(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066331
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】樹脂製蓋体を有する防爆容器及び樹脂製蓋体を有する防爆容器を使用した無線通信機器
(51)【国際特許分類】
F16J 12/00 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
F16J12/00 C
F16J12/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021189715
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】592150147
【氏名又は名称】株式会社中村電機製作所
(72)【発明者】
【氏名】蒲原 健
【テーマコード(参考)】
3J046
【Fターム(参考)】
3J046AA09
3J046AA14
3J046BA05
3J046BB01
3J046BC05
3J046CA01
3J046CA04
3J046CA10
3J046DA10
(57)【要約】
【課題】金属製の防爆容器は、内部に無線通信機器を収納した場合、無線通信が減衰するため、樹脂製の蓋を有する防爆容器に無線通信機器を収納し提供する。
【解決手段】防爆容器100は、金属容器本体22及び蓋体20及び蓋体20の全面を被覆するガラス保護膜2からなり、蓋体20をポリカーボネート材1にすることで、無線通信の減衰を防ぎ、防爆容器100に無線通信機器を収納する。金属容器本体22と蓋体20とを螺子部24にて結合することで、強固に接合することができる。金属容器本体22と蓋体20との周縁にフランジ部23があり、防爆容器100で発生する内部圧力確実に耐えることができる。
また、蓋体20前面に被覆したガラス保護膜2により、ポリカーボネート材1を芳香族から保護することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
爆発性雰囲気から着火源を隔離する防爆容器において、金属からなり、電気部品を内部に収納する金属容器本体とポリカーボネート材からなる前記容器本体を閉塞する蓋体とを備えることを特徴とする防爆容器。
【請求項2】
前記金属容器本体の金属及び前記蓋体のポリカーボネート材が、容器内部の爆発圧力に耐える強度を有し、耐圧防爆構造であることを特徴とする請求項1に記載の防爆容器。
【請求項3】
前記金属容器本体の金属及び前記蓋体のポリカーボネート材は、螺子部による接合を特徴とする請求項1または請求項2に記載の防爆容器。
【請求項4】
前記金属容器本体と前記蓋体のポリカーボネート材の、本体周縁にフランジ部を有することを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の防爆容器。
【請求項5】
前記蓋体において、ポリカーボネート材が有色又は透明性を有し、ポリカーボネート材に着色された不透明な領域を有する防爆容器であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の防爆容器。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれかに記載の防爆容器に、無線通信機能を有するセンサを収納することを特徴とする無線通信機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材を有する防爆容器を使用した無線通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の防爆容器は特許文献1及び非特許文献1にも開示されていた、主に金属部材により形成され、堅牢な構造を有していた。そのため、無線通信機能を有する機器を内蔵する場合、金属容器により無線通信が減衰するため、金属製防爆容器は、無線通信機能を有する機器には適用することができなかった。
【0003】
また、通常のプラスチック材は爆発圧力に耐える強度を有しておらず、耐圧防爆構造として不向きであった。
【0004】
また、通常の樹脂材よりも強度を有する、エンジニアリングプラスチックとして、ポリカーボネート材があるが、通常ポリカーボネート材は芳香族に脆弱性があり、爆発性雰囲気下においての使用は適していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
【非特許文献1】株式会社中村電機製作所ホームページ/耐圧防爆形接続箱NXシリーズ(水素防爆対応)[令和3年10月21日検索]インターネット<URL:http://www.ex-nakamura.co.jp/seihin/seihin_118.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、防爆性能を有すると共に無線通信の減衰を防ぐことができ、無線通信機能を有するセンサの無線通信を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の防爆容器は、金属及びポリカーボネート材及び当該ポリカーボネート材の全面を被覆するガラス保護膜からなり、無線通信を行う電気部品を内部に収納する金属容器本体と、ポリカーボネート材及び当該ポリカーボネート材の全面を被覆するガラス保護膜からなり、金属容器本体を閉塞する蓋体とを備えるものである。
<1>爆発性雰囲気から着火源を隔離する防爆容器において、金属からなり、電気部品を内部に収納する金属容器本体とポリカーボネート材からなる前記容器本体を閉塞する蓋体とを備えることを特徴とする防爆容器。
<2>前記金属容器本体の金属及び蓋体のポリカーボネート材が、容器内部の爆発圧力に耐える強度を有し、耐圧防爆構造であることを特徴とする<1>に記載の防爆容器。
【発明の効果】
【0008】
本発明の防爆容器は、雌螺子部を保有する金属容器本体と雄螺子部を保有する蓋体で構成されており、螺子構造により強固に接合しており、開閉時の取扱性に優れるという効果を奏する。
<3>前記金属容器本体の金属及び蓋体のポリカーボネート材は、螺子部による接合を特徴とする<1>または<2>に記載の防爆容器。
【0009】
本発明の防爆容器は、金属容器本体とポリカーボネート蓋体の周縁にフランジ部が構成されており、フランジ部は、防爆容器内部で発生する内部圧力により、金属容器本体とポリカーボネート蓋体の膨張を防ぐ効果を奏する。
<4>前記金属容器本体とポリカーボネート蓋体の、本体周縁にフランジ部を有することを特徴とする<1>~<3>のいずれかに記載の防爆容器。
【0010】
本発明の防爆容器は、ポリカーボネート材を使用する事で、電波の減衰を軽減することが確保できる。ポリカーボネート材全面にガラス保護膜を被覆することで、芳香族からの保護を確保でき、且つ軽量で取扱性に優れるという効果を奏する。
<5>前記蓋体において、ポリカーボネート材が有色又は透明性を有し、ポリカーボネート材に着色された不透明な領域を有する防爆容器でることを特徴とする<1>~<4>のいずれかに記載の防爆容器。
【0011】
本発明の防爆容器は、ポリカーボネート材を使用する事で、電波の減衰を軽減することが出来るため、無線通信機能を有するセンサを収納し、無線通信機器としての効果を奏する。
<6><1>~<5>のいずれかに記載の防爆容器に、無線通信機能を有するセンサを収納することを特徴とする無線通信機器。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る防爆容器の概略構成を示す写真である。
【
図2】本発明の実施形態に係る防爆容器の側面図である。
【
図3】
図2に示す防爆容器の矢視A-A’線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び
図2において、防爆容器100は、耐圧防爆構造としての一例であり、爆発性雰囲気から着火源を隔離する防爆容器において、金属からなり、電気部品を内部に収納する金属容器本体とポリカーボネート材からなる前記容器本体を閉塞する蓋体とを備えることを特徴とする防爆容器であり、電気部品を内部に収納する金属容器本体22と、容器内部の爆発圧力に耐える強度を有するポリカーボネート材1及びポリカーボネート材1の全面(外表面、内表面、螺子部)を被覆するガラス保護膜2からなり、金属容器本体22を閉塞する蓋体20を備える。金属容器本体22を閉塞する蓋体20とを互いに螺子部24で接合された状態で固定されており、爆発性雰囲気から着火源を隔離する耐圧防爆構造の全閉容器とされる。
【0014】
蓋体20のガラス保護膜2は、蓋体20のポリカーボネート材2に対して、アルコキシシラン等を用いたゾル・ゲル法や、蒸着法、PVD(Physical Vapor Deposition:物理気相成長)法又はCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法等の真空装置を併用した方法や、ガラス前躯体であるシラザン化合物を塗布する方法等で形成される。
【0015】
なお、本実施形態に係る防爆容器100は、シラザン化合物を塗布する方法により、ポリカーボネート材1の全面をガラス保護膜2(シリカ膜)で被覆した。
【0016】
また、本実施形態に係るシラザン化合物は、完全無機のガラス保護膜2(シリカ膜)が形成できるために、パーヒドロポリシラザンを用いているが、パーヒドロポリシラザンの水素の一部又は全部をアルキル基等の有機成分で置換したオルガノポリシラザンを用いてもよい。またシラザン化合物は、パーヒドロポリシラザン又はオルガノポリシラザンの単一の組成でもよいし、これらを混合して用いてもよい。
【0017】
また、シラザン化合物を溶解又は分散させる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジブチルエーテル、ソルベッソ又はデカリン等を用いることができ、これらを単独又は混合して用いることができる。
【0018】
また、ポリカーボネート材1に塗布されたシラザン化合物の塗布は、簡易且つ低コストで処理することができるために、湿式法で行うことが好ましく、例えば、刷毛を用いて手作業で塗布してもよいし、スプレーコート法、バーコード法又はディプコート法等を用いた塗布装置により塗布してもよい。
【0019】
また、ポリカーボネート材1に塗布されたシラザン化合物のシリカ転化手法は、特に限定されるものではなく、大気放置、加熱処理、加湿処理、プラズマ処理、紫外線処理又は酸塩基性蒸気への暴露等の手法を用いることができる。
【0020】
なお、シラザン化合物は、ポリカーボネート材1にそのまま塗布してもよいが、ポリカーボネート材1を侵すことのない有機溶剤で脱脂洗浄した後に塗布することが好ましく、有機溶剤による洗浄後に、プラズマ処理又は紫外線処理等による洗浄を施してから、塗布することがより好ましい。このように、溶剤洗浄、プラズマ処理又は紫外線処理を施すことで、ポリカーボネート材1とシラザン化合物の濡れ性が向上し、良好な密着性を得ることができる。
【0021】
また、シラザン化合物によるガラス保護膜2(シリカ膜)は、ポリカーボネート材1上に直接形成してもよいし、密着性向上や寸法安定性のために、単層又は複数層の中間層を介して形成してもよい。なお、中間層としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、酢酸ビニル樹脂、アミノ系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ビニルアルコール樹脂、スチレン系樹脂若しくはメラミン樹脂又はこれらの混合物若しくは共重合体等の高分子化合物等が挙げられる。また、中間層としては、ビニル官能性シラン、アクリル官能性シラン、エポキシ官能性シラン又はアミノ官能性シラン等のシランカップリング剤による層を用いてもよい。
【0022】
蓋体20は、螺子部24を保有しており、金属容器本体22と締め付けることにより、固定される。
【0023】
また、金属容器本体22と蓋体本体21の周縁にはフランジ部23を有している。フランジ部23には緩み止め用の小型螺子25があり、金属容器本体22と蓋体20とを締め付けることにより、より強固に固定される。
【0024】
また、フランジ部23は、容器内部で発生する内部圧力により、蓋体本体21の膨張を防ぐことができる。
【0025】
本実施形態に係る金属容器本体22及び蓋体20のポリカーボネート材1は、軽量で、耐衝撃性及び耐熱・耐低温性に優れ、環境の変化に対して成形品の精度が安定している。
【0026】
また、ポリカーボネート材1は、着色された素材を使用しているが、透明を使用することも可能である。
【0027】
特に、蓋体20のポリカーボネート材1が透明の場合、ガラス保護膜2及びポリカーボネート材1は透明性を有するため、防爆容器100の内部を視認できることになる。
【0028】
以上のように、本実施形態に係る防爆容器100は、外装容器をなすポリカーボネート製の容器本体21並びに蓋体20の全面(外表面、内表面、螺子部)にガラス保護膜2を形成したガラスコーティングを施すことにより、IEC(International Electro technical Commission)規格
「IEC60079-0」における「7.4 Electrostatic Charges on external non-metallic materials」の「7.4.1 Applicability」(特に、「NOTE 2」に記載の適用除外)に準拠するものとなる。このため、本実施形態に係る防爆容器100は、帯電試験を含む所定の静電気対策が不要となり、ポリカーボネート材1を防爆容器100として使用する場合の制約を排除することができ、取扱性に優れるものである。
【0029】
特に、ポリカーボネート材1は、芳香族化合物に侵され易く、有機溶剤を使用する危険場所では使用することができなかった。これに対して、本実施形態に係る防爆容器100はポリカーボネート材1の全面にガラス保護膜2で被覆することにより、ポリカーボネート材1が外気(発生ガス)に触れることなく、ポリカーボネート材1を危険場所でも使用することが可能になり、金属容器と比較して大幅な軽量化が実現することができる作用効果を奏する。
【0030】
本実施形態に係る防爆容器100に収納する機器として、無線通信を有するセンサ機器を収納する。
【0031】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 ポリカーボネート材
2 ガラス保護膜
11 機器内蔵部
20 蓋体
21 蓋体本体
22 金属容器本体
23 フランジ部
24 螺子部
25 小型螺子部
100 防爆容器