は、入力側カム溝14fと出力側カム溝15fの円周方向の中央部に位置しているので、入力側遊星コーン14が出力側遊星コーン15に対して上述した回転方向と反対側にねじれた場合に、球体20を入力側カム溝14fと出力側カム溝15fの円周方向の中央部から上述した方向と反対側に移動させ、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15とを支持軸16の軸線方向に離すことができる。
【0092】
次に、本実施例の無段変速機1の効果を説明する。
【0093】
本実施例の無段変速機1において、遊星コーン5の円錐面14dとサンローラ2Aとの接触位置P1と、遊星コーン5の円錐面15dとリングローラ6との接触位置P2とが、入力軸2の軸方向の同位置にある。
【0094】
これにより、遊星コーン5の円錐面14d、15dに作用する法線力によって支持軸16の両端部の自動調心軸受17および軸受54に支持軸16を入力軸2の径方向内方または外方に近づけように回転させる回転モーメントが発生することを防止できる。このため、支持軸16に作用する回転モーメントにより自動調心軸受17および軸受54の耐久性が低下することを防止できる。
【0095】
また、支持軸16に回転モーメントを作用させることなく、サンローラ2Aおよびリングローラ6に対する遊星コーン5の接触位置を変更することができるので、移動機構30に対する小さな操作力で遊星コーン5を入力軸2の軸方向に移動することができ、過大な法線力の発生により動力伝達効率を低下させることなく、入力軸2の軸方向に遊星コーン5を移動して変速比を変更できる。
【0096】
この結果、遊星コーン5を支持する自動調心軸受17および軸受54の耐久性が低下することを防止でき、動力伝達効率が低下することを防止できる。
【0097】
本実施例の無段変速機1において、遊星コーン5の円錐面14dにおけるサンローラ2Aとの接触位置P1、および、遊星コーン5の円錐面15dにおけるリングローラ6との接触位置P2は、それぞれ入力軸2と略平行に延びている。
【0098】
これにより、遊星コーン5が軸方向に移動した場合に、遊星コーン5が軸方向に移動してもサンローラ2Aおよびリングローラ6との接触圧力が変化しないので、変速比を変更する変速操作するときに小さな操作力で遊星コーン5を入力軸2の軸方向に滑らかに移動させることができる。このため、変速比を容易に変更することができる。
【0099】
本実施例の無段変速機1において、遊星コーン5は、サンローラ2Aが接触する入力側遊星コーン14と、入力側遊星コーン14と別体に設けられ、リングローラ6が接触する出力側遊星コーン15と、入力側遊星コーン14の底面14bと出力側遊星コーン15の底面15bとの間に圧縮状態で設けられた弾性部材5Aと、を有する。
【0100】
これにより、遊星コーン5の入力側遊星コーン14の円錐面14dとサンローラ2Aとの接触位置P1に隙間を設けるように寸法公差を設定し、かつ、遊星コーン5の出力側遊星コーン15の円錐面15dとリングローラ6との接触位置P2に隙間を設けるように寸法公差を設定することができる。そして、弾性部材5Aを圧縮した状態で変速機ケース41に組付けることができる。したがって、遊星コーン5の組付け性を向上させることができる。
【0101】
また、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15との間に圧縮状態で弾性部材5Aを設けたことにより、弾性部材5Aの復元力によって、入力側遊星コーン14の円錐面14dをサンローラ2Aに常に接触させてトルクを伝達させることができ、出力側遊星コーン15の円錐面15dをリングローラ6に常に接触させてトルクを伝達させることができる。さらに、製造公差や回転時の遠心力等によって入力側遊星コーン14の円錐面14dとサンローラ2Aとの隙間、および出力側遊星コーン15の円錐面15dとリングローラ6との隙間が発生する様な場合であっても、弾性部材5Aの復元力によって各隙間を無くすことができる。
【0102】
本実施例の無段変速機1において、遊星コーン5は、入力側遊星コーン14の底面14bと出力側遊星コーン15の底面15bとを連結して入力側遊星コーン14から出力側遊星コーン15に動力を伝達するボールカム機構21を有している。ボールカム機構21は、入力側遊星コーン14の底面14bに形成された入力側カム溝14fと、出力側遊星コーン15の底面15bに形成された出力側カム溝15fと、入力側カム溝14fと出力側カム溝15fに収容された球体20とを有している。そして、入力側カム溝14fと出力側カム溝15fは、支持軸16の軸心16rを中心とする円周方向に延びており、入力側カム溝14fと出力側カム溝15fは、円周方向の端部ほど浅く形成されている。
【0103】
このボールカム機構21に関し、車両の運転者によりアクセルが操作されると、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15のそれぞれに作用するトルクに差異が生じ、入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15とに回転方向のずれが生じるので、入力側カム溝14fと出力側カム溝15fとに挟まれた隙間内を球体20が移動する。これにより、球体20が入力側遊星コーン14と出力側遊星コーン15との隙間を押し広げるので、入力側遊星コーン14とサンローラ2Aとの間、および出力側遊星コーン15とリングローラ6との間に、入力トルクに応じた適切な法線力(押し付け力)が発生し、トルクの伝達を適切に行うことができる。
【0104】
本実施例の無段変速機1は、変速機ケース41に嵌合される外輪50aと、この外輪50aに転動体50bを介して連結され、出力軸3の外周面に嵌合される内輪50cとを有するボールベアリング50と、出力軸3の内周面に嵌合される外輪51aと、この外輪51aにローラ状の転動体51bを介して連結され、入力軸2の外周面に嵌合される内輪51cとを有するテーパローラベアリング51と、ボールベアリング50と変速機ケース41との間に圧縮状態で設けられ、テーパローラベアリング51に予圧を付与するように、ボールベアリング50を入力軸2の軸方向に付勢する予圧付与部材52と、を備える。
【0105】
これにより、テーパローラベアリング51を用いつつ、ボールベアリング50と予圧付与部材52とによりテーパローラベアリング51の予圧調整を行うことにより、入力軸2と出力軸3とが軸方向または径方向に位置ずれすることを抑制できる。
【0106】
また、ボールカム機構21により、入力側遊星コーン14の底面14bと出力側遊星コーン15の底面15bとが離れる方向に荷重が作用すると、サンローラ2Aとリングローラ6に遊星コーン5の軸方向の分力が発生し、この分力によりテーパローラベアリング51にアキシャル荷重が生じるので、テーパローラベアリング51による入力軸2および出力軸3の支持剛性を向上させることができる。また、支持剛性が高まることにより、入力軸2と出力軸3とが同軸上に保持されるので、遊星コーン5の回転騒音を低減でき、サンローラ2Aとリングローラ6の回転方向が平行になることによる転がり損失を低減することができる。
【0107】
また、仮に、テーパローラベアリング51の外輪51aに予圧を直接付与した場合、伝達トルクのオンオフに伴うボールカム機構21の反力の分力により、サンローラ2Aとリングローラ6の相対位置が変化してしまうが、本実施例では、変速機ケース41によって出力軸3を支持するボールベアリング50を介してテーパローラベアリング51に予圧を常に付与しているので、遊星コーン5のボールカム機構21による分力によってサンローラ2Aとリングローラ6の相対位置が変化することを防止できる。
【0108】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0109】
1...無段変速機、2...入力軸、2A...サンローラ(入力部材)、3...出力軸、5...遊星コーン、5A...弾性部材、6...リングローラ(出力部材)、10...駆動力源、14...入力側遊星コーン、14b...底面、14d...円錐面、14f...入力側カム溝、15...出力側遊星コーン、15b...底面、15d...円錐面、15f...出力側カム溝、16...支持軸、16r...軸心、17...自動調心軸受、20...球体、21...ボールカム機構、30...移動機構、31...変速操作部、41...変速機ケース、50...ボールベアリング、50a...外輪、50b...転動体、50c...内輪、51...テーパローラベアリング、51a...外輪、51b...転動体、51c...内輪、52...予圧付与部材、54...軸受、P1,P2...接触位置
図1
図2
図3
図4