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  • -浴槽の止水構造及び止水栓 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006273
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】浴槽の止水構造及び止水栓
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/22 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
E03C1/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108790
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】柏田 敬一
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061DA01
2D061DE01
2D061DE11
2D061DE13
(57)【要約】
【課題】平面でない止水面でも止水することができる浴槽の止水構造を提供すること。
【解決手段】内底面に凸部を有する浴槽本体と、内底面に設けられ、凸部の少なくとも一部に重なるように配置される貫通穴と、貫通穴に設けられ、貫通穴を封止する弾性部材を有する止水栓と、を備える浴槽の止水構造である。弾性部材は、内底面に配置される上部弾性部と、上部弾性部から内底面に向けて突出し、内底面と凸部の一部とに亘って配置される上部肉厚部と、を有する。上部肉厚部の厚みは、凸部の高さよりも大きい。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内底面に凸部を有する浴槽本体と、
前記内底面に設けられ、前記凸部の少なくとも一部に重なるように配置される貫通穴と、
前記貫通穴に設けられ、前記貫通穴を封止する弾性部材を有する止水栓と、を備え、
前記弾性部材は、
前記内底面に配置される上部弾性部と、
前記上部弾性部から前記内底面に向けて突出し、前記内底面と前記凸部の一部とに亘って配置される上部肉厚部と、を有し、
前記上部肉厚部の厚みは、前記凸部の高さよりも大きい、浴槽の止水構造。
【請求項2】
前記上部肉厚部の厚みは、前記凸部の高さの2倍以上3倍以下である、請求項1に記載の浴槽の止水構造。
【請求項3】
前記上部肉厚部は、前記貫通穴の径方向に並んで複数設けられる、請求項1又は2に記載の浴槽の止水構造。
【請求項4】
前記凸部の外周縁は、緩やかな傾斜面である、請求項1~3のいずれか1項に記載の浴槽の止水構造。
【請求項5】
前記弾性部材の硬度は、40以上70以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の浴槽の止水構造。
【請求項6】
前記弾性部材は、前記浴槽本体の下面に配置され、前記上部弾性部との間で前記浴槽本体を挟着する下部弾性部を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の浴槽の止水構造。
【請求項7】
前記下部弾性部は、前記浴槽本体の前記下面に向けて突出する下部肉厚部を有する、請求項6に記載の浴槽の止水構造。
【請求項8】
前記止水栓は、前記内底面の中央部に配置される、請求項1~7のいずれか1項に記載の浴槽の止水構造。
【請求項9】
前記弾性部材は、平面視で円形状である、請求項1~8のいずれか1項に記載の浴槽の止水構造。
【請求項10】
前記凸部は、平面視で一方向に長い長楕円形であり、前記凸部の長径は、前記上部弾性部の外径よりも大きい、請求項1~9のいずれか1項に記載の浴槽の止水構造。
【請求項11】
内底面に凸部を有する浴槽本体に設けられた貫通穴であって、前記内底面に設けられ、前記凸部の少なくとも一部に重なるように配置された前記貫通穴を封止する弾性部材を有する止水栓であって、
前記内底面に配置される上部弾性部と、
前記上部弾性部から前記内底面に向けて突出し、前記内底面と前記凸部の一部とに亘って配置される上部肉厚部と、を有し、
前記上部肉厚部の厚みは、前記凸部の高さよりも大きい、止水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浴槽の止水構造及び止水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽本体の内底面に設けたノズルから洗浄水を噴射させることによって、浴槽本体の内面を自動洗浄する浴槽洗浄装置を備える浴槽が提案されている。ノズルには、浴槽本体の下面側から洗浄水が供給される。
【0003】
従来、浴槽本体の内底面に、滑り止め用の凸部を複数設けた浴槽が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-212405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
滑り止め用の凸部を有する既設の浴槽に浴槽洗浄装置を後付けする場合、ノズルは、凸部に重なるように浴槽本体の内底面に取り付けられる。この場合、凸部とノズルとの間の止水面は平面ではないため、ノズルの取付部位を止水することが困難である。
【0006】
本開示は、平面でない止水面でも止水することができる浴槽の止水構造及び止水栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の浴槽の止水構造は、内底面に凸部を有する浴槽本体と、前記内底面に設けられ、前記凸部の少なくとも一部に重なるように配置される貫通穴と、前記貫通穴に設けられ、前記貫通穴を封止する弾性部材を有する止水栓と、を備え、前記弾性部材は、前記内底面に配置される上部弾性部と、前記上部弾性部から前記内底面に向けて突出し、前記内底面と前記凸部の一部とに亘って配置される上部肉厚部と、を有し、前記上部肉厚部の厚みは、前記凸部の高さよりも大きい、浴槽の止水構造である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】浴槽の平面図である。
図2】浴槽を下面側から見た斜視図である。
図3図1中のA部の拡大図である。
図4図3中のB-B線に沿う断面図である。
図5】弾性部材を下面側から見た斜視図である。
図6】弾性部材の縦断面図である。
図7図3中のC-C線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の浴槽の止水構造の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1及び図2に示すように、浴槽1は、浴槽本体2と、フランジ部3と、脚部4と、リブ5と、を有する。浴槽1は、いずれも図示しない防水パン、洗い場床、壁パネル及び天井パネルによって組み立てられた浴室ユニット内に設置される。
【0010】
浴槽本体2は、図1に示すように、平面視で一方向に長い。浴槽本体2は、図1に示すように、平面視で、図中の上下方向よりも左右方向に長い略長方形状に形成される。各図中に示す方向において、X1-X2方向は、浴槽1及び浴槽本体2の長辺方向を示す。Y1-Y2方向は、浴槽1及び浴槽本体2の短辺方向を示す。
【0011】
浴槽本体2の内底面2aには、排水口21と、凸部22と、ノズル6と、が設けられる。ノズル6は、後述する浴槽洗浄装置100の構成部品の一つである。
【0012】
凸部22は、浴槽本体2の内底面2aから略一定の高さで突出して設けられ、滑り止め部として機能する。本実施形態の凸部22は、平面視で一方向に長い長楕円形状を有する。詳しくは、凸部22は、内底面2aの短辺方向に沿って長い長楕円形状を有し、小判型に形成される。
【0013】
内底面2aの短辺方向に沿って、複数の凸部22が一列に配列される。複数の凸部22からなる列は、内底面2aの長辺方向に沿って複数配列される。凸部は、平面視で円形状、矩形状等の任意の形状であってもよい。凸部は、内底面2aに離散的に配置されていてもよい。
【0014】
フランジ部3は、浴槽本体2の上端部から横方向に延出し、平面視で矩形状の浴槽1の外形を形成している。本実施形態の浴槽1では、このフランジ部3の下方且つ浴槽本体2の裏面側に、浴槽下部空間Sが形成される。
【0015】
脚部4は、浴槽本体2の下面2bの四隅近傍にそれぞれ配置される。本実施形態の脚部4は四角柱状に形成され、下面2bから下方に向けて所定の高さで突出している。
【0016】
リブ5は、浴槽本体2の下面2bから下方に向けて突出する板状部材である。リブ5は、浴槽本体2の下面2bにおいて長辺方向及び短辺方向に延び、浴槽本体2の下面2bを補強する。リブ5の少なくとも一部に、浴槽洗浄装置100の配管102を浴槽本体2の下面2b側に導入させる際に挿通させるための切り欠き部51が設けられる。本実施形態のリブ5には、4つの脚部4間を長辺方向及び短辺方向に繋ぐ部位に、4つの切り欠き部51が設けられている。
【0017】
浴槽洗浄装置100は、装置本体101と、配管102と、ノズル6と、を有する。装置本体101は、浴槽下部空間Sに設置される。本実施形態の装置本体101は、浴槽本体2の短辺側の浴槽下部空間Sに配置されている。ノズル6は、浴槽本体2の内底面2aの中央部に設けられる。配管102は、浴槽本体2の下面2b側を通って、装置本体101とノズル6と、を連結する。装置本体101は、湯水と洗浄液とを混合して洗浄水を生成し、その洗浄水を、配管102を介してノズル6に供給する。ノズル6は、装置本体101から供給される洗浄水を浴槽本体2の内面に向けて噴射し、浴槽本体2の内面を自動洗浄する。
【0018】
次に、浴槽洗浄装置100のノズル6について、図3図7を参照して詳細に説明する。ノズル6は、浴槽本体2の内底面2aの中央部に配置される。浴槽本体2の内面に洗浄水を効率的に噴射させるためである。ノズル6は、内底面2aに設けられる貫通穴23に水密状に取り付けられる。本実施形態のノズル6は、止水栓の一例である。
【0019】
貫通穴23は、内底面2aの凸部22の少なくとも一部に重なるように設けられる。図3に示すように、本実施形態の貫通穴23の内径は、凸部22の長径(図3における上下方向の長さ)よりも小さく、凸部22の短径(図3における左右方向の長さ)よりも大きい。貫通穴23は、凸部22の中央部に設けられている。凸部22の長径側の両端部22a,22aは、貫通穴23の外側にそれぞれはみ出している。
【0020】
図3及び図4に示すように、ノズル6は、ノズル本体61と、ノズル受け62と、弾性部材63と、スリップワッシャ64と、によって構成される。
【0021】
ノズル本体61は、浴槽本体2の内底面2a側に配置される。ノズル本体61は、噴射板部611と、接続筒部612と、を有する。
【0022】
噴射板部611は、中央部が僅かに盛り上がった略円板状に形成され、洗浄水を噴射する噴射口(図示せず)を有する。噴射板部611は、浴槽本体2の内底面2a上に配置される。噴射板部611の外径は、貫通穴23の内径よりも大きく、凸部22の長径よりも小さい。
【0023】
接続筒部612は、噴射板部611の裏面から突出し、貫通穴23に挿入されている。接続筒部612の外周面には雄ねじが設けられている。
【0024】
ノズル受け62は、浴槽本体2の下面2b側に配置される。ノズル受け62は、筒状部621と、フランジ部622と、配管接続部623と、を有する。
【0025】
筒状部621は、上方が開口する有底円筒状に形成される。筒状部621の外径は、貫通穴23の内径よりもやや小さい。筒状部621の内周面には、ノズル本体61の接続筒部612の雄ねじと螺合する雌ねじが設けられる。
【0026】
フランジ部622は、筒状部621の高さ方向の中途部から、筒状部621と同軸状に径方向外側に張り出している。フランジ部622の外径は、ノズル本体61の外径よりも大きい。フランジ部622の上面には、弾性部材63を収容する円形の収容凹部622aが設けられる。
【0027】
配管接続部623は、円筒状に形成され、筒状部621の下端部から側方に向けて延びている。配管接続部623の端部には、配管102が接続される。配管102から供給される洗浄水は、配管接続部623の内部を通って筒状部621内に流入し、噴射板部611の噴射口(図示せず)から噴射される。
【0028】
弾性部材63は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等の軟質ゴムからなるパッキンによって構成される。弾性部材63は、貫通穴23内に装着されてノズル本体61とノズル受け62との間で挟着されることによって、ノズル6と貫通穴23との間を封止する。弾性部材63のさらに詳しい構成については後述する。
【0029】
スリップワッシャ64は、ノズル本体61の噴射板部611の裏面と、弾性部材63の上面との間に配置される。スリップワッシャ64は、ノズル本体61を回転させながらノズル受け62に螺合する際に、噴射板部611と弾性部材63との間に滑りを発生させ、弾性部材63の捩じれを防止する。
【0030】
弾性部材63についてさらに説明する。弾性部材63は、平面視で円形状に形成される。弾性部材63は、上部弾性部631と、下部弾性部632と、円筒部633と、によって構成される。
【0031】
上部弾性部631は、中央に円形の開口を有する円板状に形成される。上部弾性部631の外径は、貫通穴23よりも大きく、ノズル本体61の外径以下である。浴槽本体2の内底面2aに設けられる凸部22の長径は、上部弾性部631の外径よりも大きい。上部弾性部631は、弾性部材63において浴槽本体2の内底面2aに配置される部位である。
【0032】
下部弾性部632は、中央に円形の開口を有する円板状に形成される。下部弾性部632の外径は、ノズル本体61の外径よりもやや大きい。下部弾性部632は、弾性部材63において浴槽本体2の下面2bに配置される部位である。
【0033】
下部弾性部632の厚みは、上部弾性部631の厚みよりも大きい。これは、浴槽本体2の下面2a側には、内底面2a側に比べて、不規則な凹凸が設けられているためである。下部弾性部632の厚みが上部弾性部631の厚みよりも大きいことによって、下部弾性部632は、弾性変形した際に、下面2b側の不規則な凹凸を効果的に吸収することができる。
【0034】
円筒部633は、上部弾性部631と下部弾性部632とを、上下方向に浴槽本体2の内底面2aの板厚に近似する一定の間隔をあけて一体に連結する。円筒部633の内側は、上部弾性部631の中央の開口と下部弾性部632の中央の開口とを連通している。これよって、弾性部材63の内側に、ノズル本体61の接続筒部612とノズル受け62の筒状部621との接続部分を収容する収容穴634が形成される。
【0035】
上部弾性部631の上面631aは平面である。上部弾性部631の下面631bには、浴槽本体2の内底面2aに向けて突出する上部肉厚部635が設けられる。上部肉厚部635は、上部弾性部631の厚みを部分的に厚くした部位である。上部弾性部631の下面631bは、径方向に沿って見たときに、上部肉厚部635が突出する部位と上部肉厚部635が無い部位とを有し、凹凸状に形成される。
【0036】
本実施形態の上部肉厚部635は、上部弾性部631の周方向に沿って連続する環状突条によって構成される。詳しくは、本実施形態の上部肉厚部635は、下面631bから断面半円形状に突出する環状突条によって構成される。上部肉厚部635の断面形状は、これに限定されず、断面三角形状、断面台形状、断面矩形状等であってもよい。
【0037】
上部肉厚部635は、上部弾性部631の下面631bに少なくとも1条設けられる。本実施形態の上部弾性部631の下面631bには、同一の高さで突出する2条の上部肉厚部635が設けられている。詳しくは、上部弾性部631は、上部弾性部631の外周縁に沿う位置とその内側の位置とに同芯状に配置される2条の上部肉厚部635を有する。弾性部材63が貫通穴23内に装着されたとき、2条の上部肉厚部635は、貫通穴23の径方向に並んで配置される。
【0038】
図7に示すように、上部肉厚部635の厚みt2は、浴槽本体2の内底面2aに設けられる凸部22の高さt3よりも大きい。上部肉厚部635の厚みt2は、上部弾性部631の下面631bからの最大突出高さである。凸部22の高さt3は、浴槽本体2の内底面2aからの最大突出高さである。
【0039】
下部弾性部632の上面632aには、浴槽本体2の下面2bに向けて突出する第1の下部肉厚部636が設けられる。第1の下部肉厚部636は、下部弾性部632の厚みを部分的に厚くした部位である。下部弾性部632の上面632aは、径方向に沿って見たときに、第1の下部肉厚部636が突出する部位と第1の下部肉厚部636が無い部位とを有し、凹凸状に形成される。
【0040】
本実施形態の第1の下部肉厚部636は、下部弾性部632の周方向に沿って連続する環状突条によって構成される。詳しくは、本実施形態の第1の下部肉厚部636は、上面632aから断面半円形状に突出する環状突条によって構成される。第1の下部肉厚部636の断面形状は、これに限定されず、断面三角形状、断面台形状、断面矩形状等であってもよい。
【0041】
第1の下部肉厚部636は、下部弾性部632の上面632aに少なくとも1条設けられる。本実施形態の下部弾性部632の上面632aには、同一の高さで突出する3条の第1の下部肉厚部636が設けられている。詳しくは、下部弾性部632は、下部弾性部632の外周縁と円筒部633との間に、一定の間隔をあけて同芯状に配置される3条の第1の下部肉厚部636を有する。弾性部材63が貫通穴23内に装着されたとき、3条の第1の下部肉厚部636は、貫通穴23の径方向に並んで配置される。
【0042】
下部弾性部632の下面632bには、ノズル受け62のフランジ部622の収容凹部622aに向けて突出する第2の下部肉厚部637が設けられる。第2の下部肉厚部637は、第1の下部肉厚部636と同様に、下部弾性部632の厚みを部分的に厚くした部位である。本実施形態の第2の下部肉厚部637は、第1の下部肉厚部636と上下対称の構成を有する。
【0043】
次に、ノズル6の取り付け方法について説明する。まず、弾性部材63の円筒部633が、図4に示すように、浴槽本体2の内底面2aの貫通穴23内に嵌め込まれる。これによって、上部弾性部631は、内底面2aに接するように配置される。下部弾性部632は、下面2bに接するように配置される。弾性部材63は、上部弾性部631と下部弾性部632とによって、浴槽本体2の底壁を挟持する形態を有する。
【0044】
その後、浴槽本体2の下面2b側にノズル受け62が配置される。弾性部材63の下部弾性部632は、ノズル受け62のフランジ部622に設けられる収容凹部622a内に収容される。ノズル受け62の筒状部621の上端部は、弾性部材63の中央の収容穴634に挿入される。
【0045】
上部弾性部631の上面631aにスリップワッシャ64が載置された後、浴槽本体2の内底面2a側からノズル本体61が取り付けられる。すなわち、ノズル本体61の接続筒部612が、弾性部材63の中央の収容穴634に挿入され、収容穴634内のノズル受け62の筒状部621と螺合される。ノズル本体61とノズル受け62とが完全に螺合することによって、ノズル本体61とノズル受け62とは、弾性部材63の上部弾性部631及び下部弾性部632を介して浴槽本体2の底壁を挟着する。これによって、浴槽本体2の内底面2aにノズル6が取り付けられる。
【0046】
ノズル6が内底面2aに取り付けられた際の弾性部材63は、ノズル本体61とノズル受け62との間で挟着されることによって弾性的に変形し、貫通穴23の周囲を密封する。詳しくは、内底面2a側では、上部弾性部631の上部肉厚部635が、ノズル本体61の噴射板部611と内底面2aとの間で押し潰されて弾性変形する。これによって、上部弾性部631と内底面2aとの間が環状に封止される。下面2b側では、下部弾性部632の第1の下部肉厚部636が、ノズル受け62のフランジ部622と下面2bとの間で押し潰されて弾性変形する。これによって、下部弾性部632と下面2bとの間が環状に封止される。下部弾性部632の第2の下部肉厚部637は、下面2bとノズル受け62のフランジ部622との間で押し潰されて弾性変形し、下部弾性部632とフランジ部622との間を環状に封止する。
【0047】
上部弾性部631の上部肉厚部635の封止構造についてさらに説明する。図3に示すように、貫通穴23は、凸部22の短径よりも大きい外径を有し、凸部22の中央部に配置されている。弾性部材63の上部弾性部631は、凸部22の一部を、凸部22の短径方向に跨るように重なっている。そのため、図3及び図7に示すように、上部弾性部631の上部肉厚部635の一部は、内底面2aと凸部22の上面の一部と亘って配置され、凸部22の外周縁22bを跨いでいる。
【0048】
上部肉厚部635の厚みt2は、凸部22の高さt3よりも大きいため、凸部22上に配置される上部肉厚部625が弾性変形することによって、内底面2a上に配置される上部肉厚部625は、内底面2aに容易に密接することができる。したがって、弾性部材63は、上部肉厚部625の弾性変形によって、凸部22と内底面2aとに亘る平面でない止水面でも、止水することができる。
【0049】
より確実な止水を達成するため、上部肉厚部635の厚みt2は、凸部22の高さt3の2倍以上3倍以下であることが望ましい。2倍よりも小さいと、上部肉厚部635を弾性変形させて内底面2aに密接させるために必要な荷重が増加する。3倍を超えると、上部肉厚部635を含めた上部弾性部631の全体の厚みt1が必要以上に大きくなる。そのため、内底面2aからのノズル本体61の突出高さが目立つようになる。
【0050】
より確実な止水を達成するため、弾性部材63の硬度(JIS K6253準拠のタイプAデュロメータ硬度)は、40以上70以下であることが望ましい。40を下回ると、弾性部材63が柔らかくなりすぎるため、止水時に所定の形状を保持することが困難になる。70を超えると、弾性部材63が硬くなりすぎるため、密封効果が得られにくくなる。上記硬度は、45以上55以下であることがより望ましい。
【0051】
図3及び図7に示すように、凸部22の外周縁22bは、凸部22の上面から内底面2aにかけて緩やかに傾斜する傾斜面である。凸部22の外周縁22bは鋭角な角部を持たないため、弾性部材63は、上部肉厚部635の弾性変形によって、凸部22と内底面2aとの間の段差を密封することができる。
【0052】
以上のように、本実施形態の浴槽の止水構造は、内底面2aに凸部22を有する浴槽本体2と、内底面2aに設けられ、凸部22の少なくとも一部に重なるように配置される貫通穴23と、貫通穴23に設けられ、貫通穴23を封止する弾性部材63を有する止水栓としてのノズル6と、を備える。弾性部材63は、内底面2aに配置される上部弾性部631と、上部弾性部631から内底面2aに向けて突出し、内底面2aと凸部22の一部とに亘って配置される上部肉厚部635と、を有し、上部肉厚部635の厚みt2は、凸部22の高さt3よりも大きい。これによれば、凸部22上に配置される上部肉厚部625が弾性変形した際に、内底面2a上に配置される上部肉厚部625は、内底面2aに容易に密接することができる。したがって、弾性部材63は、凸部22と内底面2aとに亘る平面でない止水面でも、止水することができる。
【0053】
本実施形態の上部肉厚部635の厚みt2は、凸部22の高さt3の2倍以上3倍以下であることが望ましい。これによれば、弾性部材63の弾性変形によって、より確実な止水を達成することができる。
【0054】
本実施形態の上部肉厚部635は、貫通穴23の径方向に並んで複数設けられる。これによれば、貫通穴23の周囲の径方向に複数の止水部が形成されるため、弾性部材63による止水効果をより向上させることができる。
【0055】
本実施形態の凸部22の外周縁22bは、緩やかな傾斜面である。これによれば、凸部22の外周縁22bは鋭角な角部を持たないため、弾性部材63は、上部肉厚部635の弾性変形によって、凸部22と内底面2aとの間の段差を密封することができる。
【0056】
本実施形態の弾性部材63の硬度は、40以上70以下であることが望ましい。これによれば、弾性部材63の弾性変形によって、より確実な止水を達成することができる。
【0057】
本実施形態の弾性部材63は、浴槽本体2の下面2bに配置され、上部弾性部631との間で浴槽本体2を挟着する下部弾性部632を有する。これによれば、弾性部材63は、浴槽本体2の内底面2a及び下面2bの両面から浴槽本体2の底壁を挟着し、貫通穴23の周囲を密封することができる。
【0058】
本実施形態の下部弾性部632は、浴槽本体2の下面2bに向けて突出する下部肉厚部636を有する。これによれば、浴槽本体2の下面2b側でも、貫通穴23の周囲に肉厚部による止水部を形成することができる。
【0059】
本実施形態のノズル6は、内底面2aの中央部に配置される。これによれば、浴槽本体2の内面に洗浄水を効率的に噴射させることができる。
【0060】
本実施形態の弾性部材63は、平面視で円形状である。これによれば、弾性部材63によって貫通穴23の周囲を効果的に止水することができる。
【0061】
本実施形態の凸部22は、平面視で一方向に長い長楕円形であり、凸部22の長径は、上部弾性部631の外径よりも大きい。これによれば、凸部22と内底面2aとに亘って平面でない止水面が形成されるため、弾性部材63によって止水することができる。
【0062】
本実施形態の止水栓であるノズル6は、内底面2aに凸部22を有する浴槽本体2に設けられた貫通穴23であって、内底面2aに設けられ、凸部22の少なくとも一部に重なるように配置された貫通穴23を封止する弾性部材63を有する。弾性部材63は、内底面2aに配置される上部弾性部631と、上部弾性部631から内底面2aに向けて突出し、内底面2aと凸部22の一部とに亘って配置される上部肉厚部635と、を有する。上部肉厚部635の厚みt2は、凸部22の高さt3よりも大きい。これによれば、凸部22上に配置される上部肉厚部625が弾性変形した際に、内底面2a上に配置される上部肉厚部625は、内底面2aに容易に密接することができる。したがって、止水栓であるノズル6は、凸部22と内底面2aとに亘る平面でない止水面でも、止水することができる。
【0063】
以上の実施形態では、止水栓として、洗浄水を噴射する浴槽洗浄装置100のノズル6を例示した。止水栓はノズル6に限定されない。止水栓は、浴槽本体の内底面に設けられる貫通穴の周囲を封止して止水するものであればよく、例えば、浴槽の排水栓等であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
2 浴槽本体、 2a 内底面、 2b 下面、 22 凸部、 22b 外周縁、 23 貫通穴、 6 ノズル(止水栓)、 63 弾性部材、 631 上部弾性部、 632 下部弾性部、 635 上部肉厚部、 636 下部肉厚部
図1
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図7