(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063186
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】射出成形装置および射出成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/00 20060101AFI20230427BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20230427BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
B29C45/00
B29C45/14
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173548
(22)【出願日】2021-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】521466378
【氏名又は名称】川邊 健一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100208454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 章夫
(72)【発明者】
【氏名】川邊健一郎
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AD03
4F206AD07
4F206AH33
4F206JA07
4F206JB12
4F206JC01
4F206JC02
4F206JC09
4F206JL02
4F206JQ81
4F206JQ82
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】信号端子、グランド部品、ネイル部品などの複数のインサート部品を挿入した射出成形品であるコネクタを、繰り返し作製する射出成形装置を提供する。
【解決手段】射出成形装置は、個別インサート部品と帯状キャリアに配列したフープ状インサート部品とを設置した金型に樹脂を射出して、射出成型品を作製する射出成形装置であって、下金型を搭載して移動させる移動テーブルを備えた下プラテン部と、下金型が上金型と対向する位置にあるときに、下プラテン部を貫通する貫通孔に挿入されるイジェクタロッドと、帯状キャリアの帯面の高さ、向き、およびの移送方向を設定するパスラインリフタと、帯状キャリアを、所定の送り量ずつ、帯状キャリアの延伸方向に移送するキャリア移送部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別インサート部品と帯状キャリアに配列されたフープ状インサート部品とを設置した下金型に対して、上金型を開閉移動および型締めして形成されるキャビティー空間内に樹脂を射出して、前記キャビティー空間の形状に応じたインサート射出成形品を作製する、射出成形装置であって、
前記下金型を搭載し、上金型と対向する位置と対向しない位置との少なくとも2つの異なる位置の間で、前記下金型を移動させる移動テーブルを備えた、下プラテン部と、
前記下金型が上金型と対向する位置にあるときに、前記下プラテン部を貫通する貫通孔に挿入される、イジェクタロッドと、
前記帯状キャリアの帯面の高さ、向き、および帯状キャリアの移送方向を設定する、パスラインリフタと、
前記帯状キャリアを、所定の送り量ずつ、帯状キャリアの延伸方向に移送する、キャリア移送部と、を有する射出成形装置。
【請求項2】
前記下プラテン部は、複数個の前記下金型を搭載し、ベースプレート上で回転する回転テーブルを備える、請求項1に記載する射出成形装置。
【請求項3】
前記下プラテン部は、1個の前記下金型を搭載し、ベースプレート上で平行移動するスライドテーブルを備える、請求項1に記載する射出成形装置。
【請求項4】
前記イジェクタロッドおよび前記パスラインリフタは、それぞれ、サーボモータと運動変換部とからなる、イジェクタロッド駆動部およびパスラインリフタ駆動部によって昇降移動される、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載する射出成形装置。
【請求項5】
前記イジェクタロッド駆動部は、前記下プラテン部の貫通孔における、前記イジェクタロッドの先端の高さを設定する、請求項4に記載する、射出成形装置。
【請求項6】
前記パスラインリフタ駆動部は、パスラインリフタに支持された帯状キャリアの高さを設定する、請求項4に記載する、射出成形装置。
【請求項7】
個別インサート部品と帯状キャリアに配列されたフープ状インサート部品とを設置した金型を用いてインサート射出成形品を作製する射出成形装置であって、下金型を移動させる移動テーブルを備えた下プラテン部と、前記下金型が上金型と対向する位置にあるときに、前記下プラテン部を貫通する貫通孔に挿入されるイジェクタロッドと、帯状キャリアを支持し帯状キャリアの高さを設定するパスラインリフタと、帯状キャリアを延伸方向に移送するキャリア移送部と、を有する射出成形装置による射出成形方法であって、
前記移動テーブルによって、前記個別インサート部品が設置された下金型を、上金型と対向する位置に移動する、第1の工程、
前記パスラインリフタに支持された帯状キャリアを、前記フープ状インサート部品が下金型に設置される高さに設定するとともに、前記イジェクタロッドの先端を、前記下プラテン部の貫通孔内部の高さに設定する、第2の工程、
前記上金型を型閉型締して、金型内にキャビティー空間を形成する、第3の工程、
前記キャビティー空間に樹脂を注入して、射出成形品を作製する、第4の工程、
前記上金型を型開移動する、第5の工程、
前記イジェクタロッドの先端で前記射出成形品を押し出すとともに、前記射出成形品の押出しと略同期して、前記パスラインリフタで支持された帯状キャリアを前記キャリア移送部の高さに移動する、第6の工程、
前記移動テーブルの貫通孔から前記イジェクタロッドを退避する、第7の工程、
前記キャリア移送部によって帯状キャリアを移送する、第8の工程、
を、この順に実施する工程を含む、射出成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形装置および射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路の接続に用いられるコネクタを作製するために、コネクタの部品をインサート部品として金型に挿入し、樹脂を金型内に射出することによって一体化して作製するインサート射出成形技術が知られている。従来の射出成形方法は、高価な希少金属基材またはメッキが用いられている信号端子等のコネクタ部品を、廉価な材料からなるキャリアにあらかじめ固定しておき、キャリアとともにインサート部品を金型に挿入して、射出成形品を作製していた。(例えば、特許文献1または2)この射出成形方法は、インサート部品とキャリアとに異なる材料を用いることができて、コネクタ作製のコストを下げられるというメリットを有する。
【0003】
しかし、従来の射出成形方法は、小型化、狭ピッチ化している信号端子等のインサート部品をキャリアの所定位置に固定するために、射出成形装置のほかに、キャリアのマーク位置読取装置やインサート部品とキャリアとの固定装置などを必要とする。従来の射出成形方法は、マーク位置読取やインサート部品のキャリアへの固定を含めた、射出成形全体の装置構成や手順が複雑であり、インサート部品の投入から射出成形品の完成までの経過時間、即ち、射出成形のサイクルタイム、を短縮するのが困難である、という課題があった。
【0004】
また、射出成形によってコネクタの製作を量産化しようとすると、コネクタの信号端子、グランド部品、ネイル部品など、部品材料だけでなく、大きさや形状が異なる複数のインサート部品を、適切なタイミングで金型に設置し、射出成形品を繰り返し作製する必要がある。従来の射出成形方法は、このようなコネクタ製作の量産化に対応するのが困難である、という課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特許第3338667号
【特許文献2】特開2017-193083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、コネクタの信号端子などの個別インサート部品と、グランド部品やネイル部品などのフープ状インサート部品とを射出成型時に金型内で結合し、複数のインサート部品を含む射出成形品であるコネクタを繰り返し作製する、射出成形装置および射出成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的の達成のために、本発明に係る射出成形装置は、個別インサート部品と帯状キャリアに配列されたフープ状インサート部品とを設置した下金型に対して、上金型を開閉移動および型締めして形成するキャビティー空間内に樹脂を射出して、キャビティー空間の形状に応じた成形品を作製する射出成形装置であって、下金型を搭載して移動させる移動テーブルを備えた下プラテン部と、下金型が上金型と対向する位置にあるときに、下プラテン部を貫通する貫通孔に挿入されるイジェクタロッドと、帯状キャリアの帯面の高さ、向き、および帯状キャリアの移送方向を設定するパスラインリフタと、帯状キャリアを、所定の送り量ずつ、帯状キャリアの延伸方向に移送するキャリア移送部と、を有する。
【0008】
また、上記射出成形装置を用いて、本発明に係る射出成形方法は、移動テーブルによって、個別インサート部品が設置された下金型を、上金型と対向する位置に移動する第1の工程、パスラインリフタに支持された帯状キャリアを、フープ状インサート部品が下金型に設置される高さに設定するとともに、イジェクタロッドの先端を、下プラテン部の貫通孔内部の高さに設定する第2の工程、上金型を型閉型締して、金型内にキャビティー空間を形成する第3の工程、キャビティー空間に樹脂を注入して、射出成形品を作製する第4の工程、上金型を型開移動する第5の工程、イジェクタロッドの先端で前記射出成形品を押し出すとともに、射出成形品の押出しと略同期して、パスラインリフタで支持された帯状キャリアをキャリア移送部の高さに移動する第6の工程、移動テーブルの貫通孔からイジェクタロッドを退避する第7の工程、キャリア移送部によって帯状キャリアを移送する第8の工程を、この順に実施する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の射出成形装置によれば、インサート部品の設置、射出成形によるインサート部品の結合、射出成型品の取り出しや搬送などが、すべて射出成形装置において行われる。このため、射出成形のサイクルタイムを短縮することができる。
【0010】
本発明の射出成形方法によれば、射出成形装置による一連の工程において、インサート部品の設置、射出成形によるインサート部品の結合、射出成型品の取り出しや搬送などを、巡回的に繰り返し行うことができる。このため、射出成形によるコネクタ製作の量産化を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る射出成形装置の構成例を示す正面図である。
【
図2】実施形態に係る射出成形装置の構成例を示す側面図である。
【
図3】実施形態に係る射出成形装置の射出成型時の状態を示す正面図である。
【
図4】実施形態に係る射出成形方法の例を示すフロー図である。
【
図5】第1の変形例に係る射出成形装置の構成例を示す、(a)上下金型が対向する状態の断面図、(b)上下金型が対向しない状態の断面図、(c)平面図である。
【
図6】第2の変形例に係る射出成形装置の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(射出成形装置)
図1および
図2を参照しながら、実施形態に係る射出成形装置1の構成を説明する。
図1に示す射出成形装置1は、射出成型部2と、射出成型部2が備えるモータ等を制御する制御部810とから構成される。
図1は実施形態に係る射出成型部2の正面図、
図2は実施形態に係る射出成型部2の側面図を示す。装置の同一部分には同一の符号を付している。
【0013】
図1および
図2に示す座標系のXY方向は水平方向を表し、Z方向は鉛直方向を表す。また、+X方向を前方向、-X方向を後方向と呼ぶ。+Y方向を右方向、-Y方向を左方向と呼ぶ。+Z方向を上方向、-Z方向を下方向と呼ぶ。すなわち、
図1は、射出成型部2を前方向から見た正面図であり、
図2は、射出成型部2を右方向から見た側面図である。
【0014】
また、
図1に示す射出成型部2の一部分(細かなハッチングを付した部分)は、上下金型が対向している状態で、金型の略中心を通るZ方向の軸を含むYZ平面で切断した断面を示す。
図2に示す射出成型部2の一部分(細かなハッチングを付した部分)は、金型の略中心を通るZ方向の軸を含むXZ平面で切断した断面を示す。
【0015】
以下、射出成形装置1の構成を、主に
図1を用いて説明するが、適宜、
図2を参照する。
【0016】
図1に示す射出成型部2の右端に示されているフープ状インサート部品5は、廉価な金属帯材である帯状キャリア4にプレス加工などを行うことにより、予め用意されているコネクタ部品である。フープ状インサート部品5は、例えば、高速伝送ノイズ対策のためのグランド部品、抜去強度対策のためのネイル部品などである。フープ状インサート部品5は、所定の幅を有する帯状キャリア4の延伸方向に、所定の間隔で配列されている。また、帯状キャリア4の延伸方向には、帯状キャリア4を移送するときの基準となる、例えばパイロット穴などのマーク構造が、所定の間隔で設けられている。
図1の中央付近の金型内部に示されている個別インサート部品6は、例えば、高価な希少金属基材や希少金属メッキ部材などからなる、信号端子などのコネクタ部品である。
【0017】
図1は、射出成型部2に設置された金型が開放されている状態を表す。帯状キャリア4は、帯材の延伸方向がY方向、幅方向がX方向を向き、延伸方向と幅方向とからなる帯面が水平面になるようにして、射出成型部2に送り込まれている。フープ状インサート部品5は、帯状キャリア4に所定間隔で配列されて、射出成型部2の右側から装置に送り込まれている。個別インサート部品6は、金型の所定位置に設置されている。射出成形装置1は、フープ状インサート部品5と個別インサート部品6とを射出成型時に結合して射出成形品7を作製する。射出成形品7は、帯状キャリア4に所定の間隔で配列された状態で、図の左方向に射出成型部2から送り出されている。
【0018】
射出成型部2の各部の詳細な説明に入る前に、射出成型部2で用いられている金型の概要を説明しておく。金型は、
図1に示されているように、下金型12および上金型22から構成される。下金型12および上金型22の外形は、ともに略直方体の形状を有する。下金型12に設けられた空間14は、下金型12と上金型22とが型締めされた時に、射出成形品7の形状を決めるキャビティー空間を形成する。個別インサート部品6は、空間14内の所定位置に設置される。下金型12に設けられたイジェクタ16は、射出成形品7を下金型12から離脱させるための装置である。上金型22に設けられた流路24は、射出成型時に、金型内のキャビティー空間に溶融樹脂を流し込むための流路である。
【0019】
射出成型部2は、型締め機構10と型締め駆動部110、イジェクタロッド220とイジェクタロッド駆動部210、パスラインリフタ320とパスラインリフタ駆動部310、キャリア移送部410、および、射出装置610と射出移動部710(
図2参照)などから構成される。
【0020】
型締め駆動部110は、型締め機構10を駆動し、金型の開閉移動と型締めを行う。イジェクタロッド駆動部210は、イジェクタロッド220のZ方向の高さを設定する。パスラインリフタ駆動部310は、帯状キャリア4を水平面で支持するパスラインリフタ320のZ方向の高さを設定する。キャリア移送部410は、帯状キャリア4を延伸方向に移送する。射出移動部710(
図2参照)は、射出装置610のZ方向の高さを設定する。
【0021】
型締め機構10は、上プラテン部32、下プラテン部50、型締めスライダー36、タイバー34、および基盤部42などから構成される。
【0022】
上プラテン部32は、XY面内では、略長方形の形状を有し、Z方向には所定の厚さを有する板状の部材である。上プラテン部32は、下プラテン部50との対向面である上プラテン部32の下面であって、前記長方形の略中心位置に上金型22を固定する。上プラテン部32は、上プラテン部32の上面の略中心から、上プラテン部32の下面の略中心を結ぶ、Z方向に繋がった開口部33を有する。開口部33は、上プラテン部32の上面側で径が大きく、上プラテン部32の下面側で径が小さい、テーパー形状をした開口である。開口部33は、射出成型時に、射出装置610の先端ノズルを挿入するために用いられる。
【0023】
下プラテン部50は、移動テーブル52とベースプレート62とを有する。
図1に示す実施形態では、移動テーブル52は、XY面内では円形であり、Z方向には所定の厚さを有する円盤状の回転テーブルの例を示している。ベースプレート62は、回転テーブルである移動テーブル52を上面で支える板状の部材であり、装置のフレーム74に固定されている。移動テーブル52は、ベースプレート62に固定されたモータで、円盤の中心を通るZ方向の回転軸の回りに、ベースプレート62の上面と平行なXY面内で回転される。
【0024】
下金型12は、移動テーブル52の回転軸から半径方向に所定の距離だけ離れた位置に搭載される。
図1では、移動テーブル52の回転軸は、上金型22と対向する位置にある下金型12の中心から、図の+X方向(紙面に垂直な手前方向)に、所定の距離だけ離れた位置に存在する。移動テーブル52に搭載された下金型12は、移動テーブル52の回転によりXY面内で回転移動する。下金型12のZ方向の高さは、移動テーブル52が回転しても、ベースプレート62や装置のフレーム74の高さに対して変化せず、装置の高さ基準面72に対して一定の高さにある。
【0025】
移動テーブル52は、搭載した下金型12の略中心の直下に相当する位置に、移動テーブル52をZ方向に貫通する貫通孔54を有する。さらに、ベースプレート62も貫通孔64を有する。ベースプレート62の貫通孔64のXY方向の位置は、移動テーブル52が、搭載した下金型12を上金型22と対向する位置に移動させたときに、下金型12の直下の貫通孔54が移動する先のXY方向の位置と一致する。即ち、
図1は、移動テーブル52に搭載した下金型12が上金型22と対向する位置にあるときに、移動テーブル52の貫通孔54とベースプレート62の貫通孔64とが繋がって、下プラテン部50を貫通する貫通孔であることを示している。
【0026】
ここで
図2に移って、移動テーブル52と、それに搭載する下金型12との関係を、さらに説明する。
図2は、移動テーブル52が、上金型22と対向する位置にある下金型12aと、移動テーブル52の回転軸に関して、下金型12aと対称な位置にある下金型12bとの複数個の下金型12を搭載する例を示している。移動テーブル52は、回転軸の回りに半回転することにより、これら2つの位置にある下金型12aと下金型12bとを交換することができる。
【0027】
駆動部510は、回転テーブルである移動テーブル52を回転させるモータ512、モータ512をベースプレート62に固定する固定具514,モータ512の回転を移動テーブル52に伝える回転軸516から構成される。これらは、ベースプレート62の下面に配置される。先に説明したように、移動テーブル52の回転軸516は、上金型22と対向する位置にある下金型12aの中心から+X方向に所定の距離だけ離れた位置にあるため、ベースプレート62の下面に、モータ512や固定具514等の駆動部510を配置するスペースが存在する。
【0028】
下金型12bは、移動テーブル52の回転軸516に関して、下金型12aと対称な位置で、射出成型部2の前面側にある。この位置にある下金型12bは、個別インサート部品6を設置するための下金型12に用いることができる。
図2に示すように、下金型12bの上方(+Z方向)や周囲(+X方向、±Y方向)には、十分なスペースが存在する。
図2の例では示されていないが、このスペースには、例えば、個別インサート部品6を下金型12bの適切な位置に設置するためのピック・アンド・プレース用ロボットや、個別インサート部品6が下金型12bの適切な位置に設置されているかを検査するカメラ等を配置することができる。
【0029】
また、
図2に示す例では、移動テーブル52の上面とベースプレート62の上面とが略同一面になるように、移動テーブル52を配置する部分のベースプレート62の上面の高さを一部で下げている。これにより、下金型12bに個別インサート部品6を設置するための設備等を、下金型12bの周りに配置しやすくなっている。
【0030】
【0031】
型締めスライダー36は、XY面内では、例えば、略長方形の形状を有し、Z方向には所定の厚さを有する板状の部材である。型締めスライダー36には、前記長方形の中心部に、Z方向中心軸を有するボールねじナット38が固定されている。ボールねじナット38は、ボールねじ軸の回転に応じて中心軸方向であるZ方向に移動する。ボールねじナット38に固定されている型締めスライダー36も、ボールねじ軸の回転に応じてZ方向に移動することになる。
【0032】
タイバー34は、Z方向に延伸した円柱状の部材である。タイバー34は、上端部で上プラテン部32に固定され、下端部で型締めスライダー36に固定される。これにより、タイバー34は、上プラテン部32と型締めスライダー36との間のZ方向距離を一定に設定する。
図1は、左右2本のタイバー34を示しているが、XY面内で略長方形の形状を有する上プラテン部32および型締めスライダー36の対応する四隅を結合する、4本のタイバー34が設けられてよい。タイバー34は、上プラテン部32と型締めスライダー36とを、所定のZ方向距離を有して離間させ、互いに平行に設定する。
【0033】
図1に示すように、タイバー34は、下プラテン部50のベースプレート62を貫通しているが、移動テーブル52は貫通していない。これにより移動テーブル52は、ベースプレート62上にあっても、XY面内で移動可能となっている。上プラテン部32および型締めスライダー36の対応する四隅を結合するタイバー34は、XY面内では、上プラテン部32および型締めスライダー36のそれぞれの中心から、長方形の四隅方向に所定の距離離れた対称な位置にある。
【0034】
タイバー34は、上プラテン部32の中心に取り付けられた上金型22と対向する位置にある下金型12に対しても、同様に、XY面内ではその中心から、長方形の四隅方向に所定の距離離れた対称な位置にある。一方、移動テーブル52の回転中心軸は、下金型12の中心から、
図1の+X方向に回転半径程度の離れた位置に存在する。タイバー34を配置するXY面内長方形四隅までの距離と、移動テーブル52の円盤の半径とを適切に設定することにより、移動テーブル52の外側であって、移動テーブル52を貫通しない位置に、タイバー34を配置する。
【0035】
タイバー34は、装置のフレーム74に固定されたベースプレート62を貫通する。タイバー34とベースプレート62との間には、隙間を設けるか、適切な摺動機構を設ける。これによりタイバー34は、上プラテン部32や型締めスライダー36とともにZ方向に自在に移動する。
【0036】
基盤部42は、高さ基準面72に固定され、型締め駆動部110を設置する。基盤部42には、型締め駆動部110のボールねじ軸116を支持し、ねじ軸の方向を決める、ボールねじ軸受48が固定されている。また、基盤部42は、上面からZ方向に貫通するガイド孔46を有している。型締めスライダー36が、型締め機構10とともにZ方向に移動するとき、型締めスライダー36に固定されたガイド棒44は、このガイド孔46に沿ってZ方向に摺動する。ガイド棒44およびガイド孔46は、型締め機構10のZ方向移動におけるぶれやねじれを修正する。
【0037】
次に、
図2を用いて、基盤部42に設置される型締め駆動部110の構造を説明する。実施形態例に係る射出成型部2では、型締め駆動部110の構成要素は、主に、装置の前後方向、即ちX方向に配置されており、
図2を用いて説明する。
【0038】
型締め駆動部110は、サーボモータ112、プーリー113、114、ベルト115、ボールねじ軸116などから構成される。サーボモータ112は、モータに付属するエンコーダで回転角や回転数をモニターしながら、モータ軸を回転する。サーボモータ112の回転は、プーリー113、114、ベルト115を介して、ボールねじ軸116に伝達される。
【0039】
ボールねじ軸116は、基盤部42に取り付けられたボールねじ軸受48により、ねじ軸方向がZ方向を向くように配置されている(
図1も参照)。ボールねじナット38に固定された型締めスライダー36は、ボールねじ軸116の回転に応じてZ方向に移動し、高さ基準面72に対するZ方向の高さを変える。これにより、型締め機構10の上プラテン部32に固定された上金型22も、高さ基準面72に対するZ方向の高さを変える。一方、下金型12は高さ基準面72に対して一定の高さにあるため、上金型22は、ボールねじ軸116の回転に応じて、対向する下金型12に対して開閉移動および型締めを行う。
【0040】
上金型22の上下移動量とサーボモータ112の回転角や回転数との関係は、サーボモータ112に付属するエンコーダによって決定する。また、上金型22と下金型12との型締めに必要な型締め力をもとに、サーボモータ112の回転力、プーリー113、114やベルト115の強度、ボールねじ軸116の駆動力などに必要とされる値を決定する。尚、図の例では、サーボモータ112からボールねじ軸116への回転の伝達は、プーリー113、114、ベルト115により行っているが、ギアなどその他の方法を用いてもよい。
【0041】
図1に戻って、イジェクタロッド220とイジェクタロッド駆動部210の構成を説明する。
【0042】
図1において、下金型12の下方に配置されているイジェクタロッド220は、まっすぐで、所定の長さと強度を有する棒状の部材である。イジェクタロッド220は、その下端をイジェクタロッド駆動部210のスライド部218によって支持されており、棒の長さ方向がZ方向であるように設置される。また、イジェクタロッド220のXY方向の位置は、下金型12が上金型22と対向する位置にあるときに下プラテン部50に形成される貫通孔54、64のXY方向の位置と一致する。
【0043】
イジェクタロッド駆動部210は、ベースプレート62の下面に取り付けられており、サーボモータ212と、動力伝達部214、ボールねじ216,およびスライド部218などから構成される運動変換部とを有する。
図1の例は、2組のイジェクタロッド駆動部210が、イジェクタロッド220を挟んで、軸対称に配置されている例を示す。即ち、左側のイジェクタロッド駆動部210は、右側のイジェクタロッド駆動部210を、イジェクタロッド220の中心軸回りに180°回転した配置になっている。イジェクタロッド駆動部210のスライド部218は、左右両側から、イジェクタロッド220の下端を支持している。
【0044】
イジェクタロッド駆動部210のスライド部218は、ボールねじ216のねじ軸に沿ってZ方向に移動する。イジェクタロッド駆動部210は、左右2個のスライド部218のZ方向の高さが一致するように、それぞれのサーボモータ212の回転を設定する。2組のイジェクタロッド駆動部210は、左右2個のスライド部218がイジェクタロッド220の下端を同じ高さで支持することにより、ロッドの長手方向をZ方向に保ちながら、イジェクタロッド220をZ方向に移動させる。これにより、イジェクタロッド駆動部210は、下プラテン部50に形成される貫通孔54、64における、イジェクタロッド220の先端の高さを設定する。
【0045】
射出成形後に下金型12の内部のイジェクタ16を作動させる時には、イジェクタロッド駆動部210は、イジェクタロッド220の先端を、下プラテン部50の貫通孔54、64を貫通させて、下金型12に組み込まれているイジェクタ16に到達する高さに設定する。イジェクタ16は、イジェクタロッド220に突き上げられて、射出成形品7を下金型12から押し出す。イジェクタロッド220は、イジェクタロッド駆動部210の左右2組のサーボモータ212で駆動されており、イジェクタ16が射出成形品7を金型から離脱させるのに必要な突き上げ力を発生する。
【0046】
下金型12交換時において移動テーブル52を移動させる時には、イジェクタロッド駆動部210は、イジェクタロッド220の先端を、移動テーブル52の下面の高さより下げて、移動テーブル52の移動を可能にする。即ち、イジェクタロッド駆動部210は、イジェクタロッド220を移動テーブル52の貫通孔54から退避する。
【0047】
下金型12交換時には、金型は型開状態であり、型締め機構10の型締めスライダー36はZ方向に一番上がった状態にあり、イジェクタロッド220はZ方向に一番下がった状態にある。イジェクタロッド220の下端が、型締めスライダー36の上面、ボールねじナット38の上面、ボールねじ軸116の上端等と干渉しないように、イジェクタロッド220の長さや移動ストロークを設定する。また、
図1に示すように、イジェクタロッド駆動部210は、型締め機構10の型締めスライダー36、ボールねじナット38、ボールねじ軸116、タイバー34等との干渉を避けるために、イジェクタロッド220の直下に配置するのではなく、イジェクタロッド220から横方向(XY方向)に離れた位置に配置している。
【0048】
同じ
図1を用いて、パスラインリフタ320とパスラインリフタ駆動部310の構成を説明する。
【0049】
パスラインリフタ320は、キャリアガイドレール326,支持台324,支持棒322などから構成される。パスラインリフタ駆動部310は、サーボモータ312と、ボールねじ316およびスライド部318からなる運動変換部とから構成される。
【0050】
キャリアガイドレール326は、X方向に、帯状キャリア4の帯幅と同程度の間隔を有する、Y方向に長い、2本のレール状の部材である。キャリアガイドレール326は、水平に保持された2本のレールの上面で、帯状キャリア4の帯幅方向の両端を下面から支える。これにより、キャリアガイドレール326は、帯状キャリア4の帯面の向きを水平面、即ちXY面に保つ。キャリアガイドレール326は、帯状キャリア4の延伸方向を、キャリアガイドレール326の長手方向に設定することにより、帯状キャリア4の移送方向を決める。また、帯状キャリア4に配列されるフープ状インサート部品5や射出成形品7は、キャリアガイドレール326のレール間の隙間に配置されて、帯状キャリア4とともに移送される。
【0051】
キャリアガイドレール326は、支持台324および支持棒322を介して、パスラインリフタ駆動部310のスライド部318と接続される。支持棒322は、ベースプレート62に設けられた開孔を貫通しており、支持台324やキャリアガイドレール326とともに、Z軸方向に自在に移動する。
【0052】
パスラインリフタ駆動部310は、キャリアガイドレール326のZ方向の高さを設定する。パスラインリフタ駆動部310は、サーボモータ312の回転軸に直結されたボールねじ316の回転により、スライド部318をZ方向に移動させ、キャリアガイドレール326で支持されている帯状キャリア4のZ方向の高さを設定する。
【0053】
パスラインリフタ駆動部310は、キャリアガイドレール326で支持された帯状キャリア4の高さを、型開時には、帯状キャリア4を延伸方向に移送する高さ、型閉時には、フープ状インサート部品5を下金型12に設置する高さに設定する。型閉時には、帯状キャリア4を支持するキャリアガイドレール326は、略ゼロのクリアランスで下金型12に収まる。
【0054】
パスラインリフタ320およびパスラインリフタ駆動部310は、射出成型部2の入口側、即ち
図1の右側、および、射出成型部2の出口側、即ち
図1の左側に、それぞれ1組ずつ設置されている。これにより、パスラインリフタ320およびパスラインリフタ駆動部310は、射出成型部2の入口から出口までの範囲において、帯状キャリア4の帯面の向きを決めて、Z方向高さを一定に保ち、帯状キャリア4の移送方向をY方向に設定する。
【0055】
次に、
図2を用いて、射出成型部2の入口側および出口側に、それぞれ1組ずつ設置されている(
図1参照)、キャリア移送部410の構成を説明する。
【0056】
キャリア移送部410は、円柱状のプーリー414,サーボモータ412、支持台418などで構成される。キャリア移送部410は、下金型12の後方(-X方向)に配置されており、ベースプレート62に固定された支持台418およびサーボモータ412と、サーボモータ412の回転軸に固定されたプーリー414とから構成される。型開時に、パスラインリフタ駆動部310によって移送高さに設定された帯状キャリア4は、帯状キャリア4の帯面を、プーリー414の円柱側面とキャリアガイドレール326とで挟まれた状態になる。
【0057】
この状態で、キャリア移送部410のサーボモータ412は、プーリー414を所定の回転角だけ回転させる。キャリア移送部410は、円柱状プーリー414の回転に応じて、帯状キャリア4の延伸方向に配置されているパイロット穴などのマーク構造を、プーリー414の外周に沿って設けられているピン構造に引っ掛けるなどして、帯状キャリア4を送る。キャリア移送部410は、キャリアガイドレール326で支持されて、高さ、帯面の向き、および移送方向が決まっている帯状キャリア4を、所定送り量ずつ移送する。
【0058】
尚、本実施形態のキャリア移送部410の移送方法は、プーリー414の外周に沿って設けたピンと、帯状キャリア4の延伸方向に配置したパイロット穴とを用いた移送方法を示しているが、帯状キャリア4の移送方法はこれに限定されない。帯状キャリア4の帯面を上下から挟んで、所定の送り量ずつ帯状キャリア4を送るグリッパーフィード移送方法を用いてもよい。また、周回するベルト面によって、所定の送り量ずつ帯状キャリア4を送るロールフィードタイプの移送方法を用いてもよい。
【0059】
同じ
図2を用いて、射出装置610と射出移動部710の構成を説明する。
【0060】
射出装置610は、型締め機構10の上方に設けられ、射出シリンダー612と射出駆動部614とで構成される。射出シリンダー612は、樹脂ペレットをシリンダー下方に運ぶスクリュー、樹脂を溶融させるヒータ、溶融した樹脂を溜める射出室などを備える。射出駆動部614は、射出シリンダー612のスクリューを作動させる射出モータ、樹脂の温度を設定する温度設定部、射出室における樹脂の射出量や射出圧力を設定する圧力設定部などを備える。射出シリンダー612は、射出駆動部614で設定される樹脂温度、射出量、射出圧力などで溶融樹脂を射出する。
【0061】
射出成型時には、上金型22と下金型12とは型締めされており、射出シリンダー612は、その下端の樹脂射出口が、上金型22の上面の流路24の入り口に密着する状態にある。この時の射出成型部2の状態を示す正面図を
図3に示す。装置の同一部分には、
図1および
図2と同一の符号を付している。
【0062】
図3の状態において、型締め駆動部110は、型締め機構10を下方に下げ、上金型22および下金型12が型締めされた状態にある。イジェクタロッド駆動部210は、イジェクタロッド220の先端を、下金型12の直下の高さに設定している。パスラインリフタ駆動部310は、パスラインリフタ320で支持された帯状キャリア4を、上下金型によって帯状キャリア4が挟まれて、フープ状インサート部品5を金型内に設置する高さに設定している。
図3の状態で、射出シリンダー612は、型締めされた金型内のキャビティー空間内に溶融された樹脂を射出して、射出成形品7を作製する。
【0063】
【0064】
射出移動部710は、射出装置610と装置の背面にあるフレーム74との間に設置される。射出移動部710は、射出装置610とフレーム74とを結合し、フレーム74に対して射出装置610をZ方向に移動させる。射出移動部710は、サーボモータ712、ボールねじ716、およびスライド部714などから構成される。サーボモータ712は、回転軸に直結されたボールねじ716を回転させて、スライド部714をZ方向に移動させる。スライド部714は、射出装置610と結合しており、射出装置610のZ方向の高さを変える。
【0065】
次に、
図1において、射出成形装置1の制御部810を説明する。
【0066】
制御部810は、CPU812、記憶装置814,IF(インターフェース)816,ドライバ818などから構成される。CPU812は、記憶装置814に記憶されたプログラムや制御パラメーターを呼び出し、プログラムに従って、射出成形装置1を制御する。記憶装置814は、射出成形装置1を制御するためのプログラムや制御パラメーターを記憶する。IF816は、制御部810と射出駆動部614との間で、射出装置610の制御情報や設定情報のやり取りを行う。また、IF816は、制御部810とタッチパネルなどの外部入出力装置(図示せず)との間で、入出力情報のやり取りを行う。
【0067】
ドライバ818は、射出成型部2の各所に設けられているサーボモータのエンコーダから、モータ軸の回転角や回転数などに関するデータを受け取る。ドライバ818は、CPU812の制御のもとで、射出成型部2の各所に設けられているサーボモータに、モータ軸の回転角や回転数などを設定する。
【0068】
射出成型部2の各所に設けられているサーボモータのモータ軸は、運動変換部において、例えば、プーリーとベルトによって、ボールねじのねじ軸と結合されている。モータ軸とボールねじのねじ軸の回転角や回転数の比率は、結合しているプーリーの直径比から決まる。また、ボールねじのねじ軸の回転角や回転数と、ボールねじにかみ合うスライド部の移動量との関係も、ボールねじ山のピッチ等から予め決まっている。即ち、スライド部の移動量に応じて、サーボモータのモータ軸の回転角や回転数が決まる。
【0069】
スライド部を目標位置に移動させるための移動量に対して、モータ軸の回転角や回転数を予め決めおき、その目標回転数や目標回転角を記憶装置814に記憶しておく。CPU812は、サーボモータのエンコーダからのデータと、記憶装置814から読みだした目標回転数や目標回転角のデータとをもとに、ドライバ818を制御して、サーボモータにモータ軸の回転角や回転数などを設定する。これにより、制御部810のCPU812は、射出成型部2の各所のスライド部を目標位置に移動させる。
【0070】
(射出成形方法)
以上の構造を有する射出成形装置1を用いて、射出成形方法の例を次に説明する。
図4は、制御部810の制御のもとで、射出成型部2が行う射出成形方法の例を示すフロー図である。
【0071】
図4の左側に示したステップS2~S8は、上金型22と対向する下金型12aに対する工程であり、
図4の右側に示したステップS9は、上金型22と対向しない下金型12b(
図2参照)に対する工程である。左側のステップS2~S8と右側のステップS9を貫く矢印は、略同時期に行われる工程の流れを示す。図の中央を経由して左下から右上に向かう矢印、および右下から左上に向かう矢印は、移動テーブル52を移動させて下金型12aと下金型12bとを交換する工程(ステップS1)を示す。
【0072】
移動テーブル52を移動する時には、金型は型開状態であり、型締め機構10や射出装置610は+Z方向に上昇した状態である。パスラインリフタ320は上昇した状態で、帯状キャリア4は、下金型12および上金型22から離間している。また、イジェクタロッド220先端の高さは、移動テーブル52の下面より下に設定されて、イジェクタロッド220は移動テーブル52の貫通孔54から退避した状態にある。
【0073】
移動テーブル52の移動完了後における、上金型22と対向する下金型12aに対するステップS2~S8を説明する。制御部810は、パスラインリフタ駆動部310を制御して、パスラインリフタ320を下降させ、フープ状インサート部品5を下金型12に設置する。略同時に、制御部810は、イジェクタロッド駆動部210を制御して、イジェクタロッド220の先端を、下金型12のイジェクタ16の直下に移動する(ステップS2)。
【0074】
次に、制御部810は、型締め駆動部110を制御して、型締め機構10を下降させる。上金型22と下金型12aとは型閉、型締めされて、金型の内部にキャビティー空間を形成する(ステップS3)。ステップS3において制御部810は、上金型22の下面が対向する下金型12aの上面と接するまでは、型締め駆動部110のサーボモータ112のエンコーダの出力をもとに、型締め機構10の下降量を制御する。制御部810は、上金型22の下面が対向する下金型12aの上面と接したあとは、上金型22と下金型12aとの間に所定の型締め力が発生するように、サーボモータ112の回転力(トルク)を制御する。
【0075】
次に、制御部810は、射出移動部710を制御して、射出装置610を下降させて、射出シリンダー612の下端の樹脂射出口を上金型22の上面に密着させる。続いて、制御部810は、射出駆動部614を制御して、上金型22の流路24を通して金型のキャビティー空間に溶融樹脂を射出する(ステップS4)。これにより、帯状キャリア4に配列されたフープ状インサート部品5と下金型12に設置されていた個別インサート部品6とを、金型内で結合させて射出成形品7を作製する。
【0076】
次に、制御部810は、射出移動部710を制御して、射出装置610を上昇させる。さらに制御部810は、型締め駆動部110を制御して、型締め機構10を上昇させて、上金型22と下金型12aとを型開する(ステップS5)。
【0077】
次に、制御部810は、イジェクタロッド駆動部210を制御して、イジェクタロッド220の先端を下金型12aのイジェクタ16に突き当てて、射出成形品7を下金型12から離脱させる。これと略同期して、制御部810は、パスラインリフタ駆動部310を制御して、パスラインリフタ320を上昇させる(ステップS6)。
【0078】
制御部810は、イジェクタロッド220の突き当て動作と、パスラインリフタ320の上昇動作の開始とを、イジェクタロッド駆動部210のサーボモータ212、およびパスラインリフタ駆動部310のサーボモータ312によって同期させる(
図1参照)。下金型12から離脱された射出成形品7は、パスラインリフタ320による帯状キャリア4の上昇動作に伴って上昇し、帯状キャリア4とともに下金型12から離れる。以上のサーボモータ212およびサーボモータ312の同期制御により、射出成形品7や帯状キャリア4が、下金型12からの離脱時や帯状キャリア4の上昇時に、下金型12やパスラインリフタ320から過剰な力を受けない状態を実現する。
【0079】
ステップ6の工程の結果、帯状キャリア4は、キャリア移送部410のプーリー414の円柱側面に押し当てられる。帯状キャリア4は、プーリー414の円柱側面とキャリアガイドレール326とで挟まれて、下金型12および上金型22から離間した状態になる。これにより、射出成形品7が配列された帯状キャリア4を、射出成型部2の-Y方向(
図1参照)に移送するのに必要な、下金型12と上金型22との間の間隔が設定される。
【0080】
次に、制御部810は、イジェクタロッド駆動部210を制御して、イジェクタロッド220の先端を、移動テーブル52の下面より下に下降させて、イジェクタロッド220を移動テーブル52の貫通孔54から退避させる(ステップS7)。
【0081】
続いて、制御部810は、キャリア移送部410のサーボモータ412を制御して、帯状キャリア4を、フープ状インサート部品5の配列間隔に相当する送り量だけ、帯状キャリアの延伸方向に移送する(ステップS8)。
【0082】
図4の右側に示す、上金型22と対向しない下金型12b(
図2参照)に対するステップS9は、以上の下金型12aに対するステップS2~S8と並行して実施される。移動テーブル52の移動(ステップS1)後、下金型12bは射出成型部2の装置前面側にある。下金型12aに対するステップS2~S8の工程が行われている間に、下金型12bには、例えば、ピック・アンド・プレースロボットによって個別インサート部品6が設置される(ステップS9)。
【0083】
射出成形装置1は、上金型22と対向する下金型12aに対するステップS2からステップS8までの工程により、例えば、コネクタの信号端子である個別インサート部品6と、コネクタのネイル部品やグランド部品などであるフープ状インサート部品5とを、射出した樹脂によって金型内で結合して、射出成形品7であるコネクタを作製する。射出成形装置1は、作製した射出成形品7を金型から離脱させ、帯状キャリア4に所定の間隔に並んだ状態で、射出成形装置1から射出成形品7を搬出する。
【0084】
射出成形装置1は、上金型22と対向しない下金型12bに対するステップS9の工程により、下金型12aに対してステップ2からステップ8までの工程が行われている間に、次の射出成形に用いる個別インサート部品6を下金型12bに設置する。
【0085】
以上のように、射出成形装置1は、インサート部品の設置、射出成形によるインサート部品の結合、射出成型品の取り出しやキャリアを用いた搬送などの工程を、すべて、制御部810で制御された、射出成形装置1の動作として実行する。このため、射出成形装置1は、各工程間の隙間時間を極力削減することができて、射出成形のサイクルタイムを短縮することができる。
【0086】
また、射出成形装置1は、
図4に示す一連の工程を巡回的に繰り返すことにより、複数のインサート部品が挿入された射出成形品7であるコネクタを、帯状キャリア4に連なった形で繰り返し作製することができる。これにより射出成形装置1は、射出成形によるコネクタ製作の量産化を可能とする。
【0087】
なお、
図4に示すフローにおいて、ステップS2のパスラインリフタ320を下降する動作と、イジェクタロッド220を移動する動作とは、同時に行える動作である。一方の動作、例えば、イジェクタロッド220を移動する動作、を他方の動作、例えば、パスラインリフタ320を下降する動作と同時に開始することにより、ステップS2の工程にかかる時間をより短縮できる可能性がある。
【0088】
ステップS7のイジェクタロッド220の先端を移動テーブル52下面より下に下降させる動作は、ステップS6のイジェクタロッド220によるイジェクタ16の突き出し動作の直後に、それと連続して行ってよい。これにより、ステップ6およびステップ7に掛かるトータルの時間をより短縮できる可能性がある。また、射出成形装置1の小型化により、移動テーブル52を小さく、より軽くすることにより、ステップS1のテーブル52の移動にかかる時間を短縮できる可能性がある。
(第1の変形例)
【0089】
図5は、第1の変形例に係る射出成形装置の構成例を示す。射出成形装置の移動テーブルに係る部分以外の構成は、
図1~
図4を用いて既に説明した実施形態の構成例と同様である。
図5において、
図1や
図2と同一の部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0090】
図5は、第1の変形例に係る移動テーブル53、ベースプレート62および下金型12の(a)、(b)断面図、(c)平面図を示す。
図5(a)、(b)の断面図は、
図5(c)に示す平面図のAA断面を示す。
図5(a)の断面図は、下金型12が上金型22と対向する位置にある状態の断面図を示す。
図5(b)の断面図は、下金型12が上金型22と対向しない位置にある状態の断面図を示す。
【0091】
第1の変形例に係る移動テーブル53は、XY面内では矩形の形状を有し、Z方向には所定の厚さを有する矩形平板状のスライドテーブルの例である。スライドテーブルである移動テーブル53は、装置のフレーム74に固定されたベースプレート62の上面で支えられている。スライドテーブルである移動テーブル53は、ベースプレート62に固定された駆動部(図示せず)によって、ベースプレート62の上面と平行なXY面内で、装置の前後方向(±X方向)に直線移動する。
【0092】
移動テーブル53に搭載された下金型12は、移動テーブル53の移動によって、
図5(a)に示す上金型22と対向する位置と、
図5(b)に示す上金型22と対向しない位置との間を移動する。上金型22と対向する位置にある下金型12を下金型12a、上金型22と対向しない位置にある下金型12を下金型12bで示す。射出成形装置1は、下金型12aに対して、上金型22との型締めおよび射出成形を行う。射出成形装置1は、下金型12bに対して、個別インサート部品6の設置を行う。
【0093】
移動テーブル53は、搭載する下金型12の直下に貫通孔54を有している。上金型22と対向する位置の下金型12aの直下にある貫通孔54は、ベースプレート62に設けられている貫通孔64とXY平面内の位置が一致し、貫通孔54、64は、ベースプレート62の下面から、移動テーブル53の上面までを貫通する。イジェクタロッド220は、貫通孔54、64を通って、下金型12a内のイジェクタ16を作動させる。一方、下金型12bは、射出成型部2の装置前面側(+X方向)にあり、個別インサート部品6を設置するために用いることができる。
【0094】
以上により、第1の変形例に係る移動テーブル53を有する射出成形装置1は、下金型12bに設置した個別インサート部品6と、帯状キャリア4に配列されたフープ状インサート部品5を、下金型12aの位置の金型内で結合し、作製した射出成形品7を、帯状キャリア4とともに搬出する。
【0095】
第1の変形例に係る射出成形装置1は、スライドテーブルである移動テーブル53に下金型12を1個搭載する。下金型12aの位置で型締めおよび射出成形が行われているときに、個別インサート部品6を設置した下金型12bを用意しておくことができない。このため、射出成形品7の作製工程のサイクルタイムは、回転テーブルである移動テーブル52を用いる実施形態に記載した例より長くなる。しかし、第1の変形例に係る射出成形装置1は、下金型12を複数個(2個)使用する実施形態に記載した例よりも、金型のイニシャルコストを抑制できるというメリットを有する。
(第2の変形例)
【0096】
図6は、射出成形装置の第2の変形例を示す。射出成形装置のイジェクタロッド220およびその駆動部に係る部分以外の構成は、
図1~4を用いて既に説明した実施形態例の構成と同様である。
図6における、
図1や
図2と同一の部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0097】
図6に示す第2の変形例は、1組のイジェクタロッド駆動部がイジェクタロッド220を駆動する例を示す。
図6に示すイジェクタロッド駆動部は、サーボモータ212、動力伝達部214、およびボールねじ216の他に、ボールねじ216側の第1のスライド部2182、イジェクタロッド220側の第2のスライド部2183、その両者を結合する結合棒2181、上端がベースプレート62に固定された支持台221、および、第2のスライド部2183をZ方向にスライドさせるガイド222を有する。
【0098】
結合棒2181は、結合棒2181の一端および他端において、それぞれ第1のスライド部2182および第2のスライド部2183と、回転およびX方向への移動可能に結合している。また、支持台221の-Z方向の端(下端)は、結合棒2181を支点の回りに回転可能に支持する。
【0099】
第1のスライド部2182がボールねじ216の回転に応じて、Z方向の上下方向に移動すると、結合棒2181で連結された第2のスライド部2183は、支持台221の下端を支点として、ガイド222に沿って下上方向にスライド移動する。イジェクタロッド220は、長手方向をZ方向に向けて第2のスライド部2183に固定されており、第2のスライド部2183の下上移動に合わせてZ方向に移動し、イジェクタロッド220の先端の高さを変える。これによって、イジェクタロッド220の先端は、移動テーブル52の上面から突き出してイジェクタ16を作動させたり、移動テーブル52下面より下がって、移動テーブル52の移動を可能にしたりする。
【0100】
イジェクタロッド220の先端のZ方向移動量およびイジェクタ16に対する突き出し力は、第1のスライド部2182から支持台221の下端の支点までの距離および支持台221の支点から第2のスライド部2183までの距離を考慮して、梃の原理によって設定する。また、この第2の変形例においても、イジェクタロッド駆動部と型締め機構10の型締めスライダー36等との干渉を避けるために、イジェクタロッド駆動部は、イジェクタロッド220の直下に配置するのではなく、イジェクタロッド220の横方向(XY方向)に離して配置される。
【0101】
第2の変形例に係る射出成形装置1は、1組のイジェクタロッド駆動部によってイジェクタロッド220の先端の高さを変えて、金型からの射出成形品7の離脱や移動テーブル52による下金型12の移動を行う。これにより、第2の変形例に係る射出成形装置1は、個別インサート部品とフープ状インサート部品とを金型内で結合した射出成形品7を繰り返して作製することができる。
【0102】
以上、本発明の射出成形装置および射出成形方法について、実施形態例、およびその変形例によって説明した。本発明は説明した実施形態や変形例に限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲において各種の変形を行うことが可能である。このような変形を行った形態も本発明の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
1…射出成形装置、2…射出成型部、4…帯状キャリア、5…フープ状インサート部品、6…個別インサート部品、7…射出成形品、10…型締め機構、12,12a,12b…下金型、14…空間、16…イジェクタ、22…上金型、24…流路、32…上プラテン部、33…開口部、34…タイバー、36…型締めスライダー、38…ボールねじナット、42…基盤部、44…ガイド棒、46…ガイド孔、48…ボールねじ軸受、50…下プラテン部、52,53…移動テーブル、54…貫通孔、62…ベースプレート、64…貫通孔、72…高さ基準面、74…フレーム、110…型締め駆動部、112…サーボモータ、113,114…プーリー、115…ベルト、116…ボールねじ軸、210…イジェクタロッド駆動部、212…サーボモータ、214…動力伝達部、216…ボールねじ、218…スライド部、2181…結合棒、2182…第1のスライド部、2183…第2のスライド部、220…イジェクタロッド、221…支持台、222…ガイド、310…パスラインリフタ駆動部、312…サーボモータ、316…ボールねじ、318…スライド部、320…パスラインリフタ、322…支持棒、324…支持台、326…キャリアガイドレール、410…キャリア移送部、412…サーボモータ、414…プーリー、418…支持台、510…駆動部、512…モータ、514…固定具、516…回転軸、610…射出装置、612…射出シリンダー、614…射出駆動部、710… 射出移動部、712…サーボモータ、714…スライド部、716…ボールねじ、810…制御部、812…CPU、814…記憶装置、816…IF(インターフェース)、818…ドライバ