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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063064
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】表示システム
(51)【国際特許分類】
   G09G 5/00 20060101AFI20230427BHJP
   G09G 5/02 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
G09G5/00 510V
G09G5/00 510G
G09G5/00 555G
G09G5/00 520V
G09G5/00 550X
G09G5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173329
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】西島 克典
(72)【発明者】
【氏名】原田 隆宏
【テーマコード(参考)】
5C182
【Fターム(参考)】
5C182AA02
5C182AA21
5C182AA22
5C182AA23
5C182AC03
5C182AC43
5C182BA26
5C182BB04
5C182BB05
5C182BB11
5C182BC01
5C182BC05
5C182BC43
5C182CA01
5C182CA21
5C182CB12
5C182CB53
5C182CC25
5C182DA05
5C182DA06
5C182DA14
5C182DA70
(57)【要約】
【課題】より汎用性の高い表示システムを提供する。
【解決手段】表示システム1は、透過型表示装置3と、壁面用表示装置4-1~4-4と、画像情報を記憶する画像メモリ2aと、画像情報を、透過型表示面及び壁面用表示面それぞれに対応する部分画像情報に分割する表示制御部2cと、部分画像情報を、対応する透過型表示面及び壁面用表示面のうちの少なくともいずれか一方で表示可能な部分画像情報に変換する変換処理部4bbと、画像情報と、透過型表示面及び壁面用表示面との対応を表す割り付け情報を記憶する割り付け情報記憶部2bと、を備え、表示制御部2cは、割り付け情報に基づき画像情報を部分画像情報に分割し、透過型表示装置3及び壁面用表示装置4-1~4-4は、変換処理部4bbで変換されたそれぞれに対応する部分画像情報をもとに画像表示を行う。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動時には透過型表示面に画像を表示し、非作動時には前記透過型表示面を透過して背景を視認できるようになっている透過型表示装置と、
前記透過型表示面と隣接して配置される壁面用表示面を有し、作動時には前記壁面用表示面に画像を表示し、非作動時には前記壁面用表示面の領域に予め設定された絵柄を視認できるようになっている壁面用表示装置と、
画像情報を記憶する画像メモリと、
前記画像情報を、前記透過型表示面及び前記壁面用表示面それぞれに対応する部分画像情報に分割する画像情報分割部と、
前記部分画像情報を、対応する前記透過型表示面及び前記壁面用表示面のうちの少なくともいずれか一方で表示可能な部分画像情報に変換する変換処理部と、
前記画像情報と、前記透過型表示面及び前記壁面用表示面との対応を表す割り付け情報を記憶する割り付け情報記憶部と、
を備え、
前記画像情報分割部は、前記割り付け情報に基づき前記画像情報を前記部分画像情報に分割し、
前記透過型表示装置及び前記壁面用表示装置は、前記変換処理部で変換されたそれぞれに対応する前記部分画像情報をもとに画像表示を行うことを特徴とする表示システム。
【請求項2】
前記透過型表示装置の前記透過型表示面は、窓全体を覆うように設置されることを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記透過型表示装置及び前記壁面用表示装置の全てあるいは一部は、クロマキー合成の背景となる撮影対象物の補色となる色を表示することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光透過性を有すると共に意匠性を有するシートを発光表示体の表面に設けた表示装置は、発光表示体が作動し発光している時には、発光表示体からの光がシートを透過して、発光表示体に表示されている文字や図形や記号等を表示することができる。他方、発光表示体が作動停止している時には、シートが発光表示体を覆い隠していることにより、発光表示体を認識させずにシートの絵柄を認識させることになり、周囲と調和した意匠とすることができる(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
このような表示装置としては、例えば、図8に示すように、樹脂等からなるシート状の基材112上に、色味調整層113、模様層114、表面保護層115を順に設け、レーザ光やドリル等で細かい光通過孔110aを多数形成したシートを液晶ディスプレイ等の発光表示体111の表面に設けたものがある。
【0004】
この表示装置110においては、発光表示体111が作動して発光しているとき、光がシートの光通過孔110aを通過することにより、観察者は発光表示体111の表示を視認することができる。他方、発光表示体111が作動停止しているとき、シートが発光表示体111を覆い隠していることから、観察者は発光表示体111を視認することはできず、シートを視認することから周囲と調和した意匠とすることができる。
【0005】
また、例えば、図9に示すように、樹脂等からなる光透過性を有するシート状の基材121上に、光を通過させる細かい空隙(孔)120aを多数形成するように、パターン層122、色味調整層123、模様層124、表面保護層125を印刷手法でアレイ状に積層して設けたシートを発光表示体111の表面に設けた表示装置120がある。
【0006】
この表示装置120においては、発光表示体111が作動して発光しているとき、光がシートの空隙120aを通過することにより、観察者は発光表示体111の表示を認識することができる。他方、発光表示体111が作動停止しているとき、シートが発光表示体111を覆い隠しているため、観察者は発光表示体111を認識できず、シートを視認することから、周囲と調和した意匠とすることができる
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-128581号公報
【特許文献2】特許第6370519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したような表示装置110及び120は、壁面に設置することによって、表示装置110、120が作動時には観察者に対して所定の画像を視認させることができ、表示装置110、120が非作動時には観察者に対して周囲と調和した意匠を視認させることができる。
【0009】
しかしながら、壁面のみにしか設けられないため、例えば、壁に窓が設けられている場合等には、窓をよけて表示装置を設置する必要があり、表示装置の設置場所に制約があり、所望の箇所に表示装置を設置することができない。そのため、より汎用性の高い表示装置が望まれていた。
【0010】
そこで、この発明は、従来の未解決の課題に着目してなされたものであり、より汎用性の高い表示システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、作動時には透過型表示面に画像を表示し、非作動時には透過型表示面を透過して背景を視認できるようになっている透過型表示装置と、透過型表示面と隣接して配置される壁面用表示面を有し、作動時には壁面用表示面に画像を表示し、非作動時には壁面用表示面の領域に予め設定された絵柄を視認できるようになっている壁面用表示装置と、画像情報を記憶する画像メモリと、画像情報を、透過型表示面及び壁面用表示面それぞれに対応する部分画像情報に分割する画像情報分割部と、部分画像情報を、対応する透過型表示面及び壁面用表示面のうちの少なくともいずれか一方で表示可能な部分画像情報に変換する変換処理部と、画像情報と、透過型表示面及び壁面用表示面との対応を表す割り付け情報を記憶する割り付け情報記憶部と、を備え、画像情報分割部は、割り付け情報に基づき画像情報を部分画像情報に分割し、透過型表示装置及び壁面用表示装置は、変換処理部で変換されたそれぞれに対応する部分画像情報をもとに画像表示を行うようになっている表示システムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、表示システムを作動させることにより、壁面と窓とに連続した画像を表示することができると共に、表示システムを非作動とすることにより、壁面部分は周囲に調和した意匠とし、窓の部分は背景を透過させることができ、より汎用性の高い表示システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る表示システムの一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る表示システムの画面構成の一例を示す説明図である。
図3】壁面用表示装置の一例を示す概略構成図である。
図4】壁面用表示部の一例を示す断面図である。
図5】壁面用表示部のその他の例を示す断面図である。
図6】本発明の動作説明に供する説明図である。
図7】本発明の動作説明に供する絶命図である。
図8】従来の表示装置の要部の一例を示す断面図である。
図9】従来の表示装置の要部の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0015】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
以下に、本発明の一実施形態に係る表示システム1を説明する。
〔構成〕
図1は、本発明の一実施形態に係る表示システム1の一例を示す概略構成図である。
ここでは、透過型表示装置3と、4台の壁面用表示装置4-1~4-4と、を備えた表示システム1について説明する。
表示システム1は、システム制御装置2と、透過型表示装置3と、壁面用表示装置4-1~4-4と、を備える。
【0017】
図2は、表示システム1の画面構成の一例を示す構成図である。
表示システム1の全画面Disは長方形を有し、透過型表示装置3の表示面Win(透過型表示面)と、壁面用表示装置4-1~4-4の表示面Wa1~Wa4(壁面用表示面)と、から構成される。例えば、表示面Winが中心となり、表示面Winの下部に表示面Wa1、表示面Winの左側に表示面Wa2、表示面Winの右側に表示面Wa3、表示面Winの上部に表示面Wa4が配置され、表示面Win及び表示面Wa1~Wa4は互いに接しており、全表示面Disは横長の長方形を有している。
【0018】
図1に戻って、システム制御装置2は、画像メモリ2aと、割り付け情報記憶部2bと、表示制御部2cと、を備える。
【0019】
画像メモリ2aには、全画面Disに表示される画像情報が格納される。図2中に示すように、画像メモリ2aの左下のアドレスを(0,0)、右下のアドレスを(m,0)、左上のアドレスを(0,n)、右上のアドレスを(m,n)としたとき、表示面Wa1には、アドレス(0,0)、(m,0)、(0,c)、(m,c)で囲まれる部分の画像情報が表示され、表示面Wa2には、アドレス(0,c+1)、(a,c+1)、(0,d)、(a,d)で囲まれる部分の画像情報が表示され、表示面Wa3には、アドレス(b+1,c+1)、(m,c+1)、(b+1,d)、(m,d)で囲まれる部分の画像情報が表示され、表示面Wa4には、アドレス(0,d+1)、(m,d+1)、(0,n)、(m,n)で囲まれる部分の画像情報が表示される。なお、各定数は、0<a<a+1<b<b+1<mを満足する。また、0<c<c+1<d<d+1<nを満足する。
【0020】
割り付け情報記憶部2bは、表示面Win及びWa1~Wa4と、画像メモリ2aのうち、表示面Win及びWa1~Wa4のそれぞれに表示すべき画像情報が格納されるアドレスとの対応を示す割り付け情報が格納される。
【0021】
表示制御部2cは、割り付け情報記憶部2bに格納されている割り付け情報を参照して、画像メモリ2aに格納されている画像情報を、各表示面Win及びWa1~Wa4で表示すべき画像情報である部分画像情報に分割し(画像情報分割部)、分割した部分画像情報をそれぞれ対応する透過型表示装置3及び壁面用表示装置4-1~4-4に送信する。
【0022】
また、表示制御部2cは、透過型表示装置3及び壁面用表示装置4-1~4-4間で同期をとるためのタイミング信号等の表示制御信号を生成し、各透過型表示装置3及び壁面用表示装置4-1~4-4それぞれに送信する。
なお、画像メモリ2aには透過型表示装置3の仕様に準じた画像情報が格納され、表示制御部2cでは透過型表示装置3の仕様に準じた表示制御信号を生成するようになっている。
【0023】
表示制御部2cは、透過型表示装置3の仕様に準じた画像情報から抽出した部分画像情報を透過型表示装置3に送信すると共に、壁面用表示装置用の部分画像情報を壁面用表示装置4-1~4-4に送信する。また、表示制御部2cは、透過型表示装置3の仕様に準じた表示制御信号を透過型表示装置3及び壁面用表示装置4-1~4-4に送信する。
【0024】
透過型表示装置3は、例えば透過型LEDビジョン等といった、非作動時には観察者がその表示面の背景を視認できるようになっている透過型の表示装置で構成され、画像メモリ3aと、表示制御部3bと、透過型表示部3cと、を備える。
画像メモリ3aには、システム制御装置2の画像メモリ2aから送信された部分画像情報が格納される。
【0025】
表示制御部3bは、作動時には表示制御部2cからの表示制御信号に基づき、画像メモリ3aの部分画像情報を透過型表示部3cに出力する。これにより、透過型表示部3cの表示面Winに部分画像情報に対応した画像が表示される。
【0026】
また、表示制御部3bは、非作動時には、透過型表示部3cに部分画像情報を送信しない。そのため、表示面Winに画像表示は行われず、透過型表示部3cの背面側の様子が透過型表示部3cを透過し表示面Winの部分で視認することができる。
【0027】
壁面用表示装置4-1~4-4は、同一構成を有し、画像メモリ4aと、表示制御部4bと、壁面用表示部4cと、を備える。
画像メモリ4aには、システム制御装置2の画像メモリ2aから送信された透過型表示装置3の仕様に準じた、壁面用表示装置用の部分画像情報が格納される。
【0028】
表示制御部4bは、変換処理部4bbを有し、画像メモリ4aに格納された透過型表示装置3の仕様に準じた壁面用表示装置用の部分画像情報を、壁面用表示装置4-1~4-4の仕様に準じた部分画像情報に変換し、画像メモリ4aに更新記憶する。また、変換処理部4bbは、表示制御部2cからの、透過型表示装置3の仕様に準じた表示制御信号を、壁面用表示装置用の表示制御信号に変換する。また、変換処理部4bbでは、例えば、透過型表示装置3と壁面用表示装置4-1~4-4との間の、色み、輝度、及び解像度等の違いによる表示面Winにおける表示画像と表示面Wa1~Wa4における表示画像の観察者による見え方の違いを抑制するように部分画像情報及び表示制御信号を変換する。また、表示面Winと表示面Wa1~Wa4とが接する境界部分には画像を表示できないことから、表示面Win及び表示面Wa1~Wa4にそれぞれに対応する部分画像情報に応じた画像を表示した場合、不連続となる。例えば、隣接する表示面Win及び表示面Wa1にかけて直線を表示した場合、表示面Winと表示面Wa1との間の境界部分により、表示面Winに表示される直線は、表示面Wa1に表示される直線の延長上に位置せず、直線に見えない可能性がある。そのため、変換処理部4bbでは、この境界部分の幅に応じて表示面Wa1に表示される直線の表示位置をずらす等といった、見栄えをよくする処理等も行う。
【0029】
そして、表示制御部4bは、変換処理部4bbで変換された壁面用表示装置用の表示制御信号に基づき、画像メモリ4aに更新記憶された壁面用表示装置用の部分画像情報を壁面用表示部4cに出力する。これにより、壁面用表示部4cの表示面Wa1~Wa4に部分画像情報に対応した画像が表示される。
【0030】
また、表示制御部4bは、非作動時には、壁面用表示部4cに部分画像情報を送信しない。そのため、表示面Wa1~Wa4には画像表示は行われず、観察者は、壁面用表示装置4-1~4-4が設置された周囲と調和する意匠を視認することができる。
【0031】
図3は、壁面用表示装置4-1~4-4の一例を示す概略構成図であり、図4は、図3に示す壁面用表示部4cのA-A′断面における断面図である。なお、図3では、わかり易くするために、後述の印刷層14及び表面保護層15を図示していない。また、図4は、わかり易くするために、後述の発光部12の数は、図3と対応していない。壁面用表示装置4-1~4-4の構成は同一であるため、ここでは、壁面用表示装置4として説明する。
【0032】
壁面用表示部4cは、図4に示すように、シート状の基材11と、基材11の表面に固定された複数の発光部12と、基材11の表面に固定された発光部12を駆動するための回路配線13と、一方の面に印刷層14が形成され、印刷層14と基材11上の発光部12及び回路配線13とが対向し、発光部12及び回路配線13を覆うように設けられた表面保護層15と、を備える。
【0033】
基材11は、例えば樹脂製のフィルムから形成される。基材11は、樹脂製のフィルムに限るものではなく任意の部材を適用することができる。例えば基材11としてフィルム等の比較的軽量な部材を用いれば、壁面用表示装置4全体を軽量化することができ、そのため、比較的大画面を有する壁面用表示装置4を実現することができる。また、壁面用表示装置4の設置位置が壁面用表示装置4全体の重量によって制約をうけにくくなるため、汎用性が向上する。また、基材11は図3に示すように矩形状であってもよく、任意の形状であってよい。
【0034】
基材11は白色を有する。ここでいう白色とは、ISO白色度が30%以上であることが好ましく、より好ましくは60%以上であり、グレーなども含む。なお、基材11は、必ずしも全体が白色でなくてもよく、少なくとも、基材11の、印刷層14と対向する側の面が白色であればよい。例えば、透明フィルムからなる基材11の場合には、白色の基材11として、東レ株式会社製のルミラーE20 白PETフィルムを適用することができる。また、ISO白色度が30%以上、より好ましくは60%以上となるように、例えば、白色顔料の種類(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛等)、粒形、配合量を選定し、樹脂練り込みにより基材11を形成してもよく、或いは既存の基材に塗装すること或いは印刷することにより、白色の基材11を形成してもよい。
【0035】
例えば、基板上に発光部12を配置してなるLEDビジョンのように、基材11としての基板上に取り付けた発光部(LED素子)12の周囲を樹脂で覆って固定するようにしている場合には、基材11として白色の基板を用いると共に、さらに発光部12の周囲を白色の樹脂で覆うことで発光部12を基板(基材11)に固定してもよい。
【0036】
発光部12は、例えば、RGBそれぞれに対応する3つのLED素子が一つにまとめられた3in1チップ型の表面実装型のLED素子からなり、且つ、発光部12は、透明又は白濁した封止材で3つのLED素子が封止されている。発光部12は、行方向及び列方向に複数整列配置されすなわちマトリクス状に配置されている。
【0037】
発光部12を構成するLED素子としては、マイクロLED等、無機LEDを適用することができる。なお、発光部12は、3in1チップ型の素子に限るものではなく、RGBそれぞれ用のLED素子を設けてもよい。また、表面実装型のLED素子に限るものではなく無機LED素子であれば適用することができる。発光部12を構成する無機LED素子のサイズや形状は、壁面用表示部4cの設置位置、壁面用表示部4cの表示内容を視認する観察者と壁面用表示部4cとの間の距離、壁面用表示部4cの大きさ、また、壁面用表示部4cに要求される画質や発光画像の明るさ等に応じて設定すればよい。また、発光部12はカラーである必要はなく単色であってもよい。
【0038】
図3では、基材11の全面に発光部12を行方向及び列方向に整列配置しているが、文字等を発光表示させるにあたって必要となる場所のみに発光部12を設けてもよい。また、汎用性や、発光部12の有無によって観察者により視認される壁面用表示部4cの色が異なること等を回避するために、基材11の全面に発光部12を整列配置し、文字等を発光表示させるにあたって必要となる発光部12のみを回路配線13と接続し、他の発光部12は回路配線13と接続せずに、ダミーとして配置しておいてもよい。
【0039】
回路配線13は、図3に示すように、整列配置された行方向に並ぶ発光部12の両側それぞれに配置され、各発光部12に含まれる無機LED素子毎の、この無機LED素子に信号又は電力を供給するための配線は表示制御部4bに接続され、無機LED素子は表示制御部4bによって駆動制御される。なお、無機LED素子の駆動方式は、これに限るものではなく、例えば、LEDディスプレイの駆動方式として一般に使用されている方法であっても適用することができる。また、回路配線13の配置位置は図3に示す配置位置に限るものではなく、任意の位置に配置することができる。
【0040】
印刷層14は、木目導管や大理石等の各種の模様をインキにより印刷塗布されてなる。印刷層14は、可視光透過率が50%以上となるように形成されている。印刷層14は、発光部12が発光することにより表示される表示内容を、基材11の発光部12が配置されている側から見たときに、観察者が十分認識できる程度に、インキが印刷塗布されていない領域を残したパターン(以下、透過パターンという。)、もしくは印刷層14の可視光透過率が50%以上になるインキ量、またはそれらの組み合わせで絵柄が形成されている。
【0041】
印刷層14は、後述のシート状の表面保護層15の一方の面もしくは両面に印刷塗布して形成される。印刷層14の絵柄は、壁面用表示装置4が設置される場所と調和する意匠となっている。このような意匠を有することにより、発光部12が発光していないときに壁面用表示装置4が周囲と調和するようになっている。印刷層14は、印刷塗布されるものに限るものではなく、周囲と調和した意匠を付与することができればどのような方法で形成してもよい。
【0042】
表面保護層15は、例えば、無色透明の樹脂等からなり光透過性を有するシート状の基材で構成され、発光部12、回路配線13及び印刷層14を保護する。表面保護層15は、その一方の面に形成された印刷層14と発光部12とが対向し、発光部12及び回路配線13を覆うように、発光部12及び回路配線13との間に隙間を以て配置され、隙間を設けることによって発光部12の放熱を図るようになっている。
【0043】
なお、表面保護層15への熱の影響を遮るために、発光部12と表面保護層15との間に透明シートを備えていてもよい。
また、表面保護層15は、さらにその表面、つまり、印刷層14とは逆側の面に、光沢調整等のコーティング層を備えていてもよい。
【0044】
このような構成を有する壁面用表示部4cは、例えば、次の手順で作成する。すなわち、基材11の一方の面に、発光部12及び回路配線13を固定し電気的に接続する。発光部12及び回路配線13の固定及び接続方法は特に限定されないが、例えば、回路配線13は銀や銅などの金属を含む導電性インキを用いてパターン状に印刷し、発光部12は所定の位置にハンダなどの導電性材料を用いて熱圧着などの方法により電気的に接続かつ固定を行う。
【0045】
次に、無色透明シートからなる表面保護層15の一方の面にインキを印刷塗布して印刷層14を形成する。
そして、印刷層14と発光部12とが対向し、発光部12及び回路配線13を覆うように、発光部12が固定された側の積層体と印刷層14が形成された側の積層体とを積層する。これによって壁面用表示部4cが形成される。そして、回路配線13と表示制御部4bとを電気的に接続することで、壁面用表示部4cを作成する。
【0046】
なお、印刷層14及び表面保護層15は、発光部12及び回路配線13の隙間を無色透明の充填材等で埋めた状態で、その上にインキを印刷塗布して印刷層14を形成し、さらに印刷層14を含む全体に樹脂を印刷塗布することで表面保護層15となる塗膜を形成してもよい。
【0047】
なお、壁面用表示装置4は、図3及び図4に示す構成を有する表示装置に限るものではなく、例えば、壁面に設置することができ、図5に示すように、印刷層14が基材11の一方の面に積層され、印刷層14の上に発光部12及び回路配線13が固定された構成を有する表示装置であってもよく、発光部12が発光している時には発光部12による発光画像を視認でき、発光部12が発光していない時には印刷層14により表示される壁面用表示装置4が設置された場所の周囲と同調した絵柄を視認することの可能な表示装置であれば適用することができる。
【0048】
〔動作〕
次に、表示システム1の動作を説明する。
表示システム1の透過型表示部3cが窓部分に設置され、壁面用表示部4cが窓の周囲の壁面に設置され、各表示部3c、4cの表示面によって、図2に示すように、透過型表示部3cを中心にその周囲に壁面用表示部4cが設置されて、全画面Disを形成しているものとする。
【0049】
表示システム1が電源オフ状態である非作動持には、観察者は、図6に示すように、透過型表示装置3の表示面Winに、表示面Winの背後の景色を視認し、壁面用表示装置4の表示面Wa1~Wa4には壁面用表示部4cの印刷層14に形成される絵柄を視認する。印刷層14の絵柄は、壁面用表示部4cが設置された周囲と同調した絵柄であり、例えば、周囲の壁面の絵柄と同一の絵柄とすることにより、壁面用表示部4cの部分とその周囲の壁面とが同調し、また、発光部12や基材11等は表面保護層5によって覆われているため、観察者は印刷層14の絵柄を視認し易く、表示システム1が設置されていない場合と同等の状態として認識することができる。
【0050】
一方、表示システム1が電源オン状態である作動時には、システム制御装置2では、割り付け情報記憶部2bに格納された割り付け情報をもとに、画像メモリ2aに格納された画像情報を、各表示部3c、4cに対応する部分画像情報に分割し、部分画像情報及び表示制御信号を、各表示装置3、4-1~4-4に送信する。表示システム1から送信される部分画像情報及び表示制御信号は、透過型表示装置3の仕様に準じた部分画像情報及び表示制御信号であるため、透過型表示装置3では、受信した部分画像情報を、表示制御信号に基づいて透過型表示部3cに出力する。これによって表示面Winに部分画像情報に応じた画像が表示され、すなわち窓の部分に画像が表示される。一方、壁面用表示装置4-1~4-4のそれぞれでは、受信した画像情報及び表示制御信号は、透過型表示装置3の仕様に準じた部分画像情報及び表示制御信号であるため、変換処理部4bbで、壁面用表示装置4の仕様に準じた部分画像情報及び表示制御信号に変換し、変換した部分画像情報を、変換した表示制御信号に基づいて壁面用表示部4cに出力する。これによって、表示面Wa1~Wa4に画像情報に応じた画像が表示され、すなわち窓の周囲の部分に画像が表示される。このとき、透過型表示装置3及び壁面用表示装置4-1~4-4への部分画像情報は、図2に示すように、全画面Disに表示する画像情報を、各表示装置3、4の表示面の配置位置を考慮して分割した情報であるため、各表示部3c、4cに表示された全体の画像は、図7に示すように、画像メモリ2aに格納された画像情報に応じた画像と同等の画像となる。
【0051】
なお、画像メモリ2aに格納される画像情報は、予め設定して記憶しておいてもよく、また、上位装置から順次送信される画像情報を画像メモリ2aに順次格納するようにしてもよい。
また、全画面Disに表示する画像は、静止画であっても動画であってもよい。
【0052】
〔効果〕
このように、表示システム1では、透過型表示装置3及び壁面用表示装置4-1~4-4で部分画像情報をもとに画像表示を行うことで、一つの画像を表示することができる。つまり、透過型表示装置3と壁面用表示装置4という形式の異なる複数の表示装置で一つの画像を連動して表示させることができる。そのため、例えば透過型表示装置3の透過型表示面が窓全体と重なるように表示システム1を設置することによって、壁面と窓部分とにわたって一つの画像を表示することができ、汎用性を向上させることができる。
【0053】
〔変形例〕
上記実施形態において、表示システム1を設置した際に、システム制御装置2からテストパターンを各表示装置3、4に送信して表示させ、色彩輝度計によって、透過型表示装置3及び壁面用表示装置4-1~4-4それぞれの色度や明度を測定し、これら透過型表示装置3及び壁面用表示装置4-1~4-4間での色度や明度が一致するように、各表示装置3、4への画像情報を補正するようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、図2に示すように、窓に透過型表示装置3を設置し、窓の周囲の壁に4つの壁面用表示装置4-1~4-4を設置しているが、透過型表示装置3の数及び壁面用表示装置4の数は、任意に設定することができ、また、表示面の形状及び大きさも任意に設定することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、窓に透過型表示装置3を配置しているが、窓に限らず、例えば、柱どうしの間に透過型表示面を掛け渡すように透過型表示装置3を設置するようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、各壁面用表示装置4側に変換処理部4bbを設け、システム制御部から透過型表示装置3の仕様に準じた画像情報及び表示制御信号を、透過型表示装置3及び各壁面用表示装置4に送信し、透過型表示装置3では、受信した画像情報及び表示制御信号をそのまま用いて画像表示を行い、各壁面用表示装置4では、透過型表示装置3の仕様に準じた画像情報及び表示制御信号を、変換処理部4bbで壁面用表示装置4の仕様に準じた画像情報及び表示制御信号に変換し、これに基づき画像表示を行う場合について説明したがこれに限るものではない。
【0057】
例えば変換処理部をシステム制御装置2側に設け、変換処理部で透過型表示装置3の仕様に準じた部分画像情報と表示制御信号と壁面用表示装置4の仕様に準じた部分画像情報及び表示制御信号とを生成し、システム制御装置2から、透過型表示装置3の仕様に準じた部分画像情報及び表示制御信号と壁面用表示装置4の仕様に準じた部分画像情報及び表示制御信号と、を対応する透過型表示装置3及び壁面用表示装置4に送信するようにしてもよい。または、変換処理部を透過型表示装置3に設け、システム制御装置2から、壁面用表示装置4の仕様に準じた部分画像情報及び表示制御信号を透過型表示装置3及び壁面用表示装置4-1~4-4に送信し、透過型表示装置3では、受信した壁面用表示装置4の仕様に準じた部分画像情報及び表示制御信号を変換処理部において、透過型表示装置3の仕様に準じた画像情報及び表示制御信号に変換し、これに基づき画像表示を行うようにしてもよい。
【0058】
壁面用表示装置4に変換処理部4bbを設け、システム制御装置2から透過型表示装置3の仕様に準じた部分画像情報及び表示制御信号を送信することで、透過型表示装置3として既存の透過型表示装置をそのまま適用することができる。逆に、透過型表示装置3に変換処理部を設け、システム制御装置2から壁面用表示装置4の仕様に準じた部分画像情報及び表示制御信号を送信することで、複数の壁面用表示装置4それぞれに変換処理部を設ける必要がないため、その分、コスト削減を図ることができる。また、システム制御装置2に変換処理部を設け、透過型表示装置3の仕様に準じた部分画像情報及び表示制御信号と、壁面用表示装置4の仕様に準じた部分画像情報及び表示制御信号と、を対応する透過型表示装置3及び壁面用表示装置4に送信することで、透過型表示装置3及び壁面用表示装置4での処理量の削減を図ることができる。
【0059】
また、表示システム1の表示面を、クロマキー合成用の映像を撮影する際の背景として用いてもよい。つまり、壁面用表示装置4及び透過型表示装置3の各表示面のうちの全て、又は一部に、クロマキー合成用の撮影対象物の補色となる色を表示させることで、表示システム1の表示面を、クロマキー合成用の背景とすることができる。クロマキー合成する対象は人物となることが多いため、表示色は人の肌の補色となる青または緑色が好ましい。撮影対象物の色に合わせて表示色を変更すればよいため、背景となる色の布などを対象物に合わせて用意する必要がなくなるというメリットがある。
【0060】
なお、上述した実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 表示システム
2 システム制御装置
2a 画像メモリ
2b 割り付け情報記憶部
2c 表示制御部
3 透過型表示装置
3a 画像メモリ
3b 表示制御部
3c 透過型表示部
4、4-1~4-4 壁面用表示装置
4a 画像メモリ
4b 表示制御部
4bb 変換処理部
4c 壁面用表示部
11 基材
12 発光部
13 回路配線
14 印刷層
15 表面保護層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9