(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006673
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】混合液吹付用アダプタ
(51)【国際特許分類】
B05B 7/04 20060101AFI20230111BHJP
B05B 7/06 20060101ALI20230111BHJP
B01F 23/23 20220101ALI20230111BHJP
B01F 25/40 20220101ALI20230111BHJP
【FI】
B05B7/04
B05B7/06
B01F3/04 A
B01F5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109396
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】517046115
【氏名又は名称】株式会社ジャストフレーム
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根本 浩
(72)【発明者】
【氏名】石川 健吉
【テーマコード(参考)】
4F033
4G035
【Fターム(参考)】
4F033QA01
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB12Y
4F033QB18
4F033QD06
4F033QD08
4F033QD15
4F033QD25
4F033QE06
4F033QE09
4F033QE19
4G035AB27
4G035AC08
4G035AC11
4G035AE13
4G035AE17
(57)【要約】
【課題】高品質の混合液を効率よく低コストで吹き付けることができる混合液吹付用アダプタを提供する。
【解決手段】混合液吹付用のスプレーガンに交換可能に取り付けて使用する混合液吹付用アダプタであって、螺旋状に切れ刃と溝が形成されたドリル本体と、前記ドリル本体が内部に配置される筒状部と、前記筒状部内の前記ドリル本体が位置しない部分における内周壁において、所定の間隔で螺旋状に突設される突設部とを有し、混合液を攪拌する攪拌部を備え、前記ドリル本体の軸方向の長さは、前記筒状部の軸方向の長さの1/5以上1/3以下の長さであり、前記ドリル本体は、前記スプレーガンに取り付けられる側に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合液吹付用のスプレーガンに交換可能に取り付けて使用する混合液吹付用アダプタであって、
螺旋状に切れ刃と溝が形成されたドリル本体と、
前記ドリル本体が内部に配置される筒状部と、
前記筒状部内の前記ドリル本体が位置しない部分における内周壁において、所定の間隔で螺旋状に突設される突設部と
を有し、混合液を攪拌する攪拌部を備え、
前記ドリル本体の軸方向の長さは、前記筒状部の軸方向の長さの1/5以上1/3以下の長さであり、前記ドリル本体は、前記スプレーガンに取り付けられる側に配置されていることを特徴とする混合液吹付用アダプタ。
【請求項2】
前記攪拌部の噴出口に筒状体である口金部をさらに備え、
前記口金部には、
空気を排出する中央貫通穴と、
前記中央貫通穴の周囲に傾斜して形成された傾斜貫通穴と
が形成され、
前記口金部を側面から視た場合において、前記傾斜貫通穴は、前記筒状部の中心軸に対して10°以上45°以下傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1記載の混合液吹付用アダプタ。
【請求項3】
前記傾斜貫通穴の個数は、4~16個であることを特徴とする請求項2記載の混合液吹付用アダプタ。
【請求項4】
前記ドリル本体、前記筒状部、前記突設部、および前記口金部は、それぞれ金属製であることを特徴とする請求項2または3記載の混合液吹付用アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレーガンに交換可能に装着可能な混合液吹付用アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリウレア樹脂などを吹き付けることが可能な、混合液吹付用のスプレーガンとして、たとえば、
図3に示すようなアダプタ式のスタティックガン102が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
このスタティックガン102においては、使用時に、たとえば、A液イソシアネートが封入されたA容器104aとB液アミンが封入されたB容器104bから成る2液カートリッジ104を本体部106に装着し、本体部106の先端にスタティックミキサー108とエアーノズル110を装着する。
【0004】
そして、この状態でトリガー112を引くと、空気圧力によってA液イソシアネートとB液アミンがスタティックミキサー108に供給され、スタティックミキサー108の内部で混合されてAB混合液となる。これと同時に、エアーノズル110から噴出された空気によってAB混合液が吹き飛ばされて霧状になり、対象物に吹き付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】マーキュリー・サプライ・システムス株式会社、"ミキシングガン:スタティックミキサー"、[online]、[令和3年6月28日検索]、インターネット<URL:http://www.mssc.co.jp/mixer/sta_mix.html
【特許文献1】特開2017-109171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のスタティックガン102においては、吹付作業中に一瞬でも吹き付けが停止されるとスタティックミキサー108の内部でAB混合液が硬化するため、スタティックミキサー108を交換しなければならなかった。スタティックミキサー108は、これを繰り返すことによって作業コストが増加するという問題があった。
【0007】
また、上述のスタティックガン102以外にも、
図4に示すようなエアレスガン222を用いてAB混合液を吹き付ける方法も存在する(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、トリガー224を引くことにより、図示しないポンプの吸引力によって、空気供給口225a、副供給口225dから空気が吸入される。また、図示しない2液カートリッジから、第1供給口225bを介してA液イソシアネートが吸入され、第2供給口225cを介してB液アミンが吸入される。そして、A液イソシアネートとB液アミンは、エアレスガン222の先端部226から、それぞれ霧状に噴出され、空中衝突により対象物に吹き付けられる。
【0008】
しかし、エアレスガン222を用いた場合、スタティックミキサー108を用いず、空中衝突による混合を期待するため、高品質のAB混合液を対象物に吹き付けることは困難であった。
本発明の目的は、高品質の混合液を効率よく低コストで吹き付けることができる混合液吹付用アダプタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の混合液吹付用アダプタは、
混合液吹付用のスプレーガンに交換可能に取り付けて使用する混合液吹付用アダプタであって、
螺旋状に切れ刃と溝が形成されたドリル本体と、
前記ドリル本体が内部に配置される筒状部と、
前記筒状部内の前記ドリル本体が位置しない部分における内周壁において、所定の間隔で螺旋状に突設される突設部と
を有し、混合液を攪拌する攪拌部を備え、
前記ドリル本体の軸方向の長さは、前記筒状部の軸方向の長さの1/5以上1/3以下の長さであり、前記ドリル本体は、前記スプレーガンに取り付けられる側に配置されていることを特徴とする。
【0010】
このように、既存のスタティックガン等に本発明の混合液吹付用アダプタを装着することにより、高品質の混合液を効率よく低コストで吹き付けることができる。具体的には、ドリル本体の溝によって旋回流が形成された後、A液とB液が強制的に攪拌され混合され、突設部に衝突してバブル混合液が形成されるため、従来のスタティックミキサーよりも高品質の混合液を吹き付けることができる。
【0011】
また、本発明の混合液吹付用アダプタは、
前記攪拌部の噴出口に筒状体である口金部をさらに備え、
前記口金部には、
空気を排出する中央貫通穴と、
前記中央貫通穴の周囲に傾斜して形成された傾斜貫通穴と
が形成され、
前記口金部を側面から視た場合において、前記傾斜貫通穴は、前記筒状部の中心軸に対して10°以上45°以下傾斜して形成されていることを特徴とする。
これにより、バブル混合液は、傾斜貫通穴で旋回力が増強され乱気流を生じて噴出され、かつ中央貫通穴で集約されて噴霧されるため、二重の噴霧を行う事が可能となる。
【0012】
また、本発明の混合液吹付用アダプタは、
前記傾斜貫通穴の個数は、4~16個であることを特徴とする。
このように、傾斜貫通穴の個数は、4~16個であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の混合液吹付用アダプタは、
前記ドリル本体、前記筒状部、前記突設部、および前記口金部は、それぞれ金属製であることを特徴とする。
【0014】
これにより、従来のスタティックミキサーのように使い捨てではないため洗浄が可能であり、その都度スタティックミキサーを購入するよりも低コストで作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高品質の混合液を効率よく低コストで吹き付けることができる混合液吹付用アダプタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態に係る混合液吹付用アダプタの概要を示す模式図である。
【
図2】実施の形態に係る混合液吹付用アダプタの攪拌部、口金部、底板部を示す模式図である。
【
図3】従来より一般的に用いられているアダプタ式のスタティックガンを示す図である。
【
図4】従来より一般的に用いられているエアレスガンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態に係る混合液吹付用アダプタ2の概要を示す模式図である。なお、本実施の形態においては、混合液吹付用アダプタ2を既存のスプレーガンの一種であるエアレスガン122に装着して使用する場合を例に説明する。
【0018】
図1に示すように、混合液吹付用アダプタ2は、攪拌部2a、口金部2b、および底板部2cから構成される。ここで、攪拌部2aは、ドリル本体4、筒状部6、および突設部8を備えている。
【0019】
ドリル本体4は、螺旋状に切れ刃4aと溝4bが形成されたものであり、たとえば、市販の木工用ドリルなどを短くカットしてドリル本体4として用いることができる。なお、ドリル本体4の軸方向の長さは筒状部6の軸方向の長さの1/5以上1/3以下であり、ドリル本体4内の底板部2c側(エアレスガン122側)に配置される。なお、ドリル本体4の軸方向の長さは筒状部6の軸方向の長さの1/5以上1/4以下であればより好ましい。
【0020】
筒状部6は、ドリル本体4を内部に配置するためのケースであり、市販のパイプを用いることができる。
突設部8は、筒状部6の内面に取り付けられる釘状の部品であり、
図2(a)(
図1のA-A断面の模式図)に示すように、筒状部6内のドリル本体4が位置しない部分における内周壁に沿って所定の間隔で螺旋状に突設されている。なお、
図1、
図2(a)においては、突設部8が6本突設されている場合が例示されているが、突設部8は、筒状部6内のドリル本体4が位置しない部分における内周壁に沿って所定の間隔で螺旋状に突設されていれば、必ずしも6本である必要はなく、4本~10本の間で突設されることが想定される。
【0021】
図2(b)は、実施の形態に係る混合液吹付用アダプタ2の口金部2bを示す図である。
図2(b)に示すように、口金部2bは、筒状部6と略同径の第1筒状体12a、第1筒状体12aよりも軸方向の長さが短く径の小さい第2筒状体12b、および第2筒状体12bよりもさらに軸方向の長さが短く径の小さい第3筒状体12cから形成されており、筒状部6の先端(エアレスガン122と反対側の端部)に装着される。なお、第3筒状体12cの軸方向の長さは、3~7mm程度が好ましい。
【0022】
ここで、第1筒状体12aの外壁には、内部に空気を供給する副供給口125dが接続されている。また、第2筒状体12bの天面部12b1には、第3筒状体12cを囲むように、傾斜貫通穴13が8個所定の間隔で形成されている。なお、
図2(c)に示すように、傾斜貫通穴13は、側面から視た場合において、筒状部6の中心軸Xに対する傾斜貫通穴13の中心軸Yの角度θが10°以上45°以下の角度となるように傾斜して形成されている。また、第3筒状体12cの中央にも、空気を排出する中央貫通穴19が形成されている。なお、角度θは、20°以上30°以下の角度であればより好ましい。
【0023】
底板部2cは、円盤状の所定の厚さの板であり、筒状部6の底部(エアレスガン122側の端部)に装着される。底板部2cには、
図2(d)に示すように、第1吹付液用開口部2c1、空気用開口部2c2、および第2吹付液用開口部2c3が形成されている。
【0024】
なお、これらのドリル本体4、筒状部6、突設部8、口金部2b、および底板部2cは、何れも金属製であり、加工のしやすさ、価格等の観点より、アルミまたは真鍮が用いられていることがより好ましい。
【0025】
次に、混合液吹付用アダプタ2を既存のエアレスガン122(
図4参照)に装着して使用する場合について説明する。まず、
図1に示すように、混合液吹付用アダプタ2がエアレスガン122の先端に装着される。
【0026】
ここで、操作者がトリガー124を引くと、図示しないポンプの吸引力によって、第1供給管20から空気供給口125aを介して空気用通路26に空気が吸入される。これと共に、図示しない2液カートリッジからA液が、第2供給管22から第1供給口125bを介してエアレスガン122内の第1通路28に供給される。また、2液カートリッジからB液が、第3供給管24から第2供給口125cを介してエアレスガン122内の第2通路30に供給される。また、副供給口125dからも空気が第1筒状体12a内に供給される。
【0027】
なお、A液としては、たとえば、イソシアネートなどが用いられ、B液としては、たとえば、アミンなどが用いられるが、A液、B液は、必ずしもこれらに限定されない。
そして、空気は、空気用通路26を介して空気用開口部2c2から筒状部6内に噴出され、A液は、第1通路28を介して第1吹付液用開口部2c1から筒状部6内に噴出され、B液は、第2通路30を介して第2吹付液用開口部2c3から筒状部6内に噴出される。
【0028】
このようにして、空気と共に攪拌部2aに供給されたA液とB液は、当初空気と共にドリル本体4の溝4bに沿って螺旋状に進行する。これにより、攪拌部2a内で旋回流が形成され、A液とB液が強制的に攪拌され混合されてAB混合液が形成される。
【0029】
また、AB混合液と空気は、攪拌部2a内において内周壁に沿って螺旋状に旋回し遠心力を生じながら突設部8に衝突するため、微細な気泡であるマイクロバブルを含むバブル混合液となる。このバブル混合液は、コアンダ効果を生じた状態で攪拌部2aから口金部2bに供給される。
【0030】
このようにして口金部2b内に供給されたバブル混合液は、8個の傾斜貫通穴13で旋回力が増強されて噴出される。なお、8個の傾斜貫通穴13は、バブル混合液の旋回方向と同じ方向に傾斜している。このため、バブル混合液は、傾斜貫通穴13において乱気流を生じ、霧状に拡散して噴霧される。また、これと同時に、副供給口125dからは、中央貫通穴19に空気が供給されている。これにより、旋回流を生じたバブル混合液が中央貫通穴19で集約されて噴霧される。以上により、霧状のバブル混合液が対象物に吹き付けられる。
【0031】
ここで、操作者がトリガー112を引くのを止めると、2液カートリッジからのA液及びB液の供給が停止され、空気のみが攪拌部2aに供給される。この場合、中央貫通穴19から空気のみが噴出されるため、攪拌部2a、口金部2bの内部に滞留しているバブル混合液は、空気によって混合液吹付用アダプタ2の外に噴出される。
【0032】
このため、施工作業中に休憩を取ったとしても、操作者が再度トリガー124を引くことにより、バブル混合液が混合液吹付用アダプタ2の内部で硬化することが防止される。
この実施の形態に係る発明によれば、既存のエアレスガン122に混合液吹付用アダプタ2を装着することにより、高品質の混合液を効率よく低コストで吹き付けることができる。具体的には、ドリル本体4の溝4bによって旋回流が形成された後、A液とB液が強制的に攪拌され混合され、突設部8に衝突してバブル混合液が形成されるため、従来のスタティックミキサー108よりも高品質の混合液を吹き付けることができる。A液がイソシアネート、B液がアミンの場合、高品質のポリウレアを吹き付けることができる。
【0033】
また、この場合、攪拌部2aの軸方向の長さは、従来のスタティックミキサー108の1/6程度の長さで足りる。
また、バブル混合液は、傾斜貫通穴13で旋回力が増強され乱気流を生じて噴出され、かつ中央貫通穴19で集約されて噴霧されるため、二重の噴霧を行う事が可能となる。
【0034】
また、操作者が再度トリガー124を引くことで、空気のみが噴出され、攪拌部2a、口金部2bの内部に滞留しているバブル混合液が空気によって混合液吹付用アダプタ2の外に噴出されるため、施工作業中に休憩を取ったとしても、バブル混合液が混合液吹付用アダプタ2の内部で硬化することが防止されるため、効率よく混合液の吹付を行うことができる。
【0035】
また、装着されたエアレスガン122は、混合液吹付用アダプタ2を交換することが可能であるため、定期清掃交換を行う事ができ、常に整備された状況で施工作業ができる。
また、ドリル本体4、筒状部6、突設部8、および口金部2bは、何れも金属製であり、従来のスタティックミキサー108のように使い捨てではないため洗浄が可能であり、その都度スタティックミキサー108を購入するよりも低コストで作業を行うことができる。
【0036】
なお、上述の実施の形態においては、
図3に示すエアレスガン122に混合液吹付用アダプタ2を装着して使用する場合を例に説明したが、混合液吹付用アダプタ2は、
図3に示すスタティックガン102に装着して使用してもよい。
【符号の説明】
【0037】
2 混合液吹付用アダプタ
2a 攪拌部
2b 口金部
2c 底板部
2c1 第1吹付液用開口部
2c2 空気用開口部
2c3 第2吹付液用開口部
4 ドリル本体
4a 切れ刃
4b 溝
6 筒状部
8 突設部
12a 第1筒状体
12b 第2筒状体
12b1 天面部
12c 第3筒状体
13 傾斜貫通穴
19 中央貫通穴
20 第1供給管
22 第2供給管
24 第3供給管
26 空気用通路
28 第1通路
30 第2通路
102 スタティックガン
104 2液カートリッジ
104a A容器
104b B容器
106 本体部
108 スタティックミキサー
110 エアーノズル
112 トリガー
122 エアレスガン
124 トリガー
125a 空気供給口
125b 第1供給口
125c 第2供給口
125d 副供給口
126 先端部
222 エアレスガン
224 トリガー
225a 空気供給口
225b 第1供給口
225c 第2供給口
225d 副供給口
226 先端部
X 中央貫通穴19の中心軸
Y 傾斜貫通穴13の中心軸
θ 傾斜貫通穴13の角度