(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062419
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】木質基材、化粧材及び木質基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B27N 3/02 20060101AFI20230426BHJP
B32B 21/02 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
B27N3/02 B
B27N3/02 C
B32B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172386
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】青木 英士
【テーマコード(参考)】
2B260
4F100
【Fターム(参考)】
2B260AA03
2B260AA20
2B260BA01
2B260BA15
2B260BA18
2B260BA30
2B260CB01
2B260CB04
2B260EB02
2B260EB06
2B260EB19
2B260EC08
4F100AK01A
4F100AK04A
4F100AL05A
4F100AP03A
4F100AT00A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100HB00B
4F100JB16A
4F100JC00A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】本発明は、シックハウス症候群の原因となる有害物質を含まず、実用的な機械特性と耐水性とを備えた木質基材、化粧材及び木質基材の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態に係る木質基材10は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料4と、熱可塑性樹脂組成物5と、を含み、木質基材10は、X線回折法による分析で得られたX線回折パターンにおいて、回折角度2θが20度~22度の間にピークが存在することを要旨とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料と、熱可塑性樹脂組成物と、を含む木質基材であって、
X線回折法による分析で得られるX線回折パターンにおいて、回折角度2θが20度以上22度以下の範囲内にピークが存在することを特徴とする木質基材。
【請求項2】
粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料と、熱可塑性樹脂組成物と、を含む木質基材であって、
X線回折法による分析で得られるX線回折パターンにおいて、回折角度2θが16度以上18度以下の範囲内にピークが存在することを特徴とする木質基材。
【請求項3】
前記X線回折法による分析で得られるX線回折パターンにおいて、回折角度2θが16度以上18度以下の範囲内にピークが存在することを特徴とする請求項1に記載の木質基材。
【請求項4】
前記木質材料と、前記熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)が、95/5~70/30の範囲内であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の木質基材。
【請求項5】
前記木質材料と、前記熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)が、90/10~80/20の範囲内であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の木質基材。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂組成物が、ポリエチレンを含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の木質基材。
【請求項7】
前記X線回折法による分析で得られるX線回折パターンからピーク分離し、下記式(1)を用いて算出される規格化面積Sが0.005以上0.280以下の範囲内であることを特徴とする請求項6に記載の木質基材。
規格化面積S=(SPE110+SPE200)/(SCE1-10+SCE110+SCE200)・・・式(1)
ここで、式(1)において、SPE110はポリエチレン(PE)の110面に由来する回折ピークの面積値、SPE200はポリエチレン(PE)の200面に由来する回折ピークの面積値、SCE1-10は木質基材に含まれるセルロース(CE)の1-10面に由来する回折ピークの面積値、SCE110はセルロース(CE)の110面に由来する回折ピークの面積値、SCE200はセルロース(CE)の200面に由来する回折ピークの面積値を示す。
【請求項8】
前記規格化面積Sが、0.020以上0.190以下の範囲内であることを特徴とする請求項7に記載の木質基材。
【請求項9】
前記木質材料が、菌床を原料に含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の木質基材。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の木質基材に、意匠性基材が積層されてなることを特徴とする化粧材。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の木質基材を製造する木質基材の製造方法であって、
粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料と、熱可塑性樹脂組成物とを混合して、木質基材の原料混合物を得る工程と、
前記原料混合物を加熱加圧して、木質基材を形成する工程と、を有することを特徴とする木質基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木質基材、化粧材及び木質基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木質基材は、木粉、木質チップ、木質繊維などの木質材料を接着剤と混合したものを加熱加圧成形して得られる基材である。この木質基材は、木質材料の種類などによりパーティクルボードや中密度繊維板などと称され、床や壁などの下地材、建具や家具など幅広い用途で使用されている。
木質基材の接着剤としては、従来、尿素樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、またはフェノール樹脂系接着剤が、ホルムアルデヒドを含む硬化剤とともに用いられていた。ホルムアルデヒドは、シックハウス症候群の原因となる有害物質であるため、木質基材からの放散が問題となり、放散量低減のための各種施策が検討されている。しかしながら、従来技術では、ホルムアルデヒドの放散を完全に抑制することは困難であった。
これに対し、従来、ホルムアルデヒドを含まない接着剤として、粉体の糖類と粉体のポリカルボン酸とを主成分とする接着剤を用い、これを植物繊維と混合し加熱加圧成形することで繊維ボードを製造する方法が提案されていた(特許文献1の段落[0017]参照)。また、ホルムアルデヒドを含まない接着剤として、従来、ポリビニルアルコールと水とからなる接着剤を用いた木質基材を含む積層体の製造方法が提案されていた(特許文献2の段落[0015]、及び
図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-55620号公報
【特許文献2】特許第5553279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の接着剤を用いた木質基材は、曲げ強さなどの機械特性や耐水性が実用上十分なものではなかった。
そこで、本発明は、シックハウス症候群の原因となる有害物質を含まず、実用的な機械特性と耐水性とを備えた木質基材、その木質基材を備えた化粧材及びその木質基材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る木質基材は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料と、熱可塑性樹脂組成物と、を含む木質基材であって、X線回折法による分析で得られるX線回折パターンにおいて、回折角度2θが20度以上22度以下の範囲内にピークが存在することを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る木質基材は、前記X線回折法による分析で得られるX線回折パターンにおいて、回折角度2θが16度以上18度以下の範囲内にピークが存在することを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る木質基材は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料と、熱可塑性樹脂組成物と、を含む木質基材であって、X線回折法による分析で得られるX線回折パターンにおいて、回折角度2θが16度以上18度以下の範囲内にピークが存在することを特徴とする。
【0006】
本発明の一態様に係る木質基材は、前記木質材料と、前記熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)が、95/5~70/30の範囲内であることを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る木質基材は、前記木質材料と、前記熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)が、90/10~80/20の範囲内であることを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る木質基材は、前記熱可塑性樹脂組成物が、ポリエチレンを含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る木質基材は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料と、熱可塑性樹脂組成物と、を含む木質基材であって、X線回折法による分析で得られるX線回折パターンからピーク分離し、下記式(1)を用いて算出される規格化面積Sが0.005以上0.280以下の範囲内であることを特徴とする。
規格化面積S=(S
PE110+S
PE200)/(S
CE1-10+S
CE110+S
CE200)・・・式(1)
ここで、式(1)において、S
PE110はポリエチレン(PE)の110面に由来する回折ピークの面積値、S
PE200はポリエチレン(PE)の200面に由来する回折ピークの面積値、S
CE1-10は木質基材に含まれるセルロース(CE)の1-10面に由来する回折ピークの面積値、S
CE110はセルロース(CE)の110面に由来する回折ピークの面積値、S
CE200はセルロース(CE)の200面に由来する回折ピークの面積値を示す。
なお、通常はアッパーライン(アッパーバー、上線)を付けて示される面方位中の負の数字については、“-”(マイナス)を付けて表記している。つまり、特定の結晶面を示す面指数(ミラー指数)中の「-1」の表記は、「1」にアッパーラインを設けたものを指す。後述する
図3、4では、アッパーライン(アッパーバー、上線)を付けて示している。
また、本発明の一態様に係る木質基材は、前記規格化面積Sが、0.020以上0.190以下の範囲内であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様に係る木質基材は、菌床を原料に含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様に係る化粧材は、上述の木質基材に、意匠性基材が積層されてなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様に係る木質基材の製造方法は、上述の木質基材を製造する木質基材の製造方法であって、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料と、熱可塑性樹脂組成物とを混合して、木質基材の原料混合物を得る工程と、前記原料混合物を加熱加圧して、木質基材を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、シックハウス症候群の原因となる有害物質を含まず、実用的な機械特性と耐水性とを備えた木質基材、その木質基材を備えた化粧材及びその木質基材の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る木質基材の製造方法を示す模式図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る木質基材の構造を示す概略断面図である。
【
図3】一般的な木質材料単体のX線回折パターンである。
【
図4】ポリエチレン(PE)単体、ポリプロピレン(PP)単体の各X線回折パターンである。
【
図5】本発明の実施形態に係る木質基材のX線回折パターンである。
【
図6】本発明の実施形態に係る木質基材のX線回折パターンから、5種類のピークに波形分離した図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る化粧材の構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状及び構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
[第1実施形態]
図1に、本発明の実施形態に係る木質基材の製造方法を説明するための模式図を示す。所定の大きさ(例えば10cm×10cmの正方形)にくり抜かれた収容部を備えた木質基材作製用ジグ1の底面に金属板2を敷き、その上に離型性金属板3を重ねる。
次に、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料4と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物5とを含む原料混合物6を木質基材作製用ジグ1の収容部内に入れ、その原料混合物6上に離型性金属板3を乗せる。
次に、厚さ調整用金属板7を木質基材作製用ジグ1の上に乗せ、離型性金属板3を介して金属の錘8で原料混合物6の上部から原料混合物6を押さえる。
最後に、所定の条件に設定したプレス機天板9を原料混合物6の上部から金属の錘8を介して加熱加圧し、本実施形態に係るスキン層11を形成する。同様の方法で、別のスキン層11も形成する。
こうして、一対のスキン層11を形成した後、木質基材作製用ジグ1の底面に金属板2、離型性金属板3、スキン層11をこの順で重ねる。
次に、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料4と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物5とを含む原料混合物6を木質基材作製用ジグ1の収容部内に入れ、その原料混合物6上にスキン層11、離型性金属板3をこの順で乗せる。ここで、スキン層11で挟まれた原料混合物6が木質基材10におけるコア層12となる。
次に、厚さ調整用金属板7を木質基材作製用ジグ1の上に乗せ、スキン層11及び離型性金属板3を介して金属の錘8で原料混合物6の上部から原料混合物6を押さえる。
最後に、所定の条件に設定したプレス機天板9を原料混合物6の上部から金属の錘8を介して加熱加圧し、本実施形態に係る木質基材10を形成する。
【0015】
図2は、本実施形態に係る木質基材10の構造を示す概略断面図である。
図2に示すように、本実施形態に係る木質基材10は、木質基材10の表面及び裏面を構成するスキン層11と、スキン層11に挟まれるように、木質基材10の中心部に位置するコア層12とを含んで構成される。つまり、本実施形態に係る木質基材10は、木質材料4と熱可塑性樹脂組成物5とを含んで形成されたスキン層11と、木質材料4と熱可塑性樹脂組成物5とを含んで形成されたコア層12とを備えている。なお、木質基材10において、スキン層11とコア層12とは互いに接していることが望ましい。
木質基材10は、木質材料4の種類などによりパーティクルボードや中密度繊維板などと称され、床や壁などの下地材、建具や家具など幅広い用途で使用されている。
このように、本実施形態に係る木質基材10には、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質は含まれていない。よって、木質基材10内部からのホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質の放散を抑制することができる。
以下、木質基材10を構成する各材料等について説明する。
【0016】
(木質材料4)
木質材料4は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有するものである。ここで、「粉体状」、「チップ状」には、サイズや形状の定義は一般に存在しない。本実施形態では、サイズ(平均粒径)が概ね数十ミクロン~数センチメートルの範囲にあるものをいう。木質基材10を安定して製造するためには、木質材料4の平均粒径が1~5ミリメートルの範囲内であることが望ましい。
木質材料4は、例えば、木粉、木質繊維、木材をチップ状に粉砕したものが挙げられ、その原料としては、例えば、間伐材、オガ粉、廃木材なども用いることができる。
また、木質材料4は、木材以外でも、例えば、竹、麻、ヤシ繊維、クルミ殻など、木材と同様にセルロース成分を含むものであれば、その候補とすることができる。
木質材料4の原料としては、例えば、キノコ栽培時に大量に発生する使用済み菌床が好適である。菌床は、キノコ栽培に用いる培地であり、木材チップやオガ粉にフスマや米ぬかなどの栄養分を混ぜたものである。菌床は、キノコ栽培後の国内で年間30万トン前後が廃棄されていると推定されバイオマスとして有望であるが、リサイクルが進んでいないのが現状であり、これを木質原料(木質材料4)に用いることは環境負荷の低減において有益である。
菌床を含む木質基材10としては、菌床を木質材料4として単独で用いてもよいし、菌床を他の木質材料4と混合して用いてもよい。ここで、「菌床を含む木質基材」とは、木質材料4全体の体積に占める菌床の割合が1%以上100%以下の範囲内である木質基材10を意味する。
【0017】
(木質材料4の製造方法)
例えば、廃木材から木質材料4を得ようとした場合、コンクリート片、金属片、紙類などの異物が多く含まれている。異物は、例えば、磁力選別、風力選別、比重選別など、公知の方法で除去することができる。また、粗大粒子は切削、破砕など公知の方法でサイズを調整し、概ね数十ミクロン~数センチメートルの範囲にあるものを使用する。
さらに、菌床から木質材料4を得ようとした場合、公知の方法で滅菌処理をしてから使用することが望ましい。
【0018】
(木質材料4と熱可塑性樹脂組成物5との質量比)
木質材料4と熱可塑性樹脂組成物5との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)は、スキン層11及びコア層12のそれぞれにおいて、95/5~70/30の範囲が望ましい。木質材料4の含有量が上記数値(95/5)より大きくなると、木質基材10に十分な曲げ強さを付与することができない。一方、木質材料4の含有量が、上記数値(70/30)より小さくなると、加熱加圧時に木質基材10の変形が生じるため好ましくない。また、木質材料4より熱可塑性樹脂組成物5の方が高価なため、コストアップになる。
木質材料4と熱可塑性樹脂組成物5との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)は、スキン層11及びコア層12のそれぞれにおいて、90/10~80/20の範囲がより望ましい。木質材料4の含有量を上記数値範囲内にすることで、曲げ強さとコストの両立した木質基材10を得ることができる。
【0019】
木質材料4と熱可塑性樹脂組成物5との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)は、スキン層11の方がコア層12より熱可塑性樹脂組成物5の割合を増やすことが望ましい。熱可塑性樹脂組成物5の割合を増やすことでスキン層11(特に、木質基材10の表層を構成するスキン層11)の耐水性が向上する。また、例えば、スキン層11における熱可塑性樹脂組成物5の含有量は、コア層12における熱可塑性樹脂組成物5の含有量の1.1倍以上2倍以下の範囲であれば望ましく、1.3倍以上1.8倍以下の範囲であればより望ましい。
【0020】
(熱可塑性樹脂組成物5)
熱可塑性樹脂組成物5は、その平均粒径が数十ミクロン~1ミリメートルの粉体状の組成物である。熱可塑性樹脂組成物5の粒径は特に限定されないが、木質材料4と混合する上で同程度の粒径の方が混合し易く望ましい。熱可塑性樹脂組成物5の粒径が小さ過ぎると木質材料4をすり抜けて下部に堆積し、大き過ぎると木質材料4の上部に堆積し、不均一な木質基材10となるため望ましくない。そのため、熱可塑性樹脂組成物5の粒径(平均粒径)は、1ミクロン(μm)~1ミリメートルの範囲内がより望ましい。なお、熱可塑性樹脂組成物5の粒径(平均粒径)は、取り扱いの容易さ等を考慮すると、30ミクロン(μm)以上300ミクロン(μm)以下の範囲内が望ましい。
熱可塑性樹脂組成物5は、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、エチレンビニルアセテート、シリコーンゴムなど各種用いることができるが、木質基材10の機械特性と耐水性の点でポリエチレンが好適である。
熱可塑性樹脂組成物5は、単独で用いてもよいが複数の種類を混合して用いてもよい。木質基材10の機械特性の点では、熱可塑性樹脂組成物5全体の質量100質量部に対し、50質量部以上100質量部以下の範囲内でポリエチレンを含むことが望ましい。より望ましくは80質量部以上100質量部以下の範囲内でポリエチレンを含むことが望ましい。
熱可塑性樹脂組成物5に添加するポリエチレンは、特に限定されるものでなく、高密度ポリエチレン(比重が0.92~0.96程度のポリエチレン)、低密度ポリエチレン(比重が0.91~0.92程度のポリエチレン)、超低密度ポリエチレン(比重が0.9に満たない程度のポリエチレン)、直鎖状低密度ポリエチレン(比重が0.94に満たない程度のポリエチレン)など既存の材料から、加熱加圧時の反応性や原料混合物6の流動性などを考慮し適宜選択して用いられる。上述した材料の中でも、曲げ強さの大きな木質基材10を得るためには、高密度ポリエチレンを使用することがより望ましい。
【0021】
本実施形態で用いられるポリエチレンは、バイオマス由来のポリエチレンであってもよい。バイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリエチレンはバイオマス由来となる。なお、ポリエチレンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含まないものであってもよい。
【0022】
熱可塑性樹脂組成物5は単体でもよいが、公知の熱可塑性樹脂組成物5を混合して用いることができる。熱可塑性樹脂組成物5に混合する材料としては、特に限定されないが、例えば、酸変性樹脂、有機過酸化物が挙げられる。
【0023】
(酸変性樹脂)
酸変性樹脂は、木質材料4と熱可塑性樹脂組成物5との接着性を向上するために用いられる。酸変性樹脂は、熱可塑性樹脂組成物5の主成分がポリエチレンである場合、相溶のし易さ(相溶性の高さ)から酸変性ポリオレフィンであることが望ましい。特に、酸変性樹脂としては、マレイン酸変性ポリエチレンが好適に用いられる。ここで、上記「主成分」とは、熱可塑性樹脂組成物5全体の質量の50質量%以上を占める成分をいう。
【0024】
(酸変性樹脂の添加量)
酸変性樹脂の添加量は、全熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して3質量部以上40質量部以下の範囲内であることが望ましい。酸変性樹脂の添加量が3質量部に満たないと、木質材料4と熱可塑性樹脂組成物5との接着性を向上させる効果が不十分であるため、木質基材10に十分な強度を与えることができない場合がある。また、酸変性樹脂の添加量が40質量部を超えると、接着性を向上する効果は限定的で僅かな向上しか確認できない。
なお、酸変性樹脂の添加量は、全熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して5質量部以上20質量部以下の範囲内であることがより望ましい。
【0025】
(有機過酸化物)
有機過酸化物は、原料混合物6の加熱加圧において、熱可塑性樹脂組成物5に含まれる熱可塑性樹脂同士をラジカル架橋するために用いてもよい。また、酸含有樹脂にラジカル架橋性を有する材料を用いれば、熱可塑性樹脂組成物5に有機過酸化物を添加することで、酸含有樹脂と熱可塑性樹脂とに架橋を確実に生じさせることができる。熱可塑性樹脂同士、または酸含有樹脂と熱可塑性樹脂との間にラジカル架橋が形成されると、その架橋構造により、木質基材10全体の機械特性が向上する。つまり、熱可塑性樹脂組成物5に有機過酸化物を添加することで、熱可塑性樹脂組成物5に含まれる熱可塑性樹脂と、酸含有樹脂と、木質材料4との間にラジカル架橋による3次元ネットワーク(結合)を形成することが可能となる。これにより、木質基材10全体の機械特性が向上する。
有機過酸化物は、特に限定されるものではなく、例えば、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステルなどの既存材料から、反応性や安定性を考慮し適宜選択して用いられる。また、有機過酸化物は、ラジカル架橋剤の一種であり、例えば、ヒドロペルオキシド類、ジアシルペルオキシド類、ペルオキシジカルボナート類、ペルオキシエステル類、ペルオキシカルボナート類、ジアルキルペルオキシド類、ケトンペルオキシド類などがある。
【0026】
(有機過酸化物の添加量)
有機過酸化物の添加量は、全熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下の範囲内が好ましい。
有機過酸化物の添加量が0.01質量部に満たないと、原料混合物6の加熱加圧時の反応性が不足するため、木質基材10の強度向上に寄与しない。また、有機過酸化物の添加量が5質量部を超えると反応時の分解生成物が多くなり、木質基材10の変形の原因になる場合があるため好ましくない。
【0027】
(添加剤)
熱可塑性樹脂組成物5には、ワックスのような添加剤を混合してもよい。添加剤としてワックスを添加することで木質基材10の耐水性がさらに向上する。また、ワックスのような添加剤は、木質材料4と熱可塑性樹脂組成物5、あるいは複数の種類の熱可塑性樹脂組成物5を均一に混合させる潤滑剤としての役割もある。
【0028】
(熱可塑性樹脂組成物5の製造方法)
熱可塑性樹脂組成物5は、公知の方法で粉体状に作製することが可能である。熱可塑性樹脂組成物5に複数の種類の材料を混合する場合は、公知の方法で混合する。また、混合時に加熱し、粒子状の熱可塑性樹脂組成物5同士を溶着させてもよい。但し、粒子が150μmより大きくなると粒子数が減少し、表面積が小さくなるため木質材料4との均一に混合することが困難になるので望ましくない。
また、熱可塑性樹脂組成物5は、公知の方法で作製された樹脂ペレットを、機械粉砕や凍結粉砕など公知の方法で粉体化することも可能である。樹脂ペレットと粉体とが混在する熱可塑性樹脂組成物を混合する場合、樹脂ペレットと粉体とを混合してから粉砕してもよいし、樹脂ペレットを粉砕してから粉体に混合してもよい。例えば、ポリエチレンの粉体と酸変性ポリオレフィンの粉体とを混合すれば、熱可塑性樹脂組成物5を粉砕する際に凍結粉砕のような処理は不要であり、容易に熱可塑性樹脂組成物5の粉体を得ることができる。
【0029】
熱可塑性樹脂組成物5は、例えば一軸混錬機やバッチ式混錬機を用いて、複数の種類の熱可塑性樹脂ペレットを加熱混錬後、機械粉砕や凍結粉砕などの方法で粉体化することができる。例えば、ポリエチレンのペレットと酸変性ポリオレフィンのペレットとを一軸混錬押出機で加熱混錬後にペレット化し、混錬されたペレットを凍結粉砕することで熱可塑性樹脂組成物5の粉体を得ることができる。つまり、押出法によって、複数の種類の熱可塑性樹脂組成物5を混錬して熱可塑性樹脂組成物5の粉体を得てもよい。また、複数の種類の粉体状の熱可塑性樹脂組成物5を混合することで、熱可塑性樹脂組成物5をより均一に混合することができるので、曲げ強さの面内均一性に優れた木質基材10を得ることができる。
【0030】
(木質基材10)
木質基材10は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料4と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物5と、を含む原料混合物6を加熱加圧して形成される。木質基材10は単層でもよいが、スキン層11とコア層12からなる複層構成であることが望ましい。ここで、スキン層11は耐水性を備えた層である。このスキン層11を設けることで、コア層12における吸水が低減され、木質基材10全体が膨張し変形するのを防止することができる。
なお、木質基材10の表裏から水分の吸収が同時に起こると考えられる場合、膨潤による木質基材10の反りが問題になるので、
図2に示すような、木質基材10の表裏に同じ性質を有するスキン層11を持つ3層構成とするのが望ましい。
木質基材10の厚さは、5mm以上40mm以下の範囲内が望ましい。木質基材10の厚さが5mmより薄い場合は、木質基材10の曲げ強さが弱く(低く)、実用的でない。また、木質基材10の厚さが40mmより厚い場合は、木質基材10の重量が重くて施工作業時に扱いづらくなる。
なお、木質基材10の一方の面(例えば表面)におけるスキン層11の厚さは、木質基材10の他方の面(例えば裏面)におけるスキン層11の厚さに比べて厚くてもよいし、薄くてもよい。また、木質基材10の一方の面(例えば表面)におけるスキン層11の厚さと、木質基材10の他方の面(例えば裏面)におけるスキン層11の厚さとは、同じであってもよい。
【0031】
木質基材10を構成するスキン層11及びコア層12の厚さはそれぞれ2mm以上であることが望ましい。スキン層11及びコア層12の各厚さが2mmより薄いと薄すぎて均一なスキン層11及びコア層12を作製することが困難となる。
図2に示すように、木質基材10の表裏にスキン層11を有する3層構成とする場合、スキン層11とコア層12の厚さの比率(スキン層11:コア層12)は、1:0.1~1:18の範囲内であることが望ましい。つまり、
図2に示すように、木質基材10が、スキン層11、コア層12、スキン層11を順次備えた構成である場合には、各層の厚さの比(スキン層11:コア層12:スキン層11)は、1:0.1:1~1:18:1の範囲内であることが望ましい。
また、スキン層11とコア層12とを足し合わせた木質基材10全体の厚さは40mm以下が望ましいので、スキン層11は19mm以下であることが望ましい。
【0032】
木質基材10は、後述する、X線回折法による分析で得られるX線回折パターンにおいて、回折角度2θが20度~22度の間にピークが存在することが望ましい。熱可塑性樹脂組成物5の主成分としてポリエチレンを含有する木質基材10は、回折角度2θが20度~22度の間にピークが存在し、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質を拡散することがない。
また、木質基材10は、回折角度2θが16度~18度の間にピークが存在することが望ましい。熱可塑性樹脂組成物5の主成分としてポリプロピレンを含有する木質基材10は、回折角度2θが16度~18度の間にピークが存在し、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質を拡散することがない。
つまり、木質基材10は、回折角度2θが20度~22度の間、及び16度~18度の間の少なくとも一方にピークが存在していればよい。
また、本実施形態では、熱可塑性樹脂組成物5として、ポリエチレン、ポリプロピレンを単独で用いてもよいし、併用しても良い。
【0033】
ここで、X線回折法に関して説明する。まず、X線回折測定とは、試料にX線を照射することにより、X線が原子の周りの電子により散乱、干渉した結果起こる回折現象を利用して、物質に占める結晶の割合、結晶粒の大きさ、結晶の歪みに関する情報を得る測定方法である。X線回折の具体的な測定方法は、物質に対して、原子の間隔と同程度の波長(0.5Å~3Å)を有するX線を入射させ、各原子に所属する電子によりX線を散乱させ、散乱したX線の干渉波を検出する。上記方法によって、回折角度2θを横軸に、検出したX線強度を縦軸にしてプロットしたグラフをX線回折パターンといい、結晶形ごとに固有のパターンが認められる。このとき、縦軸のX線強度は、結晶性樹脂の場合には結晶質部または非晶質部の量に比例して所定の回折角におけるピーク強度、及びピーク面積の値が変化するため、当該ピークの高さや面積から定量分析を行うことも可能である。
【0034】
図3に、例として、一般的な木質材料4単体のX線回折パターンを示す。測定で得られた回折パターンから、バックグラウンドを除去している。木質材料4のX線回折パターンからは、木質材料4に含まれるセルロースの結晶質部のミラー指数(1-10)、(110)に該当する回折角度2θ=15°±2°のピークと、ミラー指数(200)に該当する回折角度2θ=23°±1°のピークが得られる。
図3に示すように、ミラー指数(1-10)と(110)は近接しているため、1つのピークとして検出される。
【0035】
図4に、例として、ポリエチレン(PE)単体、ポリプロピレン(PP)単体の各X線回折パターンを示す。PEのX線回折パターンからは、結晶質部のミラー指数(110)に該当する回折角度2θ=21°±1°のピークと、ミラー指数(200)に該当する回折角度2θ=24°±1°のピークが得られる。PPのX線回折パターンからは、結晶質部のミラー指数(110)に該当する回折角度2θ=14°±1°のピークと、ミラー指数(040)に該当する回折角度2θ=17°±1°のピークと、ミラー指数(130)に該当する回折角度2θ=19°±1°のピークと、ミラー指数(111)、(-131)に該当する回折角度2θ=22°±2°のピークが得られる。
図4に示すように、ミラー指数(111)と(-131)は近接しているため、1つのピークとして検出される。
【0036】
図5に、本実施形態の木質基材10のX線回折パターンの一例を示す。木質材料4に由来するピークに加え、ポリエチレンのミラー指数(110)、(200)に由来するピークが存在する。木質材料4のセルロースに起因するミラー指数(1-10)、(110)、(200)と合わせ、5種類のピークの波形分離を行った結果を
図6に示す。波形分離を行うことで、下記5種類の面積が求められる。
S
PE110・・・PEの110面に由来する回折ピークの面積値。
図6中の(3)。
S
PE200・・・PEの200面に由来する回折ピークの面積値。
図6中の(5)。
S
CE1-10・・・セルロース(CE)の1-10面に由来する回折ピークの面積値。
図6中の(1)。
S
CE110・・・CEの110面に由来する回折ピークの面積値。
図6中の(2)。
S
CE200・・・CEの200面に由来する回折ピークの面積値。
図6中の(4)。
ピークの波形分離のバラツキを考慮して、同じ回折パターンから3回波形分離を行い、その平均値を本実施形態における面積値として採用した。
【0037】
5種類の面積値から、下記式(1)を用いて算出された規格化面積Sを、0.005以上0.280以下の範囲内になるように調整する。
規格化面積S=(SPE110+SPE200)/(SCE1-10+SCE110+SCE200)・・・式(1)
具体的には、木質材料4とポリエチレン(PE)の含有量比を調整して、規格化面積Sを調整する。規格化面積Sがそれぞれ0.005未満の場合、木質材料4の割合が高すぎて実用上必要な曲げ強さや耐水性を付与することが困難となる。一方、規格化面積Sが0.280を超える場合、ポリエチレン(PE)の割合が高すぎて、加熱加圧時に木質基材10の変形が生じやすくなり、好ましくない。また、木質材料4とポリエチレン(PE)とが均一に混合されていないと、局所的に規格化面積Sが0.280より大きくなることがある。木質材料4とポリエチレン(PE)とが均一に混合されていないと、木質基材10の曲げ強さや耐水性にバラツキが生じ、好ましくない。
【0038】
規格化面積Sは、0.020以上0.190以下の範囲内であることが、より望ましい。規格化面積Sが上記数値範囲内であれば、曲げ強さがより強く、耐水性がより向上し、木質基材10の変形が生じにくい良好な木質基材10を得ることが可能となる。
【0039】
(木質基材10の製造条件)
木質基材10を製造する際に用いられる加熱加圧の方法は、各種公知の方法を用いることができるが、木質基材10の製造には、
図1に示すような枠型を用いたプレス成型が好適である。加熱温度は通常は120℃以上250℃以下の範囲内であり、熱可塑性樹脂組成物5の融点以上であることが必要であるが、加熱温度が250℃を超えると木質材料4の熱劣化が顕著に生じる場合がある。加圧圧力は、通常は10kgf/cm
2以上400kgf/cm
2以下の範囲内であり、所望する木質基材10の密度により適宜設定した値を用いる。
上記で得られる木質基材10の密度や形状は用途に応じて適宜決定されるが、密度については0.5g/cm
3以上1.2g/cm
3以下の範囲内、特に0.6g/cm
3以上1.1g/cm
3以下の範囲内が好ましい。木質基材10の密度が0.5g/cm
3より小さいと曲げ強度が著しく低下し、実用的でない。また、木質基材10の密度が1.2g/cm
3より大きいと木質基材10の重量が大き過ぎて、施工時の扱いが困難になる。
【0040】
木質基材10を製造する際に、
図1のような離型性金属板3を用いてもよい。離型性金属板3の素材としては、離型性を備えたフィルムでもよいが木質基材10の平滑性が求められる場合、硬い素材の金属がより望ましい。離型性金属板3の素材としては、熱可塑性樹脂組成物5、金属板2及び金属の錘8と付着しない素材であればよく、例えば、フッ素コーティングされた素材が好適に用いられる。また、微細な金属粒子を離型性金属板3の表面に溶射して凹凸を施してもよい。離型性金属板3の表面に凹凸構造を形成することで離型性が向上する。また、離型性金属板3に凹凸構造とフッ素コーティングとを併用することで、さらに離型性を向上させることが可能となる。
【0041】
本実施形態では、離型性金属板3の代わりに、非粘着処理を施した金属板2または金属の錘8を用いてもよい。つまり、金属板2の表面または金属の錘8の表面は、熱可塑性樹脂組成物5と付着しない非粘着処理がされていてもよく、フッ素コーティングや溶射による凹凸構造が形成されていればより好適である。
【0042】
本実施形態では、木質基材10の製造方法に関して、最初に、加熱加圧してスキン層11を個別に2枚作成し、その後、2枚のスキン層11でコア層12となる原料混合物6を挟んだ状態で再度加熱加圧して木質基材10を製造する方法について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、最初に、スキン層11となる原料混合物6と、コア層12となる原料混合物6と、スキン層11となる原料混合物6とをこの順に積層し、その後、2種3層の原料混合物6を同時に加熱加圧して木質基材10を製造してもよい。
このように、本実施形態に係る木質基材10の製造方法では、第1の加熱加圧工程でスキン層11を形成し、第2の加熱加圧工程でコア層12を形成してもよいし、第1の加熱加圧工程でスキン層11及びコア層12を形成してもよい。
【0043】
[第2実施形態]
図7を用いて第2実施形態について説明する。
第2実施形態は、先に
図2を用いて説明した第1実施形態に係る木質基材10に、意匠性を有する意匠層13を積層した化粧材14である。
本実施形態によれば、木質基材10に意匠層13を積層することで、意匠性を付与することができる。
すなわち、木質基材10は、基材単独でも化粧材として実用に供することができるが、木質基材10にさらに優れた意匠性を付与するため、
図7に示すように絵柄などの意匠が付与された紙やフィルムなどの意匠層13を木質基材10に積層して化粧材14としてもよい。
【0044】
<作用その他>
(1)本実施形態の木質基材10は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料4と、熱可塑性樹脂組成物5と、を含み、木質基材10は、X線回折法による分析で得られるX線回折パターンにおいて、回折角度2θが20度以上22度以下の範囲内にピークが存在する。
このような構成であれば、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドの代わりに熱可塑性樹脂組成物5としてポリエチレン(PE)を接着剤として用いているため、有害物質の放散のない木質基材10を提供することができる。また、木質基材10は熱可塑性樹脂組成物5を含んでいるため、その熱可塑性樹脂組成物5自体が有する高い耐水性に起因して木質基材10に優れた耐水性を付与することができる。
【0045】
(2)本実施形態の木質基材10は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料4と、熱可塑性樹脂組成物5と、を含み、木質基材10は、X線回折法による分析で得られるX線回折パターンにおいて、回折角度2θが16度以上18度以下の範囲内にピークが存在する。
このような構成であれば、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドの代わりに熱可塑性樹脂組成物5としてポリプロピレン(PP)を接着剤として用いているため、有害物質の放散のない木質基材10を提供することができる。
【0046】
(3)本実施形態の木質基材10は、X線回折法による分析で得られるX線回折パターンにおいて、回折角度2θが16度以上18度以下の範囲内に位置するピークと、20度以上22度以下の範囲内に位置するピークとが両方存在していてもよい。
このような構成であれば、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドの代わりに熱可塑性樹脂組成物5としてポリエチレンとポリプロピレンを接着剤として併用しているため、有害物質の放散のない木質基材10を提供することができる。
また、回折角度2θが16度以上18度以下の範囲内に位置するピークの強度は、回折角度2θが20度以上22度以下の範囲内に位置するピークの強度よりも大きいことが好ましい。
なお、回折角度2θが16度以上18度以下の範囲内に位置するピークの強度は、回折角度2θが20度以上22度以下の範囲内に位置するピークの強度よりも小さくてもよい。
【0047】
(4)本実施形態の木質基材10は、木質材料4と、熱可塑性樹脂組成物5との質量比(木質材料4/熱可塑性樹脂組成物5)が、95/5~70/30の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、曲げ強さがより強い木質基材10を確実に提供することができる。
【0048】
(5)本実施形態の木質基材10は、木質材料4と、熱可塑性樹脂組成物5との質量比(木質材料4/熱可塑性樹脂組成物5)が、90/10~80/20の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、曲げ強さとコストが両立した木質基材10を確実に提供することができる。
【0049】
(6)本実施形態の木質基材10は、熱可塑性樹脂組成物5がポリエチレンを含んでいてもよい。
このような構成であれば、曲げ強さと耐水性が共に良好な木質基材10を提供することができる。また、バイオマス由来のポリエチレンを含んでいる場合、環境負荷の低減において有益な木質基材10を提供することができる。
【0050】
(7)本実施形態の木質基材10は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料4と、熱可塑性樹脂組成物5と、を含み、木質基材10は、X線回折法による分析で得られるX線回折パターンからピーク分離し、下記式(1)を用いて算出される規格化面積Sが0.005以上0.280以下の範囲内であってもよい。
規格化面積S=(SPE110+SPE200)/(SCE1-10+SCE110+SCE200)・・・式(1)
ここで、式(1)において、SPE110はポリエチレン(PE)の110面に由来する回折ピークの面積値、SPE200はポリエチレン(PE)の200面に由来する回折ピークの面積値、SCE1-10は木質基材に含まれるセルロース(CE)の1-10面に由来する回折ピークの面積値、SCE110はセルロース(CE)の110面に由来する回折ピークの面積値、SCE200はセルロース(CE)の200面に由来する回折ピークの面積値を示す。
このような構成であれば、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドの代わりに熱可塑性樹脂組成物5としてポリエチレン(PE)を接着剤として用いているため、有害物質の放散のない木質基材10を提供することができる。
【0051】
(8)本実施形態の木質基材10は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料4と、熱可塑性樹脂組成物5と、を含み、木質基材10は、X線回折法による分析で得られるX線回折パターンからピーク分離し、式(1)を用いて算出される規格化面積Sが0.020以上0.190以下の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、曲げ強さとコストを両立させた木質基材10を提供することができる。
【0052】
(9)本実施形態の木質基材10は、木質材料4が菌床を原料として含んでいてもよい。
このような構成であれば、環境負荷の低減において有益な木質基材10を提供することができる。
【0053】
(10)本実施形態の化粧材14は、本実施形態の木質基材10に意匠性を有する意匠性基材(意匠層13)を積層したものである。
このような構成であれば、従来の化粧材に比べて、曲げ強さや耐水性が良好な化粧材14を提供することができる。
【0054】
[実施例]
以下に、本発明の第1実施形態に係る木質基材の実施例1~14及び比較例1~8について説明する。なお、本発明は、下記の実施例1~14に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
実施例1の熱可塑性樹脂組成物は、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)ペレット単体である。この樹脂ペレットを機械粉砕することで、粉体状の熱可塑性樹脂組成物を得た。なお、熱可塑性樹脂組成物の粉体の平均粒径は、100μmであった。
木質材料には、キノコ収穫後の菌床(平均粒径2mm)を洗浄、乾燥した材料を用いた。木質材料と熱可塑性樹脂組成物とを、質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)「85/15」で乾式混合することで、木質基材の原料混合物を得た。
この原料混合物をアルミ製の型枠に導入し、熱プレス装置で加熱加圧することで、厚さ2mmのスキン層を1枚得た(プレス条件:40kgf/cm2、200℃10分間、基材密度:0.8g/cm3)。これと同じ方法で2mmのスキン層をもう1枚得た後、2枚のスキン層の間に、コア層となる原料混合物を入れ加熱加圧した。こうして、実施例1の、スキン層2mm、コア層11mm、スキン層2mmが順次積層された3層構成の木質基材を得た。
【0056】
(実施例2)
実施例2の熱可塑性樹脂組成物の成分、質量は、次の通りである。
(1) 高密度ポリエチレン樹脂 100質量部
(2) 有機過酸化物 1.5質量部
上記(1)~(2)をバッチ式混錬装置で加熱混錬後、機械粉砕することで、粉体状の熱可塑性樹脂組成物を得た。それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0057】
(実施例3)
実施例3では、木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例2の「85/15」から「95/5」に変更し、それ以外は実施例2と同様の方法で木質基材を得た。
【0058】
(実施例4)
実施例4では、木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例2の「85/15」から「90/10」に変更し、それ以外は実施例2と同様の方法で木質基材を得た。
【0059】
(実施例5)
実施例5では、木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例2の「85/15」から「80/20」に変更し、それ以外は実施例2と同様の方法で木質基材を得た。
【0060】
(実施例6)
実施例6では、木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例2の「85/15」から「75/25」に変更し、それ以外は実施例2と同様の方法で木質基材を得た。
【0061】
(実施例7)
実施例7では、木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例2の「85/15」から「70/30」に変更し、それ以外は実施例2と同様の方法で木質基材を得た。
【0062】
(実施例8)
実施例8では、木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例2の「85/15」から「60/40」に変更し、それ以外は実施例2と同様の方法で木質基材を得た。
【0063】
(実施例9)
実施例9の熱可塑性樹脂組成物の成分、質量は、次の通りである。
(1) 低密度ポリエチレン樹脂 100質量部
(2) 有機過酸化物 1.5質量部
上記(1)~(2)をバッチ式混錬装置で加熱混錬後、機械粉砕することで、粉体状の熱可塑性樹脂組成物を得た。それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0064】
(実施例10)
実施例10の熱可塑性樹脂組成物の成分、質量は、次の通りである。
(1) 直鎖状低密度ポリエチレン樹脂 100質量部
(2) 有機過酸化物 1.5質量部
上記(1)~(2)をバッチ式混錬装置で加熱混錬後、機械粉砕することで、粉体状の熱可塑性樹脂組成物を得た。それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0065】
(実施例11)
実施例11の熱可塑性樹脂組成物の成分、質量は、次の通りである。
(1) ポリプロピレン樹脂 100質量部
(2) 有機過酸化物 1.5質量部
上記(1)~(2)をバッチ式混錬装置で加熱混錬後、機械粉砕することで、粉体状の熱可塑性樹脂組成物を得た。それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0066】
(実施例12)
実施例12の熱可塑性樹脂組成物の成分、質量は、次の通りである。
(1) 高密度ポリエチレン樹脂 90質量部
(2) 酸変性ポリプロピレン 10質量部
(3) 有機過酸化物 1.5質量部
上記(1)~(3)をバッチ式混錬装置で加熱混錬後、機械粉砕することで、粉体状の熱可塑性樹脂組成物を得た。それ以外は実施例3と同様の方法で木質基材を得た。
【0067】
(実施例13)
実施例13の木質材料には、竹(平均粒径2mm)を洗浄、乾燥した材料を用いた。それ以外は実施例4と同様の方法で木質基材を得た。
【0068】
(実施例14)
実施例14の木質材料には、杉(平均粒径2mm)を洗浄、乾燥した材料を用いた。それ以外は実施例4と同様の方法で木質基材を得た。
【0069】
(比較例1~7)
比較例1~7では、日本国内で市販されている所謂パーティクルボードを、木質基材として入手した。メーカー、接着剤の種類、厚みは下記の通りである。
(比較例1) 国内メーカーA社、ユリア系樹脂、厚み15mm
(比較例2) 国内メーカーB社、ユリア系樹脂、厚み15mm
(比較例3) 国内メーカーC社、ユリア系樹脂、厚み15mm
(比較例4) 国内メーカーD社、ユリア系樹脂、厚み15mm
(比較例5) 国内メーカーA社、メラミン系樹脂、厚み20mm
(比較例6) 国内メーカーE社、メラミン系樹脂、厚み20mm
(比較例7) 国内メーカーE社、フェノール系樹脂、厚み9mm
【0070】
(比較例8)
比較例8の木質基材では、木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例2の「85/15」から「96/4」に変更し、それ以外は実施例2と同様の方法で木質基材を得た。
【0071】
(木質基材の評価)
以上の実施例1~14、比較例1~8について、X線回折測定、機械特性、耐水性、基材変形の評価を行った。
【0072】
(X線回折測定)
X線回折測定は、X線回折装置RINT TTR III(株式会社リガク製)を用い、平行法にて測定した。X線源にはCuKαを使用し、シンチレーションカウンタにて2θ=5°から40°までのX線回折パターンを得た。得られたX線回折パターンから、ポリプロピレンに起因する16度から18度の間に位置するピーク存在の有無、ポリエチレンに起因する20度から22度の間に位置するピーク存在の有無を確認した。
また、ポリエチレンを含有する木質基材に関しては、下記式(1)を用いて規格化面積Sを算出した。
規格化面積S=(SPE110+SPE200)/(SCE1-10+SCE110+SCE200)・・・式(1)
規格化面積Sが0.005以上0.280以下の範囲内である場合、合格とする。
【0073】
(機械特性)
機械特性は、JISA5908に準拠する方法で曲げ強さを測定した。測定値(単位:N/mm2)に対する機械強度の評価基準は当該JISの規格値を踏まえ、以下とした。
機械強度の評価基準は、次の通り、「◎」、「〇」、「△」、「×」の4段階で評価し、「◎」、「〇」及び「△」を合格とし、「×」を不合格とした。
◎:15以上(合格)
〇:13以上15未満(合格)
△:8以上13未満(合格)
×:8未満(不合格)
【0074】
(耐水性)
耐水性は、JISA5908に準拠する方法で吸水厚さ膨張率を測定した。測定値(単位:%)に対する耐水性の評価基準は当該JISの規格値を踏まえ、以下とした。
耐水性の評価基準は、次の通り、「◎」、「〇」、「△」、「×」の4段階で評価し、「◎」、「〇」及び「△」を合格とし、「×」を不合格とした。
◎:5未満(合格)
〇:5以上8未満(合格)
△:8以上12未満(合格)
×:12以上(不合格)
【0075】
(基材変形)
基材変形とは、基材表面が部分的に膨れた状態であり、主にプレス中に基材内部で発生するガスの滞留により発生する。基材変形は基材端部の状態により如実に反映されるため、基材端部の外観を目視評価した。
基材変形の評価基準は、次の通り、「◎」、「〇」、「△」、「×」の4段階で評価し、「◎」、「〇」及び「△」を合格とし、「×」を不合格とした。
◎:空隙なし(合格)
〇:痕跡程度の空隙あり(合格)
△:空隙あり(合格)
×:極端な空隙あり(不合格)
【0076】
(評価結果)
木質基材の評価結果は、次の表1~表3の通りである。
なお、表中の実施例における「原料配合比」は(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)で規定される質量比を示し、表中の比較例における「原料配合比」は(木質材料/接着剤)で規定される質量比を示す。
【0077】
【0078】
(X線回折測定の評価結果)
ベース樹脂としてポリプロピレン(PP)を使用している実施例11と、酸変性ポリプロピレン(PP)を添加剤に使用している実施例12では、16度から18度の間にPP起因のピークが存在した。また、ベース樹脂としてポリエチレン(PE)を使用している実施例1~10、12~14では、20度から22度の間にPE起因のピークが存在した。これらの木質基材は、シックハウス症候群の原因物質となる有害物質の放散のない良好なものであった。
比較例8はPEをベース樹脂として使用しているが、木質材料96部に対して4部しか添加していないため、添加量が少なく、セルロースの回折ピークに埋もれてPE起因のピークは確認できなかった。比較例8は、実施例1~10、12~14と比較して熱可塑性樹脂組成物(PE)の添加量が少ないため、木質材料とPEが均一に混ざらず、機械特性も耐水性も弱い木質基材となった。
一方、比較例1~7は市販のパーティクルボードであり、接着剤として尿素樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系を使用しているが、ホルムアルデヒドを硬化剤として用いているため、僅かながら、残存したホルムアルデヒドの放散が確認された。
【0079】
(規格化面積Sの評価結果)
ポリエチレン(PE)を含有する木質基材については、規格化面積Sを算出し評価した。式から明らかなように、PEの含有量が多いほど、規格化面積Sは大きくなる。実施例3は、木質材料95部に対して5部のPEを添加しているが、規格化面積Sは0.005であった。これ以上、PEの添加量を減らすとPEの回折ピークは検出できないので、実施例3の0.005が検出下限となる。
実施例2、4~8を比較すると、PEの含有量に比例して規格化面積Sは増大し、PEを40部添加した実施例8では、0.464となる。PEの添加量を増やすと機械特性と耐水性は向上するが、基材変形が発生するため、規格化面積0.030の実施例4と、規格化面積0.187の実施例5が最良の結果だった。
【0080】
(機械特性の評価結果)
機械特性では、実施例1~14及び比較例1~7で合格となった。その中で、評価結果に「△」を含むのは、実施例1、3、9~11の5件である。
実施例1は、実施例2と比較して有機過酸化物が未添加である。有機過酸化物添加により機械特性が向上していることが分かった。実施例3は、熱可塑性樹脂組成物の添加量が5部と少ない。10部以上添加している実施例4~7、4部しか添加していない比較例8と比較すると、熱可塑性樹脂組成物の添加量と機械特性は正の相関があることが分かった。実施例9~11では、ベース樹脂がHDPEではなく、LDPE、LLDPE、PPを用いている。ベース樹脂としてはHDPEが最適であることが分かった。
【0081】
(耐水性の評価結果)
耐水性が不合格なものは、比較例1、3~4、8であった。尿素樹脂系の接着剤を用いる従来の方法では本発明の実施例1~14に比べて耐水性に劣る。比較例8は熱可塑性樹脂組成物が4部しか添加していないので、添加量が不十分であった。
実施例1~14を比較すると、「△」を含むのは、実施例3のみであった。機械特性と同様、耐水性も熱可塑性樹脂組成物の添加量と正の相関があるので、40部添加した実施例8で「◎」となった。メラミン樹脂系、フェノール樹脂系の接着剤を用いる従来の方法では、尿素樹脂系を用いる方法に比べて耐水性は良好であった。
【0082】
(基材変形の評価結果)
基材変形では、実施例1~14及び比較例8の全てで合格となった。その中で、評価結果に「△」を含むのは、実施例8のみである。
実施例8は、熱可塑性樹脂組成物を40部含有することで、熱可塑性樹脂組成物の含有量が相対的に多くなったため基材変形が起こりやすくなったと考えられる。また、比較例8は基材変形の評価では問題なかったが、熱可塑性樹脂組成物が4部しか含有しておらず硬化が不十分で、木質基材表面の脱落がみられた。
【0083】
(総合的な評価結果)
総合的な評価結果としては、実施例1~14は、全ての評価項目で「合格」であり、表1から明らかなように、本発明の木質基材は優れた機械特性と耐水性を有し、基材変形も問題ないことが示された。また、本発明の木質基材は、シックハウス症候群の原因となる有害物質を含まないため、シックハウス症候群の原因となる有害物質の放散も確認されなかった。
【符号の説明】
【0084】
1…木質基材作製用ジグ、2……金属板(底面)、3…離型性金属板、4…木質材料、5…熱可塑性樹脂組成物、6…原料混合物、7…厚さ調整用金属板、8…金属の錘、9…プレス機天板、10…木質基材、11…スキン層、12…コア層、13…意匠層、14…化粧材