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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065187
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】吸音カバー
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20230502BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20230502BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
G10K11/16 150
B60R13/08
G10K11/168
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175847
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】富山 幸治
(72)【発明者】
【氏名】大西 一義
(72)【発明者】
【氏名】足立 雄平
(72)【発明者】
【氏名】田中 和人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康雄
(72)【発明者】
【氏名】田口 宏樹
【テーマコード(参考)】
3D023
5D061
【Fターム(参考)】
3D023BA03
3D023BB21
3D023BC01
3D023BD21
3D023BD22
3D023BE06
3D023BE19
3D023BE20
5D061AA06
5D061AA26
5D061AA40
5D061BB28
5D061CC15
(57)【要約】
【課題】低周波数側の騒音をより効果的に吸収できる吸音カバーを提供する。
【解決手段】騒音源となる対象部を覆う吸音カバー1は、第一発泡層11と、第一発泡層11の成形時に一体成形される第一スキン層12とを有し、騒音源側に配置される第一吸音層10と、第二発泡層21と、第二発泡層21の成形時に一体成形される第二スキン層22とを有し、第二スキン層22を第一スキン層12に対向させて第一吸音層10に積層される第二吸音層20と、第一スキン層12と第二スキン層22との対向面間に形成される空気層30と、を含み、第一吸音層10及び第二吸音層20は、積層方向に連通する連通孔を有しない非連通構造となっており、第一スキン層12の剛性は、第二スキン層22の剛性よりも小さくなっている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
騒音源となる対象部を覆う吸音カバーであって、
第一発泡層と、前記第一発泡層の成形時に一体成形される第一スキン層とを有し、前記騒音源側に配置される第一吸音層と、
第二発泡層と、前記第二発泡層の成形時に一体成形される第二スキン層とを有し、前記第二スキン層を前記第一スキン層に対向させて前記第一吸音層に積層される第二吸音層と、
前記第一スキン層と前記第二スキン層との対向面間に形成される空気層と、を含み、
前記第一吸音層及び前記第二吸音層は、積層方向に連通する連通孔を有しない非連通構造となっており、
前記第一スキン層の剛性は、前記第二スキン層の剛性よりも小さい、吸音カバー。
【請求項2】
前記第一吸音層は、前記積層方向の光透過率が4.68%未満であり、前記第二吸音層は、前記積層方向の光透過率が0.36%未満である、請求項1に記載の吸音カバー。
【請求項3】
前記第一吸音層の前記第一スキン層の硬度は、アスカーC硬度5~40度であり、
前記第二吸音層の前記第二スキン層の硬度は、アスカーC硬度40~95度である、請求項1又は2に記載の吸音カバー。
【請求項4】
前記第一吸音層の前記第一スキン層の硬度は、アスカーC硬度10~30度であり、
前記第二吸音層の前記第二スキン層の硬度は、アスカーC硬度60~90度である、請求項1又は2に記載の吸音カバー。
【請求項5】
前記第一吸音層の前記第一発泡層の密度は、0.06~0.2g/cmであり、
前記第二吸音層の前記第二発泡層の密度は、0.06~0.2g/cmである、請求項1乃至4の何れかに記載の吸音カバー。
【請求項6】
前記第一吸音層の前記第一発泡層の密度は、0.10~0.16g/cmであり、
前記第二吸音層の前記第二発泡層の密度は、0.10~0.16g/cmである、請求項1乃至4の何れかに記載の吸音カバー。
【請求項7】
前記第一吸音層の通気抵抗は、100000~1000000Ns/mであり、
前記第二吸音層の通気抵抗は、100000~1000000Ns/mである、請求項1乃至6の何れかに記載の吸音カバー。
【請求項8】
前記第一吸音層は、前記第一スキン層が形成される第一領域と、該第一領域を取り囲む領域であって、該第一領域に対して前記第二吸音層側に配置される第二領域と、該第二領域において該第二吸音層側に開口する凹部であって、該第二領域の周方向に所定の間隔をおいて配置される複数の第一係合凹部とを備え、
前記第二吸音層は、前記第一吸音層の複数の前記第一係合凹部に係合される複数の第一係合凸部を備え、
前記空気層は、前記第一吸音層の複数の前記第一係合凹部と前記第二吸音層の複数の前記第一係合凸部とがそれぞれ係合された状態で、該第一吸音層の前記第一スキン層と該第二吸音層の前記第二スキン層との対向面間に形成される空隙である、請求項1乃至7の何れかに記載の吸音カバー。
【請求項9】
前記第二吸音層は、前記第二スキン層が形成される第三領域と、該第三領域を取り囲む領域であって、該第三領域に対して前記第一吸音層側に配置される第四領域と、該第四領域において該第一吸音層側に突出する凸部であって、該第三領域を取り囲む周方向に所定の間隔をおいて配置される複数の第二係合凸部とを備え、
前記第一吸音層は、前記第二吸音層の複数の前記第二係合凸部に係合される複数の第二係合凹部を備え、
前記空気層は、前記第一吸音層の複数の前記第二係合凹部と前記第二吸音層の複数の前記第二係合凸部とが係合された状態で、該第一吸音層の前記第一スキン層と該第二吸音層の前記第二スキン層との対向面間に形成される空隙である、請求項1乃至7の何れかに記載の吸音カバー。
【請求項10】
前記第一吸音層は、前記第二吸音層側に開口する第一凹部を備え、
前記第一スキン層は、該第一凹部の底面に形成され、
前記第二吸音層は、前記第一吸音層側に開口する第二凹部を備え、
前記第二スキン層は、該第二凹部の底面に形成され、
前記第一吸音層は、前記第二吸音層の前記第二凹部の内形状に対応する外径形状とされ、
前記空気層は、前記第一吸音層が前記第二吸音層の前記第二凹部に収容された状態で、該第一吸音層の前記第一スキン層と該第二吸音層の前記第二スキン層との対向面間に形成される空隙である、請求項1乃至7の何れかに記載の吸音カバー。
【請求項11】
前記第二吸音層は、前記第一吸音層側に開口する第二凹部と、該第二凹部の底面において前記第一吸音層側に開口する第三凹部とを備え、前記第二スキン層は、該第三凹部の底面に形成され、
前記第一吸音層は、前記第二吸音層の前記第二凹部の内形状に対応する外径形状とされ、
前記空気層は、前記第一吸音層が前記第二吸音層の前記第二凹部に収容された状態で、該第一吸音層の前記第一スキン層と該第二吸音層の前記第二スキン層との対向面間に形成される空隙である、請求項1乃至7の何れかに記載の吸音カバー。
【請求項12】
前記第一吸音層の前記第一スキン層及び前記第二吸音層の前記第二スキン層の少なくとも一方は、対向配置される他方側に突出する複数の突起を有する、請求項1乃至11の何れかに記載の吸音カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両等の騒音源に配置される吸音カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両において、エンジン、モータ、インテークマニホールド、電動コンプレッサなどの騒音源から発生する騒音を低減する目的で、騒音源の周囲には吸音カバーが配置されている。
例えば特許文献1には、車体に取り付けられるカバー本体と、カバー本体に固着された吸音板とからなる車両外装用吸音構造体が開示されている。吸音板は、樹脂発泡体からなり、連続気泡構造を有する中心部分の発泡層と、発泡層の厚さ方向の両側に位置する上面側スキン層と下面側スキン層とからなる複層構造となっている。また、吸音板には、各層の全てを厚さ方向に貫通する複数の第一貫通孔と第二貫通孔とが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-166717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された吸音構造体は、吸音板に第一、第二貫通孔を設けることで、外部から伝わる音を、発泡層内の互いに連通する多数の気泡に導いて拡散させて発泡層に共振現象を生じさせ、音のエネルギーを運動エネルギー及び熱エネルギーに変換して消散させるようにしている。
しかし、低周波数側、特に800~1000Hzの帯域での吸音性能は十分でなく、改善の余地があった。
【0005】
本開示は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、低周波数側、特に800~1000Hzの帯域での騒音をより効果的に吸収できる吸音カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示は、騒音源となる対象部を覆う吸音カバーであって、
第一発泡層と、前記第一発泡層の成形時に一体成形される第一スキン層とを有し、前記騒音源側に配置される第一吸音層と、
第二発泡層と、前記第二発泡層の成形時に一体成形される第二スキン層とを有し、前記第二スキン層を前記第一スキン層に対向させて前記第一吸音層に積層される第二吸音層と、
前記第一スキン層と前記第二スキン層との対向面間に形成される空気層と、を含み、
前記第一吸音層及び前記第二吸音層は、積層方向に連通する連通孔を有しない非連通構造となっており、
前記第一スキン層の剛性は、前記第二スキン層の剛性よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の吸音カバーによれば、低周波数側、特に800~1000Hzの帯域での騒音をより効果的に吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態である吸音カバーの平面図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3図1のIII-III断面図である。
図4】第二実施形態である吸音カバーの部分断面図である。
図5】第三実施形態である吸音カバーの部分断面図である。
図6】第三実施形態である吸音カバーの部分拡大図である。
図7】第四実施形態である吸音カバーの部分断面図である。
図8】第五実施形態である吸音カバーの部分断面図である。
図9】実施例1-4における吸音率の周波数依存性能を対比した図である。
図10】比較例1-5における吸音率の周波数依存性能を対比した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<1.吸音カバーの適用事例>
本開示の吸音カバーは、自動車用のエンジン、モータ、インテークマニホールド、電動コンプレッサなどの騒音源を覆い、騒音減から発生する騒音を吸収する吸音カバーに適用される。特に、低周波数の騒音を発生する騒音源に好適に適用される。これらの吸音カバーは、一般的に、騒音源側に開口する有底の凹形状であり、騒音源側のボルト等の締結部材に固定される。
【0010】
<2.吸音カバーの構成>
本吸音カバーは、スキン層を備える2つの発泡体製の吸音層が積層された構成であり、各スキン層が向かい合った状態で積層される。一方の吸音層が騒音源側に配置され、他方の吸音層が非騒音源側に配置され、意匠面とされる。本吸音カバーは、向かい合って積層される各スキン層の間に、空気層を備える。
【0011】
(第一実施形態)
本開示の第一実施形態である吸音カバー1の構成について、図1-3を用いて説明する。図1、2に示すように、吸音カバー1は、図示しない騒音源側に開口する有底の凹形状である。なお、吸音カバー1は、対象となる騒音源の外形に応じて、任意の形状に成形される。
本実施形態では、騒音源側に開口する有底の凹形状であるカバー本体が第二吸音層20で形成され、凹部内の騒音源に面する領域に第一吸音層10が配置される。
【0012】
図3に示すように、騒音源に面する領域において、第一吸音層10と第二吸音層20とが積層される。第一吸音層10は、第一発泡層11と、第一発泡層11の成形時に一体成形される第一スキン層12とを有する発泡体製の吸音層である。なお、本実施形態では、積層方向の両面に第一スキン層12、12を有するが、第二吸音層20との対向面側にのみ第一スキン層12を有する構成も採用可能である。
【0013】
第二吸音層20は、第二発泡層21と、第二発泡層21の成形時に一体成形される第二スキン層22とを有する発泡体製の吸音層である。なお、本実施形態では、積層方向の両面に第二スキン層22、22を有するが、第一吸音層10との対向面側にのみ第二スキン層22を有する構成も採用可能である。
【0014】
図2、3に示すように、第一吸音層10の第一スキン層12と、第二吸音層20の第二スキン層22とが向かい合った状態で積層され、第一スキン層12と第二スキン層22との対向面間には、空気層30が設けられる。
【0015】
第一吸音層10は、図1、3に示すように、第一スキン層12が形成される表層の面方向において、第一スキン層12が形成される第一領域40と、第一領域40を取り囲む第二領域41を有する。本実施形態では、第一領域40は、平面視長方形状に設定される。なお、第一領域40は、騒音源となる吸音対象の形状に応じて、任意の形状に設定可能である。
【0016】
図2,3に示すように、第一吸音層10は、第一吸音層10の厚み方向の断面視において、第二領域41の上面が、第一領域40の上面よりも第二吸音層20側に配置される。換言すると、第一領域40は、第二領域41の内側に形成される凹部領域であり、第一領域40は第二領域41に対して下側に配置される。
【0017】
また、図1に示すように、第一吸音層10の第一領域40には、周方向に間隔をおいて、6つの第一係合凹部13が形成される。本実施形態では、第一係合凹部13は、第一領域40の外縁に連接して、第一吸音層10の厚み方向に凹む、平面視円形状の凹部である。
【0018】
なお、第一係合凹部13は、平面視矩形状の凹部など、その形状は問わない。また、第一吸音層10の厚み方向の断面視において、段差や傾斜のある凹部としてもよい。
また、第一係合凹部13は、第一領域40の周囲全体を取り囲むように、周方向に連続する環状の凹部としてもよく、第一領域40の形状に応じて、任意の形状に設定可能である。
【0019】
第二吸音層20は、図2、3に示すように、第一吸音層10の第一スキン層12と対向配置される第二スキン層22を取り囲む領域(第二領域41)において、所定の間隔をおいて、第一吸音層10側に突出する6つの第一係合凸部23を有する。
【0020】
第一係合凸部23は、対向配置される第一吸音層10の第一係合凹部13に相対する位置に形成され、本実施形態では、平面視円形状(円柱状)の凸部である。また、第一係合凸部23の外径は、第一吸音層10の第一係合凹部13の内径よりも僅かに大きな寸法とされる。
【0021】
なお、第一吸音層10に環状の第一係合凹部が設けられる場合は、第一係合凸部は、第一係合凹部に対応する環状の凸部とするなど、第一係合凹部の形状に応じて、任意の形状に設定可能である。
【0022】
空気層30は、第一吸音層10と第二吸音層20とが一体化されることで形成される。具体的には、第二吸音層20の第一係合凸部23に対して、第一吸音層10の第一係合凹部13が係合されると、第一吸音層10の第一領域40の厚みが第二領域41の厚みよりも小さいことから、図3に示すように、第一吸音層10の第一スキン層12と、第二吸音層20の第二スキン層22との対向面間に空隙が形成され、本空隙が空気層30とされる。
【0023】
本実施形態では、後述するように、第二吸音層20の硬度は、第一吸音層10の硬度よりも大きくされており、また、第二吸音層20の第一係合凸部23の外径は、第一吸音層10の第一係合凹部13の内径よりも僅かに大きな寸法とされていることから、係合時に、第一係合凸部23の変形が抑制され、第一吸音層10の第一係合凹部13に圧入されて係合されるため、第一吸音層10と第二吸音層20とが取扱いに支障のない状態で一体化される。
【0024】
なお、本実施形態では、第一吸音層10に第一係合凹部13を設け、第二吸音層20に第一係合凸部23を設けたが、第一吸音層10に係合凸部を設け、第二吸音層20に係合凹部を設ける構成としてもよい。また、取扱いに支障のない範囲で、第二吸音層20の硬度を第一吸音層10の硬度よりも小さくしてもよい。
【0025】
(第二実施形態)
第一実施形態では、第一吸音層10に、厚さ方向で高低差のある第一領域40と、第二領域41を設ける構成とした。第二実施形態は、第二吸音層20に、厚さ方向で高低差のある第三領域50と、第四領域51を設ける構成とする。
第二実施形態の吸音カバー1aの構成について、図4を用いて説明する。なお、第一実施形態と同様の構成要素については、第一実施形態と同一の符号を用いる。
【0026】
第二吸音層20は、面方向において、第一吸音層10の第一スキン層12に対向配置される第二スキン層22が形成される第三領域50と、第三領域50を取り囲む第四領域51を有する。本実施形態では、第三領域50は、平面視長方形状に設定される。なお、第一領域40は、騒音源となる吸音対象の形状に応じて、任意の形状に設定可能である。
【0027】
図4に示すように、第二吸音層20は、第二吸音層20の厚み方向の断面視において、第四領域51の下面は、第三領域50の下面よりも第一吸音層10側に配置される。換言すると、第三領域50は、第四領域51の内側に形成される凹部領域であり、第三領域50は第四領域51に対して上側に配置される。
【0028】
また、図1、4に示すように、第二吸音層20の第四領域51には、周方向に間隔をおいて、6つの第二係合凸部24が形成されている。本実施形態では、第二係合凸部24は、第三領域50の外縁に連接して、第二吸音層20の厚み方向に突出する平面視円形状(円柱形状)の凸部である。
【0029】
なお、第二係合凸部24は、平面視矩形状の凸部など、その形状は問わない。また、第二吸音層20の厚み方向の断面視において、段差や傾斜のある凸部としてもよい。
また、第二係合凸部24は、第三領域50の周囲全体を取り囲むように、周方向に連続する環状の凸部としてもよく、第三領域50の形状に応じて、任意の形状に設定可能である。
【0030】
第一吸音層10は、第二吸音層20の第二スキン層22に対向配置される第一スキン層12を取り囲む領域(第四領域51)において、所定の間隔をおいて、第二吸音層20側に開口する6つの第二係合凹部14を有する。
【0031】
第二係合凹部14は、対向配置される第二吸音層20の第二係合凸部24に相対する位置に形成され、本実施形態では、平面視円形状の凹部である。また、本実施形態では、第二係合凹部14の外径は、第二吸音層20の第二係合凸部24の内径よりも僅かに小さな寸法とされる。
【0032】
なお、第二吸音層20に環状の第二係合凸部が設けられる場合は、第二係合凹部は、第二係合凸部に対応する環状の凹部とするなど、第二係合凸部の形状に応じて、任意の形状に設定可能である。
【0033】
空気層30は、第一吸音層10と第二吸音層20とが一体化されることで形成される。具体的には、第二吸音層20の第二係合凸部24に対して、第一吸音層10の第二係合凹部14が係合されると、第二吸音層20の第三領域50の厚みが第四領域51の厚みより小さいことから、図4に示すように、第一吸音層10の第一スキン層12と第二吸音層20の第二スキン層22との対向面間に空隙が形成され、本空隙が空気層30とされる。
【0034】
本実施形態では、後述するように、第二吸音層20の硬度は、第一吸音層10の硬度よりも大きくされており、また、第二吸音層20の第二係合凸部24の外径は、第一吸音層10の第二係合凹部14の内径よりも僅かに大きな寸法とされていることから、係合時に、第二係合凸部24の変形が抑制され、第一吸音層10の第二係合凹部14に圧入されて係合されるため、取扱いに支障のない状態で一体化される。
【0035】
なお、第二実施形態では、第一吸音層10に第二係合凹部14を設け、第二吸音層20に第二係合凸部24を設けたが、第一吸音層10に係合凸部を設け、第二吸音層20に係合凹部を設ける構成としてもよい。また、取扱いに支障のない範囲で、第二吸音層20の硬度を第一吸音層10の硬度よりも小さくしてもよい。
【0036】
(第三実施形態)
第三実施形態では、第一実施形態に係る吸音カバー1において、さらに、第一吸音層10又は第二吸音層20に複数の突起15を設ける構成とする。第三実施形態の吸音カバー1bの構成について、図5、6を用いて説明する。なお、第一実施形態と同様の構成要素については、第一実施形態と同一の符号を用いる。
【0037】
第一吸音層10は、第二吸音層20側に突出する複数の突起15、15・・・を有する。複数の突起15、15・・・は、第一スキン層12と一体成形されている。本実施形態では、図6に示すように、先端に丸みをもつ円錐状の各突起15が連続して形成されている。
【0038】
なお、各突起15の形状は、第一発泡層11の発泡時に一体成形される性質上、不均一な形状も含め、対向配置される第二吸音層20の第二スキン層22側に突出していれば、その形状は問わない。また、隣接する突起15間に任意の間隔を設けてもよい。
【0039】
空気層30は、第一実施形態と同様、第一吸音層10と第二吸音層20とを一体化させることで形成される。この際、図6に示すように、第一吸音層10の第一スキン層12と第二吸音層20の第二スキン層22との対向面間に形成される空隙内に、第一スキン層12の複数の突起15、15・・・が配置される。
【0040】
本実施形態では、各突起15の突出高さは、第一吸音層10の第一スキン層12と第二吸音層20の第二スキン層22との対向面間の長さよりも僅かに小さくされ、各突起15の先端と第二吸音層20の第二スキン層22との間に僅かな空隙を持って配置される。本構成により、隣接する各突起15の間、及び、各突起15と第二スキン層22との間の空隙が空気層30とされる。
【0041】
第一吸音層10の第一スキン層12に複数の突起15、15・・・を設けることにより、第一スキン層12を透過する音が拡散され、また、音の吸音面積が増大され、吸音効果を高めることができる。
【0042】
なお、本実施形態では、第一吸音層10及び第一スキン層12に各突起15を設けたが、第二吸音層20及び第二スキン層22に突起を設けてもよく、第一スキン層12と第二スキン層22の双方に突起を設けてもよい。また、第一スキン層12の各突起15の先端が第二吸音層20の第二スキン層22に接するように配置してもよい。
【0043】
(第四実施形態)
第四実施形態では、第一実施形態に係る吸音カバー1において、第一吸音層10における第一係合凹部、及び、第二吸音層20における第一係合凸部を備えない構成とする。第四実施形態の吸音カバー1cの構成について、図7を用いて説明する。なお、第一実施形態と同様の構成要素については、第一実施形態と同一の符号を用いる。
【0044】
第一吸音層10は、平面視長方形状の板状部材である。第一吸音層10は、図7に示すように、第二領域41の内縁(第一領域40の外縁)から第二吸音層20側に開口する第一凹部16を備える。
【0045】
本実施形態では、第一凹部16は、平面視長方形状の凹部である。図7に示すように、第一吸音層10は、この第一凹部16により、厚み方向の断面視において、第二領域41の上面が、第一領域40の上面(第一凹部16の底面)よりも第二吸音層20側に配置される。そして、第一凹部16の底面に第一スキン層12が形成されている。
【0046】
第二吸音層20は、図7に示すように、第二吸音層20の厚み方向の断面視において、板状部分である第二領域41の外縁から第一吸音層10側に開口する第二凹部25を備える。本実施形態では、第二凹部25は、第一吸音層10の外径形状に対応する平面視長方形状の凹部である。また、第二凹部25の凹部深さは、第一吸音層10の厚みと略同一とされる。
【0047】
第二吸音層20は、第二凹部25の底面における第一領域40に対応する領域に、第二スキン層22が形成されている。なお、第二スキン層22は、第二凹部25の底面全体に形成してもよく、少なくとも第一吸音層10の第一スキン層12との対向面に設ければよい。
【0048】
空気層30は、第一吸音層10と第二吸音層20とを一体化させることで形成される。具体的には、第二吸音層20の第二凹部25に対して、第一吸音層10が収容されると、第一吸音層10の第一領域40の厚みが第二領域41の厚みよりも小さいことから、図7に示すように、第一吸音層10の第一スキン層12と、第二吸音層20の第二スキン層22との対向面間に空隙が形成され、本空隙が空気層30とされる。
【0049】
本実施形態では、第一吸音層10の外径形状が、第二吸音層20の第二凹部25の凹部内形状に対して僅かに大きな寸法とされ、また、第二吸音層20の硬度は、第一吸音層10の硬度よりも大きくされていることから、第一吸音層10が、第二吸音層20の第二凹部25に圧入されて収容されるため、第一吸音層10と第二吸音層20とが取扱いに支障のない状態で一体化される。
【0050】
なお、第一吸音層10の外側面と、第二吸音層20の第二凹部25の内側面とを接着材や両面テープなどを用いて固定したり、第一吸音層10の第一スキン層12と第二吸音層20の第二スキン層22との対向面を除く領域を溶着するなど、他の固定方法も採用可能である。また、第三実施形態のように、第一吸音層10の第一スキン層12や第二吸音層20の第二スキン層22に突起を設けてもよい。
【0051】
(第五実施形態)
第五実施形態では、第二実施形態に係る吸音カバー1aにおいて、第一吸音層10における第一係合凹部、及び、第二吸音層20における第一係合凸部を備えない構成とする。第五実施形態の吸音カバー1dの構成について、図8を用いて説明する。なお、第二実施形態と同様の構成要素については、第二実施形態と同一の符号を用いる。
【0052】
第一吸音層10は、平面視長方形状の板状部材である。第一吸音層10は、第二吸音層20との対向面が、第三領域50と第四領域51とに亘る平面とされる。また、本実施形態では、第一スキン層12は、第三領域50における第二吸音層20との対向面に形成されている。なお、第一スキン層12は、第四領域を含む、第二吸音層20との対向面の全面に形成してもよい。
【0053】
第二吸音層20は、図8に示すように、第二吸音層20の厚み方向の断面視において、板状部分である第四領域51の外縁から第一吸音層10側に開口する第二凹部25を備える。本実施形態では、第二凹部25は、第一吸音層10の外径形状に対応する平面視長方形状の凹部である。また、第二凹部25の凹部深さは、第一吸音層10の厚みと略同一とされる。
【0054】
第二凹部25の底面には、第四領域51の内縁(第三領域50の外縁)から第一吸音層10側に開口する第三凹部26が形成されている。本実施形態では、第三凹部26は、平面視長方形状の凹部である。
【0055】
第二吸音層20は、図8に示すように、第二吸音層20の厚み方向の断面視において、第四領域51の下面が、第三領域50の下面(第三凹部26の底面)よりも第一吸音層10側に配置される。そして、第三領域50に配置される第三凹部26の底面に第二スキン層22が形成されている。
【0056】
空気層30は、第一吸音層10と第二吸音層20とを一体化させることで形成される。具体的には、第二吸音層20の第二凹部25に対して、第一吸音層10が収容されると、第二吸音層20の第三領域50の厚みが第四領域51の厚みよりも小さいことから、図8に示すように、第一吸音層10の第一スキン層12と、第二吸音層20の第二スキン層22との対向面間に空隙が形成され、本空隙が空気層30とされる。
【0057】
本実施形態では、第一吸音層10の外径形状が、第二吸音層20の第二凹部25の凹部内形状に対して僅かに大きな寸法とされ、また、第二吸音層20の硬度は、第一吸音層10の硬度よりも大きくされていることから、第一吸音層10が、第二吸音層20の第二凹部25に圧入されて収容されるため、第一吸音層10と第二吸音層20とが取扱いに支障のない状態で一体化される。
【0058】
なお、第一吸音層10の外側面と第二吸音層20の第二凹部25の内側面とを接着材や両面テープなどを用いて収容したり、第一吸音層10の第一スキン層12と第二吸音層20の第二スキン層22との対向面を除く領域を溶着するなど、他の固定方法も採用可能である。また、第三実施形態のように、第一吸音層10の第一スキン層12や第二吸音層20の第二スキン層22に突起を設けてもよい。
【0059】
(その他の実施形態)
上記の第一乃至第三実施形態では、第一吸音層10又は第二吸音層20の一方に係合凸部を設ける一方、他方に係合凹部を設け、これらの係合により、第一吸音層10と第二吸音層20とを一体化したが、係合方法は、上記の実施形態に限定されない。例えば、第一吸音層10及び第二吸音層20双方に係合凹部を設け、第一吸音層10と第二吸音層20との間に所定の空隙を維持するスペーサなどを介して、各係合凹部に別体の係合部材を圧入するなどして係合させてもよい。その他、熱溶着や、接着材、両面テープ、クリップなどを用いる係合など、公知の係合方法を採用することもできる。
【0060】
<吸音層の構成>
(第一吸音層)
第一吸音層10は、ウレタンフォームで成形され、ウレタンフォームからなる第一発泡層11と、発泡成形時に表層に一体成形される第一スキン層12とを有する。なお、第一吸音層10は、ウレタンフォームに限らず、シリコーンフォーム、などの発泡樹脂を用いてもよい。
【0061】
本開示の第一実施形態である吸音カバー1における第一吸音層10の第一発泡層11は、厚みが5mm、密度が0.14g/cm、通気抵抗が378000Ns/m、アスカーC硬度が22度である。
【0062】
通気抵抗は、第一吸音層10のうち第一スキン層12を除く、第一発泡層11部分から直径50mm、厚さ4±2mmのサンプルを切り出し、日本音響エンジニアリング製の通気抵抗測定装置(型番:MFR-02)を用いて、ISO 9053に規定される直流法(DC法)に準拠した計測を行い、計測値をサンプル厚みで除算した値である。
【0063】
アスカーC硬度は、第一吸音層10(両面の第一スキン層12を含む)の厚み5mmのサンプルにて、高分子計器株式会社製のゴム硬度計(型番:アスカーゴム硬度計C型)を用いて、JIS K 7312に準拠した計測を行った数値である。
【0064】
密度は、第一吸音層10(両面の第一スキン層12を含む)から、直径50mm、厚さ5mmのサンプルを切り出し、株式会社島津製作所製の秤(型番:TX3202N)で質量を計測し、サンプル体積で除算した値である。
【0065】
第一吸音層10の第一発泡層11は、騒音源の特性、形状、配置スペースに応じて、厚さを3~30mm、密度を0.06~0.2g/cm、通気抵抗を1000~1000000Ns/m、アスカーC硬度を5~40度に設定すればよい。
好適には、低周波数側の騒音をより広い範囲で効果的に吸収できる観点と、防音カバーの省スペース化、及び、軽量化を両立させる観点から、厚みを4~10mm、密度を0.10~0.16g/cm、通気抵抗を100000~1000000Ns/mの範囲に設定される。また、表面に起伏のある騒音源に密着させて音漏れを防止し、かつ振動を伴う騒音源からの振動伝達による吸音カバー表面からの二次放射音を低減する観点から、アスカーC硬度を10~30度とすることが好ましい。
【0066】
本開示の第一実施形態である吸音カバー1における第一吸音層10の第一スキン層12は、厚みが10μm、通気抵抗が505000Ns/m、アスカーC硬度が22度である。
【0067】
通気抵抗は、第一吸音層10(両面の第一スキン層12を含む)のうち、一方の第一スキン層12を含む表層側から直径50mm、厚さ2±1mmのサンプルを切り出し、一方の第一スキン層12側から、日本音響エンジニアリング製の通気抵抗測定装置(型番:MFR-02)を用いて、ISO 9053に規定される直流法(DC法)に準拠した計測を行い、計測値をサンプル厚みで除算した値である。
【0068】
アスカーC硬度は、第一吸音層10(両面の第一スキン層12を含む)の厚み5mmのサンプルにて、一方の第一スキン層12側から、高分子計器株式会社製のゴム硬度計(型番:アスカーゴム硬度計C型)を用いて、JIS K 7312に準拠した計測を行った値である。
【0069】
第一吸音層10の第一スキン層12は、騒音源の周波数特性に応じて、厚さを3~100μm、通気抵抗を1000~10000000Ns/m、アスカーC硬度を5~40度の範囲に設定すればよい。
好適には、1000Hz以下の低周波数帯の騒音を効果的に吸収させる観点から、アスカーC硬度を10~30度、通気抵抗を100000~1000000Ns/mの範囲で設定される。なお、剛性の指標として、アスカーC硬度を用いることができる。
【0070】
(第二吸音層)
第二吸音層20は、ウレタンフォームで成形され、ウレタンフォームからなる第二発泡層21と、発泡成形時に表層に一体成形される第二スキン層22とを有する。なお、第二発泡層21は、ウレタンフォームに限らず、シリコーンフォーム、などの発泡樹脂を用いてもよい。
【0071】
本開示の第一実施形態である吸音カバー1における第二吸音層20の第二発泡層21は、厚みが5mm、密度が0.12g/cm、通気抵抗が153000Ns/m、アスカーC硬度が76度である。
【0072】
通気抵抗は、第二吸音層20のうち第二スキン層22を除く、第二発泡層21部分から直径50mm、厚さ4±2mmのサンプルを切り出し、日本音響エンジニアリング製の通気抵抗測定装置(型番:MFR-02)を用いて、ISO 9053に規定される直流法(DC法)に準拠した計測を行い、計測値をサンプル厚みで除算した値である。
【0073】
アスカーC硬度は、第二吸音層20(両面の第二スキン層22を含む)の厚み5mmのサンプルにて、高分子計器株式会社製のゴム硬度計(型番:アスカーゴム硬度計C型)を用いて、JIS K 7312に準拠した計測を行った数値である。
【0074】
密度は、第二吸音層20(両面の第二スキン層22を含む)から、直径50mm、厚さ5mmのサンプルを切り出し、株式会社島津製作所製の秤(型番:TX3202N)で質量を計測し、サンプル体積で除算した値である。
【0075】
第二吸音層20の第二発泡層21は、騒音源の特性、形状、配置スペースに応じて、厚さを3~30mm、密度を0.06~0.2g/cm、通気抵抗を1000~1000000Ns/m、アスカーC硬度を40~95度に設定すればよい。
好適には、低周波数側の騒音をより広い範囲で効果的に吸収できる観点と、防音カバーの省スペース化、及び、軽量化を両立させる観点から、厚みを4~10mm、密度を0.10~0.16g/cm、通気抵抗を100000~1000000Ns/mの範囲に設定される。また、相手物へ防音カバーを固定しやすくする観点から、アスカーC硬度を60~90度とすることが好ましい。
【0076】
本開示の第一実施形態である吸音カバー1における第二吸音層20の第二スキン層22は、厚みが10μm、通気抵抗が584000Ns/mである。
【0077】
通気抵抗は、第二吸音層20(両面の第二スキン層22を含む)のうち、一方の第二スキン層22を含む表層側から直径50mm、厚さ2±1mmのサンプルを切り出し、一方の第二スキン層22側から、日本音響エンジニアリング製の通気抵抗測定装置(型番:MFR-02)を用いて、ISO 9053に規定される直流法(DC法)に準拠した計測を行い、計測値をサンプル厚みで除算した値である。
【0078】
アスカーC硬度は、第二吸音層20(両面の第二スキン層22を含む)の厚み5mmのサンプルにて、一方の第二スキン層22側から、高分子計器株式会社製のゴム硬度計(型番:アスカーゴム硬度計C型)を用いて、JIS K 7312に準拠した計測を行った値である。
【0079】
第二吸音層20の第二スキン層22は、騒音源の周波数特性に応じて、厚さを3~100μm、通気抵抗を1000~1000000Ns/m、アスカーC硬度を40~95度の範囲に設定すればよい。
好適には、1000Hz以下の低周波数帯の騒音を効果的に吸収させる観点から、アスカーC硬度を60~90度、通気抵抗を100000~1000000Ns/mの範囲で設定される。なお、剛性の指標として、アスカーC硬度を用いることができる。
【0080】
後述する膜振動型の吸音構造による低周波数帯の吸収周波数の範囲を拡大させる観点から、第一吸音層10の第一スキン層12と、第二吸音層20の第二スキン層22との特性を異ならせることが有効であり、特に、上述の計測方法に準ずる、第一吸音層10の第一スキン層12の硬度を5~40度、第二吸音層20の第二スキン層22の硬度を40~95度とすることが好ましい。また、上述の計測方法に準ずる、第一吸音層10の第一スキン層12の硬度を10~30度、第二吸音層20の第二スキン層22の硬度を60~90度とすることがより好ましい。なお、要求される使用条件に応じて、第一吸音層10を、上述の第二吸音層20の特性を有する吸音層とし、第二吸音層20を、上述の第一吸音層10の特性を有する吸音層とすることもできる。
【0081】
<吸音カバーの製造方法>
本開示の吸音カバー1を製造するには、発泡成形を二回行えばよい。初めに、第一発泡層11と第一スキン層12とからなる第一発泡体(第一吸音層10)を形成する。成形型の上型の内面と、下型の内面に離型剤を塗布する。次に、上型と下型とを型締めし、上型の内面と下型の内面とにより形成される第一キャビティに発泡ウレタン樹脂原料を注入して、発泡成形する。この際、第一スキン層12が形成される上型の好適な温度は40~60℃である。また、ワックス系の離型剤が好適に用いられるが、その種別は問わない。
【0082】
次に、第二発泡層21と第二スキン層22とからなる第二発泡体(第二吸音層20)を形成する。同様に、成形型の上型の内面と、下型の内面に離型剤を塗布する。次に、上型と下型とを型締めし、上型の内面と下型の内面とにより形成される第一キャビティに発泡ウレタン樹脂原料を注入して、発泡成形する。この際、第二スキン層22が形成される上型の好適な温度は40~60℃である。また、ワックス系の離型剤が好適に用いられるが、その種別は問わない。
【0083】
なお、第一吸音層10の第一スキン層12又は第二吸音層20の第二スキン層22の表層に複数の突起15を形成する場合は、上型として、内面に複数の凹部が形成された型を用いる。
【0084】
<吸音カバーの作用効果>
本実施形態の吸音カバー1の作用効果について説明する。本開示の吸音カバー1は、第一吸音層10と第二吸音層20とが、第一吸音層10の第一スキン層12と第二吸音層20の第二スキン層22とが向かい合わせで積層され、第一吸音層10の第一スキン層12と第二吸音層20の第二スキン層22との対向面間に空気層30を備える。ここでは、第一吸音層10と第二吸音層20は、それぞれ、非対向面には、第一スキン層12と第二スキン層22とを備えない構成として説明する。
【0085】
第一吸音層10が騒音源側に配置される場合、騒音源から発生する音は、まず、第一発泡層11の内部で拡散し、熱エネルギーに変換される。次に、第一発泡層11を透過する音は、第一スキン層12を介して放出される。この際、第一スキン層12と空気層30とにより第一の膜振動型の吸音構造が構成される。第一スキン層12により第一発泡層11の複数の微細なセルが閉口されており、第一スキン層12により構成される個々のセル膜の剛性が小さいことから、固有振動数が小さく設定され、低周波数の音が効果的に吸収される。
【0086】
さらに、空気層30を透過する音は、第二吸音層20の第二スキン層22を介して放出される。第二スキン層22により第二発泡層21の複数の微細なセルが閉口されており、第二スキン層22により構成されるセル膜とセル内の空気とにより第二の膜振動型の吸音構造が構成される。同様に、個々のセル膜の剛性が小さいことから、固有振動が小さく設定され、低周波数の音が効果的に吸収される。更に、第二スキン層22を透過する音は、第二発泡層21の内部で拡散し、熱エネルギーに変換される。
【0087】
ここで、第一スキン層12と第二スキン層22との剛性が異なるため、第一の膜振動型の吸音構造の固有振動数と、第二の膜振動型の吸音構造の固有振動数とが異なる範囲となり、より広帯域の低周波数の音を吸収することができる。
【0088】
また、騒音源側に配置される第一吸音層10の第一スキン層12の剛性を、非騒音源側にある配置される第二吸音層20の第二スキン層22の剛性より小さくすることで、第一スキン層12から第二スキン層22側に向かって周波数の小さな音から吸収させることができる。
【0089】
特に、上述の計測方法に準ずる、第一吸音層10の第一スキン層12のアスカーC硬度を5~40度、第二吸音層20の第二スキン層22のアスカーC硬度を40~95度の範囲内で、それぞれ異なる値に設定することで、630~1000Hzの低周波数帯の騒音を効果的に吸収することができる。
【0090】
なお、第一吸音層10と第二吸音層20が、第一吸音層10と第二吸音層20の非対向面に、それぞれ、第一スキン層12と第二スキン層22を備える場合は、第一吸音層10の非対向面側の第一スキン層12による膜振動型の吸音構造、及び第二吸音層20の非対向面側の第二スキン層22による膜振動型の吸音構造により、上記と同様、低周波数の音の吸収効果が発揮される。
【0091】
<吸音カバーの評価結果>
実施例を挙げて本開示の効果を説明する。
【0092】
(実施例1)
軟質ポリウレタン用ポリエーテルポリオール(官能基数3、分子量6000)と、架橋剤と、発泡剤の水と、触媒と、整泡剤と、を混合して、ポリオール原料60重量部を調製後、ポリイソシアネート原料40重量部と混合して、発泡ウレタン樹脂原料とした。次に、成形型の上型と下型の内面にワックス系の離型剤を塗布した後、上型と下型とを型締めし、上型と下型を50℃に保持した状態で、発泡ウレタン樹脂原料を成形型のキャビティ内に注入して発泡成形を行い、第一発泡層11a(以下、実施例毎に区別するためにa~dの符号を付す)と第一スキン層12aとを有する第一吸音層10aを成形した。発泡成形終了後、脱型して、縦500mm、横600mm、厚さ5mmの長方形板状のサンプルを得た。脱型後、ニードル加工を行い、通気抵抗の調整を行った。なお、上型には所定の凸部を設け、第一吸音層10aに所定の係合凹部を形成した。
【0093】
本サンプルの第一発泡層11aは、密度が0.14g/cm、アスカーC硬度が22度、通気抵抗が378000Ns/mであった。また、第一スキン層12aを含む表層側の通気抵抗は505000Ns/mであった。
【0094】
次に、成形型の上型と下型の内面にワックス系の離型剤を塗布した後、上型と下型とを型締めし、上型、下型を50℃に保持した状態で、発泡ウレタン樹脂原料を成形型のキャビティ内に注入して発泡成形を行い、第二発泡層21aと第二スキン層22aとを有する第二吸音層20aを成形した。第二発泡層は、軟質ポリウレタン用ポリエーテルポリオール(官能基数3、分子量6000)と、架橋剤と、発泡剤の水と、触媒と、整泡剤と、を混合して、ポリオール原料を調製後、ポリオール原料51重量部と、ポリイソシアネート原料49重量部と混合して、発泡ウレタン樹脂原料とした。また、第一吸音層よりも硬度を高めるため、第一吸音層に用いたポリエーテルポリオール(官能基数3、分子量6000)と、より分子量の小さい低分子量ポリエーテルポリオール(官能基数2、分子量400)とを70:30重量部の割合で混合したポリオール原料を用いた。成形終了後、脱型して、縦500mm、横600mm、厚さ5mmの長方形板状のサンプルを得た。脱型後、ニードル加工を行い、通気抵抗の調整を行った。なお、下型には所定の凹部を設け、第二吸音層20aに所定の係合凸部を形成した。
【0095】
なお、ポリエーテルポリオールと低分子量ポリエーテルポリオールの混合割合の調整により、第二吸音層の硬度を調整することができる。また、低分子量ポリエーテルポリオールを混合することで、ウレタンフォーム成形性が悪くなる場合には、架橋剤の添加量により調整することができる。
【0096】
本サンプルの第二発泡層21aは、密度が0.12g/cm、アスカーC硬度が76度、通気抵抗が153000Ns/mであった。また、第二スキン層22aを含む表層側の通気抵抗は584000Ns/mであった。
【0097】
次に、第一吸音層10aの係合凹部と、第二吸音層20aの係合凸部とを係合し、第一実施形態と同様、第二吸音層20aの下方に第一吸音層10aを配置し、第一スキン層12aと第二スキン層22aの対向面間に0.1mmの隙間を形成して空気層30とした。
【0098】
(実施例2)
発泡ウレタン樹脂原料の投入量以外は、実施例1と同じ方法で、第一吸音層10bと第二吸音層20bを成形し、第二吸音層20bの下方に第一吸音層10bを配置し、第一スキン層12bと第二スキン層22bの対向面間に0.1mmの隙間を形成して空気層30とした。具体的には、第一吸音層10bについては、実施例1の第一吸音層10aの発泡ウレタン樹脂原料と同じ原料を用い、実施例1の発泡ウレタン樹脂原料の投入量を基準投入量とした場合、基準投入量の1.14倍の発泡ウレタン樹脂原料を投入して成形した。また、第二吸音層20bについては、実施例1の第二吸音層20aの発泡ウレタン樹脂原料の投入量を基準投入量とした場合、基準投入量の0.83倍の発泡ウレタン樹脂原料を投入して成形した。
【0099】
本サンプルの第一発泡層11bは、密度が0.16g/cm、アスカーC硬度が38度、通気抵抗が639794Ns/mであった。また、第一スキン層12bを含む表層側の通気抵抗は130850Ns/mであった。また、第二発泡層21bは、密度が0.1g/cm、アスカーC硬度が59度、通気抵抗が103000Ns/mであった。また、第二スキン層22bを含む表層側の通気抵抗は379148Ns/mであった。
【0100】
(実施例3)
発泡ウレタン樹脂原料の投入量や配合比以外は、実施例1と同じ方法で、第一吸音層10cと第二吸音層20cを成形し、第二吸音層20cの下方に第一吸音層10cを配置し、第一スキン層12cと第二スキン層22cの対向面間に0.1mmの隙間を形成して空気層30とした。具体的には、第一吸音層10cについては、実施例1の第一吸音層10aの発泡ウレタン樹脂原料と同じ原料を用い、実施例1の第一吸音層10aの発泡ウレタン樹脂原料の投入量を基準投入量とした場合、基準投入量の0.85倍の発泡ウレタン樹脂原料を投入して成形した。また、第二吸音層20cについては、ポリオール原料を54重量部、ポリイソシアネート原料を46重量部として成形した。
【0101】
本サンプルの第一発泡層11cは、密度が0.12g/cm、アスカーC硬度が23度、通気抵抗が201098Ns/mであった。また、第一スキン層12cを含む表層側の通気抵抗は438441Ns/mであった。また、第二発泡層21cは、密度が0.12g/cm、アスカーC硬度が63度、通気抵抗が148029Ns/mであった。また、第二スキン層22cを含む表層側の通気抵抗は713111Ns/mであった。
【0102】
(実施例4)
ポリオール原料とポリイソシアネート原料の配合比や後加工方法以外は、実施例1と同じ方法で、第一吸音層10dと第二吸音層20dを成形し、第二吸音層20dの下方に第一吸音層10dを配置し、第一スキン層12dと第二スキン層22dの対向面間に0.1mmの隙間を形成して空気層30とした。具体的には、第一吸音層10dについては、ポリオール原料を63重量部、ポリイソシアネート原料を37重量部として成形した。また、第二吸音層20dについては、実施例1の第二吸音層20aの発泡ウレタン樹脂原料と同じ原料を用いて成形後、ニードル加工を行い、通気量を調整した。
【0103】
本サンプルの第一発泡層11dは、密度が0.14g/cm、アスカーC硬度が21度、通気抵抗が281978Ns/mであった。また、第一スキン層12dを含む表層側の通気抵抗は456171Ns/mであった。また、第二発泡層21dは、密度が0.12g/cm、アスカーC硬度が67度、通気抵抗が715612Ns/mであった。また、第二スキン層22dを含む表層側の通気抵抗は504229Ns/mであった。
【0104】
(比較例1)
実施例1と同じ方法で、第一吸音層10aと第二吸音層20aを成形し、第一スキン層12aと第二スキン層22aの全面に接着剤を塗布して接着した。すなわち、空気層を有しないものとした。
【0105】
(評価方法)
実施例1-4及び比較例1のサンプルについて、JIS A 1409の残響室法吸音率の測定方法に準拠した方法で、吸音率を計測した。また、音源と反対側の面は剛床に接地して計測した。
なお、実施例1-4は、第一吸音層10を音源側に配置した。また、比較例1は、第一吸音層10を音源側に配置した。
【0106】
図9に示すように、実施例1-4は、比較例1と比較して、800~1000Hzの低周波帯域の吸音率が高くなることが確認できた。上述の2つの膜振動型の吸音構造により、より広い範囲の低周波数の騒音が吸収できたと推測される。
一方、比較例1では、第一スキン層12aと第二スキン層22aが一体化された、相対的に剛性の高い1つのスキン層が形成されたことにより、膜振動型の吸音構造による低周波数側の周波数帯域が狭くなったと推測される。また、接着剤によりセル膜が目詰まりし、第一スキン層12a、第二スキン層22aの通気抵抗が上昇して通気性が下がることで、騒音が音源から離れた側(剛床側)の第二吸音層20aの第二発泡層21aに到達しづらくなり、多孔質型吸音により吸音される高周波成分の割合が少なくなるため、高周波の吸音率も低下していると考えられる。
なお、実施例2は、実施例1と比較して、低周波帯域の吸音率が低い結果となった。この理由は、実施例2は、他の実施例と比較して、第一吸音層の第一発泡層の密度、硬度、通気抵抗が高いため、第一スキン層と第二スキン層の界面に到達する音のエネルギーが低下し、膜振動型の吸音構造による吸音効果が十分に発揮されなかったと考えられる。
【0107】
さらに、実施例1-4では、第一吸音層10の第一発泡層11と、第二吸音層20の第二発泡層21とにより、1000Hz超の中周波数、高周波数の騒音吸収性能が発揮され、比較例1に比較して、630~5000Hzまでの広い周波数帯域において吸音率が高くなることが確認できた。
【0108】
(貫通孔による吸音性能の検証)
実施例1のサンプルにおいて、音源側の第一吸音層10と非音源側の第二吸音層20とにそれぞれ貫通孔を形成した。貫通孔は、レーザー加工機を用いて、サンプルの端部から5mmの位置から、孔径を1mm又は2mm、孔ピッチを孔の端部から3mm又は10mmに設定した。貫通孔は、表1に示すように、音源側と非音源側とで孔径と孔ピッチとの一方又は双方を互いに異ならせることで、第一吸音層10の方が第二吸音層20よりも光透過率及び開口率が大きくなるように設定して比較例2-5を得た。光透過率は、JIS L 1055の遮光性試験に準拠した方法で測定した。
この設定(第一スキン層12の光透過率及び開口率が、第二スキン層22の光透過率及び開口率よりも大きい設定)により、比較例2-5では、第一吸音層10の第一スキン層12の剛性が、第二吸音層20の第二スキン層22の剛性よりも小さくなっている。
【0109】
【表1】
【0110】
比較例2-5について、JIS A 1409の残響室法吸音率の測定方法に準拠した方法で、吸音率を計測した。また、音源と反対側の面は剛床に接地して計測した。各比較例の周波数ごとの吸音率の変化を図10に示す。
図10に示す結果から、貫通孔を形成して積層方向に連通構造となる比較例2-5は、貫通孔を形成せず積層方向に非連通構造となる比較例1に対し、800~1000Hzの低周波帯域の吸音率が何れも低くなることが確認できた。
但し、第一吸音層では、積層方向の光透過率が、比較例2-5の最小値である4.68%未満となる非連通構造、第二吸音層では、積層方向の光透過率が、比較例2-5の最小値である0.36%未満となる非連通構造であれば、800~1000Hzの低周波帯域の吸音率が、比較例2-5よりも高くなると考えられる。
【0111】
このように、上記形態の吸音カバー1は、第一発泡層11と、第一発泡層11の成形時に一体成形される第一スキン層12とを有し、騒音源側に配置される第一吸音層10を有する。また、吸音カバー1は、第二発泡層21と、第二発泡層21の成形時に一体成形される第二スキン層22とを有し、第二スキン層22を第一スキン層12に対向させて第一吸音層10に積層される第二吸音層20を有する。さらに、吸音カバー1は、第一スキン層12と第二スキン層22との対向面間に形成される空気層30を含む。そして、第一吸音層10及び第二吸音層20は、積層方向に連通する連通孔を有しない非連通構造となっており、第一スキン層12の剛性は、第二スキン層22の剛性よりも小さくなっている。
この構成によれば、低周波数側、特に800~1000Hzの帯域での騒音をより効果的に吸収できる。
【符号の説明】
【0112】
1、1a、1b、1c、1d:吸音カバー、10:第一吸音層、11:第一発泡層、12:第一スキン層、13:第一係合凹部、14:第二係合凹部、15:突起、16:第一凹部、20:第二吸音層、21:第二発泡層、22:第二スキン層、23:第一係合凸部、24:第二係合凸部、25:第二凹部、26:第三凹部、30:空気層、40:第一領域、41:第二領域、50:第三領域、51:第四領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10