(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006302
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】クレーンの運転システムおよびクレーンの運転方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/22 20060101AFI20230111BHJP
B66C 13/00 20060101ALI20230111BHJP
B66C 13/48 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B66C13/22 T
B66C13/00 D
B66C13/48 H
B66C13/48 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108838
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】518126144
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】星島 一輝
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA03
3F204DB01
3F204DB04
3F204DC08
(57)【要約】
【課題】荷役物を吊り上げる作業と吊り上げた荷役物を下ろす作業とを繰り返すクレーンの荷役効率を向上するクレーンの運転システムおよびクレーンの運転方法を提供する。
【解決手段】桁2、トロリ3、吊具4、および、走行装置6と、コンテナCの荷役作業を行う荷役位置Taを指定する指定装置と、指定装置により指定された荷役位置Taへ吊具4を移動させる制御を行う制御装置と、を備えたクレーン1の運転システム10は、トロリ3の位置座標Pnを取得する座標取得装置14を備え、制御装置は、荷役位置Taで初めてコンテナCの荷役作業を行った場合に、座標取得装置14が取得した位置座標Pnを荷役位置座標Qmとして記憶し、荷役位置座標Qmを記憶した以降に指定装置により再び同じ荷役位置Taが指定された場合に、記憶した荷役位置座標Qmへ吊具4を移動させる制御を行う構成である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延在する桁と、この桁に沿って横行するトロリと、このトロリから吊り下げられて鉛直方向に昇降可能で荷役物に連結される吊具と、前記一方向に直交する方向にクレーンを走行させる走行装置と、荷役物の荷役作業を行う荷役位置を指定する指定装置と、この指定装置により指定された荷役位置へ前記トロリの横行および前記走行装置による走行により前記吊具を移動させる制御を行う制御装置と、を備えたクレーンの運転システムにおいて、
前記トロリまたは前記吊具の位置座標を取得する座標取得装置を備え、
前記制御装置は、前記指定された荷役位置で前記吊具と荷役物との連結あるいは連結解除の荷役作業を初めて行った場合に、前記座標取得装置が取得した位置座標を荷役位置座標として記憶し、前記荷役位置座標を記憶した以降に前記指定装置により再び前記指定された荷役位置と同じ荷役位置が指定された場合に、記憶した前記荷役位置座標へ前記吊具を移動させる制御を行う構成であることを特徴とするクレーンの運転システム。
【請求項2】
前記指定装置は、所定の領域に存在する荷役物を示す荷役物画像を含む領域画像を表示する表示装置と、その領域画像の任意の箇所を荷役位置に指定する入力を行う入力装置と、を有し、
前記制御装置は、前記荷役物画像の設定座標として前記荷役位置座標を設定し、前記任意の箇所が、前記荷役物画像の範囲内で、かつ、その荷役物画像に前記設定座標が設定されている場合に、前記入力装置により指定された荷役位置の位置座標として設定されたその設定座標を特定し、特定されたその設定座標に前記吊具を移動させ、前記任意の箇所が、前記荷役物画像の範囲外の場合に、または、前記荷役物画像の範囲内で、かつ、その荷役物画像に前記設定座標が設定されていない場合に、前記入力装置により指定された荷役位置の位置座標として前記任意の箇所の座標を特定し、特定したその座標に前記吊具を移動させる制御を行う構成である請求項1に記載のクレーンの運転システム。
【請求項3】
前記指定装置は前記トロリまたは前記吊具に設置されて前記領域の一部を撮像する撮像装置を有し、
前記制御装置は、前記入力装置により指定された荷役位置への前記吊具の移動中に前記撮像装置が撮像した複数の撮像画像を統一した座標系で連続的に繋ぎ合わせるとともに、それらの撮像画像の画像処理によりそれらの撮像画像の中に存在する荷役物を示す前記荷役物画像を特定し、特定したその荷役物画像に前記設定座標が設定された状態の前記領域画像を前記表示装置に表示させる制御を行う構成である請求項2に記載のクレーンの運転システム。
【請求項4】
前記指定装置は前記トロリまたは前記吊具に設置されて前記領域の一部の空間位置情報を測量する測量装置を有し、
前記制御装置は、前記入力装置により指定された荷役位置への前記吊具の移動中に前記測量装置が測量した複数の空間位置情報に基づいて、前記領域のうちの前記測量装置により測量された部分を前記領域画像として描画し、描画したその領域画像に存在する荷役物の形状を特定し、特定したその荷役物の形状を前記荷役物画像として前記領域画像に描画し、描画した前記荷役物画像に前記設定座標が設定された状態の前記領域画像を前記表示装置に表示させる制御を行う構成である請求項2に記載のクレーンの運転システム。
【請求項5】
前記制御装置は、特定した前記荷役物画像の形状情報に基づいて平面視におけるその荷役物画像の中心位置を示す中心座標を算出し、前記領域画像のなかの前記荷役物画像のうちの前記設定座標に前記荷役位置座標が設定されていない前記荷役物画像の前記設定座標として算出したその中心座標を設定する構成である請求項3または4に記載のクレーンの運転システム。
【請求項6】
指定装置により荷役物の荷役作業を行う荷役位置が指定されると、制御装置により前記指定装置により指定された荷役位置へトロリの横行および走行装置による走行により吊具を移動させるクレーンの運転方法において、
前記指定された荷役位置で前記吊具と荷役物との連結あるいは連結解除の荷役作業を初めて行った場合に、座標取得装置により前記トロリまたは前記吊具の位置座標を取得し、前記制御装置により取得したその位置座標を荷役位置座標として記憶し、
前記荷役位置座標を記憶して以降に前記指定装置により再び前記指定された荷役位置と同じ荷役位置が指定されたときに、前記制御装置により記憶した前記荷役位置座標へ前記吊具を移動させることを特徴とするクレーンの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの運転システムおよびクレーンの運転方法に関し、より詳しくは、指定された荷役位置にトロリの横行および走行装置による走行により吊具を移動させるクレーンの運転システムおよびクレーンの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブームや吊具に設置された撮像装置により下方の領域を撮像し、表示装置により撮像した画像を表示し、画像の任意の箇所を目標位置に指定し、指定した目標位置へ吊具を移動させるクレーンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のクレーンは撮像装置で撮像した画像に画像処理を施して目標位置を算出する構成である。この種の画像処理による位置の検出は精度が低い。それ故、このクレーンでは、実際に荷役物を荷役する際に運転手の位置合わせの修正作業が必要となり、荷役効率が低下するおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、指定された荷役位置への吊具の移動を高精度に行って、荷役効率を向上するクレーンの運転システムおよびクレーンの運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明の一態様のクレーンの運転システムは、一方向に延在する桁と、この桁に沿って横行するトロリと、このトロリから吊り下げられて鉛直方向に昇降可能で荷役物に連結される吊具と、前記一方向に直交する方向にクレーンを走行させる走行装置と、荷役物の荷役作業を行う荷役位置を指定する指定装置と、この指定装置により指定された荷役位置へ前記トロリの横行および前記走行装置による走行により前記吊具を移動させる制御を行う制御装置と、を備えたクレーンの運転システムにおいて、前記トロリまたは前記吊具の位置座標を取得する座標取得装置を備え、前記制御装置は、前記指定された荷役位置で前記吊具と荷役物との連結あるいは連結解除の荷役作業を初めて行った場合に、前記座標取得装置が取得した位置座標を荷役位置座標として記憶し、前記荷役位置座標を記憶した以降に前記指定装置により再び前記指定された荷役位置と同じ荷役位置が指定された場合に、記憶した前記荷役位置座標へ前記吊具を移動させる制御を行う構成であることを特徴とする。
【0007】
上記の目的を達成する本発明の一態様のクレーンの運転方法は、指定装置により荷役物の荷役作業を行う荷役位置が指定されると、制御装置により前記指定装置により指定された荷役位置へトロリの横行および走行装置による走行により吊具を移動させるクレーンの運転方法において、前記指定された荷役位置で前記吊具と荷役物との連結あるいは連結解除の荷役作業を初めて行った場合に、座標取得装置により前記トロリまたは前記吊具の位置座標を取得し、前記制御装置により取得したその位置座標を荷役位置座標として記憶し、前記荷役位置座標を記憶して以降に前記指定装置により再び前記指定された荷役位置と同じ荷役位置が指定されたときに、前記制御装置により記憶した前記荷役位置座標へ前記吊具を移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、初回を除いた二回目以降は、実際に荷役物の荷役作業を行ったときの荷役位置座標に吊具を移動させることで、荷役位置と吊具との高精度の位置合わせが可能となる。これにより、荷役位置への位置合わせに要する時間の短縮には有利になり、荷役効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】クレーンの運転システムの実施形態を例示する構成図である。
【
図2】
図1の制御装置を例示するブロック図である。
【
図3】
図1の表示装置に表示される領域画像および荷役物画像を例示する図である。
【
図4】クレーンの運転方法の実施形態を例示するフロー図であり、領域画像を作成する工程を示す。
【
図5】
図4のステップS150を例示するフロー図である。
【
図6】クレーンの運転方法の実施形態を例示するフロー図であり、設定座標を設定する工程を示す。
【
図7】クレーンの運転方法の実施形態を例示するフロー図であり、荷役位置の位置座標を特定し、吊具を移動する工程を示す。
【
図8】クレーンの運転システムの実施形態の変形例を例示する構成図である。
【
図9】
図8の表示装置に表示される領域画像および荷役物画像を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示のクレーンの運転システムおよびクレーンの運転方法の実施形態について説明する。図中では、X方向をクレーン1の桁2に沿って横行するトロリ3の横行方向とし、Y方向をX方向に直交する水平方向であって、クレーン1が走行装置6により走行する走行方向とし、Z方向を吊具4が昇降する鉛直方向とする。
【0011】
図1に例示するように、実施形態のクレーン1の運転システム10は指定された荷役位置Taへトロリ3の横行および走行装置6による走行により吊具4を移動させる制御を行う構成である。以下、本開示において吊具4の移動とはXY平面における移動を示すものとし、吊具4のZ方向の昇降は含まないものとする。
【0012】
クレーン1は、荷役物であるコンテナCが蔵置される蔵置レーン7をX方向に跨いでY方向に走行するクレーンであり、桁2、トロリ3、吊具4、脚構造物5、および、走行装置6を備える。クレーン1はトロリ3のX方向の横行と走行装置6によるY方向の走行とにより吊具4を移動させ、吊具4のZ方向の昇降および吊具4およびコンテナCの連結あるいは連結解除によりコンテナCの荷役作業を行う。
【0013】
桁2はX方向に延在し、トロリ3を介してワイヤにより吊具4を吊り下げ支持する。トロリ3は図示しない横行装置により桁2に沿ってX方向に横行可能に構成される。吊具4はトロリ3から吊架したワイヤが巻かれた昇降装置によりZ方向に昇降可能に構成される。吊具4はコンテナCと連結されてコンテナCを吊り上げ、吊り上げたコンテナCを荷役位置に下ろしてコンテナCとの連結が解除される。脚構造物5は桁2を上端部に支持し、下端部に走行装置6が配置される。走行装置6のそれぞれはX方向に離間して配置され、タイヤを転動させることでクレーン1をY方向に走行させる。
【0014】
運転システム10はクレーン1を遠隔地から操作する遠隔操作を支援するシステムであり、表示装置11、入力装置12、および、撮像装置13から成る指定装置と、座標取得装置14と、クレーン用制御装置15および遠隔運転用制御装置16から成る制御装置と、を備える。
【0015】
指定装置はクレーン1がコンテナCの荷役作業を行う荷役位置Taを指定する装置である。指定装置で指定された荷役位置Taはクレーン用制御装置15へ送られる。
【0016】
表示装置11と入力装置12とは組み合わされて一体化したタッチパネル付きモニタで構成されて、遠隔地に配置される。表示装置11はその表示が遠隔運転用制御装置16の制御により切り替わる。表示装置11は、荷役位置Taを指定するための領域画像20と、運転手による遠隔運転操作のための、吊具4やコンテナCが写る実際の画像や仮想の操作装置の画像とを切り替えて表示する装置である。
【0017】
入力装置12はクレーン1の遠隔地からの運転操作を入力する装置である。入力装置12は吊具4の移動操作に関して表示装置11に表示された領域画像20の任意の箇所を荷役位置Taに指定する入力を行う装置である。吊具4の昇降操作やコンテナCとの連結操作に関して表示装置11に表示された仮想の操作装置の入力を行う装置でもある。入力装置12の検出方式は、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波表面弾性波方式、赤外線光学イメージング方式、電磁誘導方式が例示される。
【0018】
撮像装置13はトロリ3に設置される。撮像装置13はトロリ3からZ方向下方の領域の画像である撮像画像21を撮像する。撮像画像21は所定の周期ごとの静止画でもよく、動画でもよい。撮像装置13はコンテナCが蔵置される蔵置レーン7および蔵置レーン7のX方向側方を走行する運搬シャーシ8を撮像できればよく、撮像した撮像画像21に吊具4が写っていなくてもよい。撮像装置13が撮像した撮像画像21に吊具4が映らない場合は、吊具4が写る画像を撮像する別の撮像装置を備える。
【0019】
座標取得装置14はトロリ3に設置される。座標取得装置14は所定の周期でトロリ3の位置座標Pnを取得する。座標取得装置14としては全球測位衛星システム(GNSS)のアンテナが例示される。全球測位衛星システムのアンテナは所定の周期ごとに複数の人工衛星から受信する時刻等の情報に基づき経度、緯度、及び高度からなる絶対座標を測定する。絶対座標を測定する方法としては、単独測位、相対測位、DGPS(ディファレンシャルGPS)測位、RTK(リアルタイムキネマティックGPS)測位が例示できる。全球測位衛星システムのアンテナはトロリ3の位置座標Pnとして経度と緯度とを取得可能な構成であればよい。また、座標取得装置14としては横行エンコーダと走行エンコーダとの組み合わせも例示される。横行エンコーダはトロリ3の横行距離を測定する装置であり、走行エンコーダは走行装置6による走行距離を測定する装置である。それらの装置の測定値を組み合わせることでトロリ3の位置座標Pnを取得する。
【0020】
制御装置は、クレーン用制御装置15と遠隔運転用制御装置16とから成り、表示装置11の表示の制御と、入力装置12の入力に応じてクレーン1の各装置の駆動の制御と、を行う。クレーン用制御装置15はクレーン1に設置され、指定された荷役位置Taに吊具4を移動させる制御を行う。また、クレーン用制御装置15は、仮想の操作装置の操作に基づいて吊具4を昇降させる制御や吊具4およびコンテナCを連結させる制御や、仮想の操作装置の操作に基づいてトロリ3を横行させる制御や走行装置6によりクレーン1を走行させる制御を行う。遠隔運転用制御装置16は遠隔地に設置され、領域画像20を表示装置11に表示させる制御と、入力装置12により指定された荷役位置Taの位置座標をクレーン用制御装置15に送信する制御とを行う。クレーン用制御装置15および遠隔運転用制御装置16は相互に通信可能に接続される。
【0021】
図2に例示されるように、クレーン用制御装置15および遠隔運転用制御装置16のそれぞれは各種情報処理を行う中央演算処理装置(CPU)、その各種情報処理を行うために用いられるプログラムや情報処理結果を読み書き可能な内部記憶装置、及び各種インターフェースなどから構成されるハードウェアである。クレーン用制御装置15は、トロリ3の図示しない横行装置、吊具4の図示しない昇降装置、走行装置6のそれぞれに電気的に接続される。また、クレーン用制御装置15は撮像装置13および座標取得装置14に電気的に接続され、それらの取得した画像や値を遠隔運転用制御装置16に送信する。遠隔運転用制御装置16は表示装置11および入力装置12に電気的に接続される。
【0022】
クレーン用制御装置15は機能要素としてクレーン制御部30を有する。遠隔運転用制御装置16は各機能要素として画像作成部31、座標設定部32、表示制御部33、および、制御指令部34と、を有する。各機能要素は、プログラムとして各々の制御装置の内部記憶装置に記憶されて、中央処理装置により読み出されて、適宜実行される。なお、各機能要素としては、プログラムの他にそれぞれが独立して機能する電気回路も例示される。また、各機能要素のそれぞれをプログラマブルロジックコントローラ(PLC)で構成して、各々の制御装置を複数のPLCの集合体としてもよい。
【0023】
クレーン制御部30は入力装置12の入力に基づいて制御指令部34が生成した指令信号を受信し、受信したその指令信号に基づいてトロリ3の横行装置、吊具4の昇降装置、および、走行装置6のそれぞれを制御する機能要素である。具体的に、クレーン制御部30は、入力装置12により荷役位置Taが入力されて、制御指令部34からその荷役位置Taの位置座標を指令信号として受信すると、トロリ3の横行装置および走行装置6を制御して、吊具4を受信した位置座標に移動させる制御を行う。また、クレーン制御部30は入力装置12により仮想の操作装置の操作が入力されて、制御指令部34からその操作に応じた指令信号を受信すると、トロリ3の横行装置、吊具4の昇降装置、および、走行装置6のそれぞれを受信した指令信号に応じて制御する。
【0024】
画像作成部31は、撮像装置13が撮像した撮像画像21が入力され、領域画像20を作成する機能要素である。画像作成部31は複数の撮像画像21を繋ぎ合わせる工程と、撮像画像21の中に荷役物画像22を特定する工程と、特定したその荷役物画像22の中心座標Omを算出し、算出した中心座標Omを設定座標に設定する工程とを行う。
【0025】
座標設定部32は、座標取得装置14が取得した位置座標Pnとクレーン制御部30が行う吊具4およびコンテナCの連結あるいは連結解除の作業完了の信号とが入力され、荷役物画像22の設定座標に荷役位置座標Qmを設定する機能要素である。
【0026】
表示制御部33は画像作成部31が作成した領域画像20に座標設定部32により設定座標が設定された状態の領域画像20を表示装置11に表示させる制御を行う機能要素である。
【0027】
制御指令部34は、入力装置12の入力に応じた指令信号を生成し、クレーン制御部30に生成したその指令信号を送信する機能要素である。指令信号は、入力装置12により荷役位置Taが指定された場合に、荷役位置Taの位置座標を含む信号であり、入力装置12により仮想の操作装置の操作が入力された場合に、操作に応じた信号である。
【0028】
図3に例示するように、領域画像20は所定の領域として蔵置ヤードが設定される。本開示において蔵置ヤードとはクレーン1がコンテナCの荷役作業を行う領域であり、複数の蔵置レーン7が並んで成る。領域画像20は蔵置ヤードの平面視の画像である。領域画像20は、複数の撮像画像21から成り、荷役物画像22、ポインタ画像23、および、無描画像24を含む。領域画像20の画像上の位置座標は蔵置ヤードの位置座標と結び付けられる。
【0029】
撮像画像21は指定された荷役位置Taへの吊具4の移動中に撮像装置13が撮像した画像である。撮像画像21は撮像装置13の光軸を中心とした画像座標系の位置情報を有する。複数の撮像画像21は統一された座標系で連続的に繋ぎ合わされて領域画像20を構成する。
【0030】
荷役物画像22は撮像画像21に存在するコンテナCの画像を示す。荷役物画像22は撮像画像21に画像処理を施して特定される。画像処理としては、コンテナCの特定を目的としたパターン認識、差分画像演算、テンプレートマッチングが例示される。加えて、画像処理としては、特定精度の向上のためにノイズ除去やエッジ強調などの画像加工やコントラスト補正や色補正などの画像補正も例示される。なお、荷役物画像22は撮像画像21に存在する運搬シャーシ8に載せられたコンテナCの画像も含むものとする。
【0031】
ポインタ画像23は入力装置12により荷役位置Taに指定された任意の箇所を示す画像である。ポインタ画像23としては、三角形状、矢印形状、第二指を突き出した手の形状などが例示される。
【0032】
無描画像24は領域画像20のうちの撮像画像21が存在しない部位を示す。撮像画像21は吊具4の移動中に撮像装置13が撮像した画像であり、吊具4が移動していない領域では撮像されない。無描画像24は吊具4が移動していない領域を示す。
【0033】
設定座標は特定された荷役物画像22の位置座標であり、X座標およびY座標から成る二次元座標系とする。設定座標は荷役位置座標Qmと中心座標Omとのどちらかの一方の座標が設定される。設定座標には優先度が高い方の座標が設定され、荷役位置座標Qmの優先度は中心座標Omの優先度よりも高い。設定座標は荷役物画像22が特定されていない箇所には設定されない。
【0034】
荷役位置座標Qmは指定された荷役位置Taで吊具4とコンテナCとの連結あるいは連結解除の荷役作業を初めて行った場合に座標取得装置14が取得した位置座標Pnである。本開示において吊具4とコンテナCとの連結あるいは連結解除の荷役作業を初めて行った場合とは、クレーン1ごと、および、作業日ごとに異なる。吊具4とコンテナCとの連結あるいは連結解除の荷役作業を初めて行った場合は、ある作業日にクレーン1が指定された荷役位置TaでコンテナCを吊具4により吊り上げた場合、または、吊り上げたコンテナCを下ろした場合である。
【0035】
中心座標Omは荷役物画像22の形状情報に基づいて平面視における荷役物画像22の中心位置を示す。中心座標OmはコンテナCが平面視で長方形を成すことから、その長方形の中心位置を示す。
【0036】
図4~
図7に例示するように、クレーン1の運転方法は、画像作成部31が領域画像20を作成し、作成した領域画像20を表示装置11に表示する工程(
図4、
図5)と、座標設定部32が設定座標に荷役位置座標Qmを設定する工程(
図6)と、制御指令部34が指令信号を送信し、その指令信号に基づいてクレーン制御部30が吊具4を移動させる工程(
図7)とから成る。各々の工程のうちの表示する工程と設定する工程とは所定の周期ごとに繰り返し行われる。吊具4を移動させる工程は入力装置12による入力が行われると開始され、吊具4の移動が完了すると終了する。所定の周期とは撮像装置13が撮像画像21を撮像する周期や座標取得装置14が位置座標Pnを取得する周期とする。フロー図における一周期の経過は「リターン」で示す。
【0037】
図4および
図5に例示するように、領域画像20を作成する工程はクレーン1の運転が開始されるとスタートし、クレーン1の運転が終了するまで行われる。クレーン1の運転が開始されると、撮像装置13が撮像画像21を撮像する(S110)。次いで、画像作成部31が撮像装置13から送られた撮像画像21に画像処理を施して、撮像画像21の中の荷役物画像22を特定する(S120)。次いで、画像作成部31が特定した荷役物画像22の中心座標Omを算出する(S130)。蔵置レーン7に蔵置されたコンテナCの荷役物画像22では、その荷役物画像22の中心座標Omを画像処理の画像特徴抽出により算出する。また、運搬シャーシ8に搭載されたコンテナCを示す荷役物画像22においては、コンテナCを画像認識により特定し、特定したコンテナCの画像部分の中心座標Omを画像特徴抽出により算出する。次いで、画像作成部31が算出した中心座標Omを荷役物画像22の設定座標に設定する(S140)。
【0038】
次いで、画像作成部31が領域画像20を更新する(S150)。具体的に、画像作成部31が記憶されていた領域画像20の一部分を上記のステップS110~ステップS140で作成された撮像画像21に差し替えるとともに、その一部分と差し替える撮像画像21とを比較して、画像の変更箇所を特定する(S151)。このステップS151では変更箇所の数jとその位置とが特定される。次いで、画像作成部31が特定された変更箇所の全てで荷役物画像22の有無とそれに伴う設定座標の更新とを行う(S152)。画像作成部31が記憶していた領域画像20に有った荷役物画像22が撮像画像21に無いか否かを判定し(S153)、無いと判定した場合に(S153:YES)設定座標を消去する(S154)。次いで、画像作成部31が記憶していた領域画像20に無い荷役物画像22が撮像画像21に有るか否かを判定し(S155)、有ると判定した場合に(S155:YES)、その荷役物画像22の設定座標を中心座標Omに設定する(S156)。次いで、画像作成部31が記憶していた領域画像20に有った荷役物画像22が撮像画像21に有るか否かを判定する(S157)。次いで、有ると判定した場合に(S157:YES)、画像作成部31が有ると判定した荷役物画像22の設定座標に荷役位置座標Qmが設定されているか否かを判定する(S158)。有ると判定した荷役物画像22に荷役位置座標Qmが設定されていない場合に(S158:NO)、画像作成部31がその荷役物画像22の設定座標を中心座標Omに設定する(S156)。有ると判定した荷役物画像22に荷役位置座標Qmが設定されていた場合に(S158:YES)、画像作成部31がその荷役物画像22の設定座標を荷役位置座標Qmに設定する(S159)。以上のステップS153~ステップS159が特定された変更箇所の全てで行われる。
【0039】
次いで、画像作成部31で作成された領域画像20が表示制御部33に送られて、表示制御部33がその領域画像20を表示装置11に表示させる(S160)。以上の領域画像20を作成する工程により、撮像装置13が撮像した複数の撮像画像21が統一した座標系で連続的に繋ぎ合わせられるとともに、画像処理によりそれらの撮像画像21の中に存在するコンテナCを示す荷役物画像22が特定され、特定されたその荷役物画像22に設定座標が設定された状態の領域画像20が表示装置11に表示される。
【0040】
図6に例示するように、設定座標を設定する工程はクレーン1の運転が開始されると座標設定部32がクレーン制御部30の制御の監視をスタートし、クレーン1の運転が終了まで繰り返し行われる。制御の監視がスタートすると、座標設定部32は吊具4の移動が完了して吊具4が指定された荷役位置Taに到着したか否かを判定する(S210)。吊具4が荷役位置Taに到着したと判定すると(S210:YES)、座標設定部32は吊具4およびコンテナCの連結あるいは連結解除の荷役作業が完了したか否かを判定する(S220)。次いで、座標取得装置14が位置座標Pnを取得する(S230)。なお、座標取得装置14が取得した位置座標Pnは吊具4およびコンテナCの連結あるいは連結解除の荷役作業が完了した位置であることが望ましく、その荷役作業が完了してからトロリ3の横行や走行装置6による走行が行われる前までの間のタイミングで取得されることが望ましい。次いで、座標設定部32はそのタイミングで取得された位置座標Pnを荷役位置座標Qmとし、荷役物画像22の設定座標にその荷役位置座標Qmを設定する(S240)。以上の設定座標を設定する工程により、荷役物画像22の設定座標が実際にコンテナCの荷役作業を行ったときの荷役位置座標Qmに設定される。
【0041】
図7に例示するように、吊具4を移動させる工程はクレーン1の運転が開始されると制御指令部34が入力装置12の入力の監視をスタートする。入力の監視がスタートすると、制御指令部34は表示装置11に表示された領域画像20の任意の箇所に入力装置12により荷役位置Taが指定されたか否かを判定する(S310)。
【0042】
任意の箇所に荷役位置Taが指定されたと判定すると(S310:YES)、制御指令部34は任意の箇所が荷役物画像22の範囲内か否かを判定する(S320)。任意の箇所が荷役物画像22の範囲内と判定すると(S320:YES)、制御指令部34はその荷役物画像22に設定座標が設定されているか否かを判定する(S330)。設定座標が設定されていると判定すると(S330:YES)、制御指令部34は荷役位置Taの位置座標として設定座標を特定する(S340)。
【0043】
任意の箇所が荷役物画像22の範囲外と判定すると(S320:NO)、または、設定座標が設定されていないと判定すると(S330:NO)、制御指令部34は荷役位置Taの位置座標としてその任意の箇所の座標を特定する(S350)。
【0044】
次いで、制御指令部34は特定した位置座標を含む指令信号をクレーン制御部30に送信する(S360)。次いで、送信された指令信号を受信したクレーン制御部30は指令信号に含まれる位置座標に吊具4を移動させる(S370)。吊具4の移動が終了すると、この工程は終了する。以上の吊具4を移動させる工程により、入力装置12により指定された荷役位置Taに吊具4が移動される。なお、荷役位置Taが指定されないと判定された場合は(S310:NO)、表示装置11に表示された仮想の操作装置が操作された場合であり、その操作に基づいた指令信号が生成され、クレーン制御部30に送信される。
【0045】
本開示の運転システム10は、指定装置により指定された荷役位置Taで初めて荷役物の荷役作業を行った場合に、座標取得装置14が取得した位置座標Pnを荷役位置座標Qmとして記憶する。そして、運転システム10は荷役位置座標Qmを記憶した以降に指定装置により再び同じ荷役位置Taが指定された場合に、記憶した荷役位置座標Qmへ吊具4を移動させる。このように運転システム10によれば、初回を除いた二回目以降は、実際にコンテナCの荷役作業を行ったときの荷役位置座標Qmに吊具4を移動させることで、指定された荷役位置Taへの高精度の位置合わせが可能となる。これにより、荷役位置Taへの位置合わせに要する時間の短縮には有利になり、荷役効率を向上できる。
【0046】
運転システム10は指定装置が表示装置11と入力装置12とを有し、遠隔運転用制御装置16が入力装置12により入力された荷役位置Taが表示装置11に表示された領域画像20の荷役物画像22の範囲内か否かと、その荷役物画像22に設定座標が設定されているか否かを判定する構成である。このように、運転システム10は、荷役位置Taの位置座標として荷役物画像22に設定された設定座標と任意の箇所の座標とのどちらか一方の座標を特定して、特定した位置座標に吊具4を移動させることが可能となる。これにより、コンテナCの荷役作業を行っていない場所や、運搬シャーシ8に搭載されていて、位置座標の特定が困難なコンテナCへの大まかな位置合わせも可能になり、クレーン1の運転操作を簡略化することができる。なお、吊具4を移動させていない無描画像24に荷役位置Taが指定されてもその位置座標として同様に任意の箇所の座標が特定され、無描画像24の範囲内にも吊具4を移動させることが可能である。
【0047】
運転システム10は荷役物画像22の形状情報に基づいて平面視におけるその荷役物画像22の中心位置を示す中心座標Omを算出し、領域画像20のなかの荷役物画像22のうちの荷役位置座標Qmが設定座標に設定されていない荷役物画像22に算出したその中心座標Omを設定座標として設定する構成である。これにより、コンテナCが蔵置されているがそこでコンテナCの荷役作業を行っていない場所や、運搬シャーシ8に搭載されていて、位置座標の特定が困難なコンテナCへの大まかな位置合わせの精度を高めることができる。
【0048】
運転システム10は指定装置が撮像装置13を有し、撮像装置13が撮像した撮像画像21を統一した座標系で連続的に繋ぎ合わせた領域画像20を表示装置11に表示させる構成である。また、運転システム10は領域画像20の中の荷役物画像22を特定し、特定した荷役物画像22に設定座標を設定する構成である。このように、運転システム10は、視覚的に荷役位置Taの指定の入力を行うことが可能となる。これにより、クレーン1の運転の煩雑さが回避され、運転操作の未熟な運転者でも精度の高い荷役作業を行うことが可能となる。
【0049】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の運転システム10およびクレーン1の運転方法は特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0050】
運転システム10はコンテナC以外の荷役物を荷役するクレーンにも適用可能であり、コンテナCのように荷役物どうしを鉛直方向に積む重ねることが可能な荷役物を荷役するクレーンであれば適用可能である。そのような荷役物としては、本実施形態のコンテナC以外で、鋼片(スラブ、ブルーム、ビレットなど)が例示される。また、運転システム10は、蔵置レーン7をX方向に跨いでコンテナCを荷役するクレーン1以外のクレーンにも適用可能であり、そのようなクレーンとしては、岸壁に接岸した船舶に対してコンテナCを荷役するクレーンや鋼片を荷役するクレーンが例示される。また、クレーン1の構成も例えば、走行装置6がレーンの上を転動する車輪を有する構成でもよく、所謂天井クレーンのように脚構造物がない構成でもよく、実施形態の構成に限定されるものではない。
【0051】
図8および
図9に例示するように、本開示の運転システム10は岸壁に接岸した船舶9に対してコンテナCを荷役するクレーン30に適用される。クレーン30は既述したクレーン1とコンテンCを荷役する場所が異なるがその構造が異なるものではないため、同一の部材や機器は同一の符号を用いることとする。なお、クレーン30の桁2はクレーン1の桁2に対して脚構造物5からX方向に張り出す構造であるが、X方向に延在するものであり、クレーン1の桁2と同一の部材として扱う。
【0052】
クレーン30の運転システム10の領域画像20は所定の領域として船舶9および運搬シャーシ8が停車する岸壁が設定される。船舶9はコンテナCの四隅の位置にZ方向に立設されたセルガイドから成るセル構造を有する。領域画像20は船舶9および岸壁の平面視の画像である。
【0053】
船舶9はその形状や接岸位置によってコンテナCの蔵置位置が蔵置ヤードに比して大きく異なり、予測することが難しい場合がある。本開示の運転システム10によれば、初回を除いた二回目以降は、実際にコンテナCの荷役作業を行ったときの荷役位置座標Qmに吊具4を移動させることで、指定された荷役位置Taへの高精度の位置合わせが可能となる。これにより、蔵置位置が接岸した船舶9ごとに変化する場合であっても、荷役位置Taへの位置合わせに要する時間の短縮には有利になり、荷役効率を向上できる。
【0054】
運転システム10の指定装置は荷役位置Taの指定が可能であればよく、本実施形態の構成に限定されなくてもよい。本実施形態の運転システム10は運転者によるクレーン1の遠隔運転に適用したシステムであり、運転システム10がクレーン1を自動運転するシステムの場合に、指定装置はコンテナCの管理を行う上位システムであってもよい。上位システムは蔵置レーン7のX方向の区分をベイ、Y方向の区分をロウ、Z方向の区分をティアとして荷役位置Taを指定する。上位システムによる荷役位置Taの指定でも本実施形態と同様に、初回を除いて二回目以降は荷役位置座標Qmに吊具4を移動させることで、荷役効率の向上に有利になる。
【0055】
また、運転システム10がクレーン1を遠隔運転するシステムの場合に、指定装置は視覚的に荷役位置Taの指定が可能であればよく、本実施形態の構成に限定されなくてもよい。指定装置は撮像装置13に代えて、所定の領域の一部の空間情報を測量する測量装置を有していてもよい。測量装置としては二次元レーザースキャナや三次元レーザースキャナが例示される。この場合に、遠隔運転用制御装置16は、指定された荷役位置Taへの吊具4の移動中に測量装置が測量した複数の空間位置情報に基づいて、蔵置ヤードのうちの測量装置により測量された部分を領域画像20として描画する。次いで、遠隔運転用制御装置16は、その領域画像20に存在するコンテナCの形状を特定し、特定したそのコンテナCの形状を荷役物画像22として領域画像20に描画し、描画した荷役物画像22に設定座標が設定された状態の領域画像20を表示装置11に表示させる制御を行う構成であってもよい。このように、領域画像20は実際の画像でなくてもよく、モデリングされた画像でもよい。
【0056】
領域画像20は荷役物画像22、ポインタ画像23、および、無描画像24以外の画像が描画されていてもよい。例えば、座標位置取得装置14で取得したトロリ3の位置座標Pnに基づいてクレーン1の位置を示す画像が描画されてもよい。また、運搬シャーシ8の位置を特定可能であれば、運搬シャーシ8を示す画像が描画されてもよい。
【0057】
指定装置の入力装置12はタッチパネルに限定されず、表示装置11に表示された領域画像20の任意の箇所を指し示して選択する装置(ポインティングデバイス)であればよい。例えば、入力装置12としてはマウスが例示される。また、入力装置12は上位システムが番地を指定するように番地を入力可能なキーボードでもよく、音声を認識して文字列に変換する装置でもよい。
【0058】
指定装置の表示装置11と入力装置12とは遠隔地に設置されたタッチパネル付きモニタに限定されずに、例えば、運転者が携帯可能な携帯機器でも代用可能である。また、入力装置12とは別に運転手が操作する操作装置を備えてもよい。
【0059】
指定装置の撮像装置13はZ方向の位置が略固定になることからトロリ3に設置されることが望ましいが、吊具4に設置されてもよい。撮像装置13が吊具4に設置される場合は、領域画像20を作成する場合に吊具4のZ方向の位置座標を加味することで各々の撮像画像21の座標系を統一することが可能となる。
【0060】
蔵置ヤードで複数のクレーン1がコンテナCの荷役作業を行う場合に、領域画像20は各々のクレーン1に設置された撮像装置13で撮像された各々の撮像画像21を統一の座標系として繋ぎ合わせて作成されてもよい。この場合に、荷役物画像22に設定される荷役位置座標Qmは各々のクレーン1に設置された座標取得装置14により取得された位置座標Pnを用いてもよい。但し、各々のクレーン1は構造体の歪みや装置の経年劣化などにより同じ荷役位置Taにおける位置座標が異なる場合がある。また、蔵置ヤードの路面の傾きなどが変化する場合がある。そのため、領域画像20は各々のクレーン1で共有し、設定座標はクレーン1ごとに設定することが望ましい。また、同様の理由から同じクレーン1で日を跨いでコンテナCの荷役作業を行う場合にも、作業日ごと、あるいは、所定の作業日程ごとで設定座標をリセットすることが望ましい。なお、位置座標が異ならない状況であれば設定座標をリセットしなくてもよい。
【0061】
制御装置はクレーン用制御装置15と遠隔運転用制御装置16とに別れていなくてもよく、それらの機能要素を備えた一つの制御装置としてもよい。また、制御装置は、指定された荷役位置TaでコンテナCの荷役作業を行ったときに座標取得装置14が取得した位置座標Pnが設定された荷役位置座標Qmと異なっている場合に、取得したその位置座標Pnを新たな荷役位置座標Qmとして記憶し、荷役物画像22の設定座標に新たに記憶したその荷役位置座標Qmを設定座標に設定してもよい。これにより、クレーン1の構造体の歪みや装置の経年劣化、あるいは、蔵置ヤードの路面の変化が生じてもそれらの状態の変化に合わせた荷役位置座標Qmを再設定することが可能となり、位置合わせの精度の低下を抑制することが可能となる。
【0062】
荷役位置Taの位置座標として中心座標Omや任意の箇所の座標が特定された場合に、その位置座標を中心座標Omや任意の箇所の座標からずらした座標に補正したり、それらの座標に基づいた位置合わせ領域を設定したりしてもよい。例えば、荷役位置Taが指定されたときに、吊具4をその荷役位置Taに移動させる経路を予測して、吊具4が中心座標Omや任意の箇所の座標の直上に到達する手前の座標に設定されるとよい。中心座標Omや任意の箇所の座標は大まかな座標の指定であり、中心座標Omや任意の箇所の座標に合わせてクレーン1の走行が停止したときやトロリ3の横行が停止したときに、実際にコンテナCの荷役作業を行う位置を通り過ぎてしまう場合がある。このとき、位置合わせのためにクレーン1を走行装置6により再度走行させたり、トロリ3を再度横行させたりする必要がある。このように、位置合わせのために再度吊具4の位置を移動させることは、位置合わせに要する時間が長くなることに加えて、吊具4の振れが大きくなるおそれがある。そこで、大まかな座標の指定の場合は、指定された座標よりも手前の座標に設定することで、位置合わせには有利になる。
【0063】
無描画像24は領域画像20のうちの撮像画像21が存在しない部位を示す画像であるが、本実施形態のように荷役物がコンテナCのようなマトリックス配置されるものであれば、上位システムにある蔵置ヤードの設計図や蔵置計画図から対応する部分を抽出して表示させてもよい。そのような設計図や計画図には荷役物画像22に類似する画像が記載されており、その画像に基づいて荷役物画像22を描画することも可能である。また、無描画像24にそのような設計図や計画図の対応する部分を表示する場合に、設定座標に設計図や計画図にあるコンテナCの目標蔵置位置座標を設定してもよい。このように無描画像24として対応する設計図や計画図を表示し、その中に描画した荷役物画像22に類似する画像に目標蔵置位置座標を設定することで、大まかな位置合わせの精度を高めるには有利になる。
【符号の説明】
【0064】
1 クレーン
2 桁
3 トロリ
4 吊具
6 走行装置
10 運転システム
11 表示装置
12 入力装置
13 撮像装置
14 座標取得装置
15 クレーン用制御装置
16 遠隔運転用制御装置