(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065820
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】酢酸含有飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
A23L2/00 T
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176180
(22)【出願日】2021-10-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【弁理士】
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】久保田 洋史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 徳子
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC02
4B117LK04
4B117LK06
4B117LK09
4B117LL09
(57)【要約】
【課題】 酢酸を含む炭酸飲料において、おいしさを維持しつつ、飲んだときに感じられる酢酸由来の刺激を低減できる新規な技術を提供する。
【解決手段】 その含有量が10~1000ppmである酢酸と、その含有量が1~150ppbであるチモールを含有する、炭酸飲料。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その含有量が10~1000ppmである酢酸と、その含有量が1~150ppbであるチモールを含有する、炭酸飲料。
【請求項2】
そのBrix値が1~10である、請求項1に記載の炭酸飲料。
【請求項3】
その炭酸ガスボリュームが1.0vol以上である、請求項1又は2に記載の炭酸飲料。
【請求項4】
その含有量が10~1000ppmである酢酸を含む炭酸飲料において、その含有量を1~150ppbとしてチモールを含有させることを含む、酢酸由来の刺激の低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸を含有する飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
食酸(酢酸)は、疲労回復効果や血圧上昇抑制効果など、健康に対して所定の効果を有することが報告されており、酢酸を含む飲料の開発が進められている。酢酸を含む飲料は、例えば、特許文献1に記載されている。酢酸を含む飲料は、飲んだときに、酢酸による刺激を感じさせることがある。当該刺激には、酢酸由来の飲んだ瞬間に感じる刺激(飲んだ瞬間に鼻に抜けるツンとした刺激)と、酢酸由来の飲んだ後に残る刺激(飲んだ後に喉の奥でカッと熱くなる、バーニング感のような刺激)とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、酢酸を含む炭酸飲料において、おいしさを維持しつつ、飲んだときに感じられる酢酸由来の刺激を低減できる新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、酢酸を含有する炭酸飲料に、所定量のチモールを含有させることで、おいしさを維持しつつ、飲んだときに感じられる酢酸由来の刺激を低減できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]その含有量が10~1000ppmである酢酸と、その含有量が1~150ppbであるチモールを含有する、炭酸飲料。
[2]そのBrix値が1~10である、[1]に記載の炭酸飲料。
[3]その炭酸ガスボリュームが1.0vol以上である、[1]又は[2]に記載の炭酸飲料。
[4]その含有量が10~1000ppmである酢酸を含む炭酸飲料において、その含有量を1~150ppbとしてチモールを含有させることを含む、酢酸由来の刺激の低減方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、酢酸を含む炭酸飲料において、おいしさを維持しつつ、飲んだときに感じられる酢酸由来の刺激を低減できる新規な技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の1つの実施形態について、詳細に説明する。
【0009】
本実施形態の飲料は、酢酸とチモールを含有する炭酸飲料であり、該炭酸飲料における酢酸の含有量が10~1000ppmであり、該炭酸飲料におけるチモールの含有量が1~150ppbである。なお、本明細書におけるppm及びppbは、それぞれ、質量ppmと質量ppbを意味する。
【0010】
本実施形態の飲料において、酢酸の含有量は、上記のとおり10~1000ppmである。酢酸の含有量が10~1000ppmである炭酸飲料に、後述する所定量(1~150ppb)のチモールを含有することで、おいしさを維持しつつ、飲んだときに感じられる酢酸由来の刺激を低減することができる。酢酸の含有量が10ppm未満である炭酸飲料や1000ppmを超えている炭酸飲料では、1~150ppbのチモールを含有させても、酢酸由来の刺激の低減効果が得られない(又は得られとしても実感できないほどに小さい)。
【0011】
本実施形態の飲料における酢酸の含有量は、10~1000ppmであれば特に限定されるものではないが、おいしさがより維持されやすく、酢酸由来の刺激がより低減されやすくなる観点からは、50~900ppmであることが好ましく、50~600ppmであることが好ましく、50~200ppmであることがより好ましい。なお、飲料における酢酸の含有量は、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定することができる。
【0012】
本実施形態の飲料に含まれる酢酸は、その由来について特に限定されない。酢酸は、例えば、食酢などの酢酸を主成分とした成分が飲料に添加されて含有されるようにしてもよく、また、後述する飲料に味および/または香りを付与する成分などに由来して含有されるようにしてもよい。
【0013】
なお、本明細書において、酢酸由来の刺激とは、酢酸を含む飲料を飲んだ瞬間に感じる刺激と、酢酸由来の飲んだ後に残る刺激の総称である。また、本明細書において、酢酸由来の刺激の低減とは、酢酸由来の飲んだ瞬間に感じる刺激と酢酸由来の飲んだ後に残る刺激のうち少なくとも一方が低減されることを意味する。また、本明細書において、おいしさの維持とは、チモールを含有しないこと以外は同じ組成の飲料と比較しておいしさが損なわれていないことを意味する。
【0014】
本実施形態の飲料は、炭酸飲料である。10~1000ppmの酢酸が含まれる飲料が炭酸飲料であることにより、酢酸由来の刺激が増強される(酢酸由来の刺激が強く感じられる)が、本実施形態の飲料は、炭酸によって増強される酢酸由来の刺激を、後述する所定量(1~150ppb)のチモールにより低減する。本実施形態の飲料の炭酸ガスボリューム(ガス圧)は、特に限定されるものではなく、充填され得る容器の材質などを考慮して当業者が適宜設定できるが、おいしさがより維持されやすく、酢酸由来の刺激がより低減されやすくなる観点からは、1.0以上とすることが好ましく、1.0~4.5Volとすることがより好ましく、1.5~4.0Volとすることが特に好ましい。なお、本明細書において炭酸飲料とは、飲料中に二酸化炭素(炭酸ガス)が溶存した飲料をいう。また、本明細書において、炭酸ガスボリューム(ガス圧)とは、1気圧、20℃における容器詰めの炭酸飲料中に溶解している炭酸ガスの容積と飲料の容積比をいう。炭酸ガスボリュームは、試料を20℃とした後、ガス内圧力計を取り付け、一度活栓を開いてガス抜き(スニフト)操作を行い、直ちに活栓を閉じてから激しく振とうし、圧力が一定になった時の値として得ることができる。
【0015】
本実施形態の飲料は、1~150ppbのチモールを含有する。チモールは、分子式C10H14Oで表されるモノテルペン誘導体であり、例えば、タチジャコウソウや柚子に含まれている。本実施形態の飲料に含有されるチモールの由来は、特に限定されず、天然物が抽出されたチモールであってもよく、合成されたチモールであってもよい。また、本実施形態の飲料に含有されるチモールは、後述する飲料に味および/または香りを付与する成分などに由来して飲料に含まれていてもよい。
【0016】
酢酸の含有量が10~1000ppmである炭酸飲料に、1~150ppbのチモールが含有されることで、おいしさを維持しつつ、飲んだときに感じられる酢酸由来の刺激が低減される。炭酸飲料に含有されるチモールが1ppb未満であると、酢酸由来の刺激の低減効果が得られない。一方、炭酸飲料に含有されるチモールが150ppb超であると、チモールに由来する不快な香り(薬品臭(薬品を想起させるような香り))を感じやすくなり、おいしさを維持することができない。
【0017】
本実施形態の飲料におけるチモールの含有量は、1~150ppbであれば特に限定されるものではないが、おいしさがより維持されやすく、酢酸由来の刺激がより低減されやすくなる観点からは、10~150ppbであることが好ましく、50~100ppbであることがより好ましい。
【0018】
なお、チモールの含有量はガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS、アジレント・テクノロジー社製、7890A GC/5975C MSD)を用いた固相マイクロ抽出法(SPME)法により定量することができる。定量には標準添加法を用いる。測定サンプルについて3サンプルずつ準備し、その定量結果の平均値を測定結果とすることができる。準備した測定サンプルを含む20mLバイアル瓶を、60℃で10分間の加熱処理を施した後、当該バイアル瓶の気相部分にSUPELCO社製のSPMEファイバー(DVB/CAR/PDMS)を挿入し、5分間、揮発成分を捕集する。このSPMEファイバーをGC/MSに設置し、300秒間焼成することにより、捕集した揮発成分を脱離することができる。
【0019】
GC/MSの分析条件は以下の通りである。
カラム:アジレント・テクノロジー社製、DB-WAX UI 0.25mm×30m×0.25μm
オーブン温度:40℃で5分、その後3℃/分で180℃、20℃/分で230℃まで昇温。
キャリアガス:ヘリウム
注入口温度:230℃
注入方法:スプリットレス
【0020】
本実施形態の飲料において、酢酸とチモールの含有量比(酢酸:チモール)は、前述したそれぞれの含有量の範囲内(酢酸:10~1000ppm、チモール:1~150ppb)において適宜設定することができ、特に限定されるものではないが、おいしさがより維持されやすく、酢酸由来の刺激がより低減されやすくなる観点からは、120000:1~800:1であることが好ましく、12000:1~800:1であることがより好ましく、2400:1~1200:1であることが特に好ましい。
【0021】
本実施形態の飲料は、酢酸、炭酸ガス、チモールに加えて、本発明の目的を達成することができる範囲内において他の成分(以下、「他の成分」ともいう)を含んでもよく、特に限定されない。
【0022】
他の成分としては、例えば、飲料に味および/または香りを付与する成分を挙げることができる。このような成分の一例としては、果汁、ショウガなどの野菜からの搾汁、緑茶、紅茶などの茶葉やコーヒー豆からの抽出物、香料などを挙げることができる。
【0023】
なお、果汁とは、果実を破砕して搾汁又は裏ごし等をし、必要に応じて皮、種子等を除去した液体成分をいう。果汁が由来する果物については、例えば、柑橘類、バラ科植物の果物、ブドウ、パイナップル、グァバ、バナナ、マンゴー、アセロラ、ライチ、パパイヤ、パッションフルーツ、ブルーベリー、キウイフルーツ、メロンなどが挙げられる。柑橘類としてはオレンジ、うんしゅうみかん、グレープフルーツ、レモン、ライム、柚子、いよかん、なつみかん、はっさく、ポンカン、シークワーサー、かぼす等が例示できる。また、バラ科植物の果物としてはアンズ、イチゴ、ウメ、サクランボ、スモモ、西洋ナシ、日本梨、ビワ、モモ、リンゴ、プルーン、ラズベリーなどが例示できる。例えばこれらのうち1種または2種以上の果物の果汁が選択されて本実施形態の飲料に含有されるようにしてもよい。
【0024】
本実施形態の飲料に果汁を含有する場合、上述した果汁の中でも、柑橘類の果汁を含有することが好ましく、ゆずやレモンの果汁を含有することがより好ましい。柑橘類(特に、ゆずやレモン)の果汁は、柑橘類以外の他の果実の果汁と比較して、チモールと相性がよく、おいしさがより維持されやすい。本実施形態の飲料にゆずやレモンの果汁を含有する場合、おいしさがより維持されやすくなる観点から、ゆずやレモンの果汁率(ゆずとレモンの両方の果汁を含む場合、両方の果汁の果汁率の合計)は、30%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0025】
なお、本明細書において、果汁率とは、果実を搾汁等して得られ、濃縮等の処理を行っていない果実の搾汁(ストレート果汁)のBrix値または酸度を100%としたときの相対濃度である。果汁率をBrix値または酸度のいずれに基づいて算出するかはJAS規格に基づき果実の種類ごとに定められている。また、果汁の果汁率をJAS規格のBrix値に基づいて換算する場合、果汁に加えられた糖類、はちみつ等のBrix値は除いて算出される。例えば、レモンについては酸度(4.5%)に基づいて算出することができ、酸度31%の冷凍濃縮レモンジュースを飲料中1.5重量%配合した場合、1%の果汁率の飲料を得ることができる。Brix値及び酸度の求め方については後述する。
【0026】
また、本実施形態の飲料に含有され得る果汁(搾汁)や抽出物は、搾汁処理や抽出処理により得られるものをそのまま飲料中に添加してもよいほか、例えば濃縮、還元、発酵、凍結乾燥といった処理を経て飲料中に添加されたものであってもよい。
【0027】
本実施形態の飲料に含有され得る他の成分としては、上述した味および/または香りを付与する成分の他に、市販の飲料に添加されている添加成分を挙げることができる。このような成分としては、消泡剤、酸味料、炭酸水素ナトリウムやクエン酸ナトリウムやリン酸ナトリウムや塩化ナトリウムなどのナトリウム塩、硫酸マグネシウムなどのマグネシウム塩、リン酸カリウムなどのカリウム塩、塩化カルシウムなどのカルシウム塩、pH調整剤、保存料、抗酸化剤、甘味料、アミノ酸などを挙げることができる。
【0028】
本実施形態の飲料のpHは、特に限定されず、当業者が適宜設定でき、例えば2.0~4.0とすることができる。また、本実施形態の飲料のクエン酸酸度も特に限定されず、当業者が適宜設定でき、例えば0.1~0.4[g/100ml]とすることができる。なお、本明細書において、クエン酸酸度とは、飲料100ml中に含まれる有機酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数[無水クエン酸g/100ml]を指す。飲料のクエン酸酸度は、JAS規格の酸度測定法に定められた方法、具体的には、0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。なお、炭酸飲料については、クエン酸酸度の測定に供する前に炭酸ガスを常法により脱気した後、測定に供することができる。
【0029】
また、本実施形態の飲料のBrix値も特に限定されず、当業者が適宜設定できるが、1~10であることが好ましい。Brix値が1~10である場合には、Brix値が当該範囲外にある場合と比較して、酢酸由来の刺激をより低減できる。なお、本明細書においてBrix値とは、JAS規格に基づく、試料の温度(液温度)20℃における糖用屈折計の示度をいう。Brixの測定は、公知の方法、装置を用いて行うことができる。Brix値の調整は、例えば甘味料の配合量の調整などにより行うことができる。当該Brix値の調整は、特に限定されないが、例えば飲料を調製する段階において行うことができる。本明細書の実施例では、ATAGO社製のデジタル屈折計RX-5000αを用いて20℃で測定した値を測定した。
【0030】
また、本実施形態の飲料の糖酸比は、特に限定されるものではなく、当業者が適宜設定できるが、例えば、10~100とすることができ、20~50とすることもでき、25~30とすることもできる。なお、本明細書において糖酸比とは、飲料におけるクエン酸酸度に対するBrix値の比率(Brix値/クエン酸酸度)を指す。クエン酸酸度及びBrix値の求め方は、上述した方法と同じであるため、説明を省略する。
【0031】
本実施形態の飲料は、例えば、製造する炭酸飲料における含有量が10~1000ppmとなる量の酢酸と、製造する炭酸飲料における含有量が1~150ppbとなる量のチモールと、必要に応じて含有される他の成分を、原料水に添加して混合し、得られた飲料水(以下、単に「混合液」ともいう)に二酸化炭素を溶存させることで製造することができる。
【0032】
酢酸、チモール、及び必要に応じて含有される他の成分の添加方法や順序などは特に限定されず、当業者が適宜設定できる。また、各成分を添加する飲料水は、水自体のほか、炭酸飲料に含有する成分を含んだ水溶液であってもよい。
【0033】
また、混合液に二酸化炭素を溶存させる方法も特に限定されず、例えば、予め二酸化炭素を溶存させておいた飲料水を、混合液に混合して炭酸飲料とする方法(ポストミックス法)や、混合液に二酸化炭素を直接噴き込んで溶存させる方法(プレミックス法)が挙げられる。
【0034】
本実施形態の飲料は、容器に封入された容器詰飲料とすることができる。容器への封入方法などは特に限定されず、例えば常法に従って行うことができる。容器についても容器詰飲料に用いられる公知の容器を適宜選択して用いることができ、素材や形状など特に限定されない。容器の具体例としては、例えば、透明又は半透明のビン、PETボトル等の透明又は半透明のプラスチック容器、スチール缶やアルミニウム缶等の金属缶などが挙げられる。
【0035】
以上説明した本実施形態によれば、その含有量が10~1000ppmである酢酸を含む炭酸飲料において、その含有量を1~150ppbとしてチモールを含有させることで、おいしさを維持しつつ、飲んだときに感じられる酢酸由来の刺激を低減することができる。このため、本発明によれば、その含有量が10~1000ppmである酢酸を含む炭酸飲料において、その含有量を1~150ppbとしてチモールを含有させることを含む、酢酸由来の刺激の低減方法を提供することもできる。
【実施例0036】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0037】
[試験1<炭酸ガスの有無条件下におけるチモールの影響>]
イオン交換水に糖(果糖ブドウ糖液糖)を添加してベース液を得た。当該ベース液に下記表1に示す含有量で各原料をそれぞれ添加するとともに、製造する飲料のクエン酸酸度が0.23[g/100ml]となるようにリンゴ酸を添加して混合した。得られた混合液に対し、下記表1に従って炭酸ガスを溶存させ、実施例1、比較例1、及び参考例1~2の飲料を得た。実施例1、比較例1、及び参考例1~2の飲料は、いずれも、Brix値が6.5であり、クエン酸酸度が0.23[g/100ml]であった。なお、下記表1において、「+」はその成分を含んでいることを意味し、「-」はその成分を含んでいないことを意味する。
【0038】
実施例1、比較例1、及び参考例1~2の飲料を5人のパネリストが試飲し、「おいしさ」及び「酢酸由来の刺激(酢酸由来の飲んだ瞬間に出る刺激、及び酢酸由来の飲んだ後に残る刺激)」について官能評価を実施した。なお、パネリストには、官能評価士や飲料の開発者などの適切な者を選定し、極端に好き嫌いのある者やアレルギーのある者などは除外して官能評価を実施した。
【0039】
「おいしさ」に係る官能評価は、下記評価基準に基づいて行い、比較例1を基準(4点)として、7点に近づくにつれてより「おいしさ」がより良くなるものとし、1点に近づくにつれて「おいしさ」がより悪くなるものとした。
<「おいしさ」の評価基準>
7:かなり良い
6:良い
5:やや良い
4:変化なし(基準)
3:やや悪い
2:悪い
1:かなり悪い
【0040】
「酢酸由来の刺激」に係る官能評価は、下記評価基準に基づいて行い、比較例1を基準(7点)に、1点に近づくにつれて「酢酸由来の刺激」がより認められなくなるものとした。
<「酢酸由来の飲んだ瞬間に感じる刺激」、及び「酢酸由来の飲んだ後に残る刺激」の評価基準>
7:非常に認められる(基準)
6:かなり認められる
5:とても認められる
4:比較的認められる
3:少し認められる
2:僅かに認められる
1:全く認められない
【0041】
各パネリストが官能評価を行った後、パネリストの評価結果(採点)の平均値を求めた。結果を表1に示す。
【表1】
【0042】
表1から理解できるとおり、実施例1の飲料は、比較例1の飲料と比較して、酢酸由来の刺激(酢酸由来の飲んだ瞬間に出る刺激及び酢酸由来の飲んだ後に残る刺激)が低減しており、おいしさが比較例1の飲料よりも損なわれてしまうこともなかった。一方、参考例1~2の評価結果から理解できるように、炭酸ガスが溶存していない飲料では、酢酸由来の刺激((酢酸由来の飲んだ瞬間に出る刺激及び酢酸由来の飲んだ後に残る刺激))が比較例1の飲料と比較して感じられず、また、チモールの添加による酢酸由来の刺激の低減効果も認められなかった。
【0043】
[試験2<チモールの含有量による影響>]
チモールの含有量を表2に示す含有量にしたこと以外は試験1の実施例1と同様の方法で、実施例2~7及び比較例3~4の飲料を得た。また、試験1の比較例1と同様の方法で、比較例2の飲料を得た。実施例2~7及び比較例2~4の飲料は、いずれも、Brix値が6.5であり、クエン酸酸度が0.23[g/100ml]であり、炭酸ガスボリュームが2.89Volであった。
【0044】
実施例2~7及び比較例2~4の飲料を5人のパネリストが試飲し、試験1と同様の方法で官能評価を実施した。なお、本試験の官能評価では、比較例2を基準に、各実施例及び各比較例の飲料を評価した。結果を表2に示す。
【0045】
【0046】
表2から理解できるとおり、実施例2~7の飲料は、比較例2の飲料と比較して、酢酸由来の刺激(酢酸由来の飲んだ瞬間に出る刺激及び酢酸由来の飲んだ後に残る刺激)が低減しており、おいしさが比較例2の飲料よりも損なわれてしまうこともなかった。一方、チモールの含有量が150ppbを超える比較例3~4の飲料は、チモールに由来する不快な香りが感じられてしまい、比較例2の飲料と比較しておいしさが損なわれていた。
【0047】
[試験3<酢酸の含有量による影響>]
酢酸の含有量を下記表3に示す含有量にしたこと以外は試験1の実施例1と同様の方法で、実施例8~10の飲料を得た。また、酢酸の含有量を下記表3に示す含有量にしたこと以外は試験1の比較例1と同様の方法で、比較例5~7の飲料を得た。実施例8~10及び比較例5~7の飲料は、いずれも、Brix値が6.5であり、クエン酸酸度が0.23[g/100ml]であり、炭酸ガスボリュームが2.89Volであった。
【0048】
実施例8~10及び比較例5~7の飲料を5人のパネリストが試飲し、試験1と同様の方法で官能評価を実施した。なお、本試験の官能評価では、比較例5を基準に実施例8を評価し、比較例6を基準に実施例9を評価し、比較例7を基準に実施例10を評価した。結果を表3に示す。
【0049】
【0050】
表3から理解できるように、100ppbのチモールを含有する実施例8~10の飲料は、それぞれ、チモールを含有しないこと以外は同じ組成の比較例5~7の飲料と比較して、酢酸由来の刺激(酢酸由来の飲んだ瞬間に出る刺激及び酢酸由来の飲んだ後に残る刺激)が低減しており、おいしさが損なわれてしまうこともなかった。この結果から、酢酸の含有量が変わっても、その含有量が10~1000ppmの範囲内であれば、100ppbのチモールが含有されることで、おいしさを維持しながら、酢酸由来の刺激(酢酸由来の飲んだ瞬間に出る刺激及び酢酸由来の飲んだ後に残る刺激)を低減できることが理解できた。
【0051】
[試験4<クエン酸酸度やBrix値の違いによる影響>]
試験1の実施例1と同様の方法で、下記表4に示す実施例11の飲料を得た。また、試験1の比較例1と同様の方法で、下記表4に示す比較例8の飲料を得た。実施例11及び比較例8の飲料は、いずれも、炭酸ガスボリュームが2.89Volであった。
【0052】
ベース液に添加する糖(果糖ブドウ糖液糖)の量を調整して下記表4に示すBrix値としたこと、及び製造する飲料のクエン酸酸度が0.13[g/100ml]となるようにリンゴ酸を添加したこと以外は試験1の実施例1と同様の方法で、下記表4に示す実施例12の飲料を得た。また、ベース液に添加する糖(果糖ブドウ糖液糖)の量を調整して下記表4に示すBrix値としたこと、及び製造する飲料のクエン酸酸度が0.13[g/100ml]となるようにリンゴ酸を添加したこと以外は試験1の比較例1と同様の方法で、下記表4に示す比較例9の飲料を得た。実施例12及び比較例9の飲料は、いずれも、炭酸ガスボリュームが2.89Volであった。
【0053】
実施例11~12及び比較例8~9の飲料を5人のパネリストが試飲し、試験1と同様の方法で官能評価を実施した。なお、本試験の官能評価では、比較例8を基準に実施例11を評価し、比較例9を基準に実施例12を評価した。結果を表4に示す。
【0054】
【0055】
表4から理解できるように、100ppbのチモールを含有する実施例11~12の飲料は、それぞれ、チモールを含有しないこと以外は同じ組成の比較例8~9の飲料と比較して、酢酸由来の刺激(酢酸由来の飲んだ瞬間に出る刺激及び酢酸由来の飲んだ後に残る刺激)が低減しており、おいしさが損なわれてしまうこともなかった。この結果から、飲料のクエン酸酸度やBrix値に関わらず、飲料に100ppbのチモールが含有されることで、おいしさを維持しながら、酢酸由来の刺激(酢酸由来の飲んだ瞬間に出る刺激及び酢酸由来の飲んだ後に残る刺激)を低減できることが理解できた。
【0056】
[試験5<炭酸ガスボリュームの違いによる影響>]
飲料に溶存させる炭酸ガスの量を調整して下記表5に示す炭酸ガスボリュームとしたこと以外は試験1の実施例1と同様の方法で、実施例13~14の飲料を得た。また、飲料に溶存させる炭酸ガスの量を調整して下記表5に示す炭酸ガスボリュームとしたこと以外は試験1の比較例1と同様の方法で、比較例10~11の飲料を得た。実施例13~14及び比較例10~11の飲料は、いずれも、Brix値が6.5、クエン酸酸度が0.23[g/100ml]であった。
【0057】
実施例13~14及び比較例10~11の飲料を5人のパネリストが試飲し、試験1と同様の方法で官能評価を実施した。なお、本試験の官能評価では、比較例10を基準に実施例13を評価し、比較例11を基準に実施例14を評価した。結果を表5に示す。
【0058】
【0059】
表5から理解できるように、100ppbのチモールを含有する実施例13~14の飲料は、それぞれ、チモールを含有しないこと以外は同じ組成の比較例10~11の飲料と比較して、酢酸由来の刺激(酢酸由来の飲んだ瞬間に出る刺激及び酢酸由来の飲んだ後に残る刺激)が低減しており、おいしさが損なわれてしまうこともなかった。この結果から、飲料に炭酸ガスが含まれていれば、炭酸ガスボリュームに関わらず、飲料に100ppbのチモールが含有されることで、おいしさを維持しながら、酢酸由来の刺激(酢酸由来の飲んだ瞬間に出る刺激及び酢酸由来の飲んだ後に残る刺激)を低減できることが理解できた。