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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066628
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】弾性波装置及び通信装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/64 20060101AFI20230509BHJP
   H03H 9/72 20060101ALI20230509BHJP
   H03H 7/01 20060101ALI20230509BHJP
   H03H 9/54 20060101ALI20230509BHJP
   H03H 9/70 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
H03H9/64 Z
H03H9/72
H03H7/01 A
H03H9/54 Z
H03H9/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177316
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】奥道 武宏
【テーマコード(参考)】
5J024
5J097
5J108
【Fターム(参考)】
5J024AA01
5J024BA11
5J024CA02
5J024DA01
5J024DA25
5J024EA01
5J024EA02
5J024KA02
5J097AA13
5J097BB15
5J097BB17
5J097KK03
5J097KK04
5J097KK10
5J108AA07
5J108BB08
5J108EE03
5J108GG05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フィルタ特性を向上させる弾性波装置及び当該弾性波装置を含む通信装置を提供する。
【解決手段】弾性波装置は、複合フィルタ1Aを有する。複合フィルタ1Aは、LCフィルタ7Aと、LCフィルタ7Aに接続されている弾性波共振子群9Aと、を有する。LCフィルタ7Aは、複合フィルタ1Aの通過帯域の外側に減衰極を有する。弾性波共振子群9Aは、信号経路5の一部を構成している1以上の直列共振子15Sを有する。1以上の直列共振子15Sは、通過帯域に対して減衰極の側に位置する反共振周波数を有する。1以上の直列共振子15Sのうち、反共振周波数が最も通過帯域に近い第1直列共振子15S-1の反共振周波数は、減衰極と通過帯域との間に位置している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号経路を流れる信号をフィルタリングする複合フィルタを有し、
前記複合フィルタは、
当該複合フィルタの通過帯域の外側に減衰極を有しているLCフィルタと、
前記LCフィルタに接続されている弾性波共振子群と、を有し、
前記弾性波共振子群は、前記信号経路の一部を構成している1以上の直列共振子を含み、
前記1以上の直列共振子それぞれは、前記通過帯域に対して前記減衰極の側に位置する反共振周波数を有しており、
前記1以上の直列共振子のうち、反共振周波数が最も前記通過帯域に近い第1直列共振子の反共振周波数は、前記減衰極と前記通過帯域との間に位置している
弾性波装置。
【請求項2】
信号経路を流れる信号をフィルタリングする複合フィルタを有し、
前記複合フィルタは、
当該複合フィルタの通過帯域の外側に減衰極を有しているLCフィルタと、
前記LCフィルタに接続されている弾性波共振子群と、を有し、
前記弾性波共振子群は、前記信号経路と基準電位部とを接続している1以上の並列共振子を含み、
前記1以上の並列共振子それぞれは、前記通過帯域に対して前記減衰極の側に位置する共振周波数を有しており、
前記1以上の並列共振子のうち、共振周波数が最も前記通過帯域に近い第1並列共振子の共振周波数は、前記減衰極と前記通過帯域との間に位置している
弾性波装置。
【請求項3】
前記1以上の直列共振子において、反共振周波数は、共振周波数に対して前記通過帯域の側に位置しており、
前記1以上の直列共振子のいずれの共振周波数及び反共振周波数も、前記通過帯域の外側に位置している
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項4】
前記1以上の並列共振子において、共振周波数は、反共振周波数に対して前記通過帯域の側に位置しており、
前記1以上の並列共振子のいずれの共振周波数及び反共振周波数も、前記通過帯域の外側に位置している
請求項2に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記第1直列共振子における共振周波数と反共振周波数との周波数差は、前記1以上の直列共振子における共振周波数と反共振周波数との周波数差の平均値より小さい
請求項1又は3に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記第1直列共振子における共振周波数と反共振周波数との周波数差は、前記1以上の直列共振子における共振周波数と反共振周波数との周波数差の中で最も小さい
請求項5に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記1以上の直列共振子が含む、前記第1直列共振子以外の直列共振子の共振周波数及び反共振周波数と、前記第1直列共振子の共振周波数とは、前記減衰極に対して前記通過帯域とは反対側に位置している
請求項3に記載の弾性波装置。
【請求項8】
前記第1直列共振子は、
第1励振電極と、
前記第1励振電極に、直列又は並列に接続したキャパシタンスと、を有し、
前記第1直列共振子における共振周波数と反共振周波数との周波数差は、前記第1励振電極における共振周波数と反共振周波数との周波数差より小さい
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項9】
前記1以上の直列共振子は、前記第1直列共振子に直列接続されている第2直列共振子を含み、
前記第2直列共振子は、
第2励振電極と、
前記第2励振電極に、直列又は並列に接続されているインダクタと、を有し、
前記第2直列共振子における共振周波数と反共振周波数との周波数差は、前記第2励振電極における共振周波数と反共振周波数との周波数差より大きい
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項10】
前記第1直列共振子における反共振周波数のQ値が、前記1以上の直列共振子における反共振周波数のQの平均値より大きい
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項11】
前記第1直列共振子の静電容量が、前記1以上の直列共振子における静電容量の平均値より小さい
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項12】
前記LCフィルタは、
LTCC基板と、
前記LTCC基板に形成されているインダクタと、
前記LTCC基板に形成されているキャパシタと、を有する
請求項1~11のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項13】
前記LCフィルタは、
IPD基板と、
前記IPD基板に形成されているインダクタと、
前記IPD基板に形成されているキャパシタと、を有する、
請求項1~11のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項14】
前記LCフィルタは、
有機多層基板と、
有機多層基板に形成されているインダクタ、及びチップインダクタの少なくとも一方と、
有機多層基板に形成されているキャパシタ、及びチップキャパシタの少なくとも一方と、を有する、
請求項1~11のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項15】
前記複合フィルタを含むマルチプレクサを有している
請求項1~14のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の弾性波装置と、
前記複合フィルタに対して入力側及び出力側の一方に電気的に接続されているアンテナと、
前記複合フィルタに対して入力側及び出力側の他方に電気的に接続されている集積回路素子と、
を有している通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弾性波装置、及び当該弾性波装置を含む通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LCフィルタと、弾性波共振子とを含む複合フィルタが知られている(例えば下記特許文献1)。LCフィルタは、インダクタ(L)と、キャパシタ(C)とを含む。弾性波は、例えば、SAW(Surface Acoustic Wave)、BAW(Bulk Acoustic Wave)、板波又は弾性境界波である。なお、これらの種々の弾性波は、必ずしも明瞭に区別可能でなくてよい。
【0003】
特許文献1では、通過帯域内の周波数を有する信号が流れるべき信号経路内に位置し、互いに直列接続されている複数の第1弾性波共振子を有する複合フィルタが開示されている。この複合フィルタにおいて、インダクタ及びキャパシタは、隣り合う第1弾性波共振子の間のノードと、基準電位部とを接続している。複数の第1弾性波共振子は、通過帯域に対して低周波数側に隣接する複数の減衰極を構成する。インダクタ及びキャパシタは、上記複数の減衰極よりも低周波数側の減衰特性を設定する。
【0004】
また、特許文献1では、通過帯域内の周波数を有する信号が流れるべき信号経路内の複数のノードと、基準電位部とを接続する複数の第2弾性波共振子を有する複合フィルタも開示されている。この複合フィルタにおいて、インダクタ及びキャパシタは、上記の信号経路内において、上記の複数のノードの間に位置している。複数の第2弾性波共振子は、通過帯域に対して高周波数側に隣接する複数の減衰極を構成する。インダクタ及びキャパシタは、上記複数の減衰極よりも高周波数側の減衰特性を設定する。
【0005】
上記の他、特許文献1では、LC共振回路のキャパシタに代えて弾性波共振子を設け、通過帯域に隣接する減衰極を構成するフィルタなども開示されている。
【0006】
なお、特許文献1では、LCフィルタの減衰極の周波数について開示されていない。ひいては、LCフィルタの減衰極と、弾性波共振子の共振周波数又は反共振周波数との関係は不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2016/013659号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フィルタ特性を向上させることができる弾性波装置及び通信装置が待たれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る弾性波装置は、信号経路を流れる信号をフィルタリングする複合フィルタを有し、前記複合フィルタは、当該複合フィルタの通過帯域の外側に減衰極を有しているLCフィルタと、前記LCフィルタに接続されている弾性波共振子群と、を有し、前記弾性波共振子群は、前記信号経路の一部を構成している1以上の直列共振子を含み、前記1以上の直列共振子それぞれは、前記通過帯域に対して前記減衰極の側に位置する反共振周波数を有しており、前記1以上の直列共振子のうち、反共振周波数が最も前記通過帯域に近い第1直列共振子の反共振周波数は、前記減衰極と前記通過帯域との間に位置している。
【0010】
本開示の一態様に係る弾性波装置は、信号経路を流れる信号をフィルタリングする複合フィルタを有し、前記複合フィルタは、当該複合フィルタの通過帯域の外側に減衰極を有しているLCフィルタと、前記LCフィルタに接続されている弾性波共振子群と、を有し、前記弾性波共振子群は、前記信号経路と基準電位部とを接続している1以上の並列共振子を含み、前記1以上の並列共振子それぞれは、前記通過帯域に対して前記減衰極の側に位置する共振周波数を有しており、前記1以上の並列共振子のうち、共振周波数が最も前記通過帯域に近い第1並列共振子の共振周波数は、前記減衰極と前記通過帯域との間に位置している。
【0011】
本開示の一態様に係る通信装置は、上記弾性波装置と、前記複合フィルタに対して入力側及び出力側の一方に電気的に接続されているアンテナと、前記複合フィルタに対して入力側及び出力側の他方に電気的に接続されている集積回路素子と、を有している。
【発明の効果】
【0012】
上記の構成によれば、フィルタ特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(a)は第1実施形態に係る複合フィルタの構成を模式的に示すブロック図であり、図1(b)は図1(a)の複合フィルタの特性を説明するための図である。
図2】第1実施形態に係る複合フィルタの構成の具体例を示す回路図である。
図3図3(a)及び図3(b)は図2に示す複合フィルタの透過特性を示す図である。
図4図4(a)及び図4(b)は図2に示す複合フィルタが有する第1直列共振子の特性を説明するための図である。
図5】第1直列共振子における周波数差Δf及びQ値の変化に対するインピーダンスの位相の変化を示す図である。
図6図5とは第1直列共振子の容量の条件が異なる場合の図5と同様の図である。
図7図5及び図6とは第1直列共振子の容量の条件が異なる場合の図5と同様の図である。
図8図8(a)及び図8(b)は複合フィルタの構造の第1例及び第2例を示す模式的な断面図である。
図9】複合フィルタが含む弾性波共振子の構成例を模式的に示す平面図である。
図10】第2実施形態に係る複合フィルタの特性を示す図である。
図11図11(a)は第3実施形態に係る複合フィルタの構成を模式的に示すブロック図であり、図11(b)は図11(a)の複合フィルタの特性を説明するための図である。
図12】第4実施形態に係る複合フィルタの特性を示す図である。
図13】第1変形例に係る複合フィルタの特性を示す図である。
図14】第2変形例に係る複合フィルタの特性を示す図である。
図15図15(a)、図15(b)、図15(c)及び図15(d)は弾性波共振子の構成に係る変形例を示す模式図である。
図16】複合フィルタの利用例としてのダイプレクサの構成を示す回路図である。
図17図17(a)及び図17(b)は図16のダイプレクサが含む第2フィルタの透過特性を示す図である。
図18】実施形態に係る通信装置の要部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示に係る複数の実施形態について説明する。第1実施形態の説明の後においては、基本的に、先に説明された実施形態との相違部分についてのみ述べる。特に言及が無い事項については、先に説明された実施形態と同様とされたり、先に説明された実施形態から類推されたりしてよい。また、先に説明された実施形態の構成と対応する構成については、相違点があっても同一の符号を用いることがある。
【0015】
<第1実施形態>
(複合フィルタの概要)
図1(a)は、実施形態に係る複合フィルタ1(弾性波装置の一例)の構成を模式的に示すブロック図である。
【0016】
複合フィルタ1は、例えば、入力端子3Aから出力端子3Bまでの信号経路5を流れる電気信号をフィルタリングする。フィルタリングのために、複合フィルタ1は、信号経路5に沿って、LCフィルタ7と、弾性波共振子群9(以下、単に「共振子群9」ということがある。)とを有している。
【0017】
LCフィルタ7は、1以上のインダクタ11と、1以上のキャパシタ13とを有している。図1(a)では、LCフィルタ7として、信号経路5と基準電位部17とを接続する直列共振回路が例示されている。共振子群9は、1以上の弾性波共振子15を有している。本実施形態では、1以上の弾性波共振子15は、入力端子3Aと出力端子3Bとを接続している(換言すれば信号経路5の一部を構成している)直列共振子15Sを有している。なお、直列共振子15Sとは異なる弾性波共振子15の例としては、信号経路5と基準電位部17とを接続する並列共振子15P(後述する第3実施形態に係る図11(a)を参照)が挙げられる。
【0018】
図1(b)は、複合フィルタ1のフィルタ特性を説明するための図である。
【0019】
この図において、横軸f(Hz)は周波数を示しており、紙面右側ほど周波数が高い。左側の縦軸A(dB)は減衰量を示しており、紙面下側ほど減衰量が大きい。右側の縦軸|Z|(Ω)は、インピーダンスの絶対値を示しており、紙面上側ほど|Z|が大きい対数軸である。
【0020】
線LXは、複合フィルタ1の減衰量を示している。複合フィルタ1は、通過帯域XBにおいて減衰量が小さくなっている。また、通過帯域XBに対して低周波数側に隣接する阻止帯域EBにおいて減衰量が大きくなっている。なお、両者の間の周波数帯を遷移帯域(符号省略)ということがある。
【0021】
線LNは、LCフィルタ7の直列共振回路における信号経路5と基準電位部17との間の|Z|を示している。この|Z|は、通過帯域XBよりも低周波数側(例えば阻止帯域EB内)に位置する共振周波数fnrにおいて極小値となっている。従って、信号経路5を流れる信号のうち、共振周波数fnr及びその周囲の周波数を有する成分は、基準電位部17へ逃げやすい。すなわち、LCフィルタ7は、信号経路5を流れる信号のうち、共振周波数fnr(及びその周囲の周波数)を有する成分を減衰させる減衰極を形成する。
【0022】
なお、この減衰極は、LCフィルタ7のフィルタ特性に現れればよく、必ずしも複合フィルタ1の特性(線LX)に現れなくてもよい。また、以下では、便宜上、LCフィルタ7の減衰極の周波数として、上記の共振周波数fnrを参照することがあり、また、減衰極にfnrの符号を付すことがある。
【0023】
線LSは、直列共振子15Sの|Z|を示している。この|Z|は、共振周波数fsrにおいて極小値となるとともに、反共振周波数fsaにおいて極大値となっている。反共振周波数fsaは、例えば、共振周波数fsrよりも高い(逆であってもよい。)。反共振周波数fsaは、通過帯域XBよりも低周波数側(例えば阻止帯域EB内)に位置している。直列共振子15Sは、信号経路5の一部を構成しているから、信号経路5を流れる信号のうち、反共振周波数fsa及びその周囲の周波数を有する成分は減衰する。
【0024】
直列共振子15Sの反共振周波数fsaは、LCフィルタ7の減衰極fnrに対して、通過帯域XB側(本実施形態では高周波数側)に位置している。また、一般に、弾性波共振子15における反共振点(及び共振点)付近の|Z|は、LC共振回路における共振点付近における|Z|に比較して急激に変化する。従って、複合フィルタ1の通過帯域XBの阻止帯域EB側における減衰の傾きは急峻となる。一方で、LCフィルタ7によって、例えば、阻止帯域EBの帯域幅が確保される。
【0025】
以上が第1実施形態に係る複合フィルタ1の概要である。以下では、複合フィルタ1の詳細について、概略、下記の順で説明を行う。
・複合フィルタ1の全体構成(図1(a))
・LCフィルタ7(図1(a))
・弾性波共振子群9(図1(a))
・複合フィルタ1の回路構成の具体例(図2
・複合フィルタ1の回路構成の具体例のフィルタ特性(図3(a)及び図3(b))
・弾性波共振子15のパラメータの設定例(図4図7
・複合フィルタ1の構造の例(図8(a)及び図8(b))
・弾性波共振子15の構成の具体例
・第1実施形態のまとめ
【0026】
(複合フィルタの全体構成)
複合フィルタ1は、既述のように、入力端子3Aに入力された電気信号のうち通過帯域XB内の周波数を有する成分(別の観点では電気信号)を出力端子3Bから出力する。別の観点では、複合フィルタ1は、信号経路5を流れる電気信号のうち通過帯域外(例えば阻止帯域EB)の周波数を有する成分を減衰させる。なお、入力端子3A、出力端子3B及び基準電位部17は、複合フィルタ1の一部と捉えられてもよいし、複合フィルタ1とは別個の部材と捉えられてもよい。基準電位部17は、基準電位が付与される導体である。基準電位としては、代表的には0Vを例示できるが、これに限られない。
【0027】
複合フィルタ1は、通過帯域XB及び阻止帯域EBのいずれに着目して構成されたものであってもよい。また、複合フィルタ1において、通過帯域XB又は阻止帯域EBは、下限の周波数及び上限の周波数の双方が規定されてもよいし、一方のみが規定されてもよい。別の観点では、複合フィルタ1は、例えば、バンドパスフィルタ、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ及び帯域阻止フィルタのいずれと捉えられるものであってもよい。
【0028】
複合フィルタ1は、既述のように、信号経路5に沿ってLCフィルタ7及び共振子群9を有している。LCフィルタ7及び共振子群9の数及び順番は任意である。図1(a)では、入力側から出力側へ順に、1つのLCフィルタ7と、1つの共振子群9とが設けられている。図示の例以外の態様としては、例えば、LCフィルタ7と共振子群9との順番が図示の例とは逆のもの、並びに共振子群9の入力側及び出力側のそれぞれにLCフィルタ7(合計で2つのLCフィルタ7)が設けられるものが挙げられる。
【0029】
実施形態の説明に関して、フィルタ(例えば7)又は共振子群(例えば9)が、信号経路5上に(又は信号経路5に沿って)位置している等という場合において、又はそのような文章表現に沿った態様で模式的なブロック図が示されている場合において、フィルタ又は共振子群のより詳細な構成は、そのような文章表現及び/又は模式的なブロック図に合致していないことがある。例えば、より詳細な構成に着目したときに、フィルタ又は共振子群は、信号経路5の一部を構成している態様(表現どおりの態様。図1(a)の共振子群9を参照。)であってもよいし、信号経路5から不要な信号を基準電位部17に逃がすように信号経路5と基準電位部17との間に接続されている態様(図1(a)のLCフィルタ7を参照)であってもよい。
【0030】
複合フィルタ1は、図示されていない構成要素を備えていてもよい。例えば、複合フィルタ1は、LCフィルタ7及び共振子群9とは別個にフィルタを含んでいてもよいし、抵抗体、インダクタ及び/又はキャパシタ等の素子を含んでいてもよい。また、別の観点では、複合フィルタ1は、他のフィルタと組み合わされて、更に別の複合フィルタを構成してもよい。複合フィルタ1は、フィルタリングを目的とした構成だけでなく、インピーダンス整合等の他の目的を有する構成を含んでいてもよい。上記のように図示されていない構成要素が設けられていてもよいことは、特に断りがない限り、LCフィルタ7内及び共振子群9内においても同様である。
【0031】
流通されている製品等において、通過帯域XB及び阻止帯域EBは、適宜に特定されてよい。例えば、仕様書によって特定されてもよいし、製品のフィルタ特性を計測することによって特定されてもよい。通過帯域XB及び阻止帯域EBに要求される減衰量は、複合フィルタ1が適用される機器等によって異なる。一例として、減衰量の絶対値が5dB以下又は3dB以下の周波数帯が通過帯域XBとして特定されてよい。また、一例として、減衰量の絶対値が30dB以上の周波数帯が阻止帯域EBとして特定されてよい。
【0032】
通過帯域XB及び阻止帯域EBの帯域幅及び中心周波数等の具体的な値は任意である。なお、中心周波数は、帯域の下限の周波数と帯域の上限の周波数との中央の周波数(別の観点では両者の平均値)である。通過帯域XBが下限の周波数及び上限の周波数を有する場合(複合フィルタ1がバンドパスフィルタである場合)の中心周波数の範囲の例を挙げると、500MHz以上30GHz以下である。また、通過帯域XBは、適宜な通信規格に従って設定されてよい。この場合において、通過帯域XBは、規格で定められた1つの帯域にのみ対応していてもよいし、規格で定められた2以上の帯域を含んでいてもよい。
【0033】
(LCフィルタ)
LCフィルタ7は、既述のように、1以上のインダクタ11及び1以上のキャパシタ13(別の観点ではLC共振回路)を含むことによって、複合フィルタ1の通過帯域XBの外側(例えば阻止帯域EB)に1つ以上の減衰極fnrを形成する。LCフィルタ7は、例えば、バンドパスフィルタ、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ及び帯域阻止フィルタのいずれかと捉えられるものであってよい。また、例えば、LCフィルタ7は、周波数に対する|Z|の変化を示す線LNが、周波数に対する減衰量又は透過率の変化を示す線に類似するものであってもよい。上記から理解されるように、LCフィルタ7において、周波数の変化に対する減衰量の変化の態様は、減衰極fnrが形成される限り、適宜なものとされてよい。
【0034】
LCフィルタ7の構成は種々のものとされてよい。例えば、LCフィルタ7において、減衰極fnrを形成する回路は、図1(a)の例のように、信号経路5と基準電位部17との間に位置するLC直列共振回路であってもよいし、図1(a)の例とは異なり、信号経路5の一部を構成するLC並列共振回路であってもよい。また、LCフィルタ7は、減衰極fnrを形成する共振回路とは別に、信号経路5の一部を構成するLC直列共振回路を有していたり、信号経路5と基準電位部17との間に位置するLC並列共振回路を有していたりしてもよい。さらに、LCフィルタ7は、共振回路を構成しないインダクタ11及びキャパシタ13を有していてもよい。インダクタ11のインダクタンス、及びキャパシタ13のキャパシタンス等は、インダクタ11及びキャパシタ13を設ける目的に照らして適宜に設定されてよい。
【0035】
LCフィルタ7は、周波数が互いに異なる複数の減衰極fnrを形成してよい。この場合において、直列共振子15Sの反共振周波数fsaが、複合フィルタ1の通過帯域XBとLCフィルタ7の減衰極fnrとの間に位置するという関係は、任意の減衰極fnrに対して成立してよい。例えば、反共振周波数fsaは、LCフィルタ7が形成する減衰極fnrのうち、最も通過帯域XBに近い減衰極fnrと、通過帯域XBとの間に位置してよい。本実施形態の説明において、複数の減衰極fnrのうちのいずれであるかを特に限定せずに減衰極fnrに言及する場合、矛盾等が生じない限り、当該減衰極fnrは、最も通過帯域XBに近い減衰極fnrであってよい。
【0036】
(弾性波共振子群)
共振子群9は、既述のように、1以上の弾性波共振子15を含み、本実施形態では、1以上の直列共振子15Sを含む。直列共振子15Sは、既述のように、入力端子3A及び出力端子3Bを接続する(換言すれば信号経路5の一部を構成する)ものである。直列共振子15Sの数が複数の場合、複数の直列共振子15Sは互いに直列接続されていてもよいし(後述する図2を参照)、互いに並列接続されていてもよいし、直列接続と並列接続とが組み合わされていてもよい。なお、上記の並列接続は、後述する並列共振子15P(図11(a))の接続態様を指すのではなく、信号経路5の一部を合流及び分岐させるような接続態様(通常の意味での並列接続)を指す。
【0037】
共振子群9が複数の直列共振子15Sを有している場合、複数の反共振周波数fsaは、一部又は全部が互いに同一(公差が存在する場合も含む)であってもよいし、互いに異なっていてもよい。複数の反共振周波数fsaの一部又は全部が互いに同一の場合においては、例えば、反共振周波数fsaにおける減衰量を大きくすることができる。複数の反共振周波数fsaの一部又は全部が互いに異なっている場合においては、例えば、複数の減衰極が形成されることによって、阻止帯域EBを広くすることができる。複数の反共振周波数fsaの一部又は全部が互いに異なる場合における周波数差は適宜に設定されてよい。例えば、最も大きな周波数差は、通過帯域XB及び/又は阻止帯域EBの帯域幅に対して、半分未満であってもよいし、半分以上であってもよい。
【0038】
互いに異なる複数の反共振周波数fsaが存在する場合、少なくとも1つが、LCフィルタ7の減衰極fnrと、複合フィルタ1の通過帯域XBとの間に位置している。これにより、上述した急峻化の作用が多少なりとも奏される。もちろん、全ての反共振周波数fsaが、減衰極fnrと通過帯域XBとの間に位置していてもよいし、5割以上の数の反共振周波数fsaが減衰極fnrと通過帯域XBとの間に位置してもよい。LCフィルタ7の減衰極fnrも複数形成される場合においては、例えば、最も通過帯域XBに近い減衰極fnrと通過帯域XBとの間に、複数の反共振周波数fsaのうち、少なくとも、最も通過帯域XBに近い反共振周波数fsaが位置してよい。本実施形態の説明において、複数の反共振周波数fsaのうちのいずれであるかを特に限定せずに反共振周波数fsaに言及する場合、矛盾等が生じない限り、当該反共振周波数fsaは、最も通過帯域XBに近い反共振周波数fsaであってよい。
【0039】
直列共振子15Sの共振周波数fsr及び反共振周波数fsa、LCフィルタ7の減衰極fnr、並びに通過帯域XB及び阻止帯域EBのより具体的な位置関係は、適宜に設定されてよい。例えば、減衰極fnrと通過帯域XBとの間に位置する反共振周波数fsaは、減衰極fnrと通過帯域XBとのいずれに近くてもよいし、双方の間の中央に位置していてもよい。減衰極fnrと通過帯域XBとの間に位置する反共振周波数fsa(第1の反共振周波数とする)と、減衰極fnrとの周波数差は、上記第1の反共振周波数を有する直列共振子15Sの共振周波数fsrと第1の反共振周波数との周波数差に対して、小さくてもよいし、同等でもよいし(図1(b)の例)、大きくてもよい。また、減衰極fnrと通過帯域XBとの間に位置する反共振周波数fsaを有する直列共振子15Sの共振周波数fsrは、減衰極fnrに対して、通過帯域XB側に位置していてもよいし、一致していていてもよいし(図1(b)の例)、通過帯域XBとは反対側に位置していていてもよい(後述する図13の共振周波数fsr1を参照)。
【0040】
(複合フィルタの回路構成の具体例)
図2は、複合フィルタ1の具体例としての複合フィルタ1Aの構成を示す回路図である。
【0041】
複合フィルタ1Aは、LCフィルタ7の具体例としてのLCフィルタ7Aと、共振子群9の具体例としての共振子群9Aとを有している。既述のように、LCフィルタ7及び共振子群9の信号の流れ方向における配置順は任意であり、図2では、図1(a)とは逆の配置順が例示されている。
【0042】
LCフィルタ7Aは、信号経路5の一部を構成する1以上(図示の例では複数。より詳細には3つ)のキャパシタ13Aと、信号経路5と基準電位部17とを接続する1以上(図示の例では複数。より詳細には2つ)の直列共振回路(符号省略)とを有している。複数のキャパシタ13Aは直列接続されている。直列共振回路は、直列接続されたインダクタ11B及びキャパシタ13Bを有している。なお、インダクタ11B及びキャパシタ13Bの位置関係は、図示とは逆であってもよい。直列共振回路は、例えば、電気的接続に関して互いに隣り合っているキャパシタ13Aの間の位置と基準電位部17とを接続している。このようなLCフィルタ7Aは、例えば、直列共振回路によって減衰極fnrを形成しつつ、減衰極fnrよりも高い周波数の信号を入力端子3Aから出力端子3Bへ通過させるハイパスフィルタとして機能する。
【0043】
複数の直列共振回路の共振周波数fnr(別の観点ではLCフィルタ7Aの減衰極)は適宜に設定されてよい。例えば、複数の直列共振回路の共振周波数fnrは、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。前者の場合においては、減衰極fnrにおける減衰量を大きくすることができる。後者の場合においては、信号が減衰される帯域を広くすることができる。
【0044】
インダクタ11(11B)のインダクタンス、並びにキャパシタ13(13A及び13B)のキャパシタンスは、所望のフィルタ特性が得られるように適宜に設定されてよい。例えば、直列接続又は並列接続されたインダクタのインダクタンスを合成する式、直列接続又は並列接続されたキャパシタのキャパシタンスを合成する式、並びにインダクタンス及びキャパシタンスから共振回路(直列共振回路及び並列共振回路)の共振周波数を算出する式は公知である。従って、例えば、このような式に基づく計算によって、共振周波数fnrが所望の周波数になるインダクタンス及びキャパシタンスの値が探査されてよい。
【0045】
共振周波数fnrが所望の周波数になるインダクタンス及びキャパシタンスの値の組み合わせは、無数に存在する。その無数の組み合わせから、又は探査によって得られた有限個の組み合わせから、いずれかの組み合わせを選択する方法も適宜なものとされてよい。例えば、各組み合わせにおける1以上のインダクタンスのうち最大のインダクタンスを複数の組み合わせ同士で比較して、上記最大のインダクタンスが最も小さい組み合わせが選択されてよい。
【0046】
共振子群9Aは、互いに直列接続されている複数(図示の例では4つ)の直列共振子15S(15S-1を含む。)を有している。既述のように、複数の直列共振子15Sは、信号経路5の一部を構成している。信号経路5のうち、複数の直列共振子15Sを含んで構成されている部分を直列腕19ということがある。
【0047】
図示の例では、共振子群9Aは、直列腕19と基準電位部17とを接続する1以上の並列腕21(図示の例では3つ)と組み合わされることによって、共振子フィルタ23を構成している。なお、ここでの説明とは異なり、共振子群9Aは、それ自体、フィルタの一種として捉えられてもよい。
【0048】
並列腕21の直列腕19に対する接続位置は、より詳細には、電気的接続に関して互いに隣り合っている直列共振子15Sの間の位置である。特に図示しないが、最も入力端子3A側(最も前段側)の直列共振子15Sの入力端子3A側に接続される並列腕21、及び/又は最も出力端子3B側(最も後段側)の直列共振子15Sの出力端子3B側に接続される並列腕21が設けられてもよい。共振子フィルタ23が有する直列共振子15Sの数が1つのみの場合において、直列共振子15Sの前段及び/又は後段に並列腕21が接続されてもよい。
【0049】
複数の直列共振子15Sが設けられている場合の反共振周波数fsa等の設定方法及び効果等については既述のとおりである。1以上の並列腕21は、種々の構成とされてよく、その作用も種々のものとされてよい。例えば、並列腕21は、インダクタ及び/又はキャパシタを有する構成であってもよいし、弾性波共振子15を有する構成であってもよい。
【0050】
図2の例では、全ての並列腕21は、信号経路5と基準電位部17とを接続するインダクタ11Cのみを有している。換言すれば、並列腕21は、弾性波共振子15を有していない。このようなインダクタ11Cは、例えば、複数の直列共振子15Sの全体が、容量が大きいキャパシタとして機能する蓋然性を低減し、ひいては、阻止帯域EB内の周波数を有する信号が通過する蓋然性を低減することに寄与する。また、インダクタ11Cは、直列共振子15Sと協働して、阻止帯域EBと通過帯域XBとの間に遷移帯域を有するハイパスフィルタを構成しても構わない。インダクタ11Cのインダクタンスは任意に設定されてよい。
【0051】
図2では、図示の都合上、複数(図示の例では2つ)の基準電位部17が示されている。この複数の基準電位部17の一部又は全部は、実際に互いに異なる導体であってもよいし、実際には互いに同一の導体であってもよい。また、前者の場合において、複数の基準電位部17を構成する互いに異なる複数の導体は、互いに電気的に接続されていてもよいし、互いに電気的に接続されていなくてもよい。また、図2では、基準電位部17は、複合フィルタ1Aの外部の構成として示されており、複合フィルタ1Aが有する基準電位用端子3Gを介して複合フィルタ1Aと接続されている。なお、基準電位用端子3Gが図1(a)に示した基準電位部17として捉えられてもよい。
【0052】
(複合フィルタの回路構成の具体例のフィルタ特性)
図3(a)及び図3(b)は、実施例に係る複合フィルタの透過特性を示す図である。
【0053】
ここでの実施例は、図2に示した複合フィルタ1Aにおいて、キャパシタンス、インダクタンス、共振周波数及び反共振周波数等を具体的に設定したものである。図3(a)及び図3(b)において、横軸は周波数(GHz)であり、縦軸は透過特性(dB)である。図3(b)の横軸は、図3(a)の横軸の中央付近よりも高周波数側を示し、また、図3(a)では示されていない範囲を示している。図3(b)の縦軸は、図3(a)の縦軸のうちの上方側の一部を示している。
【0054】
この例において、通過帯域の下限の周波数は5170MHzである。図示された周波数の範囲では、複合フィルタ1Aは、ハイパスフィルタのように機能している。ただし、図3(b)に示されている周波数の範囲よりも高周波数側において、複合フィルタ1Aの透過特性は低くなっており、複合フィルタ1Aは、バンドパスフィルタとしても機能する。
【0055】
図3(a)において、4.4MHz付近における減衰極は、LCフィルタ7Aによって形成された減衰極fnrのうち、最も通過帯域に近い減衰極fnrである。これよりも通過帯域に近い複数の減衰極は、複数の直列共振子15Sによって形成されたものであり、その周波数は、複数の直列共振子15Sの反共振周波数fsaに対応している。例えば、通過帯域に最も近い5MHz付近の減衰極は、複数の反共振周波数fsaのうち、最も通過帯域に近いものに対応している。なお、複合フィルタ1Aの構成要素(15S等)が複合的に影響して形成される減衰極も存在することから、LCフィルタ7Aの最も通過帯域に近い減衰極fnrよりも通過帯域側に位置する減衰極の数と、複数の直列共振子15S(反共振周波数fsa)の数とは一致していない。
【0056】
(弾性波共振子のパラメータの設定例)
互いに異なる複数の反共振周波数fsaのうち、最も通過帯域XBに近い反共振周波数fsaを有する直列共振子15Sを第1直列共振子15S-1というものとする。なお、図2では、便宜上、最も入力側の直列共振子15Sに第1直列共振子15S-1の符号を付している。ただし、第1直列共振子15S-1は、いずれの位置の直列共振子15Sであってもよい。また、2以上の第1直列共振子15S-1が存在してもよい。
【0057】
第1直列共振子15S-1は、通過帯域XBの近傍において、複合フィルタ1の特性に及ぼす影響が相対的に大きい。そこで、発明者は、第1直列共振子15S-1に関する条件(例えば容量及びQ値)を互いに異ならせた複数のシミュレーション計算を行って、第1直列共振子15S-1の特性を調べた。その結果、第1直列共振子15S-1において、周波数差Δf(後述)を相対的に小さく、Q値を相対的に大きく、及び/又は容量を相対的に小さくすることによって、複合フィルタ1において、通過帯域XBの反共振周波数fsa側のロスを低減できることを見出した。具体的には、以下のとおりである。
【0058】
図4(a)及び図4(b)は、第1直列共振子15S-1の特性を説明するための図である。
【0059】
これらの図において、横軸f(Hz)は周波数を示している。左側の縦軸|Z|(Ω)は、インピーダンスの絶対値を示している。θ(°)は、インピーダンスの位相を示している。図の上部の凡例に示されているように、図中の線は、第1直列共振子15S-1における、周波数の変化に対する|Z|及びθの変化を示している。図4(b)は、θの縦軸の範囲が、図4(a)のθの縦軸の範囲の下方側(-90°側)の一部とされている。
【0060】
既述のように、弾性波共振子15(第1直列共振子15S-1)の特性においては、|Z|が極小値となる共振点と、|Z|が極大値となる反共振点とが現れる。ここでは、反共振周波数fsaは、5000MHzとされている。θは、共振点と反共振点との間において90°に近づき、その外側においては、-90°に近づく。
【0061】
図4(b)において5170MHzの線は、複合フィルタ1Aの通過帯域XBの下限の周波数を示している。既述のように、第1直列共振子15S-1の反共振周波数(5000MHz)は、この下限の周波数よりも低周波数側に位置している。下限の周波数におけるθが-90°に近いほど、下限の周波数における第1直列共振子15S-1によるロスが低減される。ひいては、複合フィルタ1において、通過帯域XB内かつ下限の周波数近傍のロスが低減される。すなわち、フィルタ特性が向上する。
【0062】
そして、発明者は、シミュレーション計算により、第1直列共振子15S-1において、周波数差Δfが小さいほど、反共振周波数fsaのQ値が大きいほど、及び/又は第1直列共振子15S-1の容量が小さいほど、θが-90°に近づくことを見出した。
【0063】
ここでいう周波数差Δfは、図4(a)に示すように、共振周波数fsrと反共振周波数fsaとの周波数差である。また、ここでいう容量は、弾性波共振子15を2重共振回路と捉えたときに、インダクタ及び抵抗と並列接続されるキャパシタの容量であり、制動容量と呼ばれることもある。反共振周波数fsaにおけるQ値は、|Z|の値が反共振周波数fsaにおける|Z|の値の半分以上となる周波数帯の帯域幅で、反共振周波数fsaを割った値である。
【0064】
シミュレーション結果の例(下限の周波数におけるθの値)を次の段落に示す。以下では、便宜上、上記の制動容量をCb(pF)で示すことがある。また、周波数差Δfは、Δf/fsa×100(%)によって大きさが示されることがある。なお、次の段落に結果を示すシミュレーションでは、第1直列共振子15S-1の抵抗値は0.1Ωに設定され、反共振周波数fsaにおけるQ値は160に設定された。
【0065】
・Cb=0.5pFの場合
θ=-89.31°(Δf=3%)
θ=-89.20°(Δf=4%)
θ=-89.09°(Δf=5%)
・Cb=1.0pFの場合
θ=-89.27°(Δf=3%)
θ=-89.15°(Δf=4%)
θ=-89.02°(Δf=5%)
・Cb=2.0pFの場合
θ=-89.20°(Δf=3%)
θ=-89.04°(Δf=4%)
θ=-88.87°(Δf=5%)
【0066】
また、図5図7にシミュレーション結果の例を示す。
【0067】
これらの図において、横軸はΔf(%)を示している。縦軸は反共振周波数fsaにおけるQ値を示している。図の右側の凡例に示されているように、複合フィルタ1Aの通過帯域XBの下限の周波数における第1直列共振子15S-1のθの大きさに応じて、互いに異なるハッチングが図中に付されている。
【0068】
図5は、Cb=0.5pFの場合の結果である。図6は、Cb=1.0pFの場合の結果である。図7は、Cb=2.0pFの場合の結果である。これらの図に結果が示されるシミュレーションでは、第1直列共振子15S-1の抵抗値は0.1Ωに設定された。
【0069】
各図から理解されるように、周波数差Δfが小さいほど、及び/又は反共振周波数fsaのQ値が大きいほど、θが-90°に近づく。また、図5図7の比較から理解されるように、容量が小さいほど、θが-90°に近づく。
【0070】
第1直列共振子15S-1における、周波数差Δf、反共振周波数fsaのQ値及び容量Cbの具体的な値は、適宜に設定されてよい。例えば、第1直列共振子15S-1の周波数差Δfは、全ての直列共振子15Sの周波数差Δfの平均値よりも小さくてよく、さらには、全ての直列共振子15Sの周波数差Δfの中で最も小さくてもよい。同様に、第1直列共振子15S-1の反共振周波数fsaのQ値は、全ての直列共振子15Sの反共振周波数fsaのQ値の平均値よりも小さくてよく、さらには、全ての直列共振子15Sの反共振周波数fsaのQ値の中で最も小さくてもよい。同様に、第1直列共振子15S-1の容量Cbは、全ての直列共振子15Sの容量Cbの平均値よりも小さくてよく、さらには、全ての直列共振子15SのCbの中で最も小さくてもよい。なお、平均値よりも小さい、という場合は、当然に、互いに大きさが異なる複数の値の存在が前提となる。
【0071】
(複合フィルタの構造の例)
以上に説明した複合フィルタ1の回路構成は、種々の構造によって実現されてよい。以下に、いくつかの例を示す。
【0072】
(構造の第1例)
図8(a)は、複合フィルタ1の構造の第1例を示す模式的な断面図である。便宜上、図示の構造を有する複合フィルタ1を複合フィルタ1Bと呼称することがある。複合フィルタ1(1B)は、いずれの方向が上方とされてもよいが、便宜上、図8(a)(及び後述の図8(b))の説明においては、紙面上方を上方とし、上面及び下面等の語を用いることがある。
【0073】
複合フィルタ1Bは、例えば、表面実装型のチップ部品として構成されている。その全体形状は、例えば、概略、上下方向を厚さ方向とする薄型の直方体状(厚みが平面視の短辺の長さよりも短い形状)である。複合フィルタ1Bの下面には、複合フィルタ1Bを実装するために外部端子が設けられている。外部端子は、例えば、既述の入力端子3A、出力端子3B及び基準電位用端子3G(ここでは不図示)である。特に図示しないが、複合フィルタ1Bは、外部端子が回路基板のパッドに対して導電性のバンプによって接合されることによって上記回路基板に実装される。
【0074】
複合フィルタ1Bは、例えば、回路基板31と、回路基板31に実装されている弾性波チップ33と、弾性波チップ33を封止している封止部35とを有している。LCフィルタ7は、例えば、回路基板31に設けられている。共振子群9は、例えば、弾性波チップ33に設けられている。特に符号を付さないが、共振子フィルタ23は、例えば、その全体が弾性波チップ33に設けられていてもよいし、一部(例えばインダクタ及び/又はキャパシタ)が回路基板31に設けられていてもよい。また、ここでの説明とは異なり、LCフィルタ7の一部(例えばインダクタ及び/又はキャパシタ)は、弾性波チップ33に設けられていてもよい。
【0075】
回路基板31は、例えば、概略、上下方向を厚さ方向とする薄型の直方体状に形成されている。回路基板31の基本的な構造及び材料(複合フィルタ1を構成するための具体的な導体のパターン及び寸法等を除いた構成)は、公知の種々のプリント基板の構造及び材料と同様とされてよい。例えば、回路基板31は、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)基板、IPD(Integrated Passive Device)基板又は有機多層基板とされてよい。
【0076】
LTCC基板としては、例えば、アルミナにガラス系材料を加えて低温(例えば900℃前後)での焼成を可能としたものが挙げられる。LTCC基板において、導電材料としては、例えば、Cu又はAgが用いられてよい。IPD基板としては、例えば、Si基板に受動素子を形成したものが挙げられる。有機多層基板としては、ガラス等からなる基材に樹脂を含侵させたプリプレグを積層したものが挙げられる。いずれにせよ、回路基板31は、実質的に絶縁性の板状の基体37と、基体37の内部及び/又は表面に位置している導体39を有している。基体37は、例えば、互いに積層された複数の絶縁層37aを有してよい。導体39は、例えば、絶縁層37aの主面に位置している導体層39aと、絶縁層37aを貫通するビア導体39bとを有してよい。
【0077】
弾性波チップ33は、例えば、表面実装型のチップ部品として構成されている。その全体形状は、例えば、概略、上下方向を厚さ方向とする薄型の直方体状である。弾性波チップ33の基本的な構造及び材料(複合フィルタ1を構成するための具体的な導体のパターン及び寸法等を除いた構成)は、公知の種々の弾性波チップの構造及び材料と同様とされてよい。例えば、弾性波チップ33は、ベアチップであってもよいし、ベアチップの回路基板31側の面を覆うカバーを有するWLP(Wafer level Package)型のものであってもよいし、ベアチップの側面を覆うモールド部を有するFO(Fan Out)-WLP型のものであってもよい。ここでは、弾性波チップ33がベアチップである態様を例に取る。弾性波チップ33は、例えば、チップ基板41と、チップ基板41の回路基板31側の面(一方の主面)に位置している導体層43とを有している。
【0078】
チップ基板41は、例えば、少なくとも、回路基板31側の面のうちの所定領域が圧電体によって構成されている。圧電体は、例えば、圧電性を有する単結晶からなる。単結晶は、例えば、水晶(SiO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)単結晶またはタンタル酸リチウム(LiTaO)単結晶である。カット角は、利用する弾性波の種類等に応じて適宜に設定されてよい。チップ基板41は、例えば、その全体が圧電体によって構成されていてもよいし(圧電基板であってもよいし)、適宜な材料からなる支持基板に圧電体層が形成されたものであってもよいし、圧電基板と支持基板とが貼り合わされたものであってもよい。導体層43の材料は、Al等の適宜な金属とされてよい。
【0079】
特に図示しないが、弾性波チップ33は、上記の他、弾性波チップ33の端子を露出させつつ、導体層43及びチップ基板41の回路基板31側の面を覆う絶縁層を有していてもよい。このような絶縁層は、単に導体層43の腐食を低減するためのものであってもよいし、音響的に有利な作用を奏するものであってもよい。このような絶縁層の材料は、適宜なものとされてよく、例えば、SiOである。また、チップ基板41の側面及び下面は、チップ基板41の厚さに比較して薄い絶縁層等によって被覆されていてもよい。
【0080】
弾性波チップ33の導体層43は、例えば、弾性波チップ33の端子43aを有している。また、回路基板31の上面に位置する導体層39aは、端子43aに対向するパッド39cを有している。端子43aとパッド39cとが導電性のバンプ45によって接合されることによって、弾性波チップ33は、回路基板31に実装される。すなわち、弾性波チップ33は、バンプ45によって、回路基板31に固定されるとともに、電気的に接続される。バンプ45の材料は、例えば、はんだである。はんだは、鉛フリーはんだを含む。
【0081】
封止部35は、例えば、弾性波チップ33の上から回路基板31の上面を覆っている。弾性波チップ33と回路基板31との間には、端子43a、バンプ45及びパッド39cの厚みで隙間が構成されている。封止部35は、この隙間には充填されておらず、当該隙間は、封止部35によって封止された密閉空間とされている。密閉空間は、真空状態とされていてもよいし、適宜な不活性ガス(例えば窒素)が充填されていてもよい。封止部35の材料は、有機材料であってもよいし、無機材料であってもよいし、両者の組み合わせであってもよい。より詳細には、例えば、封止部35は、樹脂とされたり、無機材料からなる粒子(フィラー)を含んでいる樹脂とされたりしてよい。
【0082】
LCフィルタ7のインダクタ11及びキャパシタ13、並びに共振子フィルタ23のインダクタ11Cは、例えば、回路基板31の導体39によって構成されている。基体37は、キャパシタ13の電極間の誘電体として機能してよい。また、これらのインダクタ11及びキャパシタ13の少なくとも一部は、弾性波チップ33の導体層43によって構成されてもよい。弾性波共振子15は、弾性波チップ33のチップ基板41及び導体層43によって構成されている。なお、既述の図2では、図8(a)の態様を想定して、回路基板31及び弾性波チップ33の符号も付されている。
【0083】
回路基板31の導体39(又は弾性波チップ33の導体層43)によって構成されるインダクタ11は、適宜な構成とされてよい。例えば、インダクタ11は、導体層39aが含むミアンダ状又は渦巻き状の導体パターンによって構成されてよい。
【0084】
回路基板31の導体39(又は弾性波チップ33の導体層43)によって構成されるキャパシタ13は、適宜な構成とされてよい。例えば、キャパシタ13の1対の電極は、同一の導体層39aによって構成されていてもよいし、互いに異なる導体層39aによって構成されていてもよい。前者としては、平面視において互いに対向する1対のストリップ状の電極、及び平面視において互いに噛み合う1対の櫛歯電極(後述する弾性波共振子15の櫛歯電極を参照)を挙げることができる。後者としては、絶縁層37aの厚さ方向において絶縁層37aを挟んで互いに対向する平板電極を挙げることができる。
【0085】
(構造の第2例)
図8(b)は、複合フィルタ1の構造の第2例を示す模式的な断面図である。便宜上、図示の構造を有する複合フィルタ1を複合フィルタ1Cと呼称する。以下の説明では、基本的に、第1例に係る複合フィルタ1Bとの相違点についてのみ述べる。特に言及が無い事項は、第1例と同様とされたり、第1例から類推されてよい。また、複合フィルタ1Bの構成と対応する構成については、相違点があっても同一の符号を用いることがある。
【0086】
複合フィルタ1Bは、回路基板31に実装された1以上のチップ部品47を有している。チップ部品47は、例えば、チップインダクタ(いずれかのインダクタ11)、チップキャパシタ(いずれかのキャパシタ13)、又はチップ型のフィルタ(LCフィルタ7)であってよい。あるいは、チップ部品47は、LCフィルタ7のインダクタ11及びキャパシタ13、並びに共振子フィルタ23のインダクタ11Cのうちの2つ以上を含む構成要素(例えば回路基板)として構成されていてよい。なお、インダクタ11及びキャパシタ13のうち、チップ部品47に設けられていないものは、例えば、第1例と同様に、回路基板31又は弾性波チップ33に設けられている。
【0087】
チップ部品47の具体的な構成は、チップ部品47が実現する対象に応じた適宜なものとされてよい。例えば、チップ部品47は、公知のチップインダクタ又はチップキャパシタの構成と同様とされてよい。また、チップ部品47が2以上の素子(インダクタ11及び/又はキャパシタ13等)を含む場合において、既述の回路基板31の説明は、チップ部品47に援用されてよい。例えば、チップ部品47は、LTCC基板、IPD基板又は有機基板を含んで構成されているものであってもよい。
【0088】
(構造の他の例)
特に図示しないが、複合フィルタ1を実現する構造は、第1例及び第2例以外にも種々可能である。
【0089】
例えば、複合フィルタ1は、チップ部品ではなく、モジュールの一部であってもよい。より詳細には、例えば、回路基板31は、図示の例よりも広い面積を有していたり、複合フィルタ1を構成しない電子部品が実装されていたり、複合フィルタ1を構成しない素子を導体39によって構成したりしてよい。このような場合において、複合フィルタ1は、回路基板31の導体39によって構成された配線によって他の電子部品又は回路基板31内の素子と接続されてよい。別の観点では、入力端子3A及び出力端子3Bの概念に明瞭に合致する部位が存在しなくてもよい。回路基板31に実装され、複合フィルタ1を構成しない電子部品としては、例えば、IC(Integrated Circuit)及びチップ型のアンテナを挙げることができる。回路基板31によって構成され、複合フィルタ1を構成しない素子としては、例えば、アンテナを挙げることができる。
【0090】
また、例えば、弾性波チップ33は、複合フィルタ1に加えて、他のフィルタを構成していてもよい。より詳細には、例えば、図示されたチップ部品は、送信フィルタ及び受信フィルタを有する分波器(例えばデュプレクサ)を構成してよい。そして、複合フィルタ1は、送信フィルタ及び受信フィルタの一方を構成してよい。弾性波チップ33は、送信フィルタの少なくとも一部及び受信フィルタの少なくとも一部を有してよい。
【0091】
また、例えば、弾性波チップ33以外の他の弾性波チップが回路基板31に実装されていてもよい。より詳細には、例えば、弾性波チップ33及び他の弾性波チップを含むチップ部品は、分波器(例えばデュプレクサ)を構成してよい。そして、複合フィルタ1は、送信フィルタ及び受信フィルタの一方を構成し、他の弾性波チップによって構成されるフィルタは、送信フィルタ及び受信フィルタの他方を構成してよい。
【0092】
弾性波チップ33及びチップ部品47等の電子部品の回路基板31に対する実装は、バンプ45によるものに限定されない。例えば、電子部品は、回路基板31に絶縁性の接着剤によって固定されるとともに、ボンディングワイヤによって回路基板31に電気的に接続されてもよい。
【0093】
なお、以上に説明した構造において、弾性波チップ33以外の部分であって、複合フィルタ1の少なくとも一部(例えばインダクタ11及び/又はキャパシタ13)が設けられる部分は、基板構造体53として概念されてよい。例えば、図8(a)では、基板構造体53は、1つの回路基板31からなる。図8(b)では、基板構造体53は、回路基板31及びチップ部品47からなる。弾性波チップ33と、基板構造体53とは、バンプ45又はボンディングワイヤ等の接続導体によって互いに接続される。
【0094】
(弾性波共振子の具体例)
共振子群9が含む弾性波共振子15は、種々の構成とされてよい。例えば、弾性波共振子15は、SAW共振子とされてもよいし、SAW共振子と同様の電極を有しつつ、BAWを利用するBAW共振子とされてもよいし、キャビティ上で圧電薄膜を振動させる圧電薄膜共振器(FBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)と呼称されることもある。)とされてもよい。以下、弾性波共振子15の一例として、SAW共振子について説明する。
【0095】
図9は、弾性波共振子15としてのSAW共振子の構成を模式的に示す平面図である。この図は、弾性波チップ33のうち、回路基板31側の面の一部領域を示している。
【0096】
図9には、便宜的に、D1軸、D2軸及びD3軸からなる直交座標系を付す。弾性波共振子15は、いずれの方向が上方又は下方とされてもよい。ただし、以下の説明では、便宜上、D3軸の正側を上方として、上面又は下面等の用語を用いることがある。なお、D1軸は、チップ基板41の回路基板31側の面(上面41a)に沿って伝搬する弾性波の伝搬方向に平行になるように定義されている。D2軸は、上面41aに平行かつD1軸に直交するように定義されている。D3軸は、上面41aに直交するように定義されている。
【0097】
弾性波共振子15は、いわゆる1ポート弾性波共振子によって構成されている。弾性波共振子15は、例えば、紙面両側に示された2つの配線55の一方から入力された信号を2つの配線55の他方から出力する。この際、弾性波共振子15は、電気信号から弾性波への変換及び弾性波から電気信号への変換を行う。
【0098】
弾性波共振子15は、例えば、チップ基板41(その少なくとも上面41a側の一部)と、上面41a上に位置する励振電極57と、励振電極57の両側に位置する1対の反射器59とを含んでいる。1つのチップ基板41上には、複数の弾性波共振子15が構成されてよい。すなわち、チップ基板41は、複数の弾性波共振子15に共用されてよい。
【0099】
チップ基板41は、既述のように、少なくとも、上面41aのうち所定の領域に圧電性を有している。励振電極57及び反射器59は、当該領域に設けられた層状導体によって構成されている。励振電極57および反射器59は、例えば、互いに同一の材料および厚さで構成されている。これらを構成する層状導体は、例えば、金属である。金属は、例えば、AlまたはAlを主成分とする合金(Al合金)である。Al合金は、例えば、Al-Cu合金である。層状導体は、複数の金属層から構成されていてもよい。層状導体の厚さは、弾性波共振子15に要求される電気特性等に応じて適宜に設定される。一例として、層状導体の厚さは50nm以上600nm以下である。
【0100】
励振電極57は、いわゆるIDT(Interdigital Transducer)電極によって構成されており、1対の櫛歯電極61(一方には視認性をよくする便宜上ハッチングを付す)を有している。各櫛歯電極61は、例えば、バスバー63と、バスバー63から互いに並列に延びる複数の電極指65と、複数の電極指65の間においてバスバー63から突出する複数のダミー電極67とを有している。そして、1対の櫛歯電極61は、複数の電極指65が互いに噛み合うように(交差するように)配置されている。
【0101】
バスバー63は、例えば、概略、一定の幅で弾性波の伝搬方向(D1方向)に直線状に延びる長尺状に形成されている。そして、一対のバスバー63は、弾性波の伝搬方向に直交する方向(D2方向)において互いに対向している。なお、バスバー63は、幅が変化したり、弾性波の伝搬方向に対して傾斜したりしていてもよい。
【0102】
各電極指65は、例えば、概略、一定の幅で弾性波の伝搬方向に直交する方向(D2方向)に直線状に延びる長尺状に形成されている。各櫛歯電極61において、複数の電極指65は、弾性波の伝搬方向に配列されている。また、一方の櫛歯電極61の複数の電極指65と他方の櫛歯電極61の複数の電極指65とは、基本的には交互に配列されている。
【0103】
複数の電極指65のピッチp(例えば互いに隣り合う2本の電極指65の中心間距離)は、励振電極57内において基本的に一定である。なお、励振電極57は、一部にピッチpに関して特異な部分を有していてもよい。特異な部分としては、例えば、大部分(例えば8割以上)よりもピッチpが狭くなる狭ピッチ部、大部分よりもピッチpが広くなる広ピッチ部、少数の電極指65が実質的に間引かれた間引き部が挙げられる。
【0104】
以下において、ピッチpという場合、特に断りがない限りは、上記のような特異な部分を除いた部分(複数の電極指65の大部分)のピッチをいうものとする。また、特異な部分を除いた大部分の複数の電極指65においても、ピッチが変化しているような場合においては、大部分(例えば8割以上)の複数の電極指65のピッチの平均値をピッチpの値として用いてよい。
【0105】
電極指65の本数は、弾性波共振子15に要求される電気特性等に応じて適宜に設定されてよい。図9は模式図であることから、電極指65の本数は少なく示されている。実際には、図示よりも多くの電極指65が配列されてよい。後述する反射器59のストリップ電極71についても同様である。
【0106】
複数の電極指65の長さは、例えば、互いに同等である。なお、励振電極57は、複数の電極指65の長さ(別の観点では後述する交差幅W)が伝搬方向の位置に応じて変化する、いわゆるアポダイズが施されていてもよい。電極指65の長さ及び幅は、要求される電気特性等に応じて適宜に設定されてよい。
【0107】
ダミー電極67は、例えば、概ね一定の幅で弾性波の伝搬方向に直交する方向に突出している。その幅は、例えば電極指65の幅と同等である。また、複数のダミー電極67は、複数の電極指65と同等のピッチで配列されており、一方の櫛歯電極61のダミー電極67の先端は、他方の櫛歯電極61の電極指65の先端とギャップを介して対向している。なお、励振電極57は、ダミー電極67を含まないものであってもよい。
【0108】
1対の反射器59は、弾性波の伝搬方向において複数の励振電極57の両側に位置している。各反射器59は、例えば、電気的に浮遊状態とされてもよいし、基準電位が付与されてもよい。各反射器59は、例えば、格子状に形成されている。すなわち、反射器59は、互いに対向する1対のバスバー69と、1対のバスバー69間において延びる複数のストリップ電極71とを含んでいる。複数のストリップ電極71のピッチ、及び互いに隣接する電極指65とストリップ電極71とのピッチは、基本的には複数の電極指65のピッチと同等である。
【0109】
1対の櫛歯電極61に電圧が印加されると、複数の電極指65によって圧電性を有する上面41a(圧電体)に電圧が印加され、圧電体が振動する。これにより、D1方向に伝搬する弾性波が励振される。弾性波は、複数の電極指65によって反射される。そして、複数の電極指65のピッチpを概ね半波長(λ/2)とする定在波が立つ。定在波によって圧電体に生じる電気信号は、複数の電極指65によって取り出される。
【0110】
上記のような原理により、弾性波共振子15は、ピッチpを半波長とする弾性波の周波数を共振周波数(例えば共振周波数fsr)とする共振子として機能する。弾性波共振子15において、反共振周波数(例えば反共振周波数fsa)は、基本的にピッチpによって規定される共振周波数と、弾性波共振子15における容量比によって規定される。容量比は、弾性波共振子15(励振電極57)の静電容量(既述の容量Cb)と、弾性波共振子15を2重共振回路と捉えたときの直列共振回路のキャパシタンス(動キャパシタンス)との比である。
【0111】
弾性波共振子15が図9に例示したような構成である場合において、第1直列共振子15S-1の、周波数差Δf、反共振周波数fsaのQ値及び容量Cbは、種々の方法(例えば公知の方法)によって調整されてよい。例えば、周波数差Δfは、圧電材料の種類、圧電材料のカット角、弾性波の伝搬方位(励振電極57のD3軸回りの向き)、及び/又は複数の電極指65が弾性波の伝搬方向(D1方向)に傾斜する方向に配列される場合の配列方向によって調整されてよい。Q値は、電極指65の本数、交差幅W、ストリップ電極71の本数、電極の膜厚、及び/又はデューティー(電極指65の幅をピッチpで割った値)によって調整されてよい。容量Cbは、電極指65の本数、交差幅W、及び/又は電極指65のデューティーによって調整されてよい。
【0112】
1つの弾性波共振子15の代表的な構成例は、上記のように、1つの励振電極57を有している。ただし、1つの弾性波共振子15は、互いに直列に接続された複数の励振電極57を有していてもよい。換言すれば、1つの弾性波共振子15は、複数に分割されていてもよい。この場合、例えば、弾性波共振子15に印加される電圧が複数の励振電極57に分散されるから、弾性波共振子15の耐電力性が向上する。
【0113】
(第1実施形態のまとめ)
以上のとおり、弾性波装置(1)は、信号経路5を流れる信号をフィルタリングする複合フィルタ1を有している。複合フィルタ1は、当該複合フィルタ1の通過帯域XBの外側に減衰極fnrを有しているLCフィルタ7と、LCフィルタ7に接続されている弾性波共振子群9と、を有している。共振子群9は、信号経路5の一部を構成している1以上の直列共振子15Sを有している。1以上の直列共振子15Sは、通過帯域XBに対して減衰極fnrの側(本実施形態では低周波数側。換言すれば通過帯域XBの外側)に位置する反共振周波数fsaを有している。1以上の直列共振子15Sのうち、反共振周波数fsaが最も通過帯域XBに近い第1直列共振子15S-1の反共振周波数fsaは、減衰極fnrと通過帯域XBとの間に位置している。
【0114】
従って、例えば、既述のように、直列共振子15Sによって、通過帯域XBの減衰極fnr側の端部における減衰の傾きを急峻化しつつ、LCフィルタ7によって通過帯域XBの帯域幅及び/又は阻止帯域EBの帯域幅が広い複合フィルタ1を実現することができる。
【0115】
1以上の直列共振子15Sにおいて、反共振周波数fpaは、共振周波数fprに対して通過帯域XBの側(本実施形態では高周波数側)に位置してよい。1以上の直列共振子15Sのいずれの共振周波数fsr及び反共振周波数fsaも、通過帯域XBの外側(換言すれば減衰極fnrの側。本実施形態では低周波数側)に位置してよい。
【0116】
この場合、例えば、直列共振子15Sの小型化と、直列共振子15Sにおけるマイグレーションの低減とを両立できる。具体的には、以下のとおりである。従来、マイグレーションの対策として、静電容量がN倍にされたN個の弾性波共振子を縦続接続し、これにより、弾性波共振子1個あたりにかかる電圧をN分して小さくすることが行われていた。しかし、この場合、弾性波共振子の占める面積が大きくなってしまう。一方、本実施形態のように、弾性波共振子15(例えば15S)の共振周波数(例えばfsa)及び反共振周波数(例えばfsr)を複合フィルタ1の通過帯域XBから遠ざけると、弾性波共振子15の圧電振動の作用が小さくなり、ストレスマイグレーションが生じにくくなる。
【0117】
反共振周波数fsaが最も通過帯域XBに近い第1直列共振子15S-1において、周波数差Δfは相対的に小さくされてよく、反共振周波数fsaのQ値は相対的に大きくされてよく、容量Cbは相対的に小さくされてよい。
【0118】
この場合、例えば、既述のように、通過帯域XB内の、反共振周波数fsaの側の端部近傍におけるロスを低減できる。すなわち、フィルタ特性を向上させることができる。
【0119】
LCフィルタ7は、回路基板31又はチップ部品47(別の観点では基板)と、基板に形成されているインダクタ11と、基板に形成されているキャパシタ13と、を有してよい。基板は、LTCC基板、IPD基板又は有機多層基板であってよい。
【0120】
この場合、例えば、高精度回路基板にLCフィルタ7を形成することができる。ひいては、複合フィルタ1のフィルタ特性が向上する。
【0121】
<第2実施形態>
第2実施形態の複合フィルタの基本的な構成は、第1実施形態の複合フィルタ1の構成と同様とされてよい。このことから、第2実施形態の説明では、便宜上、第1実施形態の複合フィルタ1の符号をそのまま用いる。
【0122】
第2実施形態に係る複合フィルタ1は、通過帯域XB、LCフィルタ7の減衰極fnr、及び直列共振子15Sの反共振周波数fsa(及び共振周波数fsr)の相対関係が第1実施形態と相違する。具体的には、以下のとおりである。
【0123】
図10は、第2実施形態に係る複合フィルタ1の特性を示す図であり、第1実施形態の図1(b)に対応している。
【0124】
第1実施形態では、LCフィルタ7の共振周波数fnr及び直列共振子15Sの反共振周波数fsaは、通過帯域XBに対して低周波数側に位置した。一方、本実施形態では、減衰極fnr及び反共振周波数fsaは、通過帯域XBに対して高周波数側に位置している。
【0125】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、直列共振子15Sの反共振周波数fsaは、LCフィルタ7の減衰極fnrと、通過帯域XBとの間に位置している。これにより、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、通過帯域XB内の、減衰極fnrの側の端部付近における減衰の傾きを急峻にしつつ、通過帯域XB及び/又は阻止帯域EBを広帯域化することが容易化される。
【0126】
第1実施形態で述べた反共振周波数fsa及び共振周波数fnrに関する説明は、矛盾等が生じない限り、本実施形態に適用されてよい。例えば、第1実施形態における減衰極fnr、反共振周波数fsa及び通過帯域XBの具体的な位置関係についての説明は、高周波数側の語と低周波数側の語とを適宜に置換して、本実施形態に適用されてよい。
【0127】
ただし、共振周波数fsrと反共振周波数fsaとの相対関係は、第1実施形態のままである(低周波数側と高周波数側とが入れ替わっていない)から、この点に関して、第1実施形態と相違があってよい。例えば、本実施形態において、共振周波数fsrは、通過帯域XB内に位置していてもよいし、通過帯域XBの外側(遷移帯域又は阻止帯域EB)に位置していてもよい(図示の例)。また、共振周波数fsrが通過帯域XBの外側に位置する場合において、共振周波数fsrは、通過帯域XB及び反共振周波数fsaのいずれに近くてもよいし、通過帯域XB及び減衰極fnrのいずれに近くてもよい。
【0128】
<第3実施形態>
図11(a)は、第3実施形態に係る複合フィルタ301(弾性波装置の一例)の構成を示す図であり、第1実施形態の図1(a)に対応している。
【0129】
複合フィルタ301は、第1実施形態の複合フィルタ1と同様に、LCフィルタ7と、弾性波共振子群309(以下、「共振子群309」ということがある。)とを有している。ただし、共振子群309において、1以上の弾性波共振子15は、1以上の直列共振子15Sではなく、1以上の並列共振子15Pを有している。並列共振子15Pは、既に触れたように、信号経路5と基準電位部17とを接続している。
【0130】
特に図示しないが、複数の並列共振子15Pが設けられてよい。この場合、信号経路5は、複数の並列共振子15Pが接続される複数の接続位置を有している。複数の接続位置の間(さらにはその入力側及び/又は出力側)には、適宜な素子が配置されてよい。例えば、LC直列共振回路及び/又はLC並列共振回路が配置されてよい。また、複数の接続位置の間に直列共振子15Sが配置されてもよい。別の観点では、図2において、複数の並列腕21は、複数の並列共振子15Pによって構成されてよい。
【0131】
図11(b)は、第3実施形態に係る複合フィルタ301の特性を示す図であり、第1実施形態の図1(b)及び第2実施形態の図10に対応している。
【0132】
この図において、線LPは、並列共振子15Pの|Z|を示している。並列共振子15Pのインピーダンスの特性は、直列共振子15Sのインピーダンスの特性と基本的に同じである。すなわち、並列共振子15Pの|Z|は、共振周波数fprにおいて極小値となり、反共振周波数fpaにおいて極大値となる。
【0133】
ただし、並列共振子15Pは、信号経路5と基準電位部17とを接続していることから、信号経路5を流れる信号のうち、共振周波数fpr及びその周囲の周波数を有する成分が減衰する。そして、共振周波数fprは、直列共振子15Sの反共振周波数fsaと同様に、LCフィルタ7の共振周波数fnrと、通過帯域XBとの間に位置している。
【0134】
上記のように、並列共振子15Pにおいて、通過帯域XBに近づけられる周波数は、直列共振子15Sとは逆に、反共振周波数(fpa)ではなく、共振周波数(fpr)である。一方、並列共振子15Pは、直列共振子15Sと同様に、反共振周波数(fpa)が共振周波数(fpr)に対して高周波数側に位置する。また、本実施形態では、阻止帯域EBは、第1実施形態とは逆に、通過帯域XBに対して、高周波数側に位置している。従って、第1実施形態における、減衰極fnr、通過帯域XB、共振周波数(fsr)及び反共振周波数(fsa)の位置関係の説明は、共振周波数(fpr)の語及び反共振周波数(fpa)の語を相互に置換するとともに、低周波数側の語及び高周波数側の語を相互に置換して、本実施形態に援用されてよい。
【0135】
また、第1実施形態における複数の反共振周波数fsa(又は複数の共振周波数fsr)の相対関係に関する説明は、本実施形態における複数の共振周波数fpr(又は複数の反共振周波数fpa)の相対関係に援用されてよい。第1直列共振子15S-1の特性(図4図7)に関する説明は、共振周波数(fpr)の語及び反共振周波数(fpa)の語を相互に置換して、共振周波数fprが最も通過帯域XBに近い並列共振子15P(第1並列共振子)に援用されてよい。
【0136】
<第4実施形態>
第4実施形態の複合フィルタの基本的な構成は、第3実施形態の複合フィルタ301の構成と同様とされてよい。このことから、第4実施形態の説明では、便宜上、第3実施形態の複合フィルタ301の符号をそのまま用いる。
【0137】
第4実施形態に係る複合フィルタ301は、通過帯域XB、LCフィルタ7の減衰極fnr、及び並列共振子15Pの共振周波数fpr(及び反共振周波数fpa)の相対関係が第3実施形態と相違する。具体的には、以下のとおりである。
【0138】
図12は、第4実施形態に係る複合フィルタ301の特性を示す図であり、第3実施形態の図11(b)に対応している。
【0139】
第3実施形態では、LCフィルタ7の減衰極fnr及び並列共振子15Pの共振周波数fpaは、通過帯域XBに対して高周波数側に位置した。一方、本実施形態では、減衰極fnr及び共振周波数fpaは、通過帯域XBに対して低周波数側に位置している。
【0140】
第4実施形態においても、第3実施形態と同様に、並列共振子15Pの共振周波数fpaは、LCフィルタ7の減衰極fnrと、通過帯域XBとの間に位置している。これにより、第1~第3実施形態と同様の効果が奏される。例えば、通過帯域XB内の、減衰極fnrの側の端部近傍における減衰の傾きを急峻にしつつ、通過帯域XB及び/又は阻止帯域EBを広帯域化することが容易化される。
【0141】
第3実施形態で述べた反共振周波数fpa及び共振周波数fprに関する説明は、矛盾等が生じない限り、本実施形態に適用されてよい。例えば、第3実施形態における減衰極fnr、共振周波数fpr及び通過帯域XBの具体的な位置関係についての説明は、高周波数側の語と低周波数側の語とを適宜に置換して、本実施形態に適用されてよい。
【0142】
ただし、共振周波数fprと反共振周波数fpaとの相対関係は、高周波数側と低周波数側とで入れ替わっていないから、第1実施形態と第2実施形態との相違と同様に、第3実施形態と第4実施形態とで相違があってよい。この点に関しては、第3実施形態における説明が援用されてよい。ただし、共振周波数(fpr)の語及び反共振周波数(fpa)の語は相互に置換される。
【0143】
<変形例>
以下に種々の変形例について説明する。
【0144】
(第1変形例)
図13は、第1実施形態に係る複数の直列共振子15Sの反共振周波数fsa及び共振周波数fsrに関する変形例を示す図であり、図1(b)に相当する。この図において、線LS1及びLS2は、互いに異なる直列共振子15Sの|Z|を示している。
【0145】
線LS1に示されているように、反共振周波数fsa(fsa1)がLCフィルタ7の減衰極fnrと通過帯域XBとの間に位置している直列共振子15Sのうち少なくとも1つは、共振周波数fsr(fsr1)が、減衰極fnrに対して通過帯域XBとは反対側(低周波数側)に位置してよい。このときの共振周波数fsr1と減衰極fnrとの具体的な位置関係は任意である。例えば、共振周波数fsr1と減衰極fnrとの距離(周波数差)は、反共振周波数fsa1と減衰極fnrとの距離に対して、短くてもよいし(図示の例)、同等でもよいし、長くてもよい。
【0146】
線LS1で示されるような特性を示す直列共振子15Sは、いずれの直列共振子15Sであってもよい。例えば、反共振周波数fsaが最も通過帯域XBに近い直列共振子15S(第1直列共振子15S-1)において、共振周波数fsrは、LCフィルタ7の減衰極fnrに対して低周波数側に位置してよい。なお、念のために記載すると、第1実施形態の説明で述べたように、2以上の第1直列共振子15S-1が存在してもよい。また、第1実施形態の説明から理解されるように、反共振周波数fsa及び共振周波数fsrの間に減衰極fnrが位置している直列共振子15Sが2以上存在する場合において、その直列共振子15Sにおいて、反共振周波数fsa及び共振周波数fsrは、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0147】
線LS2に示されているように、反共振周波数fsa(fsa1)が最も通過帯域XBに近い第1直列共振子15S-1を除く、少なくとも1つの直列共振子15Sは、共振周波数fsr(fsr2)及び反共振周波数fsa(fsa2)が、LCフィルタ7の減衰極fnrに対して通過帯域XBとは反対側(低周波数側)に位置してよい。このときの共振周波数fsr2、反共振周波数fsa2及び減衰極fnrの具体的な位置関係は任意である。例えば、反共振周波数fsa2(又は共振周波数fsr2)と減衰極fnrとの距離(周波数差)は、減衰極fnrと通過帯域PBとの距離の1/2未満、1/2以上又は1倍以上とされてよい。
【0148】
線LS2で示されるような特性を示す直列共振子15Sは、第1直列共振子15S-1を除く、いずれの直列共振子15Sであってもよい。例えば、第1直列共振子15S-1を除く全ての直列共振子15Sにおいて、共振周波数fsr及び反共振周波数fsaが減衰極fnrに対して通過帯域PBとは反対側に位置してよい。念のために記載すると、第1実施形態の説明から理解されるように、反共振周波数fsa及び共振周波数fsrが減衰極fnrに対して通過帯域PBとは反対側に位置している直列共振子15Sが2以上存在する場合において、その直列共振子15Sにおいて、反共振周波数fsa及び共振周波数fsrは、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。線LS2の特性に関して行った説明は、第2実施形態に適用されてもよい。
【0149】
以上のとおり、複数の直列共振子15Sが含む、第1直列共振子15S-1(反共振周波数fsaが最も通過帯域XBに近い直列共振子15S)以外の直列共振子15Sの共振周波数fsr2及び反共振周波数fsa2と、第1直列共振子15S-1の共振周波数fsr1とは、LCフィルタ7の減衰極fnrに対して通過帯域XBとは反対側(本実施形態では低周波数側)に位置してよい。
【0150】
この場合、例えば、第1実施形態の説明で述べた、共振周波数fsr及び反共振周波数fsaを通過帯域XBから離すことによってマイグレーションを低減する効果が向上する。
【0151】
(第2変形例)
図14は、複数の並列共振子15Pの反共振周波数fpa及び共振周波数fprに関する変形例を示す図であり、図13に相当する。この図において、線LP1及びLP2は、互いに異なる並列共振子15Pの|Z|を示している。
【0152】
この変形例は、図13を参照して説明した第1変形例の考え方を第3実施形態に適用したものである。すなわち、弾性波共振子15の共振周波数及び反共振周波数をLCフィルタ7の減衰極fnrに対して通過帯域XBとは反対側に位置させる。従って、第1変形例の説明は、本変形例に援用されてよい。ただし、直列共振子15Sの語は並列共振子15Pの語に置換し、反共振周波数の語と共振周波数の語とは置換し、低周波数側の語と高周波数側の語とは置換する。符号も適宜に置換されてよい。念のため、第1変形例の説明の一部について、上記のような用語の置換を行って、以下に転記する。
【0153】
線LP1に示されているように、共振周波数fpr(fpr1)がLCフィルタ7の減衰極fnrと通過帯域XBとの間に位置している並列共振子15Pのうち少なくとも1つは、反共振周波数fpa(fpa1)が、減衰極fnrに対して通過帯域XBの反対側(高周波数側)に位置してよい。このような特性を示す並列共振子15Pは、いずれの並列共振子15Pであってもよい。例えば、共振周波数fprが最も通過帯域XBに近い並列共振子15P(第1並列共振子)において、反共振周波数fpaは減衰極fnrよりも高周波数側に位置してよい。
【0154】
線LP2に示されているように、共振周波数fpr(fpr1)が最も通過帯域XBに近い並列共振子15P(第1並列共振子)を除く、少なくとも1つの並列共振子15Pは、共振周波数fpr(fpr2)及び反共振周波数fpa(fpa2)が、LCフィルタ7の減衰極fnrに対して通過帯域XBとは反対側(高周波数側)に位置してよい。このような特性を示す並列共振子15Pは、いずれの並列共振子15Pであってもよい。例えば、第1並列共振子を除く全ての並列共振子15Pにおいて、共振周波数fpr及び反共振周波数fpaが減衰極fnrに対して通過帯域PBとは反対側に位置してよい。線LP2の特性に関して行った説明は、第4実施形態に適用されてもよい。
【0155】
以上のとおり、第1並列共振子(最も共振周波数fprが通過帯域XBに近い並列共振子15P)以外の並列共振子15Pの共振周波数fpr2及び反共振周波数fpa2と、第1並列共振子の共振周波数fpr1とは、LCフィルタ7の減衰極fnrに対して通過帯域XBとは反対側(高周波数側)に位置してよい。
【0156】
この場合、例えば、第1変形例と同様に、第1実施形態の説明で述べたマイグレーションを低減する効果が向上する。
【0157】
(第3~第6変形例)
図15(a)~図15(d)は、弾性波共振子15の構成に係る第3~第6変形例を示す模式図である。ここでは、弾性波共振子15として、直列共振子15Sを例に取っている。ただし、ここでの変形例は、並列共振子15Pに適用されてもよい。
【0158】
実施形態では、弾性波共振子15(直列共振子15S)は、弾性波を利用する要素のみによって構成された。ただし、図15(a)~図15(d)に示すように、弾性波共振子15と、弾性波共振子15に直列接続又は並列接続された他の要素(例えばインダクタ及び/又はキャパシタ)とを含む構成を弾性波共振子16として捉えてもよい。換言すれば、弾性波共振子16(直列共振子又は並列共振子)は、励振電極57(図9参照)と、励振電極57に直列接続又は並列接続されたキャパシタ及び/又はインダクタとを含んでよい。具体的には、以下のとおりである。
【0159】
図15(a)では、直列共振子15S(その励振電極57)にキャパシタ13Dが並列接続されて弾性波共振子16が構成されている。キャパシタ13Dは、直列共振子15Sに等価な2重共振回路に並列接続されたキャパシタとして機能する。このことから明らかなように、弾性波共振子16の反共振周波数は低周波数側にシフトし、弾性波共振子16の周波数差Δfは、キャパシタ13Dが並列接続されている直列共振子15Sの周波数差Δfよりも小さくされる。複数の直列共振子(15及び/又は16)が設けられている場合において、このような弾性波共振子16は、任意の直列共振子とされてよい。例えば、弾性波共振子16は、全ての直列共振子のうち、反共振周波数fsaが最も通過帯域XBに近い直列共振子(第1直列共振子16S-1)であってよい。なお、直列共振子15S-2は、第1直列共振子16S-1の反共振周波数fsaよりも通過帯域XBから離れている反共振周波数fsaを有している直列共振子(第2直列共振子)の一例として図示されている。
【0160】
特に図示しないが、弾性波共振子15(励振電極57)に並列接続されるキャパシタ13Dは、2以上又は全ての弾性波共振子15に設けられてもよい。また、1つの弾性波共振子15につき1つのキャパシタが並列接続されてもよいし、2以上の弾性波共振子に共通して1つのキャパシタが並列接続されてもよい。本段落におけるキャパシタ13Dに関する説明は、後述する図15(c)のインダクタ11Dに援用されてよい。
【0161】
図15(b)では、弾性波共振子15(その励振電極57)にキャパシタ13Eが直列接続されて弾性波共振子16が構成されている。キャパシタ13Eは、直列共振子15Sに等価な2重共振回路に直列接続されたキャパシタとして機能する。このことから明らかなように、弾性波共振子16の共振周波数は高周波数側にシフトし、弾性波共振子16の周波数差Δfは、キャパシタ13Eが直列接続されている直列共振子15Sの周波数差Δfよりも小さくされる。複数の直列共振子(15及び/又は16)が設けられている場合において、このような弾性波共振子16は、任意の直列共振子とされてよい。例えば、弾性波共振子16は、全ての直列共振子のうち、反共振周波数fsaが最も通過帯域XBに近い直列共振子(第1直列共振子16S-1)であってよい。
【0162】
キャパシタ13Eの前後に弾性波共振子15が位置している場合、いずれの弾性波共振子15(励振電極57)に対して直列接続されているかは、例えば、信号経路5に対する並列腕21(図示の例ではインダクタ11C)の接続位置を基準に判定してよい。例えば、図15(b)では、キャパシタ13Eは、インダクタ11Cの接続位置よりも図の左側に位置しているから、図の左側の直列共振子15Sに対して直列接続されていると捉えられてよい。特に図示しないが、弾性波共振子15に直列接続されるキャパシタ13Eは、2以上又は全ての弾性波共振子15に設けられてもよい。本段落におけるキャパシタ13Eに関する説明は、後述する図15(d)のインダクタ11Eに援用されてよい。
【0163】
図15(c)では、弾性波共振子15(その励振電極57)にインダクタ11Dが並列接続されて弾性波共振子16が構成されている。インダクタ11Dは、直列共振子15Sに等価な2重共振回路に並列接続されたインダクタとして機能する。このことから明らかなように、弾性波共振子16の反共振周波数は高周波数側にシフトし、弾性波共振子16の周波数差Δfは、インダクタ11Dが並列接続されている直列共振子15Sの周波数差Δfよりも大きくされる。複数の直列共振子(15及び/又は16)が設けられている場合において、このような弾性波共振子16は、任意の直列共振子とされてよい。例えば、弾性波共振子16は、全ての直列共振子のうち、反共振周波数fsaが最も通過帯域XBに近い直列共振子(第1直列共振子15S-1)以外の直列共振子(第2直列共振子16S-2)であってよい。
【0164】
図15(d)では、直列共振子15S(その励振電極57)にインダクタ11Eが直列接続されて弾性波共振子16が構成されている。インダクタ11Eは、直列共振子15Sに等価な2重共振回路に直列接続されたインダクタとして機能する。このことから明らかなように、弾性波共振子16の共振周波数は低周波数側にシフトし、弾性波共振子16の周波数差Δfは、インダクタ11Eが直列接続されている直列共振子15Sの周波数差Δfよりも大きくされる。複数の直列共振子(15及び/又は16)が設けられている場合において、このような弾性波共振子16は、任意の直列共振子とされてよい。例えば、弾性波共振子16は、全ての直列共振子のうち、反共振周波数fsaが最も通過帯域XBに近い直列共振子(第1直列共振子15S-1)以外の直列共振子(第2直列共振子16S-2)であってよい。
【0165】
以上のとおり、弾性波共振子16は、インダクタ及び/又はキャパシタを含んでよい。この場合、例えば、Δf等を調整することが容易化される。特に図示しないが、図15(a)~図15(d)の変形例は、2つ以上が適宜に組み合わされてよい。Δfの調整量は任意である。
【0166】
<応用例>
(ダイプレクサ)
図16は、複合フィルタ1の利用例としてのダイプレクサ81(弾性波装置の一例)の構成を示す回路図である。
【0167】
ダイプレクサ81は、図2に示した複合フィルタ1(1A)に加えて、入力端子3Aから第2出力端子3Cへの信号経路85を流れる信号をフィルタリングする第2フィルタ83を有している。複合フィルタ1の通過帯域XBと、第2フィルタ83の通過帯域とは互いに異なっている(互いに重複していない。)。
【0168】
第2フィルタ83の構成は任意である。図示の例では、第2フィルタ83は、LCフィルタによって構成されている。具体的には、第2フィルタ83は、信号経路85の一部を構成する1以上(図示の例では1つ)のインダクタ11F及び1以上(図示の例では複数。より詳細には2つ)の並列共振回路(符号省略)を有している。各並列共振回路は、互いに並列接続されたインダクタ11G及びキャパシタ13Gを有している。また、第2フィルタ83は、信号経路85と基準電位部17とを接続する1以上(図示の例では複数。より詳細には3つ)のキャパシタ13Hを有している。回路基板31の符号から理解されるように、第2フィルタ83は、例えば、回路基板31(及び/又はチップ部品47)によって構成されている。図示の例とは異なり、第2フィルタ83は、弾性波共振子フィルタ又は複合フィルタ(弾性波共振子群とLCフィルタとの組み合わせ)によって構成されていてもよい。
【0169】
図17(a)及び図17(b)は、実施例に係る第2フィルタ83の透過特性を示す図である。
【0170】
ここでの実施例は、図16に示した第2フィルタ83において、キャパシタンス、インダクタンス、共振周波数及び反共振周波数等を具体的に設定したものである。この実施例に係る第2フィルタは、図3(a)及び図3(b)に特性を示した実施例に係る複合フィルタ1Aと組み合わされて、実施例に係るダイプレクサ81を構成している。すなわち、図17(a)、図17(b)、図3(a)及び図3(b)は、実施例に係るダイプレクサ81の特性を示している。図17(a)及び図17(b)において、横軸は周波数(GHz)であり、縦軸は透過特性(dB)である。図17(b)の横軸は、図17(a)の横軸の中央付近よりも低周波数側を示し、また、図17(a)では示されていない範囲を示している。図17(b)の縦軸は、図17(a)の縦軸のうちの上方側の一部を示している。
【0171】
図示された周波数の範囲では、第2フィルタ83は、ローパスフィルタのように機能している。通過帯域の上限の周波数は、概ね2.5GHzである。図3(a)及び図3(b)と、図17(a)及び図17(b)との比較から理解されるように、第2フィルタ83の通過帯域と、複合フィルタ1Aの通過帯域とは重複していない。
【0172】
なお、ダイプレクサは、1つの端子(ここでは入力端子3A)に共通に接続される2以上のフィルタ(そのうちの少なくとも1つは本開示に係る複合フィルタ)を有しているマルチプレクサの一例である。複合フィルタ1(又は301)を利用するマルチプレクサは、ダイプレクサ以外のものであってもよい。例えば、マルチプレクサは、送信フィルタと受信フィルタとを備えるデュプレクサであってもよいし、3以上のフィルタを含んだもの(例えばトリプレクサ又はクアッドプレクサ)であってもよい。
【0173】
(通信装置)
図18は、複合フィルタ1の利用例としての通信装置151の要部を示すブロック図である。
【0174】
通信装置151は、電波を利用した無線通信を行うものである。通信装置151は、上述した複数の実施形態及び変形例のいずれの複合フィルタを有していてもよい。ただし、以下の説明では、便宜上、第1実施形態の符号を用いる。
【0175】
通信装置151において、送信すべき情報を含む送信情報信号TISは、RF-IC(Radio Frequency Integrated Circuit)153によって変調及び周波数の引き上げ(搬送波周波数を有する高周波信号への変換)がなされて送信信号TSとされる。送信信号TSは、バンドパスフィルタ155によって送信用の通過帯以外の不要成分が除去され、増幅器157によって増幅されて分波器101の送信フィルタ109に入力される。そして、送信フィルタ109は、入力された送信信号TSから送信用の通過帯以外の不要成分を除去し、その除去後の送信信号TSをアンテナ159に出力する。アンテナ159は、入力された電気信号(送信信号TS)を無線信号(電波)に変換して送信する。
【0176】
また、通信装置151において、アンテナ159によって受信された無線信号(電波)は、アンテナ159によって電気信号(受信信号RS)に変換されて分波器101の受信フィルタ111に入力される。受信フィルタ111は、入力された受信信号RSから受信用の通過帯以外の不要成分を除去して増幅器161へ出力する。出力された受信信号RSは、増幅器161によって増幅され、バンドパスフィルタ163によって受信用の通過帯以外の不要成分が除去される。そして、受信信号RSは、RF-IC153によって周波数の引き下げ及び復調がなされて受信情報信号RISとされる。
【0177】
なお、送信情報信号TIS及び受信情報信号RISは、適宜な情報を含む低周波信号(ベースバンド信号)でよく、例えば、アナログの音声信号もしくはデジタル化された信号である。無線信号の通過帯は、適宜に設定されてよく、比較的高周波の通過帯(例えば5GHz以上)とされても構わない。変調方式は、位相変調、振幅変調、周波数変調もしくはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせのいずれであってもよい。回路方式は、図18では、ダイレクトコンバージョン方式を例示したが、それ以外の適宜なものとされてよく、例えば、ダブルスーパーヘテロダイン方式であってもよい。また、図18は、要部のみを模式的に示すものであり、適宜な位置にローパスフィルタやアイソレータ等が追加されてもよいし、また、増幅器等の位置が変更されてもよい。
【0178】
このような通信装置151において、例えば、送信フィルタ109は、実施形態に係る複合フィルタ1によって構成されてよい。この場合、増幅器157からの信号は、入力端子3Aに入力される。出力端子3Bから出力された信号は、アンテナ159に入力される。及び/又は、受信フィルタ111は、実施形態に係る複合フィルタ1によって構成されてよい。この場合、アンテナ159からの信号は、入力端子3Aに入力される。出力端子3Bから出力された信号は、増幅器161に入力される。
【0179】
既述のように、基板構造体53には、種々の電子部品が実装されたり、種々の素子が作り込まれたりしてよい。従って、例えば、上述したRF-IC153、バンドパスフィルタ155及び163、増幅器157及び161、並びにアンテナ159の少なくとも1つは、基板構造体53(例えば回路基板31)に実装される電子部品とされてよい。また、例えば、バンドパスフィルタ155及び163、並びにアンテナ159の少なくとも1つは、基板構造体53(例えば回路基板31及び/又はチップ部品47)の導体によって構成されてよい。
【0180】
本開示に係る技術は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0181】
例えば、既に触れたように、弾性波共振子群は、直列共振子15Sと並列共振子15Pとを含んでもよい。例えば、通過帯域の低周波数側に反共振周波数(及び共振周波数)を有する直列共振子15Sと、通過帯域の高周波数側に共振周波数(及び反共振周波数)を有する並列共振子15Pとが設けられてもよい。
【符号の説明】
【0182】
1…複合フィルタ、5…信号経路、7…LCフィルタ、9…弾性波共振子群、15…弾性波共振子、15S…直列共振子、15S-1…第1直列共振子、15P…並列共振子、XB…通過帯域、fsa…直列共振子の反共振周波数、fpr…並列共振子の共振周波数、fnr…LCフィルタの減衰極の周波数(共振周波数)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18