(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000617
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】飛行体運行管理システム及び飛行体運行管理方法
(51)【国際特許分類】
G08G 5/00 20060101AFI20221222BHJP
B64F 1/12 20060101ALI20221222BHJP
B64C 27/04 20060101ALI20221222BHJP
B64F 1/36 20170101ALI20221222BHJP
【FI】
G08G5/00 A
B64F1/12
B64C27/04
B64F1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101549
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴廣
(72)【発明者】
【氏名】松原 満
(72)【発明者】
【氏名】板東 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】今本 健二
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA26
5H181BB04
5H181EE12
5H181FF03
5H181FF11
5H181FF21
5H181LL01
5H181MB02
(57)【要約】
【課題】多数の垂直離着陸機能を有する飛行体が離着陸するためのエアポートにおいてエアポートの利用効率を高めることが可能なエアポート用の飛行体運行管理システム及び飛行体運行管理方法を提供する。
【解決手段】複数の駐機場を備えるエアポートにおける飛行体の飛行経路計画及び離着陸を管理する飛行体運行管理システムであって、飛行体運行管理システムは、エアポートの上空に少なくとも1層以上からなる層状領域と、飛行体の周囲に占有領域とを設定し、占有領域は飛行体が飛行する層状領域と、この層状領域の上下に隣り合う層状領域の少なくとも一方に設定されることを特徴とする飛行体運行管理システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の駐機場を備えるエアポートにおける飛行体の飛行経路計画及び離着陸を管理する飛行体運行管理システムであって、
飛行体運行管理システムは、前記エアポートの上空に少なくとも1層以上からなる層状領域と、前記飛行体の周囲に占有領域とを設定し、前記占有領域は前記飛行体が飛行する前記層状領域と、この層状領域の上下に隣り合う前記層状領域の少なくとも一方に設定されることを特徴とする飛行体運行管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の飛行体運行管理システムであって、
前記飛行体のエッジよりも水平方向外側にエッジを持つ平面を、上下方向に延長した立体を前記飛行体の前記占有領域として設定することを特徴とする飛行体運行管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の飛行体運行管理システムであって、
前記占有領域の水平方向幅は垂直方向高さよりも小さいことを特徴とする飛行体運行管理システム。
【請求項4】
請求項2に記載の飛行体運行管理システムであって、
前記占有領域の高さは前記飛行体が飛行する前記層状領域およびそれと上下方向に隣り合う前記層状領域の高さに設定することを特徴とする飛行体運行管理システム。
【請求項5】
請求項2に記載の飛行体運行管理システムであって、
前記層状領域の高さは前記層状領域の下端を飛行する飛行体がその2層下の前記層状領域の上端を飛行する飛行体に影響を与えない高さよりも高く設定することを特徴とする飛行体運行管理システム。
【請求項6】
請求項5に記載の飛行体運行管理システムであって、
前記層状領域の高さは飛行体が発生する気流の影響範囲に基づいて設計されることを特徴とする、飛行体運行管理システム。
【請求項7】
請求項5に記載の飛行体運行管理システムであって、
前記層状領域の高さは前記飛行体で想定される故障から復帰する際の時間をもとに算出される落下量に基づいて設計されることを特徴とする、飛行体運行管理システム。
【請求項8】
請求項5に記載の飛行体運行管理システムであって、
前記占有領域及び前記層状領域の高さは風、侵入物の回避などで予想される前記飛行体の移動に対して余裕を持たせることを特徴とする、飛行体運行管理システム。
【請求項9】
請求項2に記載の飛行体運行管理システムであって、
前記飛行体が別の前記層状領域に移動した場合、その飛行体が飛行する前記層状領域と上下方向に隣り合う前記層状領域以外の領域の占有を解除することを特徴とする飛行体運行管理システム。
【請求項10】
請求項1に記載の飛行体運行管理システムであって、
前記層状領域は、前記飛行体が存在する前記占有領域の水平方向への移動を許可する待機領域と、前記飛行体が存在する前記占有領域の水平方向への移動を許可しない遷移領域を有することを特徴とする飛行体運行管理システム。
【請求項11】
請求項10に記載の飛行体運行管理システムであって、
前記層状領域の高さは前記待機領域よりも前記遷移領域のほうが高いことを特徴とする、飛行体運行管理システム。
【請求項12】
請求項10に記載の飛行体運行管理システムであって、
前記層状領域が1層で構成される場合、前記待機領域として扱うことを特徴とする、飛行体運行管理システム。
【請求項13】
請求項10に記載の飛行体運行管理システムであって、
前記待機領域内に複数の占有領域が存在する場合、前記待機領域内を飛行する前記飛行体の前記占有領域を前記複数の占有領域同士が接触しないように前記飛行体と前記占有領域を移動させる経路を設計することを特徴とする飛行体運行管理システム。
【請求項14】
請求項10に記載の飛行体運行管理システムであって、
前記飛行体は外部からの侵入物があった場合、前記占有領域内で回避する経路を設計することを特徴とする飛行体運行管理システム。
【請求項15】
請求項10に記載の飛行体運行管理システムであって、
前記エアポートは前記飛行体の位置、状態を検出するセンサを備えることを特徴とする飛行体運行管理システム。
【請求項16】
駐機場を備えるエアポートにおける飛行体運行管理方法であって、
エアポートの上空に少なくとも1層以上からなる層状領域を設定して飛行体は前記層状領域内を移動して離着陸を行うとともに、前記層状領域内における前記飛行体の周囲に占有領域を設定し、前記占有領域は前記飛行体が飛行する前記層状領域と、この層状領域の上下に隣り合う前記層状領域の少なくとも一方に設定されることを特徴とする飛行体運行管理方法。
【請求項17】
請求項16に記載の飛行体運行管理方法であって、
1層以上からなる前記層状領域は、飛行体の垂直方向への移動と水平方向への移動を許可する待機領域と、垂直方向への移動を許可する遷移領域を含んで構成されることを特徴とする飛行体運行管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機等の飛行体の飛行体運行管理システム及び飛行体運行管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動モータで複数の回転翼を回転させ、垂直離着陸できる小型航空機(電動垂直離着陸機 eVTOL : electric vertical takeoff and landing aircraft)の利用のニーズが高まっている。電動垂直離着陸機(eVTOL)は、都市部の渋滞や環境負荷の低減、また過疎地域への輸送手段の確保など様々な交通課題の解決が期待されている。
【0003】
上記のような小型航空機が社会インフラとして実装されるためには、多数の飛行体の高効率な運行の実現による普及が必要である。特に離着陸時は他飛行体が発生する気流の影響など受けて飛行体が不安定になるため、効率と共に安全性の確保が重要とされる。
【0004】
航空機の安全な運行の確保に関する技術としては、例えば特許文献1に記載の技術がある。特許文献1では、ドローンなどの飛行体を対象とした着陸エリアの効率的な活用を目的として着陸エリアの一部が仮想的に区切られたパーティションを着陸エリアに設定して、その着陸エリア内で着陸の処理を行う技術が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、エアポートを想定した離着陸エリアに複数の飛行体が飛来した状態を想定し、離着陸エリアを効率的に利用するための一つの手法を提案している。しかし、将来の運行状態を考えると運航の高頻度化や都市内でのエアポートの設置なども考えられるため、十分な領域を確保できない可能性がある。そのため、運航頻度が高まった場合にエアポート上空で待機できる飛行体が少なく、エアポートの利用効率が下がるだけではなく、緊急度に応じた着陸順の入れ替えなど柔軟な運航管理を行うことができない。
【0007】
そこで、本発明の目的は多数の垂直離着陸機能を有する飛行体が離着陸するためのエアポートにおいてエアポートの利用効率を高めることが可能なエアポート用の飛行体運行管理システム及び飛行体運行管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、「複数の駐機場を備えるエアポートにおける飛行体の飛行経路計画及び離着陸を管理する飛行体運行管理システムであって、飛行体運行管理システムは、エアポートの上空に少なくとも1層以上からなる層状領域と、飛行体の周囲に占有領域とを設定し、占有領域は飛行体が飛行する層状領域と、この層状領域の上下に隣り合う層状領域の少なくとも一方に設定されることを特徴とする飛行体運行管理システム」としたものである。
【0009】
また本発明は、「駐機場を備えるエアポートにおける飛行体運行管理方法であって、エアポートの上空に少なくとも1層以上からなる層状領域を設定して飛行体は層状領域内を移動して離着陸を行うとともに、層状領域内における飛行体の周囲に占有領域を設定し、占有領域は飛行体が飛行する層状領域と、この層状領域の上下に隣り合う層状領域の少なくとも一方に設定されることを特徴とする飛行体運行管理方法」としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の飛行体をエアポートに効率かつ安全に離着陸させることができる飛行体運行管理システム及び飛行体制御システムを提供するができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例1に係る飛行体とエアポート、エアポートの層状領域、飛行体の占有領域の関係を示す概念図。
【
図2】本発明の実施例1に係るエアポートに設置される飛行体運行管理システムと飛行体に設置される飛行体制御システムの構成例を示すブロック図。
【
図3】エアポートのある垂直平面における断面図を真横から見た場合の模式図。
【
図4】層状領域の高さの設定と飛行体の引き起こす気流の関係を示す概略図。
【
図5】
図5は
図3の矢印Iで示す待機領域上端の平面に接する占有領域の模式図。
【
図6】本発明の実施例1に係る着陸時の飛行体運行管理システムの動作フローを示すフローチャート。
【
図7】本発明の実施例1に係る着陸時の飛行体制御システムの動作フローを示すフローチャート。
【
図8】飛行体F1が飛行する領域とその下方の領域のみ占有することを示す模式図。
【
図9】断面形状が台形状の占有領域とすることを示す模式図。
【
図10】本発明の実施例2に係る離陸時の飛行体運行管理システムの動作フローを示すフローチャート。
【
図11】本発明の実施例2に係る離陸時の飛行体制御システムの動作フローを示すフローチャート。
【
図12】エアポートのある垂直平面における断面図の別例を示す模式図。
【
図13】エアポートのある垂直平面における断面図の別例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0013】
なお図面において同様の構成要素には同様の符号を付し、重複する同様の説明はおこなわないことがある。また、本発明の各種の構成要素は必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、一の構成要素が複数の部材から成ること、複数の構成要素が一の部材から成ること、或る構成要素が別の構成要素の一部であること、或る構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複すること、などを許容する。
【実施例0014】
図1は本発明の実施例1に係る飛行体とエアポート、エアポートの層状領域、飛行体の占有領域の関係を示す概念図である。
【0015】
図1において、飛行体F(F1~F4)は、複数の回転翼を備えた垂直離着陸可能であり、エアポート5に同時に飛来している状態を示している。飛行体Fは、利用者の搭乗、荷物の運搬、航空写真の撮影などの用途に使用される。また飛行体Fは、その内部に、
図2を参照して後述するところの飛行体Fの飛行を制御する飛行体制御装置200を有する。
【0016】
エアポート5は、飛行体Fが離着陸する複数の駐機場A(Aa、Ab)と、エアポートの離着陸を管理する管制設備8とエアポート5上空の飛行体Fの位置、状態を監視するセンサなどで構成される上空監視部9を備える。管制設備8内には
図2に示して詳細を後述するように、飛行体運行管理システム100が設置され、エアポート5の駐機場Aの状態、周囲の気象状態、飛行体Fの状態を基に、離着陸を管理する。
【0017】
本発明の飛行体運行管理システム100は、エアポート5の上空に層状の仮想的な領域である層状領域R(Ra~Rd)を設定している。層状領域Rは、エアポート5上空領域を複数層に分けたものであり、エアポート5上空領域に設定している。
【0018】
また層状領域Rは、高さ方向に高さが低い順から順次R1、R2、R3、R4の4層を例えば形成している。このように構成された層状領域Rにおいて、飛行体F(例えばF3)は、駐機場Aaから、その層状領域の各層であるR1、R2、R3を順次通過してR4から目的地に向けて航行を開始する。ここで各層のうち、最下層のR1は飛行体Fを駐機しておく駐機層というべきものであり、最上層のR4は駐機場に出入りする出入り口であることから離着陸層というべきものであり、またR2とR4は、水平方向への飛行体Fの移動を許可する層であり、飛行体Fが水平方向に移動可能することで、他の飛行体Fが優先的に離着陸することを可能とする待機層としての役割を果たす。
【0019】
このように
図1のシステムでは、飛行体運行管理システム100によって層状領域Rがエアポート5上空に高度に応じて設定され、飛行体運行管理システム100と飛行体制御システム200の情報を用いて飛行体がどの領域を飛行中かを把握される。
【0020】
また、エアポート5に飛来した飛行体F(F1~F4)の周辺には飛行体の占有領域O(Oa~Od)を設定する。この占有領域Oは飛行体として例えばF3の外側エッジよりも水平方向に広い平面を上下方向に延長した立体状の形状とし、少なくとも飛行体F3が現在飛行している領域を縦方向に占有する。
図1の飛行体F3の事例の場合に、層状領域Rの各層のうちR2層が、この飛行体F3が現在飛行している領域を縦方向に占有したところの占有領域Oc2(数字(2)は層状領域Rの添え字(この場合2)を示す)である。
【0021】
また本発明においては、飛行体F3が現在飛行している層状領域R2およびその上下に隣り合う層状領域R1、R3に設定する占有領域Oc1、Oc3を含めて占有領域Ocを設定するものである。なおここでは占有領域Oを筒状として記載したが、直方体などで占有領域Oを設定することにしてもよい。
【0022】
かくして、エアポート5に飛来した飛行体F(F1~F4)は占有領域Oの内側に設定される飛行経路に沿って降下し、駐機場Aa、Abに着陸し、離陸していく。
【0023】
次にエアポート5に設置される飛行体運行管理システム100と飛行体F1~4に設置される飛行体制御システム200の機能構成について説明する。
図2は本発明の実施例1にかかる飛行体運行管理システム100と飛行体制御システム200の構成例を示すブロック図である。
【0024】
図2において、飛行体運行管理システム100は、前述した上空監視部101と、飛行体の位置、状態などを検出する飛行体検出部102と、他のエアポートやエアポート外を飛行する飛行体の情報を取得すると共にこのエアポートに存在する飛行体の情報を送信する管制情報授受部103と、エアポート内の飛行体の離着陸を決定する離着陸決定部104と、駐機場の空き状態、気候(風、風雨など)、搭乗者の数などのエアポート周辺状情報を取得するポート情報取得部105と、飛行体の占有領域Oを設定する占有領域設定部106と、飛行体の占有領域内飛行経路を生成する離着陸経路設計部107と、離着陸経路と占有領域Oの位置を飛行体制御システム200に送信し、飛行体のセンサにもとづく周囲状況や、飛行体の現在位置などを受信する通信部108を備えている。
【0025】
飛行体に設置される飛行体制御システム200は、飛行体運行管理システム100の通信部108と信号をやり取りする飛行体制御システム200側の通信部201と、飛行体の姿勢、位置、バッテリー充電量、機器などの状態を監視する状態監視部202と、飛行体周辺の別の飛行体、障害物などを検出するセンサで構成された周辺監視部203と、通信部201で受信した離着陸経路情報と占有領域Oの情報をもとに状態監視部202で得られた飛行体の状態と周辺監視部で得られた飛行体周辺の情報をもとに飛行体の飛行を制御する飛行制御部204を備えている。
【0026】
また、
図3にエアポート5のある垂直平面における断面図を真横から見た場合の模式図を示す。
図3を用いてエアポート5上空に設定される層状領域Rおよび占有領域Oについて説明する。
図3の例では、エアポート5上空には層状領域Rが設定されている。層状領域Rの上端層R4は飛行体Fが飛行可能な高さなどを元に設定されるのがよい。
図3の場合、飛行体F5は層状領域Rによる管理領域外のため占有領域は設定しない例を示している。
【0027】
なお
図3において、駐機場A(Aa、Ab、Ac)の高さ方向の領域が層状領域Rであり、層状領域に背景色を付した部分が飛行体F(F1、F3、F4)ごとに設定された占有領域O(Oc、Oa、Ob)を表している。また飛行体F(F1、F3、F4)に示す矢印は、その飛行体の移動可能な方向を表している。
【0028】
図4は、層状領域の高さの設定と飛行体の引き起こす気流の関係を示す概略図である。ここで、
図4を使って層状領域の各層の設計例を説明する。
図4では層状領域の一層分領域である例えばR2(灰色のハッチングで表示)を挟んで上下の層状領域R1、R3に飛行する飛行体F1、F2を示す。飛行体F1は一層分領域R2の上端に接する状態で飛行し、飛行体F2は一層分領域R2の下端に接する状態で飛行している状態を示す。
【0029】
図4において、飛行体F1のファンが発生する気流の流れの一部を流線110で示す。図に示すように垂直離着陸機を想定した飛行体F1の場合、飛行体F1の上下方向に大きな気流が発生する。特に下向きの気流が大きくなるため、層状領域の1層分R2の高さは、
図4に示すように下向きの気流の影響範囲よりも高く設定するとよい。このように高さを設定することによって複数の飛行体が飛行する際に、一層分の層状領域Rを挟むことによって上の飛行体の起こす気流が下の飛行体に影響を与えない。
【0030】
図4は飛行体のファンが起こす気流の影響範囲を基に高さを決める方法を記載したが、これ以外にも飛行体の一部故障後に復帰までに予想される移動量、想定される気象変化などの外乱や、鳥などの侵入物の回避必要な飛行体の移動量などを基に決めることができる。
【0031】
また、この層状領域R1、R2、R3、R4は例えば高さによって役割が異なることとし、遷移領域R1、R3、待機領域R2、R4から構成されることにするのがよい。ここで遷移領域R1、R3は飛行体Fがこの領域を飛行する際に占有領域Oの位置を移動不可とし、待機領域R2、R4を飛行する場合、他の占有領域Oとの接触を回避しながら飛行体Fと共に占有領域Oの位置を水平方向に変更可能とする。
【0032】
また、飛行体Fの占有領域Oは飛行体Fの周囲に立体状の占有領域Oとして設定する。占有領域Oは水平方向に飛行体Fの外側エッジよりも広く設定した平面を上下に延長した立体形状とする。例えば
図3のように飛行体Fが飛行する領域(待機領域R2)の上下に隣り合う領域(遷移領域R1、R3)にわたって占有領域Oを延長するとよい。
【0033】
このように遷移領域R1、R3と、待機領域R2、R4を交互に配置し、占有領域Oを設定することによって遷移領域R1、R3では基本的に垂直方向の移動経路のみを設計し、待機領域R2、R4では水平方向の移動経路を設計する。例えば
図5に示すように水平方向の移動を設計する。
【0034】
図5は
図3の矢印Iで示す待機領域R2上端の平面に接する占有領域Oを模式的に記載したものである。待機領域を飛行する飛行体F1、F3は占有領域Oa、Ocとともに水平移動114、116を可能とする。飛行体F2の占有領域Odは飛行体が遷移領域を飛行しているため、水平移動を許可しない。
図5には飛行体F1、F3及びその占有領域Oa、Oc移動時の移動軌跡114、116を示している。
【0035】
この図に記載したように制御周期毎に移動時の占有領域Oの軌跡が他の占有領域Oや他の移動軌跡と接触しないように設計するとよい。ただし、この図中では接触する経路としていないが、飛行体F3の占有領域Oaは占有領域Odとは接触しない上下位置にあるため占有領域Oaと移動軌跡116は接触、重複を許可するような設計としてもよい。
【0036】
また、待機領域R2、R4よりも遷移領域R1、R3のほうが高くなるように層状領域を設定するとよい。待機領域R1、R3は水平方向と、上下方向の経路設計が必要になるため処理負荷の増加などが想定されること、および離着陸時間の短縮のため遷移領域R1、R3を高く設定するのがよい。
【0037】
次に飛行体運行管理システム100と飛行体制御システム200と飛行体F1の動作について説明する。
図6は本発明の実施例1にかかる飛行体運行管理システム100の動作を示すフローチャート、
図7は飛行体制御システム200の動作を示すフローチャートである。以下、
図6、
図7では離着陸動作のうち着陸時を想定して説明する。また、
図7では、
図3に示す複数の飛行体F1~F4のうち飛行体F1を例として説明する。
【0038】
図6と
図7のフローは、飛行体運行管理システム100と飛行体制御システム200の夫々において作動しているが、適宜のタイミングにおいて信号の授受を行い、相互に影響を与え合う関係にある。このため、以下の説明においては時系列に沿って、相互の動作を説明するものとする。
【0039】
図6、
図7の最初の段階は、飛行体F1がエアポート上空に接近してきた状態である。このとき、
図6のエアポート5に設置された飛行体運行管理システム100の処理ステップS301では、飛行体がエアポート上空に到達したことをもってその着陸許可を決定し、飛行体F1に着陸許可信号Sg1を通知する。
【0040】
より詳細に述べると、ステップS301において、飛行体F1がエアポート5上空に到達し、エアポート5に設置された上空監視部101の上空情報や通信部108からの飛行体制御システム200の飛行体F1の位置情報に基づき、飛行体検出部104で飛行体F1を検出する。また、上空監視部101によるエアポート5上空の状況、管制情報授受部103が受信する飛行体F1の飛行プランや他飛行体の飛行情報、ポート情報取得部105のエアポート5の駐機場空き情報、周辺の気象情報、緊急情報の有無などのエアポート情報、通信部108で得る飛行体F1の飛行体制御システム200からの着陸申請信号Sg0などを用いて、離着陸決定部104はエアポート5への着陸を決定し、飛行体F1に対して通信部108を使って着陸許可信号Sg1を通知する。その後、ステップS302に移行する。
【0041】
他方この時、飛行体側の飛行体制御システム200の処理ステップS401では、飛行体F1がエアポート5上空に到達し、着陸態勢に移行する。
【0042】
より詳細に述べると、
図7のステップS401において、飛行体F1がエアポート5上空に到達すると、エアポート5の領域に侵入したことを判定し、着陸申請信号Sg0を送信する。また先に示したように飛行体運行管理システム100から着陸許可信号Sg1を受信することで飛行体F1は着陸状態に移行する。
【0043】
その後、ステップS402に移行し、飛行体F1に設置された状態監視部202は飛行体F1の位置、姿勢、バッテリ状態、各機器の制御状態などの内部情報と周辺監視部203で取得される飛行体F1の他飛行体、障害物など外部情報などを収集し、通信部201を介してエアポート5側の飛行体運行管理システム100に飛行体情報信号Sg2として送信する。なお、ステップS402の処理は、飛行状態に置いて継続して実行される処理である。
【0044】
ステップS403では、飛行状態であることを判別し、飛行状態であるときにはステップS404の処理を継続実行する。
【0045】
図6のエアポート5に設置された飛行体運行管理システム100の処理ステップS302では、
図7のステップS402で送信した飛行体情報信号Sg2を受信して、飛行体位置を検知する。具体的には、飛行体検出部102はエアポート5に設置された上空監視部101で得られる上空情報と通信部108で得られる飛行体制御システム200から送信される飛行体情報信号Sg2に含まれる飛行体F1の位置情報に基づき、飛行体F1の位置情報を検出する。その後、ステップS303に移行する。
【0046】
ステップS303では、離着陸決定部104は飛行体F1の位置情報、飛行体F1の状態情報に基づいて飛行体F1が飛行状態か着陸状態かを判断する。飛行状態の場合はステップS304に移行し、着陸状態の場合はステップS311に移行する。
【0047】
ステップS304において、エアポート5の飛行体運行管理システム100で指定される駐機場を着陸位置として決定する。この駐機位置は駐機場の空き状況、エアポートの混雑状況、緊急事態の発生などによって変更になることもある。その後、ステップS305に移行する。
【0048】
ステップS305において、占有領域設定部106は飛行体F1周辺に占有領域Oを設定する。本実施例では占有領域Oは先に記載したように飛行体の飛行体のエッジよりも水平方向外側にエッジを持つ平面を、前記占有平面を上下方向に延長した立体を占有領域Oとして設定する。その後、ステップS306に移行する。
【0049】
ステップS306において、離着陸経路設計部107は飛行体F1の位置情報に基づき、層状領域Rのどこを飛行しているかを判定する。例えば、飛行体F1の高さと、エアポート5上空に設定した層状領域Rのそれぞれの領域の高さを比較して判定するとよい。待機領域を飛行している場合はステップS307に移行し、遷移領域を飛行している場合はステップS309に移行する。
【0050】
ステップS307において、離着陸経路設計部107は飛行体F1の待機領域内での水平飛行経路を設計する。水平飛行経路の設計方法は前述の方法を用いるとよい。その後、ステップS308に移行する。
【0051】
ステップS308において、離着陸経路設計部107は飛行体F1の垂直方向の飛行経路を設計する。例えば積載物に損傷を与えないような一定の降下速度になるように経路を設計するとよい。その後、ステップS309に移行する。
【0052】
ステップS309において、離着陸経路設計部107は飛行体F1は遷移領域を飛行するため、水平方向の経路設計を許可しない。垂直方向の飛行経路は例えば積載物に損傷を与えないような一定の降下速度になるように経路を設計するとよい。その後、ステップS310に移行する。
【0053】
ステップS310において、通信部108は飛行体F1の飛行体制御システム200に占有領域Oと飛行経路の情報Sg3を送信する。その後は、ステップS302に戻り、上記処理を繰り返す。
【0054】
なおステップS311では、通信部108は飛行体F1が着陸したとき、飛行体F1の飛行体制御システム200に着陸完了情報Sg4を送信し、着陸時の処理を終了する。
【0055】
次に
図7のステップS404において、飛行経路の情報Sg3を受信した以降の飛行体F1に設置された飛行体制御システム100の処理フローの例を説明する。なおこの状態では、ステップS403において、飛行体F1の位置情報、飛行体F1の状態情報に基づいて飛行体F1が飛行状態か着陸状態かを判断し、飛行状態であることが確認されている。
【0056】
飛行中の飛行隊F1は、
図7のステップS404において、状態監視部202はエアポート5側に設置された飛行体運行管理システム100から飛行体F1に割り当てられた占有領域Oおよび経路計画の情報Sg3を取得する。
【0057】
次にステップS405において、飛行制御部204は状態監視部202の情報を基に飛行体F1周囲の障害物を検出し、飛行体運行管理システム100から割り当てられた経路上の障害物の有無を確認する。障害物がない場合はステップS407に移行し、障害物がある場合はステップS406に移行する。
【0058】
障害物があるとき、ステップS406において、飛行制御部204は状態監視部202の情報を基に障害物の位置を検出し、飛行体運行管理システム100より伝えられる移動経路を、障害物を回避するように修正する。この時に回避経路は占有領域O内で設計すると、他飛行体との接触を回避できる。
【0059】
ステップS405において障害物がないと判断されたとき、或はステップS406において経路が修正されたときには、ステップS407において、これらの経路情報に従い飛行する。その後、ステップS402に移行し、S403で着陸を判定するまで繰り返す。
【0060】
なお、ステップS408において、飛行体F1の着陸完了情報を通信部201を介して、飛行体運行管理システムに送信する。
【0061】
実施例1では、以上のようにして飛行体F1の着陸操作を行う。このような着陸操作を行うことによってエアポート5上空の利用効率が向上し、狭い土地にエアポートを立地した際も上空での待機を可能となる。また、航空機下方に大きく空間をとることによって垂直離着陸機が中心となる離着陸において他飛行体の気流の影響などを受けないようにできるため、エアポート5上空における飛行体の安全な飛行を実現できる。
【0062】
また、層状領域Rを設定し、それぞれの領域を待機領域と遷移領域に交互に設定し、領域ごとの飛行体の移動制約を加えることにより、
図5に示すような平面空間での経路設計が可能となり、飛行体運行管理システム100による演算負荷を低減し、円滑な運行管理を実現できる。
【0063】
なお
図1、
図3では複数飛行体の占有領域Oの水平方向の幅は同じとして図示したが、飛行体の大きさ、性能、エアポート5周辺の気候に応じて幅をそれぞれ変えてもよい。
【0064】
また、層状領域Rの高さもエアポート5周辺の気候に応じて変えることにしてもよい。これによって風が強い時など飛行体F1の位置制御が安定しない場合にも安全に飛行することが可能となる。
【0065】
また、
図1、
図3では飛行体F1が飛行する領域とその上下の領域も占有する例を示したが、
図8に示すように飛行体F1が飛行する領域とその下方の領域のみ占有することにしても先述の内容とほぼ同等の効果が得られる。
【0066】
また、
図9に示すようにエアポート5に対する侵入角が必要な場合は断面形状が台形状の占有領域Oとすることで下方の安全を確保することができる。
最初に、エアポート5に設置された飛行体運行管理システム100の処理フローの例によれば、ステップS501において、駐機場Abの飛行体F4の離陸準備が完了する。管制情報授受部103が受信する飛行体F4の飛行プランや他飛行体の飛行情報、ポート情報取得部105のエアポート5の上空情報、周辺の気象情報、緊急情報の有無などのエアポート情報、通信部108で得る飛行体F4の飛行体制御システム200からの離陸申請情報Sg10などを用いて、離着陸決定部104は離陸を許可し、飛行体F1に対して通信部108を使って離陸許可情報Sg11を通知する。その後、ステップS502に移行する。
その後、ステップS602に移行して、飛行体F4に設置された状態監視部202は飛行体F4の位置、姿勢、バッテリ状態、各機器の制御状態などの内部情報と周辺監視部203で取得される飛行体F4の他飛行体、障害物など外部情報などを収集し、通信部201を介してエアポート5側の飛行体運行管理システム100に飛行体F4の飛行体情報Sg12として送信する。
次にステップS503において、離着陸決定部104は飛行体F4の位置情報、飛行体F4の状態情報に基づいて飛行体F4が離脱空域に到達したかを判断する。この離脱空域はエアポート5上空に設定される層状領域の上端に設定される。離脱空域に到達前はステップS504移行し、離脱空域に到達後はステップS511に移行する。
離脱空域に到達前の時は、ステップS504において、エアポート5の飛行体運行管理システム100から離脱空域を指定される。この離脱空域は、エアポートの混雑状況、緊急事態の発生などによって変更になる可能性がある。
次にステップS505において、占有領域設定部106は飛行体F4周辺に占有領域Oを設定する。このケースでは飛行体F4が駐機状態にある初期の段階では層状領域の最下層のR1とその上位層のR2を占有領域Ob1、Ob2として設定することになる。なお占有領域は先に記載したように、飛行体のエッジよりも水平方向外側にエッジを持つ平面を、前記占有平面を上下方向に延長した立体を占有領域Oとして設定する。
その後、ステップS506において、離着陸経路設計部107は飛行体F4の位置情報に基づき、層状領域Rのどこを飛行しているかを判定する。例えば、飛行体F4の高さと、エアポート5上空に設定した層状領域Rのそれぞれの領域の高さを比較して判定するとよい。待機領域R1、R3を飛行している場合はステップS507に移行し、遷移領域R2、R4を飛行している場合はステップS509に移行する。
待機領域R1、R3を飛行している場合はステップS507において、離着陸経路設計部107は飛行体F4の待機領域内での水平飛行経路を設計する。水平飛行経路の設計方法は前述の方法を用いるとよい。その後、ステップS508に移行し、離着陸経路設計部107は飛行体F4の垂直方向の飛行経路を設計する。例えば積載物に損傷を与えないような一定の上昇速度になるように経路を設計するとよい。
ステップS506の判断で、遷移領域R2、R4を飛行しているとされた場合は、ステップS509において、離着陸経路設計部107は飛行体F4が遷移領域を飛行するため、水平方向の経路設計を許可しない。垂直方向の飛行経路は例えば積載物に損傷を与えないような一定の上昇速度になるように経路を設計するとよい。
その後、ステップS510に移行し、通信部108は飛行体F4の飛行体制御システム200に占有領域Oと飛行経路の情報Sg14を送信する。その後、ステップS502に戻る。
なお、ステップS503において、離脱空域到達後と判断されたときのステップS511の処理では、通信部108は飛行体F4が離脱空域に到達したことを、飛行体F4の飛行体制御システム200に送信する。その後、着陸時の処理を終了する。
離脱空域に到達前のときはステップS604において、状態監視部202はエアポート5側に設置された飛行体運行管理システム100から飛行体F4に割り当てられた占有領域Oおよび経路計画の情報Sg14を取得する。
その後ステップS605において、飛行制御部204は状態監視部202の情報を基に飛行体F4周囲の障害物を検出し、飛行体運行管理システム100から割り当てられた経路上の障害物の有無を確認する。障害物がない場合はステップS607に移行し、障害物がある場合はステップS606に移行する。
障害物がある場合はステップS606において、飛行制御部204は状態監視部202の情報を基に障害物の位置を検出し、飛行体運行管理システム100より伝えられる移動経路(Sg14)を、障害物を回避するように修正する。この時に回避経路は占有領域O内で設計すると、他飛行体との接触を回避できる。その後、ステップS607に移行する。
障害物がない場合はステップS607において、飛行制御部204は経路情報Sg14に基づいて経路をトレースするように飛行する。その後、ステップS602に移行し、S603で離脱空域到達を判定するまで繰り返す。
なお上記の手順は一例を示すものであって、実際の離陸にあたっては、経路情報Sg14が与えられた状態から離陸することにするのがよい。実施例2では、以上のようにして飛行体F4の離陸操作を行う。
以上のように飛行体F4の離陸操作を行うことで着陸時と同様にエアポート5上空の利用効率が向上し、狭い土地にエアポートを立地した際も上空での待機を可能となる。また、航空機下方に大きく空間をとることによって垂直離着陸機が中心となる離着陸において他飛行体の気流の影響などを受けないようにできるため、エアポート5上空における飛行体の安全な飛行を実現できる。その他、経路設計方法、占有空間の設計方法などは実施例1と同様の方法を使用することができるため、ここでは説明を省略する。