(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061683
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】警報システム及び移報装置
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20230425BHJP
G08B 29/12 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
G08B17/00 D
G08B29/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171763
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 英聖
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴臣
(72)【発明者】
【氏名】岩間 三典
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 智絵
【テーマコード(参考)】
5C087
5G405
【Fターム(参考)】
5C087AA02
5C087BB18
5C087CC02
5C087CC23
5C087DD04
5C087EE08
5C087FF02
5C087FF03
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG11
5C087GG70
5G405AA01
5G405AD05
5G405BA07
5G405CA13
5G405CA30
(57)【要約】
【課題】外部機器側で異常を検知する検知器の動作を確認する試験の結果を認識することができるようにする。
【解決手段】警報システムは、警報器と、移報装置20とを備える。警報器は、この警報器の動作を確認する試験を行い、試験の結果を送信する。移報装置20は、受信した試験の結果に応じて警報システムに含まれない外部機器30に移報信号を出力する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常を検知する検知器と、移報装置とを備える警報システムであって、
前記検知器は、
当該検知器の動作を確認する試験を行う試験部と、
前記試験の結果を送信する送信部とを有し、
前記移報装置は、受信した前記試験の結果に応じて当該警報システムに含まれない外部機器に移報信号を出力する
警報システム。
【請求項2】
前記試験は、第1試験と、前記第1試験に続いて行われる第2試験とを含み、
前記移報装置は、前記第1試験の結果が機器異常を示す場合には前記移報信号を出力し、前記第2試験の結果が正常状態を示す場合には前記移報信号の出力を停止する
請求項1に記載の警報システム。
【請求項3】
前記送信部は、前記試験の結果を示す無線信号を送信し、
前記移報装置は、受信した前記無線信号の強度を表示する表示部を有する
請求項1又は2に記載の警報システム。
【請求項4】
警報システムに含まれる移報装置であって、
前記警報システムに含まれる、異常を検知する検知器の動作を確認する試験の結果を受信する受信部と、
前記試験の結果に応じて、前記警報システムに含まれない外部機器に移報信号を出力する移報出力部と
を備える移報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常を検知する検知器の動作を確認する試験を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の警報器からなる複数のグループ間の連動動作を試験により確認する技術が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異常を検知する検知器の動作を確認する試験を行う場合、外部機器の使用者側でこの試験の結果を知りたいという要望がある。しかし、従来技術では、外部機器側でこの試験の結果を認識することができない。
【0005】
本発明は、外部機器側で異常を検知する検知器の動作を確認する試験の結果を認識することができるようにすることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、異常を検知する検知器と、移報装置とを備える警報システムであって、前記検知器は、当該検知器の動作を確認する試験を行う試験部と、前記試験の結果を送信する送信部とを有し、前記移報装置は、受信した前記試験の結果に応じて当該警報システムに含まれない外部機器に移報信号を出力する警報システムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外部機器側で異常を検知する検知器の動作を確認する試験の結果を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る警報システムの構成の一例を示す図である。
【
図4】子機の動作を確認する試験が行われる際の動作の一例を示すシーケンス図である。
【
図5】子機の動作を確認する試験が行われる際の動作の一例を示すシーケンス図である。
【
図6】親機の動作を確認する試験が行われる際の動作の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.構成
図1は、本実施形態に係る警報システム1の構成の一例を示す図である。警報システム1は、グループ内で連動して火災の発生を警報するシステムである。警報システム1は、子機として機能する複数の警報器10(以下、「子機10a」という。)と、親機として機能する警報器10(以下、「親機10b」という。)と、移報装置20とを備える。なお、以下の説明では、子機10aと親機10bとを総称して警報器10ともいう。子機10a、親機10b、及び移報装置20は、同一のグループに属し、無線で接続されている。移報装置20は、警報システム1に含まれない外部機器30に信号線40を介して接続されている。なお、
図1に示される子機10aの数は例示であり、これに限定されない。
【0010】
警報器10は、住宅、商業ビル、オフィスビル等の管理対象の建物の天井や壁に設置され、火災を検知して警報を行う。警報器10は、住宅用火災警報器、火災センサ等、火災を検知して警報を行うどのような機器でもよい。火災は、本発明に係る異常の一例である。警報器10は、本発明に係る検知器の一例である。親機10bは、複数の子機10a及び移報装置20と無線通信可能な位置に設置され、子機10aから受信した信号を移報装置20に転送する。
【0011】
移報装置20は、警報器10における火災の検知を示す信号を受信すると、外部機器30に移報出力を行う。また、移報装置20は、警報器10における機器自身の故障など、火災以外の異常の検知を示す信号を受信した場合にも外部機器30に移報出力を行う。この移報出力とは、警報を伝達することをいう。なお、この実施形態では、移報装置20自身は火災の検知を行わない。
【0012】
外部機器30は、例えば管理人室などで管理及び運用され、管理対象の建物の監視を行う制御装置である。外部機器30は、移報装置20から移報出力が行われると、この移報出力に応じた処理を行う。この処理は、例えば移報装置20からの移報出力に応じて建物の管理を行う管理会社のコントロールセンターに信号を送信する処理である。なお、外部機器30は、増設ブザーやフラッシュライト等の警報装置、シャッターや防火戸等の防排煙機器、インターホンシステムの住宅情報盤と接続して運用してもよい。移報出力に応じた処理も、信号を送信する処理に限定されず、どのような処理であってもよい。
【0013】
図2は、警報器10の構成の一例を示す図である。警報器10は、制御部101と、記憶部102と、通信部103と、操作部104と、表示部105と、音出力部106と、火災検知部107と、電源部108とを備える。警報器10の各部は、バス又は電源線を介して接続されている。
【0014】
制御部101は、自機の各部の制御及び各種の処理を行う。制御部101は、例えばCPU等の1又は複数のプロセッサとRAM等のメインメモリとを含み、プロセッサが記憶部102に記憶されたプログラムをメインメモリに読み込んで実行する。記憶部102は、自機の機能を実現するためのプログラム、自機に設定されたアドレス、自機が属するグループのグループID、自機の状態情報等の各種データを記憶する。また、親機10bの記憶部102には、グループ内の全ての警報器10の状態情報が記憶される。アドレスは、グループ内の警報器10を一意に識別する番号である。同一グループに属する複数の警報器10には、連続した番号のアドレスが予め設定される。記憶部102は、例えばROM、EEPROM、及びフラッシュメモリのうち少なくとも1つを含む。通信部103は、無線通信規格に従って他の機器と無線通信を行うための通信インターフェースである。通信部103は、例えばアンテナと送受信回路とを含む。
【0015】
操作部104は、操作者の操作に用いられる。操作部104は、例えば試験ボタンを含む各種の操作ボタンを含む。表示部105は、各種の情報を表示する。表示部105は、発光色が異なる複数のLEDを含み、各LEDの点灯パターンにより各種の情報を示す。音出力部106は、各種の警報音や音声メッセージを出力する。音出力部106は、例えばスピーカーを含む。火災検知部107は、火災に伴って変化する物理量を測定することにより火災を検知する。火災の検知方式は、例えば光電式又は定温式である。光電式の場合、火災検知部107は周囲の煙濃度を測定して出力する。定温式の場合、火災検知部107は周囲の温度を測定して出力する。なお、火災の検知方式は、光電式や定温式に限定されず、赤外線式、複合式等、火災を検知し得る方式であればどのような方式であってもよい。電源部108は、自機の各部に電力を供給する。電源部108は、例えば電池と電源回路とを含む。
【0016】
制御部101は、異常検知部111と、更新部112と、試験部113と、報知制御部114と、送信部115と、受信部116として機能する。これらの機能は、制御部101のプロセッサが記憶部102に記憶されたプログラムを実行して演算を行い又は自機の各部を制御することにより実現される。
【0017】
異常検知部111は、自機の機器異常を検知する。この機器異常には、例えば電池切れ、センサ異常、及び電波異常が含まれる。電池切れは、電池残量が少なくなった状態を示す。例えば異常検知部111は、電池の電圧値が所定回数連続して動作電圧値未満である場合には電池切れを検知する。センサ異常は、火災検知部107の出力に異常がある状態を示す。例えば異常検知部111は、火災検知部107の出力が所定回数連続して正常範囲外である場合にはセンサ異常を検知する。光電式の火災検知部107では、部品の故障や火災検知部107の汚損などが発生した場合には、火災検知部107の出力は正常範囲外となる。火災検知部107の出力が正常範囲外となり、その状態が所定回数連続して判定されると、異常検知部111はセンサ異常を検知する。電波異常は、自機と他機との間の無線通信に異常がある状態を示す。例えば異常検知部111は、他機に応答を要求する応答要求信号を送信し、他機から応答信号が受信されない場合又は他機から受信された応答信号の強度が基準値より低い場合には電波異常を検知する。
【0018】
更新部112は、自機の状態に変化があると、記憶部102に記憶された状態情報を更新する。例えば更新部112は、異常検知部111により機器異常が検知されると、記憶部102に記憶された状態情報を機器異常を示すものに更新する。また、親機10bの更新部112は、グループ内の警報器10の状態に変化があると、記憶部102に記憶された状態情報を更新する。例えば親機10bの更新部112は、子機10aから受信された試験の結果に応じて、記憶部102に記憶された子機10aの状態情報を更新する。
【0019】
試験部113は、自機の動作を確認する試験を行う。この自機の動作には、自機の内部の動作だけでなく、他機との間で行われる動作も含まれる。この試験には、電波異常以外の機器異常の有無を確認する内部試験と、電波異常の有無を確認する通信試験とが含まれる。内部試験では、記憶部102に記憶された状態情報を用いて電池切れ又はセンサ異常の有無が判定される。通信試験では、応答を要求する応答要求信号を送信し、この応答要求信号に応じた応答信号の受信状況により電波異常の有無が判定される。
【0020】
報知制御部114は、試験部113により行われた試験の結果を報知する。例えば報知制御部114は、音出力部106から試験の結果を示す音声メッセージを出力させるとともに、試験の結果を示す点灯パターンに従って表示部105のLEDを点灯させる。試験により機器異常が発見された場合、報知制御部114は、機器異常の種類によって異なる報知を行う。例えば電池切れが発見された場合、報知制御部114は、「電池切れです」という音声メッセージを音出力部106から出力させるとともに、表示部105のLEDを所定の点滅周期で1回点滅させる。センサ異常が発見された場合、報知制御部114は、「センサ異常です」という音声メッセージを音出力部106から出力させるとともに、表示部105のLEDを所定の点滅周期で3回点滅させる。電波異常が発見された場合、報知制御部114は、「電波異常です」という音声メッセージを音出力部106から出力させるとともに、表示部105のLEDを所定の点滅周期で2回点滅させる。なお、ここでは点滅回数により違いを表示しているが、LEDの表示色や点滅周期を異なるものとしてもよい。
【0021】
送信部115は、試験部113により行われた試験の結果を送信する。試験において機器異常が発見された場合、試験の結果にはこの機器異常の種類が含まれる。また、親機10bの送信部115は、子機10aから試験の結果が送信された場合に、その子機10aの無線通信の範囲外に同一のグループに属する移報装置20が設置されているときにも移報装置20が子機10aから送信された試験の結果を受信できるように、子機10aから受信した試験の結果を移報装置20に転送する。さらに、親機10bの送信部115は、更新部112により記憶部102に記憶された状態情報が更新されると、記憶部102に記憶された状態情報を移報装置20に送信する。
【0022】
受信部116は、他の機器から各種の信号を受信する。この信号には、例えば通信試験において他機から送信された応答信号が含まれる。
【0023】
図3は、移報装置20の構成の一例を示す図である。移報装置20は、制御部201と、記憶部202と、通信部203と、操作部204と、表示部205と、音出力部206と、移報出力部207と、電源部208とを備える。移報装置20の各部は、バス又は電源線を介して接続されている。制御部201、記憶部202、通信部203、操作部204、表示部205、音出力部206、及び電源部208は、それぞれ、基本的には警報器10の制御部101、記憶部102、通信部103、操作部104、表示部105、音出力部106、及び電源部108と同様である。ただし、記憶部202は、グループ内で発生した火災等の異常情報を受信するために必要なグループID等の情報を記憶する。
【0024】
移報出力部207は、警報器10において行われた試験の結果に応じて外部機器30に移報信号を出力する。移報出力部207は、外部機器30に接続されている接点を含む。この接点は、例えばブレーク接点であり、通常時は閉状態である。なお、この例では、移報出力部207は有接点リレーを有するが、無接点リレーを有してもよい。
【0025】
制御部201は、受信部211と、判定部212と、報知制御部213と、接点制御部214として機能する。これらの機能は、制御部201のプロセッサが記憶部202に記憶されたプログラムを実行して演算を行い又は自機の各部を制御することにより実現される。
【0026】
受信部211は、警報器10から試験の結果を受信する。受信部211は、試験が行われた子機10a又は親機10bから試験の結果を直接受信してもよいし、親機10bにより転送された試験の結果を受信してもよい。
【0027】
判定部212は、受信部211により受信された試験の結果に基づいて、警報器10における機器異常の有無を判定する。例えば試験の結果により機器異常があることが示される場合、警報器10に機器異常があると判定する。
【0028】
報知制御部213は、受信部211により受信された試験の結果を報知する。判定部212により警報器10に機器異常があると判定された場合、報知制御部213は、機器異常の種類によって異なる点灯パターンに従って表示部205のLEDを点灯させる。例えば機器異常の種類が電池切れである場合、報知制御部213は、表示部205のLEDを所定の点滅周期で1回点滅させる。機器異常の種類がセンサ異常である場合、報知制御部213は、表示部205のLEDを所定の点滅周期で3回点滅させる。機器異常の種類が電波異常である場合、報知制御部213は、表示部205のLEDを所定の点滅周期で2回点滅させる。なお、ここでは点滅回数により違いを表示しているが、LEDの表示色や点滅周期を異なるものとしてもよい。
【0029】
接点制御部214は、判定部212の判定結果に応じて、移報出力部207の接点を制御する。例えば接点制御部214は、接点と対になるコイルの電磁力を利用して接点の接続状態を切り替える。判定部212により警報器10に機器異常があると判定された場合、接点制御部214は、移報出力部207の接点の接続状態を切り替えて、警報器10に機器異常があることを伝える移報信号を移報出力部207から外部機器30に出力させる。一方、移報出力部207から移報信号が出力されている間に、判定部212により警報器10に機器異常がないと判定された場合、接点制御部214は、移報出力部207の接点の接続状態を切り替えて、この移報信号の出力を停止させる。
【0030】
2.動作
図4及び
図5は、子機10aの動作を確認する試験が行われる際の動作の一例を示すシーケンス図である。この動作は、子機10aにおいてこの試験を開始する操作が行われたことを契機に開始される。
【0031】
ステップS11において操作者により子機10aの試験ボタンが押されると、ステップS12において子機10aの試験部113は、まず内部試験を行うべく、電池切れ又はセンサ異常の有無を判定する。この内部試験は、本発明に係る第1試験の一例である。この処理に先立って、異常検知部111は、所定の時間間隔で自機の状態を確認する。異常検知部111により電池切れ又はセンサ異常が検知されると、更新部112は、子機10aの記憶部102に記憶された状態情報を電池切れ又はセンサ異常を示すものに更新する。試験部113は、試験ボタンが押されると、子機10aの記憶部102に記憶された状態情報に基づいて、電池切れ又はセンサ異常があるか否かを判定する。ここでは、子機10aが電池切れになったものとする。この場合、この状態情報は電池切れを示すため、試験部113はステップS12において試験部113は電池切れであると判定する(ステップS12の判定がYES)。この場合、処理はステップS13に進む。
【0032】
ステップS13において子機10aの報知制御部114は、ステップS12において行われた試験の結果を表示部105及び音出力部106を用いて報知する。例えば電池切れであると判定された場合、報知制御部114は、「電池切れです」という音声メッセージを音出力部106から出力させるとともに、表示部105のLEDを所定の点滅周期で1回点滅させる。
【0033】
ステップS14において、子機10aの送信部115は、ステップS12において行われた試験の結果を示す試験結果信号を無線で送信する。なお、ステップS13の処理とステップS14の処理は、いずれの処理が先に行われてもよいし、並行して行われてもよい。この試験結果信号には、子機10aの記憶部102に記憶された状態情報が含まれる。また、試験結果信号には、同じグループに属する他の機器に対して、どの機器が試験を行ったかが分かるように、子機10aのアドレスとグループIDが付加される。親機10bの受信部116は、試験結果信号に含まれるグループIDと親機10bの記憶部102に記憶されたグループIDとが一致するため、子機10aから送信された試験結果信号を受信する。
【0034】
ステップS15において、親機10bの更新部112は、受信された試験結果信号に応じて、親機10bの記憶部102に記憶された子機10aの状態情報を更新する。例えば試験結果信号に電池切れを示す状態情報が含まれる場合、更新部112は、親機10bの記憶部102に記憶された状態情報のうち、この試験結果信号に含まれるアドレスにより識別される子機10aの状態情報を電池切れを示すものに更新する。
【0035】
ステップS16において、親機10bの送信部115は、試験を行った子機10aからの試験結果信号の送信が停止したことを確認の後、この試験結果信号を移報装置20に無線で転送する。移報装置20の受信部211は、試験結果信号に含まれるグループIDと記憶部202に記憶されたグループIDとが一致するため、親機10bから転送された試験結果信号を受信する。
【0036】
ステップS17において、移報装置20の判定部212は、受信された試験結果信号に機器異常を示す状態情報が含まれるため、警報器10に機器異常があると判定する。ステップS18において、移報装置20の報知制御部213は、受信された試験結果信号により示される試験の結果を表示部205を用いて報知する。例えば試験結果信号に電池切れを示す状態情報が含まれる場合、報知制御部213は、表示部205のLEDを所定の点滅周期で1回点滅させる。
【0037】
ステップS19において、移報装置20の接点制御部214は、ステップS17の判定に応じて移報出力部207の接点を制御することにより、移報出力部207から外部機器30に警報器10に機器異常があることを伝える移報信号を出力させる。なお、ステップS18の処理とステップS19の処理は、いずれの処理が先に行われてもよいし、並行して行われてもよい。例えば通常時、接点は閉状態であり、外部機器30には電流が流れている。しかし、機器異常を示す状態情報を含む試験結果信号を受信すると、接点制御部214は接点を開状態に切り替える。接点が開状態に切り替わると、接点の両端の導通が失われ、外部機器30に電流が流れなくなる。これにより、外部機器30は警報器10に機器異常があることを認識する。そして、外部機器30は、例えば警報器10の機器異常を示す信号を管理会社のコントロールセンターに信号を送信する。これにより、管理会社は、管理対象の建物に設置された警報器10に機器異常があることを認識し、機器異常の対処を行うことができる。なお、この移報信号の出力は機器異常が回復するまで継続される。
【0038】
ここで、作業員が電池切れとなった子機10aの設置場所に移動し、子機10aの電池を交換したものとする。電池の交換後、作業員は、電池切れから回復したかを確認するために子機10aの試験ボタンを押す。試験ボタンが押されると、再び上述したステップS11以降の処理が行われる。ただし、今回は子機10aの電池が交換されているため、センサ異常がないとすると、ステップS12では電池切れ又はセンサ異常がないと判定される(ステップS12の判定がNO)。この場合、処理は
図5に示されるステップS21に進む。
【0039】
ステップS21において、子機10aの試験部113は、通信試験を行うべく、親機10bからの応答を要求する応答要求信号を無線で送信する。この通信試験は、内部試験に続いて行われるため、本発明に係る第2試験の一例である。この応答要求信号には、同じグループに属する他の機器に対して、どの機器が試験を行ったかが分かるように、子機10aの記憶部102に記憶された子機10aのアドレスと、グループIDとが含まれる。電波異常が発生していない場合、この応答要求信号は親機10bに到達する。親機10bの受信部116は、応答要求信号に含まれるグループIDと親機10bの記憶部102に記憶されたグループIDとが一致するため、子機10aから送信された応答要求信号を受信する。
【0040】
ステップS22において、親機10bの試験部113は、受信された応答要求信号に応じて子機10aに応答信号を無線で送信する。この無線信号には、同じグループに属する他の機器に対して、どの機器が応答を行ったかが分かるように、親機10bの記憶部102に記憶された親機10bのアドレスと、グループIDとが含まれる。子機10aの受信部116は、応答信号に含まれるグループIDと子機10aの記憶部102に記憶されたグループIDとが一致するため、親機10bから送信された応答信号を受信する。
【0041】
ステップS23において、子機10aの試験部113は、電波異常の有無を判定する。例えば親機10bから受信された応答信号の強度が基準値未満であり、又は親機10bから応答信号が受信されない場合、試験部113は、電波異常があると判定する。一方、親機10bから応答信号が受信され、且つこの応答信号の強度が基準値以上である場合、試験部113は、電波異常がないと判定する。
【0042】
ステップS24において、子機10aの報知制御部114は、動作を確認する試験の結果を表示部105及び音出力部106を用いて報知する。例えばいずれの機器異常もない場合、報知制御部114は、「正常です」という音声メッセージを音出力部106から出力させる。この報知により、子機10aが正常に動作するようになったことが分かる。そして、子機10aの動作を確認する試験は終了する。
【0043】
一方、ステップS23において電波異常があると判定された場合、ステップS24では、「電波異常です」という音声メッセージが音出力部106から出力されるとともに、表示部105のLEDが所定の点滅周期で2回点滅してもよい。この報知により、子機10aに電波異常があることが分かる。
【0044】
ステップS25において、親機10bの更新部112は、子機10aから応答要求信号が受信されると、親機10bの記憶部102に記憶された子機10aの状態情報を更新する。子機10aから応答要求信号が受信されたということは、子機10aが正常状態であることを示す。そのため、更新部112は、親機10bの記憶部102に記憶された状態情報を正常状態を示すものに更新する。なお、電波異常により子機10aから送信された応答要求信号が親機10bに到達しなかった場合には、ステップS25以降の処理は行われない。
【0045】
ステップS26において、親機10bの送信部115は、親機10bの記憶部102に記憶された状態情報が更新されると、子機10aの試験の結果を含む試験結果信号を無線で送信する。この試験結果信号には、親機10bの記憶部102に記憶されたグループ内の全ての警報器10の状態情報が含まれる。また、試験結果信号には、親機10bのアドレスとグループIDが付加される。ここでは、グループ内の全ての警報器10の状態情報が正常状態を示すものとする。移報装置20の受信部211は、試験結果信号に含まれるグループIDと記憶部202に記憶されたグループIDとが一致するため、親機10bから転送された試験結果信号を受信する。
【0046】
ステップS27において、移報装置20の判定部212は、受信された試験結果信号に機器異常を示す状態情報が含まれない場合、すなわち試験結果信号に含まれる全ての状態情報が正常状態を示す場合、グループ内のいずれの警報器10にも機器異常がないと判定する。ステップS28において、移報装置20の接点制御部214は、ステップS27の判定に応じて移報出力部207の接点を制御することにより、移報出力部207からの移報信号の出力を停止させる。例えば接点制御部214は、移報出力部207の接点を通常の閉状態に切り替える。接点が閉状態に切り替わると、接点の両端が導通し、外部機器30に電流が流れる。これにより、外部機器30側では警報器10の機器異常が回復したことが認識される。
【0047】
上記動作例では、内部試験において電池切れ又はセンサ異常がないと判定された場合に限り、通信試験が開始される。しかし、内部試験の試験結果にかかわらず、内部試験に続いて通信試験が行われてもよい。また、この場合、ステップS14の処理は行われず、ステップS21の処理において、内部試験の試験結果が応答要求信号に含めて送信されてもよい。例えば子機10aから応答要求信号が受信され、且つ、その応答要求信号に含まれる内部試験の試験結果が正常状態を示す場合には、子機10aが正常状態であることを示す。この場合、親機10bは、記憶部102に記憶された状態情報を正常状態を示すものに更新し、移報装置20に試験結果信号を送信してもよい。
【0048】
また、ステップS21の処理とS22の処理とは所定の回数だけ繰り返し実施されてもよい。この場合、子機10aは、親機10bから応答信号を受信すると、再び応答要求信号を親機10bに送信する。子機10aから2回目以降の応答要求信号が送信されたということは、親機10bから送信された応答信号が子機10aに到達していることを意味する。したがって、親機10bは、子機10aに応答信号を送信した後、子機10aから応答要求信号を少なくとも1回受信した場合には、電波異常が発生しておらず、子機10aが正常状態であると認識し、記憶部102に記憶された状態情報を正常状態を示すものに更新し、移報装置20に試験結果信号を送信してもよい。
【0049】
図6は、親機10bの動作を確認する試験が行われる際の動作の一例を示すシーケンス図である。この動作は、例えば親機10bにおいてこの試験を開始する操作が行われたことを契機に開始される。
【0050】
ステップS31において操作者により親機10bの試験ボタンが押されると、ステップS32において親機10bの試験部113は、自機の動作を確認する試験を行うべく、機器異常の有無を判定する。例えば試験部113は、上述したステップS11と同様に、親機10bの記憶部102に記憶された状態情報に基づいて、電池切れ又はセンサ異常の有無を判定する。
【0051】
ステップS33において、親機10bの報知制御部114は、ステップS32において行われた試験の結果を音出力部106を用いて報知する。例えば動作が正常であると判定された場合、報知制御部114は、「正常です」という音声メッセージを音出力部106から出力させる。
【0052】
ステップS34において、親機10bの送信部115は、ステップS32において行われた試験の結果を含む試験結果信号を無線で送信する。この試験結果信号には、親機10bの記憶部102に記憶されたグループ内の全ての警報器10の状態情報が含まれる。また、試験結果信号には、同じグループに属する他の機器に対して、どの機器が試験を行ったかが分かるように、親機10bのアドレスとグループIDが付加される。この試験結果信号は、本発明に係る無線信号の一例である。移報装置20の受信部211は、試験結果信号に含まれるグループIDと記憶部202に記憶されたグループIDとが一致するため、親機10bから送信された試験結果信号を受信する。
【0053】
ステップS35において、移報装置20の判定部212は、受信された試験結果信号に基づいて警報器10における機器異常の有無を判定する。試験結果信号に機器異常を示す状態情報が含まれる場合には、警報器10に機器異常があると判定され(ステップS35の判定がYES)、処理は上述したステップS18に進む。一方、試験結果信号に機器異常を示す状態情報が含まれない場合には、グループ内のいずれの警報器10にも機器異常がないと判定され(ステップS35の判定がNO)、処理はステップS36に進む。
【0054】
ステップS36において、移報装置20の報知制御部213は、受信された試験結果信号の強度を表示部205に表示させる。具体的には、報知制御部213は、受信された試験結果信号の強度によって異なる表示を行う。試験結果信号の強度は、閾値との比較によって「強」というレベルと「弱」というレベルとに分けられる。例えば試験結果信号の強度が閾値以上である場合には「強」と決定され、閾値未満である場合には「弱」と決定される。報知制御部213は、試験結果信号の強度が「強」である場合、表示部205の第1発光色のLEDを所定の周期で点滅させる。一方、報知制御部213は、試験結果信号の強度が「弱」である場合、表示部205の第2発光色のLEDを所定の周期で点滅させる。この信号強度の表示は、試験結果信号が受信されてから所定時間継続して行われる。この表示により、移報装置20における信号の受信強度が分かる。なお、ここではLEDの表示色により受信強度の違いを表示しているが、LEDの点滅周期や点滅回数を異なるものとしてもよい。
【0055】
上述した実施形態によれば、警報器10の試験の結果に応じた移報信号が外部機器30に出力されるため、外部機器30側でこの試験の結果を認識することができる。また、親機10bの試験においては、移報装置20の表示部205に親機10bから受信された信号の強度が表示されるため、この表示を見ることにより、移報装置20における信号の受信強度を認識することができる。さらに、親機10bは、子機10aから応答要求信号を受信したことを契機に、状態情報を正常状態を示すものに更新し、この状態情報を含む試験結果信号を移報装置20に送信する。そのため、子機10aの機器異常があることを伝える移報信号が移報装置20から出力されている間に、子機10aが機器異常から回復して子機10aの試験が行われると、移報信号の出力を迅速に停止することができる。
【0056】
3.変形例
本発明は、上述した実施形態に限定されない。上述した実施形態は、以下の変形例のように変形して実施されてもよい。実施形態と変形例とは、組み合わせて用いられてもよいし、実行に伴って切り替えて用いられてもよい。同様に、以下の変形例は、組み合わせて用いられてもよいし、実行に伴って切り替えて用いられてもよい。
【0057】
変形例1
上述した実施形態において、信号強度の表示は、実施形態で説明した例に限定されない。例えば試験結果信号の強度は、複数の閾値との比較により3つ以上のレベルに分けられ、それぞれのレベルに応じた表示が行われてもよい。例えば試験結果信号の強度が「非常に強い」、「強い」、「普通」、「弱い」、「非常に弱い」の5つのレベルに分けられ、それぞれのレベルに応じて異なる表示が行われてもよい。また、表示部205にディスプレイが含まれる場合には、信号強度を示す数値が表示部205に表示されてもよい。この構成によれば、移報装置20における信号の受信強度をより詳細に認識することができる。
【0058】
また、信号強度の表示は、親機10bの試験が行われた場合だけでなく、子機10aの試験が行われた場合にも行われてもよい。例えば子機10aの試験に応じて移報装置20が試験結果信号を受信した場合に、この試験結果信号の強度が表示されてもよい。さらに、信号強度の表示は、グループ内の警報器10に機器異常がないと判定された場合だけでなく、グループ内の警報器10に機器異常があると判定された場合にも行われてもよい。例えば移報装置20が試験結果信号を受信した場合には、グループ内の警報器10に機器異常があるか否かに拘わらず、その試験結果信号の強度が表示されてもよい。
【0059】
さらに、信号強度の表示に加えて又は代えて、レベルに応じた音声メッセージが音出力部206から出力されてもよい。例えば試験結果信号の強度が「強」である場合、「信号強度は強いです」という音声が音出力部206から出力されてもよい。この構成によれば、移報装置20における信号の受信強度が認識し易くなる。
【0060】
変形例2
上述した実施形態において、警報器10の機器異常は、電池切れ、センサ異常、及び電波異常に限定されない。機器異常は、警報器10の機器に関する異常であればどのような異常であってもよい。また、警報器10の動作を確認する試験は、上述した内部試験及び通信試験に限定されない。警報器10の動作を確認する試験であればどのような試験であってもよい。
【0061】
変形例3
上述した実施形態において、親機10bの送信部115は、子機10aから受信した信号を転送する際に、必ずしも子機10aからの信号の送信が停止したことを確認してから転送しなくてもよい。例えば送信部115は、子機10aから信号を受信した時点から所定時間経過後にこの信号を転送してもよいし、子機10aから信号を受信すると、すぐにこの信号を転送してもよい。
【0062】
変形例4
上述した実施形態において、子機10aの無線通信の範囲内に移報装置20が設置されている場合には、子機10aから送信された信号がそのまま移報装置20に到達する。この場合、移報装置20は、子機10aから直接信号を受信し、受信した信号に応じて処理を行ってもよい。
【0063】
変形例5
上述した実施形態において、子機10a、親機10b、及び移報装置20の警報の内容は一例であり、これに限定されない。例えば移報装置20においても、子機10aや親機10bと同様に、音出力部206から音声メッセージが出力されてもよい。
【0064】
変形例6
本発明に係る火災検知器は、警報器10に限定されず、必ずしも警報を行わなくてもよい。例えば火災検知器は、警報機能を有さない感知器や火災センサであってもよい。
【0065】
変形例7
上述した実施形態において、警報システム1の構成は上述した例に限定されない。警報システム1は、上述した装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。例えば警報システム1は、必ずしも子機10aと親機10bとを含まなくてもよく、これらの区別がない複数の警報器10を含んでもよい。警報器10及び移報装置20の構成も、上述した構成を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の構成を含まずに構成されてもよい。移報出力部207は、移報出力部207の機能を実現し得る回路構成であれば、どのような回路構成であってもよい。移報出力部207は、上述した回路要素を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の回路要素を含まずに構成されてもよい。例えば移報出力部207の接点はメーク接点又はトランスファ接点であってもよいし、移報出力部207が複数の接点を有していてもよい。移報出力部207の接点がメーク接点である場合、通常時、接点は開状態であり、外部機器30には電流が流れない。しかし、機器異常を示す状態情報を含む試験結果信号を受信すると、接点制御部214は接点を閉状態に切り替える。接点が閉状態に切り替わると、接点の両端が導通し、外部機器30に電流が流れる。これにより、外部機器30は警報器10に機器異常があることを認識する。また、移報信号の出力を停止する際には、接点制御部214は、移報出力部207の接点を通常の開状態に切り替える。接点が開状態に切り替わると、接点の両端の導通が失われ、外部機器30に電流が流れなくなる。これにより、外部機器30側では警報器10の機器異常が回復したことが認識される。上述した実施形態のように移報出力部207の接点がブレーク接点である場合には、外部機器30に電流が流れなくなることにより、機器異常が発生したことを伝える移報信号が出力される。一方、この変形例のように移報出力部207の接点がメーク接点である場合には、外部機器30に電流が流れることにより、機器異常が発生したことを伝える移報信号が出力される。
【0066】
上述した実施形態において、警報器10の制御部101は、DSP、ASIC、PLD、FPGA等の回路を含み、警報器10の機能の少なくとも一部はこの回路により実現されてもよい。同様に、移報装置20の制御部201もこの回路を含み、移報装置20の機能の少なくとも一部はこの回路により実現されてもよい。
【0067】
変形例8
上述した実施形態において、警報システム1の動作は上述した例に限定されない。警報システム1の処理手順は、矛盾の無い限り、順序が入れ替えられてもよい。また、警報システム1の一部の処理手順が省略されてもよい。
【0068】
変形例9
本発明の別の形態は、警報システム1、子機10a、親機10b、及び移報装置20のうち少なくともいずれかにおいて行われる処理のステップを有する方法を提供してもよい。また、本発明のさらに別の形態は、子機10a、親機10b、及び移報装置20において実行されるプログラムを提供してもよい。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記憶されて提供されてもよいし、インターネット等を介したダウンロードによって提供されてもよい。
【0069】
変形例10
本発明は、火災以外の現象の発生を警報するシステムに適用されてもよい。この変形例では、警報器10は、ガス警報器、人感センサ等の火災以外の現象を検知して警報を行うものであってもよい。ガス警報器、人感センサ等の火災以外の現象を検知して警報を行うものも、本発明に係る検知器の一例である。要するに、本発明に係る検知器は、異常を検知するものであれば、どのような機器であってもよい。この異常は、火災に限定されず、ガス漏れ、不審者の侵入等、どのような異常であってもよい。
【0070】
変形例11
上述した実施形態において、警報器10は、必ずしも試験ボタンの押下に先立って電池切れ又はセンサ異常の検知を行わなくてもよい。例えば警報器10の試験部113は、試験ボタンの押下に応じて火災検知部107を動作させ、その結果によってセンサ異常であるか否かを判定してもよい。また、警報器10の試験部113は、試験ボタンの押下に応じて電池の電圧値を測定し、その結果によって電池切れか否かを判定してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1:警報システム、10:警報器、20:移報装置、111:異常検知部、112:更新部、113:試験部、114:報知制御部、115:送信部、116:受信部、207:移報出力部、211:受信部、212:判定部、213:報知制御部、214:接点制御部