(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061654
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】ウエットブラスト処理用の砥粒及びウエットブラスト処理方法
(51)【国際特許分類】
B24C 5/02 20060101AFI20230425BHJP
B24C 11/00 20060101ALI20230425BHJP
B24C 5/04 20060101ALI20230425BHJP
B24C 3/32 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
B24C5/02 B
B24C11/00 G
B24C11/00 C
B24C5/04 A
B24C3/32 Z
B24C5/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171718
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】591205732
【氏名又は名称】マコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】徳長 靖
(72)【発明者】
【氏名】細谷 崇
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来にない非常に実用的なウエットブラスト処理用の砥粒及びウエットブラスト処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ウエットブラスト処理に用いる砥粒2であって、平均粒子径が約100μm以下の球形状の第一材2Aと、平均粒子径が約70μm以下の多角形状の第二材2Bとで構成され、前記第二材2Bの量は前記第一材2Aに対して体積比率で0.5~4%に設定されたものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエットブラスト処理に用いる砥粒であって、平均粒子径が約100μm以下の球形状の第一材と、平均粒子径が約70μm以下の多角形状の第二材とで構成され、前記第二材の量は前記第一材に対して体積比率で0.5~4%に設定されていることを特徴とするウエットブラスト処理用の砥粒。
【請求項2】
請求項1記載のウエットブラスト処理用の砥粒であって、前記第一材として、ウエットブラスト処理を行うワークよりも硬度の高い部材を採用することを特徴とするウエットブラスト処理用の砥粒。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載のウエットブラスト処理用の砥粒であって、前記第二材として、ビッカース硬度500HV以上のステンレス製部材を採用することを特徴とするウエットブラスト処理用の砥粒。
【請求項4】
ワークの表面に、液体と請求項1~3いずれか1項に記載の砥粒との混合物であるスラリを噴射することを特徴とするウエットブラスト処理方法。
【請求項5】
軸状ワークの軸心を回転軸として回転させながら軸長さ方向へ直線搬送し、この直線搬送される前記軸状ワークに液体と請求項1~3いずれか1項に記載の砥粒との混合物であるスラリをスラリ噴射部から噴射して前記軸状ワークの表面をウエットブラスト処理することを特徴とするウエットブラスト処理方法。
【請求項6】
請求項5記載のウエットブラスト処理方法において、前記スラリ噴射部が、前記軸状ワークのワーク搬送方向に対して左右対称位置に複数配設されていることを特徴とするウエットブラスト処理方法。
【請求項7】
請求項5,6いずれか1項に記載のウエットブラスト処理方法において、前記スラリ噴射部は所定幅を有する直線状のスリット開口部を備え、このスリット開口部の中心噴射面は、前記軸状ワークの軸心線を通過し前記スラリの中心噴射面と平行な面が、前記軸状ワークの外周面と交わる位置Aから前記スラリの噴射と直交する方向に所定量位置ずれした前記軸状ワークの外周面と交わる位置Bとなるように配設されていることを特徴とするウエットブラスト処理方法。
【請求項8】
請求項7記載のウエットブラスト処理方法において、前記スラリ噴射部は、前記スリット開口部の幅方向をワーク搬送方向となるように配設されていることを特徴とするウエットブラスト処理方法。
【請求項9】
請求項7,8いずれか1項に記載のウエットブラスト処理方法において、前記位置Aと前記軸心とを通過する面と、前記位置Bと前記軸心とを通過する面との角度が45~75度であることを特徴とするウエットブラスト処理方法。
【請求項10】
請求項5~9いずれか1項に記載のウエットブラスト処理方法において、前記スラリ噴射部から噴射される前記スラリの噴射圧が0.2MPa以下に設定され、前記スリット開口部から前記軸状ワークまでの距離が50mm以下に設定されていることを特徴とするウエットブラスト処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエットブラスト処理用の砥粒及びウエットブラスト処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば工作機械や搬送機械に使用されるボールねじは、外周面に螺旋状の転動溝を設けたねじ軸と、このねじ軸に被嵌され内周面に螺旋状の転動溝を設けたナットと、このねじ軸及びナットの螺旋溝同士の間に配されるボール(鋼球)とを有し、回転運動を直線運動に変換(若しくは直線運動を回転運動に変換)するものである。
【0003】
このボールねじを構成する各構成部品の製造には、高精度な製造技術が要求されており、特に高精度な仕上げが要求されるねじ軸の転動溝は、切削加工により形成されるのが一般的とされてきたが、近年の転造技術の向上により、ローコストで生産性の高い転造加工をこのねじ軸の製造に適用することが期待されている。
【0004】
具体的には、このねじ軸の製造は、適宜な鋼材を圧延加工して軸材とし、続いて、この軸材を切削により外形加工し、続いて、この外形加工された軸材の周面に転動溝を転造加工により形成する。
【0005】
ところで、この転造加工により転動溝が形成されたねじ軸は、熱処理(高周波焼入れ)を行い、その後、表面(転動面)の仕上げ処理を行うが、この熱処理によってねじ軸の表面にスケール(酸化物)が生じてしまう為、仕上げ処理前にこのスケールを除去しなければならない。
【0006】
そこで、従来、この熱処理によってねじ軸の表面に生じたスケールを除去する場合、例えば、ねじ軸の表面を金属ブラシで研磨することでスケールを除去し、その後、バフ研磨により転動溝の光沢向上のための磨き処理を行っていた(
図20(a)参照)。
【0007】
しかしながら、この金属ブラシ処理は、処理時間がかかってしまい、よって、実際には切削加工に比して加工時間を短縮できる転造加工のメリットを活かしきれておらず、しかも、スケールを除去するには強い研磨が必要となり、素材(転動溝の角縁)まで削られて転動溝の精度が落ちてしまうという品質上の問題点もあった。
【0008】
そこで、本出願人は、前述した金属ブラシ処理の代わりに特許文献1に開示されるウエットブラスト処理を提案しており、このウエットブラスト処理であれば金属ブラシ処理の問題点を解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前述したようにウエットブラスト処理によりねじ軸の表面に生じたスケールを除去することはできるものの、製品として要求されるレベルの光沢度を得ることができず、よって、スケールを除去した後に、バフ研磨により光沢のある表面とする仕上げ処理を行っているが(
図20(b)及び
図21参照)、バフ研磨には以下の課題があることから、このバフ研磨による仕上げ処理工程を削減し製造工程を効率化することが望まれている。
【0011】
(1) ワークの素材(転動溝の角縁)まで削られて転動溝の精度が落ちる(品質的課
題)。
(2) バフ研磨作業によりワークが発熱して変色する(品質的課題)。
(3) 転動溝に合わせたバフの軸方向の位置調整が難しく、自動化が困難である(合
理化に対する課題)。
(4) 処理中にバフ研磨の摩耗量に合わせた押し込み量の調整が必要となる(合理化
に対する課題)。
(5) 粉塵が発生するため局所排気が必要となる(環境的課題)。
【0012】
本発明者等は、前述したワークの表面処理について更なる研究開発を進め、その結果、従来にない非常に実用的なウエットブラスト処理用の砥粒及びウエットブラスト処理方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0014】
ウエットブラスト処理に用いる砥粒2であって、平均粒子径が約100μm以下の球形状の第一材2Aと、平均粒子径が約70μm以下の多角形状の第二材2Bとで構成され、前記第二材2Bの量は前記第一材2Aに対して体積比率で0.5~4%に設定されていることを特徴とするウエットブラスト処理用の砥粒に係るものである。
【0015】
また、請求項1記載のウエットブラスト処理用の砥粒であって、前記第一材2Aとして、ウエットブラスト処理を行うワーク50よりも硬度の高い部材を採用することを特徴とするウエットブラスト処理用の砥粒に係るものである。
【0016】
また、請求項1,2いずれか1項に記載のウエットブラスト処理用の砥粒であって、前記第二材2Bとして、ビッカース硬度500HV以上のステンレス製部材を採用することを特徴とするウエットブラスト処理用の砥粒に係るものである。
【0017】
また、ワーク50の表面に、液体1と請求項1~3いずれか1項に記載の砥粒2との混合物であるスラリ3を噴射することを特徴とするウエットブラスト処理方法に係るものである。
【0018】
また、軸状ワーク50の軸心を回転軸として回転させながら軸長さ方向へ直線搬送し、この直線搬送される前記軸状ワーク50に液体1と請求項1~3いずれか1項に記載の砥粒2との混合物であるスラリ3をスラリ噴射部10から噴射して前記軸状ワーク50の表面をウエットブラスト処理することを特徴とするウエットブラスト処理方法に係るものである。
【0019】
また、請求項5記載のウエットブラスト処理方法において、前記スラリ噴射部10が、前記軸状ワーク50のワーク搬送方向に対して左右対称位置に複数配設されていることを特徴とするウエットブラスト処理方法に係るものである。
【0020】
また、請求項5,6いずれか1項に記載のウエットブラスト処理方法において、前記スラリ噴射部10は所定幅を有する直線状のスリット開口部11を備え、このスリット開口部11の中心噴射面Mは、前記軸状ワーク50の軸心線を通過し前記スラリ3の中心噴射面Mと平行な面S1が、前記軸状ワーク50の外周面と交わる位置Aから前記スラリ3の噴射と直交する方向に所定量位置ずれした前記軸状ワーク50の外周面と交わる位置Bとなるように配設されていることを特徴とするウエットブラスト処理方法に係るものである。
【0021】
また、請求項7記載のウエットブラスト処理方法において、前記スラリ噴射部10は、前記スリット開口部11の幅方向をワーク搬送方向となるように配設されていることを特徴とするウエットブラスト処理方法に係るものである。
【0022】
また、請求項7,8いずれか1項に記載のウエットブラスト処理方法において、前記位置Aと前記軸心とを通過する面S1と、前記位置Bと前記軸心とを通過する面S2との角度が45~75度であることを特徴とするウエットブラスト処理方法に係るものである。
【0023】
また、請求項5~9いずれか1項に記載のウエットブラスト処理方法において、前記スラリ噴射部10から噴射される前記スラリの噴射圧が0.2MPa以下に設定され、前記スリット開口部11から前記軸状ワーク50までの距離が50mm以下に設定されていることを特徴とするウエットブラスト処理方法に係るものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は上述のように構成したから、ワークの表面を良好な光沢面とすることができ、しかも、ワークの表面に生じたスケールを良好に除去することができるなど、従来にない非常に実用的なウエットブラスト処理用の砥粒及びウエットブラスト処理方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施例に係るウエットブラスト処理装置の使用状態説明図である。
【
図10】本実施例に係るウエットブラスト処理用の砥粒及びウエットブラスト処理方法の有効性を確認する実験結果を示す図である。
【
図11】本実施例に係るウエットブラスト処理用の砥粒及びウエットブラスト処理方法の有効性を確認する実験結果を示す図である。
【
図12】本実施例に係るウエットブラスト処理用の砥粒及びウエットブラスト処理方法の有効性を確認する実験結果を示す図である。
【
図13】本実施例に係るウエットブラスト処理用の砥粒及びウエットブラスト処理方法の有効性を確認する実験結果を示す図である。
【
図14】本実施例に係るウエットブラスト処理用の砥粒及びウエットブラスト処理方法の有効性を確認する実験結果を示す図である。
【
図15】本実施例に係るウエットブラスト処理用の砥粒及びウエットブラスト処理方法の有効性を確認する実験結果を示す図である。
【
図16】本実施例に係るウエットブラスト処理用の砥粒及びウエットブラスト処理方法の有効性を確認する実験結果を示す図である。
【
図17】本実施例に係るウエットブラスト処理用の砥粒及びウエットブラスト処理方法の有効性を確認する実験結果を示す図である。
【
図18】本実施例に係るウエットブラスト処理用の砥粒及びウエットブラスト処理方法の有効性を確認する実験結果を示す図である。
【
図19】本実施例を使用したねじ軸50の製造工程を示すフロー図である。
【
図20】従来技術によるねじ軸50の製造工程を示すフロー図である。
【
図21】従来技術により処理したねじ軸50を製品としての評価を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0027】
本発明者等は、ウエットブラスト処理によるワークに対する光沢処理とスケール除去処理を両立すべく、光沢処理に有効な球状の砥粒と、スケール除去処理に有効な多角形状の砥粒とに着目し、種々の実験を行った結果、この各砥粒の大きさと、多角形状の砥粒の量について、光沢処理とスケール除去処理の双方がバランスよく行われる適正な数値を見出し、従来にないウエットブラスト処理用の砥粒2を開発した。
【0028】
具体的には、本発明に係る砥粒2は、平均粒子径が約100μm以下の球形状の第一材2Aと、平均粒子径が約70μm以下の多角形状の第二材2Bとで構成され、第二材2Bの量は第一材2Aに対して体積比率で0.5~4%に設定されている。
【0029】
実際に、スケールの生じたワーク50の表面に対し、液体1と本発明に係る砥粒2との混合物であるスラリ3を噴射してウエットブラスト処理を行うと、ワーク50の表面を良好な光沢面とすることができ、しかも、ワーク50の表面に生じたスケールを良好に除去することができる。
【実施例0030】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0031】
本実施例は、ウエットブラスト処理で用いる新規の砥粒2を提案するものであり、例えば、熱処理を施すことでスケールが生じたワーク50の表面に、液体1と砥粒2との混合物であるスラリ3を噴射するウエットブラスト処理を行う際に後述するウエットブラスト処理装置を使用する。
【0032】
本実施例ではワーク50として、例えば工作機械や搬送機械に使用されるボールねじを構成するねじ軸(軸状ワーク50)を採用しており、このねじ軸は転造加工により形成され、また、外周面には螺旋状の転動溝50aが形成されている。尚、ワーク50としては軸状に限らず、例えば板状や球状のワークなど、本実施例の特性を発揮する構成であれば適宜採用し得るものである。
【0033】
また、このボールねじは、前述したねじ軸と、このねじ軸に被嵌され内周面に螺旋状の転動溝を設けたナットと、このねじ軸及びナットの転動溝同士の間に配されるボール(鋼球)とを有し、回転運動を直線運動に変換(若しくは直線運動を回転運動に変換)するものである。
【0034】
以下、本実施例に係るウエットブラスト処理装置(ねじ軸表面処理装置)について詳細な説明をする。
【0035】
ウエットブラスト処理装置は、
図1に図示したように軸状ワーク50を搬送する軸状ワーク搬送部と、この軸状ワーク搬送部により搬送される軸状ワーク50にウエットブラスト処理及びその他の処理を行う軸状ワーク処理部とを具備している。
【0036】
軸状ワーク搬送部は、
図1に図示したようにボックス状の基体12内に軸状ワーク50を架設状態に載置する複数(3つ)のローラー送り部13を間隔を介して並設して構成されており、処理対象となる軸状ワーク50を、基体12の一側(上流側)に配設される導入部12aから、基体12の他側(下流側)に配設される導出部12bまで連続的に水平方向へ搬送するものである。
【0037】
この各ローラー送り部13は、
図1,4~6に図示したように一対の円盤状のローラー13aで構成されており、このローラー13a同士は、立てた状態で軸状ワーク50の送り方向にずれた前後位置に並設され、このローラー13aで軸状ワーク50の下方左右位置を支持するように構成されている。
【0038】
また、各ローラー13aは、その側板面が軸状ワーク50の軸方向と直交する方向でなく、軸状ワーク50の軸心線に対して傾斜する方向(転動溝50aの傾斜方向)に向けて配されており、このローラー13aのうち一方のローラー13aには駆動モーター(駆動源)の作動により駆動回動自在に設けられ、他方のローラー13aには駆動源は設けられずフリーで回動するように設けられている。
【0039】
従って、各ローラー送り部13同士間に載置架設される軸状ワーク50は、転動溝50aにローラー13aが係止して該ローラー13aの駆動回動により軸状ワーク50の長さ方向へ直線搬送されることになり、この際、軸状ワーク50は、
図4~6中の矢印a方向に軸回転している。
【0040】
この軸状ワーク搬送部で搬送される軸状ワーク50はその搬送途時に軸状ワーク処理部でウエットブラスト処理及びその他の処理がなされる。
【0041】
具体的には、この軸状ワーク処理部は、ウエットブラスト処理部14と、洗浄部15と、洗浄液除去部16とで構成されている。
【0042】
ウエットブラスト処理部14は、
図1に図示したように軸状ワーク50を通過せしめる基体12内に配設され、スラリ噴射部10と、下方位置に配設されるスラリ貯留部17と、このスラリ貯留部17からポンプ装置18を介してスラリ噴射部10へスラリ3を搬送するスラリ搬送部19とを具備し、スラリ噴射部10から噴射されたスラリ3はスラリ貯留部17へ送られて再利用される構成である。
【0043】
本実施例は、後述する実験の結果からスラリ貯留部17に収納されるスラリ3は、液体1(水)と、砥粒2(平均粒子径が約100μm以下の球形状の第一材2Aと、平均粒子径が約70μm以下の多角形状の第二材2Bとで構成したものであり、第二材2Bの量は第一材2Aに対して体積比率で0.5~4%に設定された砥粒)との混合物である。
【0044】
尚、本明細書で言う球形状とは、真球形状だけでなく非真球形状(断面が楕円やいびつな円などの球形状)も含むものであり、多角形状とは、規則的な多角形状や不規則的な多角形状など角が複数ある角張った形状のことを言う。
【0045】
また、第一材2Aとして、ウエットブラスト処理を行うワーク50よりも硬度の高い部材が採用され、第二材2Bとして、ビッカース硬度500HV以上のステンレス製部材が採用される。
【0046】
尚、本明細書で言う砥粒2の平均粒子径(中心粒子径)は、モード径(分布中最も出現頻度の高い粒子径)で定義され、粒子にレーザー光を照射して計測する計測法を用いてその数値を得ている。
【0047】
スラリ噴射部10は、本出願人が提案する特許第3540713号に開示される噴射ノズルで構成されている。
【0048】
具体的には、液体1と砥粒2とが混合されたスラリ3が導入されて一時貯溜されるスラリ貯留室の近傍にエア噴射通路が設けられ、このエア噴射通路を圧縮空気が通過することによりスラリ貯留室から所定長さを有する導出通路を介してスラリ3が導出され、該スラリ3と圧縮空気とが混合室に送られて混合され、このスラリ3を噴射する構造である。
【0049】
また、スラリ噴射部10は、
図2,3に図示したように所定幅W,所定厚T及び所定長Lを有する方形板状のノズル部10aを有し、このノズル部10aには、スラリ3を噴射する開口部が直線状(横断面長方形状)のスリット開口部11が設けられ、前述したスラリ搬送部19が接続されるとともに、別回路で設けられ圧縮空気供給部20から延設される圧縮空気搬送部21が接続されており、スラリ搬送部19から供給されるスラリ3を圧縮空気搬送部21から供給される圧縮空気により加速して、所定の噴射速度でスリット開口部11から噴射されるように構成されている。
【0050】
図3中の一点鎖線X1はスリット開口部11の厚さ方向Xの噴射中心線であり、鎖線Y1はスリット開口部11の幅方向Yの噴射中心線である。
【0051】
本実施例は、後述する実験の結果からスラリ噴射部10から噴射されるスラリ3の噴射圧は0.2MPa以下に設定され、スラリ3の投射距離D(スリット開口部11から軸状ワーク50までの距離)が50mm以下に設定されている。
【0052】
また、スラリ噴射部10は、
図1,2,4,6に図示したように前述した軸状ワーク搬送部で搬送される軸状ワーク50の上方に設けられ、水平状態で搬送される軸状ワーク50の軸心Pに平行な面(垂直面)方向にスラリ3を噴射するように構成されている。
【0053】
また、スラリ噴射部10は、
図1,2,4,5,6に図示したようにスリット開口部11の幅方向がワーク搬送方向となるように配設されており、このスラリ噴射部10(スリット開口部11)の中心噴射面Mが軸状ワーク50の外周面にして軸心Pと対応する位置Aから所定量位置ずれした位置Bとなるオフセット状態に配設されている。
【0054】
具体的には、
図6に図示したようにスラリ噴射部10(スリット開口部11)の中心噴射面Mは、軸状ワーク50の軸心線を通過しスラリ3の中心噴射面Mと平行な面S1が、軸状ワーク50の外周面と交わる位置Aからスラリ3の噴射と直交する方向に所定量位置ずれした軸状ワーク50の外周面と交わる位置Bとなるように配設されている。
【0055】
本実施例は、後述する実験の結果から位置Aと軸心とを通過する面S1と、位置Bと軸心とを通過する面L2との角度(オフセット角度α)は45~75度(最適な角度は60度)に設定されている。
【0056】
また、本実施例ではスラリ噴射部10の数を1つとしており、軸状ワーク50は軸回転しながら搬送される構造の為、本実施例のように1つでも十分にその作用効果が発揮されるが、複数設けても良い。
【0057】
具体的には、軸状ワーク50がねじ軸の場合、後述する実験によりスラリ噴射部10は、
図7~9に図示したように軸状ワーク50のワーク搬送方向に対して左右対称位置に複数配設されると効率が良くて処理時間を短縮することができる。
【0058】
また、前述したように本実施例ではスラリ噴射部10を搬送される軸状ワーク50の上方に設けた場合であるが、その他の位置に設けても発明の特性は発揮される。
【0059】
即ち、軸状ワーク50の軸心Pを回転軸として回転させながら軸長さ方向へ直線搬送し、この直線搬送される軸状ワーク50に液体1と砥粒2との混合物であるスラリ3を、下方に設けたスラリ噴射部10から噴射して該軸状ワーク50の表面をブラスト処理する構成でも良いし、その他にも、軸状ワーク50の軸心Pを回転軸として回転させながら軸長さ方向へ直線搬送し、この直線搬送される軸状ワーク50に液体1と砥粒2との混合物であるスラリ3を、側方(水平方向の側方)に設けたスラリ噴射部10から噴射して該軸状ワーク50の表面をブラスト処理する構成でも良い。
【0060】
また、ウエットブラスト処理部14は、スラリ噴射部10の下流側位置に該スラリ噴射部10によって処理された直後の軸状ワーク50に洗浄液をかけて荒洗浄する荒洗浄部22(洗浄ノズル22a)が設けられている。
【0061】
この荒洗浄部22から噴射する洗浄液は、
図1に図示したようにスラリ搬送部19から分岐して一部のスラリ3が導入される洗浄液作出部23で作出され、スラリ3を渦巻き状に流動させて濃度の高いスラリ3と分離(分級)して得られる水(微細な砥粒や研磨粉を含んだ低濃度スラリ)である。
【0062】
この洗浄液作出部23は、スラリ搬送部19からスラリ3が導入される処理容体で構成されている。
【0063】
この処理容体は、縦長の筒状体であり、この処理容体の上部側方位置に設けたスラリ導入部23aから導入されたスラリ3が上方から下方へ渦巻き流を発生しながら通過する構成であり、該処理容体の上端部に遠心分離作用により作出された水である洗浄液(低濃度スラリ)を導出する第一導出部23bが設けられ、一方、下端部に高濃度のスラリ3を導出する第二導出部23cが設けられている。
【0064】
第一導出部23bから導出された洗浄液は、洗浄液搬送管24を介して荒洗浄部22へ送られ、一方、第二導出部23cから導出されたスラリ3は、スラリ戻り管25を介してスラリ貯留部17へ送られる。このスラリ戻り管25によりスラリ3をスラリ貯留部17に戻すことで該スラリ貯留部17内のスラリ3を撹拌するものであり、スラリ濃度が均等となるようにしている。
【0065】
更に、本実施例では、スラリ搬送部19で搬送される一部のスラリ3をスラリ貯留部17に戻すその他のスラリ戻り管19aが設けられており、この点においてもスラリ貯留部17内のスラリ3は撹拌される。
【0066】
洗浄部15は、
図1に図示したように軸状ワーク50を通過せしめる基体12内に洗浄液(洗浄水)を噴出する洗浄ノズル15aを配設して構成されている。
【0067】
尚、この洗浄部15は洗浄液貯留部26及びポンプ装置27を介して洗浄液を循環させている。
【0068】
従って、この洗浄部15によりウエットブラスト処理部14で軸状ワーク50に噴出されたスラリ3を完全に落とす洗浄処理が行われる。
【0069】
洗浄液除去部16は、
図1に図示したように前述した洗浄部15の下流側位置に圧縮空気供給部20(圧縮空気搬送部21)から供給される圧縮空気を噴出する圧縮空気噴射ノズル16aを配設して構成されている。
【0070】
従って、この洗浄液除去部16で軸状ワーク50に噴出された洗浄液を吹き飛ばす洗浄液除去処理が行われる。
【0071】
以上の構成から成るウエットブラスト処理装置において、軸状ワーク50の転動溝50a表面における光沢度の向上ができる設定(条件)を確認すべく、以下の実験1を行った。
【0072】
この実験1における処理条件は以下の通りである。
・軸状ワーク50は、直径が25mm、長さが200mmのねじ軸である。
・スラリ噴射部10のスリット開口部11の開口寸法は、2.5mm(厚さ方向寸法)×9
0mm(幅方向寸法)である。
・軸状ワーク50の回転速度nは180rpmである。
・軸状ワーク50の送り速度vは50mm/sである。
・軸状ワーク50が長さ方向における前後非対称な転動溝50aが形成されるねじ軸の為、
処理回数が奇数の場合と偶数の場合で軸状ワーク50を投入する向きを変更することで均
等に処理する。
・処理は、上記処理条件でスケール除去が完了するまで繰り返し行い、スケール除去の
完了に要する処理回数から処理に必要な時間を算出する。
【0073】
上記の処理条件で、スラリ3として液体1に混合する砥粒にビッカース硬度1250HV、平均粒子径50μm、の球形状のジルコニア粒子を使用し、酸化スケールのついたビッカース硬度650HVの試験体に対して、スラリ噴射部10のオフセット角度α、エアー圧P、投射距離Lを変えながらウエットブラスト処理した結果の一例が
図10,11である。
【0074】
この
図10,11から、光沢度はオフセット角度α=60度、エアー圧P=0.15MPa、投射距離L=20mmの条件で最も高くなり、かつ製品の要求レベルを満たすことが分かった。
【0075】
上記の処理条件(オフセット角度α=60度、エアー圧P=0.15MPa、投射距離L=20mm)で、砥粒としてビッカース硬度1250HVで、平均粒子径が50μm、100μm、200μmの3種類の球形状のジルコニア粒子を用いた場合と、ビッカース硬度が300HVで、中心粒子径が150μmの球形状のステンレス粒子を用いた場合の結果を比較して示したものが
図12である。
【0076】
この
図12から、ビッカース硬度1250HVの砥粒の場合に比べ、ビッカース硬度300HVの砥粒の場合の方が、光沢度がかなり低い値となることが分かる。
【0077】
これは、硬度の高い砥粒の場合は砥粒がワーク表面に衝突して表面の凹凸を平坦にならすことによりワークの光沢度が向上するが、硬度の低い砥粒の場合は衝突時に砥粒の変形によりエネルギーが消費されることで表面をならすことができず、光沢度が向上しないためであると考えられる。
【0078】
また、ビッカース硬度1250HVの砥粒の場合でも、平均粒子径が200μmの場合は平均粒子径が50μmや100μmの場合に比べて反射率が低くなっていることから、粒子径が大きくなると光沢度が低下することが分かった。
【0079】
以上のような実験1の結果、オフセット角度αが45~75度、スラリ噴射部10の噴射圧(エアー圧)が0.20MPa以下、投射距離Lが50mm以下(20mmが最適)の処理条件で、砥粒の硬度が軸状ワーク50よりも高く、平均粒子径が100μm以下の球形に近い形状の場合に、軸状ワーク50の光沢度が向上することが分かった。
【0080】
次に、上記の実験1を踏まえ、軸状ワーク50の転動溝50a表面におけるスケールを除去するための設定(条件)を確認すべく、以下の実験2を行った。
【0081】
この実験における処理条件は以下の通りである。
・軸状ワーク50は、直径が25mm、長さが200mmのねじ軸である。
・スラリ噴射部10のスリット開口部11の開口寸法は、2.5mm(厚さ方向寸法)×9
0mm(幅方向寸法)である。
・軸状ワーク50の回転速度nは180rpmである。
・軸状ワーク50の送り速度vは50mm/sである。
・オフセット角度α=60度、噴射圧(エアー圧)P=0.15MPa、投射距離L=
20mmである。
・軸状ワーク50が長さ方向における前後非対称な転動溝50aが形成されるねじ軸の為、
処理回数が奇数の場合と偶数の場合で軸状ワーク50を投入する向きを変更することで均
等に処理する。
・処理は、上記処理条件でスケール除去が完了するまで繰り返し行い、スケール除去の
完了に要する処理回数から処理に必要な時間を算出する。
【0082】
上記の処理条件で、スラリの液体1と混合する砥粒2として主材(第一材2A)と添加材(第二材2B)を一定の割合で混合したものを使用して実験を行った。この主材は光沢処理に有効なものを、添加材はスケール除去処理に有効なものを選定した。
【0083】
即ち、主材にビッカース硬度1250HV、平均粒子径50μmの球形状のジルコニア粒子を、添加材にビッカース硬度570HV、平均粒子径10μmのステンレス粒子を使用し、酸化スケールの付いたビッカース硬度650HVの試験体に対して、主材と添加材の体積比率を数段階に変化させて処理する実験を行った結果を、添加材を1%添加した場合について
図13に示す。
【0084】
本実施例では、この主材と添加材の体積比率の設定は、以下のようにして設定する。
【0085】
まず、スラリ貯留部17に液体1(水)のみを入れ、これに主材を一定量入れてスラリ状態として暫く装置内を循環させて均一な濃度にする。主材の濃度を適宜測定し、目標の濃度であるか否かを確認する(濃度に過不足がある場合に主材の量を調整する。)。
【0086】
続いて、主材が目標の濃度であることが確認できたら、それまでに投入した主材の体積Vmに対し、添加材を体積Vsだけ投入する。
【0087】
尚、この時のVmとVsの関係は、Vs/(Vm+Vs)×100%=a(体積比率)となり、よって、添加する添加材の体積Vsは、Vs=aVm/(1-a)である。
【0088】
この
図13から、光沢度は、同じ処理回数において、添加材を添加しない場合よりも第二材2Bを1%添加した場合の方が高くなることが分かった。そこで、添加材を添加した場合のスケール除去の状況を調べてみた結果を
図14に示す。
【0089】
この
図14から、スケール除去に要する処理回数は、添加材を添加しない場合よりも、添加材を1%添加した場合の方が少なくなっており、添加材を添加することにより光沢度が向上すると共に、スケール除去に要する時間が短くなることが分かった。
【0090】
図15は添加材の割合と光沢度の変化の割合(光沢度の測定値/添加材無しの場合の光沢度値)を示したものである。
【0091】
この
図15から、この添加材では、添加の割合が増えると光沢度の変化の割合は次第に上昇して約1%でピークとなり、更に、添加材の割合を増やしていくと次第に光沢度は減少し、約1.5%でゼロとなることが分かった。
【0092】
図16は、
図15と同じ主材で添加材をビッカース硬度800HV、平均粒子径70μmのステンレス粒子とした場合の結果である。
【0093】
この
図16から、光沢度の変化の割合は、
図15の場合と同じような傾向となり、添加材の割合が増えると次第に上昇して約1.5%でピークとなり、更に、添加材の割合を増やしていくと次第に光沢度は減少し、約2%でゼロとなることが分かった。
【0094】
このように、主材がビッカース硬度1250HV、平均粒子径50μmの球形状のジルコニア粒子の場合に、添加材の量を徐々に増やすことにより光沢度が一旦上昇する現象は、平均粒子径70μm以下の各種ステンレス粒子の添加材を使用したときに現れた。また、添加材の量を更に増やした場合に光沢度の変化の割合がゼロになるときの添加材の割合は、最も大きいもので4%であった。
【0095】
このように、添加材の量を徐々に増やすことにより光沢度が一旦上昇する現象の発生原因は、以下の理由によるものと考えられる。
【0096】
添加材は、その研削力によりスケールを削りながら除去する効果がある一方で、主材は、その硬度が軸状ワーク50よりも高い場合には、処理表面との衝突によって該処理表面の凹凸を平坦にならすことで光沢度を向上させる効果が生じるものと考えられる。このため、添加材の割合が少ない場合は、添加材の研削効果により粗くなった処理表面でも、主材が平坦にならすことで光沢度を向上させることができるが、添加材の割合が多くなると、主材が処理表面を平坦にならす効果を添加材の研削効果が上回るため、光沢度が減少するものと考えられる。
【0097】
図17は、主材としてビッカース硬度が300HVと軸状ワーク50よりも低く、平均粒子径150μmの球形状のステンレス粒子を、添加材としてビッカース硬度570HV、平均粒子径10μmのステンレス粒子を使用した場合の結果である。
【0098】
この
図17から、光沢度の変化の割合は、添加材の割合の増加とともに低下している。これは、主材の硬度が300HVとワークの硬度650HVよりも低い為、主材が処理表面に衝突した際のエネルギーの一部が主材の変形に消費される為に、主材が処理表面を平坦にならす効果が減少した為であると考えられ、主材の硬度が軸状ワーク50の硬度より低い場合には、光沢度は低下するものと考えられる。
【0099】
以上のような実験2の結果、主材(第一材2A)に軸状ワーク50よりも硬度が高く、平均粒子径が100μm以下の球形状の粒子を、添加材(第二材2B)としてビッカース硬度500HV以上、平均粒子径70μm以下のステンレス粒子を使用し、この主材(第一材2A)に添加材(第二材2B)を体積比率で0.5~4%添加した条件で処理することにより、軸状ワーク50に対する光沢度処理とスケール除去処理とが一つのウエットブラスト処理工程で同時に行うことが可能となり、添加材(第二材2B)無しの場合に比べて処理時間の短縮が可能となって、ボールネジの製造工程の大幅なコストダウンの実現が可能となる。
【0100】
また、
図18は、上記の条件で実験1,2を行う際、処理回数が奇数の場合と偶数の場合で軸状ワーク50(ねじ軸)を送り搬送する向きを変更しないで行った場合の結果の一例である。
【0101】
この
図18から、同じ処理回数であっても長さ方向の前後の転動溝50a面のスケール除去の状況に差が生じ、後側の溝面にスケール残りが多く生じていることが分かった。これは、スラリ吹き出し方向に対する前後の転動溝50a面の向きが若干異なる為(後側の溝面が隠れる為)、スラリ3の当たる角度に差が生じるために起こる現象であると考えられる。
【0102】
従って、軸状ワーク50(ねじ軸)の転動溝50aの表面処理を均等に行う為には、スラリ噴射部10を軸状ワーク50のワーク搬送方向に対して左右対称位置に複数配設されることが必要であると考えられる。
【0103】
以上の構成から成るウエットブラスト処理装置は、転造加工により形成される軸状ワーク50の製造工程における熱処理(高周波焼入れ)した後、軸状ワーク50の表面の光沢処理(仕上げ処理)及びスケール除去処理に用いられる(
図19参照)。
【0104】
具体的には、熱処理後における軸状ワーク50を基体12の導入部12aから導入すると、該軸状ワーク50は軸状ワーク搬送部で搬送される。この際、軸状ワーク50は該軸状ワーク50の軸心Pを回転軸として回動しながら長さ方向に直線搬送される。
【0105】
この軸状ワーク搬送部で搬送される軸状ワーク50は、ウエットブラスト処理部14のスラリ噴射部10にて、液体1と砥粒2(第一材2A及び第二材2B)との混合物であるスラリ3が噴射されて該軸状ワーク50の表面がブラスト処理される。この際、スラリ3を構成する砥粒2は液体1により運ばれて軸状ワーク50の表面に衝突し、該砥粒2の衝突により該軸状ワーク50の表面には光沢処理及びスケール除去処理が行われる。
【0106】
また、本実施例では、このスラリ噴射部10に係るスリット開口部11の中心噴射面Mは、軸状ワーク50の軸心線を通過しスラリ3の中心噴射面Mと平行な面S1が、軸状ワーク50の外周面と交わる位置Aからスラリ3の噴射と直交する方向に所定量位置ずれした軸状ワーク50の外周面と交わる位置Bとなるように配設されており、この構成から、軸状ワーク50の表面を、スケールなどの不要物を除去するだけでなく、光沢のある綺麗な表面に仕上げることができる。
【0107】
即ち、仮にスリット開口部11の中心噴射面Mが軸状ワーク50の外周面にして軸心Pと対応する位置Aに配設されている場合(通常の配設位置)、スラリ3(砥粒2)が軸状ワーク50の表面に対して直角に衝突することで深い凹部が形成されて乱反射し易い表面(いわゆる艶消し表面)となるが、これに対し、前述した本実施例の構成とすると、スラリ3(砥粒2)が軸状ワーク50の表面に対して傾斜角度をもって衝突することで凹部は浅くなり、乱反射しにくい面(いわゆる光沢のある表面)となる。
【0108】
従って、スケールなどの軸状ワーク50の表面の不要物を除去しつつ仕上げ処理(光沢処理)も簡易に行うことができる。
【0109】
続いて、この軸状ワーク50に対してスラリ3が噴射された部位は荒洗浄部22で荒洗浄され、続いて、当該部位は下流側に移動して洗浄部15で洗浄液により本洗浄され、続いて、当該部位は下流側に移動して洗浄液は洗浄液除去部16で除去され、その後、当該部位は導出部12bから導出される。
【0110】
以上のように、軸状ワーク50の光沢処理とスケール除去処理が良好に行われることになる。
【0111】
本実施例は上述のように構成したから、軸状ワーク50の熱処理後において行われる該軸状ワーク50に対する表面処理が迅速且つ良好に行われる。
【0112】
また、本実施例は、軸状ワーク50(ねじ軸)へのダメージが少なく、精度を落とすことなく光沢処理及びスケール除去処理が迅速に行われ、よって、処理時間の短縮によるリードタイムを削減することができ、しかも、ローコストで生産性の高い転造加工のメリットを最大限に活かすことができ、その他、仕掛(工程在庫)の削減やバフ研磨処理の省略に伴う生産スペースの縮小(面積生産性の向上)が達成される。
【0113】
また、本実施例は、軸状ワーク50を該軸状ワーク50の長さ方向に直線搬送する軸状ワーク搬送部を具備し、この軸状ワーク搬送部は軸状ワーク50を軸回転させながら搬送するように構成されているから、スラリ噴射部10の数を可及的に少なくすることができ、装置自体をコスト安にすることができる。
【0114】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。