(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065819
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】化粧シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20230508BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20230508BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20230508BHJP
E04F 15/16 20060101ALI20230508BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
B32B27/00 E
E04F13/07 B
E04F13/08 A
E04F15/16 A
B32B27/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176179
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】山崎 祥美
【テーマコード(参考)】
2E110
2E220
4F100
【Fターム(参考)】
2E110AA02
2E110AA26
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2E110GB52Z
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2E220GB37Z
4F100AH03C
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4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】層間剥離の発生を低減することが可能な化粧シートを提供する。
【解決手段】化粧シート10は、基材11、絵柄層12、接着層13、透明樹脂層14及び表面保護層15をこの順に備え、接着層13は、アクリル樹脂と架橋成分としてのイソシアネート硬化剤で構成されており、前記アクリル樹脂は、a)炭素数が4以下でホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下の単官能アクリル酸エステルモノマーを少なくとも1種と、(b)炭素数が8以上の単官能アクリル酸エステルモノマーを少なくとも1種と、(c)水酸基を有する単官能アクリル酸エステルモノマーを少なくとも1種用い、モノマー全質量のうち(a)が半量以上を占める配合で重合された、ガラス転移温度が-45~-10℃の範囲内であり、水酸基価が40mgKOH/g以上200mgKOH/g以下の範囲内の特性を有する樹脂である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン基材と、絵柄層と、アンカーコート層と、ポリプロピレンを主成分とする透明樹脂層と、トップコート層とをこの順に備えた化粧シートであって、
前記アンカーコート層は、アクリル樹脂と架橋成分としてのイソシアネート硬化剤で構成されており、
前記アクリル樹脂は、(a)炭素数が4以下でホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下の単官能アクリル酸エステルモノマーを少なくとも1種と、(b)炭素数が8以上の単官能アクリル酸エステルモノマーを少なくとも1種と、(c)水酸基を有する単官能アクリル酸エステルモノマーを少なくとも1種用い、モノマー全質量のうち(a)が半量以上を占める配合で重合された、ガラス転移温度が-45~-10℃の範囲内であり、水酸基価が40mgKOH/g以上200mgKOH/g以下の範囲内の特性を有する樹脂であることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記トップコート層に耐候剤として、トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤、及びNOR型骨格を有する光安定剤の少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記ポリオレフィン基材の膜厚は、50μm以上100μm以下の範囲内であり、
前記絵柄層の膜厚は、1μm以上5μm以下の範囲内であり、
前記アンカーコート層の膜厚は、1μm以上3μm以下の範囲内であり、
前記透明樹脂層の膜厚は、70μm以上100μm以下の範囲内であり、
前記トップコート層の膜厚は、3μm以上15μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記トップコート層は、ウレタンポリマーを主成分とする樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記ポリオレフィン基材の前記絵柄層側の面とは反対側の面である裏面に形成されたプライマー層をさらに含み、
前記絵柄層は、バインダー樹脂を含んだ着色インキにより形成されており、
前記プライマー層は、前記絵柄層を形成するための前記着色インキに含まれる前記バインダー樹脂と同一成分で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
壁、天井、床、玄関ドア等の建築物の内装材または外装用部材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具または造作部材には、一般的に、鋼板等の金属部材、樹脂部材、木質部材を被着材とし、これら被着材に化粧シートを貼りあわせたものが用いられる。
化粧シートは積層体であるものが多く、特に建物外装や浴室等に用いられる化粧シートでは、化粧シートの端部から化粧シートの内部に向かって水分が浸入し層間剥離を起こすといった問題が生じることがある。
【0003】
一般的に積層体である化粧シートを製造する時、接着層を設けることがある。この接着層は、一般的にアクリル樹脂やポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂が用いられることが多い(特許文献1)。その場合、接着層と、その接着層上に形成された透明樹脂層との間で層間剥離が発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、層間剥離の発生(特に接着層と透明樹脂層との間における層間剥離の発生)を低減することが可能な化粧シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、接着層(アンカー層、あるいはアンカーコート層とも呼ばれる)に特定要素を含む樹脂を用いた化粧シートであれば、上述の目標を達成することを見出し本発明に至った。
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る化粧シートは、ポリオレフィン基材と、絵柄層と、アンカーコート層と、ポリプロピレンを主成分とする透明樹脂層と、トップコート層とをこの順に備えた化粧シートであって、前記アンカーコート層は、アクリル樹脂と架橋成分としてのイソシアネート硬化剤で構成されており、
前記アクリル樹脂は、(a)炭素数が4以下でホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下の単官能アクリル酸エステルモノマーを少なくとも1種と、(b)炭素数が8以上の単官能アクリル酸エステルモノマーを少なくとも1種と、(c)水酸基を有する単官能アクリル酸エステルモノマーを少なくとも1種用い、モノマー全質量のうち(a)が半量以上を占める配合で重合された、ガラス転移温度が-45~-10℃の範囲内であり、水酸基価が40mgKOH/g以上200mgKOH/g以下の範囲内の特性を有する樹脂であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、層間剥離の発生(特に接着層と透明樹脂層との間における層間剥離の発生)を低減することが可能な化粧シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る化粧シートの断面構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔化粧シートの構成〕
本発明の一実施形態に係る化粧シートの構成について図面を参照しつつ説明する。
ここで、
図1に示す構成は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率などは現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造などが下記のものに限定されるものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
図1は、本実施形態に係る化粧シート10の構成を示す断面図である。化粧シート10は、基材(ポリオレフィン基材)11と、基材11上に形成された絵柄層12と、絵柄層12上に形成された接着層(アンカーコート層)13と、接着層13上に形成された透明樹脂層14と、透明樹脂層14上に形成された表面保護層(トップコート層)15とを備えている。以下、本実施形態として、絵柄層12を印刷形成した基材11に接着層13を介して透明樹脂層14を接合し、さらに表面保護層15を設けた化粧シート10について
図1を用いて説明する。
【0011】
(接着層)
接着層13は、絵柄層12と透明樹脂層14とを接合するために設けた層である。
接着層13は、アクリル樹脂で構成されており、例えば、グラビアコート、マイクログラビアコート、コンマコート、ナイフコート、ダイコートなど通常の塗布方法を用いて形成される。
接着層13を構成するアクリル樹脂は、(a)炭素数が4以下でホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下の単官能アクリル酸エステルモノマーを少なくとも1種と、(b)炭素数が8以上の単官能アクリル酸エステルモノマーを少なくとも1種と、(c)水酸基を有する単官能アクリル酸エステルモノマーを少なくとも1種用い、モノマー全質量のうち(a)が半量以上を占める配合で重合された、ガラス転移温度が-45~-10℃の範囲内であり、水酸基価が40mgKOH/g以上200mgKOH/g以下の範囲内の特性を有する樹脂である。
これにイソシアネートなどの硬化剤を適量配合することで接着層13を硬化させることができる。
【0012】
本実施形態のアクリル樹脂を構成する炭素数が4以下のアクリル酸エステルモノマーは、例えば、エチルアクリレート、ノルマルプロピルアクリレート、ノルマルブチルアクリレート、イソブチルアクリレート等のうち少なくとも1種を用いることができる。これらのアクリル酸エステルモノマーであれば、低ガラス転移温度のため適度なタック性が発現するため、透明樹脂層14が浮いた状態でイソシアネート硬化剤による架橋が進行することを防ぎ、均質に、絵柄層12と透明樹脂層14の密着を付与することができる。
【0013】
また、本実施形態のアクリル樹脂を構成する炭素数が8以下のアクリル酸エステルモノマーは、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート等のうち少なくとも1種を用いることができる。これらのアクリル酸エステルモノマーは配合することで極性を下げる効果がある為、透明樹脂層14との相性がよく、密着を向上させることができる。透明樹脂層14と接着層13との密着向上により層間の隙間に水が入りにくくなり、耐湿性の向上も期待できる。
【0014】
また、本実施形態のアクリル樹脂を構成する水酸基を有するアクリル酸エステルモノマーはヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等のうち少なくとも1種を用いることができる。これらのアクリル酸エステルモノマーを用いることにより、アクリル樹脂に水酸基を付与することができる。水酸基が存在することで、硬化剤による架橋が可能であり、密着性の向上、さらに耐湿性、耐熱性の向上が期待できる。
【0015】
また、本実施形態のアクリル樹脂のガラス転移温度は-45℃以上であればよく、好ましくは-30℃以上である。また、ガラス転移温度が-10℃以下であれば好ましく、より好ましくは-15℃以下である。ガラス転移温度が-45℃より低い場合、アクリル樹脂の凝集力が小さいために、タック性がなく架橋前の絵柄層と透明樹脂層の密着が不十分であり、均質に密着しない。ガラス転移温度が-10℃より高い場合、アクリル樹脂の凝集力が高いためにタックがなく、密着不良になる。
【0016】
また、本実施形態のアクリル樹脂の水酸基価は40mgKOH/g以上であれば好ましく、より好ましくは80mgKOH/g以上である。また水酸基価が200mgKOH/g以下であれば好ましく、より好ましくは160mgKOH/g以下である。水酸基価が40mgKOH/g未満であると、アクリル樹脂の架橋密度を高めるために添加した硬化剤との反応が進まない場合がある。また、水酸基価が200mgKOH/g超であると、耐水性が低下や、架橋剤との反応性が高すぎてポットライフが短くなる場合がある。
【0017】
また本実施形態のアクリル樹脂の硬化に用いる硬化剤は、特に限定されるものではなく、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートおよびその水添物、あるいはジフェニルメタンジイソシアネートおよびその水添物などを含む市販の硬化剤から適宜選択して用いることができる。
【0018】
また本実施形態のアクリル樹脂に添加するトリアジン骨格を有する紫外線吸収剤(UVA)は、例えば2,4-Bis(2,4-dimethylphenyl)-6-(2-hydroxy-4-n-octyloxyphenyl)-1,3,5-triazine、2-(2-Hydroxy-4-methoxyphenyl)-4,6-diphenyl-1,3,5-triazine、Ethylhexyl Triazone、2-(2,4-Dihydroxyphenyl)-4,6-diphenyl-1,3,5-triazine、2,4,6-Tris(4-butoxy-2-hydroxyphenyl)-1,3,5-triazine、N,N',N''-Tri(m-tolyl)-1,3,5-triazine-2,4,6-triamine、2-(2,4-Dihydroxyphenyl)-4,6-bis(2,4-dimethylphenyl)-1,3,5-triazine、2,4,6-Tris(2,4-dihydroxyphenyl)-1,3,5-triazine、Bemotrizinol等から適宜選択して用いることができる。
トリアジン骨格を有するUVAは、トリアジン骨格を持たないUVAに比べ強い吸収と長期にわたる耐久性、優れた耐熱性が期待できる。
【0019】
また本実施形態のアクリル樹脂に添加するNOR型骨格を有する光安定剤(HALS)は、Decanedioic acid, bis(2,2,6,6-tetramethyl-1-(octyloxy)-4-piperidinyl)ester, reaction products with 1,1-dimethylethylhydroperoxide and octane、2,4-bis [N-Butyl-N-(1-cyclohexyloxy-2,2,6,6-tetramethylpiperidic-4-yl)amino]-6-(2-hydroxyethylamine)-1,3,5-triazine等から適宜選択して用いることができる。NOR型骨格を有するHALSは、塩基性が低いため、酸を持つ触媒や樹脂などを含む塗料中に添加しても、反応が生じる心配がない。
【0020】
絵柄層12を設けた基材11に透明樹脂層14を接合する方法は、接着層13を介していればよく、例えば、熱ラミネート、押出ラミネート、ドライラミネート、サンドラミネートなどの各種ラミネート手法を用いることができる。
【0021】
(基材)
基材11を構成する樹脂、即ち樹脂成分は、ポリオレフィンまたはポリエステルが好適に用いられ、汎用性の観点からポリオレフィンが最も好ましい。基材11を構成する樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレートなどの既存材料から任意に選択可能である。また、上記ポリオレフィン系樹脂以外の材料としては、例えば、αオレフィン(例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンなど)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレンまたはαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。
【0022】
基材11には、隣接する層との密着性を補うため、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等の表面処理を施してもよい。さらには、基材11と絵柄層12との間に密着を確保させるためにプライマー層(図示せず)を設けてもよい。
なお、基材11がポリオレフィンまたはポリエステルで形成されていれば、後述する絵柄層12との密着性が確実になり、ポリオレフィンで形成されていれば、絵柄層12との密着性がさらに確実になる。
【0023】
化粧シート10に隠蔽性を付与したい場合には、基材11に隠蔽性の着色シートを使用してもよいし、基材11の上層であって絵柄層12の下層に隠蔽層(図示せず)を設けてもよい。基材11として着色シートを使用する場合は、基材11を構成する樹脂材料に着色剤を添加して着色することができる。着色剤としては、例えば、無機顔料(酸化チタンやカーボンブラック等)や有機顔料(フタロシアニンブルー等)の他、染料も使用することができる。本実施形態の着色剤は、公知または市販の着色剤から1種類または2種類以上を選択して用いることができ、所望の隠蔽性と意匠性とが得られるように添加量も調整可能である。
また、基材11には、必要に応じて、例えば、充填剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、着色剤、つや消し剤など各種添加剤を加えてもよい。
【0024】
(絵柄層)
絵柄層12は、例えば、基材11に対してインキを用いて施された絵柄印刷を含む層である。絵柄層12の形成に用いられるインキは、例えば、バインダー樹脂を含んでいてもよい。絵柄層12の形成に用いられるインキに含まれるバインダー樹脂は、例えば、硝化綿、セルロース、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系などの単独もしくは各変性物の中から適宜選定して用いることができる。また、それらは水性、溶剤系、エマルジョンタイプのいずれでもよく、また1液タイプでも硬化剤を使用した2液タイプでもよい。本実施形態では、絵柄層12の形成に用いられるインキとしては、塗工性の観点から水性の着色インキが好適である。
絵柄層12の形成に用いられるインキを硬化させる方法としては、例えば、紫外線や電子線などの照射によりインキを硬化させる方法が挙げられる。中でも最も一般的な方法は、ウレタン系のインキを用いるものであって、ポリイソシアネートによって硬化させる方法である。
【0025】
絵柄層12の形成に用いられるインキは、上述したバインダー樹脂以外に、例えば、通常のインキに含まれている顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、光安定剤など各種添加剤などが添加されていてもよい。汎用性の高い顔料としては、例えば、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母などのパール顔料などが挙げられる。
絵柄層12を設ける方法は特に限定さるものではなく、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、インキジェット印刷など通常の印刷方法を用いることができる。
【0026】
(透明樹脂層)
透明樹脂層14の材料には、ポリオレフィンが好適に用いられ、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンや、各種αオレフィンコポリマ(プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの共重合体)が用いられる。これらの樹脂の中でも、透明樹脂層14の材料としてはポリプロピレンが最も好ましい。
本実施形態の透明樹脂層14は、製膜によって成形されたシートであってもよいし、既に成形したシートを積層したものであってもよい。透明樹脂層14は、例えば、高結晶性ポリプロピレン樹脂で構成されていてもよい。
【0027】
透明樹脂層14は、その全体の質量の80質量%以上をポリプロピレンが占めていれば好ましく、90質量%以上であればさらに好ましい。なお、「ポリプロピレンを主成分とする透明樹脂層」とは、透明樹脂層14全体の質量の80質量%以上をポリプロピレンが占めている状態を意味する。
【0028】
透明樹脂層14には、必要に応じて、例えば、熱安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、そして、本実施形態の特徴を損なわない範囲で、例えば、着色剤、光散乱剤及び艶調整剤などの各種添加剤を添加することもできる。
熱安定剤としては、例えば、フェノール系、硫黄系、リン系、ヒドラジン系等、難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等、紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等、光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系等を、任意の組み合わせで添加するのが一般的である。
【0029】
透明樹脂層14の作製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、カレンダー成膜や押出成膜など通常の方法を用いることができる。
透明樹脂層14は、意匠性を付与するために表面凹凸、所謂エンボスを設けてもよい。凹凸を設ける方法としては、例えば、透明樹脂層14を押出成形した後に熱エンボス加工を施す方法や、押出形成時に凹凸を設けた冷却ロールを用い押出し成形と同時にエンボス加工を施す方法がある。より詳しくは、凹凸模様(エンボス模様)は、透明樹脂層14である、例えば高結晶性ポリプロピレンシートに直接付与され、その方法は製膜されたポリプロピレンシートに熱及び圧力により凹凸模様を有するエンボス版を用いて凹凸模様を付与する方法や、押出機を用いて製膜する際に凹凸模様を有する冷却ロールを用いて冷却と同時にエンボスを設ける方法などがある。ここでは凹凸模様の凹部に着色インキを埋め込み、さらに意匠性を向上させることも可能である。
【0030】
なお、凹凸模様は必要であれば設ければよく、不要な場合は設けなくてもよい。
また、透明樹脂層14の片面または両面は、必要に応じて、例えばコロナ処理、プラズマ処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等で活性化してもよい。
【0031】
(表面保護層)
本実施形態に係る表面保護層15は、化粧シート10に、例えば、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性などの機能を付与するために設けられる層である。表面保護層15を構成する材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ウレタン系、アクリル系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系などの樹脂材料から適宜選択して用いることができる。
【0032】
表面保護層15の材料は、塗工性の観点からウレタンポリマーを主成分とするインキが好適である。ここで、「ウレタンポリマーを主成分とするインキ」とは、インキ全体の質量の80質量%以上をウレタンポリマーが占めている状態を意味する。
本実施形態では、イソシアネート反応を利用したウレタン系の表面保護層15が作業性、価格、樹脂自体の凝集力等の観点からも望ましい。
【0033】
表面保護層15の形成においては、上記イソシアネートとして、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)などの誘導体であるアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体や各種プレポリマーなどの硬化剤から適宜選択して用いることができる。
【0034】
なお、表面保護層15は、必要に応じて、例えば、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤などの各種添加剤を配合してもよい。この中でも、例えば、紫外線吸収剤及び光安定剤の少なくともいずれか一方が含まれていることが好ましい。
【0035】
表面保護層15の形成方法は、特に限定されるものではなく、前述の材料を塗液化したものを、例えば、グラビアコート、マイクログラビアコート、コンマコート、ナイフコート、ダイコートなど通常の方法で塗布した後、熱硬化や紫外線硬化など材料に適合した方法で硬化させることで表面保護層15を形成してもよい。
また、表面保護層15は、基材11に形成された絵柄層12と、透明樹脂層14とを接着層13を介して接合した後に設けてもよい。
【0036】
(プライマー層)
本実施形態に係る化粧シート10は、基材11の絵柄層12側の面とは反対側の面である裏面にプライマー層16をさらに備えていてもよい。
プライマー層16は、絵柄層12を形成するための着色インキに含まれるバインダー樹脂と同一成分で形成されていてもよい。
【0037】
プライマー層16の形成方法は、特に限定されるものではなく、上述した材料を塗液化したものを、例えば、グラビアコート、マイクログラビアコート、コンマコート、ナイフコート、ダイコートなど通常の方法で塗布した後、熱硬化や紫外線硬化など材料に適合した方法で硬化させることでプライマー層16を形成してもよい。
【0038】
また、プライマー層16は、基材11と、絵柄層12と、接着層13と、透明樹脂層14と、表面保護層15とをこの順に備えた積層体を形成した後に設けてもよく、基材11の裏面にプライマー層16を設けた後に、プライマー層16を設けた基材11と、絵柄層12と、接着層13と、透明樹脂層14と、表面保護層15とをこの順に備えた積層体を形成してもよい。
【0039】
また、化粧シートの裏面に施されるためにウエブ状で巻取りを行うことを考慮すると、ブロッキングを避けて且つ接着剤との密着を高めるために、プライマー層16に例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機充填剤を添加させてもよい。
【0040】
本実施形態に係る化粧シート10を構成する各層の厚みについては、基材11は、印刷作業性、コストなどを考慮して50μm以上100μm以下の範囲内とすることが望ましく、絵柄層12は1μm以上5μm以下の範囲内とすることが望ましく、接着層13は1μm以上3μm以下の範囲内とすることが望ましく、透明樹脂層14は70μm以上100μm以下の範囲内とすることが望ましく、表面保護層15は3μm以上15μm以下の範囲内とすることが望ましい。また、接着層13の厚みは、耐加水分解性や印刷作業性、あるいはコストなどを考慮して1μm以上2.5μm以下の範囲内とすることがより望ましく、1.5μm以上2μm以下の範囲内とすることがさらに望ましい。
【0041】
なお、各層の厚みが上述した各下限値未満であると、各層の機能(性能)が得られない場合がある。また、各層の厚みが上述した各上限値を超えた場合には、各層の機能(性能)はさほど向上しないため、各層の厚みを各上限値以下に設定するのが製造コストの観点から好ましい。
【0042】
また、プライマー層16を設ける場合には、プライマー層16の厚みは1μm以上5μm以下の範囲内であれば好ましい。プライマー層16の厚みが上記数値範囲内であれば、プライマー層16としての機能(性能)を確実に発揮することができる。
また、化粧シート10の総厚は125μm以上240μmの範囲内とすることが好適である。
上記数値範囲内であれば、印刷作業性を容易に向上させることができ、且つ製造コストを低減することができる。
【0043】
本実施形態に係る化粧シート10における接着層13と透明樹脂層14との間の剥離強度は、15N/inch以上であることが好ましい。接着層13と透明樹脂層14との間の剥離強度が15N/inch以上であれば、化粧シート10をロール状に生産する場合、ロールの巻ズレを確実に防止することができる。
また、化粧シート10を40℃、90%RH環境下で500時間暴露した後の、接着層13と透明樹脂層14との間の剥離強度が10N/inch以上であることが好ましい。化粧シート10を40℃、90%RH環境下で500時間暴露した後の、接着層13と透明樹脂層14との間の剥離強度が10N/inch以上であれば、化粧シート10に優れた耐久性を付与することができる。
【0044】
また、化粧シート10をスーパーキセノン試験機(東洋精機製アトラス・ウエザオメータCi4000)で試験条件180W光照射、12分降雨/120分サイクル、24時間試験した後の接着層13と透明樹脂層14との間の剥離強度が10N/inch以上であれば、化粧シートに優れた耐候性を付与することができ、屋外での化粧シートの展開も可能である。
【0045】
なお、本実施形態における剥離強度は、例えば、以下で説明する層間剥離試験により決定できる。
【0046】
<層間剥離試験>
接着層13の厚みを10μmとした化粧シート10において、接着層13と透明樹脂層14との間で剥離が生ずるか否かの試験(層間剥離試験)を行う。
化粧シート10の表面にニチバン製セロハンテープを圧着した後、一定の力(例えば、5N/inch、10N/inch、15N/inch、20N/inch)で強く引き剥がし、接着層13と透明樹脂層14との間での剥離の有無を顕微鏡にて評価する。本実施形態では、接着層13と透明樹脂層14との間で剥離が発生しなかった最大の力を「剥離強度」と定義する。
【0047】
なお、本実施形態における剥離強度の測定については、上記方法に限定されるものではなく、例えば、JIS K6854-3:1999に準拠して、接着層13と透明樹脂層14とのT字剥離試験を行い、接着層13と透明樹脂層14との間の剥離強度を測定(決定)してもよい。
【0048】
〔化粧シートの製造方法〕
以下、本発明の一実施形態に係る化粧シート10の製造方法について簡単に説明する。
まず、膜厚が50μm以上100μm以下の範囲内のポリオレフィン基材である基材11上に、ウレタンポリマーをバインダーとする着色インキにより、絵柄層12を1μm以上5μm以下の膜厚で形成する。
次に、その絵柄層12上に、少なくとも樹脂成分として、アクリル樹脂と架橋成分としてのイソシアネート硬化剤で構成されており、前記アクリル樹脂は、炭素数が4以下のアクリル酸エステルモノマーを少なくとも1種と、炭素数が8以上のアクリル酸エステルモノマーを少なくとも1種と、水酸基を有するアクリル酸エステルモノマーを少なくとも1種用いて重合された、ガラス転移温度が-45~-10℃の範囲内であり、水酸基価が40mgKOH/g以上200mgKOH/g以下の範囲内の特性を有する樹脂で構成された接着層13を1μm以上3μm以下の膜厚で形成する。
【0049】
次に、その接着層13上に、ポリプロピレンを主成分とする透明樹脂層14を押し出し成型により、70μm以上100μm以下の膜厚で形成する。
最後に、その透明樹脂層14上に、ウレタンポリマーを主成分とするインキにより、表面保護層15を3μm以上15μm以下の膜厚で形成する。
こうして、本実施形態に係る化粧シート10を製造する。
【0050】
また、絵柄層12を形成した後であって接着層13を形成する前に、絵柄層12の接着層13側の面の表面を濡れ指数が60dyne以上となるように表面処理を行ってもよい。
また、絵柄層12を形成する工程で用いる着色インキはバインダー樹脂を含んでいてもよく、基材11の絵柄層12側の面とは反対側の面である裏面に、その着色インキに含まれるバインダー樹脂と同一成分からなり、且つ、膜厚が1μm以上5μm以下の範囲内であるプライマー層16を形成してもよい。
【0051】
以下、実施例および比較例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0052】
<実施例1>
パーソナル合成装置(東京理化器械製)用枝付き反応容器に表1に示すように炭素数4以下のアクリル酸エステルモノマーとしてEA(関東化学株式会社製)を85部、水酸基をもつアクリル酸エステルモノマーとしてHEA(関東化学株式会社製)を10部、炭素数8以上のアクリル酸エステルモノマーとしてLA(関東化学株式会社製)を5部、モノマーに対しAIBN(重合開始剤)を対モノマー比1mol%、溶媒をモノマー質量が30wt%になるように投入した。室温でアルゴンを15分間、バブリングした後、密閉系にて70℃で8時間、加熱・撹拌を行うことでガラス転移温度-19℃、水酸基価48mgKOH/gのアクリル樹脂を作製した。なお、「EA」のガラス転移温度は-20℃である。
【0053】
隠蔽性のあるポリエチレン原反(厚さ70μm)上に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ(株)製)を用い木目柄をグラビア印刷し絵柄層(厚さ3μm)を設けた。この2液型ウレタンインキは、バインダー樹脂を含むインキである。
こうして得られた基材に、上記アクリル樹脂と1.2当量のイソシアネート硬化剤デュラネートTSE-100(旭化成)を混合したものを塗工して、接着層(アンカーコート層:厚さ2μm)を形成した。
この接着層を介して、基材と、透明樹脂層を形成する透明ポリオレフィン樹脂とをドライラミネートした。透明樹脂層の膜厚は80μmとした。
【0054】
さらに表面保護層として、アクリルポリオール(メチルメタクリレートと2ヒドロキシメタクリレートの共重合体)と、硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体)からなる2液硬化ポリウレタン樹脂層とを、上記透明ポリオレフィン樹脂上に塗布形成(層厚8μm)し、実施例1の化粧シートを得た。
【0055】
<実施例2>
実施例1で使用したEA(関東化学株式会社製)を75部、HEA(関東化学株式会社製)を20部に変更し、ガラス転移温度-18℃、水酸基価97mgKOH/gのアクリル樹脂とした以外は実施例1と同様の方法で、実施例2の化粧シートを得た。
【0056】
<実施例3>
実施例1で使用したEA(関東化学株式会社製)を65部、HEA(関東化学株式会社製)を30部に変更し、ガラス転移温度-18℃、水酸基価145mgKOH/gのアクリル樹脂とした以外は実施例1と同様の方法で、実施例3の化粧シートを得た。
【0057】
<実施例4>
実施例1で使用したEA(関東化学株式会社製)を55部、HEA(関東化学)を40部に変更し、ガラス転移温度-17℃、水酸基価193mgKOH/gのアクリル樹脂とした以外は実施例1と同様の方法で、実施例4の化粧シートを得た。
【0058】
<実施例5>
実施例3で作製したアクリル樹脂に、トリアジン系紫外線吸収剤としてTinvin479を添加した以外は実施例1と同様の方法で、実施例5の化粧シートを得た。
【0059】
<実施例6>
実施例3で作製したアクリル樹脂に、トリアジン系紫外線吸収剤としてTinvin479を、NOR型光安定剤としてTin123を添加した以外は実施例1と同様の方法で、実施例6の化粧シートを得た。
【0060】
<実施例7>
実施例1における接着層(アンカーコート層)の厚さを5μmにした以外は実施例1と同様の方法で、実施例7の化粧シートを得た。
【0061】
<実施例8>
実施例1における表面保護層(トップコート層)の材料を、アクリディックFL-638-BE(DIC株式会社製のアクリル樹脂)とした以外は実施例1と同様の方法で、実施例8の化粧シートを得た。
【0062】
<比較例1>
実施例1で使用したLA(関東化学株式会社製)の添加を無くし、ガラス転移温度-18℃、水酸基価169mgKOH/gのアクリル樹脂とした以外は実施例1と同様の方法で、比較例1の化粧シートを得た。
【0063】
<比較例2>
実施例1で使用したEA(関東化学株式会社製)をn-BA(関東化学)に変更し、ガラス転移温度-49℃、水酸基価48mgKOH/gのアクリル樹脂とした以外は実施例1と同様の方法で、比較例2の化粧シートを得た。
【0064】
<比較例3>
実施例3で使用したEA(関東化学株式会社製)をt-BA(関東化学)に変更し、ガラス転移温度-9℃、水酸基価145mgKOH/gのアクリル樹脂とした以外は実施例1と同様の方法で、比較例3の化粧シートを得た。
【0065】
<比較例4>
実施例1で使用したEA(関東化学株式会社製)を90部、HEA(関東化学)を5部に変更し、ガラス転移温度-18℃、水酸基価24mgKOH/gのアクリル樹脂とした以外は実施例1と同様の方法で、比較例4の化粧シートを得た。
【0066】
<比較例5>
実施例1で使用したEA(関東化学株式会社製)を50部、HEA(関東化学株式会社製)を45部に変更し、ガラス転移温度-17℃、水酸基価217mgKOH/gのアクリル樹脂とした以外は実施例1と同様の方法で、比較例5の化粧シートを得た。
【0067】
<比較例6>
実施例1で使用したイソシアネート硬化剤をエポキシ硬化剤デナコールEX-830(ナガセケムテック)とした以外は実施例1と同様の方法で、比較例6の化粧シートを得た。
【0068】
<評価>
上記実施例及び上記比較例で得られた化粧シートについて、以下の方法で剥離強度(N/inch)及び90%RH環境下500時間暴露後の剥離強度(N/inch)をそれぞれ測定し評価した。評価結果を表1に示す。なお、表1において、「EA」は「エチルアクリレート」、「LA」は「ラウリルアクリレート」、「HEA」は「ヒドロキシエチルアクリレート」、「n-BA」は「ノルマルブチルアクリレート」、「i-BA」は「イソブチルアクリレート」を示す。
【0069】
<層間剥離試験>
接着層の厚みを10μmとした各実施例及び各比較例の化粧シートにおいて、接着層と透明樹脂層との間で剥離が生ずるか否かの試験(層間剥離試験)を行った。
化粧シートの表面にニチバン製セロハンテープを圧着した後、一定の力(1N/inchから20N/inchまで1N/inch毎の増加)で強く引き剥がし、接着層と透明樹脂層との間での剥離の有無を顕微鏡にて評価した。
本実施例では、接着層と透明樹脂層との間で剥離が発生しなかった最大の力を「剥離強度(N/inch)」と定義した。
【0070】
なお、「耐湿試験後の剥離強度(N/inch)」は、各実施例及び各比較例の化粧シートをそれぞれHASTチャンバー(高度加速寿命試験装置)内に設置し、40℃90%RH環境下500時間暴露した後に上記層間剥離試験を実施して得た剥離強度(N/inch)とした。
また、「耐候試験後の剥離強度(N/inch)」は、スーパーキセノン試験機(東洋精機製アトラス・ウエザオメータCi4000)で試験条件180W光照射、12分降雨/120分サイクル、24時間試験した後に上記層間剥離試験を実施して得た剥離強度とした。
【0071】
<評価基準>
各実施例及び各比較例の評価基準は以下の通りである。
なお、各実施例では、「初期密着試験」及び「耐湿試験」の剥離強度(N/inch)の両方の評価が「〇」であれば合格とした。「初期密着試験」の評価が「〇」であれば、一例として、建具や床等、特に過酷でない環境での使用に適していることを意味している。また、「耐湿試験」の評価が「〇」であれば、一例として、窓のサッシ付近、台所、浴室等、水回りでの使用に適していることを意味している。
また、表1において、「初期密着試験」が「〇」でない比較例は「耐湿試験」及び「耐候性試験」は行わず、「-」と表記した。
【0072】
[初期密着試験]
○:剥離強度が15N/inch以上
△:剥離強度が10N/inch以上15N/inch未満
×:剥離強度が10N/inch未満
【0073】
[耐湿試験]
○:剥離強度が初期密着から0%から20%低下
△:剥離強度が初期密着から20%から40%低下
×:剥離強度が初期密着から40%以上低下
【0074】
【0075】
表1に示すように、実施例1~8の化粧シートは、接着層と透明樹脂層との間における層間剥離の発生を低減された化粧シートであることが示された。特に、実施例5,6の化粧シートは耐候性にも優れていることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、建物外装や浴室などの高温多湿に対する耐久性が要求される化粧シートとして利用できるほか、建具の表面材や床材など屋内用シートとしても利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
10 化粧シート
11 基材(ポリオレフィン基材)
12 絵柄層
13 接着層(アンカーコート層)
14 透明樹脂層
15 表面保護層(トップコート層)
16 プライマー層