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  • 特開-直接基礎と基礎梁との接合部の構造 図1
  • 特開-直接基礎と基礎梁との接合部の構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065844
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】直接基礎と基礎梁との接合部の構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
E02D27/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176219
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】増子 寛
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046AA12
(57)【要約】
【課題】基礎を鉄筋コンクリート製の直接基礎とした場合における直接基礎と基礎梁との接合部の構造を提供すること。
【解決手段】鉄筋コンクリート製の直接基礎と基礎梁との接合部の構造10は、直接基礎12の内部に配置され上下方向へ伸びる第1の筒状体34と、基礎梁に接合され上下方向へ伸びる第2の筒状体36と、第1及び第2の両筒状体の内部に充填されたコンクリート38とを含む。第2の筒状体は第1の筒状体の内部に位置する下端部37を有し、下端部は第1の筒状体から間隔をおいて取り囲まれている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート製の直接基礎と基礎梁との接合部の構造であって、
前記直接基礎の内部に配置され上下方向へ伸びる第1の筒状体と、
前記基礎梁に接合され上下方向へ伸びる第2の筒状体であって下端部を有し、該下端部が前記第1の筒状体の内部に位置し前記第1の筒状体に該第1の筒状体から間隔をおいて取り囲まれている第2の筒状体と、
第1及び第2の両筒状体の内部に充填されたコンクリートとを含む、直接基礎と基礎梁との接合部の構造。
【請求項2】
前記基礎梁は1つのH形鋼と該1つのH形鋼に接合されこれに直交する2つのH形鋼とからなる十字形のブラケットを有し、前記第2の筒状体は前記ブラケットに接合されている、請求項1に記載の直接基礎と基礎梁との接合部の構造。
【請求項3】
前記第1の筒状体は円形鋼管又は角形鋼管からなる、請求項1又は2に記載の直接基礎と基礎梁との接合部の構造。
【請求項4】
前記直接基礎は地盤上に形成された捨てコンクリート上に形成され、また、前記第1の筒状体は、その周囲に互いに間隔をおいて配置された3以上の仮の支持部材を介して、前記捨てコンクリートからその上方の高さ位置に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の直接基礎と基礎梁との接合部の構造。
【請求項5】
前記第2の筒状体は円形鋼管又は角形鋼管からなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の直接基礎と基礎梁との接合部の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
鉄筋コンクリート製の直接基礎と基礎梁との接合部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、杭と基礎梁との接合部の構造が提案されている。この杭と基礎梁との接合部の構造は、上下方向へそれぞれ伸びる第1の筒状体及び第2の筒状体と、第1及び第2の両筒状体の内部に充填されたコンクリートとを含む。第2の筒状体は杭の頭部の周囲を取り巻き、かつ、第1の筒状体の周囲の全部又は一部を第1の筒状体の上端の下方においてまた第1の筒状体から間隔をおいて取り囲んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-204172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記従来の杭基礎と基礎梁との接合部の構造に鑑み、基礎を鉄筋コンクリート製の直接基礎とした場合における直接基礎と基礎梁との接合部の構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は鉄筋コンクリート製の直接基礎と基礎梁との接合部の構造に係る。前記接合部の構造は前記直接基礎の内部に配置され上下方向へ伸びる第1の筒状体と、前記基礎梁に接合され上下方向へ伸びる第2の筒状体と、第1及び第2の両筒状体の内部に充填されたコンクリートとを含む。前記第2の筒状体は前記第1の筒状体の内部に位置する下端部を有し、前記下端部は前記第1の筒状体から間隔をおいて取り囲まれている。
【0006】
本発明によれば、基礎梁上に設けられる上部構造の垂直荷重を、まず第1の筒状体及び第2の両筒状体の内部に充填されたコンクリートが負担する。次に、これらの周辺の直接基礎が負担する。このことから、前記直接基礎の表面積及びその厚さの双方における大きさをより小さいものとすること、すなわち前記直接基礎の小型化を図ることができる。
【0007】
前記基礎梁は1つのH形鋼と該1つのH形鋼に接合されこれに直交する2つのH形鋼とからなる十字形のブラケットを有し、前記第2の筒状体は前記ブラケットに接合されているものとすることができる。
【0008】
前記直接基礎は地盤上に形成された捨てコンクリート上に形成され、また、前記第1の筒状体は、その周囲に互いに間隔をおいて配置された3以上の仮の支持部材を介して、前記捨てコンクリートからその上方の高さ位置に配置されたものとすることができる。
【0009】
また、前記第1の筒状体及び前記第2の筒状体は、それぞれ、円形鋼管からなるものあるいは角形鋼管からなるものとすることができる。ここに、前記第1の筒状体については、応力集中回避の観点から、これを円形鋼管からなるものとする選択が可能である。また、前記第2の筒状体については、上部構造の1階床スラブ(デッキスラブ)の施工性の観点から、これを角形鋼管からなるものとする選択が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る直接基礎と基礎梁との接合部の構造の概略的な平面図である。
図2図1の線2-2に沿って得た概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び図2を参照すると、比較的良好な地盤E上に形成された捨てコンクリート16上に形成された鉄筋コンクリート製の直接基礎12と、該直接基礎の上方に設置された基礎梁14との接合部の構造が全体に符号10で示されている。
【0012】
図示の直接基礎12は全体に矩形の平面形状を有する板状体からなり、コンクリート18と、該コンクリート中に上下方向に互いに間隔をおいて、また、格子状に配置され、後記第1の筒状体34の周囲を取り巻く複数の上筋20及び第1の筒状体34の下方の高さ位置に配置された複数の下筋22とを有する。直接基礎12は、好ましくは、さらに、第1の筒状体34の上端部の周囲にこれを取り囲むように配置された複数の開口補強筋32を含む。
【0013】
基礎梁14は、互いに接合された一のH形鋼24及びこれに直交する一対のH形鋼26からなるブラケット14Aと、ブラケット14Aに継ぎ足された複数の他のH形鋼(図示せず)とからなる。基礎梁14は、ブラケット14Aを構成するH形鋼24、26の相互接合箇所において、その上に上部構造、図示の例にあっては建物の柱30を支持する。
【0014】
直接基礎12と基礎梁14との接合部の構造10は、それぞれが上下方向へ伸びる鋼製の第1の筒状体34及び鋼製の第2の筒状体36と、これらの両筒状体34、36の内部に充填されたコンクリート38とを含む。ここに、両筒状体34、36の内部のコンクリート38と、直接基礎12を構成するコンクリート18とは、接合部の構造10を形成するために同時に又は二度に分けて打設されたコンクリートからなる。
【0015】
図示の例において、第1及び第2の両筒状体34、36は、それぞれ、大径及び小径の円形鋼管からなる。より詳細には、両円形鋼管は同一の厚さ寸法を有し、第1の筒状体34を構成する円形鋼管が、第2の筒状体36を構成する円形鋼管の内径及び外径より大きい内径及び外径を有する。第1及び第2の両筒状体34、36は、図示の例に代えて、角形鋼管からなるものとすることができる。但し、第1の筒状体34については、応力集中回避の観点から、図示の例におけるように、これを円形鋼管からなるものとすることが望ましい。また、第2の筒状体36については、前記上部構造の1階床スラブ(デッキスラブ)40の施工性の観点から、これを、図示の例に代えて、角形鋼管からなるものとすることが可能である。
【0016】
第1の筒状体34は直接基礎12の内部に配置されている。図示の例において、第1の筒状体34は、平面で見て、直接基礎12のほぼ中央部に位置する。また、図示の例において、第1の筒状体34は、その周囲に互いに間隔をおいて配置された3以上の仮の支持部材42を介して、捨てコンクリート16からその上方の高さ位置に配置され、その上端面34aが直接基礎12の平坦な頂面12a上に位置する。図示の仮の各支持部材42はL形の鋼片からなり、その一端部42aにおいて第1の筒状体34の外周面34bに溶接によりあるいはこれに代えてボルト及びナット(図示せず)を介して固定され、その他端部42bにおいてボルト及びナット44を介してあるいは溶接により捨てコンクリート16に固定されている。仮の各支持部材42は直接基礎12のコンクリート18中に埋め殺しにされている。
【0017】
他方、図示の第2の筒状体36は、ブラケット14Aに溶接により接合された、円筒状に組み立てられた4つの円弧状に湾曲した4つの板部材36a及び円筒状に組み立てられた4つの円弧状に湾曲した4つの板部材36bからなる。4つの円弧状の板部材36aはそれぞれブラケット14Aを構成する1つのH形鋼24及び2つのH形鋼26間に位置する。また、4つの板部材36bは4つの板部材36aの直下に位置する。
【0018】
より詳細には、各板部材36aは約1/4円の円弧形の断面形状を有し、H形鋼24の上下両フランジ24a、24b及びH形鋼26の上下両フランジ(但し、図1に上フランジ26aのみを示す。)間を上下方向へ伸びている。各板部材36aはその周方向に互いに隣接する1つのH形鋼24及び各H形鋼26間に約1/4の部分円筒空間46を規定する。合わせて4つの部分円筒空間46はほぼ1つの円筒空間に相当する円筒空間を規定する。
【0019】
4つの板部材36aの直下に位置する4つの板部材36bは4つの部分円筒空間46に連通する1つの円筒空間48(図2)を規定する。4つの板部材36bはブラケット14Aを構成する1つのH形鋼24の下フランジ24b及び2つのH形鋼26の下フランジ(図示せず)に溶接され、これらの下フランジから直接基礎12の平坦な頂面12aに向けて下方へ伸び、その一部37が直接基礎12の平坦な頂面12aを経て第1の円筒部材34の内部へと伸びている。第2の筒状体36の一部37は第2の筒状体36の下端部をなし、第1の筒状体34に該第1の筒状体から間隔をおいて取り囲まれている。図示の例において、第2の筒状体36の一部37は、第1の筒状体34の上端部に対して等間隔をおいて当該上端部と重なり合っている。第2の筒状体36の一部37と第1の筒状体34との重なり合いの長さ(上下方向長さ)は任意に定めることができる。また、図示の例では、第1の筒状部材34の軸線と第2の筒状体36の軸線とが鉛直方向へ伸びる一つの直線L上を伸びている。図示の例に代えて、第1の筒状部材34の軸線と円筒部材36の軸線とがそれぞれ互いに平行な二つの直線(図示せず)上を伸びるものとすることが可能である。
【0020】
基礎梁14のブラケット14Aと第2の筒状体36とは、予め工場で製造され、前記建物の構築現場に搬入されるものとすることができる。
【0021】
第1の筒状体34内に充填され、第2の筒状体36が規定する4つの部分円筒空間46及び円筒空間48を満たすコンクリート38は、H形鋼24、26の上フランジ24a、26aの表面又は1階床スラブ(デッキスラブ)40の表面と同一レベルに位置する平坦面を規定する。
【0022】
これによれば、第1の筒状体34と第2の筒状体36とがコンクリート38を介して一体にされ、ブラケット14Aと第1及び第2の両筒状体34、36とがコンクリート38を介して一体にされ、また、第1及び第2の両筒状体34、36と直接基礎12とがコンクリート18、38を介して一体にされている。これにより、直接基礎12と基礎梁14とが接合部の構造10を介して相互に接合されている。
【0023】
図示の例において、第2の筒状体36及びその内部を満たすコンクリート38からなる複合体(第1の複合体)は、第2の筒状体36の一部37の周囲を取り巻く第1の筒状体34と、第1及び第2の両筒状体34、36間の環状の断面形状を有する空間を満たすコンクリート38の一部とからなる複合体(第2の複合体)により補強され、前記第1の複合体のせん断抵抗力の増大が図られている。これによれば、前記第1の複合体にせん断外力が作用するとき、前記せん断外力は、前記第1の複合体と一体をなす前記第2の複合体に伝達される。より詳細には、前記第1の複合体を構成する第2の筒状体36から前記第2の複合体を構成するコンクリート38の一部及び第1の筒状体34に順次に伝達される。このことから、第2の筒状体36内へのせん断抵抗力の増大を図るために必要とされるせん断力伝達部材の設置を不要とすることができる。
【0024】
第2の筒状体36は、図示の例に代えて、1つの円筒部材からなるものとすることができる。この場合には、第2の筒状体36を構成する前記1つの円筒部材にその上端に開放する4つの凹所(図示せず)が設けられる。これらの4つの凹所は、ブラケット14Aを構成する1つのH形鋼24の一部及び2つのH形鋼26の一部を受け入れまたこれらの挿通を許す。また、同様に、第2の筒状体36を構成する前記1つの円筒部材と、これに設けられた各凹所に受け入れられたH形鋼24、26の前記一部、より詳細にはこれらのウエブの一部との間に存する隙間を適当な鋼製の板部材(図示せず)で一時的に塞ぎ、これにより、充填されるコンクリート38の打設時における漏れを防ぐことができる。あるいは、また、第2の筒状体36を構成する前記円筒部材の周面に90度の角度的間隔をおいて、基礎梁のブラケットを構成する4つのH形鋼(図示せず)を接合することができる。
【0025】
この接合部の構造10にあっては、基礎梁14上に設けられる上部構造の垂直荷重を、まず第1の筒状体34及び第2の両筒状体36の内部に充填されたコンクリート38が負担し、次にこれらの筒状体34、36の周辺の直接基礎12が負担する。このことから、直接基礎12の表面積及びその厚さの双方における大きさをより小さいものとすること、すなわち直接基礎12の小型化を図ることができる。また、前記垂直荷が第1及び第2の筒状体34、36とコンクリート38とにより負担されることから、前記垂直荷重に起因して直接基礎12中の下筋22に生じる引張力の大きさが低減される。このため、配置すべき下筋22の量である鉄筋量(下筋22の本数、下筋22の長さ及び下筋22の断面積の大きさ)の低減が可能である。
【符号の説明】
【0026】
10 接合部の構造
12 直接基礎
14 基礎梁
14A 基礎梁を構成するブラケット
18 コンクリート
24 1つのH形鋼
26 2つのH形鋼
30 柱
34 第1の筒状体
36 第2の筒状体
36a 円弧状の板部材
37 第2の筒状体の下端部
38 コンクリート
図1
図2