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  • 特開-高炉の操業方法 図1
  • 特開-高炉の操業方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066757
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】高炉の操業方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 5/00 20060101AFI20230509BHJP
   C21B 7/20 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
C21B5/00 311
C21B7/20 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177541
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】三尾 浩
(72)【発明者】
【氏名】松田 航尚
(72)【発明者】
【氏名】中野 薫
【テーマコード(参考)】
4K012
4K015
【Fターム(参考)】
4K012BC02
4K015GB05
(57)【要約】
【課題】旋回数を確保しつつ1チャージに要する時間を短縮する。
【解決手段】旋回シュート10を備えるベルレス式装入装置3により高炉原料を装入する高炉1の操業方法であって、旋回シュート10の旋回速度が12rpm以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回シュートを備えるベルレス式装入装置により高炉原料を装入する高炉の操業方法であって、
前記旋回シュートの旋回速度が12rpm以上である、高炉の操業方法。
【請求項2】
前記旋回シュートが筒状である、請求項1に記載の高炉の操業方法。
【請求項3】
出銑比が2.2t/(m・日)以上である、請求項1または2に記載の高炉の操業方法。
【請求項4】
前記高炉原料の1チャージを4ダンプ以上で実施する、請求項1から3のいずれか1項に記載の高炉の操業方法。
【請求項5】
前記高炉原料の1チャージにおいて、鉱石を3ダンプ以上で実施する、請求項1から4のいずれか1項に記載の高炉の操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉の操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1に記載のベルレス高炉が知られている。
一般に、ベルレス高炉では、1チャージ(コークス層と鉱石層のペア)を複数のダンプに分けて装入を行っている。各ダンプでは、それぞれ旋回シュートを旋回させて原料を装入している。
通常は、1チャージに要する時間には十分に余裕があり、装入待ちの時間が発生する。そのため、装入に遅れが生じ難く、操業への影響はない。
しかしながら、出銑比(1日あたり、単位容積あたりの出銑量)が大きくなってくると、1日に装入しなければならない原料が増え、必要なチャージ数が増える。さらには、炉内に装入した原料の降下速度も速くなるため、炉頂での装入が間に合わなくなると、高炉内の原料の堆積面がどんどん下がっていくこととなり、高炉の操業ができなくなってしまう。また、炉内のスリップ等により、堆積面が一気に降下してしまった場合、装入余裕率が十分大きくないと、堆積面を指定レベルまで復旧することが厳しくなってしまい、安定操業を継続できなくなってしまう。これらの問題は、高出銑比操業の時には、特に深刻な問題となる。
そのため、出銑比が高い場合には、1チャージに要する時間を短縮する必要が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5601426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、1日に必要なチャージ数は、1日の出銑量と、1チャージに装入する鉱石量(OB)と、から求められる。例えば、1日の出銑量を11250t、1チャージに装入する鉱石量を145tの条件下で操業するとき、1日に約125チャージが必要となり、1チャージに要する時間は平均696秒である。
ここで、装入時間を短縮するために、各ダンプで装入している旋回数を減らす方法が考えられる。例えば、旋回シュートを8rpmで装入している場合、1旋回あたり7.5秒であるので、1~2旋回では大幅な時間短縮にはならない。各ダンプで30秒以上短縮するとなると、4旋回以上を減らすことになる。しかしながら、旋回数を減らすと、高炉の半径方向への装入ポイント(半径方向の位置)が減るため、半径方向の層厚の制御性が低くなってしまい、安定操業を継続するのが難しくなる。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、旋回数を確保しつつ1チャージに要する時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本発明の一態様に係る高炉の操業方法は、旋回シュートを備えるベルレス式装入装置により高炉原料を装入する高炉の操業方法であって、前記旋回シュートの旋回速度が12rpm以上である。
<2>上記<1>に係る高炉の操業方法では、前記旋回シュートが筒状である構成を採用してもよい。
<3>上記<1>または<2>に係る高炉の操業方法では、出銑比が2.2t/(m・日)以上である構成を採用してもよい。
<4>上記<1>から<3>のいずれか1項に係る高炉の操業方法では、前記高炉原料の1チャージを4ダンプ以上で実施する構成を採用してもよい。
<5>上記<1>から<4>のいずれか1項に係る高炉の操業方法では、前記高炉原料の1チャージにおいて、鉱石を3ダンプ以上で実施する構成を採用してもよい。
【0007】
一般的にベルレス高炉では、炉頂の旋回シュートを8rpmで旋回させる。これに対して、この高炉の操業方法では、旋回シュートの旋回速度が12rpm以上である。このように、旋回スピードを速くすることで、旋回数を確保しつつ1チャージに要する時間を短縮することができる。その結果、時間短縮による操業への影響も少ない。なお例えば、旋回速度を8rpmから12rpmに変更することにより、装入に要する時間が2/3になり、高出銑比条件(例えば、出銑比が2.2t/(m・日))でも、炉内の堆積面を適切にキープしたまま操業を継続できる。
なお、旋回シュートが筒状である場合、旋回シュートが包形状となるため、高速旋回しても、高炉原料が旋回シュートからあふれ出ることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、旋回数を確保しつつ1チャージに要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る高炉の操業方法に用いられるベルレス式装入装置を説明する図である。
図2図1に示すベルレス式装入装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
まず、本発明の一実施形態に係る高炉の操業方法の適用対象となる高炉について説明する。
高炉1は、高炉本体2と、ベルレス式装入装置3(以下、装入装置ともいう)と、を備えている。装入装置3は、高炉本体2に高炉原料(例えば、コークスや鉱石)を装入する。
【0011】
装入装置3は、原燃料投入筒4と、旋回シュート10と、図示しない旋回手段と、傾動手段と、図示しないホッパーと、を備えている。装入装置3は、高炉本体2の上部に配置されている。ホッパー内には、高炉原料が貯留されている。高炉原料は、ホッパーから原燃料投入筒4を通して旋回シュート10の基端に供給される。旋回シュート10の基端に供給された高炉原料は、旋回シュート10を通過して旋回シュート10の先端から高炉本体2内に装入される。
ホッパーの排出口や原燃料投入筒4の断面積は、旋回シュート10から装入される高炉原料の供給速度を制限しない程度、十分大きく確保されている。
【0012】
旋回シュート10は、筒状である。旋回シュート10の断面積は、例えば、0.5m以上1.25m以下である。旋回シュート10は、全長にわたって同径の筒状であってもよく、基端から先端に向けて徐々に拡径または縮径するテーパ状であってもよい。旋回シュート10の断面形状は、円形状であっても、多角形状であってもよい。さらに、旋回シュート10が全長にわたって筒状に形成されていなくてもよい。例えば、旋回シュート10の長さ方向の一部が開放された構成とされてもよい。
本実施形態のように旋回シュート10が筒状であることで、旋回シュート10が包形状となるため、高速旋回しても、高炉原料が旋回シュート10からあふれ出ることを防ぐことができる。
【0013】
旋回手段は、旋回シュート10を鉛直軸O回り(矢印R方向)に旋回させる。旋回手段は、例えばモータを含む。なお矢印R方向(旋回方向)は、図に示す方向と反対側であってもよい。
装入装置3は、旋回シュート10の鉛直軸Oに対する傾き(ノッチ角度α)を変化させる。旋回シュート10の基端は、先端に対して上方に位置する。傾動手段は、旋回シュート10における基端側に位置する図示しない傾動軸を起点として旋回シュート10を傾動させる。傾動手段は、旋回シュート10の先端が上下方向に移動するように、旋回シュート10を矢印T方向に傾動させる。傾動手段は、例えばモータを含む。
【0014】
旋回シュート10は、傾動手段によって鉛直軸Oに対する傾きが固定された状態で、旋回手段によって旋回させられる。このとき、旋回シュート10に高炉原料が供給されることで、旋回シュート10の先端から、旋回シュート10の傾きや旋回速度に応じて高炉本体2の半径方向の所定の位置(例えば、鉛直軸O寄りの位置や、高炉本体2の炉壁2a寄りの位置など)に高炉原料が供給される。
【0015】
上記装入装置3により高炉原料を装入して高炉1を操業するとき、生産量を高めるという観点では、例えば、出銑比を2.0t/(m・日)以上とすることが好ましく、2.2t/(m・日)以上とすることがより好ましい。
【0016】
ここで、このように出銑比を高めた場合、高炉原料の1チャージに要する時間を短縮する必要が生じる。すなわち、高炉原料は、高炉本体2内に常時、装入されるのではなく、間隔をあけて装入される。高炉原料を装入する1回の単位が1チャージである。その1チャージに要する時間を短縮することで、安定した操業が実現される。
【0017】
1チャージは、複数回のダンプによって実施される。1回のダンプは、同種の高炉原料を装入する1回の単位である。本実施形態では、1チャージにおける複数回のダンプのうち、一部のダンプでは、コークスを装入し、残りのダンプでは、鉱石を装入する。例えば、1チャージは、4ダンプ以上で実施されることが好ましい。更に例えば、1チャージにおいて、鉱石を3ダンプ以上で実施することが好ましい。
【0018】
1ダンプでは、旋回シュート10を複数回旋回させながら、旋回シュート10から高炉本体2内に高炉原料を装入する。このとき、鉛直軸Oに対する旋回シュート10の傾きが、旋回ごとに異なることで、高炉本体2内における半径方向の広範囲にわたって、高炉原料が装入される。
【0019】
そして本実施形態では、旋回シュート10の旋回速度を12rpm以上とする。ここで旋回速度は、各ダンプにおいて旋回シュート10の旋回速度が安定している(加速度が概ね0である)中間時間帯における旋回速度を意味する。すなわち、各ダンプにおける旋回の中間時間帯における旋回シュート10の旋回速度を12rpm以上とする。言い換えると、本実施形態では、旋回速度は、各ダンプにおいて旋回シュート10が旋回をし始めたときや旋回をし終えるとき(すなわち、初速や終速)は、旋回シュート10の旋回速度が12rpm以上でなくてもよい。
【0020】
一般的にベルレス高炉では、炉頂の旋回シュート10を8rpmで旋回させる。これに対して、この高炉1の操業方法では、旋回シュート10の旋回速度が12rpm以上である。このように、旋回スピードを速くすることで、旋回数を確保しつつ1チャージに要する時間を短縮することができる。その結果、時間短縮による操業への影響も少ない。なお例えば、旋回速度を8rpmから12rpmに変更することにより、装入に要する時間が2/3になり、高出銑比条件(例えば、出銑比が2.2t/(m・日))でも、炉内の装入面を適切にキープしたまま操業を継続できる。
【0021】
ここで、高炉本体2の容積が4500mである高炉1において、出銑比2.0~2.2での操業について、装入のサイクルタイムについて検討をした。
【0022】
この検討では、比較例1、比較例2、実施例1の3つの操業の場合について検討した。
比較例1、比較例2、実施例1に共通する条件は以下の通りとした。
・1チャージに装入する鉱石量(OB):140t(鉱石比:1.6)
・1チャージ4ダンプ
・4ダンプの内訳:コークス(14旋回)、O1(10旋回)、O2(5旋回)、O3:9旋回(O1~O3はそれぞれ、鉱石1ダンプ目~3ダンプ目)
・1チャージにおいて装入以外に必要な時間(以下、装入外時間という):415秒
【0023】
比較例1では、出銑比が2.0t/(m・日)であり、旋回シュート10の旋回速度が8rpmである。
比較例2では、出銑比が2.2t/(m・日)であり、旋回シュート10の旋回速度が8rpmである。
実施例1では、出銑比が2.2t/(m・日)であり、旋回シュート10の旋回速度が12rpmである。
【0024】
以上の比較例1、比較例2、実施例1それぞれにおいて、旋回シュート10の旋回速度に基づいて装入時間を算出したところ、比較例1、2では、いずれも装入時間が285秒となり、実施例1では、装入時間が190秒となった。
一方、比較例1、比較例2、実施例1それぞれにおいて、出銑比から1チャージ当たりの基準となる時間(以下、基準時間という)を求めると、比較例1では、基準時間が840秒となり、比較例2、実施例1では、基準時間が764秒となった。
そして、比較例1、比較例2、実施例1それぞれにおいて余裕率を求めると、それぞれ120.0%、109.1%、126.2%となった。余裕率は、(装入時間+装入外時間)/基準時間である。一般的に、余裕率は110%以上確保することが好ましい。余裕率が少ないとスリップが生じた時など、復旧に時間を要することとなり、安定操業を継続するのが困難となる。
【0025】
比較例1では、余裕率が120%であり、十分操業が可能である。しかし、比較例1に対して出銑比を高めた比較例2では、余裕率が109%となり、安定した操業が厳しくなる。そこで、比較例2に対して旋回速度を高めた実施例1では、余裕率が126%となり、十分な余裕率であることが確認でき、安定した操業ができることがわかる。
【0026】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0027】
出銑比が2.2t/(m・日)未満であってもよい。
高炉原料の1チャージを4ダンプ未満で実施してもよい。
【0028】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 高炉
3 ベルレス式装入装置
10 旋回シュート
図1
図2